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病原菌のゲノム解析から菌株の多様性をみる:病原性大腸菌を例として

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Academic year: 2021

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−70 略歴 1984 年 信州大学医学部医学科 卒業 1984 年 信州大学医学部細菌学講座 助手 1993 年 信州大学医学部細菌学講座 講師 1993 年 ドイツ連邦動物ウイルス病研究所 研究員 (Alexander von Humboldt 財団 奨学生) 1996 年 信州大学医学部細菌学講座 助教授 2000 年 宮崎医科大学医学部微生物学講座 教授 2003 年 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター教授 (医学部感染症学講座微生物学分野教授 兼任) 2009 年 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター センター長 (医学部感染症学講座微生物学分野教授 兼任) 林   哲 也 先生

病原菌のゲノム解析から菌株の多様性をみる:

病原性大腸菌を例として

宮崎大学フロンティア科学実験総合センター 林   哲 也 細菌のゲノム解析は急速に進展しており,既に 1000 を超える菌種・菌株の全ゲノム配列が公表 されている。最近でこそ,様々な環境細菌や有用細菌などもゲノム解析の対象となってきているが, 1990 年代に細菌のゲノム解析が開始された当初から,病原菌は常に最も重要な解析対象となってき た。このことは病原菌の研究における全ゲノム情報も必要性あるいは有用性をよく表している。 現在は,大部分の主要病原菌種においては,少なくとも代表菌株のゲノム解読が終了した状況となっ ており,病原菌のゲノム研究あるいは医学系の細菌ゲノム研究においては,新しい流れが生じてきて いる。それらは (1) マイナーな病原菌やヒト常在菌へのゲノム解析対象の拡大 (2) 同一菌種内(特に重要菌種)での,分離由来・遺伝系統・血清型・病原型等が異なる多数の菌 株のゲノム比較 (3) 常在細菌叢などの細菌集団全体を対象としたゲノム解析(メタゲノム解析)の 3 点に要約でき るが,このようなゲノム解析の流れは,短時間で大量の配列データが取得できる「新型シーケ ンサー」の普及によって一段と加速している。 本演題では,(2)の研究に焦点を絞り,その例として,私たちの研究室の主な解析対象である大腸 菌を取り上げる。具体的には,腸管出血性大腸菌(EHEC)O157 堺株と非病原性大腸菌 K-12 株と のゲノム比較,O157 と O157 以外の血清型を EHEC や他の様々な病原型をもった菌株との大規模な 比較ゲノム解析,さらには同じ O157 菌株間でのゲノム比較やその結果を応用した O157 菌株の迅速 識別キット開発などについて紹介したい。必ずしも,大腸菌での解析結果を他の菌種に当てはめるこ とはできないが,様々な菌種の中で最も精力的にゲノム比較解析が進められている大腸菌の研究成果 から,遺伝子の水平伝搬を中心としたメカニズムによって,病原細菌が如何にダイナミックに進化・ 多様化し,様々な病原型をもった菌株が出現してきたか,またゲノム比較研究の臨床への直接的な応 用例などをご理解いただければ幸いである。

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