Author(s)
村上, 敬進
Citation
沖縄大学法経学部紀要 = Okinawa University JOURNAL
OF LAW & ECONOMICS(23): 27-37
Issue Date
2015-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/18231
第1節 はじめに 本稿の目的は私立大学において平成21年度以降に新設された学部学科について、その後のパ フォーマンス(平成26年度入試の入学定員充足率)を検証することである。検証した新設の学部・ 学科は、経営学分野、看護学分野、管理栄養士養成関連分野である。 本稿ではこれら私立大学の新設学部・学科の、平成26年度の偏差値と平成26年度の入学定員充 足率の関係を調査し、経営分野と栄養士関連分野については、新設学部の偏差値と入学定員充足 率の間に正の相関関係が存在することを明らかにした。特に経営分野は正の相関が明確に観察さ れている。ところが、看護分野については新設学部・学科の偏差値と入学定員充足率の間には正 の相関は確認できず無相関であることが示されている。更に、偏差値の低い新設看護学部では、 入学定員を十分に満たすことができるほど受験生が集まっていることが分かった。 これらの一連の相関分析の結果は、逆選択の問題で説明が可能である。逆選択とは、品質に関 する情報が経済主体間で偏在している(情報の非対称性)ために良品が出回らず粗悪品ばかりに なる問題を指す。適者が生存する「自然淘汰」とは逆に、レモン(粗悪品)がチェリー(良品) を駆逐してしまうというところから「逆」選択と名付けられている。入試から筆記試験を無くし 受験者のやる気を重視しようとすると、大学の意図とは逆に、勉強の習慣のない高校生が多く受 験してしまい、勉強をする高校生は志願しなくなる問題も典型的な逆選択問題である。 偏差値が低い大学は、既に、この逆選択の問題に直面しているⅰ。このため、入学後に一生懸 命に勉強する学生が多く受験してくれることを期待して、人気があるとされる経営学部を新設し ても、勉強の習慣のある高校生に受験してもらえない。一方で、勉強の習慣のない高校生は可能 であれば高卒で就職したいと希望しており、職業(出口)と直結していない経営学部に興味を持っ てもらえない。そのため偏差値が低い大学ほど入学定員充足率を満たすことができなくなる。 一方で、新設看護学部は偏差値が低くても、逆選択の問題に直面しているからこそ、入学定員 を満たすことが可能となると予想される。勉強の習慣のない高校生は、ただ勉強しないだけでな く、就職や専門学校への進学も高3の時点で選択肢に入るであろう。そのような勉強の習慣のな 【研究ノート】 専 門 分 野:金融論 キーワード:入学定員 偏差値 逆選択
Capacity Crack and Deviation Value
村 上 敬 進*
Akinobu MURAKAMI
定員割れと偏差値
い高校生にとって低偏差値の看護学部は、出口と直結している上に、容易に入学できるために大 変魅力的な進学先となる。管理栄養士関連の学部・学科では、看護分野ほど出口と直結していな いため、弱いながら入学定員充足率と偏差値の間に正の相関が存在していると解釈できる。 本稿の構成は以下の通りである。第2節では先行研究を調査し本稿の研究結果と比較する。第 3節ではデータの整理を行う。第4節では経営、看護、栄養の各分野について新設学部の平成26 年度のパフォーマンスを調査した。第5節では、勉強の習慣のない受験生の行動を調べるために、 高偏差値群、中偏差値群、低偏差値群の各群に属している大学が所在する県の高校求人倍率と入 学定員充足率から、各群の平均充足率と平均求人倍率を求め、その関係を調べた。第6節では入 学定員充足率に影響するその他の要因として大学の立地およびキャンパスへのアクセスの容易さ を調査した。第7節が結論及び今後の課題である。 第2節 先行研究 逆選択問題と入学定員充足率の関係を分析した邦文文献の論文は、CiNiiで検索した限り発見 できなかったが、唯一関連があるものとして、偏差値と社会人入学の動向を調査した出相(2004) がある。この論文では社会人入学者を増やすために現行の社会人入学者の動向を分析している。 その結果、威信の高い大学(国公立、高偏差値)に、統計学的に有意に、志願者が多く集まって いることを明らかにしている。ただし出相(2004)では、社会人入学が高偏差値群の大学に集中 する理由までは考察していない。これに対して、本稿では社会人ではなく大学受験生の動向につい て、人気のある学部・学科を私立大学が新設しても、偏差値によって入学定員充足率が影響を受け ることを明らかにしている。そしてその理由を逆選択問題にあると考え更に分析を加えている。 それ以外の先行研究は、定員割れの原因というよりも定員割れ対策について様々な視点から論 述した原稿であった。川﨑(2014)では、定員割れを起こしている学科の学生募集活動については, 不特定多数を対象にした広報活動よりも,高校・学校・保護者それぞれに向けた個別対話型広報 活動が効果的であることを筆者が所属する短大での学生募集活動に基づいて整理している。山本 (2007)では、従来から行われている教育の問題点として、個々の授業・カリキュラムが、大学 側の立場に立った(学問上の理由からの)構成になっており、学生の立場に立った卒業後に仕事を することができるようにするための目的で構成されていないことを指摘している。学生にとって魅 力的なカリキュラムを作成し実行することで定員割れを防ぐことを議論している。坂田(1987)では、 地方短大の定員割れについて、定員割れしやすい学科は宗教、美術・音楽関係であり、定員割れ件 数の絶対数が多い分野は短大で多く設置されている家政学科が多いことを明らかにしている。 大学の立地や交通アクセスの容易さと定員充足率の関係についても殆ど文献は無く、先述した 坂田(1987)では、非特定地域(短期大学の設置制限のない地域)において、定員を満たしてい る大学と満たしていない大学の1時間通学圏人口を調査した。その結果、定員を満たしている大 学と満たしていない大学で、1時間通学圏人口は異なることを導き出している。佐藤(2013)で は兵庫県北播磨地区の全日制高校の高校2年次の進学希望調査の結果から、同地区の高校生は通 学の利便性を強く求めており,高校生は通学所要時間を心理的コストとして捉えていると考察し ている。これに対して本稿では、大学が立地する都市の規模、駅からキャンパスのアクセスの容 易さの観点から、入学定員充足率との関係を調査している。
第3節 データの整理 本稿で用いたデータを節ごとに整理する。第4節では新設学部・学科の平成26年度の入学定員 充足率と平成26年度の偏差値の相関係数を求める。平成26年度の偏差値については、「大学受験 パスナビ:旺文社(http://passnavi.evidus.com/)」に掲載されている代々木ゼミナールのデー タを利用した。一つの学部の偏差値が複数ある場合(複数の入試の偏差値がある場合)、よりメ ジャーと予想される入試の偏差値を用いている。どれが主な入試か判別が付かない場合は、高い 方の偏差値を採取した。 次に、どの大学が経営、看護、栄養関連の学部・学科を新設したかについては、文部科学省の 設置届出状況及び年度別開設大学等一覧(設置届出分を含む)を利用しているⅱ。平成21年度開 設予定学部学科から平成26年度開設予定学部学科のデータを用いた。経営関連の学部学科の内、 医療、医薬、スポーツ、環境等が頭に付く学部学科名は除いている。心理学部内のビジネス学科 も除く。つまり外から見て経営分野がメインと判らない学部学科名は除いている。看護分野、管 理栄養士分野については学部・学科名から容易に判断できるものが殆どであった。 入学定員充足率のデータは各大学のホームページから「情報公表」に記載されている平成26年 度入学者数と入学定員を用いている。経営分野においては、東京富士大学は平成26年度のデータ が無かったため、平成25年度のデータであり、長岡大学、松蔭大学、静岡産業大学については情 報公表のページを発見できなかったため除外している。偏差値と入学定員充足率は平成26年度の データである。経営分野で分析に用いた大学は注ⅲの37大学の新設学部学科であるⅲ。看護と栄 養分野の新設大学も注ⅳに示しているⅳ。 第5節では高偏差値群、中偏差値群、低偏差値群の各群に属している大学が所在している県の 高校求人倍率と入学定員充足率の関係を調べた。県別の高校求人倍率については厚生労働省『高 校・中学新卒者の就職内定状況等』を用いたⅴ。7月、9月、11月の求人倍率の平均値を用いた。 第6節では大学の立地およびキャンパスへのアクセスの容易さと定員充足率の関係を確認した。 このため各大学のウエブページ記載の住所及び交通アクセスのページを参照した。 第4節 新設学部学科の平成26年度入試のパフォーマンス 平成21年度以降に新設された経営、看護、管理栄養士関連の学部学科のその後のパフォーマン スを評価するために、平成26年度の入学定員充足率と平成26年度の偏差値の相関係数を求めた。 併せて母相関係数の無相関の検定も行っている。平成21年度と22年度開設学部学科については平 成26年度入試の時点で卒業生が出ているため(就職、国家試験等の結果が出ているため)、平成 21年度、平成22年度開設学部学科の相関係数、平成23年度~平成26年度開設学部学科の相関係数、 全期間の相関係数と3期間の相関係数を求めている(表1)。 経営分野については、平成26年度の入学定員充足率と平成26年度の偏差値の間には正の相関が あり、全期間を通じた相関係数の値は0.67であった。母相関係数の無相関の検定では、有意水準 1%で母集団の相関係数が無相関であるという帰無仮説は棄却された。すなわち、偏差値が低い 大学ほど、新設の経営関連の学部学科の入学定員充足率は低くなり、偏差値が高い大学ほど、新 設学部学科の充足率は高くなっていることが分かる。この調査結果から、次のような説明が可能 である。偏差値の低い(選ばれていない)大学は既に逆選択の問題に直面しており、勉強の習慣
のある高校生の受験は少ないであろう。そのため人気があると言われている学部・学科を新設し ても、勉強の習慣のある高校生に受験してもらえない。その上、勉強の習慣のない高校生にとっ ては経営関連の学部は職業と直結していないため選択肢に入りにくい。したがって、偏差値の低 い大学は逆選択問題のため苦戦していると考えられる。一方で、偏差値の高い大学は勉強の習慣 がある高校生から選ばれているために、人気があると言われる学問分野の学部・学科を新設する と、それなりに受験生を集めることが可能になるのである。 表1の経営分野の偏差値と入学定員充足率の関係を、図を用いて視覚的に確認する。図1より、 3つのグループに分けることができるようである。高偏差値群(偏差値47以上)の大学は定員充 足率が100%以上のところで比較的安定的に変動している。中偏差値群(偏差値43以上47未満) の大学は充足率が100%より低いあたりで変動が激しい。低偏差値群(偏差値43未満)の大学は 充足率60%のあたりで充足率が大きく変動していることが読み取れる。 次に看護分野で新設看護学部学科の平成26年度のパフォーマンスを見てみると、どの分析期間で も偏差値と入学定員充足率は無関係であり、偏差値の高低に関係なく入学定員を満たすことが明ら かになった。人口構成の変化に基づく需要の変化は偏差値が低い大学の定員充足率を満たすほど強 烈であると解釈できるであろう。一方で、前述の逆選択の問題からも説明が可能である。勉強の習 表1 新設学部学科の平成26年度入試定員充足率と平成26年度偏差値の関係 平成21年度及び平成22年度新設の経営関連 学部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 平成21年度及び平成22年度新設の看護関連 学部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 平成21年度及び平成22年度新設の管理栄養士関 連学部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 経営学部入学 定 員 充 足 率 経 営 学 部 偏 差 値 看護学部学科 定 員 充 足 率 看護学部学科 偏 差 値 栄養学部学科 定 員 充 足 率 栄養学部学科 偏 差 値 経営学部入学 定 員 充 足 率 1 看護学部学科 定 員 充 足 率 1 栄養学部学科 定 員 充 足 率 1 経 営 学 部 偏 差 値 0.638 * 1 看護学部学科 偏 差 値 -0.065 1 栄養学部学科 偏 差 値 0.725 * 1 平成23年度~平成26度新設の経営関連学 部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 平成23年度~平成26度新設の看護関連学 部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 平成23年度~平成26年度新設の管理栄養士関 連学部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 経営学部入学 定 員 充 足 率 経 営 学 部 偏 差 値 看護学部学科 定 員 充 足 率 看護学部学科 偏 差 値 栄養学部学科 定 員 充 足 率 栄養学部学科 偏 差 値 経営学部入学 定 員 充 足 率 1 看護学部学科 定 員 充 足 率 1 栄養学部学科 定 員 充 足 率 1 経 営 学 部 偏 差 値 0.712 ** 1 看護学部学科 偏 差 値 0.039 1 栄養学部学科 偏 差 値 0.341 1 平成21年度~平成26度新設の経営関連学 部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 平成21年度~平成26度新設の看護関連学 部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 平成21年度~平成26年度新設の管理栄養士関 連学部学科の入学定員充足率と偏差値の関係 経営学部入学 定 員 充 足 率 経 営 学 部 偏 差 値 看護学部学科 定 員 充 足 率 看護学部学科 偏 差 値 栄養学部学科 定 員 充 足 率 栄養学部学科 偏 差 値 経営学部入学 定 員 充 足 率 1 看護学部学科 定 員 充 足 率 1 栄養学部学科 定 員 充 足 率 1 経 営 学 部 偏 差 値 0.674** 1 看護学部学科 偏 差 値 -0.003 1 栄養学部学科 偏 差 値 0.486* 1 注意:母相関係数の無相関の検定の結果は相関行列に示している。*は5%有意水準、**は1%有意水準を示す。
慣のない高校生は、ただ勉強しないだけではなく、就職や専門学校への進学も高3の時点で有力な 選択肢に入るであろう。そのような勉強の習慣のない高校生にとって低偏差値の看護学部は、出口 と直結している上に、容易に入学できるために大変魅力的な進学先となる。そのため、偏差値が低 くても、逆選択の問題に直面しているからこそ、入学定員を満たすことが可能になると考えられる。 最後に、新設栄養学部学科の平成26年度のパフォーマンスを見てみると、新設栄養学科につい ては、新設経営学部ケースほどではないが、偏差値と入学定員充足率の間に正の相関関係が存在 している。すなわち、偏差値が低い大学では定員を満たすことができない可能性が示されている。 看護師と比べれば、出口(職業)との結びつきが弱いため、逆選択の問題の影響がマイナス方向 に出ている可能性がある。期間全体(平成21 ~平成26)では相関係数は0.486と低い値であるが、 平成26年度入試には卒業者が既に出ている平成21年度と平成22年度の2か年分で相関係数を求め ると0.725に上昇する(いずれも5%有意水準で母相関係数の無相関の検定の帰無仮説を棄却)。 低偏差値大学は卒業者が出るころには、出口の確保が難しく、定員割れが発生する可能性がある。 第5節 各県の高校求人倍率と入学定員充足率の関係 図2は新設経営学部学科のデータについて、偏差値が高い順に左から37位まで並べたものであ る。縦軸は各大学が立地する県の高校求人倍率(右縦軸)と当該大学の入学定員充足率(左縦軸) である。まず、高偏差値帯では求人倍率の上下に関係なく入学定員充足率は安定して100%を上回っ ていることが分かる。中間の偏差値帯から低偏差値帯にかけて、高校求人倍率が高い県の大学は入 学定員充足率が低く、高校求人倍率が低い県の大学は充足率が高い傾向にあることがわかる。すな わち、偏差値が低い大学は勉強の習慣が無い高校生が受験しているため、求人倍率が高く好景気な 図1 新設経営関連分野のパフォーマンス:平成26年度入学定員充足率と平成26年度偏差値の関係 1 31 51 71 91 211 231 251 271 වڠ֥ਰ௷ၚȪɓȫ ༊ओ 2!3!4!!5!6!7!8!9!:!21!22!23!24!25!26!27!28!29!2:!31!32!33!34!35!36!37!38!39!3:!41!42!43!44!45!!46!47!48 වڠ֥ਰ௷ၚ ༊ओ 1 21 31 41 51 61 71 81
時には大学進学ではなく就職を選択すると考えられる。 勉強の習慣のない高校生の行動をより詳細に検討するために、大学を高偏差値群(偏差値47以上)、 中偏差値群(偏差値43以上47未満)、低偏差値群(偏差値43未満)に3分類した。各群に属してい る大学が所在する県の高校求人倍率と入学定員充足率から、各群の平均充足率と平均求人倍率を求 め、その関係を調べた。グループ分けの基準にしたのは入学定員充足率の平均値と標準偏差、県別 高校求人倍率の平均値と標準偏差である。表2より、3群に分けた結果が示されている。 それでは実際に表2を利用して以上の仮説を確認してみよう。高偏差値群では中偏差値群より も平均求人倍率が高く、なおかつ平均充足率も100%を超えている。すなわち、景気が良くなれ ば大学進学も増加するという通常の関係(教育サービスは上級財)が、高偏差値群と中偏差値群 の比較で読み取ることができる。一方で、中偏差値群と低偏差値群を比較すると、低偏差値群で は平均求人倍率が中偏差値群よりも高く好景気であるにも関わらず、平均充足率は中偏差値群よ りも低くなっていることが分かる。すなわち、低偏差値群の大学では、勉強の習慣のない受験生 を相手にしている逆選択の問題が発生しているために、平均求人倍率が中偏差値群より高くて景 気がよくても平均充足率は低迷している可能性が示された。 3群の平均値に統計学的に有意な差があるかどうか確認するために、ノンパラメトリック多重 比較検定でも確認する。検定方法としてはSteel法を採用した。Steel法とは1つの対照群と2つ 以上の処理群があって、分布の位置を表すパラメータについて、対照群と処理群の対比較のみを 同時に検定するための方法である。表3より、偏差値群間の平均入学定員充足率について、高偏差 値群と低偏差値群では平均入学定員充足率は等しいという帰無仮説は棄却され、高偏差値群の方が 低偏差値群よりも充足率が高いという対立仮説が支持されている。表4より、偏差値群間の平均高 校求人倍率について、高偏差値群と低偏差値群では平均求人倍率が等しいという帰無仮説を棄却で きなかった。一方で、高偏差値群と中偏差値群は帰無仮説が棄却され高偏差値群の方が中偏差値群 よりも平均求人倍率が高いという対立仮説が支持されている。多重比較検定の結果からも、逆選択 の問題に直面する低偏差値群は、高偏差値群と同じくらい求人倍率が高くても、高偏差値群とは対 照的に、充足率が低下する傾向が示されたⅵ。 図2 各偏差値帯における求人倍率と充足率の関係 1 31 51 71 91 211 231 251 271 1 1/6 2/1 2/6 3/1 3/6 4/1 4/6 5/1 5/6 2!3!4!!5!6!7!8!9!:!21!22!23!24!25!26!27!28!29!2:!31!32!33!34!35!36!37!38!39!3:!41!42!43!44!45!!46!47!48 වڠ֥ਰ௷ၚȪɓऒਸȫ ࣞࢷݥ૽ၚȪɓֲਸȫ
第6節 新設経営学部の入学定員充足率に影響を与えるその他の要因:立地、交通アクセス 入学定員充足率に影響するその他の要因として大学の立地およびキャンパスへのアクセスの容 易さを調査した。交通アクセスについては、最寄り駅から徒歩で通学できる大学を1、最寄り駅 から更にバスが必要な大学を0として分析を行った。表5より、入学定員充足率が100%以上の 大学群のアクセスの容易さを示す数値の平均値は0.79である。一方で、入学定員充足率が100% 未満の大学群のアクセスの容易さを示す数値の平均値は0.39である。定員充足率と交通の便の良 さは、関係がありそうである。次に、大学が立地する都市の規模が大きい程、大きい数字を当て はめて立地の良さを数値化した。7は100万以上人口、6は東京都および大阪近郊10万以上人口、 5は40万以上人口、4は30万以上人口、3は20万以上人口、2は10万以上人口、1は10万未満人 口の都市に立地する大学である。充足率100%以上の大学群の立地都市人口規模の平均値は5.64、 100%未満の大学群の平均値は4.09である。こちらも定員充足率と大学が立地する都市の人口規 模の間に関係がありそうである。 より正確に分析するために、独立した2群の母平均の検定を行った。その結果は表6である。 表2 新設経営学部の偏差値群ごとの求人倍率と充足率の関係 表3 各偏差値群の平均入学定員充足率の多重比較検定結果 表4 各偏差値群の平均高校求人倍率の多重比較検定結果 高偏差値群 中偏差値群 低偏差値群 サンプル数 入学定員 充足率 平均値 偏差値 平均値 県別高校 求人倍率 平均値 サンプル数 入学定員 充足率 平均値 偏差値 平均値 県別高校 求人倍率 平均値 サンプル数 入学定員 充足率 平均値 偏差値 平均値 県別高校 求人倍率 平均値 10 112.259 51.3 2.78 10 93.447 44.4 1.278 17 58.744 40 1.648 標準偏差 9.963 1.302 標準偏差 25.624 0.345 標準偏差 19.929 1.1097 多重比較:Steel 法 **:1%有意 *:5%有意 対立仮説 対照群 処理群 統計量 P 値 判 定 対照群>処理群 高偏差値群平均 入学定員充足率 中偏差値群平均 入学定員充足率 1.512 0.11 高偏差値群平均 入学定員充足率 低偏差値群平均 入学定員充足率 4.168 3.03433E-05 ** 多重比較:Steel 法 **:1%有意 *:5%有意 対立仮説 対照群 処理群 統計量 P 値 判 定 対照群>処理群 高偏差値群平均 高 校 求 人 倍 率 中偏差値群平均 高 校 求 人 倍 率 2.043 0.037 * 高偏差値群平均 高 校 求 人 倍 率 低偏差値群平均 高 校 求 人 倍 率 1.469 0.119
まずF検定を行い、2群の母分散が等しいかどうか確認した。その結果、帰無仮説を棄却できな かったため、独立した2群の母平均の差のt検定を行った。その結果、定員充足率が100%以上 のグループと100%未満のグループで大学が立地している都市の平均規模に差は無いという帰無 仮説は棄却された。同様に定員充足率が100%以上のグループと100%未満のグループで大学への アクセスの容易さに差は無いという帰無仮説は棄却された。つまり、立地する都市の規模が大き いほど、アクセスが容易なほど、入学定員充足率は満たされやすい関係があることが示された。 表5 入学定員充足率と立地、交通アクセスの関係 表6 入学定員充足率と立地、交通アクセスの関係 検定結果 大学番号 入学定員 充足率 偏差値 立地都市 人 口 アクセス 大学番号 入学定員 充足率 偏差値 立地都市 人 口 アクセス a1 134.375 44 7 1 b1 93.636 44 1 0 a2 124.242 49 3 0 b2 93.333 42 2 1 a3 123 54 7 1 b3 92.5 47 6 1 a4 123 50 6 1 b4 80 45 4 0 a5 120.667 46 4 1 b5 79 43 1 0 a6 120.323 49 7 0 b6 77.5 39 4 0 a7 116.667 46 5 1 b7 76.667 43 1 0 a8 115.294 43 7 1 b8 74.167 41 5 0 a9 113.333 50 2 1 b9 73.75 40 4 0 a10 111 52 7 1 b10 66.162 44 1 0 a11 106.667 49 7 1 b11 63 40 5 0 a12 105 55 7 1 b12 62.667 42 7 1 a13 103.529 58 7 1 b13 60 41 6 1 a14 102.5 38 3 0 b14 56 40 7 1 平均値 48.786 5.643 0.786 b15 55.833 39 2 1 b16 52 46 3 1 b17 47.778 41 5 0 b18 45.714 42 6 1 b19 44.706 36 3 0 b20 42.5 39 5 0 b21 36.842 40 4 0 b22 34.667 40 6 1 b23 27.692 40 6 0 平均値 41.478 4.087 0.391 立地都市規模ケース データ数 平均値 t値 P値(両側確率) t (0.975) 充足率 100%以上 14 5.643 2.354 0.024 2.03 充足率 100%未満 23 4.087 交通アクセスケース データ数 平均値 t値 P値(両側確率) t (0.975) 充足率 100%以上 14 0.786 2.459 0.019 2.03 充足率 100%未満 23 0.391
第7節 結論と今後の課題 本稿では新設学部のその後のパフォーマンスを、逆選択をキーワードに検証した。その結果、 経営関連の新設学部では偏差値が低い程、入学定員充足率が低くなる傾向が示された。低偏差値 群の大学において、勉強の習慣のない高校生が受験する逆選択が発生しているために、勉強の習 慣のある高校生が受験しないのは勿論のこと、勉強の習慣のない高校生も出口に直結しない新設 経営学部を受験しないからであると考えられる。実際に、出口に直結する新設看護学分野では、 低偏差値の学部でも十分に入学定員を満たしていた。これは逆選択が発生しているからこそ、出 口と直結する低偏差値の看護学部を、勉強の習慣のない高校生が受験しているからだと考えられ る。更に、求人倍率と入学定員充足率の関係から逆選択の問題を検証した。求人倍率が高い(低 い)県に立地する低偏差値群の大学の入学定員充足率は低く(高く)なる傾向を図で確認した後 に、多重比較検定でもその傾向を把握することができた。最後に、立地や交通アクセスも定員充 足率に影響を与えていることも確認できた。 本稿の残された課題としては、以下の3点である。まず、論文作成時間の関係から外国語文献 のサーヴェイが出来なかったことである。Kelley(1975)に代表されるように効用最大化問題と して学習行動を捉える教育経済学の理論モデルを基礎にして、進学、就職の選択の問題を理論モ デルで分析しなければならない。また今回分析できなかった国公立を加えたデータや他の医療分 野のデータでも検証する必要がある。更に、諸要因を同時に勘案できるように重回帰分析も行っ ていきたい。 参考文献 川﨑孝明(2014)「短期大学部総合生活学科における学生募集活動に関する一考察」『尚絅大学研 究紀要』 人文・社会科学編 第46号、pp.91-106. 坂田正二(1987)「地方私立短大の定員割れの実態とその意味するもの」『広島文化女子短期大学 紀要』第20巻、pp.1-16. 佐藤広志(2013)「大学進学行動に及ぼす地域要因-兵庫県の事例分析-」『関西国際大学研究紀 要』第14号、pp.147-160. 出相泰裕(2004)「学部段階への社会人入学の現状に関する一考察・大学の属性の影響力の視点 から一」『大阪教育大学紀要』第Ⅱ部門 第53巻 第1号、pp.39-50. 山本正八(2007)「学生募集定員割れを防ぐ新カリキュラムの提案に関する研究」『生涯学習研究 と実践』浅井学園大学生涯学習研究所研究紀要 第10号、pp.139-148.
Kelly, A. C. (1975) “The Student as a Utility Maximizer,” Journal of Economic Education, 6, pp.82-92. ――――――――― * 沖縄大学法経学部 [email protected] ⅰ 勉強の習慣のない受験生の中でもより質の高い(大学入学後に勉強に取り組む)受験生に受 験してもらうためには、全入の大学であっても筆記試験を入試で課すことは重要である。ま た筆者が所属している学部で調査したところ、入試種別で初年次GPA平均値は異なってお
り、筆記試験を課す入試(センター試験利用、一般入試)の方がAO入試よりも初年次GPA が高い傾向にあることが明らかになっている。 ⅱ 文 部 科 学 省 の 設 置 届 出 状 況http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ninka/1307396. htm。 年 度 別 開 設 大 学 等 一 覧( 設 置 届 出 分 を 含 む )http://www.mext.go.jp/a_menu/ koutou/secchi/index.htm。 ⅲ 経営分野【平成21年度開設】青山学院大学経営学部マーケティング学科、亜細亜大学経営学部、 甲南大学マネジメント創造学部マネジメント創造学科、東北学院大学経営学部経営学科、愛 知産業大学経営学部総合経営学科、別府大学国際経営学部国際経営学科、愛知工業大学経営 学部経営学科、日本橋学館大学リベラルアーツ学部総合経営学科、東京成徳大学経営学部経 営学科、札幌学院大学経営学部経営学科、岡山商科大学経営学部経営学科、【平成22年度開 設】筑波学院大学経営情報学部経営情報学科、作新学院大学経営学部経営学科、名古屋商科 大学商学部マーケティング学科、【平成23年度開設】国士舘大学経営学部経営学科、茨城キ リスト教大学経営学部経営学科、愛知学泉大学現代マネジメント学部現代マネジメント学科、 中部大学経営情報学部経営会計学科、関西国際大学人間科学部経営学科、【平成24年度開設】 淑徳大学経営学部経営学科、嘉悦大学ビジネス創造学部ビジネス創造学科、豊橋創造大学経 営学部経営学科、明星大学経営学部経営学科、【平成25年度開設】埼玉学園大学経済経営学 部経済経営学科、駿河台大学経済経営学部経済経営学科、昭和女子大学グローバルビジネス 学部ビジネスデザイン学科、東海大学経営学部経営学科、東京富士大学経営学部イベントプ ロデュース学科、四日市大学経済学部経済経営学科、東京国際大学商学部経営学科、広島文 化学園大学社会情報学部グローバルビジネス学科、【平成26年度開設】武蔵野大学経済学部 経営学科、大阪国際大学グローバルビジネス学部グローバルビジネス学科、文教大学経営学 部経営学科、上武大学ビジネス情報学部国際ビジネス学科、大阪経済法科大学経済学部経営 学科、日本経済大学経営学部経営学科。 ⅳ 看護学科編【平成21年度開設】国際医療福祉大学福岡看護学部看護学科、西武文理大学看護 学部看護学科、豊橋創造大学保健医療学部看護学科、関西医療大学保健看護学部保健看護学 科、山陽学園大学看護学部看護学科、四国大学看護学部看護学科、活水女子大学看護学部看 護学科【平成22年度開設】群馬社会福祉大学看護学部看護学科、順天堂大学保健看護学部看 護学科、東京医療保健大学東が丘看護学部看護学科、東京工科大学医療保健学部看護学科、 中京学院大学看護学部看護学科、椙山女学園大学看護学部看護学科、大阪医科大学看護学部 看護学科、梅花女子大学看護学部看護学科、宝塚造形芸術大学看護学部看護学科、東北文化 学園大学医療福祉学部看護学科【平成23年度開設】人間総合科学大学保健医療学部看護学科、 東邦大学看護学部看護学科、聖泉大学看護学部看護学科、了德寺大学健康科学部看護学科、 上智大学総合人間科学部看護学科、京都光華女子大学健康科学部看護学科、森ノ宮医療大学 保健医療学部看護学科【平成24年度開設】日本医療科学大学保健医療学部看護学科、佛教大 学保健医療技術学部看護学科、帝京科学大学医療科学部看護学科、広島女学院大学人間生活 学部管理栄養学科【平成25年度開設】帝京平成大学地域医療学部看護学科【平成26年度開設】 鈴鹿医療科学大学看護学部、帝京大学福岡医療技術学部看護学科、文京学院大学保健医療技 術学部看護学科、中部学院大学看護リハビリテーション学部看護学科。
栄養学科編【平成21年度開設】つくば国際大学医療保健学部保健栄養学科、神戸女子大学健 康福祉学部健康スポーツ栄養学科、駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科、仁愛大学人間 生活学部健康栄養学科【平成22年度開設】東京家政学院大学現代生活学部健康栄養学科、盛 岡大学栄養科学部栄養科学科、文教大学健康栄養学部管理栄養学科、聖徳大学人間栄養学部 人間栄養学科、山梨学院大学健康栄養学部管理栄養士学科、京都光華女子大学健康科学部健 康栄養学科【平成23年度開設】酪農学園大学農食環境学群食と健康学類、十文字学園女子大 学人間生活学部食物栄養学科、東海学園大学健康栄養学部管理栄養学科、羽衣国際大学人間 生活学部食物栄養学科【平成25年度開設】東洋大学食環境学部健康栄養学科【平成26年度開 設】西九州大学健康栄養学部健康栄養学科、東海学院大学健康福祉学部管理栄養学科。 ⅴ http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/159-1b.html ⅵ 勉強の習慣のない受験生の行動は機会費用の観点からは合理的である。不況で職が無い場合 の大学進学に伴う機会費用は安いが、好況の時は大学進学による機会費用は高くつくからで ある。一方で、生涯賃金を増やすために4年間勉強し人的資本を蓄積するという意味で、彼 ら彼女らが合理的な行動を採っているかは判断が困難である。自らの学習能力から、4年間 の人的資本の蓄積量が少ないと予想するならば、やはり好景気の時に高3で就職するという 選択肢が合理的になる可能性がある。