• 検索結果がありません。

課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み ― 双方向遠隔授業システムを用いて ―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み ― 双方向遠隔授業システムを用いて ―"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み ― 双方向 遠隔授業システムを用いて ―. Author(s). 前田, 輪音. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 10: 25-36. Issue Date. 2020-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11183. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第10号. 特集1. 課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み ― 双方向遠隔授業システムを用いて ― 前 田 輪 音*. 1 課題と方法 1-1 主権者教育に求められるもの 2016年の18歳選挙権実施にともない、 「主権者教育」が推奨されてきている。文部科学省によれば その目的は、 「単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるにとどまらず、主権者として社会 の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一 人として主体的に担うことができる力を身に付けさせる」 (文部科学省[2017] )とされている。社会 における「自立」と他者との「連携・協働」のもと、 「地域の課題解決」を「主体的に担う」力の育 成が求められている。 従来、高校公民科・中学校社会科公民的分野等で政治制度が取り扱われてきているが、高校生用の 副読本『私たちが拓く日本の未来』 (文部科学省・総務省[2015] )では模擬選挙(実際の選挙・架空 の選挙両方)や模擬議会(主に地方議会)等が例示され、模擬選挙の実践などは一時期、マスコミに よる報道も多くみられた。また、当初は少なかったが、政策(現実のもの・架空のもの)等について 「アクティブラーニング」1する実践もみられはじめている。 選挙や議会等の政治システムの体験それ自体の意義はある。なかでも、地域の課題を考えて学校で 議員らとともにグループ討論したり2、地方議会でその地域の抱える課題を質問・請願の形で議論の 俎上にあげる実践等は魅力的だ。地域の問題はときに日本社会全体の課題につながる可能性もある3。 一方で、政治システムの不備や政府の行為による人権侵害等諸問題への対策を考えることも同様に 重要である4。誰しもが被る立場になりうる、いわゆる社会問題はあとを絶たないからである。 人権侵害の対策やそれに類する社会問題は、個人・地域・国家レベルのいずれの問題に対しても、 その解決のために複数の関係者による連携・協働が必要とされ、 「主権者教育」の「目的」である「他 者」との「連携・協働」と合致する。政府が行う行為が憲法に反していないか・人権を侵害していな いか等を「不断の努力」 (憲法12条)で監視することは、主権者の重要な役目のひとつである。あわ せて、 「主権者教育」における留意点として示されている、 「政治的に対立する見解がある現実の課題」 に際しては、複数の立場(側面)や見解があること5もふまえねばならないだろう。 これらは、本来あるべき主権者教育にふさわしい課題と言えよう。 1-2 授業プログラム「恵庭事件」の改訂の指針 「恵庭事件」 (1962年起訴・1967年札幌地裁一審判決・確定)は、戦後、島松演習場に隣接する牧 場の酪農民が、駐留米軍や自衛隊による度重なる甚大な演習被害に数々の抵抗・対応を重ね、その一 つとして自衛隊の演習用通信線を切断し、そのことが「自衛隊法121条違反」として起訴された裁判 ───────────────────── *. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)札幌. 25.

(3) 前 田 輪 音. である。公判は40回にわたり、自衛隊(法)の合・違憲性の議論に約3分の2があてられた。 この「恵庭事件」では、弁護師は全国から400名以上集まり、多数の学術研究者が専門知識を持ち 寄り、学生・市民・主婦らが署名活動や印刷物等の作成および裁判の傍聴券確保のために前夜から裁 判所前で並ぶ等、 「弁論・理論・世論の三論一体」 (深瀬他[2008]368頁)の協働がみられた。 この「恵庭事件」を素材に筆者が作成した授業プログラム(前田[2008] ・ [2009]等)は、被害者 である(かつ被告になった)野崎牧場における被害の概要や数々の対応策、牧場と演習場をとりまく 歴史的背景、演習用の通信線を切断して起訴されたこと、裁判の様子や判決および複数の関係者の反 応、その後の変化などを含めた解説と、当事者の行動や状況等を考える10の設問で構成されている。 中学生・高校生・大学生を対象に実践・分析・改訂を経て、 おおむね一定の成果を得られたと考える。 しかし、他方、他者との協議や多様な立場からの議論の場は意識的には設定されていない。そこ で、前田[2008]等での授業プログラムで被害者である牧場およびその支援者の立場で対策を考えさ せた課題を、〈牧場〉のみならず〈自衛隊〉およびその地域の〈役所〉の計3つの立場に分け、複数 名で協働して対策案を考え・各対策案に他の立場から意見を述べる課題に変更した。 本来の当事者である牧場と自衛隊に加え、 役所を設定したのは、 牧場からの苦情・通報・対応要請・ 相談先となったのは、役所等だったことによる。また、本院の講義は、3キャンパス(当時)を双方 向遠隔システム(後述)で接続し実施している関係から、キャンパス毎に立場を振り分けるのに都合 がよかったことにもよる。 そこで、前田[2008・2009]等の授業プログラムをもとに、その骨子や流れはそのままに、自衛隊 の演習による被害対策を考える場面を、3つの立場から協働して課題解決に取り組むものに一部改 変・実践し、主権者意識の形成6を試みる。. 2 授業実践の概要 2-1 概 要 目的: 憲法判例となった重要な課題にかかわる諸事実を知り、その課題の解決のために協働して複 数の立場から課題解決に取り組むことを通して、主権者としての意識を形成する一助とする。 対象: 北海道教育大学大学院教育学研究科・高度教職実践専攻(教職大学院)在籍中の大学院生1 ~2年生計7名、取得免許教科は小学校と中学校の複数の教科で、学部卒院生(ストレートマス ター)と現職院生混合、キャンパスによっては受講人数の関係から7TAも一部参加している。 実施日: 2016年12月5日18時から21時、選択科目「授業実践と学級づくり」 (現「授業研究の理論 と実践」)(授業開発分野)の一部の時間を用いて実施された。 実施概要: 2コマ(1コマ90分)続きの前半(約70分強)は「主権者教育」の動向・18歳選挙権・ 主権者教育のために作成された副読本(総務省・文部科学省[2015] )の内容紹介、 等が解説された。 休憩をはさみ、後半の100分程度を用いて 「ワークショップ」8と称して本稿の実践を行った。講義では、 前半の「主権者教育」との直接的な関連は明言せずにはじめた。 授業者は執筆者がつとめた。パワー・ポイントのシート(以下、 “PPシート”と略す)を教室前方 に投影し、解説・写真・図・設問およびその解答等を提示した。受講者の設問回答記載用として、授 業開始時にワークシートを配布し、あわせてPPシートで映し出したもののうち、手元で確認するた めに必要な資料を適宜紙媒体で配布した。振り返り(感想)等の記載欄も設けた。ワークシートは授 業終了後回収した。 26.

(4) 課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み. 使用システム: 本実践では、本大学院の他の講義同様、複数キャンパスを接続して同時に実施でき る双方向遠隔システム9が用いられている。このシステムは、画面越しに他キャンパスの様子が映像 で確認出来、マイク等を用いて互いのキャンパスから同時に音声でのやりとりをすることができる。 2-2 授業の概要 恵庭事件に関する諸事実を時系列に沿って解説し、合間に対応策や判決などを予想する7つの設問 と振り返り記載の課題を設定した。以下、 設問(“ ”内)および解説( “解説” ) の概略を示す。 問1 自分にとっての幸せを考える 解説① 野崎牧場の沿革・幸せな時代 広尾町から恵庭に移転してきたこと、四 季折々実り豊かで平穏な牧場の日々を示 す。 解説② 牧場従事者の新聞投書「自衛隊の 大砲の音」 (野崎美晴 1960 図1) から、. 図1 野崎美晴「自衛隊の大砲の音」. 激しい騒音により人間・家畜の甚大な被 害が及んでいることを示す。 問2 騒音の主を予想する 解説③ 騒音は自衛隊演習によるものであり、その具体的内容を示す。 被害の具体的内容 ・騒音…家畜の価値の低下(乳量の減少) 、人間の健康被害が甚大となった。 ・河川の汚濁…牧場・生活用水の不足、自家発電が不可能になった。 解説④ 演習場と牧場の沿革 両者の沿革を年表で示した。 (戦前)北海道開拓→牧場開設→隣接地に旧帝国陸軍島松演習場設置→年に数度の演習 →野崎牧場移転 (終戦)米軍駐留→朝鮮戦争勃発→米軍の激しい演習・騒音被害→自衛隊創設・演習・騒音被害 問3 野崎牧場の被害対策を複数の立場にわかれて考え発表する 3つの立場(牧場・自衛隊・役所)を設定し、各キャンパスに一つの立場を指定しキャンパス内で 討論しその立場の対策案を作成する。 その後、全キャンパスに向けて対策案を発表する。 なお、問3を提示する際、各立場をPPシートでイラスト表示したが、 〈役所〉は某市役所の建物の 写真に加え、役所の職員・警察・消防士のイラストを載せ、地域で働く地方公務員を意識させた。 問4 他の立場が考えた対策に意見・質問・感想を述べあう 他の立場の対策案(問3)について自分の立場から意見を述べる。 解説⑤ その後、牧場が実際に行った数々の対策を示し、その一環として、大きな砲撃演習につい ては事前に連絡する約束を取り付けたものの、牛の能力検定の日にその約束は守られず激しい演 習が始まった。演習場に抗議に向かい、中止を要請するが聞き届けられず、やむなく演習用通信 線を切断する。次の日、また演習があり、自衛隊に抗議に向かうと、苦情対応も演習の一環であ ることを示す部隊内文書をみせられ、再度、演習用通信線を切断したことを示す。 27.

(5) 前 田 輪 音. 問5 演習用通信線を切断後、自衛隊の演習や牧場はどうなったか予想する 解説⑥ 起訴、裁判開始、裁判の流れを示す。 解説⑦ 牧場に対しての数々の支援 (多数の弁護士・憲法等研究者・市民) が集まったことを示す。 問6 判決を予想する 解説⑧ 判決では、被告人無罪、自衛隊の憲法判断はなされず、などを示す。 解説⑨ 判決直後の反応(牧場、裁判長、検察、自衛隊)を示し、さらに、牧場と基地の現在の様 子、および自衛隊のその後の変遷等を示す。 問7 様々な事実を知った感想 振り返り(ワークショップ体験を含め全体の感想)記入. 3 実践の記録から―協働場面と複数の立場にわかれた活動 全7問のうち、問3・問4の設問とそのねらいおよび授業の実際、および全体の感想(問7・振り 返り)を分析する。 問3 牧場は自衛隊の演習により、たくさんの被害を受けています。それぞれの立場で対策を練っ てください。 問3は、野崎牧場の被害に対し、 牧場・自衛隊・役所の3者にわかれ複数名で「協働」し多様な「対 策案」を考え・共有しまとめていく場面である。その後、全体で報告しあうことで、他の立場の人が どのような対策案を練ったのかを知ることができる。 「対策案」を練る場面では双方向遠隔システムを接続したまま音声のみ切断したので、キャンパス 間(立場間)で話し合う声は聞こえなくなり、互いの策が全くわからない状況となる。 問4 それぞれの対策についてあなたの立場で意見要望をまとめてください。 問4では、問3で報告された他の立場が考えた対策案に対し、自分の立場で意見・要望をまとめ全 体に伝える。これにより、複数の対策案の異同等が整理され、互いの評価・反論の場ともなる。 以下、牧場チーム内での話し合い・全チームによる発表(問3) 、 他チームに対しての意見・要望(問 4)の各場面の授業記録を示す。 3-1 牧場チーム内の協働場面の記録(問3前半)-双方向遠隔システムの音声を遮断して 実践では、各担当を“〇〇チーム”とよんで複数で取り組む姿 勢を促した。被害の具体については、いくつか詳細に示したうえ で、各立場が対策案を練っている間中、 まとめとしてPPシート(図 2)を提示しておいた。 牧場チームは、受講者2名(A,B)およびTAのC、授業者 Tである。. 対策会議 牧場の被害への対策を! ①河川の汚濁 飲み水や牧場用水の不足 川が詰まり自家発電の装置故障→電気止 ②激しい騒音による人間・家畜の被害 牛の乳量の減少→牛の売値が下がる 牛の早産・流産・死亡 牧場の人々の心身の不調. C:牧場の被害に対して。 「引っ越す」というのは、無しか? T:お、「引っ越す」ね。それを考えたい?. 図2 PPシート 被害の実態概要. C:でも、結局この人たちは引っ越しちゃったんですよね。 (* ボードに記載はじめる) T:ご両親は引っ越した。 (*残された人は)牧場で売上をあげないとだめだ。 ?:たしかに。「別の土地に移って」 、というのは1つあるよね。 B:近隣でも国有地に隣接していないところに。えー、どうしたらいいんだろう。自衛隊が撤退する 28.

(6) 課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み. というのはありえないからなぁ。 T:自衛隊の大砲の音をなんとかしたい。 「ダーンッ」というのをなんとかしたい。でも、生活して いかないとならないでしょう?どうする? A:牛たちの体調が悪い。 T:人の体調も。暮らしていけない。どうする? A:「やめて」(*激しい騒音がでる演習を 前田注)って言いたい。 T:「やめて」って言うのはだいじだよね。 B:家畜じゃなくて「畑に切り替える」じゃないですけど。そしたら「河川の汚濁」が問題になると 思ったり。 T:いまのBさんのも書いておくか。 (*TA(Cさん)にホワイトボードに記載を促す) B:いや、野菜とか畑に切り替え、っていうのも考えたけど。それだと河川の汚濁が問題に。 C:「他のところから水をひっぱってくる」っていうのは?わかんないけど、 B:そうか…。 A:引っ越してね、 「別の土地で牧場をまたやる」っていうのは。 ABC:その手はあるよね、 B:それ、ちょっと思ってた。え~、どうしたらいいんだろう。自衛隊が動いてくれなさそう、とい うイメージしかないからさ。自衛隊チームが何を考えているか、すごい気になる。 A:尋常じゃないくらいの「防音設備」を。 B:それも思った。 A:でも、めっちゃ、お金かかりそう。 T:牛に聞こえないような。 A:もう、すごい、ガードして(*囲う身振り) T:なるほどね、それ、お金、誰出すの? A:役所。(笑) T:「役所に出させる」 。 B:「自衛隊と役所に出させる」 、みたいな。やばいやばい。 T:役所と自衛隊にださせる。だって、私、悪くないし。 B:かなり横暴だけど、でも、道理はたっています。 T:そうだ。あたしのせいじゃない、し。 A:それが無理なら、 「 (*激しい騒音がでる演習を 前田注)やめてください」 。 B:だって、乳量の低下とかデータとしてつきつけているわけだから。 A:「防音」やってくれないし、 「やめて」もくれないなら、 「生活費をください」 。 B:うんうん。それこそ、 「引っ越すお金もくれよ」 。と。 C:牧場諦めて、 「生活費」って、大丈夫? A:うんそうだね、だって牛、元気ないし。 T:商売あがったりだから。 B:「防音」するか、 「止める」か、どっちもやってくれないなら、 「生活費をください」 。 T:生活費をもらうだけでいいの? あとは悠々自適な生活? B&A:なんか、 「新しい職の…」 、 A:あー、あー、あー、… 29.

(7) 前 田 輪 音. B:「あっせん」だ。 B:でも、現実的じゃないんだよなーっ、と、思って。 A:「他の仕事を紹介してくれる」 。 B:う~ん。お金の話になっちゃうけど。どちらにしても「慰謝料」はほしいな、と。 ?:うん、健康被害あるし、ご両親引っ越しで二重生活だし。 A:たしかにね。 B:やばいやばいやばい。 T:なるほどね、でもさ、冒頭でみせた野崎牧場ののどかな様子、そういうのが野崎牧場の普通の生 活だったのか、それ全部営めなくなって、生活費もらえればそれでいいの? B:そこなんですよね、それで解決してはいけないな、っていうのがやっぱりあって。 A:一番いいのは「やめて」もらうのが。 B:そうそう、そうだよね。ここ(国有地)はもうぜったい、こういうことするから、ここの周りに 越してくるならそういうリスクわかってこいよ、というか、そういう「立て札」とか。 T:なるほど、ちょっと歴史みてみる? (*以下略 事前に解説した牧場と演習場の歴史(開設時期や演習の度合いなど)について再度考え させる。なお、自衛隊・役所のチーム内議論の内容については、全体発表内容に代える。 ) 分析: 話し合いを始めた当初は、問題の困難さゆえか、とまどう姿もみられたが、授業者がファシ リテートし話し合いを補助した。出された順に対策案を列挙すると、 「引っ越す」 (C) 、自衛隊撤退 はありえない(B) 、演習中止(A)、畑に切り替える(でも河川の汚濁が問題)(B) 、他のところか ら水をひく(C) 、牧場移転(A←全員賛成) 、自衛隊移動・撤退はなさそう(B) 、防音設備設置(A)、 防音設備の資金は役所から(A)・自衛隊も(B) 、それがだめなら演習中止(A) 、防音設備設置も演 習中止もダメなら生活費支給(A) 、 仕事あっせん(A・B) 、 でも現実的でない(B) 、 職の斡旋(紹介) (A)、慰謝料(B) 、解決はしていない(B) 、演習中止(A) 、となる。 他者の出す対策案に対して「そう思った」等、互いの意見を肯定的に受けとめ、補足し合う場面が 多々みられた。途中、 「自衛隊撤退」 (演習地閉鎖)が可能性として無いというBさんからの指摘が2 回みられた。一方、対策案の3つ目にAさんから演習中止案がだされる。その後、防音設備設置や補 償、ひいては職の斡旋等について話し合ううちに、それが根本的な解決にはならないことに気づき、 牧場経営(生活)を続けるために自衛隊の演習中止の要請に立ち戻っている。 3-2 全チームの被害対策案の発表(問3後半)-双方向遠隔システムの音声を接続して 各立場で考えた対策案はホワイトボードにまとめ、それを提示(双方向遠隔システムの画像で映し 出し)しながら発表された。 以下、実際の記載内容を文字の配置ともに筆者が電子データとして再現したものの記載内容ととも に発表順に示す。 <役所チーム(院生1名 G 担当教員1名 J)の対策案> G: (*院生1名なので)J先生と考えました。(*図3) 具体的な対策としては、自衛隊や農場の双方の話をきいて、そ の仲介の立場になることが役所に求められると思います。そのう えで、演習の事前把握をして牧場に説明をするだとか、自衛隊に. 問3 あなたの立場. (役所). 仲介 (双方の話を聞く) 演習の日時の事前把握 舗装費用の負担の提案・説明 ・(国に対して). このようなことを気をつけるように、とかいうのを説明するだと か、自衛隊の演習によって牧場が傷ついたり被害をこうむってい 30. 図3 役所チームの対策案.

(8) 課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み. るのなら、その補償の費用などを自衛隊に、国に対して提案だったり説明だったりを役所が担うべき かな、と思いました。以上です。 <自衛隊チーム(院生4名 D,E,F,G 担当教員1名)の対策案> D: 自衛隊でも様々な立場があると思うのですが、一般の隊員だったり、上の立場だったりという ことがあると思うのですが、ぼくたちは、上の立場でみて考えたんですけども。 (*図4) まず周りの人たちと仲良くする。いまでも、 (*近隣の地域名 -略)のところにも自衛隊があるので、よく行われているのが、 催しもの・お祭り・盆踊りなども行われているのですが。そう いったなかで地域との親交を深めるというのが必要かな、と思い. 自衛隊 約束は守る • 仲良くする ・催し物・お祭り ・演習の時間を知らせる. ます。 それから、 「演習の時間を事前に知らせる」ことも大事かな、 と。. • 川への対策 ・ネットつける ・道路の整備 (敷地) ・移動資金渡す ・手当. 図4 自衛隊チームの対策案. 今回の事例に思い当たるものがあるので、あまり詳しく言えない のですけれども。 「演習の時間を事前に知らせ」て、地域住民の人たちにきちんと理解をはかるとい うのもまず必要かな、と。思います。 それから先ほど、川の苦情が出ていたので、川への対策ということで、ゴミをつまらせぬためにネッ トみたいなものをつけたらどうだ、ですとか、訓練の一環として敷地内の整備をはかるのも一つの手 かな、ということもあがっていました。 それから、あと二つは、若干、言いにくいことなんですけども。移動資金を渡して移動してもらう、 がまんできないのであればどこかに行ってください、というようなことがあったりだとか。あとは、 「手当て」としていくらか包んでこっそり渡す、というようなことも考えられるかな、と思います。 二つ(*「移動資金を渡す」 「手当」を指す 前田注)はどうなのかな、 ということもあるんですが。 以上、自衛隊として考えられる意見でした。 <牧場チーム(院生3名 担当教員1名)の対策案> A: まず、牧場を「つづける」のか、 「あきらめ」て別の、という二つ視点で考えました。 (*図5) 一番良いのは、最初に「幸せとは」というのにもありましたが、今までの生活を豊かにのどかに続 けられることだと思うので、そのために自衛隊の騒音のことを考 えて、「やめて」もらうことが、新聞の記事ではないですが、い ちばんいいよね、ということになりました。 その他には、尋常じゃない防音設備をつけるとか、なんとかし て騒音だったりということを回避して牧場を続けられたらいい な、ということです。. 牧場の被害対策を考えよう 牧場あきらめ ・引っ越す. どちらにせよ… ・慰謝料ください. ・家畜ではない ものに切りかえ. ・そもそも(これか らのためにも)軍 隊の演習をすると 言う立札などなど ……. ・生活費もらえ れば…. つづける ・「やめて」 ・防音設備 →役所、自衛 隊の人…… お金ください. 図5 牧場チームの対策案. その他に、牧場をあきらめて「引っ越す」だったり、家畜じゃ なく畑だったり、別のことに切り替えるとか、他の仕事になるものをあっせんしてもらう、というこ とだったり、最悪、牧場をやれないかわりに生活費をくれ、ということも出てきました。 真ん中(*ホワイトボード)に「どちらにせよ」ということがありますが、やっぱり、あの、いま、 役所側からも自衛隊側からもでていたんですが、費用の面がやっぱり必要かな、ということです。 あとは、先ほど、自衛隊の方から「理解を得る」ということもありましたが、 「軍隊の練習をする」 よ、というようなことを、 もともと知っていたのかということもあるのですが、 「立て札」があるとか、 理解できるようなことをしてもらったらよかったかな、となりました。 で、そこから、そもそもなんで自衛隊がこういうふうになったのか・牧場がこういう状況になった 31.

(9) 前 田 輪 音. のか、ということを歴史の変遷を追っていったのですが、もやもやしたところで終わりました。以上 です。 分析: 役所チームの対策案は、自衛隊演習の事前把握と牧場への連絡、演習の注意点を自衛隊に通 知、牧場の被害・損害の補償(金)を自衛隊・国に「提案」する、というものである。 自衛隊チームは、まず、自分の立場として自衛隊員のなかでも幹部クラスの自衛官を想定してい る。これは、演習場で牧場の人々と直接対峙する立場ではなく、具体策を考え実行可能な立場といえ る。対策案として、行事等で親交を深めること、演習時間の事前連絡、 「訓練の一環として」の川の 整備があげられた。さらに、 言いにくそうに手当や移動資金の支出等述べながら、 疑問も感じている。 牧場チームの対策案は前述(3-1)の通りであるが、費用(の補償)について述べる際に、前の2 チーム(役所・自衛隊)も同様の対策案を述べていることにふれつつ発表されていた。 役所と自衛隊チームの対策案には、演習時間の調整や演習の縮小・中止は含まれていない。一方で 牧場チームの対策案には演習中止が含まれており、顕著な違いである。 3-3 他のチームの対策案についての意見・要望(問4)-双方向遠隔システムの音声を接続して 役所チームは参加者がTA 1名のみなので、ここでは発表せずに両者の評価等を聞く側に回った。 <自衛隊チームから牧場チームの対策案に対し> F: 牧場の方の話しを聞いて、かなり一致している部分が多いな、というのが自衛隊チームの見解 です。 「慰謝料とか生活費を渡してもらえるのであれば」という話もあがっていたので、こちらとしても それで良いのであれば「渡します」という見解になるのかな、とも思いますし。 あとは、「軍隊の練習をする時間を知らせてほしい」という意見があったので、こちらとしても、 「知らせます」というようなことになるのかな、と思いました。以上です。 <牧場チームから自衛隊チームの対策案に対し> B: 先ほどの話し合いの前の段階で、前田先生のスライド(* 図6 解説③で提示 前田注)から、どれだけ牛の乳量とか受胎 率とか乳量とか低下したかを出して自衛隊にもっていったのか な、ということが推測される状態で…。本当にごめんなさい、自 衛隊チームさん、自衛隊側が提示してくださった「仲良くなる」 というのは…、ちょっときついのかな、 と個人的には思いました。. ②激しい騒音 の影響 その1 家畜の被害 ・牛の乳量の減少 (最大93%減) 牛の売値が下がる ・牛の早産・流産 ・騒音で暴走し 柵にぶつかって 死亡した牛も. 図6 PPシート(解説③用). 5. 今のこの時代だったらありかな、と思うのですけれど、当時のこ のデータが出ている状態で、それは…、と思いました。 分析: 自衛隊チームからは、牧場チームの対策案に対して事前連絡・補償金の支払いへの要望は両 者から出されているものであり、類似する対策案として受け止め・受け入れられている。しかしなが ら、牧場チームからの演習中止の要望については全くふれられておらず、それが意図的なのか、忘れ られたゆえなのかは、想像するしかない。 牧場チームからは、自衛隊チームの対策案について、授業で前もって解説された被害の大きさを引 き合いに出し、「本当にごめんなさい」と気遣いながらも、 「仲良くなる」というのは「きつい」と指 摘している。演習中止案についての自衛隊チームによる言及がなかったことも相まってなのか、自衛 隊チームの対策が牧場の本質的な被害対策にならないことへの抗議ともよめる。 3-4 感想(問7・本日の振り返り)ワークシートより 本日の振り返り 今日のワークショップでは、 それぞれの立場を体験しながら考えてもらいました。 32.

(10) 課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み. 全体の感想等を書いてください。 「本日のワークショップの意義」として、アクティブラーニング、熟議民主主義と法教育の体験、 集団づくりを列挙したPPシートを示した。 問7および全体の振り返りの記述内容を表1にした。 表1 問7・「振り返り」記述 問7. 振り返り. 備考. ワークショップが本講義においてどのような意義を果た 様々な立場についての考え方を知ることができて勉強に A なりました。事件の事実のみを知らされるよりも、「法」 の難しさを実感できました。. すのか、しっかりと理解していないままワークショップ にのぞんでしまい、ただ社会の授業をうけているだけに 牧場チーム なってしまったことが自分の反省点です。しかし最後に 問3発表役 意義を理解し、細部まで意図的に構成された実験授業と はこういうものなのだと実感することができました。. 自分の憲法に対する認識がまだまだ甘いと感じた。社会 B. 科の中でも公民、司法についての知識が特に無いので、 今回の講義はとても勉強になった。. C. みんながしあわせ(何をしあわせととるのかによるが). 自分事として学習内容を考えるための手立てはどうすべ きか」を改めて考えるきっかけとなった。本日の授業で 牧場チーム 先生が行われていた手法を取入れて、自身の実践を改良 問4発表役 したい。 それぞれの立場で考えたり、その考えをすりあわせたり することで新たな考えが生まれることがわかった。. 牧場チーム. 恵庭事件について初めて考えた。国を守るために自衛隊 は必要で訓練も欠くことはできない。しかし、それが近 起きたことだけ見て判断すると自衛隊が悪い。でも、政 隣住民の理解を得ないまま行われ、取り交わした約束も D. 治の側面(ブラックな面)が入ってくると、違憲につい 果たされないとなるとトラブルになるのは明白である。 て判決を下されないというのはずるいなと思った。三権 通信線を切った野崎さんももちろん悪い。でも、演習時. 自衛隊チーム. 間を告示しなかった自衛隊も悪い。また、憲法違反かど. 分立なんてうそっぱちだなと。. うかもうやむやになったことも後味が悪い。今回の授業 において様々な要素で考えがゆさぶられた。 憲法と自衛隊の問題はいつの時代でも、そしてこれから E. の時代も続くのだと思いました。かけつけ警護が議論さ れている中で、より一層この問題を社会科の教育を行う 者として考えていかなければならないと思いました。. 長沼ナイキ基地訴訟と恵庭事件は北海道で発生した自衛 隊がらみの2大訴訟と言えると思います。社会科の教師 自衛隊チーム として子どもにこれらの問題を考えさせるには、まずは 問3・4発表 自分がしっかりと教材研究を行う必要性があると改めて 役 感じさせられました。 法律について学ぶ目的でも、いろいろなきり口があるの. もみ消したような感じがあり、もやっとしました。(自衛 だと思いました。また、事件の当事者として物事を考え F. 隊が合憲か違憲かを明らかにすることをさけていること) ることで理解が深まると感じました。恵庭事件は、高校 自衛隊チーム 野崎さんが十分な補償がなされていないのは不満です。. のときに暗記した内容だったかと思いますが、すっかり 忘れていました。. (参加者7名のうち役所チームのGさんはTAのためかシート中の問7と振り返りの記載は無い). 分析:裁判・判決・その後の諸事実を知った感想(問7) ここでは、問3・4での立場を超えて、感想が述べられている。 事実と比して法の難しさ(A) 、憲法・司法の知識の必要性(B) 、国家権力(自衛隊)をめぐりゆ らぐ三権分立の現状(D)、憲法と自衛隊との矛盾をはらむ関係(E)等の気づきと、自衛隊の合・違 憲判断がなされなかったことと牧場の補償がされていないことへの不満(F)が読み取れる。 Fさんの「もやっ」という表現に代表されるように、自衛隊チームのD,E,F3名がみな、事実 を知ったうえで、それに納得しておらず悩んだ形跡が見て取れる。これらは、問3・問4で見せた姿 33.

(11) 前 田 輪 音. 勢とは大きな隔たりが感じられる。 「みんながしあわせ」 (C)は目指すべき目標ということであろうか。 分析:振り返り―ワークショップから得られたこと等 ワークショップの意義(A) 、自分事としてとらえるための手立ての重要性(B)や、複数の立場で の協議が新たな考えを生むこと(C) 、恵庭事件の諸事実に考えが揺さぶられたこと(D) 、等の気づ きや、教材研究の必要性の自覚(E)、法律を学ぶに際しての多様な切り口・当事者として考えるこ とによる理解の深まり(F) 、等が読み取れる。 (A)~(C) 、 (F)は主に方法の、(D) 、 (E)は主に内容の重要性について言及されている。本 実践は教師教育の一環として行われた関係から、自身の教材づくりにおける視点につなげた言及が多 い。. 4 成果と課題 今回の実践からみえてきた主権者意識形成の成果と課題を以下にあげる。あわせて今回使用した双 方向遠隔システムの利点と課題を述べる。 4-1 成 果 経験のない事柄や過去の時代を想像するのは容易なことではないが、授業者により解説された諸事 実と自身の既存の知識等をもとにしながら、複数の立場に分かれ協働して牧場被害の対策案を考える 姿や(問3)、複数の対策案を比較・検討する姿勢(問4)が得られた。 共通する対策案はいくつかあったが、牧場チームから出された演習中止という対策案は他の2チー ムからは出されず、立場による違いが如実に表れた。牧場チームは慎重に言葉を選びながらも、自衛 隊チームの民間との親交による対策案を拒否した。被害への本質的な対策にはなっていないからであ る。 判決やその後の状況・変化が解説された後に、全体を振り返る場(問7・振り返り)では、当時の 「違憲について判決を下されないという 被害者や支援者自身が感じたこと10と共通するような感想( のはずるいなと思った。 」 、 「憲法違反かどうかもうやむやになったことも後味が悪い。 」等)がみられ た。また、多様な立場で考えたり、関連する諸事実を知ったことにより、「様々な要素で考えがゆさ ぶられた」等、社会でおきる問題の解決が決して一様ではないことの気づきもみられた。これらが、 自衛隊チームの一員として対策案を考えた大学院生の感想として出されたことも指摘したい。 協働で取り組むことで「それぞれの立場で考えたり、その考えをすりあわせたりすることで新たな 考えが生まれることがわかった。 」との感想もみられた。 以上のことから、 他者と交流しながら対策案を練り、 他の立場の対策案との共通性を見出したり(自 衛隊チーム) 、他者の提案に異論をとなえたり(牧場チーム)しながら、一国家組織である自衛隊に よる演習被害という社会問題に対し、多様な立場で「他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力 や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる力」 (文科省[2017] )につ ながる可能性は現われたといえよう。 ここで、双方向遠隔システムを使用したことによる唯一の利点をあげておく。それは、一般に、一 つの教室内ではグループに分かれても他のグループの声は漏れ聞こえてくるものだが、双方向遠隔シ ステム下でマイクの音声を切れば、話し合いの内容が相手側にもれることがなかったことだ11。その ため、図らずも、相手の対策案を想像しながらも、密室での会議にも似た状況下におくことになった。 34.

(12) 課題を協働で解決する授業実践による主権者意識形成の試み. 4-2 課 題 他の立場に対する意見表明の機会(問4)は1度きりであり、牧場チームが示した自衛隊チームの 親睦対策案の否定について、自衛隊チームの感想等を確認することはできなかった。たとえば、問4 を二巡させることで確認することは可能ではあるが、問7や振り返りでそれが間接的に現わされたと も解される。また、今回の課題は時間や回数によって解決するものでもないことをも付言しておきた い。 次に、双方向遠隔システムを使用したことによる課題を3点述べる。まず第1に、本来は、複数の 立場に分かれて議論する場合は、自分自身が立場を選択できるのが理想だが、このシステム下では難 しい。1キャンパスに3つの立場それぞれを希望する人を複数確保できる保障はないためである。 第2に、双方向遠隔システムを介すると表情や感情はつぶさには伝わりにくいので、相手の意見に マイナスの評価を示す場合(問4)には特に、慎重な言葉選びや物理的姿勢で配慮せざるを得ない。 それが手間でもあるが、社会における課題解決や交渉の場面ではそのような力も必要であると考える と、あながち課題と捉えるだけではなく、利点としても捉えられ得るかもしれない。 第3に、双方向遠隔システムの画面越しに複数の意見が次々に発信される場合、それらにコメント するためには逐一丁寧にメモをとらなければならない。 複数の意見をたとえば静止画などで記録して、 コメントを考える時間に交互に流すなどの工夫が求められる。 今後、実施方法等も含め、更なる改訂が望まれる。 最後に次のことを述べておきたい。政治的に議論の分かれる問題を扱った本実践は、ワークショッ プ形式にしながらいくつかの改訂を経て、教師および教師になろうとしている人を対象に複数回実施 されてきているが、なかには何らかの理由でこの課題に難色を示した参加者もいた。しかし、主権者 を育成するにはまず、教師自らの意識形成が課題である。政治的な問題を率直に語り合える学校内外 の意識形成・環境づくりが大切である。 【付記】 本実践にあたり、本実践に懸命に取り組んだ大学院生諸氏、ならびに担当教員の皆様に記して感謝する。なお、 本稿は、日本社会科教育学会第67回全国研究大会(千葉大学)自由研究発表報告を元にしながら、本論文の趣旨に 基づき、大幅に加筆修正したものである。また、JSPS科研費JP16K04648の一部助成をうけている。. 【引用・参考文献】 新藤宗幸[2016] 、 『 「主権者教育」を問う』岩波ブックレット。 総務省・文部科学省[2015] 、 『私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために』。 生徒用 http://www.soumu.go.jp/main_content/000492205.pdf (2019年10月確認) 教師用指導資料 http://www.soumu.go.jp/main_content/000382033.pdf (2019年10月確認) 深瀬忠一・上田勝美・稲正樹・水島朝穂 編著[2008]、『平和憲法の確保と新生』北海道大学出版会。 堀尾輝久[2016] 「憲法と主権者教育」歴史教育者協議会『歴史地理教育』849号(5月号)、4-11頁。 前田輪音[2008] 、 「憲法教育実践報告―中学校における『恵庭事件』を素材にした授業プログラムとその実践」北 海学園大学『学園論集』136号、33-103頁。 前田輪音[2009] 、 「 『恵庭事件』の授業プログラム改訂および実践-日本国憲法の平和に生きる権利をどう教えるか」 北海道大学教育学部研究院教育方法学研究室『教授学の探究』26号、183-205頁。. 35.

(13) 前 田 輪 音. 前田輪音[2017]、「一八歳選挙権と主権者教育―教育行政・実践・学術界・報道を垣間見る」全国民主主義教育研 究会編『民主主義教育21』11号、5-13頁。 前田輪音[2019]、 「 『コンピテンシーベース』と教師-『主権者教育』・『公共』の今後を展望しつつ」北海道教育学 会『教育学研究の研究と実践』13号、10-12頁。 文部科学省[2017] 、 「 「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ~主権者として求められる力を育むため に~」http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1369157.htm(2019年10月確認) 山内祐平・森玲奈・安斎勇樹[2013] 、 『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』慶應義塾大学出版会。. 【註】 1 当初、 「アクティブラーニング」と呼ばれ、新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」とされている。 2 たとえば、長野県松本工業高校の有賀久雄教諭による実践では、松本市議会と連携し生徒が市の様々な課題を 議員と議論するなどの取り組みがなされている。筆者は有賀教諭への聞き取りや、2018年12月21日には市議会議員 が学校で生徒とともに市の課題を議論するという実践の場を見学させていただいた。中日新聞(2018年12月22日22 版(松本版) )にも掲載されている。 3 北海道内では複数の高校で地方(模擬)議会実践が行われている。筆者は2018年9月27日に北海道大樹高校の 門屋祐二教諭の実践による「高校生議会」を見学させていただいた。生徒が大樹町議会の高校生議員として市長等 に「質問」の形で町の様々な課題について示す場だったが、筆者は、そのときに生徒により提出された質問に含ま れる地域のある課題が、地域で閉じられたものではなく日本社会の構造的な問題を有するものがあることを述べ、 地域と全国的の課題の両者をつなげる可能性を指摘している。(前田[2019]10頁) 4 たとえば堀尾輝久は、政府主導の「主権者教育」について批判的検討をしながら、政治的教養として人権とは 何かを学ぶことの重要性を指摘している。 (堀尾[2016]) 5 総務省・文部科学省が2015年に作成した副教材の教師用指導書では、政策上議論の分かれるものの扱い(総務 省・文科省[2015]85頁)や、教育基本法に基づき党派教育をしないいわゆる「政治的中立性」などの注意点につ いて、記載されている。 6 政府主導の「主権者教育」の動向については、前田[2017]で、新藤[2016] ・堀尾[2016]なども引用して批 判的に検討しながら、学術界等における1年あまりにわたる動向の一部を示している。なお、主権者教育について の理論的な整理はすでにいくつか試みられているが、それについては稿を改める。 7 札幌・旭川・釧路の3キャンパスに分かれ双方向遠隔システムで接続し実践しているが、キャンパスによって は受講者がおらずTAとそのキャンパス担当者のみの出席のところがあったので、TAにも参加を願った。 8 本稿ではワークショップのことを、課題に対して明確な正解がないこと・複数で取り組むこととしてとらえて いる。たとえば山内ら(山内他[2013]12頁)は、その基本構造を「導入・活動1(知る活動)・活動2(創る活動) ・ まとめ」の4点を基本構造としている。 9 北海道教育大学教職大学院のカリキュラムは、一斉講義・実習・事例研究により構成されている。このうち一 斉講義は共通科目(1年次履修)と選択科目が用意されており、教職大学院が設置されている複数のキャンパスを つないだ双方向遠隔システムを用いて開講されている。キャンパスそれぞれに講義担当者がつき、全15回分を複数 の担当者で分担し、実施されている。2016年度までは3キャンパスに、2017年度からは4キャンパスで構成されて いる。なお、2021年度よりカリキュラムが大きく改変される予定である。 10 憲法判断がなされるという期待が世論のなかで高まっていたが、判決において判断が回避されたことを受け、 被告となった野崎牧場の兄弟が「できることなら裁判所を訴えたい」と述べ、弁護団は遺憾の意を表しているなど の反応があった。 (前田[2008]44頁) 11 マイクをオンにしておけば、全キャンパスの討論の声は互いに聞くことができる。しかしそれでは騒々しくな るので、各キャンパスでの討論の時間はマイクをオフにすることが多い。. 36.

(14)

参照

関連したドキュメント

(a) 主催者は、以下を行う、または試みるすべての個人を失格とし、その参加を禁じる権利を留保しま す。(i)

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

燃料取り出しを安全・着実に進めるための準備・作業に取り組んでいます。 【燃料取り出しに向けての主な作業】

問題解決を図るため荷役作業の遠隔操作システムを開発する。これは荷役ポンプと荷役 弁を遠隔で操作しバラストポンプ・喫水計・液面計・積付計算機などを連動させ通常

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

C :はい。榎本先生、てるちゃんって実践神学を教えていたんだけど、授

2 環境保全の見地からより遮音効果のあるアーチ形、もしくは高さのある遮音効果のある