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尚絅大学における女子学生の健康生活と体力

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Academic year: 2021

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要旨  本学学生の生活習慣や体力の実態を明らかにするために,「新体力テスト」と「質問紙に よるアンケート調査」を実施した。その結果は次に示すとおりである。 1)学生の体格については,身長,体重,座高ともに全国平均との差異はなかった。 2)学生の9割が運動部に所属していなかった。1日の運動実施時間は,「30分未満」が多く, 運動不足の現状であった。 3)体力については,1年生は筋持久力,全身持久力に優れていた。2年生は柔軟性に優れ, 全身持久力,筋持久力は劣っていた。 Abstract

 In order to clarify Shokei Junior College student s lifestyle and the actual condition of physical strength, the new physical test and the questionnaire in question paper were carried out. The result is as being shown below.

1) About a student s physique, there was no diff erence with the national average in height, weight, and height sitting down.

2) 90 percent of students did not belong to an athletic club. The movement implementation time on the 1st had much less than 30 minute , and was the present condition of lack of exercise.

3) About physical strength, the grader was excellent in muscular endurance and whole body tenacity. The second grader was excellent in pliability and inferior in whole body tenacity and muscular endurance.

Key words : 女子大生(Female college student) 生活習慣(Lifestyle) 体力(Physical

尚絅大学における女子学生の健康生活と体力

中 嶋 弘 二

A Female Student’s Healthy Life and Physical Strength

in Shokei College

(2)

strength)

Ⅰ はじめに

 健康は水や空気のようなもので,わたしたちにとって不可欠なものでありながら,普段は あまり意識していない。病気になったり,ケガをしたり,からだに何か故障が生じるとはじ めて健康で生活ができ,勉強に,仕事に,スポーツに,趣味にと生活をエンジョイしていた 頃のありがたみを痛感することが多い。健康が第一ならば,わたしたちは,日常生活のなか で,自ら健康の保持増進に努めなければならない。  しかしながら,交通機関の発達,電化製品の普及,機械化やクルマ社会による運動不足, それにともなう体力低下,さらには生活の夜型化,ストレスの多様化,生活習慣病の低年齢 化など,今日の学生にとっては,健康で充実した学生生活をつくりにくい状況にあるのでは ないだろうか。  そこで本研究は,本学学生の生活習慣や体力について,その実態を明らかにするとともに, その結果を今後の「健康スポーツ」や「健康科学」等の授業や学生支援の一環としての健康 の保持増進に役立てることを目的とした。

Ⅱ 方法

 本学短期大学部食物栄養学科1年(87名)・2年(92名)を対象に,文部科学省新体力テ スト実施要領1)に則って,新体力テスト(握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・ 1000m持久走・50m走・立ち幅とび・ハンドボール投げの8種目)の測定を行った。1年生 は2011年7月に実施し,全種目測定できた学生は78名であった。2年生は同年10月に実施し, 全種目測定できた学生は39名であった。  同時に,「睡眠時間」「運動・スポーツの実施状況」「朝食の有無」など8項目について, 健康および生活習慣に関する質問紙によるアンケート調査2) (付表参照)も実施した。  これらをもとに、文部科学省スポーツ・青少年局体力つくり担当の体力・運動能力調査実 施要項3) に従って、名簿順に完全標本の30名を抽出し,学生の体格,生活習慣,体力につい て,分析・考察を行った。

Ⅲ 結果

1.体格について  身長については,1年生の平均値は157.4cm で,全国平均4)の157.9cm に届かなかったが 差異はなかった。同2年生は158.5cm で,全国平均の158.4cmをわずかに上回った。  体重については、1年生の平均値は52.2kg で,全国平均の51.7kg をわずかに上回った。 2年生は52.5kg で,全国平均の51.2kg を上回った。

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 座高については、1年生の平均値は85.3cm で,全国平均の85.1cm をわずかに上回った。 2年生は85.4cm で,全国平均と一致した。  標準体重を測るための国際的な指数であるボディ・マス・インデックス(Body・Mass・ Index)は,「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で算出される体格指数のことで,医学 的に最も理想的な数値を「22」,18.5∼25未満を「標準」とし,18.5未満を「痩せ」,25以上 を「肥満」としている。  本学学生の B・M・I については,平均値が1年生20.99,2年生20.85で「理想」の22に近い 値であった。1年生は,「痩せ」が10%,「肥満」が6.7% であり,「標準」が83.3% で,うち 「理想」の21.5∼22.4は13.3% であった。2年生は「痩せ」と「肥満」が共に6.7% であり, 「標準」が86.6% で,うち「理想」は10% であった。 2.生活状況について 1)住居都市階級区分  学生の住んでいる都市階級区分をみてみると,1年生では熊本市(大・中都市)が70.0%, 人口50万人以下の市に住んでいる者(小都市)が23.3%,町村が6.7%であった。2年生はそ れぞれ46.7%,36.7%,16.6%であった。 表1.本学1年生の体格と全国平均値の比較 身長(cm) 体重(kg) BMI 座高(cm) 本学平均値 157.4 52.2 20.99 85.3 標準偏差 6.19 8.38 2.47 4.53 全国平均値 157.9 51.7 ―― 85.1 標準偏差 5.28 7.20 3.66 表2.本学2年生の体格と全国平均値の比較 身長(cm) 体重(kg) BMI 座高(cm) 本学平均値 158.5 52.5 20.85 85.4 標準偏差 5.58 8.30 2.67 3.86 全国平均値 158.4 51.7 ―― 85.1 標準偏差 5.24 6.57 3.14 図1.学生の住居の都市階級区分

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2)運動実施状況  運動部や地域スポーツクラブへの所属状況については、部やクラブに所属して活動してい る学生は1年生が6.7%,2年生が13.3%であった。1年生の93.3%,2年生の86.7%が所属 していなかった。  運動・スポーツの実施状況(大学での体育の授業を除く)については、1年生では「ほと んど毎日(週3日以上)」が6.7%,「ときどき(週1∼2日程度)」が23.3%,「ときたま(月1 ∼3日程度)」が26.7%,「しない」が43.3%であった。2年生では「ほとんど毎日(週3日 以上)」が30.0%,「ときどき(週1∼2日程度)」が13.3%,「ときたま(月1∼3日程度)」 が23.3%,「しない」が33.4%であった。  1日の運動・スポーツ実施時間(大学での体育の授業を除く)は、1年生では「30分未 満」が76.7%,「30分以上1時間未満」が20.0%,「1時間以上2時間未満」が3.3%,「2時 間以上」が皆無であった。2年生では「30分未満」が53.3%,「30分以上1時間未満」が 46.7%,「1時間以上2時間未満」と「2時間以上」が皆無であった。 図2.運動部や地域スポーツクラブへの所属状況 図3.運動・スポーツクラブの実施状況

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3)朝食の有無  学生の朝食の摂取状況については、1年生は「毎日食べる」が83.3%,「ときどき欠かす」 が16.7%,「まったく食べない」はいなかった。2年生は「毎日食べる」が53.3%,「ときど き欠かす」が46.7%,「まったく食べない」はいなかった。 4)1日の睡眠時間  学生の1日の睡眠時間については,1年生は「6時間未満」が36.7%,「6時間以上8時 間未満」が63.3%で,「8時間以上」はいなかった。2年生は「6時間未満」が36.7%,「6 時間以上8時間未満」が60.0%,「8時間以上」が3.3%であった。 図4.1日の運動・スポーツの実施時間 図5.朝食の有無 図6.1日の睡眠時間

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5)1日のテレビ視聴時間  学生の1日のテレビ視聴時間については,1年生は「1時間未満」が26.7%,「1時間以 上2時間未満」が43.3%,「2時間以上3時間未満」が16.7%,「3時間以上」が13.3%であっ た。2年生は「1時間未満」が16.7%,「1時間以上2時間未満」が20.0%,「2時間以上3 時間未満」が33.3%,「3時間以上」が30.0%であった。 3.体力について 1)1年生の体力  1年生の握力,上体起こし,長座体前屈,反復横とび,1000m持久走,50m走,立ち幅と び,ハンドボール投げの8つの測定のそれぞれの平均値は,次のとおりであった。握力は 27.6kg,上体起こしは24.3回,長座体前屈は44.8cm,反復横とびは47.4回,持久走は303秒, 50m走は8.9秒,立ち幅とびは172.4cm,ハンドボール投げは13.9mであった。  全国平均値4) を100とした場合の本学学生の平均値をポイント化して示したものが図8であ る。全国平均を下回ったのは,長座体前屈のみで,あとの7種目はそれを上回った。特に, 上体起こしは10.2ポイント,持久走は8.3ポイントも高かった。 図7.1日のテレビ視聴時間 表3.本学1年生の体力と全国平均値との比較 握力(kg) 上体起こし(回 ) 長座体前屈(cm) 反復横とび(回 ) 本学平均値 27.6 24.3 44.8 47.4 標準偏差 5.82 4.48 8.55 4.16 全国平均値 26.8 22.1 46.8 45.9 標準偏差 4.89 5.62 10.06 6.79 持久走(秒 ) 50m 走(秒 ) 立ち幅とび(cm) ハンドボール投げ(m) 本学平均値 302.9 8.85 172.4 14.3 標準偏差 38.08 0.76 20.39 4.09 全国平均値 328.4 9.37 165.9 13.9 標準偏差 47.83 1.15 23.58 3.96

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2)2年生の体力  2年生の握力は26.6kg,上体起こしは20.2回,長座体前屈は52.0cm,反復横とびは46.2 回,持久走は387秒,50m走は9.1秒,立ち幅とびは162.2cm,ハンドボール投げは13.4mで あった。  全国平均を上回ったのは,長座体前屈と50m走の2種目のみであった。反復横とびは,全 国平均値と一致し,5種目はそれを下回った。特に,持久力は17.3ポイントも劣っていた。 図8.全国平均値を100とした場合の本学学生ポイント(1年生) 表4. 本学2年生の体力と全国平均値との比較 握力(kg) 上体起こし(回 ) 長座体前屈(cm) 反復横とび(回 ) 本学平均値 26.6 20.2 53.0 46.2 標準偏差 5.40 4.46 14.04 2.83 全国平均値 27.0 22.2 47.1 46.2 標準偏差 4.82 5.84 9.80 5.69 持久走(秒 ) 50m 走(秒 ) 立ち幅とび(cm) ハンドボール投げ(m) 本学平均値 387.1 9.06 162.2 13.4 標準偏差 44.02 0.92 18.45 2.67 全国平均値 320.7 9.24 166.4 14.0 標準偏差 34.95 0.79 20.58 3.63

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Ⅳ 考察

1.体格について  本学学生の身長は,1年生は全国平均の157.9cm より5mm 低く、2年生はその158.4cm を1mm 上回った。体重については、1・2年生とも,全国平均の51.7kg をわずかに上回っ た。座高については、1年生は85.3cm で,全国平均の85.1cm をわずかに上回り、2年生は 85.4cm で,全国平均と一致した。総じて、本学学生の体格は,全国平均との差異はなかった。  子どもの肥満が問題視されて久しい。しかし、最近の子どもたちは太りぎみ子とやせぎみ の子に二極化していることが,文部科学省の学校保健統計調査によって明らかになった。身 長別標準体重に対して120%以上の体重がある子どもを「肥満傾向児」,80%以下の体重の子 どもを「痩身傾向児」としている。20年前に比べて,肥満傾向児は1.5倍,痩身傾向児は2.6 倍に増加している5)ことがわかってきた。  今回の被験者となった本学食物栄養学科学生の B・M・I は,1・2年生とも「標準」が8 割を超えていたことは望ましい結果であり,維持していきたいものである。  「肥満」は,糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の危険性を高くする。肥満の原因の第一 に挙げられるのが運動不足である。生活のなかに運動を取り入れ,思いっきり身体を動かし て,体力をつけながら,肥満対策を図るようにしたいものである。また,「やせ」は肥満に 比べ,健康でプラスの価値観があると考えられがちだが,実は将来「骨粗しょう症」「生理 不順」「老化促進」になるリスクが高いといわれている。  さらに、今後は、一般学生との比較や一年後の体格の変化等についても継続して研究して いきたい。   図9.全国平均値を100とした場合の本学学生ポイント(2年生)

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2.生活習慣について  運動部や地域スポーツクラブに所属して活動している学生は,2年生は1割を超えていた が,1年生はわずか6.7%であった。1年生,2年生の約9割が所属していなかったが,こ の現状の大きな要因に,九品寺キャンパスには大学専用体育館やグラウンドがないことが挙 げられよう。25年度から活用可能となるアリーナの完成が待たれる。  1日の運動・スポーツ実施時間(大学での体育の授業を除く)については,1年生の8割, 2年生の5割が「30分未満」であった。運動・スポーツの実施状況においては,「ほとんど 毎日(週3日以上)」活動しているが1年生で6.7%,2年生で30.0%であった。新しく大学 生生活をはじめた1年生の多くは,運動部や地域スポーツクラブに所属して活動する余裕が ないことが要因のひとつに挙げられるようだ。また,2年生で「ほとんど毎日」活動してい ると答えた学生の多くが自転車通学によるものであった。大学での体育の授業を除けば運動 は「しない」と答えた学生は,1年生で43.3%,2年生で33.4%と全体の3分の1以上であっ た。  呼吸循環機能と筋肉のフィットネスを保持増進するための適正な運動の量と質についてア メリカスポーツ医学協会(ACSM)の勧める運動処方によると,「頻度は3∼5日/週, 強度は最高心拍数の60∼90%・最大酸素摂取量の50∼85%,時間は20∼30分/日(強度が高 い場合は短く,低い場合は長くする),種類はリズミカルに反復できる大筋群を使う有酸素 的な運動・・・歩行・ジョギング・自転車・クロスカントリースキー・ダンス・縄跳び・ ボート・水泳・スケート・持久的なゲーム・ウェイトトレーニングなどを行う」としている6)。 このことから,本学学生の多くは運動不足の状況にあるといえるだろう。運動・スポーツの 実施に関する学生の意識やそれを実践するための環境整備状況について,今後さらに深く 探っていきたい。  現代人は生活のあらゆる面で運動不足に陥る傾向にある。運動不足になると,体力が低下 するだけでなく,情緒が不安定になったり,睡眠障害になったりする。さらに,長い間には 動脈硬化症,高血圧症,心臓病,糖尿病などの生活習慣病になりやすい7)。生涯を通して, 健康で明るく,活気に満ちた生活をおくるためには,適度な運動を日常生活に取り入れるこ とが大切である。その実践方法として,「①通学手段としてバスや電車を利用している学生 は,ひと区間だけでも自転車や徒歩への変更を実践してみる。②入浴前にストレッチ運動を 実践しみる。③余暇を利用して,サイクリングやウォーキングを積極的に実践してみる」な どを学生たちへ啓発していきたい。  学生の朝食の摂取状況については、1・2年生とも「まったく食べない」という学生は皆 無だった。しかし、「毎日食べている」のは1年生では8割を超えていたが,2年生では5 割しかいなかった。栄養士資格取得を目指す学科の学生としては、遺憾な状況で改善が求め られる。

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 学生の1日の睡眠時間については,「6時間以上8時間未満」が1・2年生とも6割で, 約4割が「6時間未満」であった。「健康の三原則は快食・快眠・快便であるが,このなか でももっとも大事なのが快眠である。質の良い睡眠をとると,気のめぐりがよくなる。質の よい眠りとは,枕に頭をつけたら5分ぐらいで眠りに入れる睡眠である。このような眠りを 得るためには,昼間の活動が大事になってくる。昼間十分に身体を動かし,きちんと食事を するという当たり前の生活をしていればよい」と小児科医の甲賀正聰は訴えている8) 。  今後は、4割いる睡眠時間6時間未満の学生たちについて、さらに細かく調査・分析して いくとともに、就寝時刻についても把握していきたい。  学生の1日のテレビ視聴時間については,1年生の約5割が「1時間以上2時間未満」で 最も多かったが、2年生は「2時間以上3時間未満」「3時間以上」が共に3割を超えて多 かった。  大阪府立大学が体温調査と併せて生活習慣のアンケートをとったところ,日中にからだの だるさに関わる体温の低い子どもには「寝る時間が遅い」「テレビを見る時間が長い」「朝食 を食べない」といった共通の特徴があった9) という報告があるように,生活リズムの乱れが 健康生活や健やかな成長に悪影響を及ぼしていることを学生たちへ教えていきたい。  さらに今後は,余暇の過ごし方やアルバイトの実施状況等についても探っていきたい。 3.体力について  1年生の握力,長座体前屈,反復横とび,1000m持久走,50m走,立ち幅とび,ハンド ボール投げの7種目は,全国平均値よりよい結果であった。特に,上体起こしや持久走はよ かった。長座体前屈は,全国平均を4.1ポイント下回った。  つまり、1年生は特に筋持久力,全身持久力に優れ,走力,跳躍力,投力,筋力,敏捷性 にやや優れ、柔軟性にやや劣ることがわかった。今後は,「日々の生活のなかでストレッチ や柔軟運動の実践を取り入れて,柔軟性の向上に努めながら,他の体力を落とさないよう」 呼びかけていきたい。  2年生で全国平均を上回ったのは,長座体前屈(11.2ポイント)と50m走(2.6ポイント) の2種目のみであった。反復横とびは,全国平均値と一致し,他の5種目はそれを下回った。  つまり、2年生は特に柔軟性に優れ,走力はやや優れ,敏捷性,筋力はふつうで,跳躍力, 投力はやや劣り,全身持久力,筋持久力は特に劣ることがわかった。2年生には,スクワッ トや腹筋運動とともに,ウォーキングやジョギング等の運動にも積極的に取り組んで,筋持 久力と全身持久力アップに努めるよう啓発していきたい。  また、今後は、今回測定・調査した短期大学部食物栄養学科学生の結果をもとに、一般学 生との比較検討も試みたい。  文部科学省が、体力・運動能力調査で健康・体力について聞いたところ,「大いに健康」

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と回答した男性の75%,女性の65%が「週1回以上運動する」と回答していた。同省は「定 期的にスポーツを実施することが体力を高い水準に保つ要因の一つ」と分析している。分析 にかかわった内藤久士順天堂大教授は「この10年間の推移をみてみると,小・中学校におい ては,向上傾向が確かになっており、運動機会を増やそうとする学校の地道な努力の効果が 表れているのではないか」している。一方,現在20歳の人が運動している割合は,15年前, 30年前と比べて低下しており,握力や持久力も低くなっており,「20代でのスポーツへの参 加率が低い。運動を心がけてほしい」としている10) 。  また、健康・体力づくり事業財団主任研究員の青木高は,体力には「競技に関連した体 力」と「健康に関連した体力」の二つがあり,一般の人にとっては後者が重要である。健康 に関連した体力の構成要素は持久力,筋力,柔軟性,体組成の四つである。活力あふれる毎 日を送るために「15分間早足で歩けるか(持久力)」「自分の体重を支持できるか(筋力)」 「しなやかな筋肉か(伸展性)」「おなかの肉がたぶついていないか(体組成)」をチェックし てほしい11) と述べている。  便利で快適な現代社会は,ついつい自家用車やエレベーターを利用してしまい,健康の保 持増進のために必要な運動を実践していくことは難しい。学生たちには,「健康科学」「健康 スポーツ」「レクリエーション概論」等の授業を通して、「健康生活には,日常生活において, 意識して運動を取り入れることが大切である」ことを説いていきたい。

Ⅴ まとめ

 本学学生の生活習慣や体力について,その実態を明らかにするとともに,その結果を今後 の「健康スポーツ」や「健康科学」等の授業や学生指導に役立てることを目的として,文部 科学省新体力テスト実施要領に則った「新体力テスト」と「健康および生活習慣に関する質 問紙によるアンケート調査」を実施した。その結果は次に示すとおりである。 1)本学学生の体格については,身長,体重,座高ともに全国平均との差異はなかった。 2)本学学生の約9割が運動部や地域スポーツクラブに所属していなかった。1日の運動・ スポーツ実施時間は,1年生の8割,2年生の5割が「30分未満」であり,運動不足の 現状がわかった。 3)本学学生の体力については,1年生は上体起こしと持久走が特に優れ、ボール投げ, 50m 走,立ち幅とび,握力,反復横とびはやや優れ、長座体前屈がやや劣っているこ とがわかった。2年生は長座体前屈が特に優れ、持久走と上体起こし特に劣ることがわ かった。よって,1年生には柔軟性を,2年生には全身持久力と筋持久力を高めるため の運動を意識して,日々の生活のなかで積極的に取り入れる必要があることがわかった。  本研究は,文部科学省スポーツ・青少年局の要請により新体力テストを実施し,体力・運

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動能力調査要領に則って結果を整理し,文部科学省へ提出した資料をもとに,分析・考察し, まとめたものである。 付表.文部科学省 新体力テスト(12歳∼19歳)記録用紙 生活調査用 No.  氏名 本人の住所 平成23年4月1日現在の年齢         歳 男 ・ 女 都市階級区分 1.大・中都市   2.小都市     3.町村 所    属 1.中学校     2.高等学校全日制  3.高等学校定時 3.高等専門学校  4.短期大学     6.大学 運動部や地域スポーツクラブへの所属状況 1.所属している   2.所属していない 運動・スポーツの実施状況 (学校の体育の授業を除く) 1.ほとんど毎日(週3日以上) 2.ときどき(週1∼2日程度) 3.ときたま(月1∼3日程度) 4.しない 1日の運動・スポーツ実施時間 (学校の体育の授業を除く) 1.30分未満     2.30分以上1時間未満 3.1時間以上2時間未満   4.2時間以上 朝食の有無 1.毎日食べる  2.時々欠かす  3.まったく食べない 1日の睡眠時間 1.6時間未満  2.6時間以上8時間未満  3.8時間以上  1日のテレビ(テレビゲームを含む)の 視聴時間 1.1時間未満  2.1時間以上2時間未満 3.2時間以上3時間未満  4.3時間以上 体    格 1.身長   ・  cm    2.体重    ・  kg 3.座高   ・  cm 【文部科学省スポーツ・青少年局参事官(体力つくり担当):新体力テスト実施要項より】 【文   献】 1)文部科学省スポーツ・青少年局参事官(体力つくり担当):新体力テスト実施要項(12 歳∼19歳対象),pp2−13,2011. 2)文部科学省スポーツ・青少年局参事官(体力つくり担当):平成23年度「体力・運動能 力調査」調査票 新体力テスト記録用紙(12歳∼19歳対象),2011. 3)文部科学省スポーツ・青少年局参事官(体力つくり担当):平成23年度「体力・運動能 力調査実施要項」,pp1−6,2011. 4)政府統計の総合窓口(文部科学省):平成22年度体力・運動能力調査報告 5)中嶋弘二・大羽宏一他:総合生活学―女性の視点からみた現代社会―,法律文化社,p 130,2006.

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6)中永征太郎:健康と生活環境,朝倉書店,p113,1993. 7)中嶋弘二・大羽宏一他:総合生活学―女性の視点からみた現代社会―,法律文化社,p 126,2006. 8)甲賀正聰:食べ物文化11月増刊号 NO.284 生活リズムで心と体の健康づくり,(株) 芽ばえ社,pp48−49,2000. 9)NHK「クローズアップ現代」制作班:クローズアップ現代vol.2 21世紀の出会 いサイト,日本放送出版協会,p70,2001. 10)日本経済新聞2009年10月12日号,p26,2009. 11)石井慎二:別冊宝島130号 スポーツ科学・読本,株式会社宝島社,p82,1997.

参照

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