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訪問看護師が実践するグリーフケア

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Academic year: 2021

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(1)41. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. ■研究報告. 訪問看護師が実践するグリーフケア 植 村 優 衣* 齊 藤 奈 緒** 多 留 ちえみ*** 宮 脇 郁 子***. 訪問看護師が訪問開始から看取り後に実践するグリーフケアを明らかにした.訪問看護師17名に半構造化面接を 行い質的に分析した.訪問看護師は,訪問開始から【利用者らしく家での穏やかな時間を過ごせるように可能な限 り心身の苦痛を緩和する】 【家で24時間介護している家族の心身を支える】実践を行っていた.さらに, 【利用者ら しい生活が送れるように利用者と家族の価値観や思いを大切にして関わる】ようにしていた.その上で, 【利用者 と家族が納得してお別れできるように思い出を残す】 【利用者と家族の心情に寄り添いながらお別れの準備ができ るように関わる】を行い, 【利用者と家族が望んだお別れができるように環境を整える】 【遺族が新たな生活を送れ るように共に故人を偲びつつ悲しみを分かち合う】に繋げていた.そして,これらの実践のために常に【利用者と 家族がかけがえのない時間を過ごせるように責任と覚悟をもって全力で支える】を行っていた.本研究は,訪問看 護師が実践するグリーフケアの実践を可視化できたと考える. キーワード:訪問看護師,グリーフケア,質的記述的研究. 緒言. ブメントケアやエンド・オブ・ライフケアなど,類似概念 も多い.グリーフケアは,看取り後の遺族へのグリーフケ. 国民の60%以上は,終末期を自宅で療養し,必要ならば. アのみを指すのではなく,療養生活開始時から終末期のグ. 医療機関等を利用したいと回答している(人生の最終段階. リーフケアを含めた広範囲に定義する重要性が示されてい. における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会,2018) .. る(小野,2011) .また,看護職が行うグリーフケアは死. そのため,今後,在宅終末期患者の増加に伴い,終末期を. 別後だけでなく,生前の患者のケアを行う時期から始ま. 在宅で過ごす利用者と家族を支える訪問看護ステーション. り,継続的に看取り後のケアまで関わることができるとも. が果たす役割は,さらに大きくなることが予想される.. 報告されている(荒木,2006) .つまり,看護師は,死別. 死を迎えることは本人と家族にとって,大きなライフイ. を経験する患者と家族に対して,患者の生前からの継続的. ベントである.死別の喪失感による反応は悲嘆と呼ばれ,. なグリーフケアを行えると考える.特に,訪問看護師は,. 誰もが経験しうる正常な反応であり,頻度や強弱には個人. 日勤帯の平日勤務を基本としており,訪問看護契約時から. 差があるが,6か月程度をピークに軽減すると報告されて. 看取りに至るまでに,受け持ち看護師が複数回訪問するこ. いる(Prigerson et al., 2009; Shear et al., 2011) .しかし,. とが可能な勤務体制のなかで看護を行っている.そのた. 時には,悲嘆プロセスが複雑化し,トラウマや病的悲嘆に. め,特定の訪問看護師が利用者と家族のもとへ複数回の訪. 及ぶこともある(Hanssonet al., 2007) .また,死別後の遺. 問をしており,継続的な関わりを行いやすい.. 族は,QOL が低く,抑うつや不眠の有病率の上昇(Asai et. さらに,訪問看護師は継続的に関われる強みとして,地. al,. 2013; Boelen et al,. 2007; Lannen et al., 2008)や飲酒. 域 と い う 場 に お い て 看 護 を 行 っ て い る こ と か ら, イ ン. 等の不健康行動の頻度の上昇が報告されている(Stroebe. フォーマルではあるが,街中で顔を会わせた時や自宅近く. et al., 2007) .そのため,死別を経験する患者と家族への支. の訪問を行った時などに声をかけるなどの看取り後の遺族. 援が重要である. このような死別を経験する患者と家族へのケアの一つと して,グリーフケアがある.グリーフケアは,死の前後を. を支援する実践ができる.そのため,訪問看護師は,看取 り後に至るまでの継続的なグリーフケアを行えると考える. このように,継続的な実践をできる強みがある一方で,. 問わず,本人・家族・遺族のグリーフワークに寄り添い応. 訪問看護師は,グリーフケアの実践上で家族の気持ちを聞. 援する関わりのこと(京都グリーフケア協会)とされてい. くことの難しさや病状認識や死の受容への支援の困難さを. る.従来,グリーフケアの概念は曖昧に用いられ,ビリー. 感じている(平松ら,2014) .また,訪問看護の特徴とし て,訪問看護師は,一人でその日の利用者と家族の状況か. *. 訪問看護ステーション ハートフリーやすらぎ. **. 宮城大学看護学. ***. 神戸大学大学院保健学研究科看護学領域. 連絡先:植村優衣 Email:[email protected]. ら必要となるグリーフケアを判断し,実践しなければなら ないが,訪問看護師は様々な看護師としての背景を持つこ とからも,実践差が生じていることが考えられる.しかし, 利用者と家族のもとへ単独で訪問しその日の状況に応じた. 2020年7月9日受付 2021年3月17日受理. 必要となるケアをすることが求められるため,訪問看護師. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号(2021年)p41−50. 同士がお互いの実践を共有することが難しい.つまり,単.

(2) 42. 植村,ほか:訪問看護師が実践するグリーフケア. 独訪問が多い訪問看護師が行う具体的なグリーフケアの実. モをもとに実施した半構造化面接での録音内容を逐語録に. 践内容を把握することは難しく,訪問看護師が日々どのよ. 起こし,訪問看護師が何を意図してどのようにグリーフケ. うな実践をグリーフケアとして実践しているかについては. アを実践しているのかという内容を抽出し,データとし. 不明である.. た.データは,類似・相違の観点から分類整理し,コード,. そこで,本研究は,訪問看護師が死別を経験する患者と. サブカテゴリー,カテゴリーを作成した.. 家族へ実践しているグリーフケアを可視化するために,訪. データの信憑性を確保するために,一部の対象者に,分. 問看護師が訪問開始から看取り後に至るまでに,日々実践. 析結果について意見を求めるメンバーチェッキングを行っ. しているグリーフケアを明らかにすることを目的とする.. た.また,全研究過程において,質的分析,訪問看護,終 末期看護に精通した共同研究者と共に吟味・検討しながら. 方法 研究デザイン 質的記述的研究デザイン 用語の定義. 進め,確証性を確保した. 倫理的配慮 神戸大学大学院保健学倫理委員会の承認を受けて実施し た(承認番号:700-1) . 対象者には,研究内容,自由意思による調査協力と,不. ・グリーフケア:利用者と家族・遺族のグリーフワークに. 参加による不利益が生じない保障,個人情報保護とデータ. 寄り添い応援する(京都グリーフケア協会)訪問開始か. 管理方法,結果公表について文書と口頭で説明し,署名に. ら看取り後までの継続的な実践. よる同意を得た.また,同行訪問する利用者と家族には,. ・実践:看護職が対象者に働きかける行為(日本看護協. 訪問契約時間外に,文書及び口頭にて研究主旨,倫理的配. 会,2007)であり,なおかつ,ある意思や目的をもった. 慮(同意撤回やその場合の不利益が生じない保障,研究者. 意図的な関わりとしての行い. に退出してほしい場合は退室することなど)について,文. 研究対象者. 言に配慮しながら説明し,同意を得た上で訪問した.また,. 終末期利用者への訪問を行っている訪問看護師とし,経. 同行訪問を実施する際には,訪問看護師が研究者の同行が. 験年数や認定・専門看護師の有無などの除外基準は設けな. 利用者と家族,または訪問看護師への精神的負担になると. かった.. 判断した時や生命危機で急がれる訪問時等は,訪問看護師. 終末期利用者を受け入れている近畿・四国圏内の訪問看. の実践の妨げにならないように,同行訪問を中止した.. 護ステーションの管理者に,文書及び口頭にて本研究の説 明を行い,対象となる訪問看護師の紹介を依頼した.そし て,研究参加に同意した管理者から紹介を受け,同意が得 られた訪問看護師を調査対象者とした. データ収集方法 訪問看護師の終末期利用者と家族へのケアの実践という. 結果 1.研究対象者の概要 対象訪問看護師は,5施設17名で,全員が女性であっ た.また,看護師経験年数は平均24.4年(範囲5~33年) ,. 様々な状況下における複雑な思考過程を明らかにするため. 訪問看護師経験年数は平均13.1年(範囲2~25年) ,6名は. には,対象者が具体的な看護実践を想起し,その時の自身. 訪問看護認定看護師で,3名は管理者であった.面接時間. の思考過程を振り返って言語化する必要がある.そのた. は,平均42分(範囲23~69分)であった.メンバーチェッ. め,面接前に,研究者が実際の実践場面に同行する参加観. キングには2施設5名の対象者が参加した.. 察法を併用した.事前に調査対象施設の訪問看護師から,. 2.分析結果. 利用者と家族に,研究者が同行訪問することの許可を得た. 訪問看護師が語ったグリーフケアの実践は,106コード,. うえで,訪問看護師一人につき,複数の利用者・家族へ,. 24サブカテゴリー,8カテゴリーが抽出された.カテゴ. それぞれ1~3回の同行訪問を実施した.同行訪問の際に. リー,サブカテゴリー,コードの詳細を表1に示した.な. は,終末期利用者と家族への援助場面を注意深く観察して. お, 【 】はカテゴリー, 《 》はサブカテゴリー, 「 」は. メモに記録した.複数回の同行訪問を実施したのちに,訪. 「 」 は訪問看護師の語り,訪問看護師の語りを中 コード,. 問看護師が終末期利用者と家族への実践について想起しな. 略した箇所には…を用いて,結果を示した.. がら,研究者の面接に応じられると判断した段階で,半構. 訪問看護師が実践するグリーフケアは,訪問開始時か. 造化面接を実施した.半構造化面接の実施においては,同. ら,タイミングを見極めながら,一つ一つの実践を継続的. 行訪問で注意深く観察して記録したメモをもとに,訪問開. に積み重ねていた.訪問看護師は,訪問開始から【利用者. 始から看取り後において, 「どのような意図で,どのように. らしく家での穏やかな時間を過ごせるように可能な限り心. 実践しているか」に関して面接を行った.. 身の苦痛を緩和する】 【家で24時間介護している家族の心. 対象者一人当たりに一回の面接行い,面接内容は対象者 の許可を得て IC レコーダーに録音した. データ収集期間は,2018年5月~10月であった. 分析方法 参加観察において援助場面を記録したメモ及び,このメ. 身を支える】実践を行っていた.さらに, 【利用者らしい生 活が送れるように利用者と家族の価値観や思いを大切にし て関わる】ようにしていた.その上で, 【利用者と家族が納 得してお別れできるように思い出を残す】 【利用者と家族 の心情に寄り添いながらお別れの準備ができるように関わ.

(3) 43. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年 表1 訪問看護師が実践するグリーフケア カテゴリー. サブカテゴリー. コード 利用者の身体に負担がかかるケアは,その人の状態に合わせて手早くする. 利用者が最期の時間にやりたい 身体症状の緩和に必要な治療(薬剤調整等)について多職種と連携する ことができるように身体症状を 利用者の苦しい顔を家族に見せないように,苦痛緩和を行う 緩和する 自分たちらしい時間を過ごせるように,身体的苦痛を緩和して緊張が緩むように する 利用者らしく家での穏 利用者が抱く感情を表出しても 療養生活の中で抱くつらさや怒りの感情を表出してもらい,受けとめる やかな時間を過ごせる らいそのまま受けとめる 利用者が思っている言葉には, 『うんうん,そう思うのね』とそのまま受けとめる ように可能な限り心身 かけがえのない時間として過ごせるように,身体症状に影響されている ADL や の苦痛を緩和する QOL を詳しく把握する 利用者が家で穏やかに過ごせる 利用者の苦痛緩和と家族の疲労を軽減するために,利用者が夜間眠れているかど ように心身の状態を把握し必要 うかを確認する となる生活援助を行う 利用者が心地良いと感じてリラックスできるために,リラクゼーションを加えて 侵襲や害のないケアをする 心身共に辛い生活の中でも,ほっとできる時間をもてるようにする 家族と顔を合わせた時には,挨拶や『疲れていないですか』といった労わる声か 24時間介護している家族が疲 けをする 弊しないように家族の心身を労 家族の血圧を測るなど家族の健康状態を把握し,必要に応じて健康管理する わる 介護している家族に『あなたが大事ですよ』と伝え,心身を支える 家族が一人で抱え込まず,頑張りすぎなくても良いことを伝える 家で24時間介護してい 介護している家族の頑張りを承 家族の行っているケアに対して, 『すごいですね』と称賛する る家族の心身を支える 認し負担が増えないように関わる 利用者と家族が一緒にいる時に, 『できているよ』と伝え,お互いに褒め合う 介護している家族が頑張っていることを一つ一つ具体的に承認する 入院になっても介護者が自分を責めないよう,入院後も『よく頑張ったね.つら 入院しても家族が自分を責めな かったよね』と声をかけ,家族を支え続ける いように認め支え続ける 入院した場合はこれまでのケアを十分に承認し, 『これは必要な入院だったと思 うよ』と後悔をさせないように配慮する 利用者から頼まれたことはできる限りすぐに行い,安心感をもってもらう 利用者が心地よいと感じられるタッチングや爪切り,足浴をして安心できる空間 をつくる. 利用者と家族に本音を話しても 信頼関係を築き,利用者の本音を自然と話してもらえる存在になる らえる環境をつくる 利用者の生活する空間やこれまでの生き方などの会話からその人を理解する. 限られた時間を利用者が一緒に居たい家族と過ごせるように,その家族も大切に した関わりをする 後悔なく利用者らしい生活が送れるように,利用者と家族の価値観を把握する 利用者と家族がそれぞれに対してどのような感情を持っているのかについて聴く 利用者らしい生活が送 れるように利用者と家 利用者らしい生活を支えるため 利用者と家族のそれぞれが大切にしたい人や会いたいと思っている人を確認する 族の価値観や思いを大 に利用者と家族の価値観や思い 日ごろは連絡を取っていない,遠方に住む家族にも連絡を取り,お互いの気持ち を聴く 切にして関わる を聴く 利用者や家族のこれまでの思い出について尋ねる 訪問看護師が利用者と家族のお互いを思いやる気持ちを代弁する 『介護者(○○)さんのことをどう思いますか』と声かけをして,利用者と家族 が気持ちを伝えられる場のきっかけをつくる. 利用者と家族がお互いの気持ち 利用者である親から幼い子供に,病気のことや亡くなることを直接伝えられるよ を伝えられるように関わる うに関わる 利用者が家族に感謝の気持ちを伝えることができるように,訪問看護師がつなぐ 役割を担う 良い人生だったなと思えるように,人生の中で輝いていたころや楽しかったころ 日常生活の中で利用者と家族が を振り返る 思い出を共有できる場をつくる 家族との思い出の時間をつくるために,残された時間に家族と共に人生を振り返る. 利用者と家族が納得し 役割をもちたい家族が安心して利用者に行えるケアを提案する てお別れできるように 看取り後に家族がこれで良かっ 日常生活の中で多くの思い出がつくれるように,イベントや写真を残す機会をつ 思い出を残す たと思えるように今しかできな くる いことを行えるように関わる 亡くなった後に一人で閉じこもらないためにも,思い出を共有できる人を生前か らつくる.

(4) 44. 植村,ほか:訪問看護師が実践するグリーフケア. カテゴリー. サブカテゴリー. コード 利用者や家族の大切にしておきたいと思うことが叶えられるようにする 看取り後に家族がつらい思いをしないために,生前にしかできないことを一緒に 探して行う 生前からの遣り残しが少なく,看取り後に『これで良かった』という言葉がでる ように関わる 看取り後は訪問契約が終了するから,家族へのグリーフケアは看取るまでに精一 杯行う 死が近づくことに伴って出てくる家族の気持ちを受けとめる 利用者の病態が変化する度に,家族に病気についての認識を聴く 利用者の病状と家族の認識をすり合わせる 家族が抱く不安について,しっかりと時間をとって聴く 家族がつらい気持ちを表出できるように『つらいですよね,いつでも連絡をくだ さい』と声かけをする. 死について利用者と家族一人ひ 家族の思いを否定せずに受けとめる とりの気持ちを受けとめる 親を亡くす子どもが感情を出せるために,常に声をかけて泣ける場をつくる 家族の一人ひとりの思いは違うからそれぞれの思いを聴く 利用者が弱気なことを言った時には,死について話すチャンスだと思い,その気 持ちを尋ねて利用者に気持ちを語ってもらう 利用者の思いを何回もかけて,日々の実践の中でゆっくりと聴く 亡くなることへの思いを聴くために『どう?』と自由に語れるように利用者に問 いかけて,話をする 死を自然のことであると受けとめてもらえるように関わる 日常の中で死を意識してもらうために,どのような人でも死が訪れることを伝える 家族が辛い気持ちをもつ中でも次の生活を始めていけるために,亡くなる前から いつか訪れるお別れを感じてもらえるように関わる 利用者と家族にいつか訪れる死 死を受けとめてもらうために,亡くなることを受けいれにくい日本人の利用者と を受けとめてもらえるように関 家族に配慮しながら死が将来訪れるということを話す わる 家族が心の準備をするために,近い将来にお別れがあることを伝える. 利用者と家族の心情に 寄り添いながらお別れ の準備ができるように 関わる. 家族が最期の時間を良い時間として大切にできるように,死が近づいていること について心情を考慮しながら早めに伝える 親が亡くなることを伝えるために成長期やその子に合わせた関わりをする 子どもへの看取りの説明をする時には終末期に関する絵本などのアイテムを用いる 訪問看護開始時から最期をどうしたいのか意思確認する 利用者や家族が自分の気持ちを話せる時と場所を見極める 利用者の前で話さない方が良い話は場所を変えたり電話をしたりして家族と話す 最期について話せるタイミング 利用者の人生だから,利用者の意思を尊重してほしいことを家族に伝える と環境を見極めて揺れる気持ち 普段から最期をどう迎えたいのかを死について話した時をきっかけにして,イン を支える タビューなどを通して話を聴く 病態が変化する度に,何度も利用者に意思確認をする 最期をどう迎えたいのかの意思は,いつでも変わって良いことを必ず伝える 看取りの場所については,どのような選択をしても良いことを伝える 在宅か病院かを選ぶ時には,両方の情報をきちんと伝える 在宅か病院かを選択する時には,家にいたい気持ちと他の様々な感情を天秤にか これまでの生活を振り返り共に けて判断する 悩みながら終の棲家を選択でき 家族が選択できない時には,今までの状態をふまえて,訪問看護師が家族の背中 るように関わる を押すこともある 家で看取ることが難しい家族や,家で亡くなることによって死を乗り越えること が難しい家族には,タイミングを逃さず入院することへの背中を押す 利用者に死が近づいていることを認識してもらうために身体のしんどさに気付い てもらう 利用者と家族に死が目前にある 傷つけることであっても逃げずに,言わなければならないことは全てありのまま ことを覚悟してもらえるように に伝える 病状の変化をありのままに伝える 遠方に住む家族にも必ず訪問看護師から利用者のその日の状態や病状を報告する 病態の変化を家族に受けいれてもらうために,家族の心情を考慮しながら伝える べきことを繰り返し丁寧に伝える.

(5) 45. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. カテゴリー. サブカテゴリー. コード 看取りの覚悟ができるように,可能な限りパニックにならないように丁寧に説明 する. 人間関係ができ,家族に看取りの覚悟ができているかを確認した後に,時間帯や 説明する環境を整え,看取りの説明を行う 看取りの説明を行うことで家族 と訪問看護師が看取りを行う覚 家族にとっては初めての過酷な経験となるため,表情や反応を見ながら丁寧に伝 悟を共有する える 『もしかしたら,今晩の可能性もある』と死が訪れることを伝え,看取りのパン フレットを渡すなどをして,家族に看取る覚悟をもってもらう. 利用者と家族が望んだ お別れができるように 環境を整える. 家族へ看取りの説明をしながら,訪問看護師自身も看取ることへの覚悟を決める 息を引きとる時に側にいてもらうために,利用者に予測されることを伝える 家族が前を向いて生きられるように,医療者から臨終時に『最期まで家で過ごせ 利用者と家族が最期のお別れが てよかったね』と伝える できるようにする 臨終時に利用者と家族が最期のお別れをできるように感情を出せる機会をつくる できるだけ利用者がきれいで元気そうにみえるように,家族と一緒にエンゼルケ アを行う 看取り後に時期を見極めながら 人が来なくなり落ち着き始めた49日前後頃に,遺族のもとへお悔やみ訪問に行く お悔やみ訪問に行く 遅くても1か月以内にお悔やみ訪問に行く. 看取り後も遺族へ覚えていることを伝えるために,返事がなくても手紙を書く 遺族が新たな生活を送 看取り後も遺族のことを気にか れるように共に故人を けていることを伝える 気になる遺族には,訪問や電話をしたり,ステーションに来てもらったりして関 偲びつつ悲しみを分か わり続ける ち合う お悔やみ訪問した時には,部屋の状況や食事状況,表情を観察する お悔やみ訪問では生活状況を観 察すると共に今までのことを振 お悔やみ訪問で遺族の感情を受けとめる り返りながら悲しみを受けとめる 遺族と共に今までのことを振り返り,遺族の頑張りを認める 利用者の気持ちに沿うために自分の気持ちに余裕をもち訪問する 利用者と家族のサインに気付けるために訪問看護師としてのアンテナを張る 利用者と家族の生活だから看護師の判断ではなく,最期の時まで利用者と家族の 気持ちを聴く どういう状況であっても訪問看護師は助けるということを伝え,最期の時まで支 利用者と家族を最期の時まで責 える 任と覚悟をもって悩みながらも 利用者ができることを最期の時までできるように,利用者の生きたいと思える力 を支える 利用者と家族がかけが 全力で支える えのない時間を過ごせ 利用者が話をしたい時に話せるように,いつでも訪問看護師は話を聴ける準備を るように責任と覚悟を する もって全力で支える 死と生きることの狭間にいる利用者が,ベストな生活を送れるように悩み続ける 最期の時まで利用者と家族のことを思い,寄り添い,責任と覚悟をもって全力で 支える 限られた環境の中で実践するケアに不安がある時は,周囲のスタッフに相談する 元気にいつも通りに訪問できる 元気でいつも通りに訪問できるように,お互いに気遣う ようにチーム全員で支えあう 訪問時にもつ不安に耳を傾け承認しあう 終末期利用者への訪問ができるように訪問件数などを調整する. る】実践を行い, 【利用者と家族が望んだお別れができるよ. る》ことを行っていた.そして,心身の苦痛緩和のみなら. うに環境を整える】 【遺族が新たな生活を送れるように共. 「家で生活できるように,病気の影響で出来なくなって ず,. に故人を偲びつつ悲しみを分かち合う】実践に繋げてい. いるお風呂に入るとかご飯を食べるとかの生活動作につい. た.そして,訪問看護師はこれらの訪問開始時から看取り. 《利用者が家で穏や て把握するようにしている」のように,. 後に至るまでの実践を行うために,常に【利用者と家族が. かに過ごせるように心身の状態を把握し必要となる生活援. かけがえのない時間を過ごせるように責任と覚悟をもって. 助を行う》実践をしていた.. 全力で支える】ことを実践していた.. 2)家で24時間介護している家族の心身を支える. 以下に,カテゴリーごとに,訪問看護師が実践するグ. 「家では家族がすごく頑張って介護をしているので,血. リーフケアの実践について記述する.. 圧を測ることや『疲れていない?』と声を掛けることは必. 1)利用者らしく家での穏やかな時間を過ごせるように可. 《24時間介護している家族が疲弊 ずしている」 のように,. 能な限り心身の苦痛を緩和する. しないように家族の心身を労わる》や, 《介護している家族. 在宅での時間を継続するために,まず, 《利用者が最期の. の頑張りを承認し負担が増えないように関わる》ことで家. 時間にやりたいことができるように身体症状を緩和する》. 族を支え続けていた.そして,介護負担が強くなったり,. や《利用者が抱く感情を表出してもらいそのまま受けとめ. 利用者の病態によって入院したりすることがあっても,.

(6) 46. 植村,ほか:訪問看護師が実践するグリーフケア. 《入院しても家族が自分を責め続けないように認め支え続. が少し悪くなったりした時を見計らって話すようにしてい. ける》実践をしていた.. 《利用 る」といったように話すタイミングを見極めながら,. 3)利用者らしい生活が送れるように利用者と家族の価値. 者と家族にいつか訪れる死を受けとめてもらえるように関. 観や思いを大切にして関わる. 「ジロジロと家の中を見てはいけないけど,さりげなく,. わる》実践をしていた. 《最期について話せるタイミングと 環境を見極めて揺れる気持ちを支える》ようにしていた.. 家の中においている家族写真をみたり,リビングにおいて. 「亡くなる場所を考えるときには,その時のその場 そして,. いる置物などを見たりして,利用者や家族の趣味とか,思. の利用者の言葉だけではなくて,今までの生き方や経過な. い出とかの情報収集をしている」 と訪問看護師は語ってお. どをふまえて助言をしている.やっぱり,その時の言葉は. り,このような実践を通して, 「利用者の生活する空間やこ. 《これまでの生活を その人の本心とは限らない」のように,. れまでの生き方などの会話からその人を理解する」ように. 振り返り共に悩みながら終の棲家を選択できるように関わ. 「まず,訪問看護を受け入れてもらうた していた.そして,. る》ことを行っていた.これら以外にも, 《利用者と家族に. めにも,利用者の身体に触れることだったり,心地よいと. 死が目前にあることを覚悟してもらえるように病状の変化. 思ってもらえたりする足浴をして,関係性をつくっていく. をありのままに伝える》といった実践を繰り返し行うこと. ようにする」 という語りのように,利用者のことを理解し. で,訪れる死への準備を行えるように支えて続けていた.. ながら関係性を築きつつ, 《利用者と家族に本音を話して. 6)利用者と家族が望んだお別れができるように環境を整. もらえる環境をつくる》ことを訪問開始から実践してい. 「関係性がしっかりと出来てから,気持ちとか た.そして,. える. 「関わる中で死が近いと判断した時には,訪問終わりに. 聞かないと,上辺の気持ちしか教えてくれない.…本当の. 家族を玄関先に連れていき,看取りのパンフレットを用い. 思いというか,心の中の気持ちを知らないといけない」 と. 《看取 ながら,わかりやすい言葉で説明をする」 のように,. いう語りのように,関係性をしっかりと構築した後に, 《利. りの説明を行うことで家族と訪問看護師が看取りを行う覚. 用者らしい生活を支えるために利用者と家族の価値観や思. 悟を共有する》実践を行っていた.この実践を行う際には,. いを聴く》ことや, 《利用者と家族がお互いの気持ちを伝え. 「見取りまでのプロセスはいつか伝えなけ 訪問看護師は,. られるように関わる》などの実践を行っていた.. ればいけない.でも,それをどうやって伝えるのかは,本. 4)利用者と家族が納得してお別れできるように思い出を 残す. 当に難しいけど,人の気持ちは夕方になるとどうしても暗 くなってしまうから,昼間に伝えるようにしている.あと,. 「家族がいるときを見計らい,家族に聴こえるように居. 昼間だと,私たち看護師にも連絡がしやすいから,伝える. 室のドアを意図的に開けているんです.そうしてから,利. のに適していると思っている」 とも語っており,伝えるタ. 用者に人生の中で輝いていたころの話を聴くんです.面と. 「家族を大 イミングも意図しながら実践していた.そして,. 向かって話すのはお互いに照れくさいかなと思って」 のよ. 切にしていた人には亡くなる時に側に居てもらえるように. うに, 《日常生活の中で利用者と家族が思い出を共有でき. するなど,その利用者と家族にとってベストなお別れの仕. る場をつくる》実践を行っていた.この実践を行うことに. 方でお見送りができるようにケースバイケースの対応をし. 「訪問看護の時に,今までの人生の ついて,訪問看護師は,. 《利用者と家族が最期のお別れができる ている」のように,. ことについて,少し話をしておくと,退出後も利用者と家. ようにする》実践を行っていた.. 族で,今までのことを話し続けるんです.こうやって,話. 7)遺族が新たな生活を送れるように共に故人を偲びつつ. していると,あの時は楽しかったなとか,迷惑かけたなと か,その時には伝えられなかった気持ちを自然と伝えてい けるんです.…こうやって,思い出を振り返ること自体が,. 悲しみを分かち合う 訪問契約終了後であっても,訪問看護師は, 《看取り後に 時期を見極めながらお悔やみ訪問に行く》ようにしてい. 亡くなった後の家族の心を支えていく思い出にもなるんで. 「気 た.訪問看護師は,お悔やみ訪問に行くことについて,. す」 とも語っている.また,訪問看護師は「誕生日とかで. にかけていることを伝えるために電話している.…わざわ. はないけど,訪問中に利用者が良い顔をしたときには写真. ざ電話しなくても,近くのほかの利用者のところに訪問し. をとります.意外と何気ない時の方が良い顔しているんで. た後などに,線香をあげることもしている」と語っており,. 《看取り後に家族がこれで良かったと思える す」のように,. 《看取り後も遺族のことを気にかけていることを伝える》. ように今しかできないことを行えるように関わる》実践を. ことを意図的に実践していた.また,家族が通常の生活を. していた.. 送ることが出来ているかどうかを観察することも実践して. 5)利用者と家族の心情に寄り添いながらお別れの準備が. 「家にお線香をあげさせてもらう時に,家の中はしっ いた.. できるように関わる. かり見ている.言葉では伝わらない遺族の悲嘆を知ること. 訪問看護師は,いつか訪れる死に対して準備ができるよ. ができるから.…ごみがちゃんと捨てられているとか,家. うに, 《死について利用者と家族一人ひとりの気持ちを受. の中が片付いているとか.そして,生前の訪問看護の時と. けとめる》実践を行っていた.そして,訪問看護師は,死. 同じ様に,ベッドが置いてあった部屋の椅子に座り,利用. 「死についての に対する様々な気持ちを受けとめながら,. 者との思い出を語り合います.客間とかではなくて,いつ. 話を切り出すことは難しいので,芸能人が亡くなったとか. 《お もと変わらない場所で,その時の話をする」 のように,. のタイミングだったり,死についての話題が出たり,状態. 悔やみ訪問では生活状況を観察すると共に今までのことを.

(7) 47. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 振り返りながら悲しみを受けとめる》実践を行い,看取り. かとなった.具体的には,訪問看護師は,単独訪問で死と. 後も遺族を支え続けていた.. 向き合う中で抱く様々な感情や思いなどを,周囲のスタッ. 8)利用者と家族がかけがえのない時間を過ごせるように. フに相談することで自分自身に余裕をもつことを心掛けて. 責任と覚悟をもって全力で支える. いることや,訪問件数を通常よりも減らしてもらうなど管. 「終末期利用者を訪問するときには,どうしても,死につ. 理者からのサポートを受けることなどを通して,訪問看護. いて考えることが多いので,自分がバーンアウトしないた. 師自身の準備と調整を行い,責任と覚悟をもって日々の実. めにもしっかりと管理する.自分の気持ちに,より一層余. 践に臨んでいたことが明らかとなった.このような訪問看. 《利用者と家族を最 裕をもてるようにしている」のように,. 護師自身への実践は,利用者や家族の感情を受けとめるこ. 期の時まで責任と覚悟をもって悩みながらも全力で支え. とや病態をアセスメントすることへの大きな不安を感じて. る》ことを実践していた.そして,単独で訪問することが. いる訪問看護師への大きな支えとなり,利用者と家族へ. 多いことから生じる病態アセスメントなどの責任感が訪問. しっかりと向き合うために必要なことである考える.つま. 看護師の重荷とならないように, 「限られた環境の中で実. り,訪問看護師は,利用者と家族に直接的なケアを行うこ. 践するケアに不安があるときは,周囲のスタッフに相談す. とのみをグリーフケアとして捉えているのではなく,訪問. る」ことや「終末期利用者への訪問ができるように訪問件. 看護の特性に応じた訪問看護師自身への実践をもその一部. 数などを調整する」ことなど日々の実践としていた.この. として行っていると考えられる.したがって,訪問看護師. ような実践を行うことによって,担当訪問看護師を《元気. 自身への実践を行うことは,より一層,共感性が高く継続. にいつも通りに訪問できるようにチーム全員で支えあう》. 的なグリーフケアを利用者と家族に実践するうえで大変重. ことで,終末期利用者と家族への実践ができるようにして. 要であると考える.. いた.. 2)利用者と家族の心身を支える実践 訪問看護師が,グリーフケアとして,訪問開始時から利. 考察. 用者の心身の苦痛を緩和することや在宅での介護者となる 家族を支えること,家族間の関係性の調整を行うことを実. 訪問看護師が実践するグリーフケアは,訪問開始時か. 践していたことも訪問看護のグリーフケアの特徴の一つで. ら,タイミングを見極めながら,一つ一つの実践を継続的. ある.利用者と家族の心身を支えることや家族間の関係性. に積み重ねていた.訪問看護師が行うグリーフケアは,生. を調整することは,グリーフケアとして報告されることは. 前から看取り後までの継続的な関わりによって,共感性の. 少ない.しかし,訪問看護師は,利用者が限られた時間に. 高い心理的なケア・適切な社会的支援の提供ができると言. やりたいことができ,その時間をかけがえのない時間にす. われている(小野,2011) .本研究結果においても,訪問. るためにも, 【利用者らしく家での穏やかな時間を過ごせ. 看護は,特定の訪問看護師が継続的に訪問して利用者と家. るように可能な限り心身の苦痛を緩和する】ことをグリー. 族の生活の場においてケアを提供できる環境にあることか. フケアとして捉えて実践していた.がん,心疾患,脳血管. ら,利用者と家族がかけがえのない時間を過ごし,死別の. 疾患,肺炎,腎不全患者の3~4割程度が,死亡前一か月. 悲嘆が軽減されるように,訪問開始から看取り後におい. 間において,痛みや何らかの身体の苦痛,気持ちの辛さを. て,継続的に意図した様々な実践を一つ一つ積み重ねてい. 感じて過ごしていることが報告されている(国立がん研究. くことによって,共感性の高いグリーフケアを行っている. センターがん対策情報センター,2018) .このような利用. ことが具体的に明らかになったと考える.. 者は,何かしらの心身の苦痛を抱きながら在宅での日常生. 以下に,在宅という環境での看取りを支えている訪問看. 活を送ることは難しく,また,苦痛を伴う状態でかけがえ. 護師が実践する共感性の高いグリーフケアの特徴について. のない時間を過ごすことは難しい.そのため,訪問看護師. 述べる.. は,まず最優先の実践として,利用者の心身の苦痛を緩和. 1)訪問看護師の使命感に基づく実践. させ,在宅でのかけがえのない時間を確保するための実践. 訪問看護師の特徴として,看護師が居宅を訪問する時に は多くの場合一人であり,その場には他の医療従事者は通 常おらず,一人の看護師の観察や判断,それに伴う看護実. を行っていた.そのため,この実践もグリーフケアとして 捉えていると考える. また,訪問看護師は,利用者の在宅生活を支えている介. 践 に 対 す る 責 任 が 非 常 に 重 い と 言 わ れ て い る( 角 田,. 護者にとっても利用者とのかけがえのない限られた時間で. 2016) .つまり,共感性が高く継続的なグリーフケアを実. あると捉えて, 【家で24時間介護している家族の心身を支. 践する上で,訪問看護師は,死を感じながら生活している. える】をグリーフケアとして実践していたことも特徴的な. 利用者や家族の元に一人で訪問し,感情を受けとめること. 実践である.在宅看護においては,家族が療養者のケアの. や,病態をアセスメントすることなどが求められている.. 担い手となり,介護者は日常生活を営みながら,介護をも. このような特徴的な訪問看護の環境において,本研究で. 担っている(木下,2015) .つまり,家での生活には介護. は,訪問看護師は,死と向き合う利用者と家族のもとへ単. 者となる家族の存在が大変重要であり,家族がケアを担う. 独訪問する責任感や覚悟という使命感に基づいた【利用者. ことで,利用者の生活が送れる環境になる.介護を担って. と家族がかけがえのない時間を過ごせるように責任と覚悟. いる家族は,身体的にも心身的にも疲弊し,利用者と過ご. をもって全力で支える】実践を常に行っていたことが明ら. している時間を苦痛に感じることもある.そのため,訪問.

(8) 48. 植村,ほか:訪問看護師が実践するグリーフケア. 看護では,家族の苦悩や疲労を労ることを大切にしてお. 訪問看護師は, 【利用者と家族の心情に寄り添いながら. り,家族へのケアは利用者とのかけがえのない時間をつく. お別れの準備ができるように関わる】において,早い段階. りだす実践になっていたと考える.家族が介護に追いつめ. から,タイミングを見極めながら,何度もいつか訪れるお. られる経験は,亡くなった後の後悔につながることもある. 別れについての話を行っていた.しっかりと意思決定を行. ため,常に家族をねぎらい,家族が残された時間の中をか. うためにも,少しでも利用者の体調の悪化などを訪問看護. けがえのない時間として過ごせたと感じられるように,家. 師がアセスメントをした場合には,包み隠さず伝えるな. 族の心身を支えるケアをグリーフケアとして実践していた. ど,訪問看護師は,タイミングを逃さないように関わって. ことは特徴的な実践である.. いた.まだ死が近くはない時期から,残された時間をかけ. 3)最期の時まで利用者らしい生活が送れるための実践. がえのない時間とするためにも,訪問看護師は,いつか訪. 利用者と家族の心身のケアのみならず, 【利用者らしい. れる死を意識しながら,死について話せるタイミングを見. 生活が送れるように利用者と家族の価値観や思いを大切に. 極めつつ,意思決定支援を幾度となく繰り返していた.こ. して関わる】実践をグリーフケアに位置づけていた.訪問. の 実 践 は, 訪 問 看 護 師 が 行 っ て い る Advance Care. 看護師は,対象者の意思や希望,対象者との関係を大切に. Planning の実践であるとも考えられる.そして,訪問看護. しながら,対象者の本当の思いに常に考えを巡らせている. 師は,早くからこの実践を行うことで,利用者と家族のそ. と言われている(仁科,2019) .本研究においても,訪問. の時の思いだけで左右されることなく,それまでの利用者. 看護師は,利用者と家族に訪問看護を受け入れてもらい,. の思いを総合的に反映した意思を支えることができていた. 関係性を築けたときにこそ利用者と家族が抱く気持ちや思. と考える.. いを知ることができると考えているため,看護を行いなが. そして,意思を支え続けるのみならず,利用者が亡くな. らしっかりとした関係性を築きあげていた.そして,タイ. るまでの限られた時間の中で,看取り後に遺族がこれで良. ミングを見極めながら,心の奥底に本当に抱いている利用. かったと思えるように, 【利用者と家族が納得してお別れ. 者と家族の価値観や利用者と家族の気持ち,感情などを聴. できるように思い出を残す】実践を行っていた.遺族の複. こうと関わり続けていた.特に,訪問看護師は,家という. 雑性悲嘆の予測因子に,死別に対する心の準備の不十分さ. 利用者の場所で看護を行うことを活かし,自宅に飾られて. (Aoyama et al., 2018; Schulz et al., 2015; Stroebe et al.,. いる写真や思い出の品から思い出を語ってもらうことなど. 2007)があり,介護中に十分な時間を利用者と家族が過ご. を通して,利用者の抱く本当の思いや感情などの本音を聴. すことが,遺族の複雑性悲嘆を軽減させる(Muramatsu et. く実践を行っていた.さらに,訪問看護師は,日常の中に. al., 2007)と報告されている.本研究で明らかになった死. 組み込まれている高齢者への家族の大事な思いや,今の介. への準備や思い出をつくる支援は,死別に対する心の準備. 護の状況に至るまでの大変な思いといった本当の思いを,. が十分にできるように,また,利用者と家族が共に悔いが. ありのままの自然に近い形で「日常の会話の中から」捉え. 残らないように実践しており,複雑性悲嘆に陥らないため. ようとしていたとも報告されている(小野ら,2007) .訪. の重要な実践であると考える.特に,訪問看護は在宅とい. 問看護師は,訪問中に,いつも整理されている部屋が散ら. う場所で実践することを活かして,利用者が送る日常生活. かっていることなど,生活状況からいつもと違うところに. そのものが思い出と死別への心の準備になるように,訪問. 気づき,それをきっかけに利用者や家族の思いを聞くな. 看護が関わらない時間でも,利用者と家族が日常生活を送. ど,利用者と家族のタイミングと状況を考慮しながら,日. る中で思い出になるようなかけがえのない時間を過ごせる. 常生活の中において話し合える機会をもつことを実践して. ことを意図していた.具体的には,訪問時間の中で,何気. いた.訪問看護師は,このような普段の生活から,利用者. ない感謝の言葉が伝えられるなどの一つ一つの生活場面を. と家族と信頼関係を築きつつ,死と向き合う中で生じてく. 大切にしてきっかけを作り,訪問後に利用者と家族だけに. る思いや価値観を聴きだしていたことが本研究において明. なった時に,この余韻のなかで,今までの人生の一緒に過. らかとなった.訪問看護師は,自宅に訪問できることによ. ごした時間をともに振り返り,感謝を述べられる時間をも. る強みを活かし,これまでの利用者の生活史や家族の文. てることを意図して実践していた.訪問看護師はこのよう. 化,その中で生まれてきた価値観などを捉え,それらすべ. な実践を積み重ねることで,特別な思い出を作ろうと働き. てを受け入れ,利用者と家族に寄り添い応援する実践を展. かけるだけではなく,また,単に利用者と家族が共に同じ. 開していた.. 時間を過ごすことだけではなく,利用者が自分自身の人生. その上で,訪問看護師は,利用者と家族がかけがえのな. の集大成の時間となっていたと考えられる.また,家族に. い時間を過ごせるように, 【利用者と家族が納得してお別. とっても,利用者との最期の残された時間を共に過ごし,. れできるように思い出を残す】 , 【利用者と家族の心情に寄. これまでの思いをお互いが許し合い,納得できる意思決定. り添いながらお別れの準備ができるように関わる】実践. ができるよう調整役としてお互いの気持ちを大切にしなが. を,病気の経過や利用者と家族の心理状態などをふまえて. ら死への準備の関りを実践していたとも考えられる.. タイミングを見極めながら繰り返し積み重ね,臨終期の. 最後に,訪問看護師は,訪問開始からの実践をふまえて,. 【利用者と家族が望んだお別れができるように環境を整え. 看取り後に遺族が複雑性悲嘆に陥らないために,家族が臨. る】という利用者と家族のグリーフワークに寄り添い応援. 終に立ち会えるように【利用者と家族が望んだお別れがで. する実践へと繋げていた.. きるように環境を整える】実践をしていた.訪問看護師は,.

(9) 49. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 特に,死が近いことをアセスメントした上で,家族に残さ. て対象者が認識し,言語化した内容をデータとしている.. れた時間や最期の状況を具体的に伝え,家族が戸惑うこと. そのため,在宅医療に従事している全ての訪問看護師が実. が少なく,親しい人たちと共に最期のお別れができるよう. 践しているグリーフケアを記述するには至っていない可能. に準備していた.お別れへの準備をできるように看取りの. 性がある.特に,本研究においては,訪問看護師の実践に. 説明を行う際には,訪問看護師は,看取りの説明を行った. 影響を与えると考えられる看護師自身の特性をふまえたリ. 後に家族が一人で思いつめないように,訪問看護師に連絡. クルートを行っていない.そして,近年,がん患者のみな. を取りやすい日中の時間や気持ちを共有できる家族がいる. らず,老衰や非腫瘍系疾患での在宅看取りも増加してい. 時などのタイミングと,利用者の前ではなく帰り際の玄関. る.疾患によって終末期の経過も異なるため,訪問看護師. 先やゆっくりと話せる別室に移るなどの場所に考慮しなが. によるグリーフケアの特徴も異なると考えられるが,本研. らこの実践を行うようにしていた.訪問看護師はバッド. 究においては,この点を考慮できていない.今後は,これ. ニュースを形式的に伝えるのではなく,このように家族へ. らのことをふまえた調査・分析を行う必要があると考える.. 十分に配慮しながら伝えることで,悲しみにくれたお別れ ではなく,望んだお別れができるように支えていたと考える. 4)看取り後の遺族への実践 訪問看護師は,訪問開始時から積み重ねていた実践を 【遺族が新たな生活を送れるように共に故人を偲びつつ悲 しみを分かち合う】実践につなげていた.この実践は,遺 族が後悔の念や罪悪感に苛まれないように,従来の業務の. 謝 辞 実践を惜しみなく語ってくださいました訪問看護師の皆 様及び,参加観察にご協力くださいました利用者・家族の 皆様に心より感謝申し上げます. なお,本研究は,平成30年度神戸大学大学院保健学研究 科の修士論文の一部に加筆・修正を加えたものである.. 空き時間を利用して継続的に行われていた.一般的には病 院などにおいては,看取り後に遺族のもとへ伺うことはで きないが,地域という場にいる訪問看護師は,他の利用者. 利益相反 本研究における利益相反は存在しない.. の訪問後に立ち寄ることや,移動中など街中で顔を合わせ たときなどに声を掛けることができるため,インフォーマ ルではあるが,訪問看護師だからこそ行える遺族への継続 的なグリーフケアであると考えられる.また,訪問看護師 は,実際に遺族が生活している空間に訪問できるケースも あり,遺族が生活をしっかりと送れているのかを確認する こともできる.電話や手紙では,十分に遺族の悲嘆状況を 把握することも難しいこともあり,実際の生活状況をみる ことで,遺族の本当の思いを受けとめることができるのは 訪問看護の強みであると考える. 5)訪問看護師が実践するグリーフケアへの示唆 本研究は,訪問看護師が,訪問開始から臨終期,看取り 後までの意図されたグリーフケア実践について一つ一つの 実践の具体化と,これらの実践のタイミングを見極めなが ら,継続的に積み重ねている訪問看護の特徴的な実践につ いて具体的に示すことができた.この具体化された実践を 参照することによって,訪問看護師あるいはケアチーム が,日々の看護実践上の課題や困難を明らかにし,かつ, その課題や困難に対する具体的な解決策を導くために活用 できると考える.また,本研究において具体化された訪問 看護師の実践するこれらのグリーフケアを用いることは, 今後,増加する在宅看取りを支える訪問看護師のグリーフ ケア実践の充実に大きな意義をなすものと考えられる.こ れらの実践の充実に伴い,ひいては,在宅利用者と家族が 終末期の残された時間をかけがえのない時間とすることが でき,看取り後も遺族が病的悲嘆に陥らずに生活できるよ うになると考えられる.. 本研究の限界と課題 本研究は,参加観察場面を基に面接し,その面接におい. 文 献 Aoyama, M., Sakaguchi, Y., Morita, T., et al.(2018) : Factors associated with possible complicated grief and major depressive disorders, Psycho-Oncology, 27, 915-921. 荒木美和(2006) :看護師が遺族ケアを行う意味(強み) , 臨床看護,32 (8) ,1184-1189. Asai, M., Akizuki, N., Fujimori, M., et al.(2013) : Impaired mental health among the bereaved spouses of cancer patients, Psychooncology, 22 (5) , 995-1001. Boelen, P.A., & Prigerson, H.G.(2007) : The influence of symptoms of prolonged grief disorder, depression, and anxiety on quality of life among bereaved adults: a prospective study, European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience, 257 (8) , 16, 444-452. Hansson, R.O., & Stroebe, M.S.(2007) : Bereavement in late life coping, adaptation, and developmental influences. Washington, American Psychological Association, 41-60. 平松瑞子,岡本双美子(2014) :在宅終末期がん患者を看 取る家族へのグリーフケアに関する訪問看護師の困難 ─死別前の家族への支援を通して,死の臨床,37 (2) , 371. 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関す る検討会(2018) :人生の最終段階における医療に関 する意識調査報告書,https://www.mhlw.go.jp/toukei/ list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf. 角田直枝(2016) :知識が身につく!実践できる!よくわ かる在宅看護(改定第2版) , 7,学研メディカル秀潤社, 東京都. 木下由美子(2015) :新版在宅看護論 , 24, 医歯薬出版株式 会社,東京都. 国立がん研究センターがん対策情報センター(2018) :が ん患者の療養生活の最終段階における実態把握事業 「患者が受けた医療に関する遺族の方々への調査」平.

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参照

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