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アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主義傾向

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Academic year: 2021

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(1)Title. アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主義傾向. Author(s). 新谷, 千鶴子. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 12: 51-62. Issue Date. 2015-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7939. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主義傾向 新 谷 千鶴子*. RelationshipsamongAttachmentStyle. AnthropophobicTendencyandPerfectionisticTendency. 1−1.アタッチメントと内的ワーキングモデル. 1.はじめに. (lnternalWorkingModels:lWM) 近年,若い世代では.友人関係で自分の内面を. アタッチメントとは,個体が危機的状況に置か. 開示するような関わり方を回避し,表面的な楽し. れたとき,あるいは不安を感じる状況に置かれた. さの中で群れ,互いの内面に踏み込まないように. とき,特定の対象との近接を求めるという形で自. と気を遇う傾向があり,友人関係の「希薄化」が. 己の生存と安全を確保しようとすることセある.. 問題となっている(岡田,2002).また,大学生. このアタッチメント行動は,生物種が進化の過程. を中心として対人恐怖心性や表面的な付き合いは. で得た,遺伝子に組み込まれた本能的な行動傾向. 良好であるが人間関係が深まる場になると不安を. のことであり,人類の場合は情緒的結びつき及び. 生じるふれあい恐怖といった従来の対人関係とは. 対人関係における内的ワーキングモデル. (InternalWorkngModels:1WM)として生涯を. 異なる傾向が報告されている(伊藤・村瀬・金井, 2011).. 通じて機能する。(Bowlby,1951;Bowlby,1973). 内的ワーキングモデル(IWM)とは,個人が. このような対人関係に関する不適応の要因とし て,養育者とのアタッチメント(愛着)関係が示. 乳児期から繰り返し経験する親密な他者との相互. 唆されているのである(久保,2000;杉久保,2009).. 作用を通して,自己や他者の関係性についての心. 本研究は,子どもが発達過程で必然的に身につ. 的表象を形成するものである.自己についてのモ. けてしまう自己防衛行動が,養育者のアタッチメ. デルは関係に対する不安(1WMの過活性化と関. ントスタイルの違いによって影響を受け,成長す. 連),他者についてのモデルは関係からの回避. るにつれ思考パターンや人格形成に変化をもたら. (IWMの不活性化と関連)として概念化され(金. すとするアタッチメント理論(Bowlby,1951;. 政,2005),成人期に至るまで継続して対人関係. Bowlby,1973)を基に,対人恐怖傾向や完全主. のモデルとして機能し続ける.IWMは,あらゆ. 義傾向といった社会不適応に関連する要因が,ア. る対人情報処理に中心的な影響を及ぼしやすく,. タッチメント行動システム(アタッチメント対象. 新たな体験により更新されていくと考えられてい. 者に対する親密さを達成し,それを維持する目的. る.. で機能しているシステム)の歪みにあると仮定し,. 子どものアタッチメントスタイルは,Bowlby. 全主義傾向との関連を性格特性の観点から検討す. のアタッチメント理論の実証的検証として, Ainsworth.Blehar,Waters.&Wall(1978)が,. るものである.. 幼児をある一連のセッションからなる場面に置き,. アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向および完. その場面に対する子どもの反応を観察し分類する ことで愛着行動パターンを査定した,ストレン. ■chizukoSHINTANI:北海道教育大学大学院修了生 51.

(3) 学校臨床心理学研究 第12号(2014年梗). ジ・シチュエーション法(StrangeSituationPro−. として,他者との関係性から一定の距離を持った. cedure:SSP;Ainsworthetal.,1978)と呼ばれる. 自己のあり方を示すという違いがあるとされてい. 方法を通して見出したものである(加藤,1998).. る.(伊藤・村瀬・金井,2011).. 成人のアタッチメントスタイルは,成人アタッ. 自己愛と対人恐怖心性との関連が見出されてい. チメントインタビュー(AdultAttachmentInter−. る一方で,青年の対人恐怖心性に関連する安岡と. view:AAI;Main,Kaplan,&Cassidy,1985)として, して,友人関係や親子関係がかかわっていること Mainを中心としたBerkleyでの研究において開 も先行研究によって明らかにされている.渡連 発された.AAIは,SSPによって測定された子 (2011)は,成人アタッチメントスタイルに前日 どものアタッチメントスタイルが母親例のどのよ うな要因によるのかを検討する試みの中で開発さ. し,自己愛人格の過敏な特性を構成する各変数と 「自尊感情」との関連については,アタッチメン. れ,現在は,4類型(安定型,拒絶型,とらわれ. ト次元の影響が蝶介していることが明らかになっ. 型,恐れ型)へと確定しつつある(Bartholomew. たと述べている.. &Horowitz.1991;中尾・加藤,2003).開発に 至る経過から,AAlの基礎には,母親のIWMと. 期に自己愛が高まったとしても,その防衛的な誇. さらに,原田(2009)は,日本においては青年. 子のアタッチメントとの関連性を問う世代間伝達. 大感の露出が控えられ,対人関係における過敏的. の発想があるとされている。. 特性を誘発する文化的土壌が存在するのではない. 日本では“Attachment”に「愛着」という訳語. かと指摘している.. があてられているが,最近はカタカナで「アタッ チメント」と評されることが多い.日本語の「愛. 1−3.アタッチメントと完全主義 子どもの完全主義に至る安岡としては,親子の. 着」に付随する「執着」「未練」「特別な思い入れ」. 関係を検討したものが多い.. などと,概念としての“Attachment’’とは異なる. 杉久保(2009)は,父親からの被養育体験は完. 部分がある.そのため発達心理学領域では, Bowlbyの示した原義に忠実な形で捉え直すべき. 全主義に影坪をほとんど与えていないが,母親か. であるとする立場が有力化している.本稿におい. らの影響については,子どもが過干渉に適応する. ても,以下,専門用語としての「愛着」は,「ア. ことで,物事に取り組む自律性が阻害され,母親. タッチメント」と表記する.但し,先行研究で使. が好ましいと思うことをするといった他律的に物. 用されている用語および尺度については,原文通. 事に取り組む社会規定的完全主義が形成されるの. り漢字で表記する.. ではないかと考えられるとしている. 福井(2009)は,心理的健康度を左右するのは, 高目標設市・ミスヘのとらわれ・行動疑念という. 1−2.アタッチメントと対人恐怖心性及びふれ. 三つの特性の個人内におけるバランスと成人アタ. あい恐怖 近年,対人恐怖心性及びふれあい恐怖に影響を. ッチメントスタイルの組み合わせであるとし,そ. 及ぼす要因としては,乳幼児期のアタッチメント. の特徴をアタッチメントスタイルの違いによって. の門が関係するとされる自己愛傾向が着目されて. 説明し得ることが示唆されたとした.さらに完全. いる.対人恐怖心性とふれ合い恐怖心性の共通の. 主義の発達モデルの構築にアタッチメントスタイ. 特徴である対人関係への困難さには,ともに目的. ルや発育態度の安岡が加えられるべきであるとし. 感の希薄さおよび自己顕抑制といった過敏性自己. た上で,理論的関係が未だに不明確であるため, 今後さらに検討が必要となるだろうと述べている.. 愛傾向の高さが安岡として潜んでいることが示唆 されている.但し,対人恐怖心性は,承認・賞賛. これらの先行研究から,完全主義傾向について. への過敏さを背景として,他者からの評価に過敏. も,子どもの発達段階における親のアタッチメン. である自己のあり方を示すのに対して,ふれ合い. トスタイルが大きく影響すると考えられる.. 恐怖心性は,自己横和不全の低さおよび潜在的特 稚意識の高さといった誇大的な自己愛傾向を背景 52.

(4) アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主義傾向 卜4.研究の目的と仮説. が,自己愛における優越感・有能感は他者比較を. 卜4−1.研究の目的. 前提としたものであるとしている.このように自. 前述してきたようにアタッチメントスタイルに. 己観と自己愛は他者の存在に影坪を受けていると いうことで共通しているのである.. ついては,先行研究において対人恐怖心性や完全. また,アタッチメントスタイルの他者観は,親. 主発との関連が報告されている. そこで4分類愛着スタイル尺度・対人恐怖心性. 密性の回避を意味する.親しい関係になることを. 一自己愛傾向2次元モデル尺度短縮版・新完全主. 避けるということから,対人恐怖心性と類似する. 義尺度の3つの尺度を同時に行うことにより,先. 特徴を持つと考えられる.. ずアタッチメントスタイルの各類型が,対人恐怖 心性一自己愛傾向2次元モデルの5類型のどの群. 仮に,Figurelのアタッチメントスタイルの 2軸である自己観と他者観が,Figure2の対人. に位置するのかを調査する.さらに,清水・岡村. 恐怖心性一自己愛傾向2次元モデルの2軸である. (2010)が,対人恐怖心性と完全主義傾向につい. 自己愛傾向と対人恐怖心性と対応するものである. て検討していることから,この結果についてもア. とすれば,同じ被験者に対して同時に調査を行う. タッチメントの観点から検証する.最後に,これ. ことで,その被験者におけるアタッチメントスタ. らの結果を基に考察し,アタッチメントスタイル. イルが示す特徴と対人恐怖心性5類型が示す特徴. と対人恐怖傾向・完全主義傾向の関連を検討する. が類似する一群に位置すると考えられるため,2. ことを目的とする.. つのモデルは対応するとしたイ反説を立てて検討す. アタッチメントスタイルと対人恐怖心性一自己. る.. 愛傾向2次元モデルの比較については,Figure lの4分類愛着スタイル(Bartholornew&Horo−. 1−4−2.アタッチメント尺度. witz,1991)とFigure 2の対人恐怖心性一自己愛. アタッチメントスタイルを選択する尺度につい. 観については,金政(2005)が,自己観を保つた. ては,Bartholomewらの4分類愛着スタイル尺 度(RQ口本譜版:加藤,1998)を使用する. RQはBowlbyの愛着理論におけるIWMの自己観. めには不安が高いほど他者からの承認を必要とし. と他者観を,ポジティヴとネガティヴの両方向で. ていると述べている,一方,対人恐怖心性の要因. 捉え,安定型・とらわれ型・拒絶型・恐れ型の4. と考えられている自己愛については小塩(1998). カテゴリーに分類している.このモデルは一般他. 傾向2次元モデル:清水・村岡・川連,2009)を 使って検討する。アタッチメントスタイルの自己. 自己愛傾向【帯】. 自己観(ポジティヴ) 見指てられ不安【低】. 自己観(ネガティヴ). 自己愛傾向【低]. 見事舎てちれ不安一帯I. Figu帽2 対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデル. Figure14分類愛着スタイル BarthoIomew&Horowitz(1991). 清水・村岡・川遵(2009). 53.

(5) 学校臨床心理学研究 第12号(2014年度). 者についての4分類愛着スタイルを決定するため. 完全主義者が想定する他者の存在が,不適応に陥. の強制選択式尺度であり,その信頼性や妥当性は,. るきっかけとして影響する可能性が高いとしてい. 中尾・加藤(2004)で既に確認されている.. るとしている.つまり両者には,他者の反応を排 除するかしないかという違いがある.. 近年,内的作業モデルの測定には不安と回避の. 2次元を測定するように構成されているECR (theExperiencesinCloseRelationships)が規準. 人関係の特徴が表れるとしていることから,他者. 的尺度として多くの研究で使用されているが,今. がどのように関わってくるかということは重要で. アタッチメント理論では,IWMを共にして対. 回の調餐では3つの尺度を同時に行うため,被験. あるため,新完全主義尺度を使用して,清水・岡. 者への負担を考慮しECRは使用しない.. 村(2010)と同じ結果となることを検証する.. 1−4−3.対人恐怖心性尺度. ト4−5.仮 説. 本研究では,簡便な類型判別を可能にする対人. 仮説1.アタッチメントスタイルと対人恐怖心性一 自己愛傾向2次元モデル5類型との関係. 恐怖心性一自己愛傾向2次元モデル尺度短縮版. Figurelで示されたBartholomew&Horowitz. (TSNS−S:清水・川連・海塚,2008)を用い, 対人恐怖心性・自己愛傾向の2領域からなる全20. (1991)と,Figure2で示された対人恐怖心性一. 項目について7段階で評定を求める.このモデル. 自己愛傾向の5分類は,以下のように関係すると. は対人恐怖心性に重点を罷いており,対人恐怖心. 考える.. 性のタイプを明確に捉えることが可能な点で有効. (a)拒絶型は①誇大特性優位型に多く見られる.. なモデルであるとされる.. (b)安定型を示すものは,対人恐怖心性が低い領. また,清水・海塚(2002)は,自己に対する肯. 域にある①誇大特性優位型もしくは③誇大一過. 定的な感覚の低さから不安を感じるタイプは,両. 敏特性両貧型,または①中間型に多く見られる.. 親に対する養育態度において父親・母親ともに情. (c)恐れ型を示すものは,自己愛傾向が弱く対人. 緒的な温かさが低く,過保護であったと認識して. 恐怖心性が強い領域にある(彰過敏特性優位型に. いることが伺えるとして養育態度に言及している.. 多く見られる.. また,清水・川連・海塚(2008)では,ふれあい. (d)とらわれ型を示すものは,対人恐怖心性が高. 恐怖傾向が高い者の特徴として,内的葛藤経験の. い(参誇大一過敏特性両向型もしくは④過敏特性. 少なさを指摘し誇大型自己愛との関係を検討して. 優位型に多く見られる.. いる.. ス,認知特性と完全主義との関連など,5類型に. 仮説2.新完全主義尺度(桜井・大谷,1997)を 用いても,誇大一過敵将性両向型において完全主. 関する特性を次々に調査していることから,本研. 義が最も高く,対極にある誇大一過敏特性両貧型. 究においても行動の特徴を検討しやすいと考える.. は低くなる(清水・岡村,2010)という研究結果. さらに,性格と精神的健康の関係,心理ストレ. と同じ結果が得られる. 1−4−4.尭全主義尺度 仮説3.アタッチメントスタイルと完全主義傾向. 完全主義傾向を測定する尺度は,45項目ある. MPSI尺度(小堀・丹野,2004)ではなく, MSPS(MultidimentionalSelf−OrientedPerfectin− ismScale)を参考に,桜井・大谷(1997)が作. の関連において,PS(自分に高い目標を課す傾. 成した6段階評定の20項目からなる新完全主義尺. 2.調査の方法. 向)以外で有悪差が見られる.. 度を用いる.清水・岡村(2010)では,完全主義 尺度としてMPSl尺度を使用している.しかし,. 2−1.実施方法. 小堀・丹野(2004)は,他者からの反応を尺度の. 以下3つの尺度による質問紙法を使用した.. 中から排除している.一方,新完全主義尺度では, 54.

(6) アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主売傾向. α係数はα=.870,平均侶は24.87,標準偏差は. 2−ト1.4分類愛着スタイル尺度(RQ日本語版). RQ(Bartholomew&Horowitz(1991):加藤. SD=7.73であった.なお,清水(2010)のα係数 は順に.82,.80であった.対人恐怖心性領域と自. 訳(1998). 己愛傾向領域との間には弱い負の相関(「=一.135, p<.05)がみられた.. 2−1−2.対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデ ル尺度. 3−1−1−3.新完全主義尺度. TSNS−S(対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モ. 下位尺度ごとに,内的整合性による信頼性係数. デル尺度短縮版:清水・川連・海塚,2008). の推定備および平均値と標準偏差を算出した.完 全でありたいという欲求(DP)が,α=.829,平. 2−1−3.新完全主義尺度. 均値は17.59(SD=5.131),自分に高い目標を課. 新完全主義尺度(桜井・大谷,1997). す傾向(PS)が,α=.906,平均値は18.308 2−2.調査日 2013年1−2月. (SD=4.959)ミスを過度に気にする傾向(CM) がα=.802,平均偶は15.10(SD=5.243),自分の 行動に漠然とした疑いを持つ傾向(D)がα=.740,. 2−3.調査対象. 平均値20.07(SD=4.775)であった.全体のα係. 調査対象者は,A大学大学生224名(男性103名,. 数はα=.909,平均借は71.07(SD=16.39)であっ. 女性121名)であった.1年生164名,2年生55名,. 3年生2名,4年生2名で平均年齢は19.3歳であ. た.. る.. 3−1−2.尺度間の相関係数. 3−1−2−1.TSNS−SとRQ. 3.結果と仮説の検証. 対人恐怖心性領域においては,安定型との間に. 3−1.結 果. は中程度の負の相関が,それ以外の愛着スタイル. 3−1−1.尺度の構成. との間には正の相関が見られた.特に恐れ型との. 3−1−1−1.4分類愛着スタイル尺度(RQ日. 閉には,中程度の正の相関が見られた.また,自 己愛傾向領域においては,拒絶型との問に有意な. 本語版). タイプ別の平均値と標準偏差を算出した結果,. 相関が認められず,それ以外の愛着スタイルとの. タイプ1(安定型)は,3.38(SD=1.630),タイ プ2(拒絶型)は,2.68(SD=1.412),タイプ3. 閉には,極めて弱い相関が見られた.. 3−1−2−2.TSNSqSと新完全主義尺度. (とらわれ型)は,3.99(SD=1.635),タイプ4. (恐れ型)は,3.42(SD=1.835)であった.選. 対人恐怖心性領域においては,PSを除いて正. 択された愛着スタイルごとの人数は,安定型が54. の相関が見られた.その中でも特に,CMにおい. 名(24.1%),拒絶型が21名(9.4%),とらわれ. ては相対的に高い相関係数が見られた.またDに. 型が90名(40.2%),恐れ型が59名(26.3%)で. おいても,中程度の相関が見られた.自己愛傾向. あった.加藤(1998)では,順に19%,7%,47%,. 領域においては,CMとDを除いて正の相関が見. 29%であり,ほぼ同様の割合であった.. られた.特にPSとの閉に中程度の相関が見られ た,. 3−ト1−2.対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モ 3−1−3.アタッチメントスタイルと対人恐怖心. デル尺度短縮版(TSNS−S). 下位尺度ごとに,内的整合性による信頼性係数. 性一自己愛傾向2次元モデルの5類型. BartholomewらのRQ(日本語版:加藤1998). の推定値および平均値と標準偏差を算出した.対 人恐怖心性領域のα係数はα=.840,平均値は. と対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデルの関係. 34.94(SD=11.01)であった.自己愛傾向領域の. を検討した.カイ2乗検定の結果0.1%水準で有 55.

(7) 学校臨床心理学研究 第12号(2014年度). Tab101対人恐怖心性・自己愛傾向領域と新完全主義尺度の相関係数 尺度名. 尺度の項目. 対人恐怖心性領域 自己愛傾向領域. 安定型 愛荊 拒絶型 スタイル とらわれ型 恐れ型. .507坤●. −.133■. D:自分の行動に漠然とした疑いを持つ傾向. .386輌. −.011. 完全主禿全体. .363榊. .164●. DP:完全でありたいという欲求 PS:自分に高い目標を課する傾向. 完全主発 CM:ミスを過度に気にする傾向. ●♪<.05,h♪<.01,…♪<.001. 意となった(ズ2=39.643,朗=12,p<.001).調. 全でありたいという欲求)では,安定型がとらわ. 整済み残差を見たところ,安定型は,誇大特性優. れ型より低かった.CM(ミスを過度に気にする. 位型と誇大一過敏特性両貧型に多く,同時に過敏. 傾向)では,安定型が恐れ型・とらわれ型より低. 特性優位型においては少なかった.拒絶型は,誇. かった.D(自分の行動に漠然とした疑いを持つ. 大特性優位型に多く,同時に過敏特性優位型にお. 傾向)では,安全型がとらわれ型より低かった.. いては少なかった.とらわれ型は,誇大一過敏特 性両向型が多い傾向にあl),同時に誇大一過敏特. 全体では,安全型がとらわれ型より低かった.. 性両貧型においては少なかった.恐れ型は,過敏. 3−2.仮説の検言正. 特性優位型が多く,同時に誇大特性優位型におい. 仮説1.アタッチメントスタイルと対人恐怖心性一. ては少なかった.. 自己愛傾向2次元モデル5類型との関係. Figurelで示されたBartholomew&Horowitz 3−1−4.対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデ. (1991)の4分類アタッチメント(愛着)スタイ ルと,Figure2で示された対人恐怖心性5分類は,. ルの類型と新完全主義尺度の関係 対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデルの類型. 以下のように関係すると考える.. による新完全主義尺度の多重比較の結果,DP(完. 結果については以下のイ反説(a)∼(d)の調査結果を. 全でありたいという欲求)では,誇大一過敵将性. 基に,総合的に考えるとアタッチメントスタイル. 両貧型が誇大一過敏特性両向型より低かった.ps. と対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデルは関係. (自分に高い目標を課す傾向)では,誇大一過敏. があると考えられる.. 特性両貧型・過敏特性優位型が誇大一過敏特性両. (a)拒絶型は①誇大特性優位型に多く見られる.. 向型がより低かった.CM(ミスを過度に気にす. 拒絶型は他者軽視に基づく関係回避を特徴とす. る傾向)では,誇大特性優位型・誇大一過敵将性. る類型である.調査の結果,拒絶型は誇大特性. 両貧型が誇大一過敏特性両向型より低かった.D. 優位型に多く,同時に過敏特性優位型において. (自分の行動に漠然とした疑いを持つ傾向)では,. は少なかった.誇大特性優位型は対人恐怖心性. 誇大特性優位型が過敏特性優位型よりも低かった.. の低い群であり,拒絶型は他者との関係を軽視 するため,対人恐怖傾向は低いと考えられる.. 3一卜5.4分類愛着スタイル尺度(R0日本語. また,自信があって周りを気にしないという共 通の性格特徴を持つため,拒絶型と誇大特性優. 版)と新完全主義の関係. 4類型愛着スタイルにおける新完全主義に関す. 位型は相関性があると考えられる.よって,こ. る平均値を調べた結果,PS(自分に高い目標を. の仮説(a)は概ね支持された.. 課す傾向)を除いて有意差が認められた.DP(完. (b)安定型を示すものは,対人恐怖心性が低い領 56.

(8) アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主兼傾向 域にある,①誇大特性優位型,③誇大一過敏特. 性両貧型については少なかった.また,恐れ型. 性両貧型,または⑤中間型に多く見られる,. と過敏特性優位型の性格特徴から見ても,自分. 安定型は,親密性の回避の傾向が低い.対人. に自信がないという共通点が見られる.よって,. 恐怖心性一自己愛傾向モデルにおいて,これに. 仮説(C)は概ね支持された.. 該当すると考えられるのは対人恐怖心性が低い. (d)とらわれ型を示すものは,対人恐怖心性が高. 誇大特性優位型・誇大一過敏特性両貧型・中間. い領域である②誇大一過敏特性両向型もしくは. 型である.調査の結果,安定型は対人恐怖心性. ④過敏特性優位型に多く見られる. とらわれ型は,他者観がポジティヴである(親. が低い,誇大特性優位型と誇大一過敵将性両貧 型に多かったが,中間型は支持されなかった.. 密性を回避が低い).しかし,とらわれ型は親. その要因としては,中間型が4類型に分散され. からの虐待や,不適切な養育を受けるなどアタ. たと考えられる.よって仮説(b)は概ね支持され. ッチメントが満たされていない群である.つま. た.. り,この場合の親密性の回避が低いというのは,. (c)恐れ型を示すものは,自己愛傾向が弱く対人. 対人関係が良好ということではなく,対人恐怖. 恐怖心性が高い領域にある④過敏特性優位型に. 心性が高くてもアタッチメント対象となりうる. 多く見られる.. 他者を求めていく状態を意味すると考えられる. よってイ反説(d)では,とらわれ型を示すものは対. 恐れ型は自己観がネガティヴである(見捨て. られ不安が強い).これは対人恐怖心性一自己愛. 人恐怖心性が高い領域である②誇大一過敏特性. 傾向2モデルにおいては,自己愛傾向が低い類. 両向型もしくは④過敏特優位型に多く見られる. 型と考えられ,誇大一過敏特性両貧型と過敏特. と仮定した.調査の結果,とらわれ型は,誇大. 性優位型が該当する.しかし,誇大一過敏特性. 一過敏特性両向型が多い傾向にあり,過敏特性. 両貧型は対人恐怖心性が低い群であるため,他. 優位型は支持されなかった.よって,仮説(d)は. 者組もネガティヴである恐れ型とは対応しない.. 概ね支持された.今回、両貧型が少なかったが,. よって,仮説(c)では,恐れ型に対応する類型. それ以外の類型はほぼ同じような数倍に分散さ. として過敏特性優位型に注目する.調査では,. れるという結果となった.. 恐れ型は過敏特性優位型が多く,誇大一過敵将 Table2 対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデル 愛着スタイル. 誇大特性 誇大一過敏 過敏特性 誇大一過敏. 4分類の型名. 優位型 特性両向型 優位型 特性両賞型. 安定型. 度数 愛着類型の% 調整済み殉差. 拒絶型. 20 37.0%. 9.3%. 2.4. 度数 愛荊類型の% 調整済み残差. 2.0. 調整済み殉差 恐れ型. 度数 愛着類型の% 調整済み殉差. 合 計. .0. −3.7. 度数 愛着類型の%. 1,7. 4. 6.8%. 24.6%. 90. .3 59 18.6% 100.0%. 18.6%. .4. 57 25.4%. 57. 16 17,8% 100.0%. −2.6. 3.5. 36 16.1%. 一.3. 25 42.4%. −.6. 55. 8. 8.9%. .7. 8. 13.6%. .3. 25 27.8%. 21. 3. 14.3% 100.0%. 19.0%. −2.3. 19 21.1ヲ名. 一.5. 4. 4.8%. .4. 22 24.4%. 2.4. 4. 19.0%. 54. 8. 14.8% 100.0%. 27.8%. −2.8. 合 計. 15. 6. 11.1%. −1.6. 9. 42.9%. とらわれ型 度数 愛着類型の%. 5. 中間型. 38 17.0%. .4 38. 224. 17.0% 100.0%.

(9) 学校臨床心理学研究 第12号(2014年度). 仮説2.新完全主義尺度(桜井・大谷,1997)を. 本研究の結果でも,誇大一過敏特性両向型では,. 用いても,誇大一過敏特性両向型において完全主. 下位検査全てにおいて高く,誇大一過敏特性両貧. 義が最も高く,対極にある誇大一過敏特性両貧型. 型は全てにおいて低いという結果となった.この. は低くなる(清水・岡村,2010)という研究結果. ことから,仮説2は支持された.. と同じ結果が得られると考える. Tabto3 対人恐怖心性一自己愛傾向2次元モデルと新完全主義 誇大一過 誇大一過 誇大特性 敵将性両 過敏特性 敏特性両 優位型 優位型 向型 貧型. 分散分析. 多重比較. F(4.219). n=55. 人 数. 24.5%. DP完全でありた 17.64 19.64 17.86 15.53 17.26 17.59 3.169● 両貧<両向 いという欲求 (5.21) (5.17) (4.84) (5.53) (4.360) (5.13) PS自分に高い目 19.05 20.75 17.30 16.61 18.13 18.31. 4.480●事 両貧・過倭<両向 (5.44) (4.53) (4.46) (4.71) (4.70) (4.96). 標を課す傾向 CMミスを過度に. 13.07. 18.22. 17.49. 11.82. 14.79. 15.10. 14.97ユ榊. 気にする傾向 (4.32) (5.65) (5.26) (4.45) (3.31) (5.24) D自分の行動に漠然と 18.45 22.36 21.32 18.89 19.53 20.07 した疑いを持つ傾向 (4.57) (4.27) (4.93) (4.68) (4.24) (4.77) 68.22. 完全主発. 80.97. 73.96. 62.84. 69.71. 両貧・誇優・中間<両向 両貧<中間. 誇優・両貧<両向. 5.770抽. 誇優<過優 両貧・誇傾・中間<両向. 71.07 7.363榊. (16.53) (15.78) (16.15) (15.25) (12.83) (16.39). 両貧<過傾. ■♪く.05,…♪<.01,…♪<.001. 仮説3.アタッチメントスタイルと完全主義傾向. 4類型愛着スタイルにおける新完全主義に関する. の関連において,PS(自分に高い目標を課す傾. 平均値を調べた結果,PS(自分に高い目標を課. 向)以外で有意差が見られるであろう.. す傾向)を除いて有意差が認められた.このこと. 調査の結果,CM(ミスを過度に気にする傾向). から仮説3は支持された.. では,安定型が恐れ型・とらわれ型より低かった. Table4 類型愛着スタイルにおける新完全主義尺度の平均値と標準偏差 分散分析. 安定型 拒絶型 恐れ型 とらわれ型 合 計. F(3.220). 人 数. n=54. n=21. n=59. n=90. n=224. DP完全でありた. 16,04. 19.00. 17.36. 18.36. 17.59. いという欲求 PS自分に高い目. 17.98. 19.81 17.53 18.67 18.3l 1.373 (4.94) (5.07) (4.91) (4.95) (4.96). 標を課す傾向. CMミスを過度に. 2.962◆ 安<と. (4.72) (5.02) (4.46) (5.61) (5.13). 12.57. 15.71. 15.98. 15.90. 15.10. 5.894t職 安<恐・と. 気にする傾向. (4.46) (4.51) (5.36) (5.35) (5.24). D自分の行動に漠然と. 18.76. した疑いをもつ傾向 完全主発. 19.43. 20.00. 21.04. 20.07. 2.803t 安<と (5.12) (3.93) (4.38) (4.84) (4.77). 65.35. 3.460■ 安<と. (14.90). 58. 多重比較.

(10) アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主義傾向 4.考. タイル安定型の幼少期の責育環境が変化してきて. 察. いるのではないかと推測される. 調査の結果,アタッチメントスタイルと対人恐. とらわれ型は,虐待など過去の養育者の不適切. 怖心性および自己愛傾向について,概ね正の相関. な態度が影響しているとされる類型である.また,. が見られた.結果を整理すると以下の図となる.. 他者の評価に常に依存しているとされているため,. 但し,中間型については各類型に分散された.. 本来であれば対人恐怖心性が高い群であると考え られる.しかし,とらわれ型で親密性の回避が低. 自己愛傾向ご幕〉. いというのは,対人関係が良好ということではな く,対人恐怖心性が高くてもアタッチメント対象 となりうる他者を求めてLいく状態を意味すると推. ②義夫一遇書 特性鏑行ヤ. 測される.このことから,とらわれ型を示すもの は,対人恐怖心性が高く,他者の視線に敏感であ るという共通点を持っている誇大一過敏特性両向 型もしくは過敏特性優位型に多く見られると仮定 したが,調査の結果,とらわれ型は,誇大一過敏. ③鎗大・遇■ 椙性萌真理. 特性両向型が多い傾向にあり,過敏特性優位型は 支持されなかった.また,誇大一過敏特性両向型は, 清水・岡村(2010)において,強い完全主義を持. 自己愛犠句:甥1. ○拒絶聖. 安定与. ロ 禁れ毘. つとされる類型でもある.. とらわ九聖. 日本では,とらわれ型の割合が最も高く,アメ. F垣ure3 アタッチメントスタイル別の分布. リカでは安定型の割合が最も高いという報告があ る(加藤,1998).とらわれ型の特徴である他者 を自己より上位に吊き,相手に合わせて自己の行. 4−1.安定型・とらわれ型 安定型やとらわれ型は,親密性の回避が低い.. 動を抑制するという他者中心的な対人関係のあり. 大学生の場合,一般的な発達過程において普遍的. 方や,他者に認められることで自尊感情を維持し. 心性である自己愛傾向と対人恐怖心性を人格的特. ている傾向が,日本人が好ましいと考える対人関. 徴としてもっている(久保,2000).このことから,. 係のあり方と類似しているとすると,他者の評価. 安定型の多くは,自己愛傾向が高く対人恐怖心性 傾向も高い誇大→過敏特性同行型に対応すると考. 病理の範囲までを包括する類型ということになり,. えられる.. 結果が各類型に分散されたものと考えられる。. に常に依存しているとらわれ型は,健常から心的. しかし,現代青年においては,対人関係の希薄 化やふれ合い恐怖心性の増加がみられることから,. 4−2.拒絶型・恐れ型 拒絶型と恐れ型はともに親密性の回避が高い.. 現代の安定型は,対人恐怖心性が低い誇大特性優 位型・誇大一過敏特性両貧型・中間型に集まるだ. 但し,拒絶型が他者軽視に基づく関係回避(対人. ろうとする仮説が支持された.. 恐怖心性が低い)であるのに対して,恐れ型は拒. 対人恐怖心性及びふれあい恐怖に影響を及ぼす. 絶不安を基調とした関係回避(対人恐怖心性が高. 要因は,幼少期における正常な誇大自己と理想化. い)であるという遠いがある(島,2010).. に対する,養育者の不適切な対応による健全な自. 今回の調査では,恐れ型と対人恐怖心性が低い. 己愛の発達の阻害により,発達段階に様々な自己. 誇大一過敏特性両貧型の検討は行わなかった.し. 愛の障害が生じてきたためと考えられている.(伊. かし,岡田(2002)は,群れ志向的で表面的に円. 藤・村瀬・金井,2011).. 滑な対人関係をこなす青年の中に,防衛的に群れ. 調査の結果,青年期の人格特徴が質的に変化し. 関係を取る青年が一定数見られることを示唆して. ていると考えられることから,アタッチメントス. いる.また,加藤(2001)は,現代青年は,対人 59.

(11) 学校臨床心理学研究 第12号(2014年度). ストレスに対して,解決先送りコービングを用い. 前提とした仮説が支持された.完全主鶉について. ることで,互いに傷つけあうことを回避し,関係. は,清水・岡村(2010)を支持する結果となった.. が希薄であるにもかかわらず良好に保てるとして. これらの結果を概観すると,近年の養育環境に. いる.これらのことから今後の調査により数値化. おいて,親自身の発育に対する価値観が変わって. される可能性も考えられる.. きたことや,経済状況の悪化から,子どもにとっ. 拒絶型と恐れ型は,一般的に成人アタッチメン トスタイル3類型の回避型が,“回避型(拒絶型)”. ては,アタッチメント行動が充分満たされていな い状況があり,不安定なアタッチメントスタイル. と“恐怖型(恐れ型)’’に分化されたものと考え. を形成することが多くなってきているのではない. られている(金政,2005).岡田(2013)は,近. かと推測される.. 年この回避型が急増していることを指摘し,他者. さらに,情報社会という生活環境の変化によっ. への関わり方の傾向を決定づけるのは,環境要因. て,若い世代においては他者との関わりを持たな. に依るところが大きく,特に幼少期における両親. いという選択が増え続けてきた可能性がある.こ. との関係(ネグレクトや過保諏・過干渉)が一番. れらの要因が,対人恐怖心性,ふれ合い恐怖,友. 大きな影響を与えるとしている。また,現代は情. 人関係の希薄化などの社会的不適応に影野を与え. 報依存など,あらゆる場面で人とのつながりを希. ていると考えられる.. 薄化させる安岡に溢れているとし,教育熱心な育. 不安定なアタッチメントスタイルは,安全基地. て方についても,子どもの主体性を侵害している. となりうるアタッチメント対象者によって変わる. という点で,ネグレクト以上に過酷な虐待ともな. ことが証明されていることから,子どもや親だけ. り得ると述べ,アタッチメントの蒐要性を示唆し. の問題と捉えず,社会全体での支授を意識するこ. ている.. とが塞要である.今後,親子関係づくりの支援や. 4−3.新尭全主義と対人恐怖心性. 精神病理に至る前に対人関係の円滑さを支授でき るようなモデルの構築を検討することが重要であ. 完全主義傾向については本研究の結果でも,誇. り,継続的に調査することで,アタッチメント理. 大一過敏特性両向型が高く,誇大一過敵将性両貧型. 論を中心に社会不適応の安岡を類型化していく必. 低いという結果となった.また,CM(ミスを過. 要があると考える.. 度に気にする傾向)は,恐れ型ととらわれ型が多 かったが,この2つの類型は不安定型のアタッチ. 謝 辞. メントを形成しており,対人恐怖心性が高いこと 本論文は,2014年に北海道教育大学大学院学校. が共通している. また,福井(2009)は,高目標設置が高い群の. 臨床心理専攻に提出した修士論文「アタッチメン. 中に,いくつかの下位集団が存在し,その特徴が. トスタイルと対人恐怖傾向及び完全主義傾向」の. アタッチメントスタイルの違いによって説明し得. 一部を基に加筆修正したものです.本研究の執筆. ることが示唆されたとしている.これらのことか. にあたり,ご指導頂きました学校臨床心理専攻の. ら,アタッチメントが完全主義にも影響を与えて. 佐藤由佳利教授,森範行特任教授,植木克美教授,. いるという可能性は充分にあると考えられる.. 釧路校に勤務されていた伊田勝寮准教授に深く感 謝とお礼を申し上げます.また,大学院修了後も 頁重なアドバイスを頂き,学びの場を提供して下. 5.まとめと今後の課題. さった佐藤教授に心よりお礼申し上げます. 本研究の目的は,アタッチメントスタイルと社 会的不適応に陥りやすいとされる対人恐怖心性及. ≪弓l用文献・参考文献≫. び完全主義との関連性を検討することであった, 対人恐怖心性においては,対人関係のあり方に質. Ainsworth,M.D.S..Blehar,M.C.,Waters,E. Wa11,S.(1978)patterns of attachment:A. 的変化(希薄化)が見られるだろうということを 60.

(12) アタッチメントスタイルと対人恐怖傾向及び完全主義傾向 PSyChologicalstudyofstrangesituation.Hill−. movetothelevelofrepresentation.Monographs. Sdale,N.).:Erlbaum.. OftheSociety forResearchinChild Develop−. Bartholomew.K.&Horowitz.L.M.(1991)Attach−. ment,50.66−104.. 中尾達馬・加藤和生(2003)成人愛着スタイル尺. mentstyles amongyoungadults:A testofa. 度間にはどのような関連があるのだろうか?−. rourcategory model.JournalofPersonalityand. SocialPsychology,61,226−244.. 4分類(強制選択式・多項目式)と3分類(多. Bowlby,).(1951)MaternalCare and Mental Health.Monographseries2.Geneva:WHO.黒. 項目式)との対応性,九州大学心理学研究,4, 57−66.. 田実朝(訳)(1967)乳幼児の精神衛生,岩崎. 中尾達馬・加藤和生(2004)一般他者を想定した 愛着スタイル尺度の信頼性と妥当性の検討,九. 学術出版社.. Bowlby,J.(1973)AttachmentandLoss:Separa− tion.London:HogarthPress.黒田実朗・岡田. 州大学心理学研究,5,19−27. 岡田尊司(2013)回遊性愛着障害一件が稀薄な人. 陽子・吉田恒子(訳)(1977)母子関係の理論. たち,光文社.. Ⅱ一分離不安,岩崎学術出版社.. 岡田努(2002)現代大学生の「ふれ合い恐怖心性」. と友人関係の関連についての考察,性格心理学. 福井義一(2009)高目標設置は本当に適応的か?. 研究,10,2,69−84.. 一成人愛着スタイルを調整変数として,心理学. 研究,79,6,522−529.. 桜井茂男・大谷佳子(1997)自己に求める完全主 義と抑うつ傾向および絶望感との関係,心理学. 原田新(2009)自己愛の過敏性に関する一考察, 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,. 研究,68,3,179−186. 島義弘(2010)愛着の内的作業モデルが対人情報. 3,1,19−28.. 処理に及ぼす影響一語衆判断課題による検討,. 伊藤亮・村瀬聡美・金井篤子(2011)過敏性自己 愛傾向が現代青年のふれ合い恐怖心性に及ぼす. パーソナリティ研究,18,2,75−84.. 影響について一日己愛的脆弱性尺度を用いた検. 清水健司・岡村寿代(2010)対人恐怖心性一自己. 討,パーソナリティ研究,19,3,181−190,. 愛傾向2次元モデルにおける認知特性の検討【 対人恐怖と社会恐怖の異同を通して,教育心理. 金政祐司(2005)自己と他者への信念や期待が表 情の感情認知に及ぼす影響一成人の愛着的視点. 学研究,58,23−33.. から,相愛大学心理学研究,76,4,359−367. 加藤和生(1998)Bartholomewらの4分類愛荊. 清水健司・岡村寿代・川連浩史(2009)対人恐怖 心性一自己愛傾向2次元モデルにおける心理的 ストレス過程,信州大学人文学部,人文科学論. スタイル尺度(RQ)の日本語版の作成,認知・. 集,人間情報学科編,44,75−84.. 体験過程研究,7,4ト50.. 清水健司・海塚敏郎(2002)青年期における対人. 加藤司(2001)対人ストレス過程の検証,教育心. 恐怖的心性と自己愛傾向の関連,教育心理学研. 理学研究,49,295−304.. 究,50,54−64.. 小堀修・丹野義彦(2004)完全主義の認知を多次. 杉久保英司(2009)完全主義と抑うつおよび被薫. 元で測定する尺度作成の試み,パーソナリティ. 育体験との関係について,九州大学心理学研究,. 研究,13,34−43. 小塩真司(1998)青年の自己愛傾向と自尊感情,. 10,199−205.. 渡退卓也(2011)自己愛人格と主観的幸福感との. 友人関係のあり方との関連,教育心理学研究,. 関連に及ぼす心的表象の影響,立命館人間科学. 46,280−290.. 研究,22,19−27.. 久保恵(2000)対人恐怖心性と認知的・投影的親 子関係像一内的ワーキングモデルの観点からの. 検討,教育心理学研究,48,182−191. Main.M.,Kaplan.N.,&Cassidy.].(1985)secur− ityininfancy,ChiIdhood,and adulthood:A 61.

(13) 学校臨床心理学研究 第12号(2014年度). SUMMARY RelationshipsamongAttachmentStyle, AnthropophobicTendencyandPerfectionisticTendency ChizukoSHINTANI 「、lん∫/げ\Jノしピタ・J‘・//り/rJげ./ノハノ/Jm//−・、ヾt・カ川ノ/イ/1、(山一v/J′川.//′一触/J〟〃川舟Ⅵ巾′イ/ヾ(J仙、〟/J′りり Thepurposeofthisstudywastoinvestigatetherelationshipamongadultattachmentstyle.anthroL. pophobictendency,andperfectionism.JapaneseadaptationofBartholomewetal.(1991).sadulEa[Each− mβ乃′∫CαJg(RQ),加0−d血g〃ざ加αJ刑OdgJげざOC五αり九ロムicJβ循dg作りα乃d乃αγぬ飯浦り俳…血均一ぶんβγfγgγ5血. (TSNS−S),andamuL[idimensionaLse折orienEedPerh7Ctiolmimscale(MSPS)wereadministeredto224uni− VerSitystudents,121womenandlO3menwithanaverageof19.3yearsofage.Theyweredividedindata. analysisintofourgroupsbyadultaEtachmenEs妙Ie.Andineachgroup,theassociation betweenperfe tionismand fivetypesofsocialphobiatendencywereexamined.Asa resL11toftheinvestigation,forso− Cialphobiatendencyand adultattachmentstyle.apositivecorrelationwasobservedgenerallyinter’mSOf. personalitytraits.However,forperfectionismand adultattachmentstyle,aPOSitivecorrelation wasonly Partia11yseen.Theseresultssuggestthatattachmentstyleaffectsthesocialdevelopmentofchildren.. Key words:attaChmentstyle.anthropophobic tendency.perfectionism,lnternalWorkngModels. 62.

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