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全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウイスコンシン州,ペンシルベニア州,アラバマ州の州科学カリキュラムの比較分析 -STS教育を中心として-

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(1)Title. 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウイスコンシン州,ペンシ ルベニア州,アラバマ州の州科学カリキュラムの比較分析 −STS教 育を中心として−. Author(s). 栢野, 彰秀. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 59(2): 43-55. Issue Date. 2009-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/961. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第59巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.59,No.2. 平成21年2月 February,2009. 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウィスコンシン州, ペンシルベニア州,アラバマ州の州科学カリキュラムの比較分析 −STS教育を中心として−. 相 野 彰 秀 北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践講座. ComparativeStudyofStateScienceCurriculumofWisconsin, Pennsylvania,AlabamaBeforeandAf[ertheNationalScience. EducationStandards(1996)Approval: FocuslngOnSTSEducation. KAYANO Akihide. AdvancedTeacherProfessionalDevelopmentPrograms,GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究は,『全米科学教育スタンダード(1996)』成立前後のアメリカウィスコンシン州,ペンシルベニア 州,アラバマ州の州科学カリキュラムに記載された目標や内容,方法に比較検討を加え,そこに記載された STSのねらいや取り扱いの面から全米科学教育スタンダード成立前後の州科学カリキュラムの特徴,及び 全米科学教育スタンダード成立が州科学カリキュラムに及ぼした影響について論及した文献研究である. その結果,全米科学教育スタンダード公表後作成された州科学カリキュラムの特徴について,次の諸点な どが明らかになった.第一に,ウィスコンシン州では,STSをカリキュラム編成上重視するという姿勢が 受けつがれている.第二に,ペンシルベニア州では,STS及び技術がカリキュラム編成上重視されている. 第三に,アラバマ州では,第6学年以降にSTS内容の観点が明記され,実践されている.. はじめに アメリカでは,1989年に開かれた教育サミット. まとめようとする動きが本格的に始まった1).こ れに基づいて科学教育の分野では,1996年1月に アメリカ初の全国基準『全米科学教育スタンダー. などを契機に,公教育を通じて子どもに身につけ. ド(NationalScienceEducationStandards;以. させたい内容や資質を,国家や州レベルで共通教. 下,NSESと略す)』が発刊された.NSESに示さ. 育目標(「スタンダード(Standards)」)として. れた“科学内容の基準(ScienceContentStan−. 43.

(3) 相 野 彰 秀. dards)’’の特徴は,従来の科学教育の内容に加. AcademicStandardsforScience(1998)7),,(以. えて,科学を社会的文脈で捉えるSTS教育が融合. 下,98年版と略す)をとりあげ,それらに記載さ. されている点である2).. れた目標や内容に比較検討を加えた.. 筆者は既に,NSES公表以前のアメリカ各州 科学カリキュラムの分析検討を通して,アメリカ 14州のSTS教育の特徴を明らかにしている3). また,NSES公表以降のアメリカ各州の科学カ リキュラムに分析検討を加え,アメリカ13州の. 1.98年版科学力リキュラムの目標. 同州98年版に記載された科学教育の目標は,次 の通りである. 「科学の学習は,ウィスコンシン州の児童や生. STS教育の特徴及び,NSESがアメリカ各州の. 徒に自然界の豊かさや自然界からの刺激を受け. 科学カリキュラムへ与えた影響についても明らか. る機会を与える.大人たちは,科学的思考力や. にしている4).しかし,筆者の前報はどちらも,. 科学的な論拠を要求される錯綜した問題に直面. アメリカ州科学カリキュラムの全体的傾向を明ら. しており,意思決定を行う能力が要求されてい. かにしたものであり,個々の州科学カリキュラム. る.科学的知識は児童・生徒の未来のために用. に詳細な検討は加えていない.加えて,筆者の管. 意され,有意義で生産的な仕事に就くために必. 見したところではNSES公表前後の科学カリ. 要な能力を獲得するのを支援する.科学が全て. キュラムそれぞれに比較検討を加え,NSESに. の児童・生徒のためにあることが,このスタン. よって科学カリキュラムがどのように変化してい. ダードから分かるだろう.これが科学的リテラ. るのか,この点について州科学カリキュラムレベ. シーの本質である8).」. ルで明らかにした報告は見あたらない. そこで本研究では,この点を解明するためにウ. 2.98年版,90年版の内容構成の比較検討. ィスコンシン,ペンシルベニア,アラバマの3州. 98年版には,科学カリキュラムの内容及び内容. をとりあげた.これら3州は,筆者の静稿におい. 構成において,NSESを参考にしていることが. て特徴的な科学カリキュラムが発行されていると. 分かる記述がある.第一は,カリキュラムの序文. 論じられているからである5).. において「NSESを参考にして,白州のカリキュ. 本稿では,これら3州のNSES公表以前後の. ラムを作成した9).」と記載されている箇所であ. 州科学カリキュラムの分析検討を通して,次の2. る.第二は,“物理科学’’,“地球・宇宙科学’’,“生. 点を明らかにすることを目的とした.. 命・環境科学’’の3カテゴリーのそれぞれの注に. 第一に,STSのねらいやカリキュラムでの. おいて「(これら3カテゴリーに記載された)内. STSの取り扱いの面から,NSES公表前後のカ. 容について,これ以上の詳細はNSESを参照の. リキュラムの特徴を明らかにする.. こと10). 第二に,NSESが州科学カリキュラムに及ぼ した影響について明らかにする.. .」と記載されている箇所である.. 表1には,98年版及び90年版の内容構成項目が 示されている11・12). 表1より98年版は,“科学的探究’’,“物理科学’’, Ⅰ.ウィスコンシン州の場合 ウィスコンシン州の科学カリキュラムの比較分. “地球・宇宙科学’’,“生命・環境科学’’,“科学の 本質’’,“科学の応用’’,“社会的・個人的見地から の科学’’,“科学の関連’’の8カテゴリーで構成さ. 析にあたっては,NSES公表前の州科学カリキュ. れていることが分かる.これら最新版を構成する. ラム“AGuidetoCurriculumPlanninginScien−. 8カテゴリーのうち“科学的探究’’,“物理科学’’,. ce(1990)6),,(以下,90年版と略す)及び,公表 後の州科学カリキュラム“WisconsinModel. 44. “地球・宇宙科学’’,“生命・環境科学’’の4カテ. ゴリーに記載された内容基準は,NSESの“科.

(4) 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウィスコンシン札 ペンシルベニア札 アラバマ州の州科学かノキュラムの比較分析. 表1 98年版,90年版の内容構成項目 98年版. ・科学的探究 ・物理科学 ・地球・宇宙科学 ・生命・環境科学 ・科学の本質 ・科学の応用 ・社会的・個人的見地 からの科学 ・科学の関連. 90年版. ・問題解決. 「科学一技術一社会」という用語こそ用いられて いないが,“科学の本質”,“科学の応用”,“社会的・. 個人的見地からの科学’’の3カテゴリーにおいて, STSが位置づけられている.すなわち,科学教. ・科学知識. ・科学の本質. 育の中で,科学の内容とSTSが同等に位置づけ られ,実施に移されている.90年版のように, STSへの時間配当は特に指示されていない.. 一方90年版では,STSを科学教育の構成要素 の一つとして,第1∼6学年段階では科学の標準. 学習時間に対して10%,第7,8学年段階では 学内容の基準’’中の科学の内容が記載された“探. 15%,第9∼12学年段階では20%,STSに時間. 究としての科学’’,“物理科学’’,“生命科学’’,“地. が配当されていた15).sTS内容は,“態度と信. 球・宇宙科学”の4カテゴリーとよく合敦してい. 念”,“社会的要求”,‘個人的要求”,“経済性”,“政. る.STSは,“科学の本質’’,“科学の応用’’,“社. 治性,,の4観点から設定されていた16).. 会的・個人的見地からの科学’’の3カテゴリーに. おいて取り扱われており,それらのカテゴリーの. (2)sTSの教育内容. 内容基準は,NSESのSTS的視点が記載されて. 98年版と90年版のK∼第8学年及び第9∼12学. いる“科学の歴史と本質’’,“科学と技術’’,‘個人. 年段階に記載されたSTSの教育内容を分類し,. 的・社会的見地からの科学’’の3カテゴリーとよ. その項目数を数え上げ,表2を作成した17・18). く合致している.98年版がNSESを参考にして. 表2より,98年版,90年版共に,幾つかの. 作成されたことが,98年版の内容構成からも改め. STS領域の学習を通じて,STS教育による科学. て認められる.. 教育が行われていることが分かる.. 一方,90年版では「科学を社会現象としての科. 表2より98年版では,“環境’’,“天然資源’’,“健. 学と受け止めた科学教育が必要である13).」と述. 康・医療”などの領域が全学年段階を通じて学習. べられ,STSを科学教育の中で取り扱うことが. されることが極めて少なく,K∼第8学年段階で. 明確にされたカリキュラムの概念図が設けられて. 9%(2項目/27項目中),第9∼12学年段階で. いた.表1に示された“問題解決’’,“科学知識’’,. は6%(1項目/18項目中)である.“科学・技. “科学の本質’’,“科学一技術一社会’’の4カテゴ. 術の発達’’,“意思決定・意思行動’’,“科学者の貢. リーで科学カリキュラムが構成されており,それ. 献と科学に関連した職業’’,“社会的・個人的見地. ぞれのカテゴリーについて,内容の観点が設定さ. から見た科学・技術’’,“情報収集’’,“生活面への. れていた.授業時間数も定められていた.これら. 適用・応用’’の6領域は,複数の領域にわたる. の点を総合すると,90年版は積極的にSTSをカ. STSイシューズを社会的・個人的見地から捉え,. リキュラムに反映させていた革新的なものであっ. 意思決定・意思行動能力を培う領域であり,これ. たといえよう.なお,90年版と98年版では各教科. らの領域は,K∼第8学年段階で78%(21項目/. における標準学習時間に変更はない14). 27項目中),第9∼12学年段階では89%(16項目 /18項目中)が占められており,小学校低学年段. 3.98年版,90年版におけるSTSの取り扱いと 教育内容 (1)sTSの取り扱い. 98年版には,90年版のようにカリキュラム中に. 階からこれらの領域に力点が置かれていることが 分かる. 加えて表2より90年版では,“エネルギー’’,“天 然資源’’,“環境’’,“健康・医療’’,“宇宙開発’’,“国. 45.

(5) 相 野 彰 秀 表2 98年版,90年版に記載されたSTSの教育内容とその項目数 98 年 版. 90 年 版. 環境. 0 ロ 環境. 9 4. 天然資源. ロ 0 天然資源. 0 2. 健康・医療. ロ 0 エネルギー. 6. 科学・技術の発達. 2 0 健康・医療. 7 4. 意思決定・意思行動. 4 8 宇宙開発. 0 4. 科学者の貢献と科学に関連した職業. 3 ロ 国防. 0 4. 社会的・個人的見地から見た科学・技術. 8 7 科学と非科学の区別. 14 3. 情報収集. 2 0 科学が発展した結果生活水準が向上している 19 0. 生活面への適用・応用. 2 0 科学・技術を政治的・経済的・社会的見地から見る 6 45. その他. 4 ロ 職業準備. 4 0. その他. 9 15. 防’’などの領域は,K∼第8学年段階で30%(22. 力の獲得に主眼をおいたSTS教育が行なわれて. 項目/74項目中),第9∼12学年段階で20%(19. いるのが特徴である.. 項目/97項目中)取りあげられてSTSが学習さ れていた.90年版では“科学と非科学の区別’’,“科 学が発展した結果生活水準が向上している’’,“科. 学・技術を政治的・経済的・社会的見地から見 る”などの領域で,複数の領域にわたってSTS イシューズを,政治的・経済的・社会的見地から 追究する活動が強調されていた.これらの活動領 域のうちでもK∼第8学年段階では“科学と非科. (4)98年版,90年版におけるSTS活動例の比 較検討. 表3には,98年版19),90年版20)におけるSTS の活動例を示した.. 表3や98年版,90年板に記載されたSTS活動 例の比較検討の結果,次の点が明らかになった.. 90年版では,カリキュラム中に具体的な活動例. 学の区別’’(14項目/74項目中),“科学が発展し. まで記載され,科学教育の中で行われるべき. た結果生活水準が向上している’’(19項目/74項. STSによる科学教育の目的や内容,方法が明示. 目中)の2領域が強調されていた.第9∼12学年. されていた.98年版では,NSESと同様に,「科. では強調される領域が“科学・技術を政治的・経. 学一技術一社会」という用語及び活動例の記載が. 済的・社会的見地から見る’’(45項目/97項目中). 削除され,STSによる科学教育の視点のみが記. に移されている.. 載されている.. これらのことからウィスコンシン州では,1980 年代後半からいち早く“環境’’,“大然資源’’など. の領域を1領域ごとに独立して学習させるだけで はなく,これらの領域を相互に関連づけながら,. Ⅱ.ペンシルペニア州の場合 ペンシルベニア州の科学カリキュラムの比較分. 科学・技術を政治的・経済的・社会的見地から追. 析にあたっては,NSES公表前の州科学カリキュ. 究する学習活動が強調されていたことが分かる.. ラム“PennsylvaniaDepartmentofEducation,. 最新版では,児童・生徒の意思決定・意思行動能. 46. l/l’=・り川仙〃・/=/ヾ−イ■〃−・■(−り川ノ・■/■〃り・(−りノト.

(6) 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウィスコンシン札 ペンシルベニア札 アラバマ州の州科学かノキュラムの比較分析. 表3 98年版,90年版におけるSTSの活動例 98年版第5∼8学年段階のSTS活動例 最近の科学的・技術的発見が,人々の仕事のどのように影響を与えているか説明する。さらにそれらが,どのよ うに新しい職業を作り出しているか説明する。 98年版第9∼12学年段階のSTS活動例 ・科学に関する政策決定は,社会的価値,倫理,信念,時間枠などのたくさんの要因が,どのように影響するか示す。. 90年版第7,8学年段階のSTS活動例 科学と技術は職業選択と職種に影響を与える。 1)ハイテク工業における職種を調査する。 2)過去50年間における農業に関しての職業に起こった変化を記述する。 3)新しい情報伝達の方法は仕事と職業に影響を与えた。 4)新しい技術によって消えていった10の職業,生まれてきた10の職業を列挙せよ。 90年版第9∼12学年段階のSTS活動例 国の政治力は,科学や技術の発展によって大きくなる。 1)国の緊急の要求には科学的なものの全力を挙げて行うべきか。 2)科学者や技術者の教育に国の基金を使うもっともな理由があるか。 3)国防のために政府は,市民にとって個人的な部分に監視装置のようなものを使用するのか。 4)世界の力の均衡は技術的裏付けによる軍事力によって維持されているのか。 政治は社会の科学と技術のコントロールのための機能なのか。 1)政治に特別の研究の限界設定をしたり,研究打ち切りをする権利があるか。 2)政治が研究に対して多額の資金援助している科学的な社会は政治に対して社会の他の部分より責任があるのか。 3)社会の経済成長の重要性をよく考え,政治の目的が科学的な工業にとって代わるべきものなのか。 政府は世界において,力と威信のための競争に科学や技術の発展を使用する。 1)アポロ計画において月に宇宙飛行士を最初に送る第一の目的は何か。 2)原子爆弾が第二次世界大戦を終結させるたったつの方法だったのか。 3)もしアメリカが核融合に最初に成功したとすると,期待される政治的な結果は何であるか。 4)政治が科学的技術的な秘密を自由に分配するべきか。 研究のための政府資金は政治的にコントロールされる傾向がある。 1)政治家より科学者が研究費の基準決定をするべきか。 2)科学者に学問的自由が与えられ,彼ら自身が持った問題を追究する権利があるか。 3)政府は,科学や技術の方向性を直接にコントロールするようなベストポジションを収ることが可能であり, 全てが政府によって運用されることをよく考える。 4)研究や開発の必要性は民主的な政治によって認められますか。. //ノ川〟川ノ■り/イノ/・J/・/■∫八/りJり1げハ〃JJ∫.1イJ・J川/J/. 「STS」の科学に関する7科目から選択させてい. 5coo/(1991)21).,,(以下,91年版と略す),. た.しかし,98年版では,科学の内容に技術の内. “PennsylvaniaDepartmentofEducation,ARe−. 容を加えた新しい教科「科学と技術(Science. 「り〃川ハ〃′/■′/ヾ■川JJ′ん//:l・ヾ−イ■〃−・■(−り川ノ・■/■〃り・(−りJJ−. andTechnology)」が,K∼第12学年に課せられ. f才乃〟∽か蕗∽∽即/〃α乃才α5c如0ね(1987)22).,,(以. ている.このように,ペンシルベニア州では教科. 下,87年版と略す)及び,公表後の州科学カリキュ. ラム“PennsylvaniaDepartmentofEducation,. 「科学」から,98年版カリキュラム基準編纂の際 に,教科「科学と技術」に改訂された.. /’/・りノり′∫■・/l=/・/■川/−・ヾ/J川・/J/ハ/ト/立rヾ−イ■〃−=川・/. rgcゐ〃0/0甜(1998)23)’’(以下,98年版と略す) をとりあげ,それらに記載された目標や内容に比 較検討を加えた.. 2.98年版における科学及び技術教育の位置づけ 98年版において述べられている科学及び技術教. 育の位置づけの概要は次の通りである24). 科学教育「科学の学習は,自然世界の事実や原. 1.98年版及び91年版,87年版科学力リキュラム 同州91年版及び87年版では,K∼第8学年段階. 理,理論,法則の理解のための探究である.探究 とは,科学的集団によって行われ,自然現象や自. において児童・生徒全員に教科「科学」が課せら. 然の出来事が説明され,予想される.そして仮説. れ,第9学年以上では「物理学」,「生物学」,「科. が設定され,それがテストや実験によって説明さ. 学」,「生命科学」,「物理科学」,「地球・宇宙科学」,. れ理論となり,科学的知識が獲得される.この説. 47.

(7) 相 野 彰 秀. 明は,新しい証拠が発見されてそれが修正される. 表4より98年版は,“生物科学’’,“化学’’,“物 “技術(Technology)”,“技. まで利用される.科学的知識とは,科学の本質や. 理学”,“地球科学”,. 科学のテーマの統合,知識,探究,プロセススキ. 術装置(TechnologicalDevices)’’,“探究’’,“シ. ル,問題解決,科学的思考の各成分を注意深く統. ステムアプローチ(SystemsApproaches)’’,“科. 合し,発展させることである.」. 学・技術と人類の努力(Science,Technology andHumanEndeavours)’’の9領域で構成され. 技術教育「技術とは,人類が問題を解決し,便 利になるようにするために,道具やもの,プロセ. ていることが分かる.. スやシステムを活用することである.私たちは技. 科学の内容基準は,“生物科学’’,“化学’’,“物. 術を利用して,私たちの環境を改良しようとして. 理学’’,“地球科学’’,“探究’’の5領域に記載され. いる.この改良は,生存に必要な物資あるいは,. ている.技術の内容基準は,“技術’’,“技術装置’’,. 知識や芸術または条件制御などの人類の願望の対. “システムアブローデ’,“探究’’の4領域に記載. 象と関連している.それらは,予期しない利便性. されている.これらの4領域には,CADなどの. やリスクをも伴っている.技術は広範な知識と活. 製図技術,マルチメディア,オートメーション技. 動なのである.効果的な技術教育は,知識と能力. 術,電子回路から環境システムに関する内容まで,. を結合した,児童・生徒の全体的な学習を準備し. 広範囲にわたる技術に関する内容基準が記載され. なければならない.内容や方法の知識と能力を効. ている.. 果的に児童・生徒の学習にかみ合わせて,科学の. 98年版を構成する9領域のうち,科学の内容基. 理解の進展と関連した技術の理解の進展との相互. 準が記載された“生物科学’’,“化学’’,“物理学’’,. 関連を計らなければならない.技術における知識. “地球科学’’,“探究’’の5領域は,NSESの科. と能力とは,①どのように解決法を計画して発展. 学の内容が記載された部分とよく合致している.. させるか,②適切な道具やものやプロセスを用い. STSは,“科学・技術と人類の努力’’及び“シス. ることによるシステム構築のための基準,③解決. テムアブローデ’領域で主に取り扱われており,. 法のテストと評価,④解決法の影響と実行のため. その記載内容は,NSESのSTS的視点が記載さ. の判断基準,⑤改良したシステムの評価,に関す. れているカテゴリーの内容によく合放している.. る5つの学習過程を含んでいる.」. このように,98年版カリキュラム基準の記述から. は,直接にNSESの影響は確認できなかったが, 技術の内容が記載された部分を除く内容構成にお. 3.98年版と91年版,87年版の内容構成の比較検討. いては,NSESとの類似点が明らかになった.. 表4には,98年版及び91年版,87年版の内容構. このように同州98年版は,科学の内容を取り扱う. 成項目を示した25 ̄27). 領域とSTSを取り扱う領域に 表4 98年版及び91年版(K∼第6学年),87年版(第7∼12学年)の内容構成 加え,技術の内容を取り扱う3 91年版,87年版. 98年版. 領 ・生物科学 ・化学 ・物理学 ・地球科学 ・探究 ・技術 ・技術装置 ・システムア. 内容 K∼第6学年の領域 第7学年以上の科目 ・科学の過程 科学 ・物理科学 ・地球・宇宙科学 ・態度. 技術. ・STS. 記載されている.. 91年版におけるK∼第6学年 段階では,科学が“科学の過程 (ProcessofScience)’’,“生物 科学’’,“物理科学’’,“地球・宇. 宙科学’’,“態度(Attitudes)’’. の5領域に分けられていた.科. STS. 48. ・物理学 ・生物学 ・化学 ・生命科学 ・物理科学 ・地球・宇宙科学. 領域が同等にカリキュラム中に. 学の内容を取り扱う“生物科.

(8) 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウィスコンシン札 ペンシルベニア札 アラバマ州の州科学かノキュラムの比較分析 学’’,“物理科学’’,“地球・宇宙科学’’領域におい. 表5 第7,9,12学年段階で達成すべき 観点別設定項目. ては,観察,分類,推論,予想,計測,情報伝達, 空間と時間の関連の利用,操作的定義,仮説化,. 学年. 実験,認知,データ解釈,モデルの設計という13 段階のプロセススキルが強調されていた.STSは 4. “態度’’領域で主に取り扱われ,①原因と結果の. 関連,②最近の諸問題を解決するのに科学を用い る,③科学者と普通の人間の感覚の違い,④天然. 資源の保護と賢い利用法,⑤科学と技術の長所と 欠点,という5つの観点で規定されていた.. 7. 87年版における第7∼12学年段階での自然科学 に関する科目は,「物理学」,「生物学」,「化学」,「生 命科学」,「物理科学」,「地球・宇宙科学」,「STS」. の7科目であり,同州ではSTSが独立した科目. 10. 4.98年版及び91年版,87年版におけるSTSの. (1)sTSの取り扱い. 類の要求に応え,生活の質の向上に寄与し. ているか分析する。 ③ 科学的・技術的解決法の影響とその結果 を評価する。 ① 科学,技術と社会の間の関連を総合評価 する。. として位置づけられていた.. 取り扱いと教育内容. 観点別設定項目 ① 人々は科学と技術を,選択的かつ創造的 に利用する。 ② 人類の工夫と技術的資源がどのように人 類の要求に応え,生活の質の向上に寄与し ているか確認する。 ③ 社会における科学的・技術的問題の多様 かつ可能な解決法を確認する。 ① 科学と技術が生活の質と人類の要求をど のように満たすか説明する。 ② 人類の工夫と技術的資源がどのように人 類の要求に応え,生活の質の向上に寄与し ているか確認する。 ③ 現出している問題への技術的・科学的解 決法の応用と社会への影響を説明する。 ① 社会における科学的事業と技術的事業の 関連を分析する。 ② 人類の工夫と技術的資源がどのように人. 12. ② 社会的要求や生活の質向上のために,巧. 妙な技術的資源を応用する。 ③ 科学的・技術的解決法を評価する。. 98年版は,“科学・技術と人類の努力’’領域に,. 第7,9,12学年段階で達成すべきSTS内容の. プロセススキルに基づいた内容と関連づけられて. 観点が設定されている.表5には,第7,9,12. おり,他の自然科学6科目と同様にそれらの習得. 学年段階で達成すべき観点設定項目が示されてい. が意図されていた.. る28). 表5より,91年版においてK∼第6学年段階で は,“態度’’領域でSTSが主に取り扱われ,①原. 因と結果の関連,②最近の諸問題を解決するのに 科学を用いる,③科学者と普通の人間の感覚の違. (2)sTSの教育内容. 表6には,98年版及び91年版に記載された STS教育内容を示した29・30). 表6より,98年版,91年版とももに,K∼第6. い,④天然資源の保護と賢い利用法,⑤科学と技. 学年では,STSの対象となる幾つかの領域を通. 術の長所と欠点,という5つの観点が設定され,. じて科学教育おいてSTS教育が行われているこ. STSが行なわれていた.. とが分かる.. 87年版において第7∼12学年段階では,自然科 学に関する科目の中にSTSを独立した科目とし て位置づけられていた.独立した科目「STS」の. 98年版では,“環境’’,“資源’’など,個々の領. 域を単独に学習することが,K∼第7学年段階 (26%,10/39,39項目中10項目を占め,その割. ねらいは,学習者が知識を獲得し,能力を発展さ. 合が26%であることを示す,以卜略),第8∼12. せ,意思決定能力を発達させることであった.同. 学年段階(17%,7/41)と多くはなく,“社会的・. 州のSTSアプローチで目指されていた能力は,. 個人的見地から見た科学・技術’’(K∼第7学年. STS及びSTSイシューに関する基礎的能力,認. ;31%,12/39,第8∼12学年;34%,14/41),. 識能力,調査能力,行動能力であった.さらに,. “意思決定・意思行動’’(K∼第7学年;15%,. これらSTSに関する諸能力も前述した13段階の. 6/39,第8∼12学年;27%,11/41)領域など,. 49.

(9) 相 野 彰 秀 表6 98年版,91年版(K∼第6学年)に記載されたSTSの教育内容とその項目数 91年版(K∼第6学年). 98年版 学年 K. STSの教育内容. 7. 環境. 3 5 資源. 資源. 5 ロ エネルギー. エネルギー. ロ ロ 健康・医療. 健康・医療. ロ 0 職業準備. 科学・技術の発達. 5 2 科学が発展した結果生活水準が向上している. 意思決定・意思行動. 6 11 科学・技術を政治的・経済的・社会的見地から見る 3. 科学者の貢献と科学に関連した職業. 0 2 その他. 社会的・個人的見地から見た科学・技術. 12 14. 情報収集. 2. 3. 2. 2. 1 2. 生活面への適用・応用. 2 0. その他. 3 3. 複数の領域にわたるSTSイシューズを社会的・ 個人的見地から捉え,意思決定・意思行動能力を 培う領域の学習が低学年段階から強調されて行わ れていることが分かる.. 91年版では,K∼第6学年段階では,“健康・医. 「K∼第12学年科学教育プログラムは,全ての. アラバマ州の児童・生徒に科学的リテラシー (ScientificliteracyforallAlabamastudents) を啓培することを目的としている.科学的リテ ラシーを獲得した人とは,科学の過程と科学知. 療’’,“エネルギー’’など,個々の領域の項目が50%. 識を利用できる人のことである.そして,科学. (7/14)取り上げられてSTSが行なわれていた.. 的リテラシーを獲得することによって,人々は 科学の応用能力を増す.AlabamaCourseof. Ⅱ.アラバマ州の場合 アラバマ州の科学カリキュラムについては,. “AlabamaDepartmentofEducation,Alabama Co〟門g〆5f〟動5Cm(1988)31)’’(以下,88. Study:Scienceは,科学の過程(Scientific Processes),科学的知識(ScientificKnowlege), 科学の応用(ScientificApplications)の3カ テゴリーで構成されている. 科学の過程とは,思考力(thinkingskills),. 年版と略す),及び“AlabamaDepartmentof. 科学の方法(scientific−method),問題解決手. Education,AlabamaCourseqfStudy:Science. 順(problem−SOIvingprocedure),定量的推論. (1995)32),,(以下,95年版と略す)をとりあげ,. (quantitativereasoning),性質(habitsof. それらに記載された目標や内容に比較検討を加え. mind),手先の器用さ(manipulationskills),. た.. 情報伝達能力(communicationskills)である. 科学的知識は,地球・宇宙科学領域,物理科. 1.最新版科学教育プログラムのビジョン アラバマ州95年版K∼第12学年科学教育プログ ラムのビジョンをまとめると,次のように記述さ れている33).. 50. 学領域,生命科学領域から構成され,これらの. 3領域10ストランドの内容基準が,K∼第12学 年の各学年段階それぞれに記載されている. 科学の応用とは,児童・生徒が科学の知識と.

(10) 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウィスコンシン札 ペンシルベニア札 アラバマ州の州科学かノキュラムの比較分析. 基準が記載されている.第9学年以上は,上述し. 科学の過程を応用して永続的な学習を進め,自 らが直面している状況をよく知り,責任のある. た各領域・各コースの内容が“科学の過程”,“科. 行動をとることのできる能力である.この能力. 学知識’’. を獲得するため,科学・技術と社会の密接な相. れ,内容基準が記載されている.全学年段階を通. 互関連に焦点を当てた内容が記載されている.」. じ最新版の“科学知識’’ヵテゴリー. ,“科学の応用’’の3カテゴリーに分けら. に記載された. 内容は,NSESの科学の内容を記載した“探究 2.95年版,88年版の内容構成の比較検討. としての科学’’,“物理科学’’,“生命科学’’,“地球・. 表7には,95年版及び88年版における科学の. 宇宙科学’’の4カテゴリーの内容とよく合致して. 履修教科目名や95年版のカテゴリーが示されて. いる.STSは主に“科学の応用’’ヵテゴリーに. いる34・35). おいて取り扱われており,そのカテゴリーの内容 基準は,NSESのSTS的視点を記載した“科学. 表7より95年版では,K∼第8学年において, 教科「科学」を履修させ,第9学年以上で生命科. の歴史と本質’’,“科学と技術’’,‘個人的・社会的. 学領域の「生物学中心コース」に加え,物理科学. 見地からの科学”の3カテゴリーとよく合敦して. 領域の「物理科学コース」,「化学中心コース」,「物. いる.. 理学中心コース」の3コースから1コース,合計. このように95年版は,発刊こそ1995年であり,. 2コースを履修させるよう計画されていることが. NSES公表以後に出版されたものではない.だが,. 分かる.88年版は,K∼第6学年において,教科. NSES発行に当たって執筆された3種類の報告書. 「科学」,第7学年で「生命科学」,第8学年で「地. “NationalScienceEducationStandards:AnEn−. 球・宇宙科学」を履修させ,第9学年以上では,「物. hanced Sampler(1993)’’,“NationalScience. 理科学」,「基礎生物学」,「大学準備生物学」,「化. EducationStandards:July’93ProgressReport. 学」,「物理学」のうち,2科目を履修させていた. (1993)’’,“NationalScienceEducationStandards:. ことが分かる.. DiscussionSummary(1994)’’が参考文献として. 記載36)されており,NSESの内容構成が考慮さ. 95年版のK∼第8学年段階の教科「科学」は“科 ,“科学の応用”の3カテ. 学の過程”,“科学知識”. れて作成されていると考えられる.加えて,95年. ゴリーに分けられ,各カテゴリーそれぞれの内容. 版の記述中には「“BenchmarksforScienceLi− teracy(1993)’’(以下Benchmarksと略. 表7 95年版,88年版における科学の履修教科目名. す)及びNSESを参考にしが7).」との. 及び95年版のカテゴリー 95年版. カテゴリー. 88年版. 履修教科目名. 学年 履修教科目名 K. 科 学. 編集委員となっており38),Benchmarks 科 学. 88年版は,全学年段階にわたり年間単. 6 7. 科学知識. 科学の応用 生物学中心コース ・物群科学領域 物理科学中心コース 化学中心コース 物理学中心コース から2コース. からの影響がより強いと考えられる.. 4 5. 科学の過程. 2061のコーディネータ1名と,Project 2061に参加した教師1名がカリキュラム. 2 3. 記述があり,AAASからは,Project. 生命科学. 元配当表によって,カリキュラムにおけ. 8 地球・宇宙科学. る単元配置や単元中の小単元の構成が規. 9 物理科学. 定されていた.単元配置は,生命科学領. 基礎牛物学. 10 化学 11 から2科目 12. 域,地球科学領域,物理科学領域の3領 域に区分され,それぞれの領域について いくつかの単元が設定されていた.一方, 95年版K∼第8学年の“科学の過程’’,“科. 51.

(11) 相 野 彰 秀. 学の応用’’ヵテゴリーには,各学年段階で取り扱. していた.一方95年版では,“科学,技術と社会. うべき内容基準が示されている.“科学知識”ヵ. の密接な相互関連”という文章を用いて,第6学. テゴリーは地球・宇宙科学,物理科学,生命科学. 年以上の“科学の応用’’ヵテゴリーにSTS内容. の3領域に区分され,それぞれの領域における各. の観点を明記して,記載されている.K∼第5学. ストランドごとに内容基準が示されているが,各. 年段階も,カリキュラム中に“科学,技術と社会. ストランドごとに割り当てられる学習時間の記載. の密接な相互関連’’という文章こそ用いていない. はない.第9∼12学年における各科目各コースの. が,科学の応用カテゴリーにSTS活動例が記載. 各ストランドごとの内容基準は示されているが,. されている.最新版は,旧版のようにSTS活動. 各ストランドごとに割り当てられた学習時間の記. 例が科学あるいは科学に各科目のどの単元や小単. 載はない.だが,第1∼6学年段階を見る限り,. 元に位置づけられているかという点についての記. 95年版,88年版とも,各教科への配分学習時聞及. 述がなされていないが,これは,“科学と技術’’,‘個. び,「科学」への配分学習時間(第1∼3学年:. 人及び社会的観点からの科学’’,“科学の歴史と本. 毎日30分,第4∼6学年:毎日45分)の変更は行. 質”の3カテゴリーにSTS的視点が記載されて. われていない.. いる点でNSESと類似しているといえよう.. 3.95年版,88年版におけるSTSの取り扱いと. t2)sTSの教育内容 表8には,K∼第8学年及び第9∼12学年段階. 教育内容 (1)STSの取り扱い. の88年版と95年版に記載されたSTSの対象とな. 88年版では,初等・中等教育段階を通じて,従. る内容領域とその項目数が示されている39・40). 来の科学教育の単元内容に,一部STSに関する. 表8より,88年版,95年版共に,STSの対象. 記述を加えて,新しく単元構成が行なわれていた.. となる幾つかの領域の学習を通じてSTSアプ. STS内容は各単元に関連した特定の科学概念や. ローチによる科学教育が行われていることが分か. 授業内容と直接的な関係があり,かつ実験をも含. る.. んだ多様な学習方法を用いた授業を通して,. 表8より88年版では,“エネルギー”,“環境”,“宇. STS教育による科学教育の目的を達成しようと. 宙開発’’,“資源’’,“健康・医療’’,“生物利用’’,“科. 表8 95年版,88年版に記載されたSTS教育内容とその項目数 95 年 版. 88 年 版 学年 K l. l. 学年 K. STSの教育内容. 8. 8. 環境. 6 ロ 環境. 8 7. 資源. 3 0 資源. 4 0. エネルギー. 2 0 エネルギー. 12 2. 科学・技術の発達. 6 0 健康・医療. 0. 意思決定・意思行動. 9 4 宇宙開発. 5 0. 科学者の貢献と科学に関連した職業. 16 8 生物利用. 0. 社会的・個人的見地から見た科学・技術. 25 13 科学者の貢献と科学に関連した職業. 9 5. 生活面への適用・応用. 6 0 科学・技術を政治的・経済的・社会的見地から見る 0 2. その他. 3 0 その他. 52. 6.

(12) 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウィスコンシン札 ペンシルベニア札 アラバマ州の州科学かノキュラムの比較分析. 学者の貢献と科学に関係した職業’’,“科学・技術. 表9や95年版及び,88年版に記載されたSTS. を政治的・経済的・社会的見地から見る”,“その. 活動例の比較検討の結果,次の点が明らかになっ. 他’’の9領域が取り上げられていた.この9領域. た.. 88年版では,カリキュラム中に具体的な活動例. のうち,“エネルギー’’,“環境’’,“宇宙開発’’,“資 源’’,“健康・医療’’,“生物利用’’の5領域の項目. や教材,手順まで記載され,科学教育の中で行わ. をK∼第8学年段階で66%(29/44;44項目中29. れるべきSTS教育の目標や内容,方法が明示さ. 項目を示す,以下略),第9∼12学年段階で58%(11. れていた.最新版では,学年段階に幅を持たせた. /19)と積極的に取り上げてSTSが行なわれて. STS教育の視点と一部の活動例が記載されてい. いた.加えて,“科学者の貢献と科学に関係した. る.. 職業’’領域がK∼第12学年それぞれの学年で取り 扱われていた. 95年版では,“環境’’,“資源’’,“エネルギー’’,“科. おわりに. 学・技術の発達”,“意思決定・意思行動”,“科学. 全米科学教育スタンダード成立前後のウィスコ. 者の貢献と科学に関係した職業’’,“社会的・個人. ンシン州,ペンシルベニア州,アラバマ州の科学. 的見地から見た科学・技術’’,“生活面への適用・. カリキュラム基準の比較検討を行った結果,以下. 応用’’,“その他’’の9領域を取り上げられている.. の諸点が明らかになった. 第一に,ウィスコンシン州,ペンシルベニア州,. “環境’’,“資源’’ ,“エネルギー’’などの個々の領. 域を単独に学習することが,K∼第8学年段階 (15%;11/76),第9∼12学年段階(4%;1 /26)ともきわめて少なく,“社会的・個人的見. アラバマ州の新版カリキュラムに共通する目標 は,児童・生徒に科学的リテラシー とである.. 第二に,ウィスコンシン州は,90年版において. 地から見た科学・技術’’(K∼第8学年;25/76, 第9∼12学年;13/26),“意思決定・意思行動’’. (K∼第8学年;9/76,第9∼12学年;4/26). を啓培するこ. 既に科学の内容とSTSを同等に位置づけている NSESの特徴を先取りしており,先進的なカリ. 領域など,複数の領域にわたるSTSイシューズ. キュラムが作成されていた.加えて,1980年代後. を社会的・個人的見地から捉え,意思決定・意思. 半からいち早く,“エネルギー’’,“環境’’,“天然. 行動能力を培う領域の学習が低学年段階から強調. 資源’’などの個々の領域を取り扱うSTS教育だ. して行なわれている.. けではなく,政治的・経済的・社会的見地から統. 加えて,全学年段階にわたって,“科学者の貢 献と科学に関係した職業’’(K∼第8学年;16/76. :第9∼12学年;8/26)領域も取り扱われ,K. 合し,複数の領域にまたがったSTS教育が科学 教育の中で展開されていた.NSES公表後作成 された州カリキュラムにも,STSをカリキュラ. ∼第12学年の全段階を通して,多様な職業におけ. ム編成上重視するという姿勢は受け継がれてい. る科学の重要性を理解させようとしている.加え. る.. て第9∼12学年段階では,それまでに獲得した科. 第三に,ペンシルベニア州は既に,87年版,91. 学知識や科学の方法を他の分野に応用するスキル. 年版において第7学年以上にSTS独立した科目. も求められている.. として「STS」を設け,STSを実施するという 先進的なカリキュラムが作成されていた.NSES. 4.95年版,88年版におけるSTS活動例の比較. 公表後作成された州カリキュラム基準は,NSES. 検討. のように科学の内容とSTSを同等に位置づける. 表9には,95年版41),88年版42)における. だけではなく,技術の内容も同等に位置づけた新. STSの活動例が示されている.. 教科「科学と技術」が設られ,STS及び技術が. 53.

(13) 相 野 彰 秀 表9 88年版,95年版におけるSTSの活動例 88年版. 第4学年 地球科学領域 単元:気圏 小単元:飛行術 目標:飛行術と宇宙飛行の歴史を調査する 教材 大きな世界地図,リボン,. 罫線のないカード,マジック,長くて細長い紙. 手順 1.クラスの生徒を2人一組にする。各ペアに2枚の罫線のないカードを配る。 2.黒板に以下の人や出来事を書く。. たこ,JamesH.Doolittle,NASA,スプートニク,William“Billy”Mitchell将軍,火薬ロケット,AmeliaEarhart, コロンビア,Dr.RobertGoddard,CharlesA.Lindbergh,アポロ11号,Wright兄弟,OttoLilienthal,Ferdinand vonZeppelin,Montgolfier兄弟,Charles“Chuck”Yeager,SirGeorgeCayley,ScottCross丘eld,Jetpassengerser− vice. 3.この表の中から各グループが2つ項目を選ぶ。この2つの項目について調査し,そして罫線のないカードに以 下の要領で調査結果を記録する。 4.細長い紙に年表の年号を書き入れるよう生徒に指示する。年号は1500年から始めて10年ごとにマークを入れる。 1500年より前は古代ギリシャ時代とする。100年間を約2.5cmにするとよい。 5.自分たちの作ったカードを年表の対応する年代に正確に貼り付け年表を完成するように指示する。 6.この年表を使って,生徒に歴史的な発展を明確に表現させる。この時以下の質問をする。 a.飛行術と宇宙飛行についてそれぞれいつ,革命的なことが起こったか? b.飛行術と宇宙飛行について最も主要な貢献を行った国はどこか? C.これからの100年間で何が起こるか? d.次の100年間で可能な飛行術と宇宙飛行の発展は何だろうか? 95年版. 第3∼5学年 ・廃棄物は,廃棄物問題を引き起こす。廃棄物問題を引き起こさないような廃棄物の取り扱いかたに気がつく。 取り扱い方の例:廃棄物の再利用(Reuse),再計画(Redesign),リサイクル(Recycle) 第6∼8学年 ・科学研究の限界性を議論する。 第9∼12学年 ・個人や社会は,資源の保護や利用に関係する意思決定を行うときには,熟考して意思決定するべきである。なぜ ならば,この意思決定が後に協定となることを知る。 K∼第12学年 ・科学に関係したプロジェクトを通して,学校や地域に奉仕する。. プロジェクトの例:植林,ゴミ拾い,クラスや学校での紙などのリサイクル,大気汚染・水質汚濁の測定,環境 に関する新聞の発行,廃棄物処理方法の評価. カリキュラム編成上重視されている.. 第四に,アラバマ州88年版は,全学年段階を通 じて,従来の科学教育の単元内容に,一部STS. アラバマ州新版カリキュラムに記載されている STS内容は,“環境’’,“天然資源’’,“エネルギー’’, “健康・医療’’,“科学・技術の発達’’,“意思決定・. に関する記述を加えて,単元構成が行なわれてい. 意思行動’’,“科学者の貢献と科学に関連した職. た.STS内容は各単元に関連した特定の科学概. 業’’,“社会的・個人的見地から見た科学・技術’’,. 念や授業内容と直接関係していた.95年版の参考. “情報収集’’,“生活面への適用・応用’’,“その他’’. 文献には,NSESに関する種々の報告書が記載. の11領域に分類することができる.これら11領域. されており,本文中にも「Benchmarksを参考に. のうちでも,児童・生徒の意思決定・意思行動能. した」と記述されている.加えて,Project2061. 力の獲得に主眼をおいた“科学・技術の発達’’,“意. のコーディネーターとこれに参加した教師がカリ. 思決定・意思行動’’,“科学者の貢献と科学に関連. キュラム編成委員となっており,NSESよりも. した職業’’,“社会的・個人的見地から見た科学・. むしろ,Benchmarksからの影響が強いと考え. 技術’’,“情報収集’’,“生活面への適用・応用’’の. られる.科学と技術,社会の密接な相互関連が主. 6領域が小学校低学年段階から強調され,STS. 張され,第6学年以降の“科学の応用’’ヵテゴリー. アプローチによる科学教育が構想されている.. にSTS内容の観点が明記され,実践されている. 第五に,ウィスコンシン州,ペンシルベニア州,. 54.

(14) 全米科学教育スタンダード(1996)成立前後のウィスコンシン札 ペンシルベニア札 アラバマ州の州科学かノキュラムの比較分析 1998,pp.1−3.. 註及び引用・参考文献 1)石井英真:「アメリカにおけるスタンダード設定論の 検討」,『教育目標・評価学会紀要』,Vol.17.pp.46−56, 2007.. 2)NationalResearchCouncil,NdionalScienceEduca− fわ〃5ね〃血71お,1996. 3)相野彰秀:「アメリカ州科学力リキュラム基準にお けるSTS教育」,『日本理科教育学会研究紀要』, Vol.38,No.2,pp.163−171,1997. 4)相野彰秀:「アメリカの州科学力リキュラムに見ら れるSTS教育」,『北海道教育大学紀要』,Vol.59, No.1,pp.1−8,2008.. 5)前掲書,3). 6)WisconsinDepartmentofPublicInstruction,A G厄滋ん=bC附加川飯沼f肋朋壷g玩ぶ蕗粗略1990.. 7)WisconsinDepartmentofPublicInstruction,mS− CO〃ぶオ〃肋dゼJAc(7dg∽オc5由〃dαγ(おノわγ5cわ〃Cゼ,1998. 8)乃オdリp.55. 9)上oc.cオf. 10)乃オdリpp.63,67,70. 11)乃オdリp.ii.. 12)WisconsinDepartmentofPublicInstruction,qP.cit., 1990,pp.2−10. 13)乃オdリp.8.. 14)WisconsinDepartmentofPublicInstructionのSci− enceConsultantであるShelleyA.Lee氏からの2000年 5月4日付私信.. 15)WisconsinDepartmentofPublicInstruction,坤.cit.,. 25)PennsylvaniaDepartmentofEducation,OP.cit__ 1998.. 26)PennsylvaniaDepartmentofEducation,OP.cit., 1991.. 27)PennsylvaniaDepartmentofEducation,OP.cit., 1987.. 28)PennsylvaniaDepartmentofEducation,OP.cit., 1998,pp.23f.. 29)PennsylvaniaDepartmentofEducation,OP.cit., 1998.. 30)PennsylvaniaDepartmentofEducation,OP.cit., 1991.. 31)AlabamaDepartmentofEducation,AhlbamaCou7Te q′5f〟(わ′5Cm,1988. 32)AlabamaDepartmentofEducation,AhlbamaCou7Te q′5f〟(わ′ニ5cオゼ〃Cg,1995. 33)乃オdリpp.16.. 34)AlabamaDepartmentofEducation,qP.cit.,1995. 35)AlabamaDepartmentofEducation,qP.cit.,1988. 36)AlabamaDepartmentofEducation,OP.cit.,1995, p.152. 37)乃オdリp.Ⅴ. 38)乃オdリpp.Vii−ix.. 39)AlabamaDepartmentofEducation,qP.cit.,1988. 40)AlabamaDepartmentofEducation,qP.cit.,1995.. 41)ルオdリpp.19,26,32,43,53,62,73,84,95,111,122, 134,145.. 42)AlabamaDepartmentofEducation,qP.ciL.,1988,pp. 164−168.. 1990,p.28. 16)エoc.cオ才.. 17)WisconsinDepartmentofPublicInstruction,qP.cit.,. (大学院教育学研究科准教授). 1998.. 18)WisconsinDepartmentofPublicInstruCtion,坤.cit., 1990.. 19)WisconsinDepartmentofPublicInstruction,OP.cit., 1998,pp.73,76.. 20)WisconsinDepartmentofPublicInstruction,qP.cit., 1990,pp.139,178.. 21)PennsylvaniaDepartmentofEducation,ARecom− J〃√〃(ん・(JJ(、正〃(、l・(1「りノ小・/√〃(、.l・(1「りJ/′JJJJJJナナりわイノ/TJ(ん・∫〟 わ6ノわγ乃〃〃即J〃〟〃オα5coo血,1991.. 22)PennsylvaniaDepartmentofEducation,ARecom− J〃r〃(ん・(JJl・川JJ(山/二l・J(、存〃(、(・(1「りノ小・/r〃(、.l・(1「りJ/わJJJナナりわ・ fセ∽∽り′J〃α〃オα5cノわ0由,1987.. 23)PennsylvaniaDepartmentofEducation,Pr坤OSed _1r〟(J√〃J′(、J/(川(晶/−(Jり丁げバ(、汀〃(、=川(Jrl、(、/川「〃「′よl・. 1998.. 24)PennsylvaniaDepartmentofEducation,OP.cit.,. 55.

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参照

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