(2020 年 9 月 2 日受付,2020 年 12 月 15 日受理)
Eruption Styles and Ages of the Shirane-Minami Crater Chain and the Yumi-ike Maar
on the Southern Foot of the Shirane Pyroclastic Cone Group,
Kusatsu-Shirane Volcano, Central Japan
Nobuko K
AMETANI*,**, Yasuo I
SHIZAKI***, Nanako K
ATSUOKA*,
Mitsuhiro Y
OSHIMOTO**and Akihiko T
ERADA****The Kusatsu-Shirane Volcano is one of the most active composite volcanoes in Japan. All the historical eruptions, except for the 2018 eruption of the Motoshirane Pyroclastic Cone Group, have occurred in and around the Shirane Pyroclastic Cone Group (SPCG). Thus far, the eruption ages and styles of the Yumi-ike Maar and the Shirane-Minami Crater Chain (SMCC), located at the southern foot of SPCG, are not understood. In this study, we re-examine the eruption history of the volcano based on the stratigraphy revealed by three trench surveys, petrography, whole-rock composition, hydrothermal mineral assemblages, and new radiocarbon ages. Three 3 m-deep trenches (RH, SJ, and KSE trenches) were dug on the southern to eastern foot of the SPCG and four key deposits were identified. In ascending order, there are (A) the thick heterogeneous white clayey ash deposit rich in hydrothermal alteration minerals derived fromthe SPCG; (B) a mixture of pyroclastic surge and fallout deposits with juvenile jointed pyroclasts derived fromthe Yumi-ike Maar; (C) fallout ash from the AD 1882 eruption, a stratigraphically uppermost thin white clayey ash-fall deposit derived fromthe SPCG. Additionally, the funnel-shaped pyroclastic dyke is found only at the RH trench at the southern end of the SMCC; its strike coincides with the alignment of the SMCC craters, and it is accompanied by white clayey ash-fall deposits. Our study revealed that these key deposits (except for the ash-fall fromthe AD 1882 eruption) correspond to three eruptions, with the largest phreatic eruption occurring at the SPCG after ca. 7,000 cal BP; the phreatomagmatic eruption that formed the Yumi-ike Maar at ca. 1,400 cal BP (ca. 600 cal AD); and the phreatic eruptions that formed the SMCC after ca. 1,000 cal BP (ca. 1,000 cal AD). The eruption of the Yumi-ike Maar is likely to be the latest magmatic eruption at the Kusatsu-Shirane Volcano.
Key words : Kusatsu-Shirane Volcano, Yumi-ike Maar, Shirane-Minami Crater Chain, trench survey,14C age
*〒930-8555 富山市五福 3190
富山大学大学院理工学教育部
Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama, 3190 Gofuku, Toyama 930-8555, Japan
**〒403-0005 山梨県富士吉田市上吉田字剣丸尾 5597-1
山梨県富士山科学研究所
Mount Fuji Research Institute, Yamanashi Prefectural Gov-ernment, 5597-1 Kenmarubi, Kamiyoshida, Fujiyoshida, Yamanashi 403-0005, Japan
***〒930-8555 富山市五福 3190
富山大学学術研究部都市デザイン学系
Faculty of Sustainable Design, University of Toyama, 3190 Gofuku, Toyama 930-8555, Japan
****〒152-8551 東京都目黒区大岡山 2-12-1
東京工業大学理学院火山流体研究センター Volcanic Fluid Research Center, School of Science, Tokyo Institute of Technology, 2-12-1 Ookayama, Meguro, Tokyo 152-8551, Japan
Corresponding author: Nobuko Kametani e-mail: [email protected]
1.は じ め に 草津白根火山は,群馬県北西部に位置する国内有数の 活動的火山である(Fig. 1A).本稿では,守屋 (1983, 2012) に従い,火山体の名称として火砕物が積み重なってでき た円錐状の小丘を火砕丘,火口の直径に比べ堆積丘の比 高や面積が小さいものをマール,上記のものに比べて火 口が小さく明瞭な火山体をもたないものを小火口と呼 ぶ.最近の活動拠点である本火山の山頂部は,湯ゆ釜がま火口
(火口湖)を有する白根しら ね火砕丘群(Shirane Pyroclastic Cone Group: SPCG),その南方に位置する逢あいノの峰みね 火砕丘(Aino-mine Pyroclastic Cone)や本白根もとしら ね火砕丘群(Motoshirane Pyroclastic Cone Group: MPCG)(石崎・他, 2020)など複 数の火砕丘から構成されており,弓ゆみ池いけマール(Yumi-ike Maar)や複数の小火口も存在する(Fig. 1B).気象庁編 (2013) をもとに白根火砕丘群周辺での噴火地点を Fig. 2 として整理した. 草津白根火山では 19 世紀以降,白根火砕丘群とその 周辺において水蒸気噴火が頻発してきた(気象庁編, 2013).また,歴史時代には静穏な状態が続いた本白根 火砕丘群においても,2018 年 1 月 23 日に小規模な水蒸 気噴火が発生し,噴石による人的被害も生じた(石崎・ 他, 2020).これら頻発する噴火のうち,1805 年以降の噴 火は全て水蒸気噴火である.湯釜火口近傍における噴火 が最も高頻度で,湯釜火口から半径 700 m 内で合計 16 回以上発生している.その一方,白根火砕丘群の北及び 南側斜面でも噴火が繰り返されている.これら噴火のう ち噴出量が 109kg を超える噴火は 2 回あり,過去 130 年 間の総噴出量は 1010kg オーダーと見積もられている(寺 田, 2018). 明治時代以降に噴火した火口のうち,湯釜火口や弓池 マール(1902 年に再噴火)は現在観光名所になっている. また,弓池マールと,1927 年・1932 年及び 1942 年に水 蒸気噴火を発生した小火口列(白根南火口列(新称): Shirane-Minami Crater Chain)は,群馬県と長野県を結ぶ 幹線道の一つである国道 292 号を挟み,その極近傍に位 置する(Fig. 2).これらの火口や火口列において,2018 年本白根火砕丘群噴火(石崎・他, 2020)のように,突発 的な水蒸気噴火が発生した場合,特に観光シーズンであ
Fig. 1. (A) Location of the Kusatsu-Shirane Volcano. Black triangles represent active volcanoes. (B) Aerial photograph of the Kusatsu-Shirane volcano (viewed fromthe south) showing the representative edifices and products (shown with abbreviations) of the volcano. This image is a composite of aerial photographs from the Geospatial Information Authority of Japan that was generated using the Agisoft Metashape software. Abbreviations are as follows: SPCG: Shirane Pyroclastic Cone Group; MPCG: Motoshirane Pyroclastic Cone Group.
れば,2014 年御嶽山噴火のような甚大な人的被害が生じ かねない.更に社会インフラや観光業に与える影響も甚 だしいと予想される.従って,草津白根火山の,過去に 噴火記録のある火口及び火口列の活動履歴を明らかに し,それら及びその周辺域の火山災害の発生頻度と大き さを明らかにすること,すなわち噴火ハザードを提案す ることが,本火山の防災・減災のための重要課題である. 本研究では,白根火砕丘群とその南斜面に位置する弓 池マール及び白根南火口列からの噴出物の噴出量,空間 分布,火口位置の変遷など,災害評価に必要な情報を得 ることを目的とした.白根火砕丘群周辺は,近年の噴出 物が表層を覆っているため自然露頭に乏しく,これらの 噴出物についての十分な情報を得ることが難しい.そこ で,同火砕丘群の近傍で重機を用いたトレンチ調査を行 い,白根火砕丘群,弓池マール及び白根南火口列からの 噴出物の噴火年代・噴火様式などの噴火履歴を明らかに した. 2.地 質 概 説 草津白根火山は,新第三紀中新世〜鮮新世の安山岩類 を基盤とする活火山である(宇都・他, 1983).本火山の活 動は,小規模成層火山体形成期(第 1 噴火期),大規模な 火砕流・溶岩流の噴出期(第 2 噴火期),現山頂部での溶 岩流の噴出,火砕丘・火砕丘群及びマールの形成期(第 Fig. 2. Red relief image map of the surrounding area of the Shirane Pyroclastic Cone Group showing three trench sites of
this study (RH, SJ, and KSE; yellow squares), the boundary of eruption products (solid white lines; Kametani et al., 2020), craters of past eruptions (broken blue lines; modified by Uto et al., 1983), and vent area of historical eruptions with eruption years (yellow circles; modified by Japan Meteorological Agency, 2013). Stage 2 lavas are locally exposed at the bottom of the crater wall, whereas these older rocks are not illustrated in the map for simplification. Abbreviations are as follows: YgC: Yugama Crater; KC: Karegama Crater; MC: Mizugama Crater; YmC: Yumi-ike Crater.
3 噴火期)に区分される(早川・由井, 1989).各噴火期の 年代は,第 1 噴火期が 0.6〜0.5 Ma(宇都, 1983; 金子・他, 1991),第 2 噴火期が 0.5〜0.3 Ma(金子・他, 1991),第 3 噴火期が 16 ka〜現在(高橋・他, 2010)である. 本火山の山頂部の北半部を占める白根火砕丘群とその 周辺域の地形と噴出物の分布を Fig. 2 と Fig. 3 に示す. 第 3 噴火期に形成された白根火砕丘群は底径約 1.6 km, 比高 200 m の複合火砕丘である.火砕丘群の山頂部には 新旧の火口地形が残っており,最も新しい火口群である 涸 かれ 釜 がま 火口(長径約 270 m),湯釜火口(同約 420 m)及び水みず 釜 がま 火口(同約 250 m)が北東-南西方向に並ぶ(Fig. 3A). また,火砕丘の南東斜面には,約 480 m にわたって複数 の小火口が北東-南西方向(N50˚E の向き)に並んだ白根 南火口列が見られる(Fig. 2).水上・他 (1942) には,こ の火口列は 1942 年の噴火活動により形成されたとの記 載がある.一方,群馬県前橋測候所 (1933) には,火口列 の南端にあたる火口地形が図中に描かれているが,形成 年代は示されていない. 白根火砕丘群は複数の噴出物ユニットからなり,それ らは噴出順に平へい兵衛べ い池いけ溶岩,香草か ぐさ溶岩,白根しら ねひがし東溶岩,水 釜溶岩及び白根火砕堆積物からなる(亀谷・他, 2020). 以下,亀谷・他 (2020) に従い,各噴出物の岩相・岩質の 概要を述べる.平兵衛池溶岩,香草溶岩及び白根東溶岩 は火砕丘本体の東側に分布する塊状溶岩流である(Fig. 1B).いずれの溶岩流もデイサイト〜安山岩質の多様な 岩質からなり,肉眼観察スケールでデイサイトと安山岩 が縞状となって共存する不均質な溶岩が普通に見られ る.白根火砕堆積物は,火砕丘本体を構成する火砕堆積 物であり,平兵衛池溶岩,香草溶岩及び白根東溶岩を 覆って分布する.水釜溶岩は,白根火砕丘の活動時に形
Fig. 3. The photographs of the area around the Yugama Crater. Points X and Y in the 3 A correspond to the points X and Y in 3B. (A) Aerial photograph fromthe northwest (original photo is fromGoogle Earth Pro). The white tephra layer exposed on the Yugama Crater is thicker on the eastern wall of the crater and decreases toward south to north. This tephra layer is also exposed on the surface fromthe Yugama Crater to the location of the SJ trench. (B) The white tephra layer is exposed on the north to east wall of the Yugama Crater, which reaches maximum thickness on the east wall.
成された水釜火口の東〜南縁に溶岩ドームを形成してい る.水釜溶岩と白根火砕堆積物は,下位の平兵衛池溶岩, 香草溶岩及び白根東溶岩に比べ SiO2変化量が少ない安 山岩から構成される.また,湯釜火口と水釜火口のリム 部では,厚い白色火山灰層が白根火砕堆積物を覆ってい る(Fig. 3B). 白根火砕丘群の南麓には,逢ノ峰火砕丘の噴出物(逢 ノ峰火砕堆積物)と弓池マールの噴出物(弓池火砕堆積 物)が分布する(亀谷・他, 2020).逢ノ峰火砕丘は,底径 約 580 m,比高 90 m の円錐形の山体をもつ.弓池マール は,北西-南東方向に配列した長さ約 400 m と約 200 m の長短 2 列の火口列からなり,北側の火口列のほぼ中央 部の火口が現在,弓池(火口湖)となっている(Fig. 2). 弓池火砕堆積物は,弓池マールのリム部に湖面からの比 高約 10〜20 m の高まりを作って分布しており,マール 北東縁部(逢ノ峰火砕丘散策道の入口付近)に好露頭が 見られる.この露頭での本火砕堆積物は,全体に暗赤褐 色の弱膠結した凝灰角礫岩層であり,急冷割れ目,パン 皮状割れ目あるいはガラス質の平滑面を有する火山弾と 粗粒火山灰を主要構成物とする. 3.研 究 手 法 3-1 トレンチ調査 本研究では,白根火砕丘群の東〜南斜面の計 3 地点 (Fig. 2)で重機を用いたトレンチ調査を実施した.本稿 では,近傍の施設等を基に地点名を付け,東京工業大学 草津白根火山観測所湯釜東(KSE)観測点近傍を KSE, 草津白根レストハウス近傍を RH,白根神社奥宮(白根 明神)近傍を SJ と呼ぶ.KSE 地点は,湯釜中心の東約 800 m,白根火砕丘群の東斜面上に位置する.SJ 地点は, 湯釜中心の南東約 800 m(火口縁から約 620 m , Fig. 3A), 本火山第 2 噴火期の溶岩流(青葉溶岩)の作る高まりの 上に位置する.各トレンチは幅・奥行・深さがいずれも 約 3 m の方形に掘削し,方位をもとに壁面を北面,東面 及び西面とした(Fig. 4).白根火砕丘群近傍であること から,KSE・SJ 地点は,白根火砕丘群山頂域で起きた小 規模噴火のテフラを検出できる可能性が高い.RH 地点 は,湯釜火口中心の南方 550 m,白根火砕丘群の南斜面 上の白根南火口列の南端に位置し,近傍に位置する白根 南火口列と弓池マールの活動履歴評価につながる情報が 得られる. 3-2 噴出物の物質科学的解析 特有の外観(冷却節理, パン皮状割れ目あるいは平滑 面)をもつ火砕物について,富山大学研究推進機構機器 分析施設の蛍光 X 線分析装置(XRF: スペクトリス社製 PW2404R)を使用し,全岩化学組成を分析した.主・微 量成分とも無水四ホウ酸リチウムにより 1: 5 に希釈し たガラスビードを用いて測定した.測定方法と条件は, 矢島・他 (2001) と Terashima (1977) に従った.分析精度 は Ishizaki et al. (2009) を参照されたい.各試料の薄片を 作成し,偏光顕微鏡を用いモード測定をおこなった.斑 晶と石基の量は,透過光を用い 40 倍で 2000 ポイントを 測定して求めた.なお,本稿では,結晶を長径に基づい て斑晶(長径≧0.3 mm),微斑晶(同 0.1〜0.3 mm)および マイクロライト(同≦0.1 mm)に区分し,モード測定で は微斑晶,マイクロライトおよびガラスを石基とした. テフラについては,各ユニットのマトリクス部分に含 まれる火砕物粒子のタイプ分類(構成物組成分析)を行っ た.分析には篩分けで得た径 1〜2 m m の火砕物粒子(約 200 粒子)の薄片を用い,偏光顕微鏡下での岩石組織の 特徴を基に,薄片中の全ての火砕物粒子を ① 未変質火 山岩片(石基も斑晶も新鮮な斑状組織),② 弱変質火山 岩片(石基は変質しているが斑晶は未変質),③ 隠微晶 質岩片(全体が微細な変質鉱物からなる),④ 珪化岩片 (全体あるいは一部が石英粒子の集合体からなる)に区 分し,各タイプの粒子数から個数百分率(%)を求めた. 粘土質のテフラについては,マトリクス部分に含まれ る変質鉱物を粉末 X 線回折法により同定した.分析に Fig. 4. Schematic diagram of trenches, showing dimensions of each trench. Inner walls of each trench are
はバルク試料を用い,試料を 40 ℃の恒温槽で乾燥させ たのち,メノウ乳鉢で微粉末にしたものを用いた.分析 には,富山大学都市デザイン学部の X 線回折装置(XRD: リガク社製 MiniflexII)を使用した.測定条件は Cu 管球 30 kV,15 mA,走査角度 2θ 範囲を 3°〜70°,走査速度 2° /min とした.鉱物同定のためのデータ解析にはリガク 社製統合粉末 X 線解析ソフトウェア PDXL2 を用いた. また,一部の試料については,エチレングリコールを湿 潤させた後,上と同じ条件で再測定を行い,面間隔の変 化を基にスメクタイトの同定を行った. 3-3 放射性炭素年代測定 本研究では 2 試料の放射性炭素(14C)年代測定用試料 を採取した.分析は,(株)パレオ・ラボに依頼した.酸・ アルカリ・酸による前処理後に試料をグラファイト化し, 加速器質量分析計(NEC 社製コンパクト AMS 1.5SDH) を用い14C 及び δ13C 濃度を測定した.14C 年代の算出 には Libby の半減期(5,568 年)を用い,δ13C による同位 体分別補正を行った.14C 年代(yr BP: 遡及開始年を AD
1950 年とする)から暦年代(cal BP もしくは cal AD)へ の較正には,較正プログラム Oxcal4.3(Ramsey, 2009)を 用い,較正曲線データには Reimer et al. (2013) の IntCal 13 を適用した. 4.トレンチ堆積物各論 本研究では,トレンチの壁面に露出する堆積物(噴火 や土石流などのイベントで形成され, その事件を記録す る堆積物)を,堆積物上面の風化面の存在や上下の土壌 層の存在をもとに認定し,下位から順に,例えば KSE 地 点では K1 堆積物,K2 堆積物… のように,トレンチ略記 の後に番号を付して堆積物名とした.堆積物が岩相の異 なるサブユニットに区分できる場合には,下位から順に 略記の後ろに a,b,c のアルファベットを付してサブユ ニット名とした(例えばサブユニット R3a など).各地 点で認定された堆積物は,KSE 地点が計 9 枚(下位から K1〜9; Fig. 5A),SJ 地点が計 4 枚(S1〜4; Fig. 5B),RH 地点が計 7 枚(R1〜7; Fig. 5C)である.また,RH 地点 では割れ目充填物とその付随堆積物(R5)が見られる (Fig. 5D). 以下では,トレンチで見られた堆積物を,① 変質火山 岩の円礫を伴う土石流堆積物,② 粘土質火山灰を主とす る堆積物,③ K3 堆積物直上の土石流堆積物,④ 冷却節 理をもつ火山岩塊を伴う堆積物,⑤ R3,K5 堆積物直上 の土石流堆積物,⑥ 割れ目の充填物,⑦ 割れ目の上端か ら連続する堆積物,⑧ 黒色土壌形成直前の層位に見られ る堆積物,⑨ 各地点の最上位に見られる堆積物に分けて 記載する. 4-1 変質火山岩の円礫を伴う土石流堆積物 変質火山岩の円礫を伴う堆積物が,RH・SJ 地点で各 1 枚(R1, S1),KSE 地点で 2 枚(K1, K2)見られる.これ らは,各地点の基底部で確認されたが,各トレンチをま たいで共通するものなのかどうかは不明である. R1,S1 及び K1 堆積物(以下では「堆積物」を省略) は,トレンチの基底に産し下面が露出されておらず,正 確な層厚は不明である.各層厚は,R1 は 90 cm 以上,S1 は 10 cm 以上,K1 は 120 cm 以上である.一方,K2 は上 下境界が認識され,層厚 14〜20 cm である(Figs. 5 A, 6). R1 と S1 は,堆積構造が不明瞭な粒子支持の礫層であり, 円磨された火山岩礫とその粒間を埋める淡褐色〜白色の 粘土〜シルトからなる.壁面で見られた最大長径の火砕 物粒子を堆積物の最大径とみなすと(以下, 同じ),R1 で 20 cm,S1 で 10 cm である.K1 とその上位の K2 は,淘 汰の悪いマトリクス支持の礫層であり,やや円磨された 火山岩礫とその粒間を埋める淡褐色の火山灰質の砂〜シ ルトからなる.最大径は K1 で 50 cm,K2 で 25 cm であ る.また,K2 には最大層厚 3 cm でパッチ状の青灰色シ ルトも挟在されている. これらの堆積物は,泥質分に富むマトリクスと砂から 礫サイズの様々な粒度の粒子からなる不淘汰な堆積物で あるという共通の特徴をもっており,岩相の特徴から土 石流堆積物(debris flow deposit: Smith and Lowe, 1991)で あると判断される. 4-2 粘土質火山灰を主体とする堆積物 RH・SJ・KSE 地点には,変質したラピリ・火山岩塊を 伴い,やや青みを帯びた明白色粘土質火山灰を主体とす る R2,S2 及び K3 が認められる(Fig. 5).R2 と S2 の上 面には共に,厚さ数 cm の褐色の風化面が発達する.各 層厚は,R2 は 40〜90 cm と変化が著しく(Fig. 5C),S2 は 220 cm,K3 は 48 cm であり,S2 の層厚が極端に厚い (Fig. 6).これら堆積物に含まれる変質火山岩の最大径 は,その層厚と見かけ比例し,最大層厚をもつ S2 は 30 cm,一方,R2 は同 10 cm,K3 は同 7 cm と小さくなる. R2,S2 及び K3 の上半部は,淘汰が悪い塊状無層理の火 山灰主体の堆積物からなるが,K3 の下半部はラピリに 富む薄層が細粒火山灰中に複数枚挟在され,成層構造が 発達する堆積物である(Figs. 6, 7 A). 4-3 K3 堆積物直上の土石流堆積物 KSE 地点では,粘土質火山灰を主とする堆積物(K3) の直上に,特徴的な 2 相からなる礫層(K4)が認められ る(Fig. 6).K4 は全層厚が約 50 cm であり,K4a と K4b のサブユニットに区分される.K4a は,層厚が 6〜40 cm と大きく変化し,逆級化構造と不明瞭な平行層理が認め られる粒子支持相を示す.K4a の主要構成物は,角の取
Fig. 5. Photographs (left) and sketches (right) of the cross-section of each trench. Solid lines show the boundary of units, and broken lines show the boundary of subunits. (A) East wall of the KSE trench. (B) North wall of the SJ trench. (C) North wall of the RH trench. Flame structures developed on the upper surface of unit R2 (arrowheads). (D) Pyroclastic dyke exposed on the east wall of the RH trench. Part of unit R1 was dragged into the dyke and deformed at the bottom of the dyke (arrow).
れた多面体状の火山岩礫(最大径 15 cm)とその粒間を 埋める粗粒砂である.KSE 地点の東壁面にはチャネル 構造が認められ,成層構造が発達した灰色〜褐色の粗粒 砂と下位の K3 から剥離した礫(rip-up clast)がチャネル を充填している(Fig. 7B). K4b は,淘汰の悪い塊状で粒子支持の礫層(層厚 5〜 17 cm)であり,淡褐色〜褐色細粒砂とその中に点在する やや円磨された火山岩礫(最大径 7 cm)を主要構成物と し,未炭化の木片も少量含まれる. これらの堆積構造や構成物の特徴から,K4a・K4b 共 に,土石流堆積物(Smith and Lowe, 1991)と判断される.
4-4 冷却節理をもつ火山岩塊を伴う堆積物 RH・SJ・KSE 地点には,冷却節理やパン皮状割れ目あ るいは平滑面をもつラピリ・火山岩塊及びそれらの破片 を特徴的に含む R3,S3 及び K5 が認められる(Figs. 5, 6). これら堆積物の全層厚は,R3 は 135 cm,S3 は 65 cm,K5 は 30 cm であり,弓池マールに最も近い RH 地点で最も 厚く,弓池マールから遠ざかるにつれて薄くなる(Fig. 6).また,堆積物に含まれる火砕物の主要な粒径は,R3・ S3 は火山岩塊〜粗粒ラピリであるのに対し,K5 は細粒 ラピリ〜火山灰となり,層厚と同様,弓池マールから遠 ざかるにつれて細粒化している.R3 は R3a〜R3d の 4 枚 のサブユニット,S3 は S3a と S3b の 2 枚のサブユニット, K5 は K5a と K5b の 2 枚のサブユニットに区分される. R3a と S3a は,層厚が各々 70〜110 cm 及び 10〜60 cm と層厚変化が大きく,冷却節理や平滑面をもつ火山岩 塊〜粗粒ラピリを主要構成物とする.これらはそれぞれ 下位の R2 及び S2 の上面に火炎状構造を形成している (R2・S2 から剥離した礫(rip-up clast)を含まないことと, S2 の風化面が上面全体に見られることから,侵食面で ある可能性は低い).R3a は淘汰が悪く,暗赤褐色で弱 膠結した塊状・粒子支持(火砕物の最大径 50 cm)の堆積 物であり,灰色〜白色の細粒火山灰互層をパッチ状に挟 在することが特徴である(Fig. 6).S3a は,暗灰色のラ Fig. 6. Correlations of stratigraphic sections drawn fromthe three trenches. Stratigraphic positions of samples
ピリ・火山岩塊(最大径 17 cm)と同質の粗粒火山灰から なり,中位部にパッチ状の白色火山灰層が挟在する(Fig. 5B). R3a の上位には,白色〜緑灰色の粘土質火山灰を主要 構成物とする,未固結でクロスラミナが発達したラピリ を含む堆積物(R3b; 層厚 22 cm)が見られる(Fig. 5C). KSE 地点の K5a(層厚 18 cm)も,R3b と同様にクロスラ ミナが発達した白色〜灰色細粒火山灰層を主体とし,弱 膠結した暗灰色粗粒火山灰や淘汰の良い黒灰色ラピリと 互層をなす(Fig. 7D).R3b 及び K5a にも,パン皮状の 割れ目をもつ火山岩塊(最大径 10 cm)や多面体状のラ ピリが含まれる.R3b の上位には,塊状無層理な堆積物 (R3c; 層厚 18〜22 cm)が見られる(Figs. 5C, 6).R3c の 主要構成物は,白色〜淡褐色の細粒火山灰であり,その 中にラピリ・火山岩塊(最大径 10 cm)が点在し,下部に はパッチ状の明白色火山灰層が挟在する.最上部の R3d,S3b 及び K5b は,層厚が各々 15 cm,10 cm,7 cm で あり,多面体状で表面が赤色酸化した粗粒火山灰〜ラピ リからなる比較的淘汰が良い堆積物である(Figs. 5, 6). R3d には炭化木片(年代測定試料 1009-RH)も含まれる. 4-5 R3,K5 堆積物直上の土石流堆積物 火山岩の円礫を伴う堆積物が,RH・KSE 地点で R3 及 び K5 の直上に各 1 枚(R4, K6)見られる.これらは,各 トレンチをまたいで共通するものなのかどうかは不明で ある. 各層厚は,R4 は 10〜40 cm,K6 は 22〜40 cm である (Figs. 5 A, 5C, 6).R4 と K6 は堆積構造が不明瞭なマト リクス支持の礫層であり,やや円磨された火山岩礫と褐 色の風化火山灰質粘土からなる.火山岩礫の最大径は R4 で 25 cm,K6 で 8 cm である.また,K6 の下部には最 大層厚 2 cm でパッチ状の白色火山灰層も挟在されてい る. これらの堆積物は,泥質分に富むマトリクス中に砂か ら礫サイズの様々な粒度の粒子を含む不淘汰な堆積物で あるという共通の特徴をもっており,岩相の特徴から土 石流堆積物(Smith and Lowe, 1991)であると判断される.
4-6 割れ目の充填物
RH 地点に,上下に向かってじょうごが開く糸巻き型 の火砕物脈(脈幅は 60 cm 以上)が観察される(Fig. 5D). 本脈は,RH 地点の東壁面の北端付近にのみ見られ,南 Fig. 7. Characteristics of deposits observed at the trench log walls. (A) Lapilli rich thin layer found at the bottomof
unit K3 (arrowheads). (B) Channel structure of subunit K4 a. (C) Juvenile volcanic blocks of subunit R3 a (left) and subunit S3 a (right) with cooling joint (arrowhead) and smooth surface. (D) Pyroclastic surge deposit found at the bottom of subunit K5 a, which is composed of thin gray and white ash layers and has cross laminae.
きずられ変形している様子が観察できること(Fig. 5D の矢印)から,その大部分は,脈壁面の堆積物を剥離し て取り込んだものと考えられる.脈中を構成する火山灰 は,脈の上端部から北面及び東面へとほぼ水平に堆積し, テフラ・土石流堆積物(R5)へと連続している(Fig. 5D). 4-7 割れ目の上端から連続する堆積物 RH 地点の割れ目(前述の火砕物脈)の上端から西方 および南方へ連続する堆積物(R5)とその一部を覆う堆 積物(R6)が認められる(Fig. 5D). R5 は,全層厚が 10〜50 cm であり,R5a〜R5c の 3 枚 のサブユニットに区分される.R5a は,層厚が 10〜30 cm であり,割れ目の上端から連続して水平方向に堆積 している.割れ目の上端付近では,南側から割れ目内へ と落ち込むように堆積し,R5b に覆われる(Fig. 5D).ま た,R5a は,割れ目から離れて黒色土壌に覆われるとこ ろでは上半部が風化して褐色を呈する(Fig. 5C).R5a の構成物は白色細粒火山灰が主体で,変質したラピリ・ 火山岩塊(最大径 30 cm)を含む.また,東面の一部では 本サブユニットの直下に層厚 1 cm の黒色土壌層(年代 測定試料 1011-RH)が見られる(Fig. 6). R5b は,未固結・塊状で淘汰不良のマトリクス支持の 礫層(層厚 20〜30 cm)であり,淡褐色の火山灰質粘土と やや円磨された火山岩礫(最大径 15 cm)を主要構成物 とする.本サブユニットは割れ目上端にのみ見られ,北 側から窪みに落ち込むように堆積して R5a を部分的に 覆う(Fig. 5D). R5c は,割れ目の上端部に局所的に分布し,R5b を覆 う火山灰層(層厚 10 cm)であり,白色粘土質火山灰と変 質火山岩の細粒ラピリからなる(Figs. 5D, 6).本サブユ ニットの上面は風化し褐色を呈する. R6 は,R5c と同様に割れ目の上端部に局所的に分布 し,R5a 及び R5c の一部を覆う火山灰層(層厚 7 cm)で あり(Figs. 5D, 6),明白色粘土質火山灰と変質火山岩の 細粒ラピリからなる. 4-8 黒色土壌形成直前の層位に見られる堆積物 KSE 地点では,表層の黒色土壌の下に 2 枚の淡褐色の 火山灰土壌があり,その間に挟まれる 2 枚の堆積物(K7, 堆積物(層厚 15 cm)であり,少量の変質したラピリ・火 山岩塊(最大径 12 cm)を伴う.火山灰の色調は,基底部 では灰白色,中位部では灰色であり,上部では風化によ り褐色に漸移する.火山岩塊は,本堆積物の下半部に多 く認められ,大きなものはサグ構造を伴う. 4-9 各地点の最上位に見られる堆積物 RH・SJ・KSE 地点には,地表付近の黒色土壌中あるい はその基底付近に白色粘土質火山灰を主体とするパッチ 状の堆積物(R7, S4, K9)が認められる(Figs. 5C, 6).こ れら堆積物の層厚は,R7 は 2〜10 cm,S4 は 5 cm,K9 は 1 cm であり,KSE 地点に比べ RH・SJ 地点でやや厚い傾 向がある.いずれの堆積物も白色粘土質火山灰と少量の 白色の火山灰被膜をもつ変質ラピリ(最大径 1 cm)を伴 う. 5.テフラの物質科学的特徴 5-1 本質火山岩塊の岩石学的特徴 R3,S3 及び K5 には,冷却節理やパン皮状割れ目が発 達したラピリ・火山岩塊や,平滑面に囲まれたラピリ・ 火山岩塊が特徴的に産し,これらは本質物である可能性 が高い(Fig. 7C).これら各堆積物のサブユニット R3a, S3a 及び K5a から採取した本質火山岩塊の薄片写真を Fig. 8A に,全岩化学組成及び斑晶鉱物モード組成を Appendix 1 に,組成変化図を Fig. 9 に示す.これらは斜 長石,単斜輝石,直方輝石,カンラン石,石英(含まれ ない試料もある),不透明鉱物を斑晶としてもち,モード 組成も地点とは無関係にほぼ同一である(Appendix 1). 斑晶の多くは破砕されており,破断面がわずかに離れて いるだけで破砕前の結晶の形を復元可能なジグソー フィット構造をもつ(Fig. 8A).全岩 SiO2量は 59〜61
wt. % であり,地点とは無関係にほぼ同一の安山岩組成 をもつ.分析した試料は全て K2O-SiO2図では Medium-K の領域に,FeO*/MgO-SiO2図ではカルクアルカリ系列 の領域に点示される(Fig. 9). 5-2 堆積物の構成粒子と変質鉱物 S2,K7(K7a, K7b)及び K8 から採取した火山灰試料 について行った火砕物粒子のタイプ分類の結果を Table
1 に,典型的な粒子タイプの顕微鏡写真を Fig. 8B〜8D に示す.S2 は未変質および弱変質火山岩片を含まず,珪 化岩片(31 %)と隠微晶質岩片(69 %)からなる.K7 は, 弱変質岩片(K7a で 57 %, 同 K7b で 31 %)と隠微晶質岩 片(K7a で 35 %, 同 K7b で 63 %)からなり,少量(<10 %)の未変質岩片と珪化岩片を含む.K8 は,未変質岩片 を含まず,隠微晶質岩片が大半を占め(82 %),少量の弱 変質岩片(12 %)と珪化岩片(6 %)を含む. 粘土質火山灰に富むテフラである S2,K7b,K8,R5a, R5c 及び R6 から採取した火山灰試料について行った
Fig. 8. Thin section photomicrographs of representative pyroclasts and fragments in tephras (plane-polarized light). Scale bars represent 0.5 mm. (A) Volcanic blocks of unit R3 contain phenocryst fragments with jigsaw fit arrangement (arrowheads). (B) Weakly altered volcanic fragment contained in subunit R7a. (C) Crypto-crystalline fragment contained in unit S2. (D) Silicified fragment contained in unit S2.
Table 1. Proportions of fragment component (1-2 m m ) of ash. Abbreviations are as follows: nd: not detected; tr: <1 %.
Table 2. Hydrothermal mineral assemblages of clay ash. Abbreviations: Qtz: quartz; Crs: cristobalite; Trd: tri-dymite; Alu: alunite; Kln: kaolin group mineral; Sm: smectite; Pyl: pyrophyllite. Symbols indicate X-ray peak intensities subtracted background: ***: intense (>500 cps); **: moderate (20-500 cps); *: weak (< 20 cps); f: faint; nd: not detected.
XRD 分析の結果を Table 2 に示す.全ての試料に石英お よびクリストバライトが含まれ,X 線ピークも顕著であ る.S2 を除く全ての試料にトリディマイトが含まれる. K8 を除く全ての試料にミョウバン石とカオリン鉱物が 含まれる.R5a を除く全ての試料にスメクタイトが含ま れる.K8 及び R5a を除く他の試料にはパイロフィライ トが含まれる. 6.14C 年代 本研究で採取した試料の14C 年代と暦年を Table 3 に示 す.暦年の範囲は 2σ(95.4 % 信頼限界)で示した.R3 の サブユニット R3d から採取した炭化木片(1009-RH)の14C 年代は 1,460±15 yr BP であり,1,309-1,382 cal BP(568-641 cal AD)に暦年較正される.R5 のサブユニット R5a 直下から採取した土壌(1011-RH)の14C 年代値は 1,055
±15 yr BP であり,928-980 cal BP(970-1,022 cal AD)に
暦年較正される.これらの14C 年代は,上位層から採取 した試料ほど若い年代値を示し,層序とも矛盾がない (Fig. 6). 7.考 察 7-1 堆積物の特徴から推定される定置様式 以下では,岩相の特徴から各堆積物の定置様式につい てまとめた上で,層位や岩石学的特徴に基づいて対比可 能なものについては対比を行う. R2,S2 及び K3 は,不淘汰で塊状の堆積物であり,変 質したラピリ・火山岩塊を伴い,やや青みを帯びた明白 色粘土質火山灰を主体とすること,各地点において基底 部付近に位置することから,同一の堆積物として対比す ることができ,本堆積物を A 層とする.A 層のもつ塊状 Fig. 9. Whole-rock variation diagrams of juvenile blocks of subunits R3 a, S3 a, and K5 a. For comparison, data of
eruption products of the Shirane Pyroclastic Cone Group, Ainomine Pyroclastic Cone, Yumi-ike Maar (Kametani et al., 2020), and Kagamiike-kita Pyroclastic Cone (KKPC) (Ishizaki et al., 2020) are also shown. The discriminant line in the FeO*/MgO-SiO2diagramis fromMiyashiro (1974), and those in the K2O-SiO2
で不淘汰という岩相は土石流堆積物を特徴づけるもので あるが,SJ 地点のような地形的高まり上に最も厚く土石 流が堆積したとは考えにくい.また,KSE 地点ではラピ リと火山灰からなる成層構造も認められ(Fig. 7A),間 欠的な噴煙からこれら火砕物が堆積したことが示唆され ることから,本ユニットは水蒸気噴火による降下テフラ 層と判断される. R3,S3 及び K5 は,冷却節理やパン皮状割れ目あるい は平滑面をもつラピリ・火山岩塊が特徴的に産し,これ らは本質物である可能性が高い(Fig. 7C).R3a と S3a はこれらの火山岩塊に富み,下位の R2 及び S2 の上面に 火炎状構造を形成している.R3a 及び K5a には火山灰 の互層やクロスラミナが見られることと,R3b 及び R3c は層厚変化が大きいことから,これらは火砕サージ堆積 物と判断される.一方,R5d は淘汰の良いラピリからな り,降下堆積物と判断される.このような特徴から,こ れら堆積物は弾道放出物,火砕サージ堆積物,降下堆積 物の混合物であると結論できる.また,R3a,S3a 及び K5a から採取された本質火山岩塊の全岩化学組成,斑晶 鉱物組合せ,斑晶鉱物モード組成は一致する(Fig. 9, Appendix 1).このように岩相と岩石学的特徴が一致す ることから,これらは同一のマグマ噴火により堆積した と結論され,本堆積物を B 層とする. RH 地点で見られた火砕物脈は,R1 から R4 までの堆 積物をほぼ鉛直に切り,大部分が壁岩を削剥し取り込ん だものと考えられるが,脈中を構成する火山灰が,脈の 上端部でそのままほぼ水平に堆積し,降下テフラ・土石 流堆積物(R5)へと連続する(Fig. 5D).R5a と R5c は白 色細粒火山灰と変質ラピリ・火山岩塊からなり,本質物 は一切含まれない.また,これら 2 枚のサブユニットに は,下位層の粘土質テフラには含まれないトリディマイ トが豊富に含まれており,変質鉱物組合せが異なること から(Table 2),泥火山のような流動化プロセス等で周辺 火山灰部が流動したというよりは,水蒸気噴火により深 部からこれらの変質鉱物がもたらされたと考えられる. 本脈の走向が白根南火口列の伸びの方向と一致し,RH 地点が火口列南西端の小火口の近傍に位置すること (Fig. 2)から,本脈は白根南火口列の火山・地熱活動の 経路(例えば火道)とその充填物であると判断される. 脈内に見られる壁岩由来の岩塊は,岩相の特徴から元の 層準とほぼ同じ高さにとどまっているため,脈が形成さ れた直後に壁面が剥離したと推測される. 火砕物脈の上端から連続的に堆積している R5 は,各 サブユニット(R5a〜R5c)の境界に風化面が見られない ことから,これらが短時間の間に生じた一連のイベント で堆積したことは間違いない.R5a は北面と東面にほぼ 水平に堆積しており,R5c は脈の上端に蓋をするように 等しい層厚で堆積していることから,これらのサブユ ニットは水蒸気噴火による降下テフラ層であると判断さ れる.R5b は,塊状で淘汰不良の円礫を伴う堆積物であ り,脈の上端の窪みを埋めていることから,R5a 及び R5c を堆積させた噴火時に局所的に発生した土石流堆積 物であると判断される.R5 を覆う R6 は,明白色粘土質 火山灰と変質ラピリからなり,本質物を含まないことと, 脈の上端部を覆って均質な厚さで堆積していることから, 水蒸気噴火による降下テフラ層であると判断される. K7 は,下位の正級化構造をもつ淘汰の良いラピリか らなる K7a と,塊状無層理で緑灰色火山灰層を主体とす る K7b の 2 相のサブユニットからなる.これらは KSE 地点でのみ認められるが,トレンチのすべての壁面にお いてほぼ等しい厚さで堆積している.また,含まれる火 砕物は粒径に関わらずやや円磨されており,本質物と判 断できる特徴(冷却節理やパン皮状割れ目等)は認めら れない.このような特徴から,K7 は水蒸気噴火による 降下テフラ層と判断される. K8 は,少量のラピリと火山岩塊を伴う灰白色〜灰色 の火山灰層である.K7 と同様に KSE 地点でのみ認めら れるが,トレンチ断面のすべての壁面においてほぼ等し い厚さで堆積している.また,下半部には変質した火山 岩塊がサグ構造を形成している.これらの特徴から,K8 * Uncertainties are reported at 1σ precision.
** Uncertainties are reported at 2σ precision.
とする. 7-2 噴火堆積物の給源火口 A 層は,特徴的な岩相をもつ粘土質の明白色火山灰層 である(Figs. 5, 6).航空写真では,本層に類似した明白 色の噴火堆積物が,白根火砕丘群の東麓に広範囲に分布 し,SJ 地点の西側近傍まで追跡できる(Fig. 3A).湯釜 火口縁に沿った現地調査では,火口縁東半部に明白色の 噴火堆積物がマントルベッディングして堆積しており, SJ 地点の位置する方向である火口東〜南東縁で特に厚 く堆積している様子を観察できる(Fig. 3B).これらの 観察事実から,A 層と白根火砕丘東麓・湯釜火口縁東半 部に見られる明白色の噴火堆積物は同一のものであり, 両者は現在の湯釜火口から噴出したと結論される. B 層は,層厚が KSE,SJ,RH 地点の順に増加し,弓池 マールに近づくほど厚くなるため(Fig. 6),その給源と して弓池マールが最有力候補となる.白根火砕丘群,弓 池マール及び隣接する逢ノ峰火砕丘の噴出物は,特に MgO-SiO2図において全岩化学組成及び組成変化傾向の 差異があることが分かっている(亀谷・他, 2020).本研 究で得られた B 層の本質物の全岩化学組成は,亀谷・他 (2020) の弓池火砕堆積物及び逢ノ峰火砕堆積物の組成範 囲とほぼ一致し,他の噴出物の全岩化学組成と明瞭に区 別される(Fig. 9).また,本層の本質物の斑晶組合せ (Appendix 1)も弓池火砕堆積物及び逢ノ峰火砕堆積物の 斑晶組合せと一致するが,斑晶のジグソーフィット構造 の存在(Fig. 8A)や,主要構成物として平滑面に囲まれ, 冷却割れ目の発達する火山岩塊・ラピリを伴うという特 徴(Fig. 7C)は,弓池火砕堆積物のみがもつ特徴である (亀谷・他, 2020).以上の検討から,B 層は弓池マール形 成時の噴出物(弓池火砕堆積物)であると結論される. 白根南火口列の活動によって形成された火砕物脈とそ の上端部から連続的に堆積している R5a〜R5c は,風化 面を挟むことなく堆積しており,一回の噴火イベントに より形成された堆積物であると判断される.そのため, R5a〜R5c は白根南火口列(あるいはその一部)の噴出物 であると考えられる.風化面を挟んで R5c を覆う R6 は,その分布が RH 地点近傍の狭い範囲に限定されてい れないことから,これらの給源は白根火砕丘群である可 能性が高い. C 層は,各トレンチに見られる最上位の白色火山灰層 であり(Fig. 5),地表付近に発達した黒色土壌に挟在す るという特徴と,明白色の粘土質火山灰層であるという 岩相が早川・由井 (1989) の湯釜を給源とする明治噴火 のテフラ層とされる 14 W の特徴に一致する.そのた め,本層の給源は白根火砕丘群の湯釜火口であると判断 できる. 7-3 白根火砕丘群周辺域の噴火史と熱水系 本研究で明らかになった噴出物層序,物質科学的特徴 及び14C 年代から,白根火砕丘群とその周辺域の噴火史 は以下のようにまとめられる(Fig. 10). 正確な噴火年代は不明であるが,約 1,400 cal BP(約 600 cal AD)以前に大規模な水蒸気噴火が白根火砕丘群の湯 釜火口で発生し,A 層を東麓に堆積させた.KSE 地点に おいて観測点設置の際に採取されたボーリングコアか ら,表土の下約 5 m 以深に香草溶岩(噴出年代は約 7,000 年前: 早川・由井, 1989)が分布することがわかっている (宇都・他, 2004).A 層はこの上位に位置し,湯釜火口中 心から 800 m 離れた SJ トレンチにおいて層厚が約 2 m に達することから,この水蒸気噴火は約 7,000 年以降に 発生した草津白根火山における最大規模の水蒸気噴火で あったと考えて間違いないだろう.A 層の正確な分布は 現時点では明らかになっていないが,湯釜火口から RH 及び KSE 地点を両端として広がる層厚 40 cm の等層厚 線を仮定し,その面積を 650,000 m2とすると,Hayakawa (1985) の式 V=12.2TA(V: 噴出物体積, T: 層厚, A: 等層 厚線面積)を用いて,A 層の体積は概算で約 0.003 km3 となる.A 層には,火山地下に発達する酸性熱水変質帯 (Ohba and Kitade, 2005)に由来すると考えられる熱水変 質鉱物(石英, クリストバライト, ミョウバン石, カオリ ン鉱物及びパイロフィライト)が含まれるため(Table 2),この噴火が起きた頃には,既に湯釜火口の地下に酸 性熱水変質帯を伴う熱水系が発達していたと推定でき る.検出された変質鉱物のうちパイロフィライトは,比 較的高温(200 ℃以上)で形成されることが分かってお
り(Hemley et al., 1980),噴火直前までの湯釜火口地下の 熱水系の発達には,200 ℃より高温の流体が重要な役割 を果たしていたと推測される.また,A 層に含まれるク リストバライト,石英及びパイロフィライトは,酸性熱 水変質帯の中心に位置する溶脱型珪化帯(silica vuggy) とその外縁部に発達するパイロフィライト帯に由来する と考えられる(例えば, 大場, 2011)ため,本層を形成し た噴火時にはこれらの変質帯において大規模な破壊が生 じた可能性が高い.黒崎・他 (1990) は,1982-1983 年噴 火の噴出物中には,それ以前の水蒸気噴火噴出物(1897 年や 1925 年噴火)にはほとんど含まれないパイロフィ ライトが多く含まれていることから,噴火の進行(繰り 返し)により水蒸気噴火の発生地点が深くなり,深部の 基盤岩からパイロフィライトがもたらされるようになっ たと考えた.A 層には,他の水蒸気噴火テフラに比べ, 火山体の表層付近に由来する未変質あるいは弱変質岩片 が微量しか存在しないため(Table 1),本層の構成物の大 半は,パイロフィライトが存在する深部の熱水変質帯(お そらく深さ数 1000 m; 大場, 2011)からもたらされたと 考えるのが自然である.
約 1,400 cal BP(約 600 cal AD)には,現在の弓池周辺
でマグマ水蒸気噴火が発生し,弓池火砕堆積物(Ym)(B 層)を堆積させ,弓池マールが形成された.本堆積物は 岩相に多様性が見られ,噴出源に近い RH 地点では,構 成物が極めて粗粒であり,本質火山岩塊,降下火山灰及 び火砕サージ堆積物が混在する.これに対し,噴出源か ら離れた SJ・KSE 地点では,本質火山岩塊が少なく粒径 も小さくなり,粗粒火山灰を主体とする火砕サージ堆積 物として産する.R3a,S3a 及び K5a に見られる冷却節 理の発達した緻密な本質火山岩塊や火砕サージ堆積物 は,マグマ水蒸気噴火で特徴的に形成されることが知ら れている(Wohletz and Sheridan, 1983).また,これらの 本質物に見られる斑晶のジグソーフィット構造(Fig. 8A) は,斑晶の破砕後に破片が完全に散逸しなかったことを 示しており,脱ガスし固結しつつあるマグマが急速な冷 却と収縮に伴って破砕されたことを示唆する.以上から, 弓池火砕堆積物は,マグマの地下浅所への供給によって 発生したマグマ水蒸気噴火による堆積物であり,このマ グマ水蒸気噴火により弓池マールが形成されたと結論さ れる.なお,石崎・他 (2020) によると,本白根火砕丘群 での最後のマグマ噴火が約 1,500 cal BP 以降に鏡池北火 砕丘で起きている.石崎・他 (2020) の鏡池北火砕丘の Fig. 10. Summary of the stratigraphy of eruption products from the summit area of the Shirane Pyroclastic Cone
Group (SPCG), Shirane-Minami Crater Chain, and Yumi-ike Maar by trench survey conducted in this study. The small black and gray rectangles on the left axis (ca. 1.4 and 1.0 cal ka BP) show the ranges of calendar ages of magmatic and phreatic eruptions, respectively. The ages of historical eruptions are from Japan Meteorological Agency (2013).
グマ噴火は,噴出物の岩石学的特徴が類似し,発生年代 も近接していることから,共通もしくは類似のマグマ供 給系の活動による噴火である可能性が示唆される. 後述の白根南火口列の噴火との前後関係は不明である が,弓池マールの形成後,白根火砕丘群山頂域で水蒸気 噴火が発生し,火砕丘群の東麓に K7 及び K8 を堆積さ せた.K7 のサブユニットである K7a と K7b は,以下の ように,各々が性質の異なる 2 種類の噴煙から運搬・堆 積したと解釈できる.すなわち,粘土サイズの細粒粒子 を含まない淘汰の良いラピリからなる K7a は,KSE 地 点が火口からの水平距離 1 km 以内であり,構成粒子も 比較的小さい(大礫〜小礫サイズ)ため,高度の高い噴 煙からの分級による淘汰作用というよりは,むしろ小規 模爆発により放出された弾道放出物であると推測され る.これに対し K7b には,K7a よりも隠微晶質岩片と珪 化変質岩片が多く産するため(Table 1),先行する K7a 形成時に比べ K7b 形成時の爆発深度が深化し,より深部 から変質鉱物がもたらされるようになったと考えること ができる.また,K7 の上位の K8 は,粘土質の細粒成分 に富み,不淘汰な堆積物であることから,湿潤で噴煙高 度の低い噴煙から淘汰が十分に行われない状態で堆積し たと推測される.
約 1,000 cal BP(約 1, 000 cal AD)以降には,白根火砕丘 群の南〜南東斜面で水蒸気噴火が発生し,白根南火口列 が形成され,まず R5 を堆積させた.その後,風化面が 形成される程度の休止期間を挟んで再び白根南火口列で 小規模な水蒸気噴火が発生し,R6 を堆積させた.R5 と R6 には,シリカ鉱物,ミョウバン石及びカオリン鉱物な ど酸性流体による変質作用によって形成される変質鉱物 (例えば, Sillitoe, 2010)が含まれるため(Table 2),両テ フラ層は火山体内部の酸性変質帯に起源をもつと判断さ れる.一方,これらのテフラ層には,白根火砕丘群山頂 域に給源をもつ他の水蒸気噴火テフラ層とは異なり,変 質シリカ鉱物としてトリディマイトが多産するという特 徴をもつことから,熱水系の性質が白根南火口列下と火 砕丘群山頂域下で異なっている可能性も考えられる. 明治時代以降になると,白根火砕丘群山頂域における 治時代以降に頻発した水蒸気噴火の影響により植生の発 達と土壌の生成が阻害され,地表には土石流の母材とな る未固結な噴火堆積物が露出している(Fig. 3).本研究 のトレンチ調査でも,噴火堆積物の間には,地表付近を 除いて黒色土壌が発達していないことが確認され,礫 種・礫形やマトリクス成分の特徴から,火山体表層に露 出していた噴火堆積物を母材としたと推測される土石流 堆積物が複数枚確認された(Fig. 6).そのため,白根火 砕丘群南〜東斜面では,約 1,400 cal BP(約 600 cal AD) 以前から現在まで,土石流が形成されやすい地表環境が 維持され続けてきたと結論される. 8.結 論 白根火砕丘群近傍域の 3 地点でトレンチ調査を行い, これまで認識されていなかった白根火砕丘群,弓池マー ル及び白根南火口列の噴火堆積物を合計 7 枚認定し,以 下のことが明らかになった. (1)白根火砕丘群の形成後,湯釜火口で最大規模の水 蒸気噴火が約 7,000 cal BP 以降に発生し,厚い明白色粘 土質火山灰層を同火砕丘群の東方に堆積させた. (2)白根火砕丘群南麓の弓池マールは,約 1,400 cal BP (約 600 cal AD)に発生したマグマ水蒸気噴火により形成 された.このマグマ水蒸気噴火が,現在までに分かって いる草津白根火山における最新のマグマ噴火である. (3)白根火砕丘群南斜面の白根南火口列(少なくとも その一部)は,従来は 1927-1942 噴火で形成されたと考 えられていたが,それ以前の約 1,000 cal BP(約 1,000 cal AD)以降に発生した水蒸気噴火により形成された. (4)弓池マールと白根南火口列は歴史時代にも水蒸気 噴火を発生させており,白根火砕丘群の南斜面と南麓は 水蒸気噴火を頻発しやすい地下構造(例えば流体の通り 道となるクラック等)をもっている可能性が高い.今後, 弓池マールや白根南火口列で歴史時代と同等の噴火が発 生する可能性は十分にあると考えられるため,白根火砕 丘群の山腹や山麓の小火口に対しても観測体制や防災対 策を整備することが必要であろう.
謝 辞 査読者である三浦大助氏,長谷川健氏及び編集委員で ある石塚治氏のコメントにより,本稿は大きく改善され た.調査にあたっては,草津町役場,株式会社草津観光 公社,東京工業大学草津白根火山観測所,環境省万座自 然保護官事務所,林野庁関東森林管理局吾妻森林管理署, 菅谷電気工事株式会社に便宜を図っていただいた.ま た,本稿と本研究の調査で使用した赤色立体地図につい ては,国土交通省関東地方整備局利根川砂防事務所から 提供していただいた.本研究には JSPS 科研費 17K20141 (代表: 小川康雄),平成 29・30 年度地震・火山噴火の解 明と予測に関する公募研究(代表: 石崎泰男),令和元年 度「災害の軽減に貢献するための地震・火山噴火観測研 究計画(第 2 次)」を用いた.年代測定経費については, 2016 年度株式会社パレオ・ラボ研究助成(代表: 亀谷伸 子)から援助を受けた.以上の方々及び関係機関に感謝 申し上げます. 引 用 文 献 群馬県前橋測候所 (1933) 白根火山踏査報告.験震時報, 7,91-94.
Hayakawa, Y. (1985) Pyroclastic geology of Towada volcano. Bull. Earthq. Res. Inst., Univ. Tokyo, 60, 507-592. 早川由紀夫・由井将雄 (1989) 草津白根火山の噴火史.
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Appendix 1. W hole-rock chemical and modal compositions of juvenile blocks of units R3, S3, and K5. Total Fe is expressed as Fe2 O3 .F or diagrams (Fig. 9), FeO* is assumed to be FeO + 0.8998 Fe2 O3 .L oss on ignition (LOI) was measured by igniting the powdered samples Abbreviations :t r: present in samples but not observed in point counts ;nd :not detected.