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『フランスにおける基本計画
と行政訴訟』(2)
見 上 崇 洋 1 はじめに 1 問題の所在 2 フランスの都市計画制度の概要 ll 「両立性」原則と指導スキーム 1 両立性原則の意義 2 指導スキーームの法的性質と訴訟可能性 皿 両立性原則と判例一その1(以上前号) W 両立性原則と判例一その2(以下本号) V 指導スキームに対する訴訟的統制 1 指導スキームと訴訟上の諸問題 2 指導スキームに対する行政裁判官の内容的統制の範囲 まとめ 1 指導スキームの対抗性・両立性 2 行政判断の統制理論 3 おわりに一一わが国における基本計画との関連でW 両立性原則と判例……その2一
指導スキームの規定を根拠として後行行為としての土地占用プランの違法性 を判断することが認められた判例を,次に検討しよう。 1) ⑥アンドル農業会議事件判決(コンセイユ・デタ1982年12月17日判決) [事実] この事件は,二つのグループに分けられた公法人の間の争いが表面化したも 1) CE., 17 decembre 1982, Chambre d’agriculture de 1’lndre., AJDA., 1983, p. 2e8., p.178 chronique B. LAssERRE et J.一M. DELARuE;JCP. 1983, II, 20017, note J. MoRAND−DEviLLER ; RDP., 1983, 217, conclusion B. GENEvolsのである。一方は,アンドル農業会議,県農業部(Direction)および直接関係する多 くの農業経営者であり,他方は,県施設部,知事,そして明らかに商工会議所に支持さ れた市当局であった。デロス市,シャトールー地域にあるアンドル県第三の市である が,の発展についての対立する二つの考え方が争いとしてぶつかったのである。そこで は,私的な利害や政治的な衝突は中心問題ではなく,様々な公益の間の「十分に健全な 2) 対立」が引き起こされていたのである。すなわち,工業ゾーンおよび活動の発展か,そ れとも現在支配的な農業の尊重か,が主要な対立点であった。 デロスおよび他の六つの市は,シャトールー市街地の指導スキームの区域に入れられ ており,それはすでに県知事によって認可されていた。また,デロス市自身は認可され た土地占用プランをもっていた。この土地占用プランの策定は市の西部に2NAに分類 される工業ゾーンを創設するか否かについて続いていた争いを顕在化させるものであっ た。県からみればこの選択は正当化しうるものであった。しかし,原告によれば一方 で,市はすでに東:部に開発にとって十分な広さの工業活動・空港ゾーンを準備していた し,他方で,市は耕作的に質の高い土地を奪われようとしているのであった。 反対勢力でも中心の農業会議は,ただちに反応することができ,すでにNAゾーン の分類が明らかになっていた土地占用プランの公告から直ちに訴訟を提起することがで きたにもかかわらずそうしなかった。それの理由は,認可に際して土地占用プランの一 定の選択を修正するように責任者を導くことを可能にする公聴問があるが,この聴問の 時に,あきらかに,自らの圧力の強さを過信したことのようである。そのため,土地占 用プランの公告に対しては訴訟を提起しなかったのである(ここで出訴しておれば土地 占用プランの内容にかかわる事由をかなり広く主張できたのであるが)。結局,訴追の 主要な事由は次のような論拠による。すなわち,当該地域の工業的・工芸的用途をもっ た2NAゾーンへの分類は,そこについて工業的開発を定めていないシャトールー市街 地の指導スキームの方向づけと両立しないというものであった。 [判示]都市計画法典L.123−1条の文言によれば,「土地占用プランは,存在する場 合には,指導スキームの方向づけの枠内において,一般的規準と土地利用の地役を定め る。これは,とくに,建築の禁止を定めうる。」都市計画法典R,122−20条の文言によ れば「次のものは指導スキームの条項と両立しなければならない。1)……土地占用プ ラン」となっている。 シャトールーの市街地の指導スキームは,1975年12月22日目認可されたのだが,とく に,デロス市の発展の全般的方向を定めており,国道20号線の西側にある地域の都市化 については何の定めもおいていなかった。その部分の基本的性格は,……図面上の指示 によって「農村,村落,建築物分散地域」と定められていた。さらに,指導スキーム は,関係地域全体について,工業を優先するような用途のいくつかの地域を含んでい 2)丁.MoRAND−DEvlLLER, JCP,,1983,20017
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』(2) 73 る。これについて指導スキームは場所を指定している。それゆえ,アンドル農業会議 は,デロス市の土地占用プランによって国道20号線の西側沿いに工業(artisanales et industrielles)の活動を集めることを目的とする50ヘクタールを超える2NA地域を創 設することは,指導スキームに定められた方向づけと非両立的であると主張し,これを 理由としてこのプランの認可を行う1979年11月14日のアンドル知事のアレテの取消しを 求める根拠を,上記の地域の創設を含む限りにおいて,有する。 この判決は,両立性原則に反することを根拠に土地占用プランを一部取消し たものであるが,事実も含めて政府委員ブルノ・ジュヌヴォワの論告が詳しい 3) ので,これを参照しつつ判断の過程をやや詳細に見ていくこととする。 (1)デロスは,アンドル県の一市である。県庁所在地シャトールーの近くに ある。人口からみて,県内の三番目の都市である(1975年で7398人)。シャト ールーの北3,174ヘクタールの市の区域には,国道20号と二つの県道が横切っ ている。またパリーツールーズ間の鉄道が通り,南の端をアンドル川が流れて いる。市の北部にはデロス空港とその施設がある。 この市に関係する二通りの都市計画文書が策定された。まずはじめに,デロ ス市は,シャトールー市街地の指導スキームの地域に入れられている。全部で 七つの市(シャトールー,デnス,ポワンソネ,エレシェット,サン・モール, ヂオール,モンチェショモム)に関する指導スキームが1975年12月22日にサン トル圏知事のアレテによって認可された。第二に,デロス全域に関する土地占 用プランが策定された。プランの策定は1975年1月7日にアンドル知事のアレ テによって命ぜられた。プランは1977年12月22日に知事のアレテにより執行の 公告をされた。ついで(1979年2月20日∼3月9日)公聴問に服され,1979年 12月14日アレテで認可された。 プランの策定の手続の間には,国道20号線の東にある空港工業地域を創設す ることと,この国道の西に2NAといわれる工業地域を創設することに関し て強い争いがあった。アンドル農業会議,県農業部はこれに反対した。優れた 耕作的資質のある土地の開発をもたらすことになるというのが理由である。そ 3) RDP., 1983, pp.216 et s.
れに対して,デロス市は,県建設部の支持もあって,なおも市内には農業用の 土地が大部分を占めることを強調してこの地域設定を望んだ。 ② 取消を求める主要な事由は,指導スキームの定める基本的な方向づけと の非両立性であった。この点につきジュヌヴワは,指導スキームの拘束的効力 を明確にするにつき,コンセイユ・デタの判例は,この文書の役割(関係地域 の整備の基本方針を定めること)と両立性の概念に法文が頼ることから生じる 柔軟性とを同時に考慮しつつ,いくつかの点について明らかにしてきたとして 判例を整理する。 a)いくつかの定着した規範はそれ自体で意味をもつ。都市計画法典のL. 122−1,R,122−1条などにもとつかずに策定された指導スキームは指導スキー の ムの効力を有しない。 指導スキームは,次の場合には法的効果を生じない。認可もしくは公告され 5) 6) ていないとき,違法性が付着しているとき。原則としてそれは公共団体および の 公役務に対してしか対抗できない。また,それは都市計画法の領域についてし か適用できない。カントンを二つにわけるデクレに対して提起された訴えの根 8) 拠として指導スキームの侵犯を採用することはできない。 さらに,指導スキームが関係地域の整備の「基本的方向づけ」を定めるのに 9) 限定されるということは,違法性が付着しえないということである。 b)より微妙な問題は,指導スキームの条項と,基本的施設事業や,土地占 用プランのゾーニングなどが両立するか否かを決めるにさいして,コンセィユ ・デタが行うべき認定である。 4) CE., 9 j uin 1982, Comite de defense de la Basse−Vallee−de−1’Adour−et des Gaves,が挙げられているが参照できなかった。 5) CE., 23 rnai 1973, Agence fonciere et technique de la Region parisienne, Rec., p. 64 6) CE.,9iuin 1982, Association de sauvegarde des espaces verts des Monts− d’Or, req.35242 et 31989,後述 7)前述③ドマ夫人事件判決 8) CE., 17 novembre 1982, Etienne Dailly, req. 40658 9) CE., 2 juin 1982, Comrnune de Saint−Alban−de−Roche, req. 12444
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』(2) 75 公益性宣言の対象とされた施設が指導スキームの枠内で実現された場合には 10) 問題はない。しかし,その境界は必ずしも明らかではないが,コンセイユ・デ タは指導スキームに定められている条件と異なる条件での大規模公共施設を実 11) 現するという事実は指導スキームと両立しないわけではないと認めてきた。ま た,指導スキームに明示的に定められていない事業もこの指導スキームと両立 工2) しないわけではない。 最後に,指導スキームの予測が長時間にしか関係しないように思われるとし ても,このことは,補足的な柔軟な要素を考慮に入れることを認める。かくて, 指導スキームに定められている施設が,長期の間に実現されるべきものである とき,土地占用プランはこれを明示的に考慮に入れずにおくことができること 13) になる。少なくともその実現を後に危うくしないからである。 c) この「判例から,指導スキームはその一般的・展望的性格から意味のな い法的な枠組にすぎない,というように結論を導く必要があるのだろうか。」 学説は,この点に関して,コンセイユ・デタ総会のアダム氏事件判決の当時 14) より,不安を示してきた。 ㈲ 本件は,コンセイユ・デタには,指導スキームが都市の計画化の一貫性 に触れる問題について,最小限の法的効果しかもたないということをはっきり させる性質のものであるように思われる。 10)例えば,カットノム原子力発電所事件判決(CE.,23 december 1981, Comrnune de Thionville, P.484), リール北西バイパス事件判決(CE.,1dec.1982, Ville de Lambersart)のような場合である 11) コンセイユ・デタは,自動車道の経路の変更について(①アダム判決,cf.,23 avril 1982, Association des proprietaires et exploitants sarshois et autres),高 架電線の経路の変更について(CE.,130ct.1982, Commune de Rou血are, req. 23553et 23570)判断してきた。 12)②ル・マンームルザン事件判決 13) このようなものが⑤ブシュマン判決のケースであり,これによって,コンセイユ・ デタは,1977年に作られた土地占用プランが指導スキームによって高速道路の位置に 予定されている土地をND保全地域に指定することができたことを承認した。しか し,それの実現が早くとも1985年のことであったからである。 14) AJDA., 1974, 197, chronique, FRANc et BoyoN;AJPI., 1974, 428, note HosTiou et GiRoD ; JCP., 1975, II, note Bruno ODENT.
コンセイユ・デタは,現実に,シャトールー市街地の指導スキームによって 行われる都市計画の選択とデロス市の土地占用プランの内容との矛盾があるケ ースをみているのである。シャトールー市街地の指導スキームは報告書と図画 からなる。以下,ジュヌヴワはその内容について検討している。 a)報告書の不可欠の要素は選択された整備の部分を定めるそれである。題 でみると次のようである。「都市化」「都市化の分割(coupures)」「中心的機 能」「開発の副次的中心」「産業的機能」。 「都市化」の章の下では,報告書は次のように強調しつつ,市街地の南部の 開発のための方針を定めている。すなわち,「この南部に設定された優遇は, 次のことから正当化される。すなわち一市街地の他の地点への容易なアクセ スを可能にする道路網の構造,一次の理由による北部の影響力の緩和。保護 すべき苗木床,空港による規制,シャンボンの集水の保全,アンドルの通りぬ けによって困難iになった中心部の方へのアクセス」。 この結果,北西にあるデロス市は,限定された開発を約束されるのである。 報告書はこの市について,次のように示している。「中央地域の周辺での強力 な開発を予測することは不可能であった。これは空港の騒音の障害によるもの であった。…一■■…市街地の北部と南部の入口の均衡を目指すためには,これら の開発地域の人口密度は大きく上昇しなければならない」。 「都市化の分割」と題するところで保全が次のように定められている。一 大きな農業的価値をもつ苗木床の農業地区,一空港周辺の空港制限地区 「中心的機能」の題のもとでは,シャトールーの伝統的中心部に新たな飛躍 を与える考えが肯定されている。 報告書に予定されている「副次的中心」の開発は商業地区の開発である。新 開発地区に商業センターを創設することを目的とすることもある。また,その 反対に,デロスの場合であるが,既存の商業構造の強化のみが考えられること もある。 「産業機能」に関しては,これは,活動地区の地理的分割によって述べられ ている。西,南西,東南,東,東北の5つの地区が定められている。各地区に
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』② 77 ついては,予定されている施設が明確にされている。市街地の北部については マルツリー,モンチェ市の地域,の協議整備地区(ZAC)のみが明示されてい る。 デロス市に関しては,これも市街地の北部にあるのだが,国道20号線の東部 にある空港地区が言及されている。しかし,最大限開発を限定する意思を述べ る文言によってである。すなわち,「デロスの空港地域は指導スキームの面で のみ記されているにすぎない。このような活動地区の実現はかなりの数の雇用, 約1万人,を導入する。この雇用については,考えられた人口統計上の見通し には含まれていないかなりの誘導された人口が流れるであろう。この活動の開 発の場合,それゆえ,新しい住居地区との補充的関連を追求しつつ新しい指導 スキームを作ることが問題となる。」 b)図面は報告書に述べられている整備の部分と調和のとれたものである。 とくに,デロス市の領域において,国道20号線の西側の地区にはいかなる都市 化も予定されていなかった。そこでの支配的特徴は,「農業地区,村落,分散 された建築物」に対応する内容によって定められている。 さらに,市街地のすべてについて,指導スキームに予定されている産業地区 もしくは活動地区が置かれるべき場所が示されている。 (4) 「デロス市の土地占用プランはわれわれには,これらの基本的方向づけ を見誤っているようにおもわれる。確かに,国のいうように土地占用プランが NCゾーンに分類されているかなりの土地,すなわち,土地の農業的性質から 保全すべきゾーンを含んでいることを認めることができる。しかし,指導スキ ームとの非両立性はあなた方(コンセイユ・デタ)には明らかであるように思 われる。というのは,土地占用フ。ランは,一方で国道20号線の東部に航空産業 ゾーンの開発を定めており,他方で国道の西部に45ヘクタールの面積の工業ゾ ーン2NAの創設を定めているからである。これは指導スキームによって選択 されている整備の部分とは矛盾する。この部分は市街地の南部の開発を優先し ようとしているからである。さらに,このことは,直接に産業活動の開発に関 して指導スキームの起草者によって行われた選択を妨げる。というのは,デロ
スの土地占用プランに記入された2NAゾーンは指導スキームに定められた他 のゾーンと競合するからである」。 原告は,市街地の北西部につき指導スキームに予定されている産業ゾーン, モンチェショーム市にあるマルッリのそれである79ヘクタールの面積があるが, 現在ではなおも3分の1の面積しか整備されておらず,極めて部分的にしか占 有されていないことをしっかりと述べている。 ㈲ 上記のことからこれらの理由すべては,ジュヌヴワは,原告によって援 用された主要な事由が理由あるものと考えさせる,という。 この結論は法的にも正当化されるので,われわれには適当なもののように思 われる。というのは,土地占用プランについてコンセイユ・デタが行使する適 法性の統制は外部的適法性の検討に限定されないというのが望ましいと考える からである。コンセイユ・デタの判例に対してこの点につきなされた一定の批 判.がわれわれには過度のものであるようにさえ思われるが,コンセイユ・デタ ス による内部的適法性の統制は対照表の理論の適用によって導かれるのではなく, 17) さらに全国整備要綱の遵守を対象にするものでもない。それゆえ,指導スキー ムとの関係での土地占用プランの両立性の要件は明白に要求されていることが 不可欠であるというのである。 ところが実際には,この両者の定めかたは,両立性が「明白」な形で理解さ れるほどに定められているとはかぎらない。そのような中で「アンドル判決は 両立性の要求の真の性質をわれわれに明らかにした。それは,上位の規範に従 うことの要求というより市町村間のレヴェルでなされた選択との調和の要求で ある」という点を評価する者もあるのである。ただ,そうはいっても,アンド 15) cf., note RicARD sous CE., 24 juillet 1981, Jacquet, J. C. P., 1982. II. 19886 16)⑤ブシュマーン市事件判決 17) cf., CE., 2 juillet 1981, Association pour la sauvegard du pays de Rhuys, Rec., p.341, AJDA, 1980, p.110 conclusion RouGEviN−BAviLLE;AJDA., 1982, p.173, note CHApulSAT. 18)モランードゥヴィレは評釈において「事件は完全に取消に適している」という。J・ MoRAND−DEvlLLER, JCP., 1983, 20017 19)A丁DA。,1983, chronique, B. LAssERRE et J. 一M. DELARuE p.180
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』(2) 79 ル農業会議事件判決は,「判例上の最近の進歩」である。それは,土地占用プ ランに対する適法性の統制を示したとともに,指導スキーム自体の統制および 指導スキームを適法性の根拠とする統制を示した。指導スキームに従来から学 20) 説が主張してきた効力を判決において認めたのである。 V 指導スキームに対する訴訟的統制 1 指導スキームと訴訟上の諸間物 以下では,両立性原則に関わらない判決例をいくつか見ておくこととする。 まず,出訴期間に関して,問題となった事例がある。一般的原則として,越 権訴訟の出訴期間は2ケ,月であるが,これは,指導スキームを認可する行為に ついても同様であって,この期間が徒過すれば,この行為に付着する毅疵は援 用できない。ただし,次のような場合については,出訴期間の徒過は問われな いとされた。 1) ⑦ソンシャン自然保護協会事件判決(コンセイユ・デタ1981年7月24日判決) [事実]本件において,訴えは,ポンテヴラール市の領域の空港用に留保された部分 を含む土地について,イル・ド・フランス圏知事の認可に対してなされた。この認可は 1976年7月2日の官報に公示された。しかし,請求がコンセイユ・デタ訴訟部に登録さ れたのは10月6日および22日のことであった:。すなわち越権訴訟の2ケ月の出訴期間が 徒過した後のことであった。 [判示]スキームの認可が攻撃されておりこの認可に関して,図面(documents graphiques,とりわけ旅客用空港a6rodrome de tourismeの建設を定めているもの) が,この請求に先立つ2ケ月以内に初めて公表されたということを原告が主張しうると すれば,当該認可に対してなされた主張(conclusion)は,図面を参照することによっ てはっきりさせられた違法性から引き出された事由に根拠をおく範囲において受理可能 (recevable)である(下線筆者)。 この判決は,都市計画が様々な文書からなる「複合的行為」であることから すれば,現実的判断の面からみて非常に有益である。 20) J.MoRAND一一DEvlLLER, JCP., 1983, 20017 1) CE., 24 juillet 1981, Association de d6fence du site de Sonchamp et autres; D.1982. IR. 520, Obs. H. CHARLEs.
最高裁判所は,認可のデクレに対してなされた請求について,受理可能であ ると判断した。ただし,図面を参照することのみが明らかにすることができる 範囲においてである。この図面は,本来の期間内に公開されておらず,原告等 には,請求の登録前2ヶ月以内に伝えられたものであった。 これに対して,行政庁の権限行使とか,策定手続における違法性を出訴期間 の徒過後に問題とすることはできないことも,同じ判決が明らかにしたのであ2︶ る。 これは,不完全な公示は,国民(justiciable)に「違法性を暴露し,訴えを 遂行することを可能にする要素を見出さ」せるものではないという古典的な判 例の適用であるといわれる。すなわち,公衆に明らかにされた違法性が,上記 の出訴期間の徒過後に公表された図面によってのみ認識されるものであるよう な場合には,出訴期間は,この公表(mise a la dispositioin)から2ケ月間で あるとされるのである。 指導スキームに関する取消事由は無権限と形式の理疵に限定されるといって よいであろう。この二つの事由はこの分野においても他分野におけると同様の 役割を果たしている。しかし,全般的にみると土地占用プランに比較して,裁 3) 判官はそれほど厳しく統制を行っているわけではない。判決例には次のような ものがある。 ゆ ⑧コント市事件判決(コンセイユ・デタ1982年1月29日判決) [判示]指導スキームの基本的な方向付けが,都市計画法典R.122−13条によって, 委員会によって策定され,市町村会の勧告に服せしめられた場合であっても,政府によ って修正されなかったとき,そして,指導スキームが攻撃されたデクレによって認可さ れた場合には自然空間に適用される制度を,とくに,そこでの住宅用の建築を例外的に しか許可せず,また,住宅以外の建物を排除することにおいてより重くするとき,この 規制の強化は,事業計画の一般的な経済性を問題とするものでなければ,政府に対して, 2) H.CHALEsE, Observation, D.1982. IR.520 3)次回参照 4) C.E., 29 janv. 1982;Cornmune de Contest et autres, D.1982, IR. 518 J. C. P. 1982, II. 19863, conclusion, GNEvois.
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』② 81 新たな審議を行うことも,市町村会の勧告を得ることも義務づけるものではない。 5) 指導スキームについては,83年差では協同決定の原則が定められており,そ の策定は関係市町村と国の役務との集団的事業であった。ここでの協力は,ま ず,都市計画地方委員会の設立によって,具体化される。この機関は,いわゆ る協議(concertation)の機関であるとの性格が強調されているように,フラ ンスの都市計画制度上,重要な位置を占めてきたものであるといってよい。つ ぎに,関係市町村会もしくは存在する場合には都市計画に関して権限を有する 公施設の審議機関の諮問が行われる。 本件において争点になったのは,国が,自ちのイニシャティブでスキームの 草案の内容を,地方の議員が出席する機関にあらためて諮問することなく修正 することができるのかという問題であった。ところが,本判決はこれを肯定し た。すなわち,本件判決の事実からすれば,策定を担当する作業集団の違法な 構成も,また,策定中におけるそれの構成の変化もあらためて問題とはされな いというのである。 ⑦⑧のほかに,手続上の報疵に関するものとして以下のものがある。 ⑨モン・ドル緑地地域保全協会事件判決(コンセイユ・デタ1982年6月9日 6) 判決) [判示] (1983年法以前)の都市計画法典R.122−8条によれば,「指導スキームは, 国の役務と関係市町村の協同によって(conjointement)策定される。必要な場合には, 当該市町村を統合し,都市計画について権限を有する公施設もそれに加わる。この目的 のために,手続を指導する責任を有する知事は,市町村もしくは公施設の選ばれた代表 および国の役務の代表を含む委員会を組織する」となっている。 リヨンの市街地の指導スキームを策定するために組織された委員会が,デクレによっ て認可されたのだが,そこに参加すべき何らの権限を有しないローヌ県の5人の代表を 含んでいた。これらの者は,前述の条文で言及されている選出された代表にあたるもの 5)83年法によって,都市計画の策定が地方の固有の事務とされたことから,この協同 決定方式は廃止された。第二章2注2)の文献参照。なお,この点および実質的に国 の関与が残ることについては,そのなかでも稲本洋之助「フランスの地方制度改革と 都市計画権限」『法律時報』57巻9号が詳しい。 6) CE., 9 juin 1982, Association de sauvegarde des espaces verts des Monts d’Or et autres, D. 1982. IR. 518,:RDP., 1983, 530
ではなく,かかるデクレは,違法(irregulier)な条件において策定された指導スキー ムを認可したものであり,違法性が付着する。 1977年の土地利用方向づけ法は,国の役務と関係市町村の代表による都市計 画文書の協同策定の原則を導入した。都市計画法典はそれをL.122−2条に示 している。コンセィユ・デタはすでに,土地占用プランの作業集団については, T) その構成の違法性を根拠とする統制を認めてきたが,本件判決はこの結論を 「整備・都市計画地方委員会」にも拡張しようとするものである。すなわち, 整備・都市計画地方委員会には,適正に指名された国の役務および市町村の代 表(61us)のみ参加できるのであるが,後者は,市町村の秘密投票によって指 名されるか,存在する場合には,統合公施設の審議機関によって指名されなけ ればならない。判決が採用した違法性は,委員会の構成についてである。それ は,スキームが対象としない県の5人の代表を含んでいたことであった。これ との関連で,次の点が指摘できよう。まず,土地占用プランの作業集団もしく はこの委員会は,市町村会によってその資格において選ばれた関係市町村の代 表または,存在する場合には,統合公施設の審議機関によって選ばれたものし か参加させることができない。他のすべての出席者は,議員であれ公務員であ れ,基礎となる公共団体の名で正当に出席することはできない,ということが おう 確認されたことである。 次に,ここで制裁されたのは恒常的参加であり,専門家などの一時的な協力 ・勧告・諮問なら必ずしも策定手続の三盛を構成するものとはいえないようで ある。 ラ 別の重要な点についてみておく。本判決は,協議整備地区を創設するアレテ にたいして提起された訴訟に関するものである。ところが,このアレテは,整 備計画とそれの実現のための協定(convention)をともに認可する効果を有し ていた。そこでの策定手続の違法性から引き出された事由は,スキームの執行 7)次節参照。なお,これについては別項を予定している。 8) 同様の結論を示すものとして,CE.,11 jauv.1980, Centre r6gional d’information et de lutte anti−nuc16aire三de Basse−Normandie,が挙げられている。 9)第一章2注1)に挙げた支献参照。
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』(2) 83 手段を構成するものであれば,スキームの枠内で採用された行為に対して提起 された訴えの根拠として有効に援用されることが明らかにされたのである。 2 指導スキームに対する行政裁判官の内容的統制の範囲 指導スキームの内容的違法性は,行政裁判所において,どの程度まで統制さ れるのであろうか。指導スキームの法的性質自体が議論の対象になっていたこ ともあって,この点に関する判例が多数存在するわけではないが,この点に触 れるものをここで挙げて検討しておく。 1) ⑩パニス・パシス等事件判決(コンセイユ・デタ1982年2月19日判決) [判示]原告は,指導スキームの認可を行うデクレの取消を請求する根拠を有しな い。これの理由は,一件書類からは,スキームの起:草者が都市計画法典L・ 122−1条の 条項に定められている目的と異なる目的を追求したということも,彼らが考慮すべき権 限を有する諸要素とくに都市の発展と自然空間の保全との間で維持すべき均衡を明らか に誤って認定したということも,そして土地占用プランに課せられるこれらの空間の区 域設定が以前に認可された:プランに示されてきたそれではありえない,ということも明 らかにはされていないからである。 この判決は,目的達反,考慮事項間の均衡遠反および従来の事情との関連の 三点について判断したものである。シャルルによれば,この判決は,指導スキ ームに関して行使された行政裁判宮の統制について位置付けをはっきり述べた 2) ところに回議があるものである。すなわち,第一に,この判決は,指導スキー 3) ムの認可行為の外部的適法性を検討する。いいかえれば,策定手続の進行の適 正さにつき法令上スキームの策定に責任を有する当局の権限に関して検討を加 えている。第二に,この判決は,内部的適法性に関して,最小限の統制しか行 1) C.E., 19 fever. 1982, Consorts Panis−Passis et autres, D.1982, IR, 519. Obs. H. CHARLEs ; RDP., 1982. 730 2) ’H.C. CHARLEs;Observation, D.1982, IR, 519. 3)フランスの行政裁判における統制理論でいう取消事由としての外部的適法性 (16galit6 externe),内部適法性(16galite interne)は,阿部教授によると次のような 表でまとめられる。阿部・前掲書81頁より。ただし,訳語など一部変えたところがあ る。 ノ
使しないというコンセイユ・デタの態度を明らかにした。これがこの判決の主 4) 要な意義であるという。 前者については,指導スキームの認可行為に対して,形式違反,無権限など から構成されるフランス行政裁判における取消事由として確立した概念である 外部的適法性の存否を裁判所が判断できるとしたものである。 特に後者についてはいくつかの意味がある。 まず,この結論は土地占用プランに関してはすでに採用されているというこ 5) とである。指導スキームには,その性質を考えるならば,よりょくあてはまる
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内部的適法性一 一権限濫用 detournernent du pouvoir 法律侵犯 viQlation de Ia loi 一要件 motif (事由) 一法規的要件 motif de droit 要件事実一 rnotif de fait 一事実の実質的正確性 exactitude rnaterielle des faits 事実の法律的性質決定 qualiflcation juridique des faits 一比例性 proportionalit6 4)最小限の統制,通常の統制,最大限の統制については阿部・前掲書が詳しい。「裁 判官によって行使される統制権力の強度が変化し,それに反比例して行政官に賑与さ れる自由裁量権の範囲に広狭が生ずるのは専ら要件事実に関してである。権力濫用や 法規的要件については前述のように常に統制されるのである」。要件事実の統制の 『音階』は次のように三段階であり,(1)最小限の統制……事実の実質的正確性の統 制,(2)通常の統制……(1)+法律的性質決定の統制,(3最大限の統制……(1)+(2)+要件 事実と処置の均衡(比例性)の統制,というようにまとめられている。阿部・前掲書 108頁。この音階は,行政領域によって異なると考えられている。 5)土地占用プランに関する判例名だけ挙げておくと主なものは次のようである。ブシ ュマーン判決の他に,CE.,28 mars 1978, Association syndicale autorisee des Palus de Latresne:Rec., p.139;CE., 6 juin Dame Carlotto:Rec., T., p.928;CE., 4 juillet 198e, Societe Engreval : R−ec., T. p. 927 ; CE., 21 janv. 1981, Henry : Rec., T. p. 961 ; CE., 28 nov. 1980, Commune d’Anneville−Ambourville : Rec., T. p. 927 ; CE., 5 janv. 1979, Association pour la protection et 1’embellissement du site de La Baule−Escoublac: Rec., p.7; CE., 26 janv. 1979, Epoux Lorans : Rec., p.31『フランスにおける基本計画と行政訴訟』(2) 85 ものととらえられている。すなわち,指導スキームは長期の方向づけならびに 不可避的に不確実な空間の管理の選択に関することなので,土地占用フ。ラン以 上に裁判官の判断の入る余地は少ないものといいうる。 最小限の統制は,指導スキームに関して,⑦ソンシャン事件判決によって初 めて認められた。最高裁判所は,この⑦ソンシャン事件判決において,環境保 の 全の要請もしくは必要性についての「評価の明白な過誤」の統制の行使を拒否 し,公共施設のために留保されている場所の選択の便宜性を判断することは越 権裁判官には属さないとしたのである。 本判決は,⑦ソンシャン事件判決により一般的な射程距離を与えつつその結 論を再び採用したのである。すなわち,⑦ソンシャン事件判決は,都市の発展 と自然空間の保全の間の均衡を検証するすべての要素を考慮に入れるべきであ 7) ると思われるにもかかわらず,中心都市と隣接圏域の間で維持すべき均衡につ 1いて判示した際に上記の結論を示したのである。 スキームの認可以前に土地占用プラン(公告もしくは認可された)を根拠と して建築許可が付与された場合,このような場合には当然スキームとの両立性 の義務は課せられないことになるのだが,土地占用プランとスキームとの非両 立性を理由とする申立は受け入れられないことになる。これに対して,建築許 可が,その許可の付与の時点で認可されているスキームと非両立的な土地占用 6) 「評価の明白な過誤erreur manifeste d’apPr6ciation」の統制の理論は70年代に 本格的な展開をみるものであって,いわば「対照表の理論」の『行き過ぎ』を修正す る機能をもつとも思われるが,最小限の統制よりも若干統制の範囲を広げるものとい ってよいであろう。「対照表の理論」は通常「比例性の理論」として説明されており, 最:大限の統制に入る。「評価の明白な過誤」は最小限の統制に分類される。ただ,後 者と伝統的な統制の「音階」論における分類(注4参照)との相違の有無およびその 範囲については,検討する必要があろう。最近の一般的な説明としては,J.リヴェロ ・前掲282頁以下,G. VEDEL et P. DEvoLvE, Droit administratif,9e6d.1984, pp. 798 et s.;A. de LAuBADERE, J.一C. VENEzlA et Y. GAuDEMET, Traite de Droit Admi− nistratif, T. L ge6d.1984, pp.290 et s., pp.610 et s,;ブレバンは「今日では,裁量 権の行使の四番目の限界は,評価の明白な過誤の概念にある」と述べている(事実の 確認,法の適用,権限濫用とならぶ)。そして比例性の原則は,さらにこれらを補強 するものと説明されている。G. BRAIBANT, Le droit administratif frangais,1984, P. 241.また,小原・前掲論文208頁以下をも参照。 7) H.CHARLEs;Observation, D.1982, IR, 519.
プランを根拠として付与された場合には,土地占用プランが違法であるという 申立は有効になされるであろうか。二つに分けて考える必要がある。 まず,指導スキームが,都市計画法典R.111−15条の対象とされている二つ の場合において全国整備要綱の価値をもつ場合には,答は肯定的である。行政 は建築許可の付与にあたって,このスキームに蕪束されるからである。しかし これ以外の場合,「建築許可は,その適法性が指導スキームの規定を根拠に認 定されるべき行政決定の数のうちにははいらない」(③ドマ氏事件判決)。すな わち,スキームと非両立的な土地占用プランを根拠として付与された許可も適 法なものとなるということである。スキームが私人との関係においては効力を もたないとされる限り,容易に導かれる結論であろう。 ここで,まとめるならば,この判例から,一応,次の点を指摘することがで きよう。 まず,市町村は,自らの領域外のことであっても,指導スキームを違法性の 判断の要素に加えることができる。いいかえれば,スキームは,「市町村を超 える包括的な分析に依拠しつつ,同一の性格を有する『整備の部分』を選びだ す」性質をもち,したがって,自己の領域のみが判断の対象とされるわけでは ないのである。このような意味において,指導スキームは行政を拘束する。 所有権者が,どこまでの主張をなすことができるかという問題については, なお,明確な判断はなされていない。スキームが,所有権に対して直接的効果 を生じることは理論的にありえないので,間接的な効果をどのようにみるかが 問題となるが,クリスチニはこのような場合にあっても越権訴訟は受理可能で き あるとしている。ただ,この見解は,あくまでも予測の域を出ず,根拠も明ら かではない。 所有権をもたない行政客体も当然のことながら,スキームとかかわる。彼ら は,スキームが「彼の生活の枠(cadre de vie)の発展を条件づける範囲にお いてかかわる」ということはできる。ただし,この点を裁判官が,訴訟の提起 8) CRISTINI, OP. Cit.
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』② 87 に十分な個人的かつ直接の利益とみると否かははっきりしない。というより, むしろ,受理性(recevabilit6)が認められるのは,例外的となるように思わ れるが明確な結論はコンセイユ・デタの判断まちといったところである。 ところが,最近つぎのような裁判例が現われている。概要しか紹介されてい ないめで詳しい分析は今後の機会を待ちたい。 ⑪サン・マルタン・ドゥ・ヴィヴィエ周辺田園景観保護協会事件判決(コン 9) セイユ・デタ1985年4月26日判決) [論旨]建築許可の付与に際して,認可されている指導スキームの規定を考慮してお かなければならない。ただし,本件建築許可の付与に際して評価の明白な過誤をおかし ているわけではない。 前述したように,指導スキームは建築許可に対抗しえないことが確認されて きた(③ドマ氏事件判決)。ところが本判決は,簡単な紹介なので,両立性原則 を基礎とするのか否かなどの点が不明であるが,建築許可の付与に際して,認 可されている指導スキームの規定を考慮しなければならないとする点で従来の 結論と異なる対応をするもののようである。この判決の評釈者は,従来の態度 エの を「過度の規制的法律主義(exc6s de juridisme r6glementaire)」ときめつ けて,この判決の態度を支持している。他方で,裁量統制については,この領 域における評価の明白な過誤の理論の適用の可能性があることと,本件では明 白な過誤がないことを述べている。やはり「コンセイユ・デタは土地占用プラ ンに関するのと異なり指導スキームについては,内部的適法性の統制を行うの ユラ に極めて慎重である」のである。 VI ま と め 以下,一応のまとめとして,指導スキームの効力・両立性,指導スキームに g) CE., 26 avril 1985, Association pour la sauvegarade du paysage rural de Sain− Martin−du−Vivier et de ses environs, AJDA., 1985, 383, observation, J. C. 10) J.C., observation., AJDA., 1985, 383. 11) J. C., observation., AJDA., 1985, 383.
行使される裁判所の統制について述べておく。 1 指導スキームの対抗性・両立性 行政に対する指導スキームの対抗性は学説でも判例でも一般に認められてい る。それは,明文で規定されている両立性の要求に依拠しており,国,地方公共 団体,行政・商工業公施設と同様に公役務の管理を行う私法人にも適用される。 学説・判例上の曖昧さが示されてきたのは私人に対する対抗性に関してであ った。多くの法学者が逆の見解をもっていたにもかかわらず,行政は,指導ス キームは行政客体に関して直接の効果を有しないと主張してきた。学説の立場 は,①アダム判決によって基本的に承認され,②ル・マンームルザン判決によ って確認された。そこでは,最高裁は,私人は,行政決定(ここでは公益性宣 言)と指導スキームの条項との非両立につき指導スキーム違背を援用できるこ と自体は認めたのである。このような判例は学説には結論についての不満とと もに若干の満足をもって受け入れられた。学説は,訴えの広い認容という点か ら一般に,一応の評価をしたようである。 ところが,コンセイユ・デタは,私人の訴えは,R。122−20条に対象とされ ている四種類の活動に関する決定のみに限定されてるべきであり,建築許可は, その適法性が指導スキームの諸条項を根拠として認定されうるような決定のう ちには入らないとしたのである (③ドマ氏判決)。適法性の統制の要素として 指導スキームを根拠とすることは,それゆえ,原告がだれかという観点ではな くむしろ行政決定の性質によって決定されるものであり,結論的な相違は,建 物の性質および規模によって生じたのである。たとえば,基本的公共施設の建 築許可の指導スキームの条項との非両立性は,裁判官に直接に付託されること が可能となる。しかし,建築の私的な計画はその適法性を土地占用プランの規 定によってのみ判断されるのであり,指導スキームの規定によって法的な判断 をされる余地はないのである(④カヌ夫人判決)。 両立性原則を基礎にして指導スキームの役割を積極的に認めた⑩アンドル農 業会議事件判決の意義はすでに述べたが,両立性原則についてみれば,この判
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』② 89 決は,「両立性の関係の評価において必要とされる柔軟性を示した。すなわち, 一方が他方の方向づけと両立していなければならないという二種類の都市計画 文書の間に(事実上食い違いがあったとしても)常に矛盾を認めるわけではな い」ことを示したのである。 なお,フランスにおける議論が混乱した要因は全国整備要綱が指導スキーム の存在しないところでは指導スキームの効力を有するとされたごとである。す なわち,指導スキームが要綱と同じものとして扱いうるのではないかというこ とが理論上は興味の対象となるのである。要綱自体に関する議論もかなり錯綜 しており,ここでその内容を検討することはできないが,簡単にいうと,指導 スキームが伝統的な規則と同様の法的性質をもたないまでも,要綱と同程度め ヨ 性質は有するのではないかといった議論がされるようになっているのである。 都市計画文書の段階では,指導スキームは,要綱と土地占甫プランの間の中 間的段階に現われ,それらの中でもっとも一般的な根拠の規範は,当然,要綱 ということになる。ここで,指導スキームに土地占用プランとの関連で具体的 な意味を与えることができる鍵となるのが,いうまでもなく,明文規定にある ラ 両立性の原則であった。 1) B. LAssERRE et J. 一M. DELARuE, chronique, AJDA., 1983, p. 179. 2) 「この改革,学説上の配慮に全く不完全に対応したものだが,は制度の訳のわから なさを増大しただけである。」RIcARD., oP. cit。;P. DELvoLvE, L’acte administratif, 1983,p.109参照。 3)RlcARD., op. cit.,なお要綱=ディレクティヴ自体の議論もフランス現代行政法の 大きな課題であり,また,本稿との隊連でも検討すべき点は多いが,ここでは,重要 性の指摘にとどめる。わがくにの文献として,交告・前掲論文,亘理・前掲論文参照。 4) 「要約すれば,(全国整備)要綱は,羅束権の手続の中に入り,あるいは少なくと も権限当局を,その認定権を剥奪することなく,拘束する傾向にある。指導スキーム は全体として,この認定権限を消滅させ,また,より以上に,『法規範の直接的侵害』 (オダン)とか,『対象に関する違法性』(ローバデール)という観念に対応する。… …指導スキームによって行政当局に委ねられた操作の唯一の自由は,厳格な『適合性』 の概念に置換えられた『両立性』の概念の中にある。適合性の概念は,当局に指導ス キームに予定されている『経路』もしくは『位置』との関連で設備施設の正確な『場 所』を決定することを可能にするものであった」RlcARD, op. cit.,
2 行政判断の統制理論 まず外部的適法性に関する統制の状況については,「1983年以前の制度にお いては,指導スキームの外部的適法性の訴訟による検討は,策定手続に関して 土地占用プランに対してよりも厳しくなかったので,裁判官の寛大さを際立た ゆ せた」ともいわれたが,この統制が及ぶこと自体は認められてきている。 不十分心ある点といえば,例えば,国は,整備都市計画地方委員会の新たな 審議を経ることなく,また,市町村会の勧告を受けることもなく,指導スキー ムのプロジェクトの一般的経済性を問題とはしないような修正を持ち込みうる とされていることや,同様に,整備都市計画地方委員会における一部の市町村 (例えば中心都市)の優越的代表性(surrepresentation)は非難されないし, 公務員および地:方議員以外の一時的参加も認められることなどである(⑧コン ト市事件判決,⑩パニスーパシス等事件判決)。さらに,整備都市計画地方委 員会の構成は,シェルブールの指導スキームに関してコンセイユ・デタが認め う たように,作業の間に修正されうる。 しかしながら,コンセイユ・デタは,整備都市計画地方委員会のメンバーの 中に数えるべき資格を有しない人の恒常的出席については違法性を承認した (⑨モン・ドール緑地保全協会事件判決)。策定権限を有する委員会の構成の 恒常的違法性は,策定された計画の違法性を導くというのである。このように, 外部的適法性の統制も,その程度においてはなお緩やかな面があるものの,原 則的に承認されているといいうる。 両立性をはじめとして計画の実質的違法性の検証には,形式や手続に関する 判断(外部的適法性)以外に要件事実に関する判断が不可避であるが,裁判所 がどこまで立ち入った検討をなしうるかはきわめて大きな問題である。指導ス キームの内部的適法性に関しては,限定的な統制しか行使しようとしなかった (⑦ソンシャン景観保護協会事件判決,⑩パニスーパシス等事件判決)。しか 1) J. MoRANDDEvlLLER, JC?., 1983, II, 20017 2) CE., 11 janvier 198e, Comite regional d’information et de lutte antinucleaire de Basse Normandie:Rec. Lebon, T. p. 566
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』(2) 91 し,いわゆる最小限の統制が行われることは確実である。それ以上に裁判所の 統制がおこなわれるとすればいかなる範囲のものであろうか。 「アンドル農業会議判決は,非対立性,すなわち一つが上位にあり他方が下 位にある二つの種類の文書の消極的な関係としての両立性概念の良き説明であ る。われわれは,両立性を,規範の調和・均衡の観念(L. 122−1条に用いられ ている文言)と比較することができる」。この均衡などをどこまで認定する かがここでの焦点である。フランスの裁量統制論を概観すると,都市計画領域 において70年代初期に登場し一時は支配的になるかとも思われた「対照表の理 3) 4) 論」は適用を拒否されていき,より明確に外見的に判断される齪酷にのみ依拠 する理論が裁判所によって採用されているといってよい。「二つの文書の間の 明白で大きなそして重大な食い違いが無いことに依拠しつつ,単純に比較する ラ やりかたによれば,裁判官により良く理解されるであろう」。 統制の厳格さは計画文書の詳細さによって異なるといいうる。その定義自体 からして,指導スキームは展望的文書であり,適合性について検討するほどの 詳細さをもって書かれたものではない。それは「仕上がり図」というよりクロ ッキーである。したがって,統制も厳格にできない面が残る。 ⑤ブシュマーン市判決は,ゾーニングの選択に関する土地占用プランの内部 的適法性に関する裁判官の統制を明確にしたものであるが,対照表の理論では なく明白な過誤の理論による限定的な統制によるものであった。したがって, 当然の予測として指導スキームについてもせいぜい同じ結論しか導かれないと いうこととなろう。対照表の理論による統制が基本的に否定されていった後の 焦点は,この分野における統制理論としてどのようなものがあてはまるのかと いうことである。しかし,行政裁判官は,この事由がしばしば援用され議論さ れているとしても,この明白な過誤の採用に対して極めて慎重であり,適用の 3)第五章注5)参照。 4)M・ 一D・ラブツールによれば,『非常に数多くかつ非常に異質の与件』は『対照表の ことを考えることが現実的である』ためには問題となる。Conclusion, LABETouLLE, ⑤ブシュマーン市事件判決,cit6 par J. MoRAND−DEvlLLER, JCP.,1983, II,20017 5) J. MoRAND−DEvlLLER, JCP., 1983, II, 20017
可能性を示唆するものは登場しているが(例えば⑪サン・マルタン・ドゥ・ヴ ィヴィエ判決),この理論によって取消しまで認めたものはないのである。今 日まで,コンセイユ・デタは,土地占用プランの訴訟に係る条項の取消事由と 6) して明白な過誤に依拠することを避けているように思われる。 今後の方向については対照表の理論の適用を明示的に否定した⑤ブシュマー ン市事件判決の論告において政府委員D.ラブツールが「土地占用プランの基 礎となる選択の決定およびゾーンへの土地の配分の段階で」コンセイユ・デタ 7) の統制は「極めて控え目でしか有りえない」と主張していることからも明白な 過誤の理論のこの分野への適用の可能性も微妙なものとなる。ラブツールは内 部的適法性の二つの事由……権限濫用と両立性……によって統制することを要 求していた。後者は⑤ブシュマーン氏事件判決ではその可能性が認められただ けであったが,その後の⑥アンドル農業会議事件判決においては統制の根拠と g) して機能した。ただし,この判決における両立性の統制に用いられた理論が 「対照表の理論」でないことは論告においても主張されているが,それでは, 「明白な過誤」の理論という一般的な基準によるものであるのか,その点は曖 昧にしたまま単に実定法上の規定「両立性」を根拠としたものであるかは,な おも明確ではない。 つぎに,都市計画の多様な文書および許可に対する訴訟の場合に,いわゆる 9) 前提問題として指導スキームに対してなされた違法性の抗弁の範囲の問題があ 6)J・MoRAND−DEvlLLER, JCP.,1983, II,20017,なお都市計画法上の手法に関する 1980年置での裁判的統制については,Jean−Francois DAvIGNoN,〈Le juge admini− stratif et 1’urbanisme−E16ments de synthese> in “Pouvoir local et urbanisme” 1981,PP.79 et s.があり,その中で,土地占用プランに関してではあるが,「対判事 の理論」,「明白な過誤の理論」に関する判例の概観がなされている。 7)Conclusion, LABETouLLE,⑤ブシュマーン市事件判決, cit6 par丁. MoRAND− DEvlLLER, JCP., 1983, II, 20017 8) この問題は,一般には,指示の有無にかかわらず,「考慮事項」の問題となるであ ろう。芝池・前掲論文348頁以下。なお,同・「行政決定における考慮事項」『法学論 叢』、116巻1∼6号(1985年)471頁以下,イギリスの都市計画に関して,岡村周一 「イギリスにおける計画許可に関する『関連考慮事項』」『法学論叢』120巻4∼6号 (1987年)171頁以下,参照。 9)前提問題及び違法性の抗弁については,J・リヴェロ・前掲書108頁255頁。この問/
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』② 93 る。指導スキームに関してはコンセイユ・デタはなおも躊躇したものであった。 ③カヌ夫人判決においても,公益性宣言に対してなされた訴えの支えとして指 導スキームの違法性を承認することは,公益性宣言が指導スキームの執行手段 ではないといういい方によって拒否されたのである。同様に,この文書の展望 的性格すなわち精確な規範よりも方向づけを定めるというその任務は,建築許 可とか分画許可がそれの執行手毅であると考えないことによって限定されるの である。ただし,違法性の抗弁は両立性の義務の認められるところでは,当然 に成り立つということにもなる。 最後に,コンセイユ・デタのやや消極的な姿勢を示.すものとして,つぎのよ うなことが指摘されている。まず,コンセイユ・デタは,都市計画法典L. 122−1条よりむしろL.123−1(R,122−20条によって補完されている)を根拠 とすることを選んだ。前者は,指導スキームの対象および射程をより詳細に定 めているが,後者はずっと簡潔であるのにである。L.122−1条が指導スキーム は『基本的な』方向づけを定めるものと決めているのであるが,L 123−1条は この実質を削除している。このことは,両立性の概念が指導スキームの方向づ けをすべて見ながら検討されなければならず,基本的な方向づけだけを見れば すむのではないことからするとこの概念の機能を実質には減じることとなるか もしれない。また,⑥アンドル農業会議事件判決の理由(considerant)は, 両立性の観念の射程を認定するための基準(directive)を行政および下級の裁 ユリ 判所に与えるほど具体的ではないともいわれる。 3 おわりに わがくににおける基本計画との関連で わがくににおける基本計画なるものの法的統制ないし法的機能については, \題は,早くから刑事裁判など他の裁判所の統制との関連で検討されている。兼子仁 『現代フランス行政法』(有斐閣・1970年)とくに73頁以下。阿部・前掲書124頁以下。 10) しかしながら,③カヌ夫人事件判決によって採用された公式は,防御のさいに,援 用された違法性の抗弁を排除するものではないということをみておく必要がある。 但し,両立性の義務があるときにしか違法性の抗弁は意味を持たないことになる。 RICARD, op. cit. 11) RICARD, op. cit.
裁判のレヴェルでそれが登場しないことから,十分につめた議論はないのであ るが,この点に関わる判決がないではない。下笙ダム建設に関する事業認定無 効確認訴訟(いわゆる蜂の巣城事件)において,東京地裁昭和三八年九月一八 ユ 日判決は,事業認定の前段階における多目的ダム建設基本計画の欠敏につき 「起業者が主たる目的である洪水調節事業としてのダム建設が急を要すると判 断した場合に後日特定用途の利水事業者との間で基本計画の内容となるべき事 項について折衝がまとまった上で多目的ダムとして発足させる含みでダム法第 二七条による途を残しておくことも己むを得ない場合があるものと解すべく, ………ュち違法なものと考えられない………基本計画の欠如を理由とする原告 等の主張は本件の場合採用できない」とした。特定多目的ダム法四条は,「建 設大臣は,多目的ダムを新築しようとするときは,その建設に関する基本計画 を作成しなければならない」(一項)として;おり,そこに定めるべき事項(二 ・三項),作成・変更手続(四・五項)などを比較的詳細に定めている。にも かかわらず基本計画の欠如は違法性を導かないとしたのである。そして,本件 事業認定につき,土地収用法二〇条二・三号を覇束事項,同四号を裁量事項と したうえで,事業認定は違法ではないとしている。 山村弁護士は,この判示につき「多目的ダム法で計画する以上,治水のみの 計画で発電の利水計画が固まっていないため基本計画がたてられず,発電効果 の不確定な事業計画のみで事業認定を申請するのは,法の目的,計画体系から みても違法性があるのではなかろうか。右判決は不備,不当であるが違法でな う いとするが疑問である」と批判しているが,正当であると思われる。 多目的ダム法には,策定されるべき基本計画と他の行為との内容的関連性な いし相互拘束性に関する定め(「整合性の原則」もしくは「両立性の原則」)が なかったことから,あるいは,計画過程といった意識もなかった時代の判決で あったことから,この判決もこの論点だけについてみれば,さほど批判される 1) 行政事件裁判例集14巻9号1575頁 2) 山村恒年「現代行政過程論の諸問題」ao)『自治研究』61巻3号(1984年)71頁。
『フランスにおける基本計画と行政訴訟』② 95 べきものではないかもしれない。しかし,本稿では詳論を避けるが,計画が当 該事業の全体像なり概要なりを示し,それに基いて行政過程が進行していく以 上,基本計画と齪酷を来す事業進行は合理的な理由がなければ,本来認められ ないはずである。ましてや,法が要求しているにもかかわらずそれが作られて いない場合には,事業自体が認められるべきでないといえなければならないで 3) あろう。計画策定の手続一般に関する統制も,わがくににおいては,学説での 4)強調にもかかわらず,判例上目に見える形になっておらず,とくに取消まで認 5) めたものはほとんど見当たらない。 最後に,わがく・にの計画法制においても「整合性の原則」で総称される規定 6) をもつものが少なくない。ところが,例外的な場合を除いて,これの法的議論 などはほとんどないのが現状である。フランスにおいては,両立牲の原則にそ の法的意味を与えようとする議論から出発し,裁判においてなお制約はあるも ののそれに具体的意味が認められてきたという経緯がある。このことからする と,フランスとわがくにでは相違があるため具体的法状況の個別的分析および それと裁判的統制・裁量統制論の一般理論との関連性という大きな検討課題は あるがわがくににおいても,この「整合性の原則」ないしは「両立性の原則」 3)換地計画と仮換地指定処分の関係などにつきわがくにでも若干の判例があり,計画 の欠鉄が単行の処分の違法を導かないとするものもある。具体的事実関係において は,このような結論もありえようが,これを計画一般に関する原則とすることはでき ないであろう。これについてもここで詳細を論じることはできないので,さしあた り,近藤昭三「判例評釈」『判例廻報』951号156頁,小高剛『判例評釈』998号157頁 参照。 4) この点につき拙稿「判例解説」『判例地方自治』27号(1987年)37頁参照。 5) 農地買収計画については,利害関係のある農地委員会補助員が関与して定めた未墾 地買収計画を無効としたものでがある。千葉地裁昭和32年5月28日判決・判例時報 116号10頁。また,ごみ焼却場建設計画について仮処分に関する判決で計画策定手続 の違法性が認められている。徳島地裁昭和52年10月7日判決・判例時報864号38頁。 都市再開発の権i利変換計画策定における法定外の事実上の措置に由来する違法性に基 づく手続上の細疵の可能性を認めたものとして,東京地裁昭和60年9月26日判決・判 例時報1173号26頁。これについてはさしあたり拙稿・前掲注4)「判例解説」参照。 6)芝池・前掲論文(「行政計画」),千葉勇夫「行政計画」・金子=広岡=山本編『行 政法』上(法学書院・1974年)所収197頁など。最:近のものでは山村・前掲論文が「行 政計画調査」の問題としてこの点に関わる議論を展開している。
7) について今後議論していく意味はありそうである。そしてこれを手掛かりとし て,これまで法的な射程に十分に入ってこなかった基本計画の検討も可能とな ろう。 前号訂正 25頁3行目 28頁3行目 35頁11行目 36頁17行目 39頁26∼28行 正 形式論理でもって のみならず 国道158号線 1975年 「本件デクレ∼である」に 下線を付する。 誤 形式論理であって のみならば 国道185号線 1575年 7) この点,山村・前掲論文(9)『自治研究』61巻2号99頁が「行政計画調査」に関連し て「行政計画に対する訴訟については,初期の判例は処分性や原告適格を肯定してい たが,最高裁の判決の否定的解釈以来,各種の行政計画の処分性は否定される傾向に ある。/しかし,将来判例の変更の可能性も考えられ,また,現在においても,住民 訴訟や民事訴訟の前提問題として,また,後続行政処分に対する抗告訴訟の先決問題 として,もしくは国家賠償訴訟において計画調査の合理性が審査されているので,こ の問題の検討の必要性は十分に存するといえよう」と述べているのは,本稿の観点か らも妥当する指摘である。