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小学校教職科目「理科教育法」における一人1模擬授業の実践と評価

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Academic year: 2021

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(1)日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). 小学校教職科目「理科教育法」における一人 1 模擬授業の実践と評価 Practice and evaluation of individual mock lessons in elementary school teaching of Science Education Methodology 佐々木 弘記 SASAKI, Hironori 中国学園大学 Chugokugakuen University [要約] これまで小学校教職科目「理科教育法」では, 「反省的実践家としての教師」の力量形成を目 指して,小グループで模擬授業を行ってきた.ところが新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い, グループ活動による模擬授業の準備が憚られることから, 「一人1模擬授業」として,学生個々で学習 指導案の作成から教材研究,模擬授業まで行うこととした.一人 10 分間で小単元の導入部分を必ず示 範観察実験を伴って行うという条件で履修者 28 名が模擬授業を行い,20 項目からなる授業診断票を 用いて他者評価と自己評価を行った.各項目の平均値を比較すると,いずれの項目においても自己評 価の方が他者評価よりも低く,18 の項目について有意差が見られた. 「一人1模擬授業」にすることで, グループのメンバー間での協働的な活動ができず,学生が一人で準備・実践した模擬授業に自信が持 てなかったことが示唆された. [キーワード] 理科教育法,模擬授業,学習指導力,新型コロナウィルス 前後に器具を消毒するとともに,学生も器具に触る. 1.研究の目的 小学校教職科目「理科教育法」においては, 「反省. 前後で手洗いを行ったとしても,同じ器具を複数の. 的実践家としての教師」の力量形成を目指して,小. 学生が触りながら観察実験を行うのは気がかりであ. グループで模擬授業を行ってきた(佐々木,2017a).. る.そこで,学校教育において行われている個別実. 学生が反省的実践として行う模擬授業を相対化し,. 験「一人1実験」を導入することとした(佐々木,. リフレクションを促すためには自己評価や他者評価. 2020).. が鍵となる.他方,教師の反省的実践は,個人の実. 同様に,模擬授業についても,例年,履修者4~. 践に留まらず,協働的で組織的な実践として捉え直. 5人を1グループとして,模擬授業を計画,実践し. されており,教員養成の段階での教育実践に関わる. てきたが,協働での活動となると,どうしても学生. 協働的・組織的な活動としては,小グループでの模. 同士の距離は近くなりがちである.そこで,模擬授. 擬授業への取り組みがふさわしい.ここでいう模擬. 業においても,個々で学習指導案の作成から教材研. 授業とは,学生が教師として行う授業そのものだけ. 究,模擬授業まで行う「一人1模擬授業」を行うこ. でなく,学習指導案の作成から教材研究,模擬授業. ととした. したがって,本研究においては,新型コロナウィ. の実践までの一連の過程である. ところが,我が国では,2020 年初頭からの新型コ. ルス感染症の感染拡大防止という外的な要因により. ロナウィルス感染症の感染拡大に伴い,各大学にお. 「一人1模擬授業」を導入し,学生による自己評価. いては,オンライン授業の実施や学修課題の送付な. と他者評価を用いて,これまで行ってきた小グルー. ど様々な措置が行われた.本学では,緊急事態宣言. プによる模擬授業と比較し,検討することを目的と. の解除後は,対面での授業を再開したが,小グルー. する.. プでの協働的な模擬授業はもとより,小グループで の観察実験も憚られることとなった.小学校理科で. 2.先行研究. は観察実験が重要な位置を占めることから,授業の. 模擬授業についての検討は,教員養成課程を持つ. 中で,学生が観察実験を行うことは欠かせない.例. 大学の研究者を中心として数多くなされている.例. 年,履修者4~5人を1グループとして,各グルー. えば,国語科については,勘米良(2016),英語科に. プに観察実験の器具を用意し,協働での観察実験を. ついては,鈴木(2015)などがある.. 行ってきた.今回,感染症対策の下で,観察実験の. ― 1 ―. Sasaki(2016)は, 「理科指導法」の中で小グループ.

(2) 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). による模擬授業を実施し,学生が自分のグループで. わる教師役を務めていた.. 行った模擬授業に対する自己評価と,その模擬授業. 今回の模擬授業では,教師役の学生は,講義室の. を観察した他のグループの学生が行った他者評価と. 前方で授業を行い,それ以外の学生は着席して授業. を比較し,自己評価が他者評価より低くなったこと. を観察するとともに児童役を務める.各回の模擬授. を報告している.更に佐々木(2017b)は,模擬授業の. 業の前に模擬授業診断票が配付され,各模擬授業に. 工夫を行った結果,自己評価が他者評価と同等,あ. ついて授業者は自己評価をし,観察者は他者評価を. るいは自己評価の方がやや高くなったことから,学. 行う.学生が行った模擬授業の学年及び小単元名を. 生が自信を持てるようになったことを報告している.. 次の表1に示す.教科書は東京書籍の小学校理科教. 一方,新型コロナウィルス感染症感染拡大防止の. 科書「新しい理科」を用いた.. ために「一人1実験」を導入したところ,学生個々 表1. の観察実験の技能不足が露呈したことを報告してい る(佐々木,2021) .これまでは,小グループで観察. 模擬授業の小単元名. 学年. 小単元名. 人数. 実験を行うことにより,グループ内での学生相互の. こん虫のからだ. 1. 支援によって学生個々の観察実験の技能不足は補わ. 太陽のいちとかげの向き. 2. れ,顕在化しなかったためだと考えられる.本研究. 紙笛. 1. において「一人1模擬授業」を導入するが,「一人. 音の大きさ. 1. 物の重さ調べ. 2. 物の重さくらべ. 1. 電気を通す物と通さない物. 2. じしゃくにつく物. 4. 1実験」と同様な問題が発生することが危惧される.. 3. 3.教職科目「理科教育法」 3.1. 概要. じしゃくが鉄をひきつける力. 1. ・履修者:2年生 26 名,3年次生1名,4年次生1. 極のせいしつ. 1. 名. からだが動くしくみ. 1. ・期間:2020 年9月 14 日~2021 年1月 26 日. かん電池のつなぎ方. 1. タオルの重さ. 1. ・目標:小学校学習指導要領に示された理科の目標. 4. とじこめた空気. 1. 物が水にとける量. 1. 学習指導案を作成し,適切に授業を運営する能力を. 物が燃え続けるには. 1. 養う.. 月の形の見え方. 1. てこのはたらき. 1. 水溶液にとけている物. 1. 水溶液のなかま分け. 2. 水溶液のはたらき. 1. や内容を理解し,小学校理科で扱われる観察・実験 について指導する知識や技能を身に付けるとともに,. ・授業計画. 6. 回. 3.2. 5. 内容. 1・2. 理科の目標・内容. 3・4. 観察・実験. 5・6. 教材・教具. 7~9. 学習指導案の書き方. 10・11. 模擬授業の準備. 12~15. 一人1模擬授業4回. 一人1模擬授業. 授業の2回を使って学生個々で模擬授業の準備を, 更に,4回の授業を費やして模擬授業を行う.28 名 の履修者を各回に振り分け,1回当たり7人が模擬 授業を行い,一人の授業者の持ち時間は 10 分間とす る.模擬授業は小単元の導入部分の授業として,必 ず教師による示範観察実験を伴うことを条件とした. これまでの模擬授業では,履修者を5~6のグル ープに分け,1グループで 45 分間の授業を通して行 ない,メンバーである4~5人の学生が,代わる代. ― 2 ―. 写真1. 模擬授業の様子.

(3) 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). 3.3. 理科模擬授業診断票. 自己評価が全体的に低いことが分かるが,各項目の. これまでは 30 の質問項目からなる模擬授業診断. 平均値の差をt検定したところ,項目 14,19 以外は. 票を用いて評価してきた.今回は導入部分の 10 分間. 有意差が見られた.また,2016 年に小グループで模. に授業場面が限定されているので,評価できない項. 擬授業を行い,他者評価と自己評価を比較したグラ. 目を除外し,20 項目からなる模擬授業診断票に修正. フ(図2)と,今回の一人1模擬授業のグラフ(図. した(図1).診断票は,東京都教職員研修センター. 3)を示した.. (2005)の「授業力」診断シートを参考にしている. それぞれの項目について,5件法(5:当てはまる 4:だいたい当てはまる 2:あまり当てはまらない. 3:どちらとも言えない 1:当てはまらない). により回答を求める.. 4.調査結果の分析 4回の授業の中で 28 回の模擬授業が行われた.履 修者 28 人全員が模擬授業を行い,診断票に自己評 価を行った.その各項目の平均値を表2の自己評価 の平均(m)の列に示した.その合計は 64.36 であ った.一方,他者評価については,教師役以外の学 生が評価するので,(模擬授業数)28×(授業者以 外)27 の評価が集計されることになる.実際には, 模擬授業の回を1回欠席した学生が2名いたため, その分だけ他者評価は少ない.それらの他者評価の 各項目の平均を表2の他者評価の平均(m)の列に 示した.合計は 77.53 であった.合計を比較しても 表2 番号. 1 2 3 4 5. 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20. 図1. 理科模擬授業診断票. 他者評価と自己評価の平均値の比較 他者評価. 質問項目. m. 自己評価. SD. m. SD . t値. 有意判定. ■授業準備について 題材に関する専門的知識を深めている。 教材に関連する幅広い情報を収集している。. 3.93. 0.78. 3.33. 0.67. 4.00. **. 3.84. 0.84. 3.26. 0.64. 1.65. **. 学習のねらいを明確に把握して観察・実験準備や教材開発をしている。. 4.06. 0.80. 3.67. 0.77. 2.59. **. 生活との関連を意識して観察・実験準備や教材開発をしている。. 3.95. 0.86. 3.26. 0.93. 4.17. **. 児童に興味・関心をもたせるための観察・実験準備や教材開発をしている。. 4.16. 0.80. 3.63. 0.95. 3.38. **. 3.50. 0.91. 2.89. 0.79. 3.51. **. 3.79. 1.39. 3.19. 0.98. 2.28. *. 4.02. 0.83. 3.48. 1.03. 3.30. **. 3.80. 0.83. 3.22. 0.68. 3.62. **. 3.77. 0.84. 3.07. 0.77. 3.40. **. 3.79. 0.78. 3.26. 0.84. 3.50. **. 3.75. 0.88. 3.19. 0.77. 3.36. **. 3.83. 0.83. 3.37. 0.82. 2.87. **. ■授業について 〇児童理解 児童一人一人の学習意欲を把握している。 児童一人一人に気を配り、言葉かけをしている。 児童の発言や行動を共感的に受け止めている。 〇統率力 児童の反応や変容に気付き、授業に生かしている。 学習意欲を高めることを意識して言葉かけをしている。 基本的な学習規律を定着させている。 的確な指示を出して集団を動かしている。 学習のねらいを明確に示し、学習に見通しをもたせている。 〇指導技術 授業の始めに学習のねらいを児童に明確に示している。 観察・実験の見通しを児童に持たせることができている。 児童の主体的な学習を促す工夫を行っている。 教材・教具を効果的に活用している。 発問の工夫をしている。 児童の反応を生かしながら授業を構成している。 分かりやすい説明をしている。. 3.26. 3.78. 合計 n=28. ― 3 ―. 3.90. 1.40. 3.52. 0.92. 0.52. 3.88. 0.86. 3.56. 0.68. 1.96. **. 3.78. 0.82. 3.04. 0.84. 4.65. **. 4.19. 0.81. 3.78. 0.87. 2.60. **. 3.79. 0.83. 3.15. 0.85. 3.97. **. 3.89 3.94. 0.87 0.90. 3.70 3.19. 0.90 0.98. 1.13. 77.53. 4.36. 64.36. *: p<0.05   * p<0.05 **: p<0.01. **: p<0.01. **.

(4) 4.50. 4.50. 4.25. 4.25. 4.00. 4.00. 3.75. 3.75. 評価値. 評価値. 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). 3.50. 3.50. 3.25. 3.25. 3.00. 3.00. 2.75. 1. 3. 5. 7. 2.75. 9 11 13 15 17 19. 1. 3. 5. 7. 項目番号. 項目番号 他者評価. 図2. 9 11 13 15 17 19. 他者評価. 自己評価. 図3. 2016 年の模擬授業の評価. 自己評価. 一人1模擬授業の評価. 先にも述べたように,2016 年の結果では,自己評. 勘米良祐太(2016):いわゆる「国語科教育法」の模. 価が他者評価と同等,あるいは自己評価の方がやや. 擬授業における省察の実態, 浜松学院大学教職セ. 高くなっていたが,今回の一人1模擬授業では,自. ンター紀要,5, 1-14.. 己評価がいずれの項目でも他者評価を下回っている. Sasaki,H.(2016):Assessment analysis of mock. ことが分かる.一方,他者評価は,2018 年に比べて. science lessons of student teachers,. 今回の方が全体的に高くなっている.. Proceedings of 2016 International Conference of East-Asian Association for Science Education, 114.. 5.考察 今回の一人1模擬授業については,他者評価とし. 佐々木弘記(2017a): 「理科教育法」における実践的. て観察者の学生は比較的高い評価をしているが,教. 指導力の育成を目指した小学校理科の模擬授業に. 師役の授業者は自分の模擬授業を観察者よりも低い. 関する一検討,中国学園紀要,16,177-183.. 評価をしていることになる.先述の通り,2016 年に,. 佐々木弘記(2017b):小学校理科の模擬授業に対する. 小グループで模擬授業をした際には,他者評価と自. 学生の自己評価と相互評価,日本科学教育学会研. 己評価がほぼ拮抗していた.これは小グループでの. 究会研究報告,31,7,45-48.. 模擬授業だと,メンバーで協働して学習指導案を作. 佐々木弘記(2020): 「理科教育法」における「一人1. り,教材研究をした上で授業を行ったり,授業の中. 実験」の実践~新型コロナウィルス感染症感染拡. で教師役が次々と交代したりすることから,自分一. 大防止の観点から~,日本理科教育学会全国大会. 人の授業ではなくグループでの模擬授業を全体とし. 発表論文集,18,281.. て評価していたからだと考えられる.ところが,一. 佐々木弘記(2021):教職科目「理科教育法」に導入. 人1模擬授業になると,学生が自分一人で準備し,. した個別実験「一人1実験」の成果と課題-新型コ. 実践した模擬授業を評価しなければならないので,. ロナウィルス感染症への対応策として-,中国学. 自己評価に自信が持てなかったのではないかと考え. 園大学子ども学部教職課程研究論文集,4,157-. られる.. 166. 鈴木幸平(2015):授業ビデオの有効活用及び模擬授 業の効率的な実施,常葉大学教育学部紀要,35,. 6.今後の課題. 187-198.. 「反省的実践家としての教師」の力量形成を目指 して, 「理科教育法」の内容や模擬授業の方法を一層. 東京都教職員研修センター(2005):学力向上を図る ための指導に関する研究,75-98. https://www.. 工夫・改善していきたい. kyoiku-kensyu.metro.tokyo.lg.jp/09seika/ reports/bulletin/h17.html (2021.5.20 閲覧). 引用・参考文献. ― 4 ―.

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