PDCAサイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究 : 「情報リンク」と「生産活動の階層化」を基礎として
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(2) 14. (210). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). のリンク」を意味する.このように工場の生産. れ に よ れ ば TPM は「人 を 活 か す・人 が 活 き. 活動を樹形図にして「四つの情報リンク」に照. る」活動とまとめられ,人に焦点をあてた取り. らしてチェックした上で問題となるリスクの大. 組みであることを示唆している.木村ら(2006,. きさを把握して対策を講じる.本論文ではこの. 33 頁)は TPM とマネジメントの関係につい. 方法を一般化し設備保全のモデルとして実際の. て研究しており,それによれば,TPM の活動. 工場の 2 つの事例で適応性を評価した.. はロスを低減してメリットをあげる活動と言及. 2 設備保全に関わる先行研究. した.千住(1987)によれば故障ゼロを謳うこ の活動は,品質の組織的な活動である TQC と. 事故やトラブルを防止するとともに工場の生. 相乗効果を発揮してきた.このように評価が高. 産性の向上や品質向上させるためには設備保全. い TPM であるが,優れた組織的な活動であっ. 活動 が 重要 と な る.中嶋(2009, 8 頁)に よ れ. たからこそ,その進め方が明確に規定され,コ. ば設備保全に関わる技術は基本的に「企業の体. ストをかけることが出来なくなった際に,限ら. 質改善」 「人の体質改善」 「設備の体質改善」の. れたコストの範囲でどの部分を優先させ,ど. 3 つから成っている.設備保全活動に関わる書. の部分の優先度を下げるかの見極めが難しい.. 籍や文献を調査すると同様のことを述べてお. TPM のエッセンスを抽出して,それに代わる. り, 「企業の体制」 「人」 「設備」に関わる部分. ものを造り出そうとしても難しい.TPM には. が大きいことがわかる. 「企業の体制」は「組. 互いに学び合いながら組織の能力を向上させて. 織的な活動」と関連が深く, 「人」は「スキル」. いく側面があることから,例えばヘラー,藤本. や「知識の移転」と関連が深い. 「設備」は個々. (2007, 298─299 頁)の示す「組織間学習の好循環. の設備に応じた専門保全技術があり,技術の幅. を生むための最低 3 つの条件」が参考になる.. が広いが,その設備を支えて生かしているのは. それは「学習する組織」であること,「指導能. 人の「スキル」や「知識移転」ととらえること. 力」と 指導動機 の 存在,「評価能力」の 存在 の. もできる.そこで設備保全の研究に関わる先行. 3 つである.ここでいう「学習する組織」の定. 研究 を「組織的 な活動」 「スキル」 「知識移転」. 義は「知識を生み出すのみならず組織の内外に. の 3 点から順に概説する.. 存在する知識を取得し,それを組織能力に統合 できる組織」である.この考え方を TPM に活. 2―1 「組織的な活動」. 用できる.. こ の 活動 に 米国生 ま れ の PM(Productive Maintenance) ,日本プラントメンテナンス協会の. 2―2 「スキル」. 提唱 す る TPM(Total Productive Maintenance) ,. 設備保全 の ス キ ル は,た と え ば「振動診. 日 本 生 ま れ の TQC( Total Quality Control). 断」,「触診による温度チェック」,「裸眼での油. がある.PM は 1950 年代にアメリカで確立し. チェック」などは個人差が大きい1).遠藤(2009,. た.その方式は保全員とオペレーターの役割が. 165 頁)は「現場力」という概念を導入して現. 明確で設備のトラブルが起こってもそれはオ. 場が強いこと,これが日本企業の強さの秘訣で. ペレーターには責任がなくすべて保全員の責. あると述べた.特に装置産業などでは装置のメ. 任となる,というものであった.日本の方式. ンテナンスは競争力の根幹であるとしている.. は TPM が有名だが,1971 年にアメリカの PM を 参考 に し て 確立 し た(中嶋,1992, 28 頁) . TPM では責任は全員にある.中嶋(2009, 2 頁) は TPM の歴史について詳しく述べており,そ. . 1)経験によって能力が開発される分野で,た とえば保全技能士資格試験などはこの経験を問う 試験となっている..
(3) PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場). (211). 15. 近年,これを外部委託してしまって,その強み. 「異常を感じとる能力」の獲得は重要なもので. を低下してしまった企業も多い.現場における. あ る が,「知的熟練」は 産業構造(加工組立産. 技術熟練の移転,それも個人から個人,個人か. 業や装置産業などにおける働き方)によってそ. ら組織への技術熟練の移転は今の日本において. の発現が異なっており,その整理が望まれる.. 強く望まれる研究といえる.. 以上述べてきたことをまとめると,保全技術. こ の 観点 で 山本(2004, 118 頁)は 若 い 保全. は技術の伝承が重要で,その意味で「個人」の. 担当者がベテランの技能をどのように引き継い. 能力を「組織」の能力に知識移転し,それを自. でいくかを「熟練技能伝承のシステム」を作り. 在に「個人」や「組織」に移転する仕組みが重. ながら概説した.技能修得レベルと研修の体系. 要である.この意味で日本の設備保全活動は非. を 丁寧 に 解析 し,a)師弟関係 を 作 る,b)師. 常に有用な方法であり,これまで成果をあげ続. 匠の技を盗ませやらせてみて評価する仕組みを. けてきた.次章では,この有用な設備保全活動. 作る,c)企業として,社内の技能伝承システ. の中で中心となる TPM 活動に焦点を絞って述. ムを確立する,という結論を得た.しかし成長. べる.. が鈍化している今の日本企業において師弟関係 を作りながらじっくりと育てていく余裕はな. 3 TPM をベースとした日本企業の設備保全活動. い.. 日本の設備保全活動は TPM が有名で,多く の企業がこれを導入してきた.この活動は人の. 2―3 「知識移転」. スキルに立脚し,系統だった運転や改善を実施. この項目については,この分野だけで膨大な. する.故障ゼロ,ロスゼロを掲げる取り組みは,. 項目となって多岐にわたる.野中・竹内(1995,. 設備保全を中心にした取り組みで,現場のオペ. 90─109 頁)は 知識移転 を 4 ス テージ と し て と. レーターと設備保全担当員がともに問題を解決. らえ, 形式知と暗黙知の移転の仕方を考察した.. するために,様々な活動を実施する.設備を管. M. Polanyi(1966, pp. 23─25)は 暗黙知 と 形式. 理下におくための取り組みは多岐にわたる.現. 知の本質について解析し,Leonard and Swap. 場のオペレーターと設備保全担当員ともに,ど. (2004, pp. 56─63)は異常を感じ取る知覚につ. こかで故障があれば,その原因を徹底的に調べ,. いて「Deep Smart」と定義して考察した.畑. 同じような箇所の事故の予防に役立てる.両者. 村(2005, 76─85 頁)は「四 つ の 情報 リ ン ク」. によって設備の故障履歴は詳細に把握され,設. について記載し,知識のリンクによって失敗を. 備リストは膨大な数の設備をランク分けして管. かなり防止できるとした.しかし「四つの情報. 理する.トラブルを予防するための活動も豊富. リンク」だけでは設計まで遡って知識移転を考. で,設備保全担当員は設備の振動,音,温度を. えることが難しくなる.仲(2006, 118 頁)は逆. 測定したり,潤滑油や油の状態を調べたりもす. に「階層コントロール」を IT ツールなどを利. る.オペレーターによるパトロール(自主点検). 用して強化することを提案した.この場合,設. も活発で設備保全担当員によるパトロール(専. 計業務はうまく知識移転できるが, 保全業務は,. 門点検)とは見る視点が異なるものの,設備に. 主体が技能であるため知識移転は容易ではな. 異常がないかどうかに気をくばる.定期的に現. い.両方を網羅することが出来る仕組みが必要. 場のオペレーターと設備保全担当員が会議を持. である.すなわち両者の理論の統合である.知. ち,日々の情報を共有化する.. 識の統合ということでは小池(1999, 12─16 頁). 中嶋(2009, 10─22 頁)に よ れ ば,企業 の 体. は「知的熟練」で「異常を感じとる能力」につ. 質改善として「8 本柱による役割分担」が重要. いて述べている.設備保全活動にとってはこの. で,それぞれの職場や担当者の分担を決めて展.
(4) 16. (212). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 開 し, 「TPM 展開 プ ロ グ ラ ム の 12 ス テップ」. キルマップ 4)」の作成などがツールとしてある. に従ってステップ方式で展開することが示され. が, 「個人」から「個人」 , 「個人」から 「組織 」,. ている.その他にも「生産効率を阻害する 16 大ロス」の考え方や「自主保全展開の 7 ステッ プ」などの進め方が言及されていて,TPM を. 「組織」から「個人」への知識移転の観点から は理論的に十分には整理されていない.. 推進する会社では,どの会社もコアの部分で似. 4 最近の日本企業の事故. たような経過をたどる.進めていくうちに活動. こ れ ま で 設備保全活動 の 流 れ を 概説 し て,. は工場内で一体化していき,どんどん前へ出て. TPM 活動が優れたものであることを述べてき. やっていくような風土も醸成されていく.専門. た.最近の企業の事故などに鑑み,トラブルを. に工場の保全に携わる人だけではなく,一般事. 防止するという観点からいったいどのような部. 務員,OA 担当者,流通担当者などにまで活動. 分が弱体化してきたのであろうか.それを検討. は広がり,ほとんどの人が共通の目的のために. するために設備保全活動の失敗をひとつの失敗. 行動するようになる.各所でいろいろな形で発. 事例としてとらえ,以下の観点から失敗の本質. 表会が開催され,発表する人がどんどん模範と. を探ることとした.. なり,次に続く人が啓蒙される.そのような活. 中尾(2007, 42─55 頁)は 失敗 の 原因 を 以下. 動のため,組織を高いレベルで維持・管理して. の 10 種類に分類した.①「無知」②「不注意」. いく必要がある.トップマネジメント層,社員,. ③「手順の不順守」④「誤判断」⑤「調査・検. パート社員を含む全員参加の取組みが活動の本. 討の不足」⑥「環境変化への対応不良」⑦「企. 質であり,多くの組織が関わりながら一人ひと. 画不良」⑧「価値観不良」⑨「組織運営不良」. りが高いモチベーションを持って,設備の理解. ⑩「未知」で,⑩以外は番号が大きくなるにつ. や運転の理解や改善活動を行うもので,このこ. れて高度な判断ミスとなる.また,①から⑤ま. とが「学習する組織」としての性質を示してい. では個人に起因する原因で,⑦から⑨は組織に. る.第一ステップは工場であるが第二ステップ. 起因する原因,⑥と⑩は個人とも組織ともいえ. は R&D 部門や販売,財務,人事,企画などの. ない原因となる.畑村(2005)は違った観点か. 部門にまで広げていく.このように「学習する. ら失敗の原因を調査して人や組織の失敗は「四. 組織」として高度に機能する TPM であるが,. つの情報リンク」に関係するものが重要である. この活動のどの部分がどのように優れている. と し た.(a)「過去 の 情報 リ ン ク」(b)「見 え. か,コストをかけられない状況で海外などに移. ないリンク」 (c) 「途中変更のリンク」 (d) 「手. 転する場合にはどう知識移転に関わればよいか. 配遅れのリンク」の 4 点となる. 「過去の情報. などについてはモデル化や理論化が進んでいな. リンク」とは過去において生じた類似の事故が. い部分がある.TPM は「知識移転」を重要な. 再び生じること,「見えないリンク」とはたと. テーマとしている.たとえば, 「ワンポイント. えば設計変更などで実施した事がらが思わぬ形. レッスンシート2)」の作成や「カット断面サン. で別の個所に影響すること,「途中変更のリン. 3). プル 」の製作,個々人の能力を可視化する 「ス . 2)設備や関連する事柄についてのノウハウな どをまとめた 1 枚のシート.これを作成すること で他者の教育資料になるだけではなく自らも能力 開発される. 3)設備の一部を金ノコなどで切り出して,断 面が見えるようにしたサンプル.内部の細かい機. . 構がわかるような仕組みになっている.金ノコを 使うことで,保全マンとしての道具を扱う技量が 磨かれ,長期間取り組みことで設備のからくりを 体で覚えることができる.作製の過程で 5S などの 躾も醸成される. 4)各人の技能や技術のレベルがわかるように したレベル表やそれに類した図..
(5) PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場). (213). 17. 表 1 四つの情報リンクと失敗 10 の原因と関係 四つの情報リンク. 失敗 10 の原因. 内 容. a)過去の情報リンク. ①無知 ⑤調査・検討の不足. 「過去の事例を十分に 調べていない」. b)見えないリンク. ①無知 ④誤判断 ⑤調査・検討の不足 ⑥環境変化への対応不良 ⑦企画不良 ⑧価値観不良 ⑩未知. 「予想もしていない事態」 「従来の方法の踏襲」 「思いこみ」. c)途中変更のリンク. ③手順の不順守 ⑥環境変化への対応不良. 「作業変更」 「外注先変更」. d)手配遅れのリンク. ④誤判断 ⑧価値観不良 ⑨組織運営不良. 「判断ミス」 「コスト削減」 「手間を嫌がる」. 出所:畑村(2005)および中尾(2007)を参考に著者作成. ク」とは進行中の事がら途中で変更した際に影. 含めた.(d)「手配遅れのリンク」:判断ミス,. 響が生じること, 「手配遅れのリンク」とは上. コスト,手間を嫌がる,などで手配が遅れるこ. 述の変更に際して何らかの理由で手配が遅れ影. とを理由に④「誤判断」⑧「価値観不良」⑨「組. 響が生じること,などがあげられる.. 織運営不良」を含めた.. 本研究の調査によれば中尾の 10 種類の失敗. 世界 の 失敗事故 を ま と め た 事例集(中尾,. の原因は②以外は大部分が畑村の「四つの情報. 2005)を解析すると大部分が四つの情報リンク. リンク」の中に含まれる.それによると(a) -. で原因を整理することが出来る5).. ①⑤,(b)-①④⑤⑥⑦⑧⑩, (c) -③⑥, (d). 最近の企業に生じているトラブルは,上記に. -④⑧⑨となる.表 1 にこれをまとめた結果を. 示した「四つの情報リンク」が起点となり,企. 示す.. 業の置かれている状況が失敗の起こりやすい状. (a) 「過去の情報リンク」 :過去の事例を十分に. 況へと変化しつつあるためではないだろうか.. 調べていないことを理由に①「無知」と⑤「調. 既にいくつかの企業でコストと手間がかかるが. 査・検討の不足」を含めた. (b) 「見えないリ. 優れた効果を発揮してきた TPM 活動を継続す. ンク」 :担当者が予想もしていなかった事故が. ることが困難な状況になっている.「四つの情. 引き起こされることを理由に①「無知」⑤「調. 報リンク」を含む様々なエラーが生じやすい状. 査・検討 の 不足」⑥「環境変化への対応不良」. 況になっている.これを改善することは,単に. ⑩「未知」を含め, さらに担当者に「思いこみ」. 失敗をなくすだけではなく,工場の生産性の向. や「従来の方法の踏襲」があったとして,④「誤. 上や品質向上させるための問題解決にもつなが. 判断」⑦「企画不良」⑧「価値観不良」を含めた. (c) 「途中変更のリンク」 :作業が変更になった り外注先を変更したりすることを理由に③「手 順 の 不順守」⑥「環境変化 へ の 対応不良」を. . 5)課題と解決策を明確化出来ない場合もある. たとえば現状の技術では分析不可能な品質エラー などの場合は明確化出来ない..
(6) 18. (214). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). る.これは TPM 活動を継続して実施する余裕. 図は課題と解決策が階層的に配置されているの. がなくなった企業への一つの解決策にもなり得. で,樹形図上で近接する項目は同じ課題に対し. る.. て派生する複数の解決策となる.近接する項目. 以上述べてきた観点から直接 TPM 活動の代. の解決策の数が限定されていることでチェック. わりにはならないものの, 「四つの情報リンク」. 過程において相互にリンクしやすくなる.この. を可視化のツールとして利用することは情報を. 相互リンクが樹形図利用の主たるメリットとな. 広くカバーしてトラブルの防止につながると考. る.この部分が欠けると効率的な樹形図の利用. えた.さらに,工場の生産性向上,品質向上な. が難しくなる.. どの課題解決にもつながる.工場における生産. 一般的に設備保全にかかわる樹形図の階層構. 活動を「洩れ」 「ダブリ」がなく「四つの情報. 造を考えると,「安定生産」を第一階層とした. リンク」の視点でチェックしたい.工場の活動. 場合,これに続く第二階層として「生産管理」,. は後述するように,いろいろな階層構造を持っ. 「設備」,「品質」,「環境保全」,「安全」,などの. ている.多岐にわたる階層構造の項目をチェッ. 活動がリストアップされる.第二階層から第三. クするには,解決策を具体化するためのロジッ. 階層へのつながりを見てみると図 1 に示すよう. クツリーを利用すると便利な場合が多い (野口,. にまとめられる.本論文では図を簡略化するた. 2001, 101─108 頁) .. めに活動をキーワードでしか示していないが,. 5 設備保全の樹形図の考え方とその応用. それぞれが課題(上流側の階層)と解決策(下 流側の階層)となっている.ここでキーワード. 4 章で工場の生産活動において「四つの情報. は「~を維持・改善して効果をあげる」と読み. リンク」を含む様々なエラーが生じやすい状況. 替える.. になっている可能性について触れた.この「四. このようにして活動を樹形図として階層化. つの情報リンク」をチェックするためには人や. し,その活動を維持・改善して成果をあげるた. 組織の能力に負うところが大きい.人や組織の. めの課題と解決策を網羅して,この中から失敗. 能力に関しては,2 章において「スキル」や「知. の要因を探し出す.一連の取り組みが,事故や. 識移転」が重要であると述べた.保全技術は技. トラブルを防止するとともに工場の生産性の向. 術の伝承が重要で,その意味で「個人」の能力. 上や品質を向上させる仕組みとなるようにした. を「組織」 の能力に知識移転し, それを自在に 「個. い.そこで樹形図としての「活動の階層化」に. 人」や「組織」に 移転 す る 仕組 み が 重要 で あ. よる見える化と「四つの情報リンク」による見. る. 「四つの情報リンク」と「スキルや知識獲. える化を組み合わせてみることにした.すなわ. 得」を念頭において,工場の生産活動の仕組み. ち,4 章で述べた失敗の要因である(a)「過去. を「活動」 , 「編成」 , 「方法」に 関 し て PDCA. の情報リンク」 (b) 「見えないリンク」 (c) 「途. サイクルでチェックする必要がある.これを限. 中変更のリンク」(d)「手配遅れのリンク」の. 定された人員で限定された期間内に実施するた. 4 点と結びつける.. めには,工場の生産活動を見える化することは. 一般的に「品質」の下の階層には「品質管理. 有意義であろう.その見える化のためのひとつ. 基準」,「品質維持管理教育」,「品質保証」,「効. の手法として,活動の項目を階層化した樹形図. 果測定」,などが存在する.「設備」の下の階層. (ロジックツリー)を作成することを検討した.. に は「設備設計管理基準」 ,「設備管理維持教. 見える化によって効率的にグループワークによ. 育」,「補修履歴」,「設備点検」などが存在する.. る工場の生産活動の仕組みを PDCA サイクル. いまここで,優先順位を検討した結果,「品. でチェックすることが出来るようになる.樹形. 質」が重視しなければいけない項目と決まった.
(7) ����. 品質. 設備. ����. �準�. 品質��. ���品質��. 品質��. 品質��管��� 品質管�基準. ����ト. ����� �����. 設備��. 設備�� 設備��管��� 設備設�管�基準. ���産. 品質質. 効��� 品質�� 標�� 品質�� 社��品質�報. 設備�報. ����� 小����. 設備��. �����. 品質��管�教育 品質管���. 設備. 設備設�管���. 設備��管�教育. ����. 品質. 効果�� 品質�� 標準化. 社内�品質�報. 品質��. ��. 品質�持���育 品質���準. ���検. ����ト. ���報. ���議� �����. ���持���育. ���計���準. 出所:千住(1987)を参考に著者作成 . 図 1 仮想的な樹形図の構造変化の一例(品質重視). 19 (215). PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場).
(8) 20. (216). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). とす る.こ の 場合,少人数,比較的短時間で,. 計管理基準」,などを作る.最も一般的な構造. 「品質」 という活動 (品質を維持・改善する活動). である.職場構成図を示す図でもあるので,活. を重視しながら表 1 に示した切り口で全体の活. 動と職場が直接結びついている. . 動をチェックすることになる.. ②「品質」の下の階層に「設備」の階層を設け. この場合,生産に関わる「活動」のチェック. る(図 1 中段):. となる.そのために焦点が絞りやすくなるよう. 「品質」の 下 の 階層 に「品質維持管理教育」,. に活動の範囲が限定されていた方がよい.いか. 「品質管理基準」,と並べて「設備」の項目を設. に「品質」と「対象」とを強く関連づけて効率. けて,この下に「設備維持管理教育」,「設備設. よくチェックできるかが重要となる. 「四つの. 計管理基準」,などを作る.「品質」に係る活動. 情報リンク」をチェックするために,新たに自. を列挙した第三階層の中に「設備」が同じ階層. 由に変更可能な「仮想的な樹形図」を設けてみ. として混在するので,やや違和感がある.. ることは有効であろう.この仮想的な樹形図は. ③「品質」の 2 つ下の階層に「設備」の項目を. 仮想的で短期的な存在であり,チェック時のみ. 設ける(図 1 下段):. 成立する階層構造となる.図 1 に示す階層構造. 「品質」の下の階層の「品質保証」の下の階. であれば「ダブリ」や「抜け」がないので望ま. 層に「設備」の項目を設けて,この下の階層. しい.しかし, 「四つの情報リンク」の視点で. に「設備維持管理教育」,「設備設計管理基準」,. 現在の「活動」 , 「編成」 , 「方法」などをチェッ. などを作る.品質だけのために設備があるの. クしながら PDCA をまわしていくことを考え. かという誤解が生じかねない構造といえる.. た場合,図 1 上段に示した基本構造はいわば職. しかし千住(1987, 128 頁)によれば TQC など. 場構成図を示す図であり,項目が多く,メリハ. の取り組みを進める企業の場合,品質活動の下. リがないため,後述の図 5 で示す「リンク探し」. の階層に設備保全活動が位置することも珍しく. が実施しにくく十分に目が行き届かない不安が. はなく効果的な場合もある6).. 残る.教科書的にまとめられた樹形図構造の活. ③,②,①の順に「品質」と「設備」の配置. 動を狙って PDCA をまわしてチェックした場. が見た目に遠くなり,「課題」と「解決策」の. 合,膨大な項目に対して人,モノ,金が不十. 因果関係が直接結びつきにくくなり可視化しに. 分で,結果として何ら PDCA がまわっていな. くい.反面,広い視点で見ることが出来る.①. い事態になりかねない.たとえば「異物混入」 ,. ②③のどの構造に決めるかはその企業が置かれ. 「製造不良」 , 「雑菌汚染」 , を防止したいならば,. ている状況と PDCA をまわしていく人材の構. 仮想的にしてもそれぞれを重点的に課題(上流. 成や質によっても違ってくる.. の階層)と解決策(下流の階層)とを関連づけ. 上記に述べた多岐にわたる仮想的な樹形図の. て PDCA サイクルできる構造にする必要があ. 活動を(a)「過去の情報リンク」(b)「見えな. る.「異物混入」, 「製造不良」 , 「雑菌汚染」は. い リ ン ク」(c)「途中変更 の リ ン ク」(d)「手. 「設備」に起因する部分が大きいので,これら. 配遅れのリンク」の 4 つの観点でチェックして. の項目が課題と解決策としてうまく結びつけら. いく.重要なのは樹形図のさまざまな項目を必. れるような構造を狙うことになろう. この場合,. ずこの 4 つの観点に照らしてチェックしていく. 以下に示す 3 種類の構造が考えられる.. ことである.. ①「品質」と同じ階層に「設備」の項目を設け る(図 1 上段) : 「品質」と同じ階層に 「設備」の項目を設けて, この下の階層に「設備維持管理教育」 , 「設備設. . 6)たとえばトヨタ車体では昭和 50 年代後半か ら,品質第一とする TQC 活動の下に TPM 活動を 展開し効果をあげた(千住,1987, 135 頁) ..
(9) PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場). (217). 21. 特 に b)の「見 え な い リ ン ク」は 多 く の 項. 最後に何が原因となったかを解析した.以下こ. 目を有機的に統合して考えなければいけない.. の順番で記載する.. 「見えないリンク」を発見するためには多方面 の知恵を集める必要がある.本論文の冒頭で. 6―1 概 要. 「プ ラ ン ト や 製品設計 の こ と を よ く 知って い. 2004 年 8 月 に 発生 し た 美浜原子力発電所 の. て,多方面に気がつく人材がいたならより効. 事故は配管が減肉し,破損して噴出した蒸気に. 率的にトラブルのリスクを減らせた」と記し. より 5 人が亡くなり,7 人が火傷による怪我を. た.これは主として「見えないリンク」に気が. 負うものであった.この配管は 29 年間使用し. つく能力の高い人を想定している.畑村(2005,. たもので,減肉は流量測定用のオリフィスの下. 84─85 頁)はトヨタ自動車の CE(チーフエン. 流側 50 センチに生じていた.乱流が引き起こ. ジニア:7 万人の中で十数人しかいない)たち. した摩耗腐食でほとんど薄皮一枚の状態になっ. が,車作りの過程のすべての項目に対して複合. ており,配管が圧力に抗しきれずに破裂し蒸気. 的な能力を有していると述べている.このよう. が噴出した.. な能力の本質を探ることは容易ではないが,さ. アメリカで発生した有名なサリー原子力発電. まざまな形状の仮想的な樹形図が頭の中に入っ. 所 の 死亡事故(1986 年)も まった く 同様 の 原. ていて,種々の項目の関連を照らすことが出来. 因で生じていた.このサリー原子力発電所の事. れば,「見えないリンク」に気付く能力を向上. 故のあと,関西電力は 1990 年に管理指針を作. できるであろう.. 成しオリフィス付近の配管を点検対象として追. その他の(a) 「過去の情報リンク」 (c) 「途. 加した.加えて三菱重工㈱に美浜原子力発電所. 中変更のリンク」 (d) 「手配遅れのリンク」に. の配管の点検計画の作成を依頼し,三菱重工㈱. 関しては仮想的な樹形図を丹念に精査すること. は点検計画を作成した.この点検計画書は 2 箇. でチェックできる.仮想的な樹形図を意識して. 所の配管の点検が洩れていた(そのうちの一つ. これの改造や構造変化を手掛けることで, (a). が死亡事故につながった).その後,関西電力. 「過去の情報リンク」 (b) 「見えないリンク」 (c). の子会社の日本アーム㈱が三菱重工㈱から配管. 「途中変更のリンク」 (d) 「手配遅れのリンク」. 点検業務を引き継ぐことになる.その際に,三. の 4 つの観点でチェックするための機会と能力. 菱重工㈱は後で判明した 2 箇所の配管の点検洩. を得ることが出来ると考えられる.次章におい. れについて日本アーム㈱に伝え,厚さを測定す. て仮想的な樹形図の利用について検討する.. べきと提言した(1999 年と 2000 年).日本アー. 6 トラブル解析における仮想的な樹形図の利用. ム㈱はしばらくこの問題を放置した後,美浜原 子力発電所の点検計画を 2003 年に関西電力に. 本研究の対象が設備の保全に関する研究であ. 提出,配管に点検漏れがあったことを関西電力. ることを考慮し,設備保全に関係が深い美浜原. に伝えた.しかし関西電力は彼らの意見をすぐ. 子力発電所の事例を取り上げ,これまで述べて. には採用しなかった.2003 年 12 月にようやく. きた「四つの情報のリンク」と「情報の階層化. 関西電力は翌年(2004 年 10 月)の計画に配管. 構造(樹形図) 」に関する考え方を整理する.. の点検を繰り入れたが,点検の 2 ヶ月前(2004. 美浜原子力発電所の事例の解析方法として,. 年 8 月)に事故が発生した.. まず概要を記し,次に失敗の原因を「四つの情 報リンク」をベースに解析する.この場合,情. 6―2 四つの情報リンクとの関係. 報リンクを可視化するために「情報の構造」を. 次 に 美浜原子力発電所 の 事例解析 の た め に. 整理 し「情報 の 関連性(リ ン ク) 」を 調 べ た.. 「情報の関連性(リンク)」を見る.今回の事故.
(10) 22. (218). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). の第一番目のリンクは「過去の情報リンク」に. 図にして可視化した場合,樹形図は設備の見直. 関わるもので,アメリカのサリー原子力発電所. しやフロー変更などを通して変化する.結果と. の配管減肉事故の事例を十分に伝承できなかっ. して「階層構造」と 「 四つの情報リンク 」 は相. た点にある.同じ事故を自らのものとして伝承. 互に影響し変化しながら改善していく.常に最. できなかった.二番目のリンクは「見えないリ. 新データや失敗事例を反映して変化させて「活. ンク」で,流量測定用のオリフィスと下流の配. 動」,「編成」,「方法」な ど に 関 し て PDCA が. 管の減肉の関係である.今回の見えないリンク. 働くことにする.樹形図の構造が「安全」を重. は材料工学の専門家にとってはよく理解されて. 視した形状に変化させた一例を図 2 に示す.一. いる事例である.しかし一般的なエンジニアは. 般に「品質」を重視する構造の場合は通常の製. この情報を持っていない.この「見えないリン. 造業が該当し,安全を重視する構造の場合は運. ク」をいかに組織全体に伝承するかが重要なポ. 輸業,医療機関などが該当する7).. イントとなる.第三のリンクは「途中変更のリ. まずこの仮想的な樹形図が美浜原子力発電所. ンク」で,三菱重工㈱は点検業務を関西電力の. の事例解析における「四つの情報リンク」をど. 子会社である日本アーム㈱に引き継いだが,こ. の よ う に「活動」,「編成」,「方法」に 関 し て. の際,重要情報の伝承がスムーズにおこなわれ. PDCA チェックに利用出来るかを検討する.. なかった. 確かに伝承自体はされているのだが, その重要性を伝えきれなかった.このように委. 6―4 「過去の情報リンク」. 託会社などが変更になった場合の情報の伝承の. アメリカのサリー原子力発電所の配管減肉事. 阻害は致命的なものとなりかねない.第四のリ. 故の事例を十分に伝承できなかった点である. ンクは「手配遅れのリンク」で,関西電力は配. が,これを改善するためには,いかにトラブル. 管を点検すべきであるという日本アーム㈱の報. 事例を探し出して実装置の保全に役立てている. 告書を受け取ったにもかかわらず実際のアク. かがポイントとなる.図 2 の第三階層の「トラ. ションは遅くなった. この原因のひとつとして,. ブル解析」は「安全」や「設備」と「課題/解. 点検業務を実施するためには原子力発電所を停. 決策」との関係で直接つながっていないので,. 止しなければならず,この停止が膨大な利益損. トラブルを「総論的」にとらえてしまう危険性. 失につながることがある.1 日の停止で数千万. がある.安全のトラブル,品質のトラブル,環. 円の損失になる.計画的な点検時期以外の点検. 境保全のトラブル,オペレーションのトラブル,. に二の足を踏んだ.もうひとつの理由は,関西. 天災によるトラブルなど,多岐にわたり,膨大. 電力の組織構造が完全な縦割り構造となってお. な時間があるのでない限り,工場に人的余裕も. り,適正な計画というものは常に遅れる傾向に. 少ない状況ではうまく「安全」や「設備」と関. あったことがあげられる.. 連付けられない.仮想的な樹形図の構造として は「設備」の 下 の 第四階層 に「設備 ト ラ ブ ル. 6―3 循環サイクルと PDCA. 事例」があると「トラブルの事例」と「設備」. 前節で述べた事故解析結果をまとめると以下. や「安全」とを「課題/解決策」のつながりとし. のようにまとめられる.事故の原因を考える場 合に「四つの情報リンク」を考えることが第一 であるが,この場合,活動が階層化していると 可視化しやすい.通常はプラントが構成される 際に 活動 の 階層構造は出来ているが,樹形図 の形で整理されていない.この階層化を樹形. . 7)品質重視であるか安全重視であるかは業務 の質のよって異なる.製造業では商品をお客様の ところまで届けることが第一で,商品は所定の品 質を持っていて,スピーデイに届けられなければ ならない.列車などの場合は,安全に,所定の時 間でお客様を移動させることが重要となる..
(11) PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場). (219). 23. 安�生産産 安全. 生産産管�. ��. ト���解析. ����ト. �全��� �����. ����. ����. ����管���. ����管���. 出所:千住(1987)を参考に著者作成 . 図 2 仮想的な樹形図の構造変化の一例(安全重視). て強化できる.この状況を図 3 に示す.. 要情報の伝承がスムーズにおこなわれなかっ た.このように何か重要な部分で変更点があっ. 6―5 「見えないリンク」. た場合にその変更点の情報が伝わるべきところ. 流量測定用のオリフィスと下流の配管の減肉. に伝わってなければ事故に繋がりやすい.仮想. の関係であるが,仮想的な樹形図では「設備」. 的な樹形図ではこれを「仕組み」の中の項目と. と「設備トラブル事例」を近い個所に置いた.. してとらえて, 「安全」の下の第三階層および. これによって「設備点検」 「設備トラブル事例」. 第四階層に「仕組み」を設けて仕組みに起因す. 「保全会議・小集団活動」 「設備情報」 「設備維. る「途中変更のリンク」に気がつきやすいよう. 持管理教育」な どが「課題/解決策」としてつ. にした.この状況を図 6 に示す.同じ「仕組み」. ながり, 「見えないリンク」に今まで以上に気. という名前の活動であっても,「安定生産」を. がつきやすい構造に変化した.この状況を図 4. 支える全体の「仕組み」と位置づけるか, 「安. および図 5 に示す.仮想的な階層で近い位置に. 全」のための「仕組み」と位置づけるかで内容. おかれた活動は見える化されていて,図 5 に示. が異なる. 「ダブリ」であるからダメだと単純. す有機的なリンク探しが容易に出来るようにな. に考えずに,異なった「仕組み」の活動を配置. る.. したととらえる必要がある.. 6―6 「途中変更のリンク」. 6―7 「手配遅れのリンク」. 三菱重工㈱は点検業務を関西電力の子会社で. 関西電力は配管を点検すべきであるという日. ある日本アーム㈱に引き継いだが,この際,重. 本アーム㈱の報告書を受け取ったにもかかわら.
(12) 24. (220). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月) 安�生産産 安全. 生産管�. ��. ト�ブル解析. ����ト. ����. ��ト�ブル��. �全��� �����. ����. ����管���. ����管���. ㏣ຍ㡯┠ 出所:千住(1987)を参考に著者作成 . 図 3 仮想的な樹形図の構造変化の一例(項目追加) 安��産産 安全全 �� ����. �����. �全��� �����. ����ブ���. ����. ����管���. ���計管���. 䝸䞁䜽᥈䛧 出所:千住(1987)を参考に著者作成 . 図 4 仮想的な樹形図の構造変化の一例(リンク探し).
(13) PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場). 䝫䞁䝥䛾䜹䝑䝖᩿㠃䝃䞁䝥䝹. ���������������� �����䚷㻌������� ����� �������� ��������. ����������� ���䠈������� ��� ������� �������. ������������� ���������������. ����������. ����. ���������� � ������ �� ��� ���������������. ���������� ��������� ��������. �������� � �. ����. ���������䠈��䠈���������� ��������� �� ���������� �����������. 出所:著者作成 . 図 5 カット断面をもとにしたリンク探しの一例. 安�生産産 安全. 生産管�. 仕組み. ��. 仕組み. 仕組み. ����ト. �全��� �����. ����. ����. ����管���. ����管���. 出所:千住(1987)を参考に著者作成 . 図 6 仮想的な樹形図の構造変化の一例(仕組み強化). (221). 25.
(14) 26. (222). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). ず実際のアクションは遅くなった.このように 重要な部分で「手配遅れ」があった場合にその. 7 これからの設備保全活動に向けてのモデル化. 手配遅れの情報が伝わるべきところに伝わって. 7―1 これからの設備保全のモデル化に向けた. なければ事故に繋がりやすい.仮想的な樹形図. 取組み. ではこれを「仕組み」の中の項目としてとらえ. 6 章において「優先順位」「階層」「四つの情. て, 「気がつきやすい」ようにした.状況は「途. 報リンク」の 3 者を循環サイクルしていくこと. 中変更のリンンク」と同様である.. で PDCA サイクルを循環させ保全技術を高い. 「四つの情報リンク」に潜む見えないリンク. 状態に置けるとの期待を持った.. を検出するための監視は頻度よく実施される必. Plan は方針を決めて方針を展開し,Do は「活. 要がある.既に述べたように企業のシステムは. 動 の 階層化」を 実施 し,Check で「四 つ の 情. ISO 活動に見られるように情報の整理と管理は. 報リンク」と「階層化」をチェックし,Action. 得意ではあるが,実際に PDCA をうまく回す. で「四つの情報リンク」と「階層化」を相互に. ことは不得意な面がある.このためには樹形図. 改善し,マネジメントレビューして Plan に循. をベースとした PDCA サイクルをうまくまわ. 環した.それぞれの内容と Plan,Do,Check,. すことが必要となる.. Action の 4 つの項目とを結合して「見える化」. PDCA サイクルのうち,Plan は方針を決め. し た 図 を 図 7 に 示 し た.Plan は「優先順位」,. て方針を展開し,Do は「活動の階層化」を実. Do は「階層 コ ン ト ロール」,Check は「情報. 施し,Check で「四つの情報リンク」と「階層化」. リンク」,Action は「階層コントロール」に相. をチェックし,Action で「四つの情報リンク」. 当 す る.設備 に 係 る 場合,「Plan」か ら「Do」. と「階層化」を相互に改善し,マネジメントレ. に向かうところが「設計」に相当し,「Check」. ビューして Plan に循環する.サイクルの起点. から「Action」に向かうところが「補修」 「改善」. である Plan を明確にするために何が重要なの. に相当する.. か,何を重視するのかという「優先順位」を定 めることが必要となる.この優先順位は「品質」. 7―2 モデルの適用. と「コスト」とのかねあいで決定されるのが一. これまで述べてきた「活動の階層構造」と「四. 般的である.品質,安全,環境保全,をどの程. つの情報リンク」をベースとした PDCA モデ. 度まで向上させるのかは重要な目標になる.. ルを使い,実際のトラブルを想定しながらトラ. 「優先順位」 「階層」 「四つの情報リンク」を. ブルを未然に防止する方法を検討する.. 循環サイクルさせて PDCA をまわす.設備を. まず,トラブルが起こっていない平時の状態. 設計する立場は「優先順位」 「階層」 「四つの情. で,班長研修や係長研修などの少人数で現状の. 報リンク」の順になりがちで,逆に,設備のメ. 階層構造(現実のものと仮想のものとの両方を. ンテナンスを実施する立場は「四つの情報リン. 含めて)を「四つの情報リンク」に照らして. ク」 「階層」 「優先順位」の順になりがちである.. チェックして問題となる危機を察知し「シナリ. 通常は設計者と保全担当者とではサイクルを何. オ」を作り,その「シナリオ」に従ったリスク. 度も循環させることは稀であるので,ここに「優. の大きさを把握して対策を講じる.そして実際. 先順位」 「階層」 「四つの情報リンク」の 3 者を. にトラブルが生じた際に瞬時に生かされる体制. 循環サイクルしていくことの意義がある.. にする. 図 1 の下段に示した図において第三階層の 「品質保証」の下の第四階層に「設備」がある. すなわち課題が「品質保証を維持・改善して効.
(15) PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場). ����������. ������. �� �� ������ ���� � ��. 27. ������. ����. ������ ���. ��� �� ������ ��. (223). ����� ��. �� ���. ��� ����. �����. �� ��� �� ����. ��. ������� ���������� �� �. 出所:畑村(2005),仲(2006)を参考に著者作成 . 図 7 PDCA サイクルの例. 果をあげる」ことであり,解決策が「設備を維. きた時点で「見えないリンク」の検討を実施す. 持・改善して効果をあげる」ことである.この. る.. 「課題/解決策」の因果関係を念頭におき,さら に, 「設備」の下の階層に続く「課題/解決策」. 第一として「過去の情報リンク」であるが, 「設備のトラブル事例」と「品質」との関係を. をリストアップする.. チェックすることで,過去に生じた設備起因の. 解決策をリストアップし,これを採用しな. 品質トラブルが検出できる.. かった場合のトラブルのシナリオと影響度の一. 第二として「途中変更のリンク」をチェック. 例を表 2 に示す.. する.ここでいう途中変更とは表 3 に示す多岐. 表 2 は 解決策 6)の 一例 し か 記載 し て い な. にわたる内容となる.一般的に「途中変更のリ. いが実際に PDCA を回す場合には,解決策 1). ンク」は工事や手配などの結果に生じると考え. から 13)までのすべての活動に関して同様の. がちであるが,実際には表 3 に示したように,. ことを実施する必要がある.. b)突発 ト ラ ブ ル で の 運転変更,e)原材料 の. このような過程を経たのち,残りの三つの情. 入手先変更,f)製品量 の 変更,i)状態 の 変化. 報リンク( 「見えないリンク」 「途中変更のリン. なども含まれる.. ク」 「手配遅れのリンク」 )を念頭に置いて表 2. 第三として「手配遅れのリンク」をチェック. に示す活動をチェックする.ここで 「見えない. する.この場合の手配とは「途中変更のリンク」. リンク 」 は文字通り,工夫しないと見えないリ. でリストアップした項目が利用できる.. ンクであるので,順番としては,まず「途中変. 第四として「見えないリンク」をチェックす. 更のリンク」と「手配遅れのリンク」のリンク. る.表 2 及び表 3 は設備についてまとめている. について検討をおこない,活動内容が可視化で. が,これをベースに,お客さまに製品を届ける.
(16) 28. 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). (224). 表 2 解決策とこれを採用しなかった場合のトラブルのシナリオと影響 課題に対する解決策. 「過去の情報リンク」 解決策を採用しなかった場合のトラブルのシナリオ(例). 影響(例). 1)仕組みを維持・改善する. 省略. 省略. 2)設備点検を維持・改善する. 省略. 省略. 3)補修履歴を維持・改善する. 省略. 省略. 4)保全カレンダーを維持・改善する. 省略. 省略. 5)材料リストを維持・改善する. 省略. 省略. 6)設備トラブル事例を維持・改善する. ・電源が停止して液が未処理で系内に滞留 ・滞留時聞が 3 時聞を越えて雑菌汚染 ・脱脂粉乳に毒が混入 ・ブレードが破断し金属片が混入 ・バルブパッキン劣化し混入 ・配管が腐食して水混入 ・センサー異常で成分不足. ・中毒 10 人超 ・中毒 100 人超 ・中毒 1000 人超 ・クレーム回収 ・クレーム回収 ・異臭クレーム ・クレーム. 7)重要設備リストを維持・改善する. 省略. 省略. 8)保全会議 小集団活動を維持・改善する 省略. 省略. 9)設備情報を維持・改善する. 省略. 省略. 10)設備維持管理教育を維持・改善する. 省略. 省略. 11)設備設計管理基準を維持・改善する. 省略. 省略. 12)設備管理体制を維持・改善する. 省略. 省略. 13)設備維持管理方針を維持・管理する. 省略. 省略. 出所:著者作成. 上で何か抜けている部分がないかをグループ. 年,製造工程に新規製品 1 ラインを導入するこ. ワークなどで確認していくことが重要となる.. とになった.導入に際して,従来通り HACCP (Hazard Analysis Critical Control Point)を導. 7―3 事例によるモデルの検証. 入し,あらかじめ食品の原材料,製造工程およ. 7―3―1 モデルと事例. び流通において,安全性にかかわる危害の要因. 6 章において,美浜原子力発電所の事例を参. と可能性の大きさを特定し,その危害を防止す. 考にしながら,活動の階層化と「四つの情報リ. るための管理方法を定めた.製造,設備設計,. ンク」による PDCA チェックのためのモデル. 設備保全,品質管理,原料調達などに関係する. を作った.さらに 7 章では具体的なトラブルを. 者 5 名が集まって,トラブルの洗い出しを実施. 想定しながら PDCA チェックの方法を示した.. した.「異物混入」を防止する立場で議論を重. ここからは,このモデルが実際に機能するかど. ね た 際 に,「原料中異物」,「メーカー製造時洗. うかを検証するため, 「実際にトラブルを回避. 浄不良」,「バ ル ブ パッキ ン の 劣化」,「配管腐. 出来る設計につなげた事例」と, 「実際にはト. 食」,「膜破損による菌体混入」,「マグネット不. ラブルを回避出来なかったものの教訓を得た事. 良」などの危害を予想できた.. 例」の 2 つの事例を解析する.. 通常であれば新ラインの追加に関しては終了. 7―3―2 L社の事例(トラブルを回避出来る設. であるが,L社ではこれに加えて,試験的に同. 計につなげた事例) L社 で は 固形乳製品 を 製造 し て い る.2009. じ 5 名のメンバーによる情報リンクのチェック も実施することとした.工場運営上の仮想的な.
(17) PDCA サイクルをベースとした安定的設備保全活動に関する研究(馬場). (225). 29. 表 3 解決策に対する「途中変更のリンク」 ・ 「手遅れのリンク」のチェック 課題に対 する解決策. 働き方の変化と仕組みの関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と仕組みの関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と仕組みの関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と仕組みの関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と仕組みの関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と仕組みの関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と仕組みの関係. a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 働き方の変化と設備点検の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と設備点検の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と設備点検の関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と設備点検の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と設備点検の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と設備点検の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と設備点検の関係. a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備変更と補修履歴の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と補修履歴の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と補修履歴の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と補修履歴の関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と補修履歴の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と補修履歴の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と補修履歴の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と補修履歴の関係 設備変更とカレンダーの関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化とカレンダーの関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更とカレンダーの関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更とカレンダーの関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化とカレンダーの関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更とカレンダーの関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更とカレンダーの関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化とカレンダーの関係. b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備変更と材料リストの関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と材料リストの関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と材料リストの関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と材料リストの関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と材料リストの関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と材料リストの関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と材料リストの関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と材料リストの関係. b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 働き方の変化とトラブル事例の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更とトラブル事例の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更とトラブル事例の関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化とトラブル事例の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更とトラブル事例の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更とトラブル事例の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化とトラブル事例の関係. 重要 設備リストを維持・改善 する . 7) a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備変更と重要設備リストの関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と重要設備リストの関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と重要設備リストの関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と重要設備リストの関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と重要設備リストの関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と重要設備リストの関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と重要設備リストの関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と重要設備リストの関係. 出所:著者作成. b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 12). チェックすべき内容 設備変更と小集団活動の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と小集団活動の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と小集団活動の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と小集団活動の関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と小集団活動の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と小集団活動の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と小集団活動の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と小集団活動の関係. a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備変更と設備情報の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と設備情報の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と設備情報の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と設備情報の関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と設備情報の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と設備情報の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と設備情報の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と設備情報の関係. b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備変更と設備教育の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と設備教育の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と設備教育の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と設備教育の関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と設備教育の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と設備教育の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と設備教育の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と設備教育の関係. 11) a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備変更とトラブル事例の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 「途中変更のリンク」及び「手配遅れのリンク」 a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える. 10) a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える. 設備変更と設備設計基準の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と設備設計基準の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と設備設計基準の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と設備設計基準の関 係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と設備設計基準の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と設備設計基準の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と設備設計基準の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と設備設計基準の関係. a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備変更と設備維持体制の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と設備維持体制の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と設備維持体制の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更 と 設備維持体制 の 関係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と設備維持体制の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と設備維持体制の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と設備維持体制の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と設備維持体制の関係. 13) a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 設備 設計管理方針を維持・改善 する . 設備トラブル事例を維持・ 改善する . a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える. 9). 設備 管理体制を維持・改善する. 材料 リストを維持・改善する. a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える. 8). 設備 設計管理基準を維持・改善 する . 保全カレンダーを維持・改善 する 6). 設備変更と設備点検の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 4) a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. 5). 設備変更と仕組みの関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 課題に対 する解決策. 設備 維持管理教育を維持・改善 する . 補修 履歴を維持・改善する. 3). b)突発トラブルでライン,設備,シーケンス,運転を切り替える. チェックすべき内容. 設備 情報を維持・改善する. 設備点検を維持・改善する. 2). a)工事などを実施してライン,設備,シーケンスを切り替える. 保全 会議 小 集団活動を維持・ 改善する . 仕組みを維持・改善する. 1). 「途中変更のリンク」及び「手配遅れのリンク」. 設備変更と設備維持方針の関係. c)人の配置,人数,要員の種類を切り替える. 働き方の変化と設備維持方針の関係. d)品質などの基準を変える. 品質基準変更と設備維持方針の関係. e)原材料の入手先を変更する. 原材料入手先変更と設備維持方針の関 係. f)製品量をスケールアップやスケールダウンする. 製品量変化と設備維持方針の関係. g)納品時期を変更する. 納品時期変更と設備維持方針の関係. h)製品設計を変更する. 製品設計変更と設備維持方針の関係. i)運転の都合で液体,固体,粉体の状態が変化する. 状態変化と設備維持方針の関係.
(18) 30. (226). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 2 号(2012 年 8 月). 活動を図 1 の下段の図をモデルとし,品質保証. 点検の遅延」,「製造部と設計部門の連携不. の下に設備に関わる活動項目をおいた.さら. 足」,などを洗い出すことが出来,適宜対応. に 図 3,図 4,図 6 に 示 し た 活動項目(「事例. を実施した.. の追加」「リンク探し」「仕組み強化」)を加え. ④ 「見 え な い リ ン ク」:専門 が 異 な る 5 名 の. た.この準備を経て,「四つの情報リンク」で. チームで議論する中でバルブの内面に使用. のチェックを実施した.. するゴムパッキンが,ある特定の条件での. ① 「過去の情報リンク」 : 「配管腐食」 , 「膜破損」. 洗浄方法で劣化が加速することを見出した.. の頻度や破損時期を洗い出すことが出来,適. これによって洗浄の頻度や方法,パッキン. 宜対応を実施した.. の材質を見直すことが出来,「異物混入」の. ② 「途中変更のリンク」 : 「仕組みにかかわる変. 危険を未然に回避できた.専門的な見地で. 更点」a)設備,シーケンスなどのルールに. の意見の共有(見えないリンクの防止)が. 変更がないか.b)トラブル時の対応に変. なければ見過ごしてしまうところであった.. 更がないか.c)人の配置にかかわる変更が. 以上の取り組みの結果,順調に新ラインは稼. ないか.d)品質の基準にかかわる変更点. 働を開始したが,特に大きな事故やトラブルが. が な い か.e)原材料 の 入手先 の 変更 が な. なかっただけではなく,安定生産を実現でき工. いか.f)製品量の変更はないか.g)納品. 場の生産性の向上や品質を向上させることが可. 時期 を 変更 し て い な い か.h)製品設計 を. 能となった.. 変更していないか.i)固体,紛体,液体の. 7―3―3 雪印乳業の事例(トラブルを回避出来. 状態が変化しないか,などの項目をチェッ. なかったが教訓を得た事例). クした.さらに, 「設備点検にかかわる変更. トラブルは 2000 年 6 月に関西地区で発生し. 点」 , 「補修履歴にかかわる変更点」 , 「保全. た.大規模 な 食中毒 で 最終的 な 患者認定数 は. カレンダーにかかわる変更点」 , 「材料リス. 13,420 と なった(小山,谷口,2007).2000 年. トにかかわる変更点」 , 「設備トラブル事例. 6 月 27 日,和歌山県 の 消費者 が 下痢 や 腹痛 を. にかかわる変更点」 , 「重要設備リストにか. 訴える食中毒の症状を雪印乳業西日本支社に届. かわる変更点」 , 「小集団活動にかかわる変. け出た.雪印乳業の営業担当者が現地に赴き問. 更点」 , 「設備情報にかかわる変更点」 , 「設. 題となった製品を試飲したが,異常を感じな. 備維持管理教育にかかわる変更点」 , 「設備. かった.翌 6 月 28 日,さらに苦情が増え,保. 設計管理基準にかかわる変更点」 , 「設備管. 険所からの指摘も受けて雪印乳業は食中毒だと. 理体制にかかわる変更点」 , 「設備設計管理. の 認識 を 持った.6 月 29 日 に 雪印乳業 は 大阪. 方針にかかわる変更点」 ,などに関して順次. 工場の低脂肪乳を含む大型容器ラインを停止. チェックを行った.. し,低脂肪乳 の 自主回収 を 実施,大阪工場製. その結果, 「固形乳製品を包む包装材の変. 造工程の調査,すべての原材料の分析を実施し. 更」 , 「バルブの種類の変更」 , 「施工業者の. た.しかし原因はすぐには判明しなかった.焦. 変更」 , 「定期点検の時期の変更」 , 「原料の. 点は大阪工場製造工程に集まり,当初は大阪工. 一部変更」 , 「原料調達先 の 一部変更」 , 「配. 場の製造ラインの不備によって黄色ブドウ球菌. 管の形状の変更」 , 「失敗した場合のリサイ. の毒素であるエンテロキシン A が発生したと. クル方法」 ,などに関して変更内容に心配な. 考えられた.しかし,大阪工場以外で製造され. 箇所があることがわかった.これらに関し. た製品からも被害が出たことから,事態は混迷. て適宜対応を実施した.. し た.8 月 18 日大阪府立公衆衛生研究所 は 雪. ③ 「手配遅 れ の リ ン ク」 : 「工事遅延」 , 「設備. 印乳業の北海道大樹工場で 4 月 1 日に製造した.
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