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AC/DC二段階電解研磨による先鋭タングステン探針の作製

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Academic year: 2021

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AC / DC 二段階電解研磨による先鋭タングステン探針の作製

東京大学 ○中島瞳, 林冠廷, 佐久間涼子, 木村文信, 梶原優介 1. 研究目的 近年の半導体素子の微細化に伴い, ナノスケールの空間分解能 で温度分布を検出し, 熱的・電気的特性の把握をすることで最適 設計に繋げることが求められている. 従来のような外部光源を用 いて透過・散乱光を観察するアクティブ型の顕微鏡と異なり, 物 質の原子や分子運動に起因するTHz 領域の微弱な電磁波[1]を直接 検出するパッシブ型の顕微鏡を用いることで基礎物性物理特性を 把握することが期待される.

我 々 は , 超 高 感 度 セ ン サ CSIP(charge sensitive infrared photo transistor)を用いて物質起因の THz 波を検出するパッシブ型 THz 近 接場顕微鏡[2]を構築し, 物質表面に局在する熱励起エバネッセン ト波を検出することによってナノスケール熱検出を実現している. 現在構築した顕微鏡の空間分解能は 20 nm であるが, 近年の 10 nm 以下細線に適用させるためには 10 nm 以下の空間分解能が必要 不可欠である. 空間分解能は探針の先端径に依存するため, 本報 ではAC/DC 二段階研磨により 10 nm 以下のタングステン探針の作 製方法を構築し, 10 nm 以下の空間分解能を目指した. 2. パッシブ型THz 近接場顕微鏡 2.1 CSIP の動作原理

図 1 にパッシブ型散乱近接場顕微鏡(scattering-type Scanning Near-field Optical Microscope : s-SNOM)の概略図を示す.分子・原子運動 による電荷の偏りにより, 物質の表面近傍100 nm の領域には微弱 な電磁波が発現している. 物質表面数ナノメートルまで探針を近 づけることでこの電磁波であるエバネッセント波を散乱, 共焦点 光学系を用いて CSIP[3]に散乱信号を照射することで探針の先端径 程の空間分解能の近接場画像を得ることができる. 図1 SNOM の概略 2.2 パッシブ計測 1 節で述べた通り, 我々は検出器CSIP の高感度を活かし, レー ザ等の外部光源を用いずに試料から飛来した光をプローブで散乱 させて計測する. 幾何光学に基づく顕微鏡では回折限界による分 解能の制約により, 検出波長程度の分解能が限界であった. 一方, プローブからの信号を直接検出するパッシブ計測では分解能はプ ローブの先端径のみに依存するため, ナノスケールの分解能の実 現が可能となる. 3. タングステン探針作製 3.1 電解研磨法 交流電流による電解研磨法の装置を図2.1 に示す. 陽極に研磨対 象となる金属を, 陰極に炭素棒(φ= 10 mm)を用いて KOH 電解液 に 浸 し, 電極間に電流を流す. 本報では, 金属の中でも硬く, SNOM で用いる際の位置制御において変形しづらい, 電解研磨が 容易である等の理由により, 金属素材としてタングステン(φ= 50 μm)を採用した. 電極間に電流を流すことで, 以下の式(1)~(4)の 反応が起こる. 正反応ではタングステンが溶け出し, 逆反応で発 生したH2はタングステン周囲で気泡となり, 研磨中に生成と破断 を続ける. 図 2.2 のように, 液面最下部からの気泡はタングステン に沿って液面まで上昇し, そこで破断する. このような流れによ り濃度勾配が発生し, 液面付近のタングステン周辺の電解液濃度 が薄くなるため, 液面下において下部の研磨速度が速くなり, 針 状に研磨される[4]. 研磨中の時間と電流値の動きは図 2.3 (a)のよう になる. 液面下部が溶けて径が小さくなるにつれ電流値は減少す る. ただし図 2.3 (b)のように表面張力が影響するため, 電流が完全 に0 になるまで研磨を行うと, 先鋭化した先端が丸まるように研 磨されてしまうため, カットオフ値を設定し 0 mA になる前に反応 を止める必要がある. 1. 正反応(タングステンが陽極)

W 側 : W + 8OH- → 6e- + WO42- + 3H2O (1) C 側 : 6H2O + 6e- →3H2 + 6OH- (2) 2. 逆反応(タングステン側が陰極) W 側 : 2H2O + 2e- →H2 + 2OH- (3) C 側 : 4OH- → O2 + 2H2O + 2e- (4) 図2.1 交流電解研磨装置 図2.2 交流電流による研磨時の気泡による濃度勾配 (a) 2020 年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集 Copyright Ⓒ 2020 JSPE - 23 -

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(b) 図2.3 (a)研磨中の時間と電流値の関係 (b)研磨における表面張力の影響 この研磨法で, 交流を 0.95 V, カットオフ値を 0.02 mA として作 製した針を図2.4 に示す. 30 nm ほどの針が作製できたが, 交流研 磨では径が最も小さくて 20 nm ほどで, それ以上の先鋭化は困難 であった. 図2.4 交流電流研磨による探針 3.2 交流・直流による二段階電界研磨法 3.1 節で述べたように, 交流研磨のみでは目標とする 10 nm まで 径を細くすることが難しい. 研磨時にタングステン側に気泡が発 生する交流研磨では, 探針が均等に研磨されない可能性がある. 一方, タングステン側に気泡が発生しない直流による研磨かつリ ング電極を用いることで, 探針が均一に研磨され更なる先鋭化が 可能ではないかと考えた[5]. 本報では交流による研磨の後, 直流研 磨を行うことでさらなる先鋭化を目指す. 直流電解研磨の構成を 図2.5 に示す. 陽極にタングステン, 陰極に白金リングを用い, 白 金リングに電解液 KOH の膜を作り, 中心にタングステンを挿入 する. 反応式は 3.1 節で示した式のうち正反応のみが起こり, 図 2.6 のように溶けだした WO42- が重力により液面から下方へ流れる ため, 液面より下部の研磨を阻害し, 結果液面近傍でのみ研磨が 進みくびれていく[6]. 図2.5 直流電解研磨装置 図2.6 直流電流による研磨時の WO42-の流れ 電流値の変化は交流電流研磨時と同様である (図 2.3(a)). 最も細 い状態にするためには, 針の落下直後に即電流を遮断し研磨を終 了する必要があるため, 顕微鏡で研磨の様子を観察し, タングス テンの落下と同時に反応を停止させた. この研磨法ではまず, 交流電解研磨において電圧 95 V をかけ, カットオフ0.08 mA, KOH 2 M で研磨し先端径を細くした. その後, 直流0.5 V, KOH 0.2 M / 2 M で研磨し, タングステンが切れると同 時に反応停止させた. 作製したプローブの結果を図 2.6 に示す. 電 解液濃度が低い方が反応の進行が遅いため, タングステンの切断 から反応を止めるまでのタイムラグが短く, 径の小さい探針を作 製できたと考えられる. 図2.6 AC/DC 二段階研磨によるプローブ 実際の探針の写真を図2.7 に示す. 二種類の電解液濃度において最 も細いもので12 nm の針を作製できた. しかし, 10 nm の空間分解 能での信号検出には, 径を維持した状態で表面粗さを減らす必要 がある. (a) (b) 図 2.7 交流・直流二段階研磨による探針 (a) KOH 2 M (b) KOH 0.2 M 4. 結論と展望 本報では, パッシブ型 THz 近接場顕微鏡において 10 nm 以下の 空間分解能達成のため, 電界研磨によって探針を作製した. 従来 の交流電流のみによる電解研磨では, 最も細くて 40 nm 程度で先 鋭化に限界があったため, 交流・直流の二段階研磨による電解研磨 を行った. 電解液濃度や電圧値の最適化には至っていないが, 最 も細いもので12 nm 程度の探針が作製できた. 今後は条件の最適化により, 表面粗さの低減とテーパー長の短 縮により近接場信号が取れる形状の探針を作製, 近接場信号取得 を試みる. 参考文献

[1] R. G. Gordon, “Molecular Motion in Infrared and Raman Spectra”, The Journal of Chemical Physics, 43, 1307-1312 (1965)

[2] Y. Kajihara, K. Kosaka, P. Nickels, and T. Ueda, “A Thermally excited near-field radiation and farfield interferenfe”, Opt. Exp., 19, 7695 (2011) [3] S. Komiyama, “Signal-Photon Detectors in the Terahertz Range” IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron, 17(2011)54-66

[4] Mircea Fotino. “Tip sharpening by normal and reverse electrochemical etching”, Rev. Sci. Instrum., Vol. 64, No.1, pp. 159-167 (1993)

[5]Oliver L Guise, Joachim W. Ahner, Moon-chul Jung, Peter C. Goughnour, and John T. Yates, Jr., “Reproducible Electrochemical Etching of Tungsten Probe Tips”, NANO LETTERS, Vol. 2, No. 3, pp. 191-193(2002)

[6] J.P.Ibe, P. P. Bey, Jr., S. L. Brandow, R. A. Brizzolara, N. A. Burnham, D. P . DiLella, K. P. Lee, C. R. k. Marrian, and R. J. Colton, “On the electrochemical etching of tips for scanning tunneling microscopy”, J. Vac. Sci. Technol. A, Vol. 8, No. 4, pp. 3570-3575 (1990)

2020 年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集

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