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脳の注意機能を担う前障(claustrum)の内部機構

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脳の注意機能を担う前障

(claustrum)の内部機構

Neural mechanism of claustrum responsible for the attentional function of the braine

布川 絢子

1

矢入 郁子

2

山川 宏

1,3

Ayako Fukawa

1

, Ikuko Eguchi Yairi

2

, and Hiroshi Yamakawa

1,3 1

全脳アーキテクチャ・イニシアティブ

1

The Whole Brain Architecutre Initiative

2

上智大学

2

Sophia University

3

東京大学

3

The University of Tokyo

Abstract: One of the objects of consciousness research is the attention, which has the property of inhibiting

irrelevant information and emphasizing the processing of relevant information. It has been proposed that claustrum (CLA) determines which information to direct selective attention to in a top-down manner. A model in which the CLA regulates attentional selection from higher-order regions to sensory regions was proposed. The CLA-mediated neuronal connections can be assumed to be a counter stream structure, but reciprocal connections between the CLA and cortical and higher order regions have been identified. In this paper, we discuss the mechanism of attentional selection.

1 はじめに

注意機能は,無関係な情報を抑制しながら関連し た情報の処理を強調するという特性を持つ.膨大な 情報から関連する必要な情報を選択するために,脳 の注意機能のメカニズムは重要である.注意機能の メカニズムに関する神経科学的研究は,しばしば意 識研究にも関連づけられてきた. 前障(claustrum: CLA)は,大脳皮質との相互接続性, 脳内での中心的な位置関係,視床との接続性などの 特徴をもつ脳領域である.CLA はほとんどの皮質領 域と接続を持っており,注意機能に重要な役割を果 たすと考えられている.脳の高次領域が注意対象の 決定を行い,CLA を介して広範な感覚皮質領域に対 する注意対象の調節を行うというモデルが提案され ている[1].近年,CLA への関心の高まりや実験手法 の進化により,CLA の構造・接続・機能的役割につ いて多くの研究が行われてきた. 本研究では,注意機能のメカニズムに関わるCLA の役割を理解することを目的とする.そして,解剖 学的な脳の構造・実験で観察される現象と構築可能 な計算モデルを対応づけることによる構成論的アプ ローチを用いて,神経科学的に妥当で実行可能な計 算モデルを構築する.本稿では,注意機能のメカニ ズムを明らかにする最初の段階として,神経科学的 な知見を調査し,注意機能で重要なCLA の内部機構 を調査し,CLA が果たす役割,機能について考察す る.注意対象の調節を行うメカニズムを明らかにす ることを目的とし,はじめに近年得られた解剖学的・ 生理学的知見(構造,接続,神経細胞の種類)と CLA が関わる機能についてを主に検討するために文献調 査した結果を整理する.次に,動物が高次領域およ び感覚皮質領域の両方と接続を持つCLA を用いて, トップダウン的な注意対象の決定とボトムアップ的 な感覚刺激の検知を行うにはどのような接続および メカニズムが有望か,神経細胞レベルで検討した結 果を述べる.

2 前障(claustrum)の解剖と機能

2.1 注意機能に関わる主な脳領域

本稿で議論する上で,注意機能に関わる領域は, 大きく分けてCLA,感覚皮質領域,高次領域の 3 つ である.感覚皮質領域は,主に視覚野(visual: VIS), 聴覚野(auditory: AUD),体性感覚野(somatosensory:

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SS),運動野(motor: MTR)を指す.感覚皮質領域は, 外部刺激など感覚情報が入力される領域である.ま た高次領域は,前頭前野眼窩皮質(orbitofrontal cortex: OFC),prelimbic cortex,前帯状皮質(anterior cingulate cortex: ACC),脳梁膨大後部皮質(retrosplenial cortex: RSC)などを指す.

2.2 前障の解剖・生理

2.2.1 CLA の領域について CLA は,正確な形状・接続は種ごとに異なるが, 全ての哺乳類に存在するとされる[2].鳥類および爬 虫類においても,CLA のような構造の存在が示唆さ れている.霊長類では,CLA は島皮質(insula)の領域 の下,被殻(putamen)の外側表面の上にあり,白質の 中に位置する.CLA の両側には白質繊維(fiber tract) で あ る 最 外 包(extreme capsulae) と 外 包 (external capsulae)がある.CLA は前後方向・背腹方向に伸展 した薄いシート状の灰白質で,外側−内側の厚さは数 分の1mm〜数 mm まで変化し,湾曲している.霊長 類に比べて外被白質が発達していないげっ歯類など の哺乳類では,CLA は最外包(内側)と島皮質(外側)の 間に密集した核の集まり(nuclear cluster)として現れ る.一部の研究者は,げっ歯類のCLA が島皮質の深 層に完全に囲まれていることを示唆している[3]. 近年,CLA とそのすぐ腹側に位置する endopiriform nucleus(En)との関係が検討されている.CLA および En(背側 En (dorsalEn: DEn)および腹側 En(ventral En: VEn))は,CLA-En 複合体を構成し,さらに CLA-扁 桃体(amygdala: AMG)複合体を構成すると,これまで 考えられてきた.しかし最近の研究では,CLA と DEn は同じ複合体の領域と考えるべきであり,IEn と VEn は扁桃体の一部として分類されるべきであると提案 されている[3].CLA と DEn はどちらも大脳皮質の 各層との入出力接続のパターンが同じである. CLA-DEn 複合体への投射は,前頭皮質(frontal cortex)およ び高次感覚皮質の第2 層から第 5 層まで,第一次感 覚皮質の第 6 層から生じている.CLA-En 複合体は 大脳皮質の全層に投射しているが,特に前頭皮質へ は密に投射している.また,CLA が感覚皮質領域と 背 内 側 前 頭 前 皮 質 (dorsal medial preflontal cortex:dmPFC)と経路を持つのに対し,DEn は腹内側 前頭前皮質(ventral medial preflontal cortex:vmPFC),辺 縁系と接続を持っている[3].

2.2.2 CLA 内および他領域との接続関係

ほとんどの皮質領域がCLA への投射を持つ.特に OFC,prelimbic cortex,ACC,第二運動野(secondary motor cortex)を含む前頭皮質,島皮質,側頭皮質

(temporal cortex)からの CLA への投射が強く存在す る[4].感覚皮質領域(sensory cortex)の領域(VIS,AUD, SS など)からの CLA への投射は,弱いが存在する. また,CLA からの出力の大部分は前頭皮質,特に内 側前頭前皮質(medial prefrontal cortex: mPFC)を標的 とする[4]. CLA との接続関係の特徴として,接続の強さの違 いと同側性および対側性の経路の違い,という二つ がある.大脳皮質の異なる領域におけるCLA への神 経伝達密度には大きなばらつきがあり,一次感覚皮 質領域ではCLA の投射が最小限であるのに対し,前 頭領域(帯状皮質と mPFC を含む)では CLA からの投 射がかなり高密度である[3].大脳皮質に投射する CLA 神経細胞は,一次感覚皮質領域からの疎な神経 伝達しか受けていないことが示唆されている[5]. CLA と高次領域間の顕著な接続は,高次認知機能に おける CLA の重要な役割を示唆している可能性が ある.また,皮質領域からCLA への投射は両側性で あるのに対し,CLA から皮質領域への投射は同側性 である[6].左右の脳領域の両方から投射があること を両側性,同じ側の脳領域から投射があることを同 側性,反対側の脳領域から投射があることを対側性 と呼ぶ.げっ歯類における高次領域からCLA への投 射はしばしば両側性であるが,CLA から高次領域へ の投射は大部分が同側性である.ACC やひげ運動野 (whisker motor cortex)などのいくつかの領域では,同 側CLA からの接続もあるが対側 CLA との接続がよ り顕著である.対側の前運動領域(premotor region)か らCLA への密な投射もある.MTR は,大部分が対 側CLA に投影し,同側 CLA からの投射を受ける. VIS などの感覚皮質領域もまた,同側 CLA からの投 射を受け取るが,CLA には疎な投射しか送らない[6]. CLA 内の神経細胞を ACC へ投射する神経細胞 (ACC Neurons),投射しない神経細胞(Non CLA-ACC Neurons)に分けた結果を,図 1 に示す[5].図 1 では,簡単のため ACC Neurons と Non CLA-ACC Neurons を二つに分けているが,各神経細胞は CLA 内に散在している.高次領域から投射を受ける CLA の神経細胞は高次領域へ出力し,感覚皮質領域 から投射を受ける CLA の神経細胞は感覚皮質領域 へ投射するという,レシプロカルな接続をもつ神経 細胞が実験的に多く確認された.CLA-ACC Neurons は対側と同側のACC,同側 OFC,同側島皮質,対側 MTR,同側 VIS からの投射を受けている.SS や AUD からの投射は観察されていない.前頭側の ACC, OFC と,島皮質では CLA-ACC 細胞との接続が形成 されやすいのに対し,同側の感覚運動皮質からの投 射は非常に少ない.また対側ACC・OFC・島皮質は,

(3)

CLA 神経細胞を介して同側 ACC と接続を形成し, 同側ACC は CLA 神経細胞との相互接続を形成して いることが明らかになった.また,感覚皮質領域の 細胞は,Non CLA-ACC Neurons を標的としている[5].

CLA-ACC 細胞は他の皮質領域と共投射する[5]. 共投射とは,一つの神経細胞が,複数の領域に投射 することである.CLA-ACC 細胞は主に OFC や RSC などの他の高次領域および大脳辺縁系領域と共投射 するが,CLA-ACC 細胞が感覚皮質領域(SS,AUD, VIS,MTR)とわずかに共投射することが示された. CLA の内部接続については,大脳皮質との接続性 に 比 べ る と 特 徴 は 少 な い .CLA は 前 後 軸 (anteroposterior axis)に広範囲の内在的な接続性を持 つ.CLA の中心領域から前側と後側の両方,CLA の 前側から最後尾の領域まで,CLA の後側から CLA の 前端まで,前後軸全体に渡って接続を持っている[4]. 2.2.3 細胞の種類と皮質領域の入出力層 感 覚 皮 質 領 域 か ら CLA ヘ 投 射 す る 神 経 細 胞 (Cortex-CLA 神経細胞)は,主に大脳皮質の第 5 層と 第6 層に存在することが確認されている[6].Cortex-CLA 神経細胞は,層に存在することが確認されている[6].Cortex-CLA から皮質領域へ投射する神経 細胞(CLA-Cortex 神経細胞)および CLA に存在する 抑制性神経細胞の両方に投射する.高次領域では, 第2 層と第 3 層の Cortex-CLA 神経細胞と第 5 層の

IT 細胞(intratelencephalic neurons)から CLA へ投射す るが,第5 層の錐体路細胞(pyramidal tract neurons)か らは投射しない.CLA からは皮質領域の全層にわた って興奮性神経細胞へ主に投射しているが,第2 層, 第3 層,第 6 層に高密度の投射を送る[4].CLA は感 覚皮質領域の第4 層の興奮性神経細胞だけでなく抑 制性神経細胞に投射する[1].この接続関係を図 2 に 示す.左側が高次領域とCLA,右側が感覚皮質領域 とCLA の接続を表す.Cortex から CLA へ投射する 神経細胞を黒色の丸,CLA から Cortex へ投射する神 経細胞を青色の丸,抑制性神経細胞を赤色の丸で表 している.また,皮質領域へ投射するCLA 内の神経 細胞は特定の領域に分布を示すのに対し,高次領域 に投射するCLA 神経細胞は,CLA 内の範囲全体に 分布している[7]. 抑制性神経細胞は,化学シナプスと電気シナプス との相互接続性が高い.また抑制性神経細胞は, CLA-Cortex 神経細胞と高度に相互接続されており, 抑制性神経細胞のネットワークがその活動を強く調 節していることを示唆している.隣接する CLA-Cortex 細胞は,CLA-CLA-Cortex 細胞と接続することが少 なからずある.これらの CLA 内の局所的回路は, CLA-Cortex 神経細胞の活動を同期させ,異なる皮質 脳領域の活動を調整している可能性がある.CLA 内 の抑制性神経細胞のシナプス関係と機能はまだ解明 されていないが,少なくともこれら抑制性神経細胞 図2. 前障と各皮質領域における神経細胞 ([1], [3], [4], [6] 参照して作成) 図1. 前障と皮質領域の接続関係 高次領域を薄橙色,感覚皮質領域を青色で表す. また,解剖学的および機能的に高次・感覚皮質領 域と異なる特徴を持つ島皮質は黄色で表す.図 中,左上のMTR と ACC が対側領域である. 同 側 皮 質(ipsilateral cortex: ipsi) , 対 側 皮 質 (contralateral cortex: contra) , 頭 前 野 眼 窩 皮 質 (orbitofrontal cortex: OFC) , 前 帯 状 皮 質 (anterior cingulate cortex: ACC) , 脳 梁 膨 大 後 部 皮 質 (retrosplenial cortex: RSC),運動野(motor: MTR),体 性 感 覚 野(somatosensory: SS) , 聴 覚 野 (auditory: AUD),視覚野(visual: VIS),前障(claustrum: CLA). ([5] Figure6 より作成)

(4)

のいくつかは,CLA-Cortex 神経細胞との局所的な接 続を形成している[6]. CLA 内の神経細胞は,ほとんどが興奮性神経細胞 で,残りは抑制性神経細胞である.CLA 内の神経細 胞は,電気生理学的特性の異なる2 種類の興奮性神 経細胞と3 種類の抑制性神経細胞に分類されている. これら2 種類の興奮性神経細胞(I 型と II 型)は,大脳 皮質への軸索投射パターンが異なっており,機能的 な差異を持つと考えられる[8].CLA 内の I 型と II 型 は,投射先の皮質領域によって投射する割合が異な る.感覚皮質領域への投射は I 型が多く,高次領域 への投射はII 型が多い[8]. 大脳皮質からの興奮性投射は,CLA の興奮性神経 細胞と抑制性神経細胞の両方を標的とし,さらに抑 制性神経細胞は興奮性神経細胞に投射する.CLA 内 の興奮性神経細胞は,皮質領域から興奮性投射を受 けたすぐ後に,CLA 回路内の抑制性神経細胞による 急速な抑制を受ける.このような接続の回路をフィ ードフォワード抑制という.フィードフォワード抑 制によって,興奮性反応を抑制し情報統合のための 時間窓を狭くすることは,発火のタイミングを同期 させるための効率的な方法である[4].このフィード フォワード抑制により,CLA が重要な情報や新しい 情報のサリエンシー検出器(後述)を担う可能性があ る[5].

2.3 前障の主要な機能の整理

CLA の機能については,注意機能だけでなく,知 覚形成のための感覚情報の結合,サリエンシー検出, 多感覚統合,クロスモーダル転送,感覚運動処理に 関与する皮質領域の調整といった機能についての関 与も研究され様々な知見が得られている[3]. 様々に研究される機能のうち注意機能を考える上 では,①高次領域からのトップダウン的な注意制御, ②外部刺激からのサリエンシー検出を検討すること が必要である. 2.3.1 注意のトップダウン的制御 注意機能とは,関連情報と非関連情報の区別を強 化し,生物が無関係な情報を無視して続行できるよ うにする機能である.注意機能の特徴は,脳領域に おける注意機能の割り当てである.刺激の大きさな どで注意機能の割り当てが決まっては困るため,求 める任意の領域に意図的に注意機能を割り当てられ なければならない.[1]は,CLA の感覚皮質領域と高 次領域との接続関係から,CLA がタスク関連情報と タスクに関連しない情報の区別を強化する機能を持 ち,生物が無関係な情報を無視して目標志向の行動 をとることを可能にすると提案した.CLA が,各感 覚刺激間の注意機能を分離する機能を果たし,注意 機能の優先順位の高い感覚皮質を選択できるように することを提案した.またCLA は感覚皮質領域の情 報表現の獲得を選択的に制御することにより,無関 係な刺激の表現を制限するかもしれない[1].具体的 な制御について,図3 に示す.図 3 は,注意制御機 能と解剖領域の関係を対応づけている.各感覚皮質 領域からの刺激情報がCLA を介して高次領域(PFC) に送る.そして高次領域(PFC)が CLA へ注意の制御 情報を送り,CLA から各感覚皮質領域へ制御を行う. CLA が感覚皮質領域の第 4 層で興奮性神経細胞,抑 制性神経細胞に投射することで(図 2),皮質の処理, 出力の制御に影響を与える可能性があるとしている. 2.3.2 サリエンシーの検出 感覚刺激がボトムアップ性注意を誘引する特性を 「サリエンシー」と呼び,CLA はこのサリエンシー 検出器として機能することが示唆されている[1].他 のことに注意を向けていても,なんらかの外部刺激 があったら,そちらに意識を向けられる必要がある. CLA が同側 ACC に優先的に投射しており,CLA は 誤 り 検 出 と注 意 処理(error detection and attentional processing)に関与することが知られている.CLA は 入力刺激の重要性を符号化するための感覚運動・感 覚連合皮質-CLA-帯状皮質への経路の構成要素の一 部として機能している可能性がある.これにより, 最も顕著な信号だけが CLA を通って帯状皮質に伝 搬することになる[2].

3 前障の主要な機能についての検討

3.1 CLA を介した感覚皮質領域と高次領域

の接続

前章の2.3.1 と 2.3.2 を鑑みると,CLA を介した感 覚皮質領域と高次領域の経路には2種類の情報伝達 がある.①高次領域から感覚皮質領域へのトップダ ウン的制御を行う情報伝達と,②感覚皮質領域から 高次領域へのサリエンシー検出・誤り検知の情報伝 達である.本稿では,CLA を介した高次領域と感覚 皮質領域の一連の伝達経路をのうち,「高次領域 → CLA → 感覚皮質領域」の経路を「トップダウン経 路」,「感覚皮質領域 → CLA → 高次領域」の経路 をボトムアップ経路呼ぶこととする. CLA への投射は,同側,対側共にあるが,対側か らの方が強い.そして,CLA からの出力は同側に投 射する.そのためトップダウン経路は, 同側の高次

(5)

領域・対側の高次領域 → CLA → 同側の感覚皮質 領域」ボトムアップ経路は,「同側の感覚皮質領域・ 対側の感覚皮質領域 → CLA → 同側の高次領域」 という経路が存在する.しかし,解剖学的知見では, 感覚皮質領域から投射を受ける CLA 神経細胞は感 覚皮質領域に出力し,ACC から投射を受ける CLA 神経細胞は ACC に出力するというレシプロカルな 接続をもつものが多いことが確認されている(図 2)[5].対側 MTR,同側 VIS が CLA-ACC 細胞ヘ少な からず投射しており,ボトムアップ経路は解剖学的 に存在し得る.しかし,[5]では感覚皮質領域に投射 する CLA-Cortex 神経細胞への高次領域からの投射 は確認されていない. ACC をはじめとする高次領域からの入力情報は どのように感覚皮質領域に投射されるのか,考えら れる仮説経路は二つある.一つは,CLA 内の神経細 胞の共投射である.CLA-ACC 細胞は,わずかながら 感覚領域にも共投射することが確認されている.し かし,その数は多くはないため,トップダウンの制 御を行うために十分かどうかを検討する必要がある だろう.もう一つは,CLA 内の神経細胞どうしが何 らかの情報をやりとりすることである.CLA 内で, 高次領域へ投射する神経細胞あるいは感覚皮質領域 へ投射する神経細胞が何らかのインタラクションを すれば,①高次領域 → CLA → 感覚皮質領域のト ップダウン経路,②感覚皮質領域 → CLA → 高次 領域のボトムアップ経路の二つの情報伝達を実現す ることが可能である.CLA の内部接続は,CLA は前 後軸に広範囲の内在的な接続性を持つことが確認さ れている[4].また皮質領域へ投射する CLA 内の神 経細胞は特定の領域に分布を示すのに対し,高次領 域に投射するCLA 神経細胞は,CLA 内の範囲全体 に分布している[7].CLA の広範囲にある高次領域か らの投射を受けた細胞が,皮質領域へ投射するCLA 神経細胞へ影響すれば,高次領域からの情報を感覚 皮質領域へ即時に送ることができるかもしれない. 図2 のように,CLA 内の興奮性神経細胞,抑制性神 経細胞が接続を持っている.しかし,この興奮性神 経細胞が,感覚皮質領域へ投射するものと高次領域 へ投射するもののどの組み合わせなのかは未だわか らない.CLA-ACC Neurons と Non CLA-ACC Neurons に,どのように接続関係があるか,CLA 内の細胞同 士の活動について,今後検討していく必要がある.

3.2 CLA のタイミング同期

注意機能についての CLA の重要な役割を考える 上で,タイミングの同期は重要な視点であり得る. CLA が様々な領域と接続を持つことの良さは,複数 の領域のうち任意の領域へ注意の制御をできること に加え,異なる領域から同時に刺激が起きたときの 検知や,複数の領域の同時制御を実行できるように 図3. 前障の注意の役割 高次領域を薄橙色,感覚皮質領域を青色,皮質下領域を紫色で表す.前頭前皮質(prefrontal cortex: PFC), 海馬(hippocampus: HPC),縫線核(dorsal raphe: DR),扁桃体(amygdala: AMG).([1] Figure2 より作成)

(6)

する可能性があることである.単一のイベントに対 して複数の感覚刺激があったときに,それが単一の イベントだと把握するには,全ての情報をひととこ ろに集められる方が都合が良いだろう.制御の場合 も同様である.CLA の生理学的特徴として,自然発 火率は非常に低く,覚醒した状態では突然の感覚刺 激が提示された後にのみ活性化される[2].CLA のフ ィードフォワード抑制は,タイミングの同期を行う ために効率的であることが示されている[4].また CLA の解剖学的特徴,非層構造と細胞数から,CLA と高次領域間の接続は,高次領域同士の直接的な接 続で行うような複雑な情報処理はおそらく実行でき ない.CLA における多感覚情報の統合とは文字通り 情報を統合するのではなく,単に複数の情報を同時 に監視することであり,同期タイミングやどの領域 が重要かの注意選択を行うことが CLA の本質的な 役割であると考えるのが自然である.

4 おわりに

本稿では,注意機能を担うCLA について,解剖学 的,機能的知見の調査を行なった.具体的には,神 経細胞の種類や接続などの解剖学的特徴,トップダ ウン的制御やサリエンシー検出などの機能的特徴に ついての知見を整理した.そして,トップダウン的 制御とサリエンシー検出の機能に必要な「①高次領 域 → CLA → 感覚皮質領域」のトップダウン経路, 「②感覚皮質領域 → CLA → 高次領域」のボトム アップ経路と,各領域の神経細胞の接続を解剖学的 知見から対応づけた.不足する情報の経路に対し, 取り得る情報伝達方法について検討した結果,共投 射あるいは CLA 内の神経細胞間接続の二つの可能 性が挙げられた.しかしながら,経路を確定するた めには,CLA 内の神経細胞がどのようにインタラク ションしているか,CLA 内の局所回路における抑制 性神経細胞の電気的接続関係,CLA 内の神経細胞の 電気生理学的特性の型による役割の違いなど,より 詳細な神経科学的知見が必要である.今後,注意制 御を担う CLA の詳細な情報処理について明らかに するため,さらなる検証を進めたい.

参考文献

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参照

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