Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Association between the peri-implant bone structure
and stress distribution around the mandibular canal
: A three-dimensional finite element analysis
Author(s)
木下, 英明
Journal
歯科学報, 114(1): 74-75
URL
http://hdl.handle.net/10130/3250
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 歯科用インプラントは顎骨と結合しているため,天然歯とは異なり荷重は直接周囲骨に伝達される。インプ ラントの成否は,力学的要因に大きく依存しており荷重条件がオッセオインテグレーションの獲得と長期維持 に最も重要であるという報告もある。インプラントに関する生体力学的な研究として,三次元有限要素法を用 いた解析が行われている。近年では,マイクロ CT システムにより再構築された骨梁構造に有限要素(FE)モ デルを適応し,微小領域における応力分布を評価することが可能となった。しかし未だインプラント周囲の骨 梁構造が,下顎管などの他の構造物に与える影響について詳細に分析した報告はみられない。そこで本研究で は,骨梁構造を忠実に再現した FE モデルを作製し,インプラント埋入部位の骨構造と下顎管周囲の応力分布 との関連性を三次元有限要素解析により明らかにすることを目的とした。 2.研 究 方 法 試料は,東京歯科大学解剖学講座および東京慈恵会医科大学解剖学講座所蔵の日本人乾燥頭蓋骨24体48側の 無歯顎の下顎骨を用いた。これらの試料をマイクロ CT(HMX Actis4,TESCO)で撮影した後,得られたス ライスデータを用いて TRI/3D-BON(Ratoc System Engineering)および Dentist Vision(Cybernet systems) にて BV/TV および皮質骨厚径の計測を行った。計測結果を元に,骨梁構造と皮質骨厚径の異なる4つの FE モデルを VOXELCON(Quint Co.)を用いて作製した。オトガイ孔から遠心の20mm を関心領域とし第一大臼 歯部への直径4.1mm のインプラント埋入を想定した。全ての FE モデルでインプラント先端から下顎管まで の距離がそれぞれ1,2,3,4mm となるように設計した。下顎骨の近遠心両断面を完全拘束した後,イン プラント体の上面に垂直方向へ100N の荷重を加えた。そして三次元有限要素法を用いて骨梁の主応力ベクト ルを可視化することで,荷重伝達経路の解析と Von Mises 相当応力の平均値の測定を行った。 3.研究成績および結論 力学解析の結果,全ての FE モデルにおいて荷重は骨梁構造を介して下顎管に達していた。一方,下顎管周 囲に発生した応力は,下顎管からインプラントまでの距離が短い場合において大きな値を示した。また,皮質 骨厚径と BV/TV の値がともに小さい場合に最も大きな応力値を示した。以上のことから,皮質骨が十分量存 氏 名(本 籍) きの した ひで あき
木
下
英
明
(東京都) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1945 号(甲第1191号) 学 位 授 与 の 日 付 平成24年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Association between the peri-implant bone structure and stress distribution around the mandibular canal : A three-dimensional finite element analysis
掲 載 雑 誌 名 Dental Materials Journal 第32巻 4号 637−642頁 2013年8月
論 文 審 査 委 員 (主査) 阿部 伸一教授 (副査) 栁澤 孝彰教授 小田 豊教授 矢島 安朝教授 片田 英憲講師 歯科学報 Vol.114,No.1(2014) 74 ― 74 ―
在する顎骨においては皮質骨が主たる生体力学的役割を担い,海綿骨は補助的な荷重伝達経路となるが,皮質 骨が薄い場合には海綿骨が生体力学的役割を発揮し,周囲皮質骨に応力を分散することが示唆された。しかし ながら皮質骨が薄く,なおかつ海綿骨も十分に存在しない顎骨においては,顎骨内部における応力値が高値を 示し,下顎管内部に及ぼす影響が高くなり,不快感などの臨床症状をきたす可能性が高くなると考えられる。 そのため臨床時の術前診査において,皮質骨厚径と骨梁構造を確認し両方に低値が認められた場合は,特に神 経損傷のリスクが高い症例として細心の注意を払った治療計画を立てることが重要であると考えられる。 論 文 審 査 の 要 旨 これまでもインプラントの生体力学的な研究として三次元有限要素法を用いた研究は数多くされてきたが, そのほとんどが海綿骨を一塊のブロックとして簡略化されたモデルが用いらいた。しかし,インプラントを介 して加わるメカニカルストレスが顎骨の骨梁構造に与える影響を調べるためには,インプラント周囲骨梁の構 造解析を行う必要がある。本論文は,骨梁構造を忠実に再現した三次元有限要素モデルを用いて,インプラン ト埋入部位の骨構造と下顎管周囲の応力分布との関連性について三次元有限要素解析を行うことで,皮質骨が 薄く海綿骨が粗造な骨では下顎管周囲に負担過重が生じる可能性があることを報告したものである。 本審査委員会は,平成23年12月27日に行われ,まず木下英明大学院生から論文内容の説明がなされた。その 後,各審査委員より次のような質問がなされた。 1)試料の背景について,2)下顎管に着目した理由,3)オトガイ孔から20mm を関心領域に設定した理 由,4)荷重条件に関して,5)インプラント体に加えた荷重に対する下顎管周囲の単位面積あたりの割合な どの質疑が行われたが,概ね妥当な回答が得られた。その他,結論の明確化,不適切な表現,用語の統一,付 図およびその説明の補足など修正すべき点が指摘され,訂正が行われた。 その結果,本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値す るものと判定した。 歯科学報 Vol.114,No.1(2014) 75 ― 75 ―