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循環的成長に関する覚書

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Academic year: 2021

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(1)Title. 循環的成長に関する覚書. Author(s). 大野, 勇一郎. Citation. 北海道學藝大學紀要. 第一部, 9(2): 108-113. Issue Date. 1958-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/3674. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 第9巻 第2号. 北海道学芸大学紀要 (第一部). 3年12月 昭和3. 循 環 的 成 長 に 関 す る 覚 書 大. 野. 勇. 一. 郎. 北海道学芸大学釧路分校経済学研究室. Yuichiro ONo : so icaI Growth ーme Thoughts on Cycl. 〔1〕 大 ざっ ぱ に 云 っ て ケイ ン ズ 以 後 の 景 気 循 環 理 論 は, ハ ロ ッ ド型, ヒ ッ ク ス ニ グ ッ ドウイ ソ 型 と カ ル ドア ニ カ レッキ ← 型 と に 分 け る こと が 出 来 る よ う で あ る, そ して, いま 流 行 の 循 環 的 成 長 理 論 に 関 して 云 う な らば, そ の 最 近 の 先 駆 者 と し て は, ハ ロ ッ ドと ヒ ッ ク ス の 名 を あ げ る べ き も の で あ ろ. う, だが, 乗数理論と加速度原理との結合によって理論を組立てる立場よりも, 乗数理論と利潤原 理とによって説きあかそうとする見地に, より多く現実的, 説得的なものを感じ取るわれわれは, 一応, カル ドア= カレッキーの側に立ち, 而かも, より具体的に循環的成長理論を把握するにさい して の 基線 と して は, カル ドア 自 身 の そ れ で は な しに, 修 正 さ れ た グ ッ ドウイ ソ型 の 投 資 函 数 と デ. ュ ウゼソベリの貯蓄函数とを結合することによって, カル ドアの循環モデルの上で成長を画かれた 認 ) … 安井琢磨教授のそれをまなびとりたいと考える, ( ところで新しいと同時に古くからの問題でもある此の循環的成長理論の古典的代表者として, わ れ われ は マ ルク ス と シ ュ ン ペ ー タ ー と を 数 え あ げ る こ と が 出 来 る よ う で ある が, カ ル ド ア を 土 台 と. して理解しようと試みるわれわれの循環的成長理論に於ては, 投資需要と消費需要との関係, 所得 分配率の変化, といったような問題について, あるいは, より一般的に云って, ここで問われてい るものが直接には資本主義経済における循環的成長理論であるという意味においても, マルクス理 論 か ら も 学 び 得 る も の は 学 び と らね ば な ら な い で あ ろ う と 考 え る シ ュ ン ペ ー タ ー に つ い て は シ , , ュ ン ペー タ ー に依拠 して い る カル ドア を 基 軸 に 据 え て 学 習 す る こ と そ れ 自体 に お い て す で に シ ュ ン ペ ー タ【 か らま な ん で い る こ と に な る, と 云 え る か も 知 れ な い, 一 方 は搾 版 に, 他 方 は 信 用 創 出 に. 投資の源泉をもとめているという相違はあるにもせよ, また資本主義の制度的要因に重要な役割を に な わ せ て い る の と 制 度 的 特 質 を 明 確 に して い な い の と の 差 異 は あ る に して も, マ ル ク スも シュ ン. ペドターも資本家ない し企業家の積極的, 能動的投資態度の うちに経済の発展と循環の起動因を置 いているという点は共通だと云えるであろう, このたびのわれわれの学習は, ある意味では, シュ ンペー タ ー に依拠 す る カル ドア を, 更 に こ れ に マ ル ク ス 的 視 角 を さ し添 え て 理 解 しよ う と い う 試 み だ と い う こと に な る か も 知 れ な い,. なお, われわれが此の学習を通 して意識的に消費に重みを持たせているのは, 決 して投資の始発 因を消費に限定しような どと云うのではなくて, 投資が結局は消費から自由ではあり得ず, 循環の 上向および下向転回においても消費が 一つの重要な役割を果していることを指摘したいと考えたか らにほかならない, また, われわれはマルク スの恐慌理論ないし景気循環理論が過少消費説を主軸 にするものだな どと断定する気持もない. 周知のごとく, マルクスの恐慌論には過少消費説, 過剰 投資説あるいは完全雇傭天井説, 金融天井説といった諸見解が混在しているようである, --108-.

(3) . 大. 野. 男. 一. 郎. ともあれ安井モデルという土台の上で諸派の見解をあわせまなびながら, われわれなりに, 何ら かの意味における一応の綜合的理解にたどり着きたいというのが, このたびの拙い学習を通しての われわれの念願なのである, 17 8頁) 参照 (註) 安井琢磨 「循環的成長に関する一試論」(経済研究, 第5巻第3号, 169-. 〔2〕 先ず若干の予備的学習から始めよう, 投資決定理論としての加速度原理, 利潤原理ないしは両者 の 統 合 と し て の 「資 本 ス トッ ク 調 整 理 論」 ,あ る い は ウイ ル ソ ン, ゴー ドン, フ ェ ル ナ ー 等 の 「よ り. 一般的な投 資理論」 といったものについては, われわれは次の様に考えている, 純技術的な意味に おける加速度原理は非現実的 であって賛同しがたい, 加速度係数は現実の問題としては必ずしも常 に ヒッ ク スの想 定す る よ う な 大 き さ を 持 つ と は 期 待 出 来 な い で あ ろ う, ま た, グ ッ ドウイ ン流 に 修. 正された加速度原理は, もはや本質的には利潤原理と差異がないものとなっている, 統合理論とし て の マ シ ュ ー ズ 流 の 「資 本 ス トッ ク調 整 理 論」 も そ のま ま で は 受 け い れ 難 い, と い う わ け は, 投 資. の決定は先ず需要の大きさと内容の予測がおこなわれ, その予測の上に立って, これを資本, の最適 操業度において, すなわち, 最低生産費において生産し得るように資本の準備をするのが, 利潤を 動機とし目的とする企業家の投資決定態度であろうと考えるからである, また, 「より一般的な投 資理論」 は, すくなくとも, 論理的首尾一貫性を持つ循環モデルを打ちたてるのには適当なもので はないように思われる, 結局のところ, この度の学習におけるわれわれの理解と しては, 投資決定 理論はカル ドア流の利潤原理に 一応 落着くことになる。 景気変動の主要な動因である利潤に重きを 置 か な い とこ ろに, ヒッ ク ス 理 論 の 一 つ の 欠 陥 を も と め る こ とが 出 来 る の で は な い か と わ れ われ は 考 えて い る, X. こんにち一般におこなわれている下の転回点の説明は, 所得の減退にもかかわらず消費水準の低 下を防ごうとする抵抗と, 企業が固定した若干の費用項目を確保しようと努める行為とを以てする デ ュ ー ゼ ソベ リの 見解 と, マイ ナ ス の 純 投 資 が減 価 償 却 率 を 超 える こ と が 出 来 な い こ と と, 独 立 投 資が 増 加 して いく こ と と で 説 明 づ けよ う と す る ヒ ッ ク ス の 解 明と で あ る よ う だ が, わ れ わ れ は, 巧 妙 では あ る が現 実か ら 距 り が あ る と 考 え られ る ヒ ッ ク ス のそ れ よ り も, デ ュ ー ゼ ソ ベ リ の 見 解 に 依. 拠したいとおもう, そしてこれに, 不況克服のためにたちあがるマルクスの資本家の積極的投資態 度を重ねあわせ, さらにシュンペーター的新機軸投資を此の局面においてマルクスの資本家の投資 の うち に 吸収 せ しめ度 い と 考 える,. いったい, 新技術の導入, 革新は景気循環のいかなる局面において, もっとも多くおこなわれる ・し合う資本主義社 可能性が強いと解すべきも のであろうか, 利潤を動機とし目的として相互に競争 会の生産担当者たちは, おそらくは, 新技術の導入によって廃棄される旧資本の価値の最も低下す る不況 一i恢復の局面において, 最も多く新技術の導入, 革新を企てるであろう, と解すべきもの では ある ま い か, これ は マ ル ク ス と シュ ン ペ ー タ ー の結 合, と い う よ りは, よ り 正 しく は, シ ュ ン ペ ー ター をマ ルク ス の側 に 引 き寄 せ て 繋 ぎ 合 わ せ た と 云 う べ き も の で も あ ろ う, わ れ われ は マ ル ク ス の 「恐慌 後 の一 大 新投 資」 を こ こ で 援 用 した い と 思 う, だ か ら, シュ ン ペ. 夕 ← の 謂 う 「均 衡 の. 近傍」 が新機軸に最も有利な諸条件を提供するという見地からは叩かへだたっており, シュンペー ター の教 えに は そ の ま ま従 っ て は い な い こ と に な る で あ ろ う, X. X. ×. ×. ×. ,. 投資は有効需要をつくり出すばかりでなく, 生産力を増大する,というのが周知の ドマールの「投 - 109 -.

(4) . 循環的 成長 に関す る覚書 資 の 二 重性」 で あ る が, カ ル ド アは 資 本ス トッ ク の 増 加 が 投 資 に マイ ナ ス の 効 果 を 持 つ こ と を, そ. のモデルに陽表的にとりあげた, そして資本ストックの増大に較べて雇傭労働量は増加しないため に所得の分配率は資本家に有利になって行き, 社会の貯蓄率は増大する, と説く, 資本ストックの 増大は資本の限界効率を低下させるし, 所得の増大は貯蓄率を高める, というのが, ケイ ンズ派の 説明の仕方であろうとおもうが, われわれは此れに加えて謂わばマルクス流の一つの説き明かしを も併せて抜で学びとっておきたいと思う. 所得の増加が消費率を低下させるか否かについては, その後, 謂うと ころの消費函数論争が華や かに展開されて来ていることは, これまた周知のと ころであるが, この問題は暫らく措いて問わな いとしても, 資本ストックの増加が労働の生産性を高め, それに比例して実質賃銀が上昇するもの とすれば, 所得の分配率は必ずしも労働者に不利になるとは限らない, だが資 本と労イ動との結合比. 率すなわち資本構成 も の高度化は資本の利潤率 表 を低下させる傾向を持つである ~ すなわち. 利潤率 そ ご. 号 と考えれば, モ 糟 大する場合, ; を大きくするのでなければ利潤率. 十 の低下は防ぎ得ない この事実が生産関係にもとずく力 のはたらきによって労働生産性の上昇 , 分だけ実質賃銀を上昇せしめないという傾向を導き出すことになる, という のが大雑把に云って, M. 謂わばマルクスばりの把え方だと考えてよいであろう. (いうまでもなくマルクスの場合の で;▽ K. )もっとも, この場合, キ ー T .-キーだと におけるC 槽 ま, に で云うKと同じではないが. して, 資本構成 そ の高度化が, その高度化率と同じ割合で, またはそれ以上 の率で労働の生産性 を高め, その結果, 資本係数 ÷ の値が変らないか, 若しくは, より′ 、さくなるという様なときに J は, 或いは問題は別になるかも知れないが, (ここで, われわれが 「或いは……」 としたのは, こ の様な事態においても, 即ち, よしんば利潤率 そ が低下しないような場合にあっても, 労働の生 産性が上昇する程には実質賃銀を上昇せしめようと しないのが, 所謂資本主義的分配の本来的性格 K. -t 一 で ある とす る の が, 謂 わ ば マ ル ク ス 流 の 理 解 態 度 で あ ろ う と考 え た か ら で あ る.) お そ らく は,-. の大きくなる程には労働の生産す 生が高まらないのが, すなわち労働係数 ÷ が小さくならないのが 常 態 で あろ う し, カ ル ドア ・ モ デ ルに お いて 想 定 さ れ て い る と こ ろ も 亦 そ の よ う な 事 態 で あ ろ う と. 考えられる. そこで此 のような労資間の所得分配率の変化は, -- 一般的に云って, 資本家たちの 貯蓄率は労働者たちのそれよりも高いだろうと考え られるから--社会全体としての貯蓄率を増大 せしめ, 社会の消費力を相対的に狭隆化する. この社会の消費力の狭醸化は投資の減退を招くこと に な る, と い う 運 び で, 資 本 ス トッ ク の 増 大 が 投 資 曲 線 を 下 方 に 移 行 さ せ る と い う カル ドア の 解 明. を学びとる. というのも一つの理解の仕方であろうかと思われる,. 以上のような理解の仕方に関連 して, われわれが舷で考えたいのは, 有効需要ご消費需要十投資 需要, というだけに終ってしまう把握の仕方に関してである, 投資減退の原因として資本ストック の増大をとりあげることは正 しいであろうが, と同時に消費需要と投資需要との間の関連もまた併 せて問われねばならないであろう, とすれば生産部門の分割 という問題もあらためて採りあげられ なければならぬ様である, ここでも亦われわれは, マルクスを想いおこすのが便利なようである, 「不均等発展と消費限界」 といった視角が, ここでとりあげられ吟 味されて然るべきである様に思 われる. 上の転回点についてのわれわれの理解は, 端的に云って, カル ドアにマルクス的視角を加えたも -110-.

(5) . 大. 野. 勇. 一. 郎. の だと 云 う こ とに なる よ う で ある,. 〔3〕 グッ ドウイ ンから導かれた安井教授の投資函数 は LF F (Y+ ÷ ≠- 十 K) と書か れ 函 数 F は, Y十 去. か. 表 K‐o のとき 』 ‐り となるような非 線型の増加函数と仮定される ( , 1. は最適資本集約度, のは現実の産出量に依存しないインノヴェィションにもとずく資本要額) その 形を図に示せば第1 図の如きものとなる, ところで安井構想において特徴的な ことは, 経済の循環的成長を考察する 場合, 投資函数の函数形そのものの変 化を見落してはならないと説かれてい る点であろう, すなわち, 投資折線は Yが正常水準にある間は正常勾配を持 つわけであるが, 人口の増加, 生活水 準の上昇, 労働生産力の増大等にとも なって Yの正常水準は次第に増加し,. / /. その結果, 投資折線のうち正常勾配を 持つ部分は次第に上方に伸張していく. ′ A. とされ, 一つの循環内においては, こ の函数形を不変とし, 循環間において 函数形が変化するものとして説明を進 め られ る,. 〔第. 1 図〕. 次いで貯蓄函数について教授は景気. 変動過程における貯蓄・所得関係の非可逆性に関するデュー ゼンベリ説を援用され, 長期において /Y は Y の増減にかかわりなく一定であるが, 短期においては貯蓄率は Y の増減に応じ は貯蓄率 S て同じ方向に変化するものとされる, すなわち, 景気循環 の進行につれて所得が増加する場合, 所 得が従前の最高水準に到達するまでは, 貯蓄は短期貯蓄直線に沿っておこなわれるが, この点を超 えて所得が増加すれば貯蓄は長期貯蓄直線に沿ってなされることになる, そして, 所得の増大が新 しい最高水準に達して止み, 低落しはじめると再び短期貯蓄直線に沿って貯蓄は減少することにな る,. 以上のごとき投資函数と貯蓄函数とを組合せて教授がカル ドアの循環モデルの上に展開される循 環的成長のモデルは第 2図の如きものである. 斯く してのち, 教授は要約的に云われる, すなわち, 「このモデルにおいて, 循環的成長を始発 するものは投資折線の伸長であり, これを拡大するものは, 短期貯蓄直線と長期貯蓄直線との間に 成立するデュー ゼンベリ効果である, 投資折線の伸長を可能ならしめたのは, 人口の増加, 生活水 準の上昇, 労働 生産力の増大というが如き成長的要因であったが, これらのものはまたデュー ゼ ソ ベリ効果の背後にあって, これを規定する力の一部であると考えられる. 成長的要因のつよい経済 では, 景気循環 ごとに投資折線は大きく伸長してゆくから, ただに最高および最 低の所得水準が循 環 ごと に増 加 す る ば か り では なく, 同 じ こ と は 投 資 の水 準 に つ い て も 妥 当 す る で あ ろ う.」と, さ ら. -111-.

(6) . 循環的成長に関する覚書. 〔第 2 図〕 に補 足 して, の の 変 動 に 基 くイ ソノ ヴェイ シ ョ ソ 効 果 を 考 慮 す る な ら ば, ス ラ ン プ局 面 に お け る の. の増加は不況期を短縮し, ブームの局面におけるのの増加は好況期を延長するから, ス ラ ンプ局面 において常に著しいのの増加がある場合, およびブーム局面において常にめの増加がある場合には 投資折線の伸長という要因がなくとも, 循環的成長の生起は可能であることを指摘されてのち, に も拘わらず, の の変動はその性質上, 不規則であることからして, これは寧ろ循環的成長の変容因 とみるのが適当であり, 始発因は矢張り人口増加, 生活水準の上昇, 労働の生産力増大にもとずく ・線の伸長にもとむべきである, と結ばれている. 投資折 〔4〕 終りに安井モデルの上で更に若干の理解を書き足させていただくことにする, 先ず循環の谷を高めていくものは何にも増して, 人口の増加と生活水準の上昇--それは生産力 の増大によって支えられるものであろうが 一一に伴う消費量の増大であろうとわれわれは考える, ‘ fecビ’ を以て循環と成長を結ぶ重要な緋 その意 味 で わ れ わ れ は デ ュ ー ゼ ン ベ リ の 謂 う ‘ rat chet ef. であるとする見地に従いたい, … ノ 人口増加 と こ ろ で 同 じく カ ル ドア の 循 環 モ デ ル の 上 で 成 長 を 考 え ら れ て い る 森 島 助 教 授 は, 「票. と生活水準の上昇が貯蓄曲線の下方への平行移 動をみちびく ということによって, そのモデルをつ くりあげておられるのであるが, その貯蓄曲線下方移動の説明について, われわれには理解しがた - 112一.

(7) . 大. 野. 勇. 一. 郎. いものが残るように思われる, 消費を所得に比例する部分 cYt と基礎消費部分 b( t ) とに分けら れたことは適切であろうし, また基礎消費が人口の増加や生活水準の上昇につれて増大するとされ たことも正しいとおもう, だが, いま仮に所得に比例する消費部分 cYt の限界消費性向 c が変化 しないものとしても, 基礎消費の増加率が所得の増加率を超えるのでなければ, 貯蓄率の低下は来 たさない筈である, 基礎消費を上昇せしめるものとしての人口増加と生活水準の上昇 わけても生 , 活水準の上昇率が所得の増加率を上廻るという保証も傾向も現実には見出しがたいのではなかろう か. この点, デューゼソベリの消 費函数, したがって貯蓄函数をとりいれた安井モデルの方が, 少 くともわれわれにとっては, より納得しやすいものの様に思われる, 技術の進歩は労働の生産性を 高め, 所得水準を高めていく だろうけれども それがそのまま労働者の実質賃銀の上昇に反映する , ものとは期待 しがたいし, 社会全般の生活水準の上昇となってあらわれるとも考えがたいのではな かろうか, その意味ではわれわれは社会の貯蓄率は長期的にみて僅かながら寧ろ上昇の傾向をたど るのではないかと考えているし, また同じ意明ぐで安井モデルにおける長期貯蓄直線も多少の修正を 加 え て 学 び と りた い よ う に 思 っ て い る, も っ とも この 程 度 の部 分 的 修 正 は よ しん ば 加 え た に も , ,. せよ, 安井モデルの解明の本筋には影響のないことであろう, 安井教授も下落した所得水準が再び上昇していく過程において, 所得が急速に増加する場合には 所得が以前の最高水準を超えてのちも, 依然として短期貯蓄直線に沿って貯蓄率が上昇することも 一時的には可能であるとされているようであるが, いずれにもせよ, われわれが所得の変化と消費 率, したがって貯蓄率との間の関係にこだわるのは, 資本ストックの増大が投資にマイナスの影響 をおよぼすという理解のほかに,′投資需要は消費需要から絶対的には独立であり得ないという視角 を加えて, 投資の減退ないしは停止を理解したいと考えるからである, (註) 森島通夫 「資本主義経済の変動理論」loトー13頁参照 ( 19 58年6月稿). -113.

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