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日本の労働市場の現状把握

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Academic year: 2021

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(1)

日本の労働市場の現状把握

著者

北條 雅一

雑誌名

国際学研究

6

3

ページ

63-73

発行年

2017-03-30

URL

http://hdl.handle.net/10236/00025641

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は じ め に

2012年 12 月に発足した第 2 次安倍晋 三 内 閣 は、デフレからの脱却と富の拡大を目的として、 大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を 喚起する成長戦略、を 3 本の矢と称する経済政策 を推進した。その後 2015 年 9 月には、希望を生 み出す強い経済(名目 GDP 600 兆円)、夢を紡ぐ 子育て支援(合計特殊出生率 1.8 の回復)、安心 につながる社会保障(介護離職ゼロ)からなる新 たな 3 本の矢を発表し、第 2 次安倍政権の経済政 策は第 2 ステージに移ったとされる。「一億総活 躍社会」というスローガンが掲げられたのもこの ときである。 日本の労働市場の現状を見ると、直近 2016 年 11月の完全失業率は 3.1%、完全失業者数は 205 万人であり、これは 1990 年代半ば頃以来、約 20 年ぶりの低い数値となっている。また、有効求人 倍率(新規学卒者を除きパートを含む)は 2013 年 11 月に 1 を超えて以降上昇を続け、直近では 1.41と 90 年代初頭以来の高水準となっており、 低下する気配は見られない。三大都市圏のアルバ イト・パートの平均時給は初めて 1000 円を超え た(リクルートジョブズ「アルバイト・パート募 集時平均時給調査」、2016 年 11 月度)。筆者が居 住する地方県庁所在地の都市でも、従業員不足を 理由に黒字店舗を閉鎖する飲食チェーン店が話題 となるなど、人手不足感は全国的に蔓延している ようである。これらから判断する限り、労働市場 は近年になく堅調であり、完全雇用を実現してい る状態に近いということになる。労働経済学的に は、現在の労働市場には何も問題はなく、むしろ

北條 雅一

Recent Issues in the Japanese Labor Market

Masakazu HOJO 要旨:本稿は、主に 2000 年代以降の公的統計を活用して、日本の労働市場の近年の傾向 を把握することを目的とする。いくつかの代表的な労働市場統計は、1990 年代以来の良 好なパフォーマンスを示している。国際比較によれば、日本の労働生産性は堅調に成長し てきたが、それが賃金の上昇に反映されにくくなっており、日本の労働市場の停滞感の一 因となっていることを指摘する。 Abstract :

Using several government statistics, this paper aims to assess the current status of the Japanese labor market. The unemployment rate makes it the lowest level since mid-1990s, while the jobs-to-applicants ratio makes it the highest level since the early 1990s. Labor productivity has grown steadily since 2000, however, this growth has not contributed to the wage growth. Rapid increase in the number of low-wage workers overshadows the future of the Japanese labor market.

キーワード:賃金、労働生産性、労働市場

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新潟大学人文社会・教育科学系准教授

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何が問題なのかよくわからない、というのが率直 な現状認識であろう。 しかしながら、上述のような労働市場の指標が 示す現状は、家計や企業の実感とはかけ離れてい るように見える。企業収益は改善しているが、賃 金の上昇スピードは遅い。非正規雇用は拡大を続 け、今や雇用者のほぼ 4 割を占めている。過労死 ・過労自殺などの原因となる長時間労働の問題 や、ブラック企業・ブラックバイトの問題も後を 絶たない。一億総活躍社会といいながら、都市部 の保育所不足は未だ解消しておらず、出生率の回 復も足踏みを続けている。認可保育園の抽選に落 ちた怒りを痛烈に表現したインターネット上の投 稿文章が 2016 年の流行語に選出されたことは、 多くの読者の記憶に新しいところであろう。 以上をまとめると、労働市場を分析対象とする 研究者の実感として、労働市場統計の数値は市場 の堅調さを示してはいるものの、それらを素直に 受け入れることができず、釈然としない印象をぬ ぐえない、ということになろうか。本稿では、公 的統計の数値に基づきながら、現在の労働市場に 漂うこうした空気の背景を探っていく。厳密な統 計分析にはよらず、散在する統計指標をつなぎ合 わせる手法を採用する。それぞれの公的統計の数 値それ自体は決して目新しいものではない。しか しながら、膨大な種類と量が溢れている公的統計 の中から、関連するものを抽出して組み合わせる ことで見えてくるものがあることを期待したい。 本稿の構成は以下のとおりである。第 2 節で は、日本の人口構造および労働市場の就業構造の 推移を確認する。第 3 節では、労働生産性の国際 比較を通じて、日本の労働生産性が主要先進国の 中で見れば比較的堅調に成長してきたこと、その 一方でその成長が賃金に反映されてこなかったこ とを示す。第 4 節はまとめである。

1.労働需給の現状

まず、日本の人口構造の推移を確認しておこう (図 1)。少子化に歯止めがかかる兆しが見られな いこと は 周 知 の 通 り で あ り、日 本 の 総 人 口 は 2007年を境に減少に転じた。しかしながら、生 産年齢人口(15 歳から 64 歳)は 1995 年からす でに減少局面に入っている。ピークである 1995 年の生産年齢人口は 8726 万人であったが、2015 年には 7728 万人となっており、この 20 年間でほ ぼ 1000 万人減少している。生産年齢人口の大幅 な減少が、日本の就業構造に大きな影響を及ぼし ていることに疑いの余地はない。 図 1 日本の人口構造 出所:総務省統計局『人口推計』 ― 64 ―

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続いて、日本の就業構造の動向を確認しておこ う(図 2)。2015 年の日本の就業者数は 6376 万人 であり、内訳は雇用者(役員を含む)5640 万人、 自営業主 543 万人、家族従業者 162 万人となって いる。1985 年の数値と比較すると、就業者全体 では約 570 万人の増加となっているが、雇用者 (役員を含む)が約 1320 万人増加している一方 で、自営業主は 373 万人、家族従業者は 397 万人 の減少となっている。全就業者に占める自営業主 (家族従業者含む)の割合は、1985 年の 25.4% か ら 2015 年には 11.1% に低下している。日本の労 働市場の量的拡大の背景には、女性や高齢者など 新たな働き手の増加だけでなく、自営業部門から 雇用労働者への移動の影響も大きかったものと考 えられる。 次に、非正規労働者の増大について確認する 図 2 日本の就業構造 出所:総務省統計局『労働力調査』 図 3 正規・非正規労働者数の推移 出所:総務省統計局『労働力調査』 ― 65 ―

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(図 3)。2015 年の雇用者(役員を除く)5284 万 人のうち、いわゆる非正規労働者(非正規の職員 ・従業員)は約 1980 万人となっており、雇用者 (役員を除く)の 37.5% を占めるに至っている。 1985年には 655 万人(雇用者の 16.4%)に過ぎ なかった非正規労働者は、この 30 年間に約 3 倍 の人数となった。一方で、正規雇用者(正規の職 員・従業員)は 90 年代半ばを境に減少傾向とな っており、直近では 1985 年と同水準まで減少し ている。日本の労働市場の量的拡大は、主に非正 規雇用者の急速な増大によってもたらされてきた と言えよう。 続いて、完全失業率と有効求人倍率の動向を確 認する(図 4)。完全失業率(左軸)は、90 年代 を通じて上昇を続け、2001 年に初めて 5% を超 えたのち、2002 年に過去最高の 5.4% を記録し た。その後は一時 3% 台に低下したが、2009 年 から 10 年にかけて再び 5% 台まで上昇した。近 年は急速な低下傾向にあり、直近の公表値(2016 年 11 月)では 3.1% と約 20 年ぶりの低い水準に ある(総務省統計局『労働力調査』)。一方、有効 求人倍率(右軸)には完全失業率と逆の動きが見 られる。直近の公表値は 1.41 となっており、こ れは 90 年代初頭の時期に匹敵する高水準である (厚生労働省『一般職業紹介状況』)。日本の労働 市場が人手不足の状況にあることは間違いないと いえよう。 以上、日本の労働市場の推移を概観してきた。 近年の労働市場統計は、数十年来の市場の堅調さ を示しているが、その主たる要因は生産年齢人口 の大幅な減少にある と 考 え ら れ る。20 年 間 で 1000万人もの生産年齢人口の減少は、同時期に 若年層の進学率が上昇したこととも相まって、労 働供給量の大幅な減少をもたらしてきた。欧米な ど先進諸国では、海外からの移民を受け入れるこ とで労働力の減少を補ってきた側面がある。移民 の受け入れを推進してこなかった日本では、不足 する労働供給の一部を自営業部門から雇用者への 移動によって補ってきたと考えられるが、近年で はその自営業部門からの移動による労働供給にも 陰りが見え始め、雇用労働市場は数十年来の需給 ひっ迫の状況にある。同時に、雇用労働の部門で は、正規よりも非正規の職員・従業員のシェアが 拡大しており、正社員である夫の妻や学生といっ た、かつての典型的な非正規労働者像とは異なる タイプの非正規労働者、すなわち、家計の主たる 稼ぎを担うタイプの非正規労働者が徐々に増加し ていることが推測される。 図 4 完全失業率と有効求人倍率の推移 出所:総務省統計局『労働力調査』、厚生労働省『一般職業紹介状況』 ― 66 ―

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2.労働生産性と賃金

2016年末に公益財団法人日本生産性本部が公 表した『労働生産性の国際比較 2016 年版』の報 告書(日本生産性本部、2016)は、大きな社会的 関心を集めた。同報告書によれば、2015 年の日 本の国民 1 人当たり GDP(PPP 換算)は 37,372 ド ル、OECD 加 盟 35 カ 国 中 18 位 で あ り、こ れ は米国の約 3 分の 2 の水準となっている。日本の 国民 1 人当たり GDP は 1990 年代初めに OECD 加盟国中 6 位まで上昇したが、その後は順位を落 とし、2000 年代以降は 17∼20 位程度で推移して いる。 同報告書では、こうした停滞の大きな要因とし て、日本の労働生産性が国際的にみて低いことが 挙げられている。同報告書によると、就業者 1 人 図 5 就業 1 時間当たり労働生産性の国際比較 出所:日本生産性本部(2016) ― 67 ―

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当たり GDP(PPP 換算)で測った 2015 年の日本 の 労 働 生 産 性 は 74,315 ド ル で あ り、こ れ は OECD加盟 35 カ国中の 22 位、米国(121,187 ド ル)の 6 割強の水準である。また、就業 1 時間当 たりの労働生産性は 42.1 ドルで、これは OECD 加盟 35 カ国中 20 位となっている(図 5)1)。2016 年 6 月に発表された安倍政権の「日本再興戦略 2016」においても、名目 GDP 600 兆円を実現す る上で鍵となる施策の一つとして「生産性革命」 が掲げられている。また、地方経済の活性化に向 けて特にサービス産業の生産性向上が不可欠であ るとしている。生産性の低迷が日本経済停滞の大 きな要因となっているという認識は、国民に広く 共有されているといってよいだろう。 一国の経済成長は、労働や資本などの投入量の 増加と、それらの効率的な利用(生産性の成長) によって達成されると考えられる。工業化による 経済発展のプロセスを考えると、工業化の段階で は、生産性成長率の高い製造業のシェアが大きい ため国全体の生産性成長率も高くなるが、脱工業 化の段階に入ると、生産性成長率の低いサービス 産業のシェアが拡大するため、国全体の生産性成 長率も低下する。これは「ボーモル病」と呼ば れ、経済成長のプロセスにおいて一般的に観察さ れる現象であることが知られている(Baumol、 1967;高阪、2016)。 上述の通り、日本の労働生産性水準が、就業者 1人当たりでみても、就業 1 時間当たりでみて も、主要先進国中で下位にあることは確かであ る。しかしながら、労働生産性の成長率に着目す る と 見 え 方 は 大 き く 異 な っ て く る。図 6 は、 OECD主要 7 カ国における就業 1 時間当たり労 働生産性の年平均成長率(2000 年から 2015 年、 データの出所は OECD.Stat)を示したものであ る。この図が示すように、日本の就業 1 時間当た り 労 働 生 産 性 は 米 国(1.49%)に 次 ぐ 成 長 率 (1.09%)を示している。日本の労働生産性につ いて語られるとき、その水準の低さが悲観される ことも少なくない。しかしながら、少なくとも 2000年以降については、米国に次ぐペースで堅 実に成長していたことは事実として認識されるべ きであろう。 ──────────────────────────────────────────── 1)これらの数値は旧国民経済計算体系(93 SNA)に基づくものである。新体系(2008 SNA)に基づく試算では、 2015年の日本の労働生産性(就業者 1 人当たり GDP)は 78,997 ドル(OECD 加盟 35 カ国中 22 位)、就業 1 時間当たり労働生産性は 44.8 ドル(同 19 位)となっている。 図 6 労働生産性の年平均成長率(2000→2015 年)

出所:OECD. Stat, USD, consant prices, 2010 PPPs

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2000年以降の労働生産性成長が着実に進んで いたとすれば、その成長は労働者に支払われる賃 金に反映されているはずである。図 7 と図 8 は、 それぞれ“Labour compensation per hour worked”

と“Unit labour costs”の推移を日本と米国につい て 示 し た も の で あ る(デ ー タ の 出 所 は OECD. Stat)2)。労働者に支払われる賃金は生産性の成長

にもかかわらず停滞を続けており(図 7)、 結果

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2)OECD による定義は、それぞれ次のとおりである。Labour compensation per hour worked is defined as compensa-tion of employees in nacompensa-tional currency divided by total hours worked by employees. Compensacompensa-tion of employees is the sum of gross wages and salaries and employers’ social security contributions. This indicator is measured in terms of annual growth rates and indices. Unit labour costs are often viewed as a broad measure of(international)price ↗

図 7 Labour compensation per hour worked の日米比較

出所:OECD. Stat

図 8 Unit labour costs の日米比較

出所:OECD. Stat

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として日本の単位労働コストは低下し続けている (図 8)。同時期の米国とは対照的な動きとなって いることが明らかである。言い換えれば、日本の 企業は生産性の上昇を賃金に反映してこなかった ということであり、このことが、現在の日本の労 働市場に漂う停滞感の要因の一つであることは想 像に難くない。 日本企業は 2000 年以降堅調な労働生産性成長 ────────────────────────────────────────────

↘ competitiveness. They are defined as the average cost of labour per unit of output produced. They can be expressed as the ratio of total labour compensation per hour worked to output per hour worked(labour productivity). This indica-tor is measured in percentage changes and indices.

図 9 経常利益および人件費の推移

出所:財務省『法人企業統計』

図 10 給与所得者数と給与総額

出所:国税庁『民間給与実態統計調査』

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を達成していたにも関わらず、その成果を労働者 に還元してこなかったといえる。その帰結とし て、日本企業が過去最高の企業収益を達成したこ とはいわば当然であり、それがアベノミクスの成 果として大々的に強調されていることは周知の通 りであろう。図 9 は、金融・保険業を除く全産業 について、経常利益および人件費(役員給与、役 員賞与、従業員給与、従業員賞与、福利厚生費の 合計)の推移を示したものである(データの出所 は 財 務 省『法 人 企 業 統 計』、10 年 移 動 平 均)。 2000年代初頭以降、企業収益が急速な回復を続 ける一方で、企業が従業員に支払う人件費の総額 は 2000 年前後をピークに停滞している。 図 11 平均給与額の推移 出所:国税庁『民間給与実態統計調査』 図 12 平均給与額(2000 年=100)の男女別推移 出所:国税庁『民間給与実態統計調査』 ― 71 ―

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おわりに:一億総活躍社会の憂鬱

最後に、現在の安倍政権が掲げる「一億総活躍 社会」の未来について考えよう。図 10 は、給与 所得者数と給与総額の推移を示したものである (データの出所は国税庁『民間給与実態統計調 査』)。給与所得者数は一貫して増加傾向にある が、給与総額については、近年は増加傾向が確認 されるものの、依然として 1998 年のピークを下 回ったまま推移している。生産性の向上が労働者 の賃金に反映されにくくなっている状況は、前節 で確認したものと同様である。このように、給与 所得者が増加する中で給与総額が停滞しているこ との帰結として、給与所得者 1 人当たり平均給与 額は伸び悩んでいる(図 11)。この推移を男女別 にみたものが図 12 であるが、女性に比べて男性 給与所得者の平均給与の減少率が大きくなってい ることが確認される。男性の給与所得が減少し、 もともと男性に比べて給与額の低い女性雇用労働 者が増えていることは、全体として給与所得額が 低い労働者が増加していることを意味するが、実 際に男性では年収 400 万円以下の、女性では年収 200万円以下の低賃金労働者が増加していること が確認される(図 13)。 本稿では、主に 2000 年代以降の公的統計の数 値を確認しながら、日本の労働市場の現状把握を 試みてきた。目下、完全失業率や有効求人倍率な どの労働市場統計の数値は、1990 年代初頭以来 の良好なパフォーマンスを示し続けている。この ような状況が続く場合、通常であれば賃金の上昇 が観察されるはずであるが、前節で確認した通 り、労働者に支払われる賃金・人件費は 2000 年 代を通じて停滞している。その一方で労働生産性 は堅調に成長していたため、結果として企業は過 去最高の企業収益を達成するに至っている。失業 率の低下や有効求人倍率の上昇、過去最高の企業 収益とは裏腹に、年収 200 万から 400 万円以下の 低賃金労働者が増加しているのである。 今後も日本の人口が減少を続け、現在の労働力 率(労働可能人口に占める労働力人口の比率)の ままでは労働力が不足することはほぼ確実であ る。その意味で、幅広い層の人々が労働市場に参 加することが可能となるよう制度を整えることは 不可欠である。しかしながら、現状以上に労働力 率を高めることに成功したとしても、それが低賃 金労働者の増加という形で実現されるのであれ ば、それはおそらく多くの国民が望む姿ではない であろう。一家総出で働かなければ生計を維持で 図 13 階級別給与所得者数の増減(2000→2015 年) 出所:国税庁『民間給与実態統計調査』 ― 72 ―

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きないような家計は、決して裕福な家計とは言え ない。一億総活躍という言葉が想定する社会とは どのような労働社会なのか、改めて問い直さなけ ればならない時期に来ている。

参考文献

Baumol, W. J. 1967.“Macroeconomics of Unbalanced Growth : The Anatomy of Urban Crisis,”American

Economic Review, 57(3),415-426. 高阪章、2016、「発展と格差と:−「セカンド・マシン ・エイジ」の意味するもの−」、『国際学研究』、関 西学院大学国際学部、第 5 巻、第 1 号、55-73. 日本生産性本部、2016、『労働生産性の国際比較 2016 年版』報告書 リクルートジョブズ、2016、「アルバイト・パート募集 時平均時給調査」、2016 年 11 月度.http : //www.re-cruitjobs.co.jp/info/pr 20161220_417.html(2017 年 1 月 6 日確認) ― 73 ―

図 7 Labour compensation per hour worked の日米比較
図 9 経常利益および人件費の推移

参照

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