<論説>訴訟上の和解の効力論序説(1)
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(2) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. 手 掛 か りと して,訴 訟 上 の 和 解 に お け る効 力 論 の 現 代 的 意 義 につ いて 検 討 し,そ の うえ で 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 を め ぐる幾 つ か の 間 題 につ いて の 私 見 を試 論 と して 呈 示 した い。. 二. 学説および判例の変遷. まず 最 初 に議 論 の 出発 点 と して, 立 法 の 経 緯 と それ に伴 う学 説 の 展 開 に つ いて 素 描 して お き た い。. 1旧. 旧民事訴訟法下の学説. 現 行 民 事 訴 訟 法267条 は,「 和 解 又 は請 求 の 放 棄 若 し くは認 諾 を 調 書 に記 載 した と き は,そ の 記 載 は確 定 判 決 と 同一一 の 効 力 を 有 す る」 旨を 定 めて い るが,明 治23年 制 定 の いわ ゆ る 旧 旧民 事 訴 訟 法 に お いて は こ う した規 定 は な く,和 解 調 書 が 債 務 名 義 に な る 旨 の 定 め が置 か れ て い る だ け で あ っ た (同法559条1号. ・2号)(1)。 この 旧 旧民 事 訴 訟 法 下 に お い て も,訴 訟 上 の 和. 解 に既 判 力 を 認 め る見 解 も あ っ たが(2),当時 は現 行 民 事 訴 訟 法267条 の よ う な 明 文 規 定 が な い こ とか ら,訴 訟 上 の 和 解 に既 判 力 を 認 め る こ と に は解 釈 論 と して 無 理 が あ っ た と言 わ ざ るを え ず,既 判 力 を 否 定 す る見 解 が 多 数 説 を 占 めて い た(3)。. 2旧. 民事訴訟法成立以降の学説. (1)大 正15年 改 正 の 旧民 事 訴 訟 法 は,現 行 民 事 訴 訟 法267条 と 同一 の 内 容 を有 す る規 定,す な わ ち,「和 解 又 ハ 請 求 ノ放 棄 若 ハ 認 諾 ヲ調 書 二 記 載 シ タル トキハ 其 ノ記 載 ハ 確 定 判 決 ト同一一ノ効 力 ヲ有 ス」(同 法203条)旨. の規. 定 を新 た に設 け た。 この 規 定 は,立 法 者 が,請 求 の 放 棄 ・認 諾 に関 して, それ まで 行 わ れ て い た判 決(放 棄 判 決 ・認 諾 判 決)を 調 書(放 棄 調 書 ・認 80.
(3) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). 諾 調 書)で も って 代 え,か つ そ の調 書 を判 決 の地 位 に 引 き上 げ る と と もに, それ まで 放 棄 判 決 や 認 諾 判 決 と は全 く別 個 に扱 わ れ て いた 和 解 調 書 を も, 判 決 の地 位 に 引 き上 げ よ う と企 図 した もの と言 わ れ て い る④。 こ こ に,和 解 調 書 を 「判 決 の 代 用 」 とみ な す こ とで,そ れ に既 判 力 を 認 め る こ との で き る法 律 上 の 明 文 根 拠 が 与 え られ たの で あ る。 た だ し,こ の 旧 民 事 訴 訟 法203条 の規 定 が 和 解 調 書 に確 定 判 決 と同 様 に 制 限 的 で な い既 判 力 を 認 め た と解 す べ きか,あ. る い は,意 思 表 示 の 暇 疵 な. ど実 体 法 上 の 無 効 原 因 が 存 在 しな い場 合 にの み 既 判 力 を 認 めた にす ぎな い とす る制 限 的 な 既 判 力 を 認 め た と解 す べ きか につ い て は争 い が あ る(5)。 当 時 の 立 法 者 意 思 を 推 測 し,前 者 の 制 限 的 で な い既 判 力 肯 定 説 に立 つ 改 正 で あ っ た と解 す るの が 多 数 説 で あ ろ う と思 わ れ る が(6),最近 で は,後 者 の 制 限 的 既 判 力 説 に立 った改 正 で あ った とす る反 対 説 も説 得 力 を も って 主 張 さ れ て い る(7)。. (2)そ. して,旧 法 下 の 学 説 に お いて,訴 訟 上 の 和 解 に既 判 力 が 認 め られ. るか 否 か を め ぐる議 論 は,訴 訟 上 の 和 解 の 法 的 性 質 論 と密 接 に係 わ りあ い な が ら展 開 され て き た。 そ こで は,実 に さ ま ざ まな 見 解 が 提 唱 され て い る が,そ れ らの 見 解 の 対 立 を 理 念 型 と して 示 せ ば以 下 の とお りとな る。 i)既. 判力肯定説. 訴 訟 上 の 和 解 を 純 然 た る訴 訟 行 為 とみ る説 に立 ち. な が ら,旧 民 事 訴 訟 法203条 の文 言 解 釈 か ら,訴 訟 上 の 和 解 を 「判 決 の 代 用 」 と して考 え(8),確定 判 決 と同 様 の 既 判 力 を 肯 定 す る見 解 で あ る(9)。この 見 解 に従 え ば,訴 訟 物 に関 して 私 法 上 の 和 解 が な され た と して も,そ れ は 訴 訟 上 の 和 解 を 成 立 させ る前 提 ま た は縁 由 にす ぎず,こ の 私 法 上 の 和 解 に つ いて 錯 誤 な どの 無 効 原 因 が あ って も訴 訟 上 の 和 解 に影 響 を 与 え ず,そ の 効 力 を 争 え るの は,再 審 事 由が 存 在 しか つ 再 審 手 続 き(再 審 に準 ず る手 続 き)に よ る場 合 に限 られ る こ と にな る⑩。 81.
(4) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. ii)既 判 力 否 定 説. 上 述 の 既 判 力 肯 定 説 の 対 極 に位 置 し,訴 訟 上 の 和. 解 の 法 的 性 質 と して 私 法 行 為 説 ま た は両 性 説 も し くは併 存 説 に立 っ た うえ で,旧 民 事 訴 訟 法203条 が 「確 定 判 決 と同 一一 の 効 力 を 有 す る」 と規 定 す る の は,訴 訟 終 了 効 と執 行 力 の み を 指 し,既 判 力 は これ に含 まれ な い と解 す る見 解 で あ るql)。この 見 解 に よ れ ば,既 判 力 を 否 定 す る根 拠 は主 と して 以 下 の 点 に求 め られ る。 す な わ ち,① 既 判 力 は国 家 機 関 た る裁 判 所 に よ る裁 判 と い う それ 自体 無 効 と い う こ との な い行 為 につ いて の み 認 め られ るべ き で,意 思 表 示 の 環 疵 等 に よ り無 効 とな りう る和 解 に は認 め られ るべ きで は な い(12)。 ま た,② 和 解 に 既 判 力 を認 め る と,再 審 事 由 に該 当 しな い意 思 表 示 の 報 疵 等 を 理 由 と して 和 解 の 無 効 を 争 う通 常 の 裁 判 手 続 きを 拒 否 す る こ と に な り,こ れ は 憲 法32条 の 裁 判 を受 け る権 利 を侵 害 す る(③ 。 そ して,③ た とえ 既 判 力 を 否 定 した と して も,訴 訟 上 の 和 解 の 紛 争 解 決 機 能 は,和 解 の 実 体 法 上 の 効 力 で あ る確 定 効(民 法696条)に. よ って 満 足 で き る と考 え. られ て い る⑭。 な お,こ の 説 は,当 初 は主 と して 実 務 家 に よ って有 力 に主 張 され て き たが,近 時 は通 説 と して の 地 位 を 獲 得 して い る。 iii)制 限 的 既 判 力 説. 折 衷 的 な 立 場 と して,訴 訟 上 の 和 解 は実 体 法 上. 有 効 で あ る場 合 に の み 既 判 力 を有 す る と考 え る見 解 で あ る⑮。 す な わ ち, 訴 訟 上 の 和 解 の 法 的 性 質 に関 して 両 性 説 ま た は両 行 為 併 存 説 に立 っ た うえ で,訴 訟 上 の 和 解 に も既 判 力 が 認 め られ る と しな が らも,私 法 上 の 和 解 が 実 体 法 上 無 効 で あ っ た り取 消 しに よ って 失 効 した場 合 に は,訴 訟 上 の 和 解 も無 効 にな る と い う。. 3判. 例の変遷. 現 行 民 事 訴 訟 法267条 の よ うな 訴 訟 上 の 和 解 に確 定 判 決 と 同一 の効 力 を 有 す る 旨を 定 め る規 定 が 存 在 しな か っ た 旧 旧民 事 訴 訟 法 の 下 に お いて,大 審 院 の 判 例 は,訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 と して 既 判 力 を 認 め る こ とを 否 定 して 82.
(5) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). い た(16)。 しか し,大 正15年 の 民 事 訴 訟 法 改 正 後 の 旧 民 事 訴 訟 法 の 下 で,大 審 院 は その 態 度 を 改 め,錯 誤 等 に よ る訴 訟 上 の 和 解 の 無 効 主 張 を 許 しな が ら も,原 則 と して は 既 判 力 を 肯 定 す るか の 口吻 を示 して い た⑰。 最 高 裁 判 所 にな って か らは,訴 訟 上 の 和 解 と 同一一 の 効 力 を 有 す る 「調 停 に代 わ る裁 判 」(戦 時 民 事 特 別 法19条2項. が 準 用 す る金 銭 債 務 臨 時 調 停 法7条1項). につ いて 既 判 力 を肯 定 した判 例G8)をは じめ,訴 訟 上 の 和 解 と同 一 の 効 力 を 有 す る特 別 法 上 の 裁 判 につ い て既 判 力 を肯 定 した判 例 が あ る⑲。 しか し他 方 で,直 接 に和 解 の 訴 訟 上 の 効 力 が 問 題 とな っ た事 案 に関 して は,実 体 法 上 の 環疵 が あ る場 合 に訴 訟 上 の和 解 の無 効 主 張 を 許 して い る判 例 もあ る⑳。 こ う した こ とを 全 体 的 に考 慮 して,制 限 的 既 判 力 説 が 現 在 の 判 例 の 立 場 で あ る と一般 的 に理 解 され て い る⑳。. 註 (1)同 法 は,執 行 力 を認 め る現 行 民 事 執 行 法22条7号. に相 当 す る 以 下 の よ うな 規. 定 を 置 いて いた 。 民 事 訴 訟 法559条 強 制 執 行 ハ 左 ノ諸 件 二 付 テ モ 亦 之 ヲ為 ス コ トヲ得 (第1号 お よ び第2号 省 略 。) 第3訴. ノ提 起 後 受 訴 判 所 二 於 テ又 ハ受 命 判 事 若 クハ 受 託 判 事 ノ面 前 二 於 テ 為 シ タル 和 解. 第4第. 三 百 八 十 一 条 ノ規 定 二 従 ヒ区 裁 判 所 二 於 テ 為 シ タル 和 解. (第5号 省 略 。) (2)雅 本 朗 造 「和 解 後 二 於 ケ ル訴 訟 手 続 ノ続 行」 法 学 論 叢6巻8号1220頁,加 正 治 「判 例 研 究 」 法 学 協 会 雑 誌43巻7号1248頁. 藤. 。. (3)由 井 健 之 助 「和 解,放 棄,認 諾 調 書 の効 力 に就 い て」 法 曹 会 雑 誌10巻8号2 頁 にお け る詳 細 な 学 説 の 紹 介 を 参 照 。 (4)司 法 省 民 事 局 『第51回 帝 国議 会 民 事 訴 訟 法 改 正 法 律 案 委 員 会 速 記 録(抄)」 (1929)371頁,岩 (1961)99頁. 松 三 郎 「民 事 裁 判 に お け る判 断 の 限 界」 「 民事 裁判 の研究」. 以 下,宮 脇幸 彦 「訴 訟 上 の和 解 」 中 田淳 一=三. 法 演 習1」(1963)226頁. ケ月 章 編 『民 事 訴 訟. な ど。. (5)改 正 に大 きな 影 響 を与 え た と考 え られ る学 説 を み れ ば,雑 本 朗造 ・前 掲(註 2)1220頁. は,制 限 的 で な い既 判 力 説 を主 張 す る し,加 藤正 治 ・前 掲(註2). 83.
(6) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. 1260頁 は,制 限 的 既 判 力 説 を 主 張 す る。 (6)た. とえ ば,こ う した指 摘 の多 くを代 表 して,町 田 顕 「 訴訟 上の和解の無効 と. 実 務 上 の取 扱 い」 鈴 木 忠 一=三. ケ月 章 監 修 「 実 務 民 事 訴 訟 講 座2」(1969)208. 頁。 (7)高. 田裕 成 「訴 訟 上 の和 解 の効 力 論 へ の一 視 座 」 井 上 治 典追 悼 「民 事 紛 争 と手. 続 理 論 の 現 在 」(2008)262頁 (8)た. 以下。. とえ ば,こ の こ と は次 の よ う に説 明 さ れ て い る。 す な わ ち,兼 子 一 『新 修. 民 事 訴 訟 法 体 系(増 訂 版)』(1965)307頁. に よ れ ば,訴 訟 上 の 和 解 が 調 書 に記 載. され る と,和 解 で もって 合 意 さ れ た法 律 関係 が,訴 訟 上 の 陳 述 に 基 づ き,判 決 で 確 認 され たの と 同様 に な る と い う。 す な わ ち,あ た か も和 解契 約 確 認 の 訴 え につ いて 確 認 判 決 が な され た の と同 様 にな る と解 され るの で あ る。 (9)た. とえ ば,兼 子 一 ・前 掲(註8)309頁,中. 157頁,小. 山昇 『民 事 訴 訟 法(5改. 田淳 一 『民事 訴訟 法講 義上 」(1954). 版)」(1989)444頁. な ど。 最 近 で は,梅 本 吉. 彦 「訴 訟 上 の和 解 の 効 力 につ い て」三 ケ月 章 古 稀 『民 事手 続法 学 の革 新(中 巻)」 (1991)568頁 ⑩. 以下。. 兼 子 一・『民 事 訴 訟 法 概 論 』(1938)348頁. に よれ ば,「既 判 力 は,判 決 又 は 調 書. 其 の もの の 形 式 的 効 力 を 当然 予 定 して居 る わ け で あ る か ら,当 事 者 は 最 早 訴 訟 上 の 和 解 の 無 効 を主 張 し訴 訟 の続 行 を求 め得 な い し,況 や そ の縁 由 た る に過 ぎ ぬ 私 法 上 の 契 約 の 無 効 や 取 消 を 主 張 す る余 地 はな い 」 と い う。 (ID岩 松 三 郎 ・前 掲 書(註4)99頁 126頁,斎. 以 下,石 川 明 『訴 訟 上 の 和 解 の 研 究 」(1976). 藤 秀 夫 編 「注 解 民 事 訴 訟 法(3)」(1973)401頁(斎. 藤 秀 夫 執 筆),三. ケ. 月 章 『民 事 訴 訟 法(全 集)」(1959)443頁 以 下,斎 藤 秀 夫=小 室 直 人 西 村 宏 一・ =林 屋 礼 二 編 『注 解 民 事 訴 訟 法(5)』(1973)184頁(斎 藤 秀 夫 ・渡 辺 吉 隆 ・小 室 直 人 執 筆),菊. 井 維 大=村. 頁,兼 子 一=松. 松 俊 夫 『全 訂 民 事 訴 訟 法1(増. 浦 馨=新. 堂 幸 司=竹 下 守 夫 『条 解 民 事 訴 訟 法 」(1986)718頁. (竹下 守 夫 執 筆),宮 脇 幸 彦 ・前 掲(註4)232頁,新 4版)」(2008)356頁,中 380頁(松. 浦 馨 執 筆),中. (1994)270頁 ⑫. 補 版)』(1984)1155. 堂 幸 司 『新 民 事 訴 訟 法(第. 野 貞 一 郎=松 浦 馨=鈴 木 正 裕 『民 事 訴 訟 法 講 義 」(1976) 野 貞 一 郎 「民 事 調 停 の 既 判 力 」 『民 事 訴 訟 法 の 論 点1」. 以 下,高 橋 宏 志 『重 点 講 義 民 事 訴 訟 法 ㈹ 」(2005)690頁. 岩 松 三 郎 ・前 掲(註4)100頁. ほか 多 数 。. 。. (13)岩 松 三 郎 ・前 掲101頁 。 ω ⑮. 岩 松 三 郎 ・前 掲103頁 以 下 。 中村英郎 「 裁 判 上 の和 解」 民 事 訴 訟 法 学 会 『民 事 訴 訟 法 講 座3巻 836頁 以 下,鈴 木 正 裕 本 和 彦 執 筆),伊. ⑯. 藤 眞 『民 事 訴 訟 法(第3版4訂. 大 判 大6年9月18日. 』(1955). 青 山善 充 編 『注釈 民事 訴訟 法(4)』(1997)486頁. 民 録23輯1342頁,大. 版)』(2010)440頁. 判 大9年7月15日. 以 下(山. 以 下 な ど。. 民 録26輯983頁 な. ど。 ⑰. 大 決 昭 和6年4月22日. 民 集10巻380頁,大. 84. 判 昭 和10年9月3日. 民 集14巻1886.
(7) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). 頁 な ど。 (18)最 大 決 昭 和31年10月31日 ⑲. 民 集10巻10号1355頁. 。. 罹 災 都 市 借 地 借 家 臨 時 処 理 法15条 の裁 判 に つ き最 大 判 昭和33年3月5日 12巻3号381頁,金. 銭 債 務 臨 時 調 停 法7条. 日民 集14巻9号1657頁 ⑳. 最 判 昭 和31年3月30日. 民集. の裁 判 につ き最 大 判 昭 和35年7月6. 。 民 集10巻3号242頁,最. 判 昭 和33年6月14日. 民 集12巻. 9号1492頁 な ど。 ⑳. 参 照,村 松 俊 夫=小 ター ル15民. 三. 1訴. 山昇=中. 事 訴 訟 法1(増. 野 貞 一 郎=倉. 田 卓 次=賀. 補 版)」(1984)244頁. 集 唱 『判 例 コ ンメ ン. 。. 訴訟上の和解の効力をめ ぐる議論の現代的位相. 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 とそ の 法 的 性 質 論 との 関 係. これ まで み て き た よ う に,確 か に訴 訟 上 の 和 解 の 法 的 性 質 に関 して,訴 訟 法 説 に立 て ば既 判 力 肯 定 説 を 導 きや す い し,私 法 行 為 説 に立 て ば既 判 力 否 定 説 を 導 きや す い。 しか し,た とえ ば,訴 訟 法 説 に立 脚 しな が ら も既 判 力 否 定 説 に立 つ 見 解 も あ る し⑳,ま た私 法 行 為 説 に依 拠 しな が ら既 判 力 を 肯 定 す る見 解 もあ る㈱。 こ う した理 論 状 況 を 考 え れ ば,訴 訟 上 の和 解 に既 判 力 を 認 め るべ きか 否 か は,そ の 法 的 性 質 論 か ら演 繹 的 に導 出 され る もの で はな く,訴 訟 上 の 和 解 に よ る紛 争 解 決 の 終 局 性 を 考 慮 しつ つ,錯 誤 に よ る無 効 や 詐 欺 に よ る取 消 しと い っ た実 体 法 上 の 環 疵 の 主 張 を どの 範 囲 で 許 す の が 正 義 ・衡 平 にか な うか と い う実 践 的 な 問 題 と繋 が って い る こ とが 理 解 で き る。 そ して,こ の 後 者 の 問 題 は,裁 判 所 にお け る訴 訟 上 の 和 解 が ど の よ うな 経 過 を 辿 りな が ら成 立 す るの か と い う和 解 成 立 過 程 の 実 態 認 識 と 密 接 に関 係 して くるの で あ る。 そ うす る と,既 判 力 肯 定 説 は,訴 訟 上 の 和 解 の 成 立 過 程 に関 して,そ れ は裁 判 所 の 面 前 で その 事 実 上 の 仲 介 な い し調 停 に よ りな され,当 事 者 と し て も特 に慎 重 に な され て い る との実 態 認 識 に基 づ い て お り⑳,判 決 に代 わ 85.
(8) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. る もの と して 和 解 に よ って 訴 訟 を 終 了 させ たか ぎ りは,紛 争 解 決 の 終 局 性 が 優 先 され,判 決 と 同様 に再 審 事 由 に該 当す る場 合 で な けれ ば,そ の 紛 争 解 決 基 準 を 覆 滅 させ るべ きで はな い と い う実 践 的 意 図 が あ らわ れ た解 釈 と 言 え よ う。 な お こ こ に付 言 す れ ば,こ う した既 判 力 肯 定 説 に立 つ 見 解 は, 今 日で は ほ とん ど見 受 け られ な くな って きて い る㈱。 これ に対 して,制 限 的 既 判 力 説 は,一 一 方 で 和 解 内容 た る紛 争 解 決 基 準 に 不 可 抗 争 性 を 作 り出す 必 要 性 を 認 識 す る こ とか ら,訴 訟 上 の 和 解 に既 判 力 が 生 じる こ とを 肯 定 しな が らも,他 方 で 和 解 の 成 立 に あ た り裁 判 所 の 関 与 の 程 度 が 千 差 万 別 で あ る と い う実 態 を 考 慮 して,必 ず しも そ こ に錯 誤 等 の 実体法上の王 段疵 が 生 じる こ とを 全 面 的 に排 除 で きな い とす る見 解 と い う こ とが で き る(26)。 そ して,既 判 力 否 定 説 は,訴 訟 上 の 和 解 と い って も,そ の 実 質 は私 法 上 の 和 解 と大 差 が な い と い う和 解 成 立 過 程 の 実 態 認 識 の も とで,そ れ が 私 法 上 の 和 解 と全 く異 な る取 扱 いを 受 け るの は,当 事 者 間 の 利 害 の 調 節 の 仕 方 と して 適 当 で は な い と判 断 す る。 そ して,訴 訟 上 の 和 解 の 拘 束 力 と して は,和 解 の実 体 法 上 の効 力 で あ る確 定 効(民 法696条)を. 認 め る こ とで 十. 分 だ と され る。 む しろ この 実 体 法 上 の 確 定 効 の 解 釈 ・適 用 に際 して,事 件 ご との 具 体 的 な 訴 訟 手 続 の 進 行 状 況,裁 判 官 や 弁 護 士 の 関 与 の 程 度 な ど和 解 成 立 過 程 の 一一 部 を な す 訴 訟 上 の 経 過 を も十 分 に勘 案 す る こ と に よ って, は じめて 当事 者 間 の 利 害 の 適 切 な 調 節 が 可 能 とな る と主 張 され て い る⑳。. 2訴. 訟 上 の 和 解 の 効 力 を め ぐ る議 論 の 新 た な 展 開. (1)高. 田教授 の見解. こ の よ うに 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 を め ぐる議 論. が,そ の 法 的 性 質 論 か ら一一 応 切 り離 され て 実 質 化 す る 中で,近 時,既 判 力 否 定 説 を 支 持 す る高 田裕 成 教 授 に よ って,新. たな 一歩 を 踏 み 出す 注 目す べ. き見 解 が 表 明 され た㈱。 す な わ ち,ま ず 最 初 に,訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 につ 86.
(9) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). い て の根 拠 条 文 で あ る民 事 訴 訟 法267条 の 沿 革 を探 り,訴 訟 上 の和 解 の 調 書 へ の 記 載 が 「確 定 判 決 と 同一一 の 効 力 を 有 す る」 と い う文 言 に よ って 肯 定 され た既 判 力 は後 に制 限 的 既 判 力 と呼 ばれ る もの で,立 法 当 初 か ら 同条 は 和 解 の 実 体 法 上 の 環 疵 の 主 張 を 遮 断 しな い規 律 で あ った と い う こ とが 論 証 され る(29)。 それ に続 けて,こ れ まで 「訴 訟 上 の 和 解 の 既 判 力 と して 論 じられ て き た問 題 は,法 的 性 質 論 に お け る訴 訟 法 説 を 採 用 しな い場 合 にお いて 肯 定 さ れ る実 体 法 上 の 和 解 の効 力 で あ る確 定 力(民 法696条)に. 代 え て,あ. る い は加 え て,そ の 調 書 へ の 記 載 に いか な る効 果 を 観 念 す る こ とが 適 切 か と い う問 い に対 す る応 答 と して捉 え る こ とが可 能 で あ ろ う」(30)と す る。 す な わ ち,「既 判 力 否 定 説 に お い て は,実 体 法 上 の 和 解 の 確 定 力 の み が 肯 定 さ れ,こ れ を 超 え る効 果 は想 定 され て いな い。 これ に対 して,制 限 的 既 判 力 を 肯 定 す る見 解 に お いて は,実 体 的 な 拘 束 力 に代 え て,裁 判 所 お よ び当 事 者 を 拘 束 す る効 力 と して の 既 判 力 と い う効 果 を,既 判 力 を 肯 定 す る見 解 に お いて は,さ. らに,和 解 の 王 段疵 の 主 張 を(再 審 事 由が 存 在 す る場 合 に,再. 審 手 続 に お いて 主 張 す る場 合 を 除 き)遮 断 す る効 果 を,当 事 者 間 の 実 体 法 上 の和 解 の 調 書 記 載 に訴 訟 法 が付 与 して い る と考 え られ て い る」Gl)の であ る。 そ して,こ の 問 い に対 す る応 答 は,訴 訟 上 の 和 解 の 既 判 力 で も って 想 定 され る べ き 効 果 が どの よ うな も の で あ るの か を 検 討 した うえ で,「 既 判 力 と い う媒 介 項 に頼 る こ とな く,実 体 法 上 の 和 解 の 確 定 力 を いわ ばベ イ ス ラ イ ンと して展 開 す る こ とが 試 み られ て しか るべ き で あ る」 とい う勧。 そ し て,こ. こで 注 目す べ き は,こ う した応 答 の 試 み に際 して,上 述 の 既 判 力 で. も って 想 定 され るべ き効 果 を 訴 訟 上 の 和 解 に お け る 「当 事 者 の 共 同決 定 に 取 り込 む こ とを 認 め る可 能 性 が な いか を 問 う」 と い った 極 めて 独 創 的 な 方 向 性 が示 さ れ た こ とで あ る(33)。 す な わ ち,「 民 法696条 の も とに お け る和 解 の 実 体 的 効 果 を 基 準 点 とす る場 合 に は,そ 87. う した 実 体 的 効 果 を い わ ば デ.
(10) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. フ ォル トした うえ で,当 事 者 は,そ の 合 意 に よ り,強 行 法 規 あ る い は公 序 に反 しな い限 度 で その 確 定 力,拘 束 力 を 強 化 す る こ とを 認 め る」剛 こ と も, 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 に関 す る規 律 を め ぐる可 能 な 制 度 設 計 で あ る こ とが 示 唆 さ れ る。 た とえ ば,「 無 効 の 主 張 を どの 範 囲 で 許 容 す るか と い う規 律 に つ いて は,デ フ ォル トと して は実 体 法 上 の 規律 に した が う(民 法696条 の も とで 主 張 す る こ とが 許 され る王 段疵 の 主 張 を 許 容 す る)と い う見 解 に よ る と して もな お,実 体 的 な 和 解 を その 無 効 に導 くよ うな 環 疵 を 帯 びて い る場 合 で あ って も,再 審 事 由が 存 在 す る場 合 を 除 き訴 訟 上 は その 無 効 を 主 張 す る こ とが で きな い と い う規 律 を,当 事 者 は その 合 意 な い し共 同決 定 で 妥 当 さ せ る こ とは で き な い か」㈱ とい っ た制 度 設 計 の 可 能 性 が 探 求 さ れ るの で あ る。. (2)Sch6pflinの じれ ば,そ. 見解. と こ ろ で,ド. イ ツの民事 訴 訟 法学 に 目を転. こ で は 判 例 ・学 説 と も に 既 判 力 否 定 説 が 支 配 し て い る 中 で(36),. Sch6pflinは,や. は り既 判 力 否 定 説 に 立 ち な が ら も,訴. 訟 法 的考 慮 か ら和. 解 の 無 効 ・取 消 事 由 を 制 限 す る こ と に よ っ て 和 解 の 実 体 法 的 な 確 定 効 を 強 化 す る 方 途 を 模 索 し,結. 果 と して は 既 判 力 肯 定 説 と 同 様 の 規 律 を 導 き 出 す. と い う注 目 す べ き 見 解 を 表 明 し て い る ⑳。 こ のSch6pflinの. 見 解 に お いて. は,様. 々 な 実 体 法 的 あ る い は訴 訟 法 的 な 考 慮 が 具 体 的 に な さ れ て い るの. で,以. 下 で は そ れ を や や 詳 し く紹 介 し た い 。. i)ま. ず,Sch6pflinは,以. 下 の よ う な 概 要 の 下 級 審 判 決(38)を取 り 上 げ. る。 す な わ ち,X(原 (ausscheiden),持. 告)は,民. 法 上 の 組 合 で あ るY(被. 告)か. ら脱 退 し. 分 相 当 額 の 金 銭 の 払 戻 請 求 権(Abfindungssnspruch). の 残 額 をYに. 対 して 訴 求 し た 。 こ の 訴 訟 に お い て,Yは,Xが. ら約11,000マ. ル ク の価 値 が あ る台 所 機 械 の 入 った 当組 合 の未 開封 の 段 ボ ー. 88. 組合財産か.
(11) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1) ル 箱4個. を 持 っ て 行 っ た と 争 っ た 。 しか しな が ら,Xは,そ. に は 砂 の 入 っ た ビニ ー ル 袋 しか な か っ た と 主 張 し,1人 を 証 明 し た 。 こ れ に 基 づ い て,1992年7月,当. の 段 ボー ル 箱 の証人がその こと. 事 者 た ち は,Yが. 更 な る支. 払 い を 義 務 づ け られ る 旨 の 内 容 を 有 す る 訴 訟 上 の 和 解 を 締 結 した 。 そ れ か ら約4年. が 経 過 し た1996年8月,Yは,こ. 訴 訟 を 続 行 し た う え で,Xの れ ば,Xは. 所 は,こ. 請 求 を 棄 却 す る よ う に 求 め た 。Yの. 嘘 を つ い て お り,そ. と い う の で あ る 。1人 の証言を. 主張 によ. の 和 解 締 結 の 後 に台 所 機 械 の 売 却 を 試 み た. の 証 人 が こ のYの. 「明 白 で,確. と 判 断 し た 。 そ こ で,裁. の 和 解 を 取 消 し(anfechten),. か で,矛. 主 張 に 沿 っ た 証 言 を し た が,裁. 判. 盾 が な い 」 も の と して 措 信 で き る. 判 所 は,中. 間 裁 判 で 訴 訟 の 続 行 を 決 定 した 。 こ れ. を 不 服 と して 控 訴 が な さ れ た が,控. 訴 審 裁 判 所 は 以 下 の よ う に 判 示 して 控. 訴 を 棄 却 した。. 「証 拠 の 評 価 に基 づ い て,原 告Xが. 和 解 契 約 の 締 結 後 も未 だ 問. 題 とな っ た機 械 を 有 して い た こ とか ら出発 す るな ら ば,Xは,故 意 に も と つ く不 真 実 の主 張 と,証 人 の 操 作(Manipulation)に よ って,善 良 の 風 俗 に反 す る方 法 で 和 解 契 約 の 締 結 を 達 成 した こ とが 確 定 で き る。 … … この こ とが,被 告Yに 対 して,例 外 と して 和 解 を 取 消 す 権 限 を 与 え るか ど うか は未 解 決 の ま ま に して お くこ とが で き る。 いず れ に せ よ,善 良 の 風 俗 に反 してYを 害 した こ と は,原 告Xが 和 解 の 訴 訟 終 了 効 に依 拠 す る こ とを 禁 じる。 も し連 邦 通 常 裁 判 所 の 一一 貫 した判 例 に したが って,民 法826条(善 良 の 風 俗 に反 す る故 意 の 加 害 に対 す る損 害 賠 償. 筆 者)の 要 件 が 存 在. す る場 合 に は,既 判 力 の あ る確 定 判 決 に依 拠 す る こ と さえ 許 され な いな らば,こ の こ と は,両 当事 者 に よ って もた ら され た 訴 訟 の 終 結 に依 拠 す る こ と に も,な お さ ら妥 当す る。」 89.
(12) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. ii)Sch6pflinは,こ. の 事 案 に 関 して,実. 体 法 上 の 暇 疵 に よ る 当該 和 解. 契 約 の 無 効 ・取 消 しの 可 能 性 等 に つ い て 以 下 の よ う な 検 討 を 加 え る 。 ア)ド. イ ツ 民 法779条. に よ る無 効. 周 知 の よ う に ドイ ツ 民 法 に お い て. は,一 般 的 な 錯 誤 の 規 定 で あ る民 法119条 別 規 定 と して,次. の よ う な 民 法779条. ドイ ツ民 法779条(和 1法. の ほ か に,和 解 に 関 す る 錯 誤 の 特. が あ る。. 解 の概 念,和 解 の基 礎 に つ い て の錯 誤). 律 関 係 に つ い て の 当事 者 間 の 争 い 又 は不 明 確 を 互 譲 に. よ って 除 去 す る契 約(和 解)は,当. 該 契 約 の 内容 に よれ ば確. 定 した もの と して その 基 礎 に され た事 実 関 係 が 真 実 に合 致 せ ず,か つ その 事 情 を 知 って いれ ば その 争 い又 は不 明 確 は生 じ え な か っ た場 合 に お いて は,こ れ を 無 効 とす る。 2請. 求 権 の 実 現 が 不 確 実 で あ る こ と は,法 律 関 係 につ いて の. 不 明 確 と 同 じもの とみ な す 。. Sch6pflinは,訴. 訟 に お い て 対 立 す る事 実 に 関 して 証 拠 が 申 し立 て られ. た場 合,「 和 解 の基 礎 」(Vergleichsgrundlage)は,裁. 判 官 に よ る証 拠 評. 価 が 比 較 的 一 方 的 で あ っ た と して も(引 き続 き争 い が あ る限 り),当 該 事 実 の 証 明 の 不 可 能 性 で あ る と い う。 そ こで,当 事 者 た ちが 更 な る証 拠 の 不 存 在 を和 解 の 基 礎 に した よ うな 特 別 な 場 合 で な いか ぎ り,後 に証 拠 が 発 見 さ れ る こ とに よ って 和 解 の 無 効 が もた ら され る こ と は な い(39)。 す な わ ち,既 判 力 の あ る判 決 の 場 合 と異 な る こ とな く,原 則 と して,新. たな(間 接)事. 実 や 証 拠 に よ って 訴 訟 上 の 和 解 を 攻 撃 す る可 能 性 は存 在 しな い。 本 件 事 案 につ いて み れ ば,後 にXが 台 所 機 械 の 売 却 を 試 み た と い う新 たな 間 接 事 実 と その 証 拠 は,Xの て,知. 手 元 に台 所 機 械 が 存 在 す るか と い う こ と に争 いが あ っ. られ た証 拠 方 法 で も って は証 明 で きな か っ た と い う事 実 に対 して, 90.
(13) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). 何 等 の 変 更 を 加 え る もの で はな い。 更 な る証 拠 方 法 の 不 存 在 は,和 解 の 基 礎 と され て いな いの で あ る㈲。 イ)ド イ ツ民 法119条 に よ る取 消 し. 和 解 は契 約 と して の 性 質 を 有 す る. の で,そ れ に は以 下 の よ うな ドイ ツ民 法119条 の錯 誤 の規 定 が適 用 さ れ る。. ドイ ツ民 法119条(錯 1意. 誤 を理 由 とす る取 消 し). 思 表 示 は,表 意 者 が 意 思 表 示 に際 して そ の 内容 につ いて. 錯 誤 が あ っ た場 合 又 は その 内容 の 表 示 を す る意 思 が な か った 場 合,表 意 者 が 事 情 を 知 り,か つ その 事 情 を 合 理 的 に判 断 し た とす れ ば,そ の よ うな 意 思 表 示 を しな か った で あ ろ う と認 め られ る と き は,こ れ を 取 消 す こ とが で き る。 2取. 引 上 重 要 と認 め られ る人 又 は物 の 性 質 に関 す る錯 誤 は,. 意 思 表 示 の 内容 に関 す る錯 誤 とみ な す 。. 和 解 に 対 す る 本 条 の 適 用 に つ い て,Sch6pflinは,一. 方 当事 者 の錯 誤 が. そ こ に 争 い や 不 確 実 さ が 存 在 す る と こ ろ の 事 情(Umstande)に の で あ れ ば,そ そ の う え で,本 で な く,更. れ は 重 大 な 錯 誤 と は い え な い こ と を,ま 件 事 案 に 関 して,表. 関す るも. ず 確 認 す るql幽。. 示 行 為 に 錯 誤 は 存 在 して い な い だ け. な る 証 拠 方 法 が 存 在 しな い こ と も 明 示 さ れ た 和 解 の 内 容 と な っ. て い な か っ た こ と を 理 由 に,Sch6pflinは 証 拠 方 法 が 存 在 しな い と い うYの. 本 条 の 適 用 を 否 定 す る。 更 な る. 期 待 は,和. 解 を 締 結 す る動 機 にす ぎな い. と い う の で あ る ⑬。 ウ)ド イ ツ 民 法123条. に よ る取 消 し. ドイ ツ 民 法 は,詐 欺 に よ る 意 思 表. 示 の 取 消 し に 関 して 以 下 の よ う に 定 め て い る 。. ドイ ツ民 法123条(詐. 欺 又 は強 迫 を理 由 とす る取 消 し) 91.
(14) 近畿大学法学. 1詐. 第58巻 第2・3号. 欺 ま た は違 法 な 強 迫 に よ って 意 思 表 示 を な す よ う決 定 さ. せ られ た者 は,そ の 意 思 表 示 を 取 り消 す こ とが で き る。 2省. 略. Sch6pflinは,ま. ず,錯 誤 と は異 な り詐 欺 に よ る取 消 しに関 して は,詐 欺. が 争 いや 不 確 実 さが 存 在 す る と こ ろの 状 況 に関 係 す る場 合 で も,本 条 の 適 用 は排 除 され な い こ とを 確 認 す る。 それ に続 けて,訴 訟 に お け る 当事 者 た ち は,事 実 の 主 張 が 対 立 して い る場 合,相 手 方 が 嘘 を 言 って い る こ とか ら 出発 す るの で,ほ その うえ で,さ. とん どの 詐 欺 はす で に構 成 要 件 的 に排 除 され る と い う。 らにSch6pflinは,訴. 訟 法 上 の 観 点 か ら詐 欺 に よ る取 消 原. 因 に制 限 を加 え るべ き こ と を主 張 す る幽。 こ こで は法 的 安 定 性 と実 体 的 正 義 の いず れ を 優 先 す べ きか と い う民 事 訴 訟 法 に お け る永 遠 の テ ー マが 問 題 と な って い るの で あ る。Sch6pflinは,こ あ る か ら,こ こで は ドイ ツ民 訴 法580条(再. れ を解 決 す るの が 再 審 の 制 度 で 審 の訴 え)を 類 推 適 用 す べ き. と提 言 す る。 そ して,そ の 類 推 の 根 拠 を 以 下 の よ うな 類 似 性 に求 め る。 す な わ ち,な る ほ ど判 決 と訴 訟 上 の 和 解 に は相 違 が あ り,判 決 は法 の 厳 格 な 適 用 に基 づ く裁 判 所 の 公 権 的 判 断 に よ って 訴 訟 を 終 結 す るの に対 して,和 解 は訴 訟 に お け る勝 訴 の 見 込 み の 観 点 か らな す 当事 者 の 合 意 に基 づ く法 律 関 係 の 確 認 ・形 成 で 訴 訟 を 終 了 す る。 しか し,訴 訟 上 の 和 解 が 判 決 の 場 合 と 同様 に確 定 力 を 要 求 す るの で あれ ば,判 決 が 正 し くな い基 礎,こ. と に詐. 欺 が 存 在 す る基 礎 に基 づ いて な され た場 合 に,そ れ は限 定 的 な 再 審 事 由 と して 規 定 され て い るの と 同 じよ う に,誤 っ た事 実 を 基 礎 に して 訴 訟 上 の 和 解 が 締 結 され た場 合 は,そ れ は限 定 的 な 原 状 回 復 事 由 と して 認 め られ な け れ ばな らな い と い うの で あ る。 さ らに,詐 欺 に よ る取 消 しの 場 合 に は,刑 事 有 罪 判 決 等 が 必 要 で あ る と の定 め(ド イ ツ民 訴 法581条)や 定 め(同586条)も. 類 推 適 用 され る べ き で あ る とい う。 92. 出訴 期 間 の.
(15) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). そ こで,本 件 事 案 につ いて み れ ば,刑 事 有 罪 判 決 等 が 提 示 され て いな い の で,第 一一 審 裁 判 所 は新 たな 証 人 尋 問 を す べ きで はな く,訴 訟 上 の 和 解 に よ っ て訴 訟 が 終 了 して い る こ とを確 認 す べ き で あ った と,Sch6pflinは. 主. 張 す るの で あ る㈲。 エ)ド イ ツ民 法138条 に よ る無 効. 詐 欺 に よ る取 消 しが 認 め られ な い. な らば,次 に ドイ ツ民 法138条 が 規 定 す る善 良 の風 俗 違 反 に よ る無 効 が 問 題 とな る。 同条 は以 下 の よ う に定 め る。. ドイ ツ民 法138条(善. 良 の風 俗 に反 す る法 律 行 為;暴 利 行 為). 1善. 良 の 風 俗 に反 す る法 律 行 為 は無 効 で あ る。. 2特. に相 手 方 の 窮 迫,無 経 験,判 断 能 力 の 欠 如 又 は弁 識 能 力. の 著 しい不 十 分 に乗 じて,給 付 と比 較 して 著 し く均 衡 を 失 す る財 産 上 の 利 益 を,自. 己 ま た は第 三 者 に対 す る反 対 給 付 と し. て,相 手 方 に約 束 さ せ 又 は 与 え させ る法 律 行 為 は 無 効 で あ る。. 確 か に詐 欺 以 外 の 他 の 事 情 に よ って 法 律 行 為 が そ の 全 体 と して 善 良 に反 す る と評 価 で き る場 合 に は,善 良 の 風 俗 に反 す る こ とが 理 由 づ け られ る が,し か し,本 件 事 案 が そ の よ うな場 合 で は な い こ とを,ま ずSch6pflin は一一 言 す る。 それ に続 けて,訴 訟 上 の 和 解 が 暴 利 行 為 と して 無 効 にな る場 合 につ い て検 討 す る㈲。 そ して,私 法 上 の 和 解 につ い て,善 良 の風 俗 違 反 は,和 解 の 内容,手 段 お よ び 目的 の 全 体 的 考 察 にお いて 審 査 され な けれ ば な らず,最 終 的 に は和 解 締 結 前 の 法 律 状 態 に立 ち戻 る こ とが 不 可 避 で あ る こ と を確 認 した うえ で,Sch6pflinは,訴. 訟 を 終 結 させ る とい う特 別 な 効. 果 を 有 す る訴 訟 上 の 和 解 が,ど の 範 囲 で 裁 判 外 の 和 解 と異 な って 扱 わ れ る べ き か を 問 題 とす る。 こ の 問題 に 対 す る応 答 と して,Sch6pflinは,訴 93. 訟.
(16) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. 上 の 和 解 と請 求 の認 諾 判 決 働 とを 比 較 しな が ら,以 下 の よ うな 結 論 を 導 き 出す 。 す な わ ち,訴 訟 上 の 和 解 に関 す る善 良 の 風 俗 違 反 は,和 解 の 内容 自 体 か ら生 じ,か つ 再 審 事 由 を基 礎 づ け る新 た な 事 実 や 証 拠 に 基 づ い て の み,そ れ を 認 定 す る こ とが で き る と い うの が,そ れ で あ る。 訴 訟 上 の 和 解 が 善 良 の 風 俗 に反 す るか ど うか(た. とえ ば,給 付 と反 対 給 付 の 不 相 当性 の. 問 題)の 判 断 の た め に,和 解 を 締 結 す る以 前 の 客 観 的 な 状 態 に立 ち返 らな けれ ばな らな い こ と は,訴 訟 上 の 和 解 の 目的 に反 す る と い うの で あ る。 な ぜ な ら,訴 訟 上 の 和 解 は和 解 の 締 結 前 に存 在 す る真 実 の 法 律 状 態 を 解 明 す る必 要 性 と切 り離 され,和 解 当事 者 は実 体 法 上 の 法 律 状 態 に合 致 しな い不 利 益 の 危 険 を 甘 受 す るか らで あ る。 そ して,こ. う した基 準 に従 え ば,本 件. 事案 に おい て は善 良 の風 俗違 反 は生 じて い な い とい う判 断 に至 って い る(48)。 オ)ド イ ツ民 法826条 に基 づ く強 制 執 行 や 執 行 文 付 与 の拒 絶. 本件事案. に お け る控 訴 審 判 決 が そ の理 由づ け の 根 拠 条 文 と して 示 した ドイ ツ民 法 826条 は,以 下 の よ うに規 定 す る。. ドイ ツ民 法826条(善. 良 の風 俗 に反 す る故 意 の加 害). 善 良 の 風 俗 に反 す る方 法 で も って,故 意 に他 人 に損 害 を 加 え た 者 は,こ れ に対 して 損 害 を 賠 償 しな けれ ばな らな い。. ドイ ツ連 邦 通 常 裁 判 所 は,民 法826条 に基 づ き,既 判 力 の あ る判 決 の 利 用 と いえ ど も善 良 の 風 俗 に反 す る場 合 が あ る こ とを 認 め,そ れ に よ る強 制 執 行 を許 さな い嚇 ① 。 連 邦 通 常 裁 判 所 の 判 例 は,既 判 力 を有 す る判 決 に 対 し て それ が 誤 って い る と主 張 す るだ けで,新. た に訴 訟 が 開 始 され,以 前 の 訴. 訟 で 勝訴 した 当事 者 が 改 めて 自 己の 権 利 を め ぐって 争 わ な けれ ばな らな い こ と を認 め るの で あ る。 しか し,こ の こ と は,債 務 名 義 を 有 して い る 当事 者 に不 公 正 を 強 い る し,法 が 再 審 事 由を 限 定 して い る趣 旨 に反 す る こ と に 94.
(17) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). な る と して,Sch6pflinは Sch6pflinは,こ. この 判 例 に反 対 す る。 既 に こ う した理 由 か ら,. の判 例 の 解 釈 を 和 解 に適 用 す る こ と は否 定 さ れ な けれ ば. な らな い と主 張 す るが,さ. らに 以 下 の 理 由 を こ れ に 付 け加 え る。 す な わ. ち,当 事 者 は和 解 を 締 結 す る こ と に よ って 自 らの 意 思 で 債 務 名 義 を 作 り出 したの で あ るか ら,こ の 債 務 名 義 は,自. らの 処 分 権 か ら 出で 且 つ 意 識 され. た危 険 に基 づ いて お り,こ の 点 で 当事 者 に と って 回 避 す る こ との で きな い 裁 判 所 の 判 断 に基 づ く判 決 と は異 な る。 そ こで,当 事 者 は,和 解 関 与 者 と して,相 手 方 当事 者 の 主 張 に関 す る真 実 の 内容 を,裁 判 所 よ りも通 常 は十 分 に評 価 で き るの で,当 事 者 は判 決 の 場 合 よ りも和 解 の 場 合 の 方 が そ の 保 護 の 必 要 性 が 低 いの で あ る と い う61)。 それ ゆえ に,Sch6pflinは,本. 件 事 案 に お け る控 訴 審 判 決 が,民 法826条. を 根 拠 に確 定 判 決 へ の 依 拠 を 否 定 す るな らば,こ の こ と は訴 訟 上 の 和 解 に も あ て は ま る と した 点 に異 論 を 唱 え,当 事 者 は,客 観 的 な 裁 判 所 に よ る 誤 っ た判 決 の 好 ま し くな い結 果 を 引 き受 けな けれ ばな らな い以 上 に,自 ら の 誤 った判 断 の結 果 を引 き受 け な けれ ば な らな い はず で あ る と論 断 す る励。 iii)以 上 の よ うな 検 討 を 経 て,訴 訟 上 の 和 解 は,法 的 紛 争 を 最 終 的 に終 わ らせ,当 事 者 に法 的 平 和 を 創 造 す る もの で あ るか ら,実 体 法 的 な 無 効 ・ 取 消 事 由の 主 張 に よ って 容 易 に訴 訟 上 の 和 解 の 無 効 を 招 来 す る よ うな 従 来 の 解 釈 は修 正 され るべ き で あ る と,Sch6pflinは. 主 張 す る。 そ して,訴 訟. 上 の 和 解 に対 す る無 効 の 主 張 は,再 審 事 由が あ る場 合 に,再 審 の 訴 え の 要 件 の も とで の み 許 され る と結 論 づ け る。 訴 訟 上 の 和 解 にお いて は,裁 判 所 外 の 和 解 と異 な り,当 事 者 が 裁 判 所 に事 実 関 係 を 説 明 し,そ れ を 証 明 す る 可 能 性 を 有 して い る と い う特 殊 性 を 正 当 に評 価 しな けれ ばな らな いの で あ り,そ れ ゆえ に,訴 訟 上 の 和 解 は も はや 再 審 事 由な く して は取 り消 され な い と い うの で あ る53)。. 95.
(18) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. (3)若 干 の 検 討. 訴 訟 上 の 和 解 が 成 立 す る過 程 は実 に様 々で あ る と い. うの が 実 態 だ とす れ ば,訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 に関 して,す べ て の 場 合 に適 用 され るべ き一一 律 な 規 律 で 臨 む の で はな く,そ の 成 立 過 程 の 多 様 性 や 当事 者 の意 思 に即 応 す る こ とが 可 能 と な る柔 軟 な 規 律 を用 意 す る 理 論 枠 組 み は,魅 力 的 な もの で あ る と い え よ う勧。 先 に 紹 介 した高 田教 授 の 見 解 は, この 意 味 で も極 めて 示 唆 に富 む もの で あ る。 訴 訟 上 の 和 解 の 効 果 に関 す る デ フ ォル ト ・ル ール の 具 体 化 が 待 望 され る。 ただ し,こ の 理 論 枠 組 み が, 既 判 力 否 定 説 を 支 持 した うえ で 和 解 の 実 体 法 上 の 確 定 効 を ベ イ ス ラ イ ン と して 展 開 され て い る点 につ いて は,後 述 の よ う に訴 訟 上 の 和 解 を 締 結 す る 目的 や その 行 為 の 特 質 に鑑 み て,直 Sch6pflinは,や. ち に賛 成 す る こ とが で きな い。. は り既 判 力 否 定 説 に立 ち な が ら,訴 訟 法 的 な考 慮 か ら,. 訴 訟 上 の 和 解 の 無 効 は訴 訟 に お いて 法 的 安 定 性 と公 正 を 調 整 す る制 度 枠 組 み で あ る再 審 の 訴 え の 要 件 を 充 足 す る場 合 にの み 考 慮 され るべ きで あ る と 主 張 す る。 こ こで は,和 解 の 実 体 法 上 の 確 定 効 が,制 限 的 で な い既 判 力 を 認 め る の と 同 じ程 度 に,結 果 と して 強 化 され て い るの で あ る。Sch6pflin が,既 判 力 否 定 説 に立 ちな が ら,訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 に関 して な した具 体 的 な 訴 訟 法 的 考 慮 につ いて は,比 較 法 的 に も参 考 にな る こ とが 多 い。 ただ し,訴 訟 法 的 考 慮 を 経 た結 果 と して の 規 律 が 既 判 力 肯 定 説 と ほ ぼ 同 じもの で あ る点 につ いて は,そ の 規 律 の 硬 直 性 の 点 で 不 満 が 残 る。 さ らに,そ れ な らば,な ぜ 訴 訟 法 的 考 慮 の 結 果 と して 直 戯 に既 判 力 が 認 め られ な いの か と い う基 本 的 な 疑 問 も生 じて こ よ う。 た だ し,こ の 最 後 の 疑 問 に対 して は,ド イ ツ民 事 訴 訟 法 に は,訴 訟 上 の 和 解 が 「確 定 判 決 と 同一一 の効力」を 有 す る とい う規 定(民 訴 法267条)が. 存 在 しな い こ とに 起 因 す る とい う応. 答 が な され るの か も しれ な い。 この 規 定 の 存 在 す る意 義 も改 めて 問 わ れ な けれ ばな らな い。(以. 下 次 号). 96.
(19) 訴 訟 上 の 和 解 の 効 力 論 序 説(1). 註 ⑳. 三 ケ 月 章 『民 事 訴 訟 法 」(1959)443頁. は,訴 訟 上 の和 解 の法 的性 質 を 訴 訟 行. 為 と理 解 しなが ら も,既 判 力 は公 権 的 な紛 争 解 決 の 要請 か ら流 れ 出 る裁 判 にの み 特 有 な 一 事 不 再 理 の要 請 と み るべ き もの で あ って,当 事 者 の 意 思 に 重 点 が 置 か れ る 自治 的 紛 争 解 決 た る訴 訟 上 の和 解 に は親 しま な い とい う理 由か ら,訴 訟 上 の 和 解 に既 判 力 を 否 定 す る。 3)山. 木戸克己 「 和 解 」 『民事 訴訟 法論 集 』(1990)422頁. は,訴 訟 上 の 和 解 を 私 法. 上 の 契 約 で あ る と しな が ら も,そ の調 書 が確 定 判 決 と同一 の 効 力 を 有 す る と規 定 され て い る こ とか ら,既 判 力 が判 決 内容 の議 論 を封 ず る効 果 で あ る とす るな ら ば,和 解 調 書 に もそ の よ うな 効 果 を 有 せ しめ る こ とが で き る と解 す る。 ⑳. 兼 子 一 『判 例 民 事 法 』(1950)312頁. 。 こ う した認 識 は,裁 判 官 に よ って も実. 務 上 の 経 験 と して 以 下 の よ う に表 明 さ れ て い る。 す な わ ち,藤 原 弘 道 「訴 訟 上 の 和 解 の 既 判 力 と和 解 の効 力 を争 う方 法 」 後 藤 勇=藤 田耕 三 編 『訴 訟 上 の 和 解 の 理 論 と実 務 」(1987)487頁. に よれ ば,起 訴 前 の和 解 を 除 け ば,裁 判 所 は 和 解. の 進 行 ・内 容 に深 く関 わ り,そ の有 効 要 件 に も配 慮 しつ つ,紛 争 が 法 の 建 前 か ら外 れ る こ とな く,し か も妥 当 な結 果 に落 着 して解 決 す る よ うに 強 力 に仲 介 ・ 斡 旋 して い るの が 実 情 で あ る と い う。 ㈲. 近 時 で は,梅 本 吉 彦 「訴 訟 上 の和 解 の効 力 に つ い て」 三 ケ 月 章 古 稀 『民 事 手 続 法 学 の 革 新(中 巻)」(1991)571頁. は,既 判 力 肯 定 説 を支 持 しな が ら も,そ こ. で は,既 判 力 に よ る遮 断 効 に関 す る期 待 可 能 性 に よ る調 整 を 訴 訟 上 の 和 解 の 場 合 に も認 め る こ と を通 じて,和 解 に錯 誤 の あ った こ とを理 由 と して,そ の 和 解 の 効 力 を 争 う こ とが で き る とい う柔 軟 な 帰 結 を 導 い て い る。 (26)こ う した 和 解 成 立 の過 程 に必 ず し も裁 判 所 の十 分 な 関与 が 保 障 され て い るわ けで はな い と い う実 態 の指 摘 につ い て は,既 判 力 否 定 説 に立 つ 論 者 か らの もの で あ るが,た ⑳. とえ ば,石 川 明 『訴 訟 上 の 和 解 の 研 究 』(1976)126頁. 新 堂 幸 司 「新 民 事 訴 訟 法(第4版)」(2008)356頁. (8)高. 田裕 成 「訴 訟 上 の和 解 の効 力 論 へ の一 視 座 」 井 上 治 典追 悼 『民 事 紛 争 と手. 続 理 論 の 現 在 」(法 律 文 化 社,2008)260頁 (29)高 田裕 成 ・前 掲(註28)264頁 ⑳. が あ る。. 以下。. 以下。. 以下。. 高 田裕 成 ・前 掲271頁 。. (31)高 田裕 成 ・前 掲271頁 。 (32)高 田裕 成 ・前 掲273頁 。 (33)高 田裕 成 ・前 掲273頁 。 鱒. 高 田裕 成 ・前 掲273頁 。. ㈲. 高 田裕 成 ・前 掲273頁 以 下 。. (36)判 例 と して,RGZ37,416(418);BGHZ86,184(186)を. 参 照 。 また 多 くの. 学説 を代 表 して,Rosenberg/Schwab/Gottwald,ZivilprozeBrecht,16.Aufl. (2004),5.895;Thomas/Putzo,Zivilprozel30rdnung,25.Auf1.(2003),ァ. 97.
(20) 近畿大学法学. 第58巻 第2・3号. 794Rn.29.を. 参 照。. (37)Sch6pflin,DieBestandkraftdesProzeBvergleichsbeinachtraglichemTatsachenvortargandBeweisantritt,JR2000,397f. (38)な. お,Sch6pflinに. よ れ ば,本. 件 事 案 の 第 一 審 判 決 は,LGHamburg,. Urt,vom2.7.1997-417017/92で. あ り,控. Urt.vom24.3.1998-9U143/97で て い な い と い う 。 そ れ ゆ え,本 で あ り,残. 訴 審 判 決 は,OLGHamburg,. あ る が,い. ず れ も公 刊 判 例 集 に は掲 載 され. 件 事 案 の 概 要 は,Sch6pflinに. よ る紹 介 の 翻 訳. 念 な が らそ の 詳 細 は不 明 で あ る。. (39)Schopflin,aaO(Fn.37)5.400. (40)Schopflin,aaO5.401. qDSch6pflin,aaOS.401. (42)な. お,わ. が 国 に お い て も,和. 解 の 錯 誤 無 効 に 関 し て は,以. 解 釈 が な さ れ て い る 。 す な わ ち,和. て や め る こ と を 約 し た 争 い の 対 象 を な し,互 い て の 錯 誤 の 場 合 は,民. 法696条. 解 によっ. 譲 に よ って 決定 した 事 項 自体 につ. の 和 解 の 確 定 効 に よ り,当. 主 張 す る こ と が で き な い 。 ロ)当. 下 の よ うな 同 様 の. 解 に 対 す る 錯 誤 に つ い て は,イ)和. 事 者 は和 解 の 無 効 を. 事 者 間 で 争 わ れ る こ と な く,争. いの対象た る. 事 項 の 前 提 な い し基 礎 と し て両 当 事 者 が 予 定 した 事 項 に つ い て の 錯 誤 の場 合 は,民. 法95条. の 錯 誤 に 関 す る 一 般 原 則 が 適 用 さ れ,和. 多 くを 代 表 して 我 妻 栄. 解 は 無 効 と な る 。 参 照,. 「和 解 と錯 誤 と の 関 係 に つ い て 」 『民 法 研 究VI』(1969). 174頁 以 下 。 (43)Schopflin,aaO5.401. (49)Schopflin,aaO5.401. ㈲Sch6pflin,aaO5.402. (46)Schopflin,aaO5.402. ㊨. ドイ ツ で は,請. 求 の 放 棄 ま た は 認 諾 が な さ れ た 場 合 に は,そ. や 認 諾 判 決 が な さ れ る(ド. イ ツ 民 訴 法306条. お よ び307条. れぞれ放棄判決. 参 照)。. (48)Schopflin,aaO5.403. (49)た ⑳. と え ば,BGHZ101,380(383f.).. 同 様 に,わ. が 国 の 最 高 裁 判 所 も,確. に よ る 判 決 の 取 消 し を 待 た ず し て,当 る 旨 を 判 示 し て い る 。 参 照,最. 定 判 決 が 詐 取 さ れ た 場 合 に,再. 審の訴え. 該 判 決 に基 づ く強 制執 行 が 不 法 行 為 にな. 判 昭44年7月8日. 民 集23巻8号1407頁. 。. (5DSch6pflin,aaOS.403f. (52)Schopflin,aaO5.404. (53)Schopflin,aaO5.404. 働. す で に,河. 野 正 憲 「訴 訟 上 の 和 解 と そ の 効 力 を あ ぐ る 紛 争 」 『当 事 者 行 為 の 法. 的 構 造 』(1988)269頁 に 焦 点 を 当 て,当. 以 下 は,訴. 訟 上 の和 解 に つ い て の紛 争 が 多 様 で あ る こ と. 事 者 の利 害 状 況 の多 様 性 に応 じた救 済 が 可 能 とな る理 論 枠 組. み を 必 要 とす る 旨を 指 摘 す る。. 98.
(21)
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