オ一ストラリアの言語政策の現在
28
0
0
全文
(2) 文学・芸術・文化 16巻 1・2合併号 2005.2. 思う. O. まず、言語政策をどのように考えるかは、大きな問題の残るところであ る オーストラリアにおいて政策は、何年度まで、に何パーセントを達成と O. いうように、具体的な数値に表れる形での目標を示してからしか予算がつ かず、実施に移されることはない。従って、政府は理念を公表するが、実 質はどのように実践されているかが問題になる。政府によって公表されて. p る理念は変わっていないが、予算が減額、もしくは廃止になり、政策が 実際には実践されないということもある。言語政策を政府によって示され た理念と判断するか、それとも、政府によって実践されている施行と判断 するかによって、見方が大きく異なってくる¥理念は公表されているの で分かりやすいが、施行は予算の配分を見たり、時によって変わる首相の 言動を見たりして、判断しなければならな~ ¥ 従ってそこには判断する者 0. の主観が混入することは免れな~ ¥ しかし、この方法によってのみ、実際 0. の言語政策を判断することが可能になると、私は思っている。さらに、 オーストラリアの言語政策を判断するのに困難な点がある. O. 言語政策のみ. でなく政策一般が頻繁に変更されることである。良く言うと、臨機応変で あるが、悪く言うと、長期計画に従って政策を決定しているのではなく、 その時の必要性に応じて政策や予算を立てているように見える. O. 従って、. 政策がすぐに変更され、政策を判断するのに長期的な観点に立ってみない と、判断を誤る恐れがある. O. 2 . オーストラリアの言語政策概観 オーストラリアは英語を母語とするアングロ・サクソン系のいわゆる オーストラリア人、先住民言語を母語とする全体の 2%を占めるアボリジ ニーと呼ばれる先住民、英語を母語としない非アングロ・サクソン系のい わゆる移民で構成されている. O. しかし、オーストラリア人とは、移民とは、. と具体的に定義しようとすると、そう単純ではない。アングロ・サクソン. -2-.
(3) オーストラリアの言語政策の現在 永田. 系であっても、最近オーストラリアに来て住み着いた移民もいるし、非ア ングロ・サクソン系であっても、何代もオーストラリアに住んで英語を母 語とする人々もいる. O. このような混乱があるにせよ、オーストラリアの言. 語問題を見ると、大きく分けて、国語である英語と英語以外の言語の問題 に帰着する o 2 0 0 1年の国勢調査の結果では、英語以外の言語を家庭内で 使っている割合は、 2 8 2万人、 15.8%に達する. o. オーストラリアにおいて. は、言語問題は教育、移民、外交、通商、労働等の国家の問題として、連 邦、州政府から政策として対処されている. O. 具体的には、英語 6の政策と. しては、. A . 成人オーストラリア人の英語教育 B. 成人移民の英語教育 C. 学校教育における英語教育 英語以外の言語の政策としては、. D. 通訳、翻訳と放送. E. 手話教育 F. 移民の母語保持 G. アボリジニーの母語保持 H. 学校教育における外国語教育 があげられる. O. A . 1成人オーストラリア人の英語教育」とは、母語でありながら、読 み書き能力に問題がある成人オーストラリア人の教育問題である。本来 オーストラリアは広大な天然資源に恵まれ、第一次産業に重点をおいてき たが、国家として工業化、産業化を推し進めるに当たっては、知的資源の 活用という意味で教育が重要になった時代を背景にしていると思われる. O. 現在も継続しているが、かつて知的専門職はイギリス人、アメリカ人に 頼っており、現在はアジア系の技術移民を多く受け入れている。. B . I成人. 移民の英語教育」とは、移民がオーストラリアに同化するのを推進するの. -3-.
(4) 文学・芸術・文化 1 6巻 1・2合 併 号 2 0 0 5 . 2. に必要な教育である. O. オーストラリアへの移民はかつてはアングロ・サク. ソン系で英語を母語とする移民、そして、東欧・南欧系のヨーロッパ言語. 9 7 0 年以降はアジア系を中心にヨーロッパ言語を母語 を母語とする移民、 1 としない移民と変化し、英語への同化の問題がおこる。. c .I 学校教育にお. ける英語教育」とは、 1 9 8 7年に国家語と認定されたオーストラリア英語の. E n g l i s h 学校教育である。英語を母語とする学童に対する英語教育と ESL: a saSecondLanguage (英語を第二言語とする学習者に対する英語教育) に分類される。 ESLも移民として最近オーストラリアにやってきた学童の ための ESLと留学生やワーキング-ホリデーでやってきた外国人に対する. ESLに分けられる。 D.I 通訳、翻訳」とは、英語を母語としない移民に対 して、移民省を通じて警察、病院等の官庁において通訳、翻訳サービスを 行い、オーストラリアでの生活推進のための援助を行っている. O. 公共放送. S p e c i a lB r o a d c a s t i n gS e r v i c e ) は、非英語母語話者に対して、ラ 局 SBS ( ジオ、テレビでの多言語放送を行っている。外国語のテレビ番組では英語 の字幕があり、当該外国語話者のみでなく、まさに多言語にわたる話者を 対象にしている. O. 英語と英語以外の言語との橋渡しという中間的な問題で. 手話教育」とは、聴覚障害者に対して、手話言語 AUSLAN ある o E. I. 0 0 1年の国勢調査 ( = A U s t r a l i a nS i g nLANguage) の普及を行っている o 2. , 2 9 3人の話者がいる o F. I 移民の母語保持」とは、正規の学校教 では、 3 e t h n i c 育以外に、連邦政府と州政府の財政的援助を受けて、民族学校 ( schooI)において英語以外の言語教育を行っている。主に、移民の子弟の アボリジニーの母語保持」とは、 ための母語保持を目的としている。 G. I 先住民アボリジニーの母語保持をさす。白人の到来時に、約2 00ないし 250 の言語があったと言われるが、その後、言語の数は激減し、現在、その数. 0 0になってしまった。しかも、その 1 0 0の言語の中で、日常生活で使 は約 1 0くらいと言われる。 われていて、子供達も習得している言語の数はわずか 2 白人による殺裁、病気の蔓延等による人口減少、さらに、同化政策の元、. -4-.
(5) オーストラリアの言語政策の現在 永田. ミッション内での英語への母語の転換がアボリジニーの言語減少の理由で ある。 1 9 9 4年の国勢調査では、アボリジニーの 80%が英語を、 3%が英 語との混交言語を話し、わずか 14%が母語を話している。 H .I 学校教育 における外国語教育」とは、初等・中等教育は州政府の管轄であり、州に. L a n g u a g e sO t h e r よ っ て 状 況 は 異 な る 。 一 般 に 外 国 語 教 育 を LOTE( ThanE n g l i s h ) と呼んでいる ている州もある. O. 全ての小学生に LOTEの学習を義務付け. O. このように見てくると、オーストラリアにおける言語政策は移民、先住 民とどう関り合うか、国家として、どのような政治指針で生きていくかと いう文化面、経済面、政治面の問題と直結するものである 7。具体的には、. a i n s t r e a m (主流 ) 8と呼ばれるア 英語の普及とは、大多数勢力であり、 m ングロ・サクソン系の人々の文化・言語に対する移民・先住民の同化を目 的とするものであり、英語以外の言語の普及とは、移民・先住民の文化・ 言語を許容し普及しようという、多文化・多言語主義を目的とするもので ある。. 3 . 言語政策の過去の歴史 言語政策の歴史を概観すると、 1 9 7 0 年代以前は、アボリジニーや移民 に関しては、オーストラリアに対して同化を求めるという政策のため、白 豪主義の元、英語オンリーの言語政策が前提とされていた。その流れが大. 9 7 0 年代から広がった多文化主義の流れに沿う きく変わりだしたのは、 1 N a t i o n a lP o l i c yo nL a n g u a g e s ) が、オーストラリアの国 もので、 NPL( 家レベルの言語政策として、具体的に実施されだした。イギリス連邦の一 員として生きてきたオーストラリアが、アジアの一員として生きていく方 向に転換しようという国家の経済的、政治的な将来像と大きく関わってい るのが理解できると思う。 NPLは当時のホーク政権の教育大臣、 J o h n. S y d n e yD a w k i n sの委託で、 J o s e p hL oB i a n c oによって 1 9 8 7 年に作成された -5-.
(6) 文学・芸術・文化. 1 6巻 1・2合併号. 2 0 0 5 . 2. もので、オーストラリア英語を国家語として言明し、先住民、移民の権利 としての言語問題に焦点、が当たった時期である. O. アボリジニーに関して、. 国家の政策は暴力的搾取から保護隔離、同化、自主決定、自主管理と歴史 的に大きく変化している. O. 植民地化を行った白人と土地を奪われたアボリ. e c o n c i l i a t i o n (和解)という観点から、文化保持の一環とし ジニ一間の r て、母語保持の重要性が認識された。連邦政府は 1 9 9 0 年 ATSIC ( t h eAbo-. r i g i n a landT o r r e sS t r a i tI s l a n d e rCommission) とp う委員会を組織し、 先住民アボリジニーの母語保持を目的として NALP (Na t i o n a lA b o r i g i n a l. LanguageProgram) とp う計画を実施している. O. 学校教育においては、. アボリジニーの子弟には母語と英語の二言語教育を推進している o ATSIC は、連邦政府の特別枠の予算の元、選挙によって選出された先住民評議員 によって、政策決定及び運営を自主決定、自主管理できる歴史上初めての 機関となった。 さらに、 1 9 9 1年には ALLP ( A u s t r a l i a ' sLanguage:TheA u s t r a l i a nL a n -. it e r a r yP o l i c y ) がJ ohnSydneyDawkinsの委託によって発表 guageandL された。ここでは、英語のリテラシーに重点、がおかれている. O. 国家発展の. ためには、工業化、産業化が必要で、それを推し進めるために必要な教育 に焦点を当てたものであり、英語寄りの言語政策である. O. 英語以外の言語. に対しての姿勢に変化が見られ、先住民、移民の権利としての主張されて いた英語以外の言語が経済的有益性の面から見直されるようになった。例 えば、英語以外の言語の一つである日本語を学ぶ必要性を、その経済的有 益性から説明している. O. 貿易相手国としての日本、主なる観光収入の元の. 日本人観光客を考慮すると、オーストラリアにとって日本は重要な国であ り、その日本で話されている日本語を学ぶことは、オーストラリアにとっ て経済的に有益であるという視点であるにこの流れの中、 LOTE教育に ついては経済的に重要な国の言語が優先言語として 1 4 言語が指定され、連. 00ドルの援助が出されることになった。さ 邦政府から学習者一人当たり 3 -6-.
(7) オーストラリアの言語政策の現在 永田. らに、 1 9 9 5 年にはアジアの四言語、日本語、韓国語、中国語、インドネ シア語に焦点、が当てられ、?、J ALSAS( Na t i o n a lA s i a nL a n g u a g e sa n d. S t u d i e si nA u s t r a l i a nS c h o o l s ) 政策が始まった。連邦政府は学校教育を 直接管轄している州の教育省に対して 1 0 年計画で毎年3 , 0 0 0 万ドルの予算 をあてて、 2 0 0 6 年の時点で全豪の 3年生から 1 0 年生までの 60%、1 2年生 の 15%がアジア四言語のいずれかを学習しているようにするという目標. 0 年代後半に を立て、アジア言語習得の経済的有益性に理解を示した。 8 は、日本経済の隆盛に伴って、日本語学習者数が増大した。当時の様子を. TSUNAMI (津波)と呼んでいたことからも、日本語教育熱の高まりを推 測できる. O. また、 b i l i n g u a li m m e r s i o np r o g r a mといって、初等中等教育. において、 LOTEの時間のみでなく、他の教科も一定時間 LOTEで教える. m m e r s i o nとは「浸す」という意昧で、人為的に習 教育も行われている o I 得させたい言語の環境を作り、その中に学習者を投入する教授法である。 ビクトリア州が盛んで、 1 9 9 7年時点、で州立の 1 7の小学校において、行わ. m m e r s i o np r o g r a mを行っている学校も 3校あり、 れている。日本語の i その一つの学校では週 7時間、日本語で授業が行われている。高等教育は 主に国立大学において、外国語が教えられている. O. 見てみるに、日本に対して与えられているオーストラリアの日本語教育 像は、この時代までのオーストラリアの対日政策を反映したものである. O. 日本に紹介される日本語教育の現状報告の多くは、この時代までにオース トラリアに滞在して日本語教育に携わっていた人々による現状報告である また、オーストラリアは教育を企業として考えており、教育機関は外国人 留学生からの収入に依存する割合が高い。大学に関しては、外国人留学生 は税金を払っていない関係上オーストラリア入学生の約 3倍の学費を払う 必要のあるため、ほとんどの大学が留学生からの収入に依存しており、現 在平均 1 3パーセントの学生が留学生である。全大学総合で留学生からの. 9 9 8 年に 7億 1万ドルだったが、 2 0 0 2年には 1 4 億ドルに増加 学費収入が 1 -7-. O.
(8) 文学・芸術・文化 1 6巻 1・2合 併 号 2 0 0 5 . 2. している。ビクトリア州の大学全体ではインド人、中国人の学生を中心に 留学生の割合が年々高くなり、 2 6 . 3ノt一 セ ン ト に 達 し て い る ヘ 英 語 専 門 学校についても同様であり、現在、 1年間働きながら生活できるワーキン グ・ホリデーという制度があり、日本から多くの学生が来て英語を学んで いる. O. また、多くの民間の日本語教育機関が事業として、オーストラリア. に行く学生を募集している o I 日本語教師養成講座を受け現地の小学校で日 本語補助教員として派遣するインターンシッフ.0プログラムを実施してい る業者がある。業者によっては膨大な手数料を請求する事もあるので、プ ログラム内容と料金その他の詳細を調べたほうがよい J((財)海外職業訓. 1 1とあるように、インターネットを通じて広告を出しているが、営 練協会 ) 業上、日本語教育が盛んに行われているというイメージを与える必要があ るため、偏った情報が流されているという問題もある。. 1987 年からたった 4年後に出された 1 9 9 1年の政府の政策変更が何を意味 円ロ 1 2 するものであるかについては、研究者の問でで、も意見の一致が見られな p. LOTE特に NALSASに対して特別予算が組まれたという点に注目して、政 府が多言語主義を推奨していると見る研究者もいるが、反対に、多言語主 義の目的が移民・先住民の権利からオーストラリアの全体の経済的有益性 の面に移ったという点に注目して、多言語主義の後退と見る研究者もいる. O. 4 . 言語政策の現在 それまでの労働党政権から自由・国民党による連合として 1 9 9 6 年に成立 したハワード政権下に最も大きな変化がおこった。 1 996 年以降を現在と考 えて現状を考察していこう。ハワード政権は、保守的な政策を行っており、 言語政策一般について、多言語主義の後退、英語オンリー寄りの風潮が顕 著になっている. O. -8-.
(9) オーストラリアの言語政策の現在 永田. 4 .1.先住民言語に対する言語政策の現在 ATSIC発足当初、連邦政府は年間 9億ドル、対先住民予算の約 9割の 予算を当てていたが、ハワード政権になって 5割に縮小し 13、さらに、. 2004年 5月 8日ATSICの廃止を公表したヘアボリジニーの自治によって 運営されている ATSICは廃止するが、政府内の他の部署で予算を配分す るとはいっているものの、実質的にはアボリジニーの文化や言語保持政策 の後退と見てよいと思われ、実際アボリジニーの代表による抗議デモが各 地で行われ、時をーにするように、運動のリーダ一、ジェルクラ氏は和解 の夢が達成されないまま、失意の内に心臓麻庫で死亡したへ アボリジニーの言語については、先住民としての権利を主張するという 政治的側面を持って、 ATSICの元、 AIATSIS ( t h eA u s t r a l i a nI n s t i t u t eo f. A b o r i g i n a landTorresS t r a i tI s l a n d e rS t u d i e s ) が、言語保持や復活を目 的に、現在、年8 00 万ドルの政府援助を受けて、言語面を担当しているヘ 消滅した言語については、残された資料によって言語学者の協力を得て言 語を復活させ、学校教育を通じて児童に教えようとしている。また、現在 も使われている言語については継承を目的に努力がなされている。ニュー サウスウエールズ州では 2 005年度から州内で使われている 70の言語を初・ 中等教育の場で教えるというカリキュラムを公表したヘ実質的な生活言 語の保持のためというより、アイデンティティーの象徴としての言語教育 という政治的側面が感じられる. O. しかし、南オーストラリア州では 1 9 9 2. 年に、北部準州では 1 9 9 9年に、二言語教育を廃止して英語オンリーの教. 002年に出版された二言語教育に 育への回帰と政策転換を行っているヘ 2 ついての本 19では、北部準州では 2 1校、西オーストラリア州では 4校がア ボリジニ一言語と英語の二言語教育が行われているが、状況は不安定で存 続が危ぶまれているとある. O. 二言語教育についていくつかの間題点が指摘. されている 20。まず、それぞれのグループがお互いに独自に離れて暮らし ているため、言語差が大きく、また、それぞれの言語の話者数も少ない。. -9-.
(10) 文学・芸術・文化 1 6 巻 1・ 2合併号 2 0 0 5 . 2. さらに、アボリジニーの言語の衰退が激しく、家庭内での自然伝承の機会 ' また、学校教育を通じて教育する際にも、教 が失われている言語が多 t¥ 0. 師として教えることのできるほど言語を保持している話者が確保しにくい、 また、言語を保持していたとしても教員資格を有していない、十分な経済 的援助がない等、多くの困難な問題が残されている。また、アボリジニー の母語の単独での存続が困難になった現在、クレオールと呼ばれる英語と アボリジニーの言語との混交言語が広まりつつある. O. アボリジニーの言語. も方言差、言語差があり、さらに、それぞれの言語の話者数が少なく、他 地域に行く場合には異言語間のコミュニケーションの機会が多かった。か つては、その際には、多くのものがアボリジニーの複数言語を理解しお互 いの意思流通を図っていたが、現在では、クレオールを共通言語として使 用しているヘさらに、 A b o r i g i n a lE n g l i s hと呼ばれる、英語でありながら アボリジニーにのみ使われる特徴を残した非標準的な英語のアボリジニ一 方言も拡がりつつあるヘ. 4 .2 . LOTEに対する言語政策の現在 初等・中等学校教育の LOTEにとって、青天の震震ともいうべき、一大 事が 2002年に起こった o NALSASの始まった 1995 年には、労働党が政権を 持っており、アジア寄りの政策を推進していたが、ハワードの元、連邦政 府は 2002年をもって NAIβ,ASに対する財政的援助を打ち切った。 1996 年 の政権獲得の折には、 2004 年までは NALSASを継続するといっていたこと を考慮に入れると、突然の政策変更と見るべきであろう。毎年3, 000 万ド ルの連邦政府からの援助がなくなったことになる。教育を直接に管轄して いる各州が自己予算をどれほど NALSASに費やしていたか、また、連邦政 府の援助打ち切り以降、自己予算を増大させ、 NALSASを遂行しつつある かという問題は、各州の事情によって異なると思われるへビクトリア州 では、約 30名いた担当役人を他の部署に移転させ、 LOTEの部署が廃止さ. -10-.
(11) オーストラリアの言語政策の現在 永田. れたことが明らかで、クインズランド州や西オーストラリア州では. LOTE. 担当の教員自身も専任から兼任、非常勤に変える等担当役人の数を減らし、 タスマニア州では授業時間を週 30分と大幅に減らし、オーストラリア全 州でアジア言語に対する教育が一歩後退した 240. 2 0 0 0 年の GST. (消費税). 導入以前の資料であるが、. 8 租税収入における連邦政府の州政府・地方自治体に対するシェア比は 7 対2 2と 、 1 9 9 5 年度の我が国(日本)における租税総額に占める国税と地方 税の割合である 62対38に比べて相当大きく、中央政府への財源集中がオー ストラリアでいかに進んでいるかがうかがえるお とあり、消費税導入後はさらに連邦政府に財源が集中しており、. N A L -. SASに対する連邦政府の財政的援助打ち切りは州政府の教育行政に大きな 影響を与えていることが予想される 幅に増えている が 、. O. O. 各州ともアジア言語学習者の数は大. 1 9 9 4年には 2 0 万人だった学習者. 日本語を例に取ると、. 1 9 9 7年には 2 5 万人、 2 0 0 0 年には 4 2万人に増大している. 260. 各州とも、. 学習希望者の数だけでなく、養成した教員の将来、これまで、に支出した予 算の額を考えると、連邦政府が予算を廃止しでも、すぐにはアジア言語教 育を廃止することはできないと思われる. O. LOTEに対. また、連邦政府から. しでも年間 2 , 0 0 0 万ドルの援助が出ており、アジア言語も. LOTEであるこ. とを見ると、この予算を転用することも可能であると思われる の予算も打ち切られる公算が強いと思われる. O. O. ただ、こ. オーストラリアにおいて政. 策は、何年度まで、に何パーセントを達成というように、具体的な数値に表 れる形での目標を示してからしか予算がつかないし、予算を変更する場合、 また、継続する場合にも、目標の達成度について第三者の評価を公表する 義務がある。. NALSAS廃止の場合にも、 2 0 0 2年評価が示されている. の内容を読むと、第三者の評価は. 270. そ. NALSAS継続を進言したにもかかわら. ず、政府によって廃止が決定されている o L OTEについても同様な報告書28 が公表されており、. LOTEも同じ憂き目に遭うのかもしれな l'1. 0. t E E A 唱EA.
(12) 文学・芸術・文化 16巻 1・2合併号 2005.2. 大学においても LOTEが軽視されつつあるように思える。まず、二つの 私立大学以外の 36の大学が国立であること、大学の運営は大学内の自治で はなく、政府が外部から大きな力を持って運営されていることなどから、 オーストラリアの大学は連邦政府の大きな管轄の元に運営されている 府は教育省を通じて、教育の指針を決めることができる. O. O. 政. 具体的には、政. 府の考える重要度に応じて各教科に対する予算の調整を行っている。数学 教育が必要で、外国語教育が余り必要でないと考えると、例えば、数学に 対して 2、外国語に対して Iのように調整を行い、補助金の割合を決めて 年から外国語教育の重み付けが1.95から1.6に減少すると言われ いる。 2004 ている 290 結論的には、配分される補助金が減額されるので、ークラスに 対する学生の配分の増加、授業時間の減少等、教育の質を低下させざるを 得なくなる。. 4 .3 . 翻訳・通訳サービスに対する言語政策の現在 英語以外の言語と英語との間の公的な翻訳・通訳サービスが行われてい る 連邦政府レベルでは移民省の元、 T IS ( T r a n s l a t i n g& I n t e r p r e t i n g O. S e r v i c e )が行なわれている。かつては多言語主義推進のために、無料で行 われてきたが、現在では受益者負担の原則を導入し、次に述べる NAATI 認定の非営利団体が有償のサービスも行っている. O. 外国語、アボリジニー. の言語、手話言語 AUSLAN と英語の通訳も行われているが、料金が高~. 。. , ¥3 0. 永住権や市民権保持者に対して病院、警察等の公的機関が必要と認めた場 合には、その非営利団体への料金を肩代わりして電話通訳サービス、文書 翻訳サービスを行っている。実際問題として、それぞれの機関が限られた 予算の中で通訳サービスを依頼するので、利用者の側では通訳が必要と 思っても、常に受けられるとは限らない。電話通訳サービスを行っている が、実際には 57 言語に対して電話が一本しか設置されていない。州政府単 位でも医療関係の公文書が翻訳されてインターネットで検索できるように. -12-.
(13) オーストラリアの言語政策の現在 永田. なっているが、全文書9 . 3 7 7の内、日本語に訳されているのは、 7 4文書の みであり、英語が読めないと日本語の文書にたどり着くことができない。 明確に政府によって公言されているわけではないが、もう一つの言語政 策の傾向を垣間見ることができる. O. 学童対象の LOTE教育に消極的になっ. ているのに対し、成人に対する外国語専門家の養成を奨励しつつあるよう に思える。教育省から、 2 0 0 4 年モナシュ大学に対して Na t i o n a lC e n t r e ミ と p う申し出があった。 2年間は ForLanguageT r a i n i n gを設立しな p カ 準備期間として 4 6 0 万ドルを援助するが、それ以降は自己負担で運営する ようにという条件である. O. 児童対象の LOTE教育は多文化主義の立場から、. 多文化を尊重するという文化的な傾向が強いのに対し、成人対象の外国語 教育は実利的な風潮が強い。オーストラリアが直面している経済状態を考 えると、貿易、商業に必要な外国語専門家養成に言語政策が移行している ものと思われる。 1 9 9 9年の移民法改正によって NAATI( N a t i o n a lA c c r e d i -. t a t i o nA u t h o r i t yf o rT r a n s l a t o r sandI n t e r p r e t e r s ) の資格を取得した通 訳、翻訳の専門家に対して永住権をとりやすくしていることも同様の傾向 と思われる。通訳・翻訳を管轄しているのが NAATIである。 NAATIは. 9 7 7年に設立され、 「オーストラリア通訳翻訳国家認定資格Jとして、 1 1 9 8 3年 7月 1日に、オーストラリア連邦政府および州政府により共同出 資を受けて、独立組織として再設立された。現在オーストラリアでは、移 民省を始めとする政府に提出する公式な翻訳や、国際的な会議における通 訳は、 NAATIの公認翻訳家または通訳者でないとできないことになって いる. O. 通訳・翻訳はかつては公共的・非営利的な業務として扱われていた. が、官公庁が NAATIに業務を委譲し、現在では営利的な専門職種として 発展しつつある。. 4 .4 . 英語に対する言語政策の現在 国語と認定された英語については、 CLP ( t h eCommonwealthL it e r a c y つd.
(14) 文学・芸術・文化. 1 6 巻 1・2合 併 号. 2 0 0 5 . 2. P o l i c y ) を1 9 9 7 年に制定し、英語の識字率の拡大の必要性を強調している. O. オーストラリアにおいては国勢調査の折、英語の識字能力を判別している が、日常生活を送る上で英語の能力が不足していると判断された割合が、 英語を母語とする者の 15%、移民では 30%以上もある. O. 特に労働市場にお. いて熟練労働者を養成する必要があり、そのためには教育拡大をせねばな らず、英語の学力向上が必要とされるようになったのである。連邦政府は、 労働市場に対しての成人識字教育予算を、 1 990-91年には 3 5 0 万ドルから、. 1994-95年には 2 , 7 0 0 万ドル、 1 996-99年には l億 1 , 7 0 0 万ドル、 2 0 0 0 年に は3 , 3 8 0 万ドルと年々増大させているヘ教育省は WELL( t h eW o r k p l a c e. 0 0 0 年の予算で E n g l i s hL a n g u a g eL i t e r a c y ) プログラムを実施しており、 2 は1 , 2 0 0 万ドル計上している 320 実務に即した英語教育を行うのを目的に、 政府が申請を出した官公庁、組合等に対して補助を行うというものである。 かつては、外│の教育省が行っていた職業訓練を、最近は、民間の業者に委 託するようになっており、受益者2 5パーセント負担でより実務に即した教 育が行われている 330 また、学校教育の場で基礎的な学力、算数と英語の 学力低下が問題となっており、それを克服するために、 2 0 0 4 年 5月連邦政. 0 0ドル 府は、識字に問題があると判断された 3年生に対し、一人当たり 7 の援助、総計 6 8 5 万ドルを計上し、英語の識字能力の改善に努めている 340 また、連邦政府は 2 0 0 5 年度からは補助金を受け取る条件として、公立学校 に対し、学童の数学と英語の成績をクラス内で順位をつけて厳格に評価し、 保護者に対して通知する義務を負うという法案が提出されたへ 連邦政府は移民が英語を習得するためには、成人、学童ともに大幅な予 算増大を行っている O 移民省は最大 5 1 0時間まで英語教育を行う成人移民. A d u1 tM i g r a n tE n g l i s hP r o g r a m ) に対して年 1億ドル 英語教育 AMEP( 9 9 3年以降、 の予算を計上している 36 AMEPはかつて無料であったが、 1 0. IELTS( t h eI n t e r n a t i o n a lE n g l i s hL a n g u a g eT e s t i n gS y s t e m ) とp う言明貧 を課し、合格点を取れなかったものに対して、授業料をビザ申請時に徴収. -14-.
(15) オーストラリアの言語政策の現在 永田. している 370 移民申請にはいくつかの資格があるが、その内オーストラリ ア市民権・永住権保持者が、その家族を呼び寄せるという資格がある O 本 人については英語能力に問題があると永住権取得が困難だが、その家族に. 002年には 3万 3 . 0 0 0人が教育を受けてい は英語の問題があるものが多 Po 2 る。かつては、英語学習は移民にとって権利であったが、現在は義務に なっていると見てよいであろう. O. また、移民の学童に対して教育省を通じ. て、連邦政府は一人当たり初年度 4, 439ドル、対象児童 l万 1, 000人に対し、. 4, 800 万ドルの予算を計上しているお。しかし、実際に教育を行っているの は州政府の教育省であって、この予算が英語教育一般に使われ、徐々に英 語を母語にしない移民の学童に対する特別な配慮、がなされなくなっている 傾向にある 39。反対に言うと、移民も当然英語を母語とすべきであるとい う理念で、英語に対する同化を求める政策に変化したと見てよい。. 5 . 日本語の問題 オーストラリアにおける日本語の問題として、日系人社会内での日本語 の継承、学校教育における日本語教育、日本語および日本文学研究の問題 について概観してみよう。. 5 . 1.日本語の継承の問題 まず、伝承言語としての日本語について、筆者が当時滞在していたビク トリア州に焦点、を当てて考えてみる。現在ビクトリア州に住む日本人の数. 5 6 9人、オーストラリア永住権取得者3, 350人、合計 7, 919 は、長期滞在者4, 人40である。 3ヶ月以上在留するものに対して、任意の届出の結果であり、 長期滞在者は留学生、日本の組織からの派遣による在留者等、帰国を希望 するものも多く含まれている。また、オーストラリアの国勢調査によると、. 2001年には 4, 660人の日系人が生活している. O. 日本人社会での日本語言語. 0 年代前半 生活について概観してみる。白豪主義政策を廃止したのが、 7 Fhd.
(16) 文学・芸術・文化. 1 6巻 1・2合併号. 2 0 0 5 . 2. という歴史を反映して、日系人一世の平均年齢は 2 0 0 1年調査では 3 2 . 5 歳と 若い世代によって構成されているのが分かるヘ 国勢調査では家庭における全構成員の使用言語について、‘ Doest h i s. p e r s o nr e g u l a r 1 yu s eal a n g u a g eo t h e rt h a nE n g l i s ha th o m e ? ' という項 目があり、 2 0 0 1年には 7 9 . 7 %が日本語を使うと答えている. O. 移民の一般的. 傾向として、成人一世は移民元の言語を、三世は移住先の言語を、子供の ときに移民した一世や、二世は移民元の言語と移住先の言語の二言語を使 用する. O. 変異があるのは二世の移民元の言語の保持である。家庭内で一世. が二世に対して日本語を使うか、また、それに対して二世は日本語で返事 をするか、二世間士では日本語を使っているのかという問題である. O. 両親. とも日系人であるかどうかという人種的な問題、日系社会に積極的に参加 しているかという同化の問題等が関係し、家庭によって異なりがあるとい うのが今の日系社会の言語生活である。具体的な調査結果が公表されてい るへ結論として、一世は子供の日本語保持を願っているが、二世間では 成長とともに日本語離れが顕著になっている。ブラジルの日系移民につい ての研究43、また、オーストラリアにおけるほかの民族の移民の言語保持 の研究44を考察しでも、一般的傾向はオーストラリアの日系人にも当ては まると思われる。 日本語を子弟に学校教育を通じて教える手段として、主に三つの方法が 考えられる。第一に、帰国を前提にした子弟を対象にした全日制の日本人 学校である。ビクトリア州政府が認可した全日制日本人学校で、主として メルボルンに在住する日本人子女を対象に、文部科学省の学習指導要領に 準拠し、日本の小学校. 9 中学校の教育課程を実施しているが、児童数は 3. 人程度である 45。第二に、土曜日のみの日本語学校である。日本政府から は補習校、州政府からは補助金はないが e t h n i cs c h o o lとして認可されて. 3 7名の生徒が学んでいる。一世か いる。幼稚園部から高等部まであり、 2 ら二世の日系子弟が主なる生徒であるが、片親が非日系人、また、両親と p o.
(17) オーストラリアの言語政策の現在 永田. も非日系人の子弟も日本語を学習している 460 第三に、現地校での日本語 の授業である o LOTE教育として日本語を教えている初等中等レベルの学 校が、約570 校あり、 1 1万5 . 0 0 0人の生徒が日本語を学んでいるぺ LOTE教 育は本来オーストラリア入学童の外国語教育のために始められたが、日系 人学童のための継承言語教育としての面も兼ね併せ持っている。さらに、 学習したい外国語が現地校で教えられていない場合のために、メディアを 使った遠距離教育および、土曜日に教室での授業が州政府経営の語学学校 によって運営されている. O. 日本語も対象になっており、遠距離教育 1校 、. 教室7 校が運営されている O 学校教育以外でも日系人社会内において、自然に日本語を伝承する可能 性もある。現在、 6 0 家族が参加している ]CV( Ja p a nC l u bo fV i c t o r i a )が 存在し、ジャパンフェスティパル、運動会等のイベントを通じて、日系人 社会の親睦を図っている. O. p ずれにしても、日系社会は歴史も新しく、規模も小さい。もし、民族. 言語として日本語を継承していこうとするのなら、次の世代、三世が日系 社会の中心的構成員になったときに、大きな分岐点にさしかかると思われ る。二世は二言語併用であるのが一般的であるが、二世が、子孫三世に日 本語を伝承していくかにかかっている. O. また、成人一世の言語問題として日系人社会は少数派であるということ から、 27.5%が英語に問題があると国勢調査で回答しており、英語の問題 も残されている。日本語が通じる病院が 3軒あるが、弁護士、会計士等に ついては不明である。. 5 .2 . 日本語教育の問題 次に日本語教育の問題について述べることにする. O. 日本語教育も言語政. 策の一端として行われている関係上、政治の問題と大きく関与することに なる。また、一つ忘れてならないことは、オーストラリアにおいて学校教. 門. i.
(18) 文学・芸術・文化 1 6 巻 1・ 2合併号 2 0 0 5 . 2. 育は各学校の校長の采配によって運営されているということである。各州、│ の教育省は指針を推奨 ( r e c o m m e n d a t i o n ) するが、実際に具体的にどの ように運営するかは各学校の校長に任されている. O. 日本の教育指導要項の. ように、全国全ての学童が同じ内容を、同じ時間学習するというようなこ. 0 年生の間で「強く推奨」 と は な い 。 例 え ば 、 ビ ク ト リ ア 州 で は 51 ・. ( h i g h l yr e c o m m e n d e d )、ACT (首都特別地域)では州による決まりはな く学校ごとに決定され、通常は 8 9年生に「推奨」、タスマニア州では全 ・. ての中等教育機関で履修可能だが、必修でなく「推奨Jというように、外 国語学習については推奨されているが、実際には何時間教えなければなら ないとかは、決められていない。また、具体的に何をどのように教えるか についても、決められていない。補助金の額が学習者数に応じて配分され る関係上、学習時間がいくら少なくても、また、実際には教育を行ってい なくても学習者数に組み込まれている可能性が大き Po 各学校によって学 習内容、学習時間に偏りがあり学習者の数値を見ただけでは、現状はつか めないということである。統計的な資料の信頼性48が低いとなると、主観 に頼るしかないが、. NALSASの補助打ち切りによって日本語教育が後退す. ることは、明らかなことのように思える O 以前から言われていることであるが、日本語教師の問題が残されている. O. オーストラリアの初・中等教育の日本語教育の現場では、 LOTEの教員は、 一つの学校では LOTEの授業数が限られているため、数校掛け持ちの非常 勤がまかなっているのが普通である。また、専任のオーストラリア人教師 の能力不足のために、本来はアシスタント教員であるはずの、無給の日本 人のボランティアが実質的に授業を行っている学校も多い。ビクトリア州 において、 1997年の調査では、初等教育229人、中等教育 170 人の LOTE日 本語教員に対して、アシスタント教員が 233人いる 49。初・中等教育の場で 日本語教員として、生計を維持するのが困難である。政府が LOTEに対し て消極的になっている以上、 LOTEの教員の数、質ともに、問題が解決さ -18-.
(19) オーストラリアの言語政策の現在 永田. れるとは思えな~ ¥ ' 0. 5 .3 . 日本研究の問題 次に、オーストラリアにおける日本語及び日本文学研究について述べる 国際交流基金の 1 9 9 8 年度版によると、総合大学、専門大学と実業専門学. , 5 9 3人、機関数 6 9 校、教員 校の高等教育機関での日本語の学習者数は、 9 5 8人となっている。オーストラリアには総合大学が 3 8 校あるが、その 数3 内34校が日本語及び日本研究を教えている。大学で日本語を専攻する場 合は、語学だけでなく社会、文化、経済などの日本学も取るのが普通であ り 、 B a c h e l o ro fA s i a nS t u d i e sまたは B a c h e l o ro fArt sとして位置付けら れる. O. また、日本研究の学位だけでなく、例えば日本研究と法学、日本研. 究と商学など d o u b l ed e g r e eとして二つの学位を専攻する場合もある. O. 多. くの場合は、大学で日本研究を専攻していても、卒業後はもう一つの学位 を生かす仕事につくことが多い。例えば、経済と日本語を専攻した場合な どには、貿易会社に入って日本との貿易に日本語の知識を活用することは あっても、日本語や日本研究の方面に進学することは、ほとんどない。 オーストラリアの高等教育の日本研究の現状について、 1 9 9 9年度の国際 交流基金「日本語教育国別事情オーストラリア篇」では、次のような報告 をしている。 日本人学生へ日本語教育専攻(学士、修士)の門戸を開放する大学が数 校あるのも興味深い。他方、オーストラリア入学生の履修は減少している. O. これは、適格な日本語教師を養成供給するという観点、からも、また日本研 究振興との関連からも、看過できない問題である. O. 前者については、ポス. ト自体が増えていない、待遇が必ずしも良くないなどの実情から魅力を欠 き、後者については、経済や技術など実利的な部分での取り組みはみられ るものの、言語や文化を通じた日本研究に先細りの観がある. O. また、 6月1 4日の新聞紙上、 Ja p a n e s es t u d i e sl o s et h e i ra l l u r e ' と題す. -19-. O.
(20) 文学・芸術・文化 1 6 巻 1・2合併号 2 0 0 5 . 2. る記事が掲載され、日本研究関係者の問では話題になった。オーストラリ ア国立大学 (ANU=A u s t r a l i a nN a t i o n a lU n i v e r s i t y ) の協力で日本国際交 流基金は、大学レベルでの日本研究及び教育の実態を調査しているが、 8 年ぶりの調査結果が出た。 ANUのピーター・ドライスデール ( P e t e rD r y s -. d a l e ) 教授によると、最近 8年間で、日本関係の分野を専攻している大学 666人から 3, 694人に減少している 生の数が、 7,. O. 減少の理由として、連邦. 政府がアジア諸国との国交に対して積極的でなくなり予算が減少されたこ と、実利的な分野に重点、が置かれ始め、実利的でない日本研究に対して連 邦政府の予算が減少したこと、また、小・中学校レベルで NALSASの予算 がなくなり初等教育の段階で日本語学習者が減少したこと等があげられて. 3 9人から l万1.3 7 1人に反対に増大してい いる。日本語学習者の数は 1万3 るが、これはオーストラリア入学生が増えたのではなく、アジアからの留 学生が履修しているのによるもので、 70%の履修学生がアジアからの留学 歳 生によって占められている大学も多くある。研究者養成においても、 30. 以下のオーストラリア人日本研究者は全オーストラリアで現在二人しかい なくなっており、日本研究の将来について否定的な予測を示しているへ 大学の現状を述べると、現在オーストラリアの大学は連邦政府の予算が 削減され、かつては無料であった授業料も、 HECS ( H i g h e rE d u c a t i o n. C o n t r i b u t i o nS c h e m e ) といって、 1 9 8 9 年より教育費用を学生が卒業後返 還する制度が導入され、 1 9 9 7 年より個人負担の割合が高くなっている。在. 5パーセントの学費増が決まっ 籍した ANUでもモナシュ大学でも今年度 2 ているへまた、 HECSの毎年の増大に対して、授業料の入学時先払い制 度を導入する大学も出てきたへこのような教育事情を反映して、大学の 教員の待遇も悪くなっている。かつては終身雇用であったポジションが 1 年契約のポジションに変わり、この 1 0 年で教員の数が 3分の lに減少し、 各教員の負担量が倍増している 530 このような分担授業数の増加、雇用の 不安定等の問題を抱えており、大学での研究者としての職業は学生にとっ. -20-.
(21) オーストラリアの言語政策の現在 永田. て魅力のないものになっており、日本語や日本研究の道に進むオーストラ リア入学生はほとんどいない。大学院で日本語や日本文学を研究している 学生数について個人的な体験で話をすると、研究大学として評価されてい る ANUでも日本語を研究している学生は 1 5人ほどいたが、オーストラリ ア人は一人もいなかった。モナシュ大学で、も、状況は同じである. O. 日本文. 学研究についても、源氏物語の英訳で著名なタイラー ( R o y a l lT y l e r ) 氏の 元で博士号を取得し、彼が退職した後、後継者となったオーストラリア人 研究者がいるが、本年度は受講生がなく日本文学の講座はなくなった。ま た、国家予算で日本関係の書籍を国立図書館と分担して収集している. ANUの図書館でも、私のいる聞に開架にあった日本関係の書籍が地下の 開閉式の書庫に移された。日本語の専門書を読む人がいないためである。 現在日本語教育や日本語研究に携わっているのは、津波とまでいわれた日. 9 8 0 年代後半にオーストラリアで教育を受けたオー 本語熱が盛んだった 1 ストラリア人や日本から雇用された日本人がほとんどで、後継者の育成が なされていな p以上、研究が継続されるとしても日本からの雇用に頼らね ばならず、オーストラリアにおける日本語および日本研究の将来は暗いと いわなければならな t' 1. 0. 6 . 結論 結論として、多言語主義と英語オンリーの政策はオーストラリアの政治 状況と大きく関連している. O. 多文化主義は白豪主義との対極に位置し、現. 在では外交的にはオーストラリアは白豪主義を放棄している. O. しかし、白. 豪主義を放棄してから 30年程しか経っておらず、それも決して人道的な 観点、から放棄したのではなく、アジアの国との通商によってのみオースト ラリアの将来が保証されるという自国の経済的発展のために行ったもので ある。 1 9 8 0 年代多文化主義を軸に労働党政権が政治を進めていたが、白 豪主義は消滅したわけではなかった。人種主義を標椋するワン・ネーショ. -21-.
(22) 文学・芸術・文化 1 6巻 1・2合併号 2 0 0 5 . 2. ン党が 1 9 9 8 年の州議会選挙で大幅に議席を伸ばした。ポーリン・ハンソン. ( P a u l i n eHanson) が設立した極右政党で、農村部の白人を支持基盤にし 年1 0月の連邦総選挙で落選し、党内の内 ている。ポーリン・ハンソンは 98 紛が起きて政治生命は終わったかに見えたが、その後も根強い人気を維持. 001年 l月にはクインズランド州でワン・ネーション党を再び政党登 し 、 2 録し、同年 2月の州総選挙で3議席を確保したが、 2 003年 3月のニュー サウス・ウエールズ州総選挙では上院に立候補して落選した。ポーリン・ ハンソンは、その折の選挙違反のため禁固 3 年の有罪判決を受けて服役し ていたが、 2 003年 1 1月 、 7 8日の服役の後、逆転無罪判決を受けて開放さ れ54、政界復帰に意欲を燃やしている. O. オーストラリアにおいては国民の連邦選挙によって首相が決定される O ちょうど筆者のオーストラリアでの滞在期間が終わろうとする時に選挙が 行われることが決定された。レイサム (MarkLatham) を代表とする労働 党とハワード(JohnHoward) を代表とする現政権、自由党・国民党連合 の争いになった。両政党がそれぞれの党の指針を国民に宣伝しており、 オーストラリアの進む道を予測させるのに一番いい時期であった。. 002年 1 0月インドネシ 選挙前の状況を概観すると、オーストラリアは、 2 アパリ島において 88 名の死者を出し、現在イランにおいても戦争を遂行し ている国家である. O. 自然と国家主義的になるのは自然の成り行きといえよ. う 特に、イスラム教徒に対して非寛容な態度が目立つようになっている O. O. オーストラリアにおける国家主義とはアングロ・サクソン文化に根ざした 価値観であり、彼らの利益を第一に考える考え方である。しかし、客観的 状況として国内の問題を考えると、国勢調査によると 2 000 年に移民した者 の内の 34%である 3万 1 . 1 0 0人がアジア人であり、アジアからの移民が全 人口の 5パーセントを締めおり、アジア人の占める割合はさらに多くなる ことが予想される. O. そして、最近のアジア移民は難民ではなく、技術移民. で、経済的、技術的にもアジア人移民の影響力を無視してはオーストラリ. -22-.
(23) オーストラリアの言語政策の現在 永田. ア社会の将来は語れない状況になっている o 1 9 9 8 年の調査では、移民の 問で、同一の民族と結婚している割合が一世では 31%であるのに対し、 二世では 20%に減少しており、雑婚率が年々高くなっているへさらに、 モナシュ大学の人口都市研究所の調査によると、三世では中国人、インド 人、レバノン人キリスト教徒では 70%、ヨーロッパ系では 80%以上が異 民族と結婚しているヘ外交問題を考えても、輸出先として全輸出金額の. 9.6%がアメリカであるのに対し、 18.6%が日本に、 8.4%が韓国に、 7.0% が中国に依存しており 57、アジアの国を抜きにしてオーストラリアの経済 的発展はな~. ) 0. ハワードは経済の自由競争原則に則ったアメリカよりの政策、レイサム は社会福祉を重視する平等主義の政策を主張していた。支持層として、ハ ワードは上流階級、レイサムは中流階級を基盤にしている. O. ハワードが政. 権を獲得した 1 9 9 6 年以前は、労働党政権が 1 3年続いていた。労働党政権 下では福祉を重視し過ぎた結果、経済の低下をもたらしたのに対し、現政 権下では自由競争のため経済が活発化したが、社会階層の格差が広がりつ つあり、福祉が不安視されている. O. 今回の選挙の争点、は、アメリカとの関. 係にあった。オーストラリアはイラクで戦争をアメリカとともに遂行して おり、ハワードは積極的にアメリカとともに戦争遂行を表明しているが、. 3日アメリカとの自由貿易を推進して経済的にも、また、 レイサムも 7月1. nB e a z l e y )任 国防担当の影の大臣にかつてのライバル、ビーズリー(Kir 命し、テロとの戦いにのみ、また、国連での管轄下においてのみという条 件をつけているが、軍隊をイラクに送り続けることを表明し、アメリカと の関係を重視していることを示していた 580 今回の選挙では労働党は多文化主義や多言語主義を論点、にはしていな かったが、現在連邦政府が向かっている方向は英語オンリーの言語政策で あることには間違いがなかった。言語政策の観点から見ると、国家主義は 英語オンリーの政策を、多文化主義は多言語主義を支持する方向に向かう. -23-.
(24) 文学・芸術・文化 1 6 巻 1・2合併号 2 0 0 5 . 2. ことになる。言語政策や多文化主義に大きく関わる問題がいくつか示され た。学校教育予算については、次のような変化が起こった。オーストラリ アの初・中等教育を行っている学校は、州政府が管轄する公立学校、州政 府から独立している私立の、カトリック系学校と独立学校に別れる. O. 公立. 0 学校が麻薬、暴力問題で教育レベルが低下しているという理由で、現在3 ノt一セントの児童が私立学校に通っているが、その割合はより高くなりつ. つある 590 また、裕福な中上流家庭は子弟を授業料の高い私立学校に通わ しており、その理由としてアングロ・サクソン文化に根ざした伝統文化教 育を子弟に与えたいということをあげている 600 公立学校の教員組合は本 来労働党の支持団体でもあり、積極的に多文化主義、多言語主義の教育を 推進してきた。連邦政府の公立学校の教員組合に対する圧力も強くなって いる。連邦政府の教育を担当してきたスタップである、 K evinD o n n e l l yは 、. 2004 年 5月に‘Wh yOurS c h o o l sa r eF a i l i n g 'という本を出版し、その中 で伝統文化に基づいた教育を行うことを主張し、教員組合が‘p o l i t i c a l l y. t o oc o r r e c t '61であると批判している O それを受けるかのように、ハワード 連邦政府は 2 0 0 4 年度の教育予算を公立学校に対して前年度比2 7 パーセント 億ドルに対し、独立学校 49 パーセント、カトリック系学校 39 パー 増加の 98. 0 0 億ドルとした 620 さらに、連邦政府は各学校に対し セントの増加の計、 2. 1 0 億ドルの特別予 て、国旗掲揚を行い、国家主義的な教育を行わないと 3 算を配分しないことを 2 0 0 4 年 6月公表しへ労働党はそれに対して反対し ていた 640 ハワードだけでなく対立政党のレイサムも 4月2 1日多文化主義を政策と して推進することを批判した 650 もう現在オーストラリアにおいて十分多 文化社会が確立しており、いまさら多文化主義を公言して国家を分断する 必要がない、というのが骨子であるが多文化主義から後退していることは 明らかである。言語政策についても国家語としての英語の重要性を強調し ており、多言語主義からも後退している. O. ホイットラム、プレーザ一、. 川. aT. “ っ.
(25) オーストラリアの言語政策の現在. 永田. ホーク、キーティングと 1 9 7 0 年代から 1 9 9 0 年代まで続いた歴代の政権の 一貫した政策、多文化、多言語主義を放棄するものであろうか。 そして、筆者の日本帰国後、 2 004 年1 0月 9日選挙が行われ、その結果、 オーストラリア国民はハワードを支持した。近い将来、ハワード政権の下 では、多文化主義は後退し、さらに国家主義の政策に向かうことになり、 言語政策の面からは多言語主義が後退し、英語オンリーの言語政策をさら に推進する可能性が高い。 注. 1h t t p : / / w w w . a u s t r a l i a . o r . j p / s e i f u / n e w s / j a p a n e s e _ r e s o u r c e s / p df /S y d n e y O l y m p i c . p d f ( 2 0 0 4 年 7月2 1日現在) 2 h t t p : / / w w w . a u s t r a l i a . o r . j p / s e i f u / n e w s / j a p a n e s e j e s o u r c e s / p df /0 3 _ c u l t u r e . p d f ( 2 0 0 4 年 7月2 1日現在) 3 この文章は、近畿大学より派遣されて、 2 0 0 3 年 9月より 1年間、オーストラリア国 立大学 (ANU)とモナシュ ( Monash) 大学に在外研究員として滞在した折に調査した 結果を公表するものである。. 4 LoB i a n c o,] o s e p h 'Fromp o l i c yt oa n t i p o l i c y :Howf e a ro fl a n g u a g er i g h t st o o k p o l i c y m a k i n go u to fcommunityh a n d s ', i nLoB i a n c o,] o s e p h& W i c k e r t,R o s i e . ( e d s . )A u s t r a l i a nP o l i c yA c t i v i s mi nLanguageandL i t e r a c y ,M e l b o u r n e :L a nguageA u s t r a l i aL t d .2 0 0 1,p p . 1 3 4 4 . 5 C l y n e,M i c h a e l & 阻pp,S a n d r a .‘ A u s t r a l i a ' sc h a n g i n gl a n g u a g e demography' , P e o p l eandP l a c e,v o1 . 10,n o . 3,2 0 0 2 .p p . 2 9 3 5 . 6 言語政策の場面では、国語である英語を l i t e r a c y、アボリジニーの言語、移民の言語 a n g u a g eと使い分けるのが一般的である。 等の外国語を l 7 言語問題は多岐にわたり、関係省庁としては、移民と多文化を扱う省庁と、教育を 扱う省庁が担当している。教育は職業教育と密接に結びついていて、連邦政府では. DEST ( D e p a r t m e n to fE d u c a t i o n,S c i e n c eandT r a i n i n g )、 州 政 府 に よ っ て DEET ( D e p a r t m e n to fE m p l o y i n e n t,E d u c a t i o n andT r a i n i n g ) や DE&T( D e p a r t m e n to f E d u c a t i o n& T r a i n i n g ) 等名称も変わるが、労働も管轄している。問題が多岐にわ たっており関係省庁の管轄が変わるため、頻繁に省庁名が変更されている。 8 mainstreamとか benchmarkという用語が、アングロ・サクソン系のいわゆるオース トラリア人の文化・伝統をさすために使われている。「主流・標準」という政治的な合 意を含んだ語であり、主流から疎外されることを o u t s t r e a mという用語で表している。. 9 K ipp,S a n d r a,C l y n e,M i c h a e l& Pauwels,Ann e .lmmigrationandA u s t r a l ia ' sL a n ureauo fI m m i g r a t i o n,C a n b e r r a :M u l t i c u l t u r a landP o p u l a t i o nR e guageR e s o u r c e,B s e a r c h,1 9 9 5 . 1 0. F h υ. 臼 つ.
(26) 文学・芸術・文化. 1 6巻 1・2合 併 号. 2 0 0 5 . 2. . j p / i n f o /o c e a n i a /a u s t r a l i a /o l d h r d d b /a u s h O Ol .h t m l( 2 0 0 4 年 7月 1 1 h t t p : / / w w w . o v t a . or 2 1日現在) 1 2 松田陽子「オーストラリアにおける多文化主義と言語教育問題 J オーストラリア研 究 j 5号 、 1 9 9 4 .1 2,p p . 6 6 ・ 7 8 .. r. r. 青木麻衣子「オーストラリアの言語政策:二つの国家政策の理念と目標 J オーストラ 1 )ア研究 j1 5 号 、. 2 0 0 3 .3,pp. 48 6 0 .. 1 3 鎌田真弓「国民国家のアボリジニ J(小山修三・窪田幸子編『多文化国家の先住民 J世 界思想社、 2 0 0 2 ), p p . 1 2 9 1 5 2 . 1 4 “R e c o n c i l i a t i o na tt h ec r o s s r o a d s ",TheAge,8May,2 0 0 4 .. 1 日5 1 凶6 V i c t o r i a nA b o r i g i n a lCor 叩p o 町r a 副t i ∞ onf o rLanguagesの代表、 P a u lP a t o n氏カか冶らの情報。 1 7 “S c h o o l st ot e a c ha b o r i g i n a l l a n g u a g e s ",TheAge,3 0J u l y,2 0 0 4 . 1 8 N i c h o l l s,C h r i s t i n e' R e c o n c i l e dt ow h a t ?R e c o n c i l i a t i o nandt h eN o r t h e r nT e r r i t o η r ' sb i l i n g u a le d u c a t i o nprogram,1 9 7 3 1 9 9 8 ',i n Lo B i a n c o,J o s e p h &Wickert , R o s i e .( e d s . ) Australian P o l i c yA c t i v i s mi n Language and L i t e r a c y ,M e l b o u r n e : Lal1guageA u s t r a l i aL t d .2 0 0 1,p . 3 2 5 3 4 2 . 1 9 Truckenbrodt,And r e a& M i c h e l edeCourcy,' I m p l e m e n t i n gaBi 1 in g u a lP r o g r a m ' t h eA s s o c i a t i o no fI n d e p e n d e n tS c h o o l so fV i c t o r i a,2 0 0 2 . 2 0 Hartman,Deborah& JohnHel1d e r s o n( e d s . ) AboriginalLanguagesi nE d u c a t i o n, A l i c eS p r il1g s :IADP r e s s,1 9 9 4 . 2 1 H a r r i s,J o h n .' L θ s i n gandg a i n i n gal al1g u a g e :t h eS t o r yo fKr i o li nt h eNo r t h e r n T e r r i t o r y ',i nWalsh,M. & C o l i nY a l l o p( e d s . ) Language and Culture i nA b o r i g i n a l A u s t r a l i a,C a n b e r r a,1 9 9 3 . 2 2 K a l d o r,Susan& Malcom,I a n .‘ A b o r i g i n a lE n g l i s h :a no v e r v i e w 'i nRomain,S u z a n n e .( e d ) Language i nA u s t r a l i a,C a m b r i d g e : Cambridge U n i v e r s i t yP r e s s,1 9 9 1, p . 6 7 8 3 . 2 3 各州の教育省に予算について問い合わせをしたが、明確な返事は返ってこなかった。 オーストラリアの官庁ではトップ・ダウン方式を採用しており、組織の長の権限が強い。 予算関係の業務は内部で行われており、公開を拒否することが一般的である。また、 何らかの手段で情報を得て公開した場合に、担当者が公開により不利益をこうむった と判断した場合には、裁判に持ち込むことができる。. 2 4 国際交流基金を通じて各州の教育省に派遣されている日本人アドノパザーからの情 報による。. 2 5 久保田治郎編著『オーストラリア地方自治体論一行革先進国に見る地方分権』、ぎょ 9 9 8,p . 1 6 . うせい、 1 2 6 EREBUSCONSULTINGPARTNERS ' E v a l u a t i o no ft h eN a t i o n a lA s i a nLal1guages andS t u d i e si nA u s t r a l i a l 1S c h o o l sS t r a t e g y :A R e p o r tt ot h eDepartmento fE d u c a t i o n,S c i e n c ea l 1dT r a il1i n g ',2 0 0 2 . 2 7 I b i d . 2 8 EREBUS CONSULTING PARTNERS ' R e v i e wo ft h e Commonwealth Languages OtherThanEl1g l i s hProgramme:A R e p o r tt ot h eDepartmento fE d u c a t i o n,S c i el1c e. -26-.
(27) オーストラリアの言語政策の現在. 永田. andT r a i n i n g ', 2 0 0 2 . 2 9 モナシュ大学外国語担当教員からのメイルによる情報。 3 0 外国語の場合は、 1時間 9 4ドル、先住民言語の場合は 4 4ドルとなっている ( 2 0 0 4 年 現在)。. 3 1 羽T i c k e r t,R o s i e .' P o l i t i c s,a c t i v i s mandp r o c e s s e so fp o l i c yp r o d u c t i o n :A d u l tl i t e r nLoB i a n c o,]oseph& Wickert,R o s i e .( e d s . )AustralianP o l i c yAca c yi nA u s t r a l i a ',i t i v i s mi nLanguageandL i t e r a c y,M elbourne:LanguageA u s t r a l i aL t d .2 0 0 1,p p . 7 5 9 2 . 3 2 h t t p : / / w w w . d e s t . g o v . a u / t y / w e l l / ( 2 0 0 4 年 7月2 7日現在) 3 3 K e l l,P e t e r, ‘ Openf o rb u s i n e s s :Themarket,t h es t a t eanda d u l tl i t e r a c yi nA u s t r a i c k e r t,R o s i e .( e d s . )Australian l i aupt oandbeyond2 0 0 0 'i nLoB i a n c o,]oseph& W it e r a c y ,M elbourne:LanguageA u s t r a l i aL td .2 0 0 1, P o l i c yA c t i v i s mi n Language andL p p . 2 3 92 5 4 . i t e r a c ycouponp l a nf i n d sc r i t i c s ",TheAge,2 0May,2 0 0 4 . 3 4 “L i n i s t e rc a l l sf o rs t u d e n t s 'p r o g r e s st ober a n k e d ",TheAge,2 7J u l y,2 0 0 4 . 3 5 “M im mi.gov.au/amep/what/index.htm. ( 17] u l y,2 0 0 4 .現在) 3 6 http://www. 3 7 申請者本人に 5, 2 7 0ドル、その親族に 2, 5 5 5ドル ( 2 0 0 4 年現在) 3 8 h t t p : / / w w w . d e st .g o v . a u / s c h o o l s / l i t e r a c y a n d n u m e r a c y / e sl /i n d e x . h t m .( 2 1, ] u l y, 2 0 0 4 .現在) 3 9 Mckay,Penny, ' N a t i o n a ll i t e r a c y benchmarks and t h eo u t s t r e a m i n go f ESL nLoB i a n c o,]oseph& Wickert,R o s i e .( e d s . ) AustralianP o l i c yA c t i v i s m l e a r n e r s ',i i nLanguageandL i t e r a c y ,M elbourne:LanguageA u s t r a l i aL t d .2 0 0 1,p p . 2 2 1 2 3 8 . 4 0 2 0 0 4 年 6月、メルボルン総領事館、在留邦人数調査。 4 1 http://www. im m . ig o v . a u / s t a t i s t i c s / i n f o s u m m a r y / t e x t v e r s i o n / j a p a n . h t m( 2,J a n u ・. a ηT,2004,現在). r. 4 2 那須恒夫「メルボルン在住日本人永住者社会の特徴と言語生活 J オーストラリア研 4 号 、 1 9 9 8,p p . 1 3 3 1 5 8 . 究紀要.1 2 8( 国 4 3 永田高志「ブラジル日系人の言語生活:アサイ日系社会を例に J 移住研究.1 2 際協力事業団)、 1 9 9 1,pp. 45 5 4 . ipp,Sandra,C l y n e,M i c h a e l& Pauwels,Ann e .1 9 9 5,ImmigrationandA u s t r a l i a ' s 4 4 K LanguageR e s o u r c e s .B ureauo fI m m i g r a t i o n,C a n b e r r a :M u l t i c u l t u r a landP o p u l a t i o n R e s e a r c h 4 5 http://wwwおm . v i c . e d u . a u /( 2 0 0 4 年 7月2 7日現在) 4 6 h t t p : / / w w w . a l p h a l i n k .c o m . a u ; m i s j / i n d e x . h t m l( 2 0 0 4 年 7月2 7日現在) 4 7 豊田美由紀・宇田川洋子「オーストラリアにおける日本語教育活動の概況:現職者研 修活動を中心にして J (日本語教育学会調査研究委員会編、 2 0 0 2 ) 0 0 3年度 4 8 日本語学習者の統計的数値が 5年毎に国際交流基金からも示されており、 2 は3 8 万 1 ,9 5 4人と 1 9 9 8 年度の 3 0 万7 , 7 6 0人に比べ増加しているが、日本語教育担当の教. r. 員に対して郵送によるアンケート調査によるもので、補助金の関係で回答内容に信頼 を置くことができないことを交流基金自身も認めている. r. O. 4 9 マリー・ピット ( M a r i eP i t t ) ビクトリア州における LOTEプログラム J (国際交流 基 金 日本語国際センター『世界の日本語教育』、第 5号 、 1 9 9 9 ),p p . 3 9 5 2 .. i 円. “ ヮ.
(28) 文学・芸術・文化. 1 6 巻 1・2合併号 2 0 0 5 . 2. 5 0 “J a p a n e s es t u d i e sl o s et h e i ra l l u r e ",TheA u s t r a l i a n,1 4J u l y,2 0 0 4 . 5 1 2 0 0 4 年 6月時点で、全国の大学を集計すると 4年に渡り合計 6億 6 . 3 0 0 万ドルの負担 を学生が負うことになるという試算を教育省が出した。与党も野党もお互いの教育政 策に対して批判しており、教育問題がオーストラリアにとって大きな問題であること には変わりがない。. 5 2 “NOHECTr i s e,b u tf u l lf e e sa ta r t sc o l l e g e ",TheAge,7J u l y,2 0 0 4 . 5 3 友田多香子「変化のなかにある大学教育の現状 J(石附実・笹森健編『オーストラリ ア・ニュージーランドの教育』東信堂、 2 0 01 ) , p p . 1 9 9 ・ 2 1 4 . r e ea f t e r7 8d a y s ",TheAge,7November,2 0 0 3 . 5 4 “Hansonf “A u s t r a l i a nS o c i a lT r e n d s2 0 0 0,F a m i l y-F a m i l y 5 5A u s t r a l i a nB u r e a uo fS t a t i s t i c s, 0 0 0 .h t t p : / / w w w . a b s . g o v . a u / a u s s t a t s / F o r m a t i o n :C u l t u r a ld i v e r s i t yi nm a r r i a g e ",2 a b s @ . n s f /O / 5 6 TheN a t i o n,8J u l y,2 0 0 4 . オーストラリア概観 J,2 0 0 3 年1 1月 5 7 JETRO I 5 8 “Lathamp u tB e a z l e yb a c ki nt h ef i r i n gl i n e ' ¥ T h eA u s t r a l i a n,1 3J u l y,2 0 0 4 . 5 9 “K e v i nD o n n e l l y :T e a c h e r su n i o n sf a i lt h eg r a d e ",TheA u s t r a l i a n,2 1J a n u a r y, 2 0 0 4 . 6 0 アンググ ロ.サクソン文化に根ざした伝統文化、宗教、道徳を v a l u e o r i e n t e dと呼び、そ れに対する価値観を v a l u e n e u t r a lと呼ぶ。他の文化的価値を無視する政治的合意を含 ρ. んだ用語である。. 6 1 ‘ p o l i t i c a l l yc o r r ec t ' とは、 C a m b r i d g eA d v a n c e dL e a r n e r ' sD i c t i o n a r y( 2 0 0 3 ) によ e s c r i b e ssomeonewhob e l i e v e st h a tl a n g u a g ea n da c t i o n sw h i c hc o u l db eo f ると‘ d s p e c i a l l yt h o s er e l a t i n gt os e xa n dr a c e,s h o u l db ea v o i d e d 'と あ f e n s i v et oo t h e r s,e る。人種・性別による差別を行うことは国際的・人道的に認められていないという前提 を許容しながらも、多文化・多言語主義を主張する体制に対して、 t o o (過激な)という 語を付加して批判する場合に多く使われている。. 6 2 6 3 6 4 6 5. TheAge,1 2May,2 0 0 4 . “PMu n f u r l sh i sp a t r i o t i cs c h o o la g e n d a ",S y d n e yMorningH e r a l d,2 3J u n e,2 0 0 4 . “ F l yt h ef l a gp r o u d l y ",TheAge,2 7J u n e,2 0 0 4 . “L athamt a c k l e sm u l t i c u l t u r a l i s m ",TheAge,2 1A p r i l,2 0 0 4 .. -28-.
(29)
関連したドキュメント
青少年にとっての当たり前や常識が大人,特に教育的立場にある保護者や 学校の
彼の語る所によると,この商会に入社する時,経歴
「A 生活を支えるための感染対策」とその下の「チェックテスト」が一つのセットになってい ます。まず、「
(2)施設一体型小中一貫校の候補校 施設一体型小中一貫校の対象となる学校の選定にあたっては、平成 26 年 3
英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき
そのため、ここに原子力安全改革プランを取りまとめたが、現在、各発電所で実施中
自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から
● 生徒のキリスト教に関する理解の向上を目的とした活動を今年度も引き続き