Ⅰ.緒 言 我が国は超少子高齢社会の下,現代の平均寿命は男性 80.98 歳,女性 87.14 歳と最高記録を更新し続けている。 一方,健康寿命は男性72.14 年,女性 74.79 年,不健康 な期間はそれぞれ8.84 年,12.35 年であり (1),健康寿 命の延伸は日本において喫緊の課題である。健康寿命の 延伸を実現させるためには,がん,循環器・脳疾患,そ して糖尿病など生活習慣病の発症,ならびに重症化を予 防することが重要である (2)。そのため,生活習慣病の 要因となる喫煙,飲酒,栄養,運動などのライフスタイ ル改善と,国民自らで健康づくりに取り組むことを目的 に平成14 年より健康日本 21 が展開され現在,健康日本 21 第二次へと移行している (2)。健康日本 21 第二次 (2) © 日本衛生学会
更年期女性のヘルスリテラシー,健康の社会的決定要因と更年期症状,
生活習慣病,抑うつとの関連
竹中加奈枝
1,酒井ひろ子
2 1関西医科大学大学院看護学研究科博士後期課程 2関西医科大学大学院看護学部・看護学研究科Investigation of Relationships among Health Literacy, Social Determinants
of Health, Menopausal Symptoms, Lifestyle-related Diseases, and Depression
in Menopausal Women
Kanae TAKENAKA
1and Hiroko SAKAI
2 1Graduate School of Nursing, Kansai Medical University 2Faculty of Nursing/Graduate School of Nursing, Kansai Medical UniversityAbstract
Objectives: The aim of this study was to clearly identify the relationships among health literacy, social determinants of health, health behaviors, menopausal symptoms, lifestyle-related diseases, and depression in healthy menopausal women.
Method: A cross-sectional study was conducted using a questionnaire among menopausal women (45 to 60 years of age) who visited a facility offering various medical checkups to receive a specific medical checkup.
Logistic regression was used to analyze the association of health literacy and social determinants of health with health behaviors for 162 subjects adjusted for age. Moreover, the association of several factors (health literacy, social determinants of health, and health behaviors) with menopausal symptoms, borderline zones for lifestyle-related diseases, and depression was also analyzed in the same way.
Results: It was shown that educational history was associated with smoking habit with an age-adjusted odds ratio OR of 3.23 (95% confidence interval [CI]: 1.103–9.443). It was shown that health literacy was associated with smoking habit, age-adjusted OR 4.07 (95% CI: 1.337–12.388), menopausal symptoms, age- adjusted OR 2.48 (95% CI: 1.177–5.235), and depression, age-adjusted OR 6.24 (95% CI: 2.421–16.092).
Conclusion: It was found that poor health literacy was associated with smoking habit and the severity of menopausal symptoms and depression.
Key words: health literacy(ヘルスリテラシー),menopausal symptom(更年期症状),life-style related
diseases(生活習慣病),depression(抑うつ)
受付2020 年 5 月 21 日,受理 2020 年 12 月 4 日 Reprint requests to: Kanae TAKENAKA
Graduate School of Nursing, Kansai Medical University, 2-2-1 Shinmachi, Hirakata, Osaka 573-1004, Japan
TEL: +81(72)804-0101
では「平均寿命,健康寿命の延伸とともに各ライフサイ クルにおいて,心身機能の維持及び向上につながる対策 に取り組む」ことを基本的方針に掲げている。ライフサ イクルで注目すべきこととして,更年期以降の女性は男 性に比べ,卵巣機能の衰退に伴うエストロゲンの減退, 消失という生物学的性差による疾患が増加する。した がって女性特有の健康リスクとその要因が解明され,科 学的根拠に基づいた健康維持,増進への健康支援が重要 である。 閉経によるエストロゲンの減退,消失は更年期症状の 重症化を招き,脂質異常や動脈硬化などを急上昇させ, 生活習慣病のリスクを高める (3–5)。さらに急激な内分 泌変動は抑うつリスクを上昇させ (6, 7),精神的健康の 脆弱性も持つ。 更年期女性は更年期症状,生活習慣病,抑うつを予防 するため,共通の危険因子である喫煙 (7, 8),副流煙 (9, 10),飲酒 (8, 11),BMI 25 以上の肥満 (6, 12, 13) を予 防し,そして共通の保護因子である運動習慣を持つこと (8, 12, 14) が重要である。しかし,女性全体の喫煙率は 8.1%,40 歳代 13.6%,50 歳代 10.2% であり,また生活 習慣病のリスクを高める量の飲酒率は女性全体で8.7%, 40 歳代 15%,50 歳代 15.6% であり,更年期女性は他の 年齢層と比較し,最も高い割合を占める (15)。そして BMI 25 以上の肥満は女性全体で 21.9%,40 歳代 17.1%, 50 歳代 19.2%,60 歳代 27.5% と更年期を境に上昇傾向 を示す (15)。一方,保護因子である運動習慣を持つ者 の割合は女性全体で25.5%,40 ~ 49 歳 14.7%,50 ~ 59 歳21.1%(15) であり,更年期世代の運動習慣を持つ割 合の低さが示され,健康行動の維持が困難であることが 推測される。したがって,健康リスクが急増する時期に ある更年期女性への支援は重要である。しかし更年期女 性への支援の整備は十分ではない (16)。生殖期世代に ある女性は妊娠を機に,母子の健康維持・増進を目的に 医療関係者より繰り返し,健康教育を受ける機会がある。 しかし,更年期では医療従事者との関わりは少なくなり, 自身の健康は個人の健康管理能力に委ねられており,内 閣府では女性の健康のためにヘルスリテラシー向上の重 要性を示している (16)。ヘルスリテラシーとは健康情 報を入手し,理解し,評価し,活用する能力と定義され ており (17),近年,日本においても健康の社会的決定 要因とともに健康を決定づける要因として注目されてい る (18, 19)。国内外での非正規雇用者の健康に関するシ ステマティックレビュー (20) では,正規雇用者に比べ, 非正規雇用者では喫煙,アルコール摂取,肥満,うつ病 の割合が高いことが示されている。そしてヨーロッパ8 か国で実施されたヘルスリテラシーの調査結果 (21) と 比較し,日本人のヘルスリテラシーは低く (22),日本 人の更年期女性は更年期症状に対する受診先を理解して いないなど,ヘルスリテラシーの低さが報告されている (23)。ヘルスリテラシーは健康の社会的決定要因である 教育歴および世帯収入と関連し (24),ヘルスリテラシー スコアの高群は低群と比較し,多くの医療情報を得てい ることが示されており (25),健康を決定づける要因とし て健康の社会的決定要因とともに重要であることが位置 付けられてきた。また,WHO では人々が健康の社会的 決定要因を理解するための要因の一つとしてヘルスリテ ラシーを位置付けており (26),このヘルスリテラシーが 更年期女性においても健康行動,更年期症状,生活習慣 病,そして抑うつに関連しているのではないかと考える。 ヘルスリテラシーならびに健康の社会的決定要因に関 する調査は蓄積されつつあるが,健康な更年期女性に限 定した調査は国内外において非常に少ない。また,本邦 において健康行動,更年期症状,生活習慣病,抑うつと の関連を調査した先行研究は殆どなく,さらなる蓄積が 必要である。 そこで本研究は,健康な更年期女性を対象にヘルスリ テラシーならびに健康の社会的決定要因と健康行動との 関連を検討した。さらに健康行動,ヘルスリテラシーな らびに健康の社会的決定要因と更年期症状,生活習慣病, 抑うつとの関連を明らかにすることを目的とした。 Ⅱ.方 法 1.対象者と除外基準 2019 年 4 月から 7 月の間に,大阪市内の健診施設を 持つA 病院に,特定健康診査の受診目的で来院した更 年期女性(範囲:45 ~ 60 歳)において,研究の同意が 得られた191 名を対象者とした。本研究での更年期の定 義は,日本人女性の平均閉経年齢が約50 歳であること と (23, 27),日本産婦人科学会の更年期の定義である「閉 経の前後5 年の合計 10 年間」(28) に加え,さらに生活 習慣病の罹患率が上昇する (5) 閉経から 5 年以降を含む 45 ~ 60 歳までとした。 本研究は一次予防に重点をおき,健康な更年期女性を 対象にヘルスリテラシーならびに健康の社会的決定要因 と健康行動,更年期症状,生活習慣病,抑うつとの関連 を明らかにするため,以下の対象者を除外した。 慢性疾患の現病歴3 名(脳卒中:1 名,心疾患 2 名) と治療中の対象者25 名(血圧降下剤:17 名,血糖降下剤: 5 名,脂質異常症治療薬 10 名 合計 32 名のうち 7 名が 重複),そして質問紙調査の記入漏れ1 名を除外し,解 析対象者は162 名であった(図 1)。 2.調査方法 研究協力施設に来院した対象者に,研究概要を記載し たフライヤーを手渡し,参加者を募り実施した。口頭で 同意の得られた対象者に個室で,口頭そして文書にて研 究手続きについて説明した。その後,対象者に質問票を 手渡し,特定健康診査の待ち時間を利用して回答を依頼 した。記入が終了した質問票は回収箱に対象者自ら投函 し,研究参加終了とした。特定健康診査の検査結果は後 日,研究協力施設から必要な項目のみ,情報を得た。
3.測定項目 1)基本属性 年齢,閉経状況(月経の有無と閉経年齢),現病歴, 内服状況は,特定健康診査質問票より用いた。 2)健康行動 喫煙状況,飲酒状況,BMI 25 以上の肥満,現在の運 動習慣は特定健康診査質問票を用いた。副流煙(同居家 族の喫煙の有無)は自記式質問紙票を作成し用いた。 3)健康の社会的決定要因 本研究では,教育歴,就業,現在の結婚継続,子の有 無,世帯年収を健康の社会的決定要因の項目として,自 記式質問紙票を用いた。教育歴は日本において7 割以上 が専門学校以上の進学 (29) を選択しているため,短期 大学卒業以上と専門学校卒業以下とした。本研究は特定 健康診査のために来所した者で就業者ならびに被扶養 者,もしくは特定健康診査に要する費用(約1,500円)(30) が自己負担できる対象者に限られた。 4)ヘルスリテラシー 本研究では,日本人を対象としたヘルスリテラシーを 測定する尺度として須賀らが開発した14-item Health Literacy Scale(HLS-14)を用いて測定した (25)。HLS-14 は機能的リテラシー 5 項目(最高得点 25 点),伝達 的リテラシー5 項目(最高得点 25 点),批判的リテラシー 4 項目(最高得点 20 点)の全 14 項目,最高得点 70 点 からなる包括的にヘルスリテラシーを測定できる尺度で ある。HLS-14 の尺度の開発に関する研究 (25) において, 日本人の成人を対象とし信頼性・妥当性が示されている。 この先行研究 (25) の対象者である日本人成人の HLS-14 合計得点の平均値(標準偏差)は50.3(±6.8),各下位 尺度においては機能的リテラシー19.1 点(±3.6),伝達 図1 本研究の対象者選定フローチャート
的リテラシー17.8 点(±3.6),批判的リテラシー 13.4 点(±2.7)であった。本研究のヘルスリテラシー得点 のカットオフポイントは先行研究 (25) が示すヘルスリ テラシーの中央値にならい,高群と低群に分類した。 本研究で使用するにあたり,尺度使用に関しては事前 に開発者に承諾を得た。 5)更年期症状:クッパーマン更年期障害指数 安部変法 (KKSI)(31) Kupperman らの原法にみられる 11 症状に日本人に特 徴的と思われる17 症状で構成された尺度であり,日本 の臨床,および研究において40 年以上使用されている 信頼性・妥当性が確立している尺度である。本研究にお いて,軽症と中等症以上に分類される23 点をカットオ フポイントとした。 6)生活習慣病境界域 本研究では特定健康診査の検査項目のうち,更年期 以降の女性で生活習慣病を上昇させる要因である高血 圧,脂質異常,高血糖の指標である収縮期血圧,拡張期 血圧,中性脂肪,HDL,LDL,空腹時血糖を生活習慣病 境界域とし,特定健康診査の結果より用いた。これらの 項目は日本高血圧学会・日本動脈硬化学会・日本糖尿病 学会のガイドラインを参考とし,収縮期血圧130 mmhg 以上,拡張期血圧85 mmhg 以上,中性脂肪 150 mg/dl 以 上,LDL 120 mg/dl 以上,HDL 40 mg/dl 未満,空腹時血 糖100 mg/dl 以上を異常値とし,1 項目以上を持つ対象 者を生活習慣病境界域群,0 項目の対象者を正常群と した。 7)抑うつ:CES-D (32)
The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)は米国国立精神保健研究所により開発された 自記式のうつ症状に関する心理検査として,世界中で用 いられている尺度である。CES-D の質問項目は 20 問か ら構成され症状に対し,「ない」「1 ~ 2 日」「3 ~ 4 日」「5 日間以上」の4 件法で回答する質問紙から成る。得点は 0 ~ 3 点で評価され,最大得点は 60 点である。 日本語版CES-D の評価基準を検討した先行研究 (31) において,再テスト法,折半法による信頼性と,うつ病
の自己評価尺度であるSDS(Self-rating Depression Scale), CRS(the Carroll Rating Scale for Depression)との併存的
妥当性において0.8 と高い相関が示されている。また正
常対象群と感情障害群との比較においてCut Off Point を
16 点に設定することの妥当性が示されている (32)。本 研究においてもCES-D 16 点以上を抑うつ有群,16 点未 満を無群とした。 4.研究デザイン 本研究はヘルスリテラシーならびに健康の社会的決定 要因が健康行動,更年期症状,生活習慣病,そして抑う つに関連するという仮説を持つ仮説検証型研究,横断研 究である。 5.解析方法 対象者(n=162)において,健康行動として喫煙,同 居家族の喫煙(副流煙),飲酒,BMI 25 以上の肥満,現 在の運動習慣をそれぞれ有無の2 値従属変数とした。独 立変数は健康の社会的決定要因である教育歴,就業,現 在の結婚継続状況,子ならびにヘルスリテラシーを2 値 独立変数,そして世帯年収は未収入から800 万円以上ま でを順序尺度として扱い,年齢(歳)を調整しロジス ティック回帰分析で解析した(図2- ①)。 次に,健康行動,ヘルスリテラシーならびに健康の社 会的決定要因と更年期症状,生活習慣病,抑うつとの関 連を明らかにするために更年期症状,生活習慣病境界域, 抑うつをそれぞれ2 値従属変数とした。独立変数は健康 行動,ヘルスリテラシー,健康の社会的決定要因,そし て閉経状況の有無をそれぞれ2 値独立変数とし加え,年 齢(歳)を調整し,ロジスティック回帰分析を実施した (図2- ②)。 統計学的有意水準は5% 両側検定とし,統計解析は SPSS version 25 を用いた。 6.倫理的配慮 本研究は,ヘルシンキ宣言及び人を対象とする医学系 研究に関する倫理指針を遵守し作成され,関西医科大学 図2 本研究の概念モデル
倫理審査委員会で承認を得た後(平成31 年 3 月 16 日, 承認番号2018172),研究協力機関の倫理審査委員会に おいても承認を経て実施された。実施にあたっては,承 認の得られた対象者に同意説明文書を渡し,研究の主旨, 研究参加による負担及び予測されるリスク,研究協力と 研究協力中断の任意性,個人情報の保護,特定健康診査 結果の閲覧許可,窓口相談の設置について口頭及び文書 により十分な説明を行い,研究対象者の自由意思による 同意を文書で取得し,研究に参加してもらった。 Ⅲ.結 果 本研究における対象者の概要を表1 に示す。 対象者の平均年齢は51.4±4.5 歳(中央値 51 歳),平 表1 対象者の概要 第1 四分位数 中央値 第3 四分位数 年齢(歳) 51.4±4.5 47 51 55 平均閉経年齢(歳)n=99 50.1±2.6 48 50 52 閉経:あり(n) 102(63.0) 教育年数(年) 14.7±2.4 14 14 18 生活習慣病境界域の項目 BMI(kg/m2) 22.0(3.5) 19.4 21.8 23.8 収縮期血圧(mmHg) 116(15) 106 115 124 拡張期血圧(mmHg) 74(11) 66 73 80 中性脂肪(mg/dl) 81(48) 51 71 94 HDL(mg/dl) 73(13) 64 72 81 LDL(mg/dl) 126(35) 106 118 145 空腹時血糖(mg/dl)n=158 101(18) 88 94 110 生活習慣病境界域 1 項目以上:あり(n) 95(58.6) KKSI 総得点(点)(n) 22(16) 7 20 35 KKSI 23 点以上:あり(n) 73(45.1) CES-D 総得点(点) 12(10) 4 10 15 CES-D 16 点以上:あり(n) 36(22.2) HLS-14 総得点(点) 51(10) 47 52 58 機能的リテラシー(点) 20(4) 18 21 22 伝達的リテラシー(点) 18(4) 17 19 20 批判的リテラシー(点) 14(3) 12 14 16 結婚生活の継続:あり(n) 85(52.5) 子:あり(n) 104(64.2) 就業:あり(n) 153(94.4) 世帯年収(n) 未収入 0(0) 100 万円未満 0(0) 200 万円未満 7(4.3) 300 万円未満 13(8.0) 400 万円未満 21(13.0) 500 万円未満 19(11.7) 600 万円未満 18(11.1) 700 万円未満 29(18.0) 800 万円未満 18(11.1) 800 万円以上 37(22.8) 教育歴:短期大学卒業以上(n) 97(59.9) 健康行動 喫煙行動:あり(n) 20(12.3) 副流煙(同居家族の喫煙):あり(n) 62(38.3) 飲酒行動:あり(n) 89(54.9) BMI 25 以上の肥満:あり(n) 28(17.3) 現在の運動習慣:なし(n) 122(75.3) 数値は平均値(標準偏差)第1 四分位数 中央値 第 3 四分位数および人数(割合:%)で表示する。
BMI:Body Mass Index,KKSI:更年期症状:クッパーマン更年期障害指数 安部変法,CES-D:The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale,HLS-14:14-item Health Literacy Scale
均閉経年齢(n=99)は 50.1±2.6 歳(中央値 50 歳)であっ た。 健康の社会的決定要因である現在も結婚を継続してい る対象者は52.5% であり,4 割以上の女性が現在,単身 であった。また子を持つ対象者は64.2% であった。本 研究対象者の就業者は94.4% であり,世帯年収は 400 万円以上が7 割以上を占めた。教育歴の内訳は短期大学 以上の学歴を持つ対象者が59.9% であった。対象者の HLS-14 の総得点 51±10 点(中央値 52 点),それぞれの 下位尺度得点は機能的リテラシー20±4 点(中央値 21 点),伝達的リテラシー18±4 点(中央値 19 点),批判 的リテラシー14±3 点(中央値 14 点)であった(表 1)。 KKSI 総 得 点 の 平 均 値 は 22±16 点( 中 央 値 20), KKSI 23 点以上である更年期症状中等症以上群は 45.1% であった。そして過去に更年期障害で受診歴のある対象 者は0.6% であった。 CES-D 総 得 点 の 平 均 値 は 12±10 点( 中 央 値 10), CES-D 16 点未満の抑うつ無群 77.8%,16 点以上の抑う つ有群22.2% であった。 生活習慣病境界域は,無群41.4%,1 つ以上の項目を 持つ有群は58.6% であり,収縮期血圧,拡張期血圧, 中性脂肪,HDL,LDL,空腹時血糖値は表 1 に示す。生 活習慣病境界域の項目であるLDL と空腹時血糖の平均 値 は 異 常 を 示 し, 収 縮 期 血 圧14.8%, 拡 張 期 血 圧 17.3%,LDL 48.1%,空腹時血糖 33.3% の対象者が異常 値を示した。 健康行動では,喫煙者12.3%,同居家族に喫煙者があ る対象者38.3%,飲酒している対象者 54.9%,BMI 25 以 上の肥満のある対象者17.3% であり,BMI の平均値は 22.0±3.5 kg/m2(中央値21.8 kg/m2)であった。そして 現在,運動習慣を持たない対象者は75.3% であった。 ヘルスリテラシーならびに健康の社会的決定要因と健 康行動とを検討するためにロジスティック回帰分析で解 析した結果,教育歴である専門学校卒業以下の対象者は 短期大学卒業以上の対象者と比較し,喫煙習慣がAOR 3.228 倍(95% 信頼区間:1.103–9.443),そして,ヘル スリテラシーが低い対象者は高い対象者と比較し,喫煙 習慣がAOR 4.069 倍(95% 信頼区間:1.337–12.388)と なり,教育歴,ならびにヘルスリテラシーと喫煙習慣に 関連が認められた(表2)。 健康行動,ヘルスリテラシーならびに健康の社会的決 定要因と更年期症状,生活習慣病,抑うつとを検討する ためにロジスティック回帰分析で解析した結果を表3 に 示す。更年期症状を検討した結果,閉経している対象者 はしてない対象者と比較し,AOR 2.430 倍(95% 信頼区 間:1.122–5.263),BMI 25 以上の肥満のある対象者はな い対象者と比較し,AOR 4.187 倍(95% 信頼区間:1.523– 11.511),現在の運動習慣を持たない対象者は持つ対象 者と比較し,AOR 2.955 倍(95% 信頼区間:1.141–7.650) となり,閉経,肥満,そして運動習慣と更年期症状に関 連が認められた。そして,ヘルスリテラシーが低い対象 者は高い対象者と比較し,AOR 2.482 倍(95% 信頼区間: 1.177–5.235)となり,ヘルスリテラシーと更年期症状に おいても関連が認められた(表3)。 生活習慣病境界域を検討した結果,BMI 25 以上の肥 満のある対象者はない対象者と比較し,AOR 6.850 倍 (95% 信頼区間:2.058–22.805)の結果が示され,肥満 と生活習慣病に関連が示された(表3)。そして,抑う つにおいてもヘルスリテラシーが低い対象者でAOR 6.242 倍(95% 信頼区間:2.421–16.092)となり,ヘル スリテラシーと抑うつに関連が認められた(表3)。 Ⅳ.考 察 本研究は,健康な更年期女性を対象にヘルスリテラ シーならびに健康の社会的決定要因と健康行動との関連 を検討し,さらに健康行動,ヘルスリテラシーならびに 健康の社会的決定要因と更年期症状,生活習慣病,抑う つとの関連を明らかにすることを目的とした。 本研究対象者の平均閉経年齢50.1 歳±2.6 歳は,日本 人 の 平 均 閉 経 年 齢 と 一 致 し た (23, 27, 33)。そして, KKSI 総得点 22±16 点,CES-D 12±10 点においても, それぞれの先行研究 (34–36) とほぼ一致し,対象者は日 本の一般的な更年期女性と類似した。 本研究では,慢性疾患の現病歴,ならびに治療を受け ている対象者は除外し,一次予防における調査であった にも関わらず,生活習慣病境界域にある対象者の割合は 58.6% を占めていた。脳ドックを受診した女性健診者の 心血管危険因子と頭部画像所見を年齢別に検討した先行 研究 (37) では,BMI,血圧,空腹時血糖などが加齢と ともに上昇していることを示しており現在,正常値で あっても健康行動を維持することが重要であると考え る。しかし,本研究の対象者においても喫煙者や現在の 運動習慣を持たないなど健康行動を維持することが困難 な対象者が含まれており,更年期女性のセルフケア能力 を高める支援が必要であると考える。 また,KKSI 23 点以上の更年期症状中等症以上の対象 者は45.1% を占めたが,現在までの更年期症状の受診 歴は0.6% であった。日本人の更年期女性を対象とした 先行研究 (23) が示すことは,50% 以上の女性が更年期 症状に対する受診先を理解していないことであった。こ のことより,本研究の更年期症状を経験している対象者 においても受診先を理解していない,もしくは受診の必 要性を認識していないために受診行動へ繋がらない対象 者が含まれている可能性がある。 そして,ヘルスリテラシーならびに健康の社会的決定 要因が更年期女性の喫煙習慣や更年期症状,抑うつに関 連していることが示された。 本研究において,健康の社会的決定要因の1 つである 教育歴と喫煙習慣に関連を示した。このことは健康な更 年期女性を対象とした本研究においても先行研究 (38) が示す個人の学歴が,喫煙習慣を高めることに一致した。
表 2 ヘルスリテラシーならびに健康の社会的決定要因と健康行動との関連 喫煙 同居家族の喫煙 飲酒 OR 95%CI AOR 95%CI OR 95%CI AOR 95%CI OR 95%CI AOR 95%CI 教育歴 短期大学卒業以上 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 専門学校卒業以下 3.214 1.206–8.566 3.228 1.103–9.443 1.014 0.531–1.934 1.405 0.670–2.943 0.680 0.362–1.281 0.672 0.341–1.324 就業の有無 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 1.150 1.082–1.223 NS 0.797 0.192–3.308 0.430 0.095–1.934 0.217 0.044–1.078 0.246 0.048–1.270 現在の結婚継続 あり 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 なし 1.1 19 0.439–2.855 1.289 0.391–4.242 0.196 0.096–0.397 0.216 0.096–0.486 1.310 0.704–2.440 1.368 0.645–2.903 子 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 0.742 0.269–2.048 0.495 0.149–1.641 0.371 0.182–0.758 0.589 0.261–1.325 0.590 0.309–1.128 0.501 0.239–1.052 世帯年収 1.00 1.00 1.00 0.845 0.658–1.086 0.940 0.792–1.1 16 1.122 0.955–1.318 ヘルスリテラシー 52 点以上 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 52 点未満 4.474 1.540–12.994 4.069 1.337–12.388 1.439 0.761–2.723 1.642 0.807–3.338 0.698 0.374–1.303 0.748 0.389–1.436 年齢(歳) 1.084 0.954–1.232 0.989 0.912–1.073 1.021 0.948–1.100 BMI 25 以上の肥満 現在の運動習慣 OR 95%CI AOR 95%CI OR 95%CI AOR 95%CI 教育歴 短期大学卒業以上 1.00 1.00 1.00 1.00 専門学校卒業以下 0.959 0.417–2.206 1.066 0.450–2.525 0.669 0.325–1.375 0.631 0.296–1.344 就業の有無 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 1.396 0.274–7.102 1.132 0.213–6.018 1.157 0.230–5.807 1.275 0.235–6.931 現在の結婚継続 あり 1.00 1.00 1.00 1.00 なし 0.556 0.239–1.292 0.602 0.228–1.590 0.877 0.429–1.792 0.935 0.404–2.167 子 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 0.822 0.345–1.956 1.044 0.400–2.723 0.685 0.330–1.422 0.638 0.282–1.444 世帯年収 1.00 1.00 0.942 0.766–1.159 1.054 0.880–1.262 ヘルスリテラシー 52 点以上 1.00 1.00 1.00 1.00 52 点未満 0.925 0.406–2.105 0.931 0.404–2.145 1.273 0.616–2.630 1.424 0.675–3.004 年齢(歳) 0.992 0.902–1.092 1.061 0.976–1.153 従属変数は健康行動(喫煙の有無,同居家族の喫煙の有無,飲酒の有無, BMI 25 以上の肥満の有無,現在の運動習慣の有無)を 2 群に分類した。 独立変数は教育歴,就業,現在の結婚継続,子,世帯年収ならびにヘルスリテラシーとした。 健康の社会的決定要因 :教育歴 (短期大学卒業以上と専門学校卒業以下) ,就業の有無 ,現在の結婚継続の有無 ,子の有無 ,世帯年収 ( 0:未収入 1: 100 万円未満 2: 200 万円未満 3: 300 万円未満 4: 400 万円未満 5: 500 万円未満 6: 600 万円未満 7: 700 万円未満 8: 800 万円未満 9: 800 万円以上) ,ヘルスリテラシー( HLS-14 総得点の中央値で 2値)とした。 調整変数:年齢(歳) 95%CI : 95% 信頼区間 OR :粗オッズ比, AOR :調整済オッズ比,ロジスティック回帰分析
表 3 健康行動,ヘルスリテラシーならびに健康の社会的決定要因と更年期症状,生活習慣病境界域,抑うつとの関連 更年期症状 生活習慣病境界域 抑うつ OR 95%CI AOR 95%CI OR 95%CI AOR 95%CI OR 95%CI AOR 95%CI 閉経 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 2.428 1.244–4.738 2.430 1.122–5.263 1.757 0.920–3.356 1.718 0.822–3.587 1.231 0.564–2.687 1.127 0.443–2.865 喫煙 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 1.254 0.491–3.200 1.351 0.425–4.292 1.359 0.51 1–3.61 1 1.451 0.460–4.576 2.098 0.768–5.734 1.367 0.385–4.856 同居家族の喫煙 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 1.1 18 0.592–2.1 13 1.402 0.627–3.132 1.332 0.696–2.550 1.380 0.617–3.085 1.201 0.565–2.553 1.103 0.421–2.885 飲酒 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 1.644 0.877–3.082 1.642 0.764–3.526 1.204 0.642–2.257 0.766 0.359–1.636 1.033 0.490–2.175 0.738 0.296–1.837 BMI 25 以上の肥満 なし 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 あり 3.128 1.317–7.428 4.187 1.523–1 1.51 1 5.324 1.752–16.180 6.850 2.058–22.805 1.877 0.764–4.610 2.645 0.892–7.845 現在の運動習慣 あり 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 なし 2.724 1.249–5.940 2.955 1.141–7.650 1.219 0.593–2.505 1.436 0.604–3.415 2.385 0.858–6.625 2.490 0.766–8.096 教育歴 短期大学卒業以上 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 専門学校卒業以下 1.076 0.573–2.023 0.894 0.415–1.927 0.719 0.381–1.360 0.673 0.320–1.415 1.257 0.595–2.658 0.837 0.326–2.143 就業 あり 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 なし 2.567 0.619–10.644 4.686 0.888–24.718 0.545 0.141–2.1 11 0.604 0.1 10–3.308 1.818 0.431–7.662 3.012 0.488–18.578 現在の結婚継続 あり 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 なし 0.933 0.502–1.734 0.972 0.41 1–2.300 0.984 0.526–1.841 1.806 0.764–4.270 1.136 0.541–2.383 1.746 0.598–5.092 子 あり 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 なし 1.364 0.715–2.600 1.926 0.857–4.326 0.461 0.239–0.888 0.433 0.196–0.959 0.625 0.277–1.409 0.422 0.144–1.242 世帯年収 1.00 1.00 1.00 1.134 0.949–1.355 1.088 0.914–1.295 1.190 0.953–1.486 ヘルスリテラシー 52 点以上 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 52 点未満 2.159 1.147–4.064 2.482 1.177–5.235 1.202 0.639–2.259 1.283 0.617–2.668 5.400 2.336–12.481 6.242 2.421–16.092 年齢(歳) 0.955 0.879–1.038 0.91 1 0.839–0.989 0.967 0.877–1.067 従属変数は更年期症状,生活習慣病境界域,抑うつを
Cut Off Point
により 2 群に分類した。 独立変数は閉経の有無と健康行動,教育歴,就業,現在の結婚継続,子,世帯年収ならびにヘルスリテラシーとした。 健康行動:喫煙の有無,同居家族の喫煙の有無,飲酒の有無, BMI 25 以上の肥満の有無,現在の運動習慣の有無 健康の社会的決定要因:教育歴(短期大学卒業以上と専門学校卒業以下) ,就業の有無,現在の結婚継続の有無,子の有無,世帯年収( 0:未収入 1: 100 万円未満 2: 200 万円未満 3: 300 万円未満 4: 400 万円未満 5: 500 万円未満 6: 600 万円未満 7: 700 万円未満 8: 800 万円未満 9: 800 万円以上) ,ヘルスリテラシー( HLS-14 総得点の中央値で 2 値)とした。 調整変数:年齢(歳) 95%CI : 95% 信頼区間 OR :粗オッズ比, AOR :調整済オッズ比,ロジスティック回帰分析
本研究の対象者は高い就業率,教育歴をもつ対象者で あったが,その集団においても健康の社会的決定要因が 健康行動に関連していることが示された。 さらに,ヘルスリテラシーと喫煙習慣,更年期症状, 抑うつに関連を示した。65 歳以上の地域在住の高齢者 を対象とし,ヘルスリテラシーと健康関連QOL を調査 した横断研究 (39) での HLS-14 総得点および各下位尺 度得点と本研究対象者の得点はほぼ一致した。更年期女 性を対象に健康支援や情報収集の入手方法について調査 した先行研究 (40) では,年齢が上昇するに従って医療 従事者や講演会から情報を得る割合が有意に高かったこ とが示され,老年期においては自身や家族の疾患により 医療従事者と関わる機会が多いことで,先行研究の高齢 者においてもヘルスリテラシーが発展している可能性が ある。そして特別養護老人施設に入所中の高齢者のヘル スリテラシーの発展に関する調査 (41) において,ティー チバック法による教育的プログラムの介入において,ヘ ルスリテラシー,ならびに健康知識や健康行動が改善し たことを報告している。そして,世代や教育歴に関わら ずヘルスリテラシーは正しい医療情報を持つ医療従事者 との関わりや健康教育プログラムにより発展する可能性 が示されている (41)。 教育歴や就業などの健康の社会的決定要因は介入に よって変化させることは出来ないが,ヘルスリテラシー は個人の能力として健康教育により発展しうる要因であ る (41)。そしてヘルスリテラシーの発展は,禁煙や運 動の習慣化などの健康行動の改善に繋がる可能性が高 い。 本研究の限界として,単一医療機関で特定健康診査を 受診した更年期女性に限定されており,日本人更年期女 性への一般化は限界がある。そして,対象者には社会経 済下位階層にある更年期女性を含まない可能性が高い。 さらに健康の社会的決定要因全ての要因を調査出来てい ないことである。そのため,今後の研究においては,更 年期世代の変化し続ける社会背景や健康の社会的決定要 因を包括的に捉えたうえで,ヘルスリテラシーが更年期 女性の健康に及ぼす影響を評価する必要があると考え る。 謝 辞 本研究にご協力いただきましたすべての皆さまに深謝 いたします。 本研究において開示すべき利益相反はない。 文 献 (1 ) 厚生労働省 第 11 回健康日本 21(第二次)推進専門委員 会.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000196943.html (2020.8.1) (2 ) 厚 生 労 働 省: 健 康 日 本 21( 第 二 次 ).https://www. mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/ kenkou/kenkounippon21.html(2020.8.1)
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