<原著>摂食・嚥下しやすい米飯調製の試み
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(2) とした米飯を採用した .次に
(3) 種の加水量で米飯を調製し ,これらの米 飯の物性を川崎医大附属病院栄養部で提供している軟飯と比較したところ,加水倍率 倍と 倍 の米飯は軟飯と同等の物性を示した.これらの試料について本学臨床栄養学科の学生名をパネラー として咀嚼回数と飲み込み易さの嗜好調査を実施した結果,もち米を 添加し ,加水倍率を ∼ 倍とした米飯が軟飯よりも咀嚼・嚥下し易い米飯であると評価された . もち米の配合割合の異なる 種の米飯を調製し ,これらの硬さ,脆さ,咀嚼性の物性を測定した結果. から ,もち米添加割合を. が望まれる.そこで ,粘弾性の高いもち米をうるち. はじめに. 米に添加した米飯の調製方法を,もち米の添加割合. 米飯は ,日本人の主食として欠かせない食べ物で. と加水量から検討し ,それらの物性と健常者の咀嚼. あり, 通常うるち米を用いて炊飯される.健常者に. 回数と飲み込み易さから各調製米飯を検討した.こ. とっては ,咀嚼によって程良い粘りの増加で嚥下し. こに ,もち米の添加割合と加水量からこれまでに提. 易い大きさの食塊を形成するため問題とはならない. 供している軟飯より適した米飯の調製が可能であっ. が ,摂食・嚥下機能の低下した患者にとって食べ易. たので報告する.. い食品,飲み込み易い食品の条件としては ,密度が. 試料および実験方法. 均一であること ,適当な粘度があってバラバラにな. .試料. りにくいこと ,咽頭を通過する時に変形しやすいこ と ,べたついていないこと等が挙げられている . 更に ,摂食・嚥下機能の低下した患者には. 川崎医科大学附属病院栄養部で使用している無洗.
(4) 段階で. 米( 岡山県産あけぼの. 示された食行為のうち咀嚼期,口腔期,咽頭期に咀. 秋田小町 )ともち米 年産と年産を用. ( もち精米,岡山県産)の. 嚼運動不全で食塊形成され難いなどの障害が認めら. いた .無洗米は ,玄米を精白米に精製する際に糠層. れることが多い.特に米飯の咀嚼が不充分であれば. まで除去し炊飯時に洗米を不要とするため ,もち米. 食塊を充分形成しないために ,米粒が咀嚼運動中に. のみ洗米し炊飯に用いた.. 咽頭中に落下して誤嚥に繋がる危険性が高いことが. .実験器具. (レオテック株)を,米飯調製には炊飯器 . 指摘されており ,現在川崎医科大学附属病院栄養. 米飯の物性測定には ,レオメーター. 部では,軽度の摂食・嚥下障害者用の米飯として,う. 倍の水を加えて. ( 東芝)を用いた .. るち米に通常の加水量に対して約. .実験方法 実験 うるち米ともち米の配合割合の確定. 炊飯した軟飯( 粥から米飯への移行期に ,また患者 の嗜好に合わせて提供している米飯)を提供してい る.しかし ,より多くの摂食・嚥下障害者が摂食可. まず ,うるち米ともち米の適度な配合割合を確定. から
(5) の配合割合で米飯を調製. 能で ,適度の食塊を形成し易い米飯を提供すること. するため,表 の. 川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床栄養学科 倉敷市松島 川崎医療福祉大学 (連絡先)三宅妙子 〒 . .
(6) . 三宅妙子・河原和枝 表. うるち米ともち米の割合と加水量. 米 に用いる 加水量 と加水倍率 (コントロール ) 倍
(7) .
(8)
(9) 倍. . 倍
(10). .
(11) 倍 ( ) ― 倍.
(12) . 倍. 同 上 同 上 倍 同 上 同 上 倍 同 上
(13) 同 上
(14) 倍 同 上 . 同 上 .
(15) 倍 ( 軟 飯) ( ) ―
(16)
(17) 倍 注 うるち米ともち米の加水率は 通常米重量に対してそれぞれ 倍と 倍 ( )は うるち米ともち米の比率を示す 川崎医科大学付属病院栄養部で提供している普通の硬さの米飯 同様に栄養部で提供している軟飯. . £ ££. . £. うるち米 重量 . 加水倍率 倍. もち米 重量 加水倍率 ( ) ―. 倍. ££. 図. レオメーターによる『咀嚼試験法』の概要. した.炊飯方法は,もち米のみ洗米し ,うるち米とブ. なるように軽く押さえたものを用いた.測定は保温. レンドした後定められた加水量に. 完了後,そのまま炊飯器内で. 飯器で. 分間浸漬後,炊. 分間加熱した.米飯の物性測定はレオメー. ターを用い,予備実験の結果から測定方法は『咀嚼 試験法』を採用して硬さ,脆さ,咀嚼性を測定した.. . 分放置(以後,調製 後分と称す)したものを測定試料とし , 試料の 炊飯につき サンプル採取し ,これを 回繰り返し て計サンプルの物性を測定し ,平均と標準偏差を. 図 に『咀嚼試験法』から求められる各測定値の算. 求めた .測定条件は川端らの文献
(18) を参考にして,. 出法を示す.試料は ,小型シャーレ( 内径. レンジ. × )に小さじ 約 杯を入れ ,表面が平らに. 高さ. ,テスト速度 ,スイープ速度 ,アダプター( ,直径 ),検出.
(19) . 摂食・嚥下しやすい米飯調製の試み 器. ,クリアランス
(20) とした.. 実験 うるち米もち米の配合割合で の加水量の確定.
(21) ± と な り ,配 合す るも ち 米の 割 合 が 増えるに従い硬くなった .脆さは物質破砕に要 する力で ,硬さと咀嚼性に関係し 数値が 高いほど. した.栄養部で提供している 軟飯も対照試料とし.
(22) ±
(23) , は ± , は ±
(24) , は
(25) ± ,
(26) は±
(27) となり,配. て同様に調製した .なお炊飯方法と物性測定条件は. 合するもち米の割合が増えるに従い脆くなった .咀. 実験 と同様とした.. 嚼性は固形食品を嚥下できるまで崩すのに 要する. . もち米 と の配合割合を採用し ,加水量は表 の ∼ 実験 の 結果に 基づいて ,うるち米. . . 嗜好調査. , の 種 実験 の結果に基づいて表 の ,. 類の米飯を調製し ,機器による物性測定では測定し 難い飲み込みやすさと飲み込むまでの咀嚼回数を , 川崎医療福祉大学臨床栄養学科学生. 人をパネラー. に嗜好調査を実施した .米飯は物性測定時と同様に 調製後. 分のものを,表 に示したアンケート用紙. を添付して用いた .. 脆 い こ と を 表 す . の 脆 さは. エネルギ ー量で ,低値を示すほど 咀嚼し 易いこと を表し ,硬さ,凝集性(形態を構成する内部的結合. 嚼性は ±
(28) , は±
(29) , は ±
(30) , は± ,
(31) は ± で. に要する力を示す),弾力性に関係する . の咀. あった . 以上の結果から ,もち米の配合割合を増加させる と硬く,脆くなり,摂食・嚥下に適さなくなることが 分かった.しかし ,硬さ,脆さの項目で. 実験結果および考察. に有意差はなく,もち米の粘りを有効利用するには. の割合が適当と考え,さらに検討することとした.. うるち米ともち米の配合割合の決定 川崎医科大学附属病院栄養部では ,米飯の炊き. 分を . 上がりから患者が 摂取するまでの時間は約. 要することから ,米飯の物性測定時期を調製後. 分とした .図 に米飯試料 から
(32) の硬さ,脆さ, 咀嚼性を示し た .硬さは物質を変形させるのに要 ( コント ロ−ル )は 栄 する力を表し ており , 養部で 提供されている普通の硬さの米飯である . の硬さは± , は
(33) ± , は± , は
(34) ± ,
(35) は . 表. と の間. 実験 うるち米もち米の配合割合での 加水量の決定. の 割 の 調 ∼ 合に 対し て 加 水 量を 変 化させ た 試 料 製 後分の 硬 さ ,脆 さ ,咀 嚼 性 を 示し た .硬 さ は , は
(36) ± , は
(37) ± , は ±
(38) , は
(39) ± , は ± と な り , は ± ,. . 図 に ,実 験 の 結 果 に 基 づ き , と. 加 水 量 が 増 え る に 従 い 軟 ら か く な っ た .脆 さ. ご飯の咀嚼・嚥下に関するアンケート.
(40) . 三宅妙子・河原和枝. 図. 図. . うるち米ともち米の配合割合の違いによる米飯の物性. うるち米 ,もち米での加水量の違いによる米飯の物性. ± , は ± , は
(41) ± , は
(42) ± , は は
(43) ± となり,加水 ±
(44) , 量が増えるに従い脆さは 低下し た .咀嚼性は , は ±
(45) , は±
(46) , は ± は , は. は
(47) , は ± , は± , ± となり,加水量が増えるに従い低値を. 示した . 以上の結果から ,加水量を増加させることによっ て柔らかくなり,脆さも低下し ,咀嚼性が向上する.
(48) . 摂食・嚥下しやすい米飯調製の試み. , , は ,硬さと脆. . 口分. ことが分かった.なかでも. を実施した .この調査は ,問 ではスプーン. さが. を口に含んで飲み込むまでに何回噛んだかについて,. 前後まで低下すると共に,咀嚼性も. 程度まで低下し咀嚼し易い状態を示した .. ; ; 加水量はうるち米重量の倍)と軟飯(表 の 加水量は うるち米重量の倍)の 種の米飯を患 次に ,栄養部では普通の硬さの米飯( 表 の. , , の米飯と比較した .図 にこれら の軟飯は , の硬さ ,脆さ ,咀嚼性を示した .まず 者に提供し ていることから , の軟飯を対照試料. として. 硬さ ±
(49) ,脆さ±
(50) ,咀嚼性 ± を示した.次にこれら 種の米飯を比 の軟飯とほぼ同様の物性を示した 較すると , は , の 種について検討するこ ので ,以後は ,. . 問 では残り一口分を口に含んで一番飲み込みやす. かった米飯はどれかについて質問した.表 にこれ らの結果を示した .. ±回, は ± 回, はほぼ等しく,対照 は ± 回となり, と 問 では, は. . 試料とした軟飯試料 を飲み込むまで噛んだ回数に.
(51) の危険率で有意に低値を示した.問 の 一番飲み込みやすかった米飯の選択では , は は 人, は 人となり, が対照の 人, と に比べて
(52) の危険率で有意に飲み込みやすいとい 比べて. う結果を得た .. 程度を は , の軟飯に比べてやや低 示し ,なかでも と い傾向を示した .なお、 種の米飯で
(53) の危険率 の硬さについ で有意差が認められたものは、 と , てのみであった.以上の結果をもとに , ,. も ち米 の配合割合で加水率は米の重量の 倍か ら 倍で調製した米飯の方が咀嚼回数の減少と飲. を用いて嗜好調査を実施した .. み込み易さから ,摂食・嚥下機能低下の患者により. ととした.硬さは が最も柔らかく,脆さも が最 も低値を示したが ,咀嚼性ではいずれも. 嗜好調査結果. , ,. . 実験 の物性測定結果から ,米飯の試料. の 点の嗜好調査 および対照試料とした軟飯試料. 図. . 摂食・嚥下機能の低下した患者に提供する米飯に , 誤嚥を防止できるよう適当な軟らかさと粘りを付加 する今回の試みは ,川崎医科大学附属病院栄養部で 提供している軟飯と比較した場合,うるち米. 適した米飯として提供できる可能性が示唆された . 嗜好調査実施については ,本来ならば摂食・嚥下 機能の低下した患者を対象に試みるべきと考えるが ,. 各種配合割合の違いによる米飯の物性 注 と ½½ はうるち米 ,その他はうるち米 もち米.
(54) . 三宅妙子・河原和枝 表. 嗜好調査結果. 問 .飲み込むまでの噛んだ回数. . . . ± . ± . ±
(55) . 問 .咀嚼後の飲み込みやすさ(人). . . . . . . . . .
(56) . . (注)Aは米飯 を,Bは米飯 を,Cは米飯 を示す.
(57) . 誤嚥という危険性を伴うことから実施しにくい.そ. 本研究は ,平成年度プロジェクト研究テーマ〔病院に. のため ,今回は健常者を対象としたが ,ひとりの患. おける軟菜食のテクスチャーに関する研究〕の一部であり,. 者の協力により同様な結果が得られたことを書き添. 川崎医療福祉大学から助成を受けたことに深謝します.ま. えると共に ,今後摂食・嚥下機能の低下した患者に. た本研究に協力して頂いた川崎医科大学附属病院栄養部. おいし く,飲み込みやすい食事が提供できるよう更. 管理栄養士太田弘子氏と市川和子氏,ならびに学生片山 . に検討していく予定である.. 紅,神谷亜希,桑野利規子,横内美穂の各氏に御礼申し上 げます.. 文 献. )藤島一郎:口から食べる嚥下障害 .初版,中央法規出版,東京, , . )才藤栄一,田山二朗,藤島一郎,向井美惠:摂食・嚥下のメカニズム.金子芳洋,千野直一監修,摂食・嚥下リハビリ テーション ,初版,医歯薬出版,東京, , .. )川端晶子:高齢者用食品の規格と今後のシルバーフード 開発.食品と開発, ( ), , . )厚生省:厚生省高齢者用食品の表示許可の取り扱いについて厚生生活衛生局長通達 .平成 年 月 日衛新, ( ), . )森友彦,川端晶子:食品のテクスチャー評価の標準化.初版,光琳,東京, , . (平成年 月 日受理).
(58) . 摂食・嚥下しやすい米飯調製の試み.
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