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43 Yamanashi Nursing Journal Vol.10 No.1 (2011)

足浴における皮膚保湿度の経時的変化に関する検討

Alteration in Skin Moisturization Rate During a Foot Bath

森本美智子

1)

,押領司 民

2)

,成島 美里

2)

,大村 美央

2)

,田辺 文憲

3)

MORIMOTO Michiko, ORYOJI Tami, NARUSHIMA Misato, OOMURA Mio, TANABE Fuminori

要 旨

本研究は,足浴による皮膚保湿度の変化に関する基礎資料を得るために,健常人を対象とし足浴を行った 後の皮膚保湿度の経時的変化を検討した。被験者は平均年齢 31.5 ± 9.1 歳の男女 20 名であった。足部の皮膚 水分率の測定は足浴前・足浴後に足底部と足背部をモイスチャーチェッカー MY-808S を用いて 10 分毎に 1 時間測定し,足浴前後にバイタルサインを測定した。 皮膚水分率の測定の結果,足底部では足浴実施前 29.3 ± 1.3%に対し,足浴直後は 26.2 ± 1.3%であり有意 な低下がみられた(p < 0.01)。一方,足背部の足浴直後の皮膚水分率は 33.0 ± 0.9%と有意な上昇がみられた(p < 0.01)。足底部は 60 分を経過しても足浴前の皮膚水分率まで回復しなかったが,足背部は足浴前の皮膚水分 率に回復した。血圧・脈拍は足浴後やや低下し,体温はわずかに上昇がみられた。これらの結果より,皮膚 の乾燥や皮膚角化を予防するために,足浴後に皮膚保湿のケアをする必要性が示唆された。 キーワード:足浴,皮膚,保湿度 Key Words:Foot Bath, Skin, Moisturizer

資 料

Ⅰ.はじめに

足浴は,足部の清潔を保ち,足部の保温や血液循環の 促進および不眠防止の効果が期待できる日常的な看護ケ アである。疾病の状態により入浴が制限されている長期 臥床患者は,毎日の入浴ができないため清拭により清潔 を保持されている。しかし,足部は靴下などを除去する と足部皮膚の乾燥・落屑がみられ,足部皮膚の清潔を保 持することが困難である。皮膚機能には外界からの刺激 を防ぎ,細菌やウイルスなどから守る生体防御機能があ り,皮膚組織自体の組織の水分が勝手に失われないよう に保つバリア膜を持たねば生存は不可能である1)。つま り,皮膚は乾燥防止のための角層の柔軟性や水分保持を する保湿機能がある。皮膚保湿に関しての先行研究では, 高齢者は特に皮膚の保湿に関係しているセラミドの減少 により皮膚は乾燥しドライスキンを生じやすく,高齢者 の 95%がドライスキンを伴っていたという報告がされ ている2)。また,高齢者の入浴前後の皮膚水分量は入浴 前後とも「乾燥」を示し,入浴後の値に回復するのに数時 間を要していた3)ことが報告されている。 足浴の先行研究においては,高齢者の睡眠障害による 足浴の効果4) 5)やがんの化学療法による嘔気軽減効果6) およびにがりを使用し水分含有量が増加し鱗屑も減少し た事例報告7)や足浴による収縮期血圧の低下,心拍数増 加や体温上昇など自律神経への効果8)などが報告されて いる。足浴の皮膚保湿度に関しては,皮膚と入浴の関係 を調査3)9)した研究は報告されているが,足浴後の足部 の皮膚保湿度を経時的に調べた研究はほとんどされてい ない。そこで,足浴前後の皮膚保湿度の検証を行うため に実験を行った。

Ⅱ.目的

足浴による皮膚保湿度の変化に関する基礎資料を得る ために,健常人を対象とし足浴を行った後の皮膚保湿度 の経時的変化を検討した。

Ⅲ.方法

1. 研究対象 受理日:2011 年 8 月 9 日

1) 兵庫県立大学看護学部:University of Hyogo, College of Nursing Art & Science

2) 山梨勤労者医療協会共立高等看護学院:Yamanashi Wage Workers Medical Care Society, Kyoritsu Nursing School 3) 山梨大学大学院医学工学総合研究部:Interdisciplinary

Graduate School of Medicine and Engineering, University of Yamanashi

(2)

森本美智子,他

44 Yamanashi Nursing Journal Vol.10 No.1 (2011) 被験者は研究同意の得られた,健康な 20 歳から 47 歳 (平均年齢 31.5 ± 9.1 歳)の男女 20 名の協力を得て行っ た。 2. 実験期間 2009 年 7 月∼ 8 月。 3. 実施場所 A 看護学院看護学実習室および B 大学感染実験室で 実施し,室温は 25 ± 1℃,湿度は約 70%であった。 4. 実験方法 1) 足浴方法 被験者に背もたれのついた椅子に座ってもらい行っ た。足浴用のベースンを用いて,踵から約 10 ∼ 15 ㎝の 足首まで浸かるように湯を 5L 準備し,湯温を 38 ± 2℃ に調節した。足部を 5 分間浸した後,ガーゼを使用して, 足底,足背,指間,踵部を 5 分間(片足 2 分 30 秒ずつ) 洗浄・マッサージした。足浴後,素早く滅菌ガーゼとタ オルで水分をふき取り除去し,タオルで足部を覆った。 2) 足部の皮膚保湿度測定 足部の皮膚保湿度の測定は,モイスチャーチェッカー MY − 808S(スカラ株式会社)を使用し,足背部,足底 部の 2 箇所を測定した。測定部位は同一部位を測定する ように測定部位(右足の足底第 3 指関節付近,足背動脈 触知部)にマーカーで印をつけて同一部位を 3 回測定し た。皮膚保湿度の測定時間は足浴実施前,足浴実施直後, 10 分,20 分,30 分,40 分,50 分,60 分後に測定した。 皮膚水分率は実験結果の平均値±標準誤差(mean ± SE) %を皮膚保湿度として示した。 3) バイタイルサインの測定 足浴前および足浴直後に血圧,脈拍,体温(テルモ社 製の電子体温計)を測定した。数値は平均値±標準偏差 (mean ± SD)で示した。 5. 分析 得られたデータはエクセル 2009 に入力し,分析は SPSS17.0 J for Windows を用い Wilcoxon 検定を行った。 危険率 5%未満を統計学的に有意とした。 6. 倫理的配慮 本研究は,山梨県立大学研究倫理審査委員会の承認を 得た上で実施した。被験者には研究者が書面を用いて研 究の趣旨・方法・プライバシーの保護と守秘義務の遵守, データの保管と研究終了後に消去,自由意思による研究 参加,研究辞退による不利益がないことについて口頭と 書面を用いて説明し,研究協力の得られた人に同意書に 署名してもらい承諾を得た上で行った。

Ⅳ.結果

1. 足背部・足底部における足浴前後の皮膚水分率の 経時的変化 足浴前後の皮膚水分率データは数値を平均値±標準誤 差(SE)を百分率(%)で示した。図 1 に示したように, 足底部における足浴実施前の皮膚水分率は 29.3 ± 1.3% であったが,足浴実施前と比較すると足浴直後に足底部 の皮膚水分率は 26.2 ± 1.3%(p < 0.01)と急激に低下し, その後皮膚水分率は 10 分後に 26.0 ± 1.6%(p < 0.01) と低下し,30 分後 27.2 ± 1.6%(p < 0.05),60 分まで 26.9 ± 2.0%(p < 0.05)と低下が継続していた。 一方,足背部の皮膚水分率は足浴実施前 29.8 ± 0.9% に対し,足浴直後の皮膚水分率は 33.0 ± 0.9%(p < 0.01) と急激な上昇がみられたが,足浴後 10 分後には 29.9 ± 0.8%と皮膚水分率の低下がみられ,30 分後 29.4 ± 0.9%, 60 分後には 29.3 ± 0.9%であった。足底部は 60 分を経 過しても,足浴前の皮膚水分率に回復しなかった。しか し,足背部の水分率は足浴直後に上昇し,10 分後に足 浴前のレベルまで低下した。足背部と比較したところ, 足底部の方が皮膚水分率は低かった。 2. 足浴前後のバイタルサイン変化 足浴実施前後のバイタルサインの比較を図 2 に示し た。足浴実施前において,収縮期血圧値は 112 ± 12.4 mmHg,拡張期血圧値 69.8 ± 10.1mmHg,脈拍数 71.4 ± 8.6 回/分,体温は 36.5 ± 0.4℃であった。 足浴実施直後のバイタイルサインは,収縮期血圧 105 ± 11.4 mmHg,拡張期血圧値 69.8 ± 10.8mmHg,脈拍 数 69.4 ± 7.7 回/分と足浴前と比較すると収縮期血圧値 は 7.1 ± 5.7mmHg(p<0.01), 拡 張 期 血 圧 値 は 4.4 ± 5.4mmHg,脈拍は 1.95 ± 5.7 回/分と軽度の低下傾向 を示し,体温は足浴後 36.7 ± 0.4℃と足浴前と比較し 0.2℃とわずかに上昇がみられた(p < 0.05)。 図 1  足底・足背部における足浴前後の皮膚水分率の経 時的変化 n=20,値は 3 回測定し,平均値±標準誤差(%)で示した。 * および **;足浴直前の皮膚水分率との比較 **P<0.01 *P<0.05 ** ** ** ** * ** * 34.0 33.0 32.0 31.0 30.0 29.0 28.0 27.0 26.0 25.0 皮 膚 水 分 率 % 直前 直後 10分 20分 30分 40分 50分 60分 時間(分) 足底 足背

(3)

足浴における皮膚保湿度の経時的変化

45 Yamanashi Nursing Journal Vol.10 No.1 (2011)

Ⅴ.考察

皮膚保湿度において,足底部では足浴直後に急激に低 下し,足背部では足浴後に上昇していたことが特徴的で あった。その後 10 分後から皮膚の水分率が約 20%台と 足浴前の水分率に回復しなかった。スカラ株式会社にお ける肌の水分率測定部位別実験データ(社内データ)によ ると顔面・目尻・前腕内部を測定したデータは部位によっ て異なるが,ドライ肌の基準は 額やや下では 37%以下, 目尻 40%以下,前腕内部 37%以下としている。しかし ながら,同社では足部を皮膚水分率測定したデータは存 在せず,上記データから推測すると足浴後 10 分後から の足底・足背部の保湿度は 20%台と低下したことは水 分が蒸発し,皮膚が乾燥(ドライ肌)したのではないかと 考える。田上らは「角層の水分含有率が減ると,皮膚の 表面は目に見えない亀裂や細かい鱗屑が増えて,ざらざ らとした感触を生じてくる」と述べている1)。また,中 野の研究結果によると高齢者の入浴前後の皮膚水分量を 上腕内側および後頚部で経時的に 3 時間後まで測定した 結果,入浴前に皮膚は「乾燥」傾向で入浴直後に皮膚水分 量は高値を示したが,その後 3 時間以上入浴前の状態に 回復しなかったと報告している3)。これらの結果は,足 浴後の皮膚保湿の経過ではないが,本実験とほぼ同様な 結果が得られた。 皮膚の汗腺は手掌,足底,腋窩に多くに存在する10) 足浴により一時的に皮膚保湿は保たれたが皮膚水分率が 急激に低下した原因は気化熱により,水分が蒸発するの ではないかと推測する。 手荒れのメカニズムは皮脂膜がはがれ,その下の角質 水分が蒸発によって失われ,皮膚が乾燥状態から落屑な どを引き起こし,また,汗腺などがふさがり,細菌が付 着し易くなる11)と考えられている。足浴も手と同様に 足部の皮膚角質層の水分が失われ,皮膚の乾燥状態が続 くことにより,皮膚のバリア機能は損なわれるのではな いかと推察された。人の体の 70%は水で構成されてお り,皮膚の乾燥を防ぐ保湿機能の視点から組織の水分が 勝手に失われないように保つバリア膜がない場合の生存 は不可能である1)。今回の実験の結果から,明らかに皮 膚水分含有率が低下しており,乾燥の皮膚の処置には, 皮膚水分率が低下する前に,足浴直後に水分を十分拭き 取った上で保湿クリームなどを使用して保護するべきで あると考える。 次に足浴実施前・実施直後のバイタルサイン数値を比 較したところ,足浴前後で比較すると血圧,脈拍ともに 減少していた。これらの結果は,西田が報告した足浴後 には血圧および心拍数は緩やかに低下したこと12)と同 様な結果であった。血圧に対する影響は,皮膚血管拡張 により末梢血管抵抗が小さくなり血圧が低下するといわ れている13)。体温については西田が行った実験でも同 様に「深部温は上昇した」12)と報告している。これらは本 研究においても同様な結果が得られた。入浴においては, 温熱刺激により中温浴・微温浴では副交感神経が優位に なり,心拍数の減少・血管拡張・血圧低下など精神的に リラックスさせる効果をもたらせる13)と報告されてい る。今回の実験で足浴を実施したことにより,血圧,脈 拍数は低下傾向を示した。これらの結果から,交感神経 の興奮が抑制され,副交感神経を介した鎮静効果が得ら れる可能性を示唆した。 実験に当たり皮膚角質層表面の保湿度を測定したが, 角質層の内面の水分率を比較するには今回の器械では限 界があったため,今後は表面温度との関係や通電率測定 により水分の蒸散率を測定した上で,皮膚の乾燥状態を より細かく検証する必要がある。また,皮膚の保湿度測 定は暑い夏の期間に行ったため環境を一定にする冷房の 温度調整には限界があった。今後は乾燥の多い冬の時期 の皮膚保湿度を測定する必要があり,足浴後の効果的な ケアを検証する必要があると考えた。

Ⅵ. まとめ

足部の皮膚水分率については,足底部では足浴直後か ら低下がみられ,足背部では足浴直後は上昇し,10 分 後に足浴前のレベルまで低下したことがわかった。皮膚 の乾燥や皮膚角化を予防し,バリア機能を保持するため には,足浴直後に水分を十分にふき取り,保湿クリーム などを用いて足浴後に皮膚の保湿をする必要があると思 われた。

謝辞

本研究を遂行するにあたり,足浴実験に快く参加協力 をいただいた被験者の皆様に心から感謝申し上げます。 本研究は,筆者らが第 10 回山梨大学看護学会学術集 会で発表した報告をまとめた14)。 図 2 足浴前後のバイタルサインの比較 n=20,値は平均値±標準偏差(%)で示した。 0 20 40 60 80 100 120 140 前 後 前 後 前 後 前 後 収縮期血圧 (mmHg) 拡張期血圧 (mmHg) 体温 (℃) 脈拍 (回/分) *P<0.05 **P<0.01 ** * n=20

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森本美智子,他

46 Yamanashi Nursing Journal Vol.10 No.1 (2011) なお,本研究は文部科学省科学研究費基盤研究(C)の 助成を受けて行った。 文献 1) 田上八郎,沼上克子(2000)角層の保湿メカニズムとバリア機能 を め ぐ っ て  ア ト ピ ー 肌, 敏 感 肌 と の 関 連 を め ぐ っ て. FREGRANCE JOURNAL,臨時増刊:2-10. 2) 原正啓,加藤泰三,渡辺真理子,他(1991)高齢者の xerosis. 皮 膚病診療,13(3):211-213. 3) 中野雅子(2009)高齢者の入浴後の皮膚の油分・水分の回復プロ セスと皮膚乾燥蛍光に関する研究.京都市立看護短期大学紀要, 34:75-81. 4) 藤岡真実,朝野房世,森愛,他(2009)睡眠障害のある高齢者の 足浴の効果と実験方法の検証.日本認知症ケア学会誌,8(3): 403-411. 5) 高山直子,岡崎寿美子,中山栄純(2007)施設入居者に対する就 寝前の足浴導入が睡眠に及ぼす効果.日本看護技術学会誌,6 (1):48-53. 6) 新田紀枝,阿曽洋子,葉山有香,他(2008)がん化学療法による 蔓延性嘔気に対する足浴後のマッサージ効果.がん看護,13(1): 84-89. 7) 岡島佳代子,楽山真理,高橋夕美,他(2006)高齢者の足浴にに がりを用いた水分含油量の変化 3 例の事例を通して.日本看 護学会論文集:老年看護,36:127-129. 8) 香春知永(1998)足浴ケアが生体に及ぼす影響.看護実践の根拠 を問う.南江堂, 東京, 1-10. 9) 戸 田 淨(1994)入 浴 の 乾 燥 作 用 と そ の 予 防.Digest of Dermatology:13, 7. 10)上野賢一(2002)皮膚科学.第 7 版,金芳堂,京都,18. 11)久家智子,高森スミ, 明良(1992)手指消毒剤による手荒れと その対策.感染症誌, 22(6):266-269. 12)西田直子(2006)清潔ケアのエビデンス−足浴と生体反応−.実 践へのフィードバックで活かすケア技術のエビデンス(深井喜 代子監修).へるす出版, 東京,77-90. 13)岡田淳子(2006)清潔ケアのエビデンス−入浴・清拭−.実践へ のフィードバックで活かすケア技術のエビデンス(深井喜代子 監修).へるす出版, 東京,65-76. 14)森本美智子,押領司民,成島美里,他(2010)足浴における皮膚 の保湿度の経時的変化 第 10 回山梨大学看護学会学術集会抄 録,山梨大学看護学会誌,8(2):46.

参照

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