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「中部大学産業経済研究所・野村総合研究所共催シンポジウム 戦略的BCP(事業継続計画)と変革期を迎えた企業経営」

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(1)

中部大学 産業経済研究所

中部大学産業経済研究所・野村総合研究所共催シンポジウム

戦略的 BCP(事業継続計画)と変革期を迎えた企業経営

―災害による中部圏構造変化と日本再生に向けて―

日時 2012 年 2 月 24 日(金)15:30~19:00

場所 中部大学名古屋キャンパス 6 階大ホール

特 別 研 究 レポ ー ト

(2)
(3)

特別研究レポート

中部大学産業経済研究所・野村総合研究所共催シンポジウム

戦略的 BCP(事業継続計画)と変革期を迎えた企業経営

―災害による中部圏構造変化と日本再生に向けて―

主催(企画・運営):中部大学 教授

産業経済研究所 所長 鈴木 正慶

基 調 講 演 講

師:

野村総合研究所社会 システムコンサルティング部 上級コンサルタント

浅野 憲周

調 査 報 告 報告者:

中部大学 産業経済研究所 研究員

小山 太郎

パネルディスカッション

パネリスト:浅野 憲周(野村総合研究所 上級コンサルタント)

小川 裕克(中部大学 教授)

荒川 健一(株式会社グローバルエンジニアリング

代表取締役社長)

堀内 篤志(愛知金属工業株式会社

生産統括グループマネージャー)

コーディネーター:奥田 誠(野村総合研究所 名古屋オフィス代表)

(4)

開会挨拶 ···

4

基調講演「大震災から企業は何を学ぶべきか

―BCP(事業継続計画)の再考―

はじめに ··· 5 第 1 章 東日本大震災で判明した事実 ··· 6 第 2 章 輸送機械メーカーX 社の事例··· 10 第 3 章 東日本大震災で判明した事実(まとめ) ··· 11 第 4 章 東海・東南海・南海の 3 連動型地震で想定されること ··· 11 第 5 章 東海・東南海連動地震で想定される影響 ··· 13 第 6 章 首都直下型地震で想定されること ··· 15 第 7 章 東京湾北部地震の被害予想 ··· 17 第 8 章 企業が踏まえるべき災害対応の視点 ··· 18 第 9 章 まとめ ··· 22

調査報告「東海地震等の巨大地震対策についてのアンケート調査結果概要」

はじめに ··· 24 第 1 章 アンケート調査結果 ··· 24 第 2 章 ロジスティック回帰分析の結果 ··· 26 第 3 章 自由回答文から読み取れること ··· 27 第 4 章 震災対応のための BCP 作成について

···

28 第 5 章 コレスポンデンス分析 ··· 28 第 6 章 今後の方向性 ··· 30

目 次

(5)

パネルディスカッション ···

31 パネリスト:浅野 憲周(野村総合研究所 上級コンサルタント) 小川 裕克(中部大学 教授) 荒川 健一(株式会社グローバルエンジニアリング 代表取締役社長) 堀内 篤志(愛知金属工業株式会社 生産統括グループマネージャー) コーディネーター:奥田 誠(野村総合研究所 名古屋オフィス代表)

参考(共催シンポジウム案内資料) ···

51

(6)

中部大学産業経済研究所の鈴木と申します。今日は年度末の大変お忙しい中、多数の方々にお 出掛けいただきまして本当にありがとうございます。3.11 東日本大震災の発生からほぼ 1 年にな ろうとしております。いまだに被害は甚大であり、その影響がさまざまなところに解決しないま ま出ている状況です。東海地方も今後大きな地震が来るのではないかと、大変高い確率で予想さ れています。こういう中、震災に当たって復興を迅速に行っていくことは、特に企業経営にとっ て重要になっています。そういう問題意識の中で、野村総合研究所のご協力を得て、今回、中部 大学産業経済研究所と野村総合研究所の共催のシンポジウムを開くことができました。「戦略的 BCP(事業継続計画)と変革期を迎えた企業経営」というタイトルです。守りだけではなく、これ を機に攻めに転じるという発想も必要ではないかということで、そういう会合にしたいと思いま す。 最初に野村総合研究所の浅野憲周さんから基調講演をいただきます。浅野さんは内閣府の災害 政策体系の在り方を組んでいる委員会の中心的な人物で、そのほか内閣府、地方自治体のいろい ろな災害対策のプロジェクトに関係しております。ご経歴はお手元のチラシの後ろをご覧くださ い。それでは浅野さん、よろしくお願いします。

開 会 挨 拶

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大震災から企業は何を学ぶべきか

―BCP(事業継続計画)の再考―

講 師:浅 野 憲 周

(野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 上級コンサルタント)

はじめに

今、紹介いただきました野村総合研究所の浅野です。よろしくお願いします。 最初に、私の簡単な自己紹介です。学生のころは地震工学、特に建築防災を中心にやっていま した。野村総合研究所に入り、地域政策的なところ、地域計画などをやりながら、今日のテーマ の関連では、地震を中心とした防災政策を担当することになりました。当時は特に国土庁防災局 が国の防災政策の中枢の検討を担当されていたのですが、そこからコンサルティングや調査の委 託をいただきながら、いろいろな勉強をさせていただきました。 今日のテーマは、近く来ると言われる東海・東南海・南海という連動型の地震についてです。 2003 年に東海・東南海・南海の連動型の地震について中央防災会議から公表されていますが、地 震が発生したときにどのような被害が生じるのか、それを踏まえて国としてどのような政策を打 っていくべきなのかという国のマスタープラン作りを当時の内閣府の防災担当から委託を受け、 地震被害のシミュレーションや対策の案文作りをいたしました。その後、東京関連で中央防災会 議の首都直下地震対策専門調査会からの委託で、同じように地震被害のシミュレーションを行っ たり、今よく報道されている経済被害 112 兆円という予想被害額をはじかせていただいています。 また、当時は BCP という言葉はあまりメジャーではありませんでしたが、国の中枢機能の業務継 続の確保戦略などの仕事をやってきました。このように国の政策支援をさせていただきながら、 併せて民間企業のリスクマネジメント、特に災害対応も含めて支援をさせていただいています。 今日はその辺りの経験を踏まえた上で、次の震災にどう備えていくのか、そのようなお話をさ せていただければと思います。それを受けて後ほどのパネルディスカッションの中では、より具 体的な現場の話について、先生方や企業経営者の方々といろいろな議論をさせていただければと 思います。 本日は、最初に東日本大震災についてお話しします。震災以来、もうそろそろ 1 年になろうか

基 調 講 演

(8)

ということで、非常に大変な思いをわれわれはしてきました。この震災の教訓は何かについて、 今日のテーマである BCP という視点から、もう一度見つめていきたいと考えております。 もう一つは、特にこの東海地方についてはあれで終わりではないということです。東日本大震 災があったときは 1000 年に 1 度の未曾有の災害だと盛んに言われましたが、決して 1000 年に 1 度といったものではありません。この東海・東南海はいつ来てもおかしくない状況にあることを 再認識しなくてはいけません。その特徴は一体何なのか、東日本と比べて同じ部分・違う部分が いろいろあると思いますが、そういったところについてお話をさせていただきます。併せて今こ の連動型地震については自治体、あるいは国・政府の方で検討を進めています。私自身もそのお 手伝いをさせていただいている中で、最近の動向なども時間が許す範囲でお話をさせていただけ ればと考えております。 併せて、最近マスコミをいろいろな形で騒がせている首都直下地震です。4 年以内に 70%とか 最大震度 7 が出るのではないかと、いろいろな議論が出ていますが、これについては具体的には 東京都の方が国に先行して見直しの検討を進めています。そのお仕事を支援させていただいてい ますので、その動向等のお話をさせていただければと考えています。 最後に、こういった状況を踏まえたときに今後どう備えていくべきか、次なる震災に向けて企 業経営者としてどう備えていくかの方向性についてもお話ししたいと思います。また、これは時 間の関係で、パネルディスカッションの方でのご紹介になるかもしれませんが、BCP とは何なの か、何がポイントになるのか、そのようなお話もさせていただければと考えています。

第 1 章 東日本大震災で判明した事実

最初にこの東日本大震災で判明した事実、 何が教訓だったのかということです。今回、 想定外という言葉が非常に流行り言葉のよう に出てきましたが、この想定外という言葉は 私自身あまり望ましくないと考えています。 このエリアで震災が起こる、海溝型の巨大地 震が起こることは分かっていました。図 1 の 濃い色で塗られた部分は中央防災会議で従前 から海溝型の地震が起こるということで、タ ーゲットを定めていたエリアです。文部科学 省系の研究機関である地震調査研究推進本部が、30 年以内に起こる確率を順次発表していた状況 で、どうやらここで近々大規模な地震が起こりそうだと、従前からターゲットが定められていま した。ただ、自然現象ですから、特に地球が誕生してから 46 億年の歴史の中で、われわれが経験 している期間は非常に限られています。必ずしも想定どおりに来るとは限らず、時にはそれ以上 の地震動なり津波が来ることは当然だという姿勢で、いろいろな不測の事態に臨む体制を強化し 図 1

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 4 1.東日本大震災で判明した事実

政府は、宮城県沖地震の発生を高い確率で予測していた

地震調査研究推進本部の発生確率予測および中央防災会議の想定震源

注)Mt:津波の高さから求める地震の規模 出所) 地震調査研究推進本部、中央防災会議資料よりNRI作成

(9)

ておくことが大事であったのだろう、これが大きな教訓だと考えています。また、経営戦略を検 討する立場で想定外という言葉が許されないだろうという心持ちが大事だということが、大きな 教訓の一つだったと考えています。 また、時代背景的に見た特徴としては、日本において巨大災害はそれほど珍しいものではなか ったことをあらためて認識しておくべきだろうと思っています。大正時代、1923 年のいわゆる関 東大震災は、津波も伴いましたが、むしろ火災延焼による被害がかなり大きな部分を占めている 海溝型の大きな巨大地震でした。また、今言われている東南海・南海の東海沖の海溝型の巨大地 震が、戦前・戦後、1944 年・1946 年に 2 年のタイムラグがありましたが、連動して発生していま す。すなわち、20 世紀の前半は比較的こういった巨大な海溝型の地震が連続して起こっている状 況でした。戦後の 20 世紀後半は、いわゆる広域な大規模な震災がしばらく静穏期と言われ、影を 潜めていました。代わりに注目された代表的なものが阪神淡路大震災、いわゆる首都直下型の地 震です。影響範囲は非常に局地的ですが、非常に激甚な災害・影響を及ぼす地震がかなり顕著に 出てきました。 また、高度経済成長期以降の日本では、高 速道路や新幹線などのインフラ、ライフライ ンの高度なネットワーク化が図られてきまし た。また、それに対応して今回の大きなテー マの一つであるサプライチェーン・マネジメ ントが本格化してきています。それから、イ ンターネットに代表される ICT の高度化も顕 著に進んでいます。図 2 のとおり、情報通信 の交換量ストック額が急激に上がってきてい ます。 従って、今回の東日本大震災は、いろいろ なネットワークに頼るような社会になって初めて経験した本格的な広域大規模震災であったこと が、非常に大きな特徴でした。われわれはこういったネットワークに頼る社会が被災を受けたと きの影響の広がりの大きさを、ある意味初めて経験したのです。 どのような影響があったのかは今更言うまでもない状況ですが、一つわれわれも非常に意外だ ったのは、サプライチェーンが 1 次・2 次・3 次と非常に多重化している中で、ダイヤグラム上で ボトルネックがあったということです。このようなボトルネックがあるということを、震災にな って初めて顕在化したというか、認識できたということです。代表的な例でよく挙げられている のは、半導体、マイコンを作られているルネサスの例です。そのほかに自動車の部品、あるいは 副資材で使われている化学系の素材でも同様なことが起こっています。一番有名なところでは鹿 島臨海地区の三菱化学の工場が被災して 2 カ月半ほど止まったということで、化学製品の原料の 供給がその間ストップして、影響が全体に波及していきました。そういった半導体の停止やサプ ライチェーンの最上流の素材系の停止により、日本の震災のないエリアだけではなく、世界中に 影響が広がっていったのです。 図 2

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実質ストック額 (単位:十億円) 5 1.東日本大震災で判明した事実 しかしながら、ネットワーク化された現代社会がはじめて経 験する事態であり、甚大な被害をもたらした 1923 1944 1946 1948 1960 1970 1980 1990 1995 2004 2008 2011 (年) インフラ・ライフラインの高度なネットワーク化 (高速道路、新幹線) M 7.9 M 7.1 M 7.4 M 8.0 M 6.8 M 7.2 ICT高度化 (インターネット、データ通信) 高度経済成長期 サプライチェーンマネージメントの高度化 関東大震災 東南海 地震 南海地震 福井地震 宮城県沖 地震 岩手・宮城内陸地震 新潟中越地震 新潟中越沖地震 出所) 日本被害地震総覧よりNRI作成 情報通信 ストック額 M 7.9 M 9.0 東日本 大震災 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000 M 7.8 M 7.3 北海道 南西沖地震 阪神・淡路 大震災

(10)

阪神淡路のときの教訓として、自分たちの工場をしっかり強化する、あるいは現場力で仮に被 災してもすぐに立ち上がるようにするということ、すなわち、今日のテーマの BCP のようなこと は、阪神淡路や中越地震の時の(株)リケンの被災から教訓を得て、強化が図られてきたわけです が、一番大きな盲点は、自分たちが立ち上がっても物が来ない、あるいはインフラが止まってし まうことにより、非常に大きなダメージが生じたことです。これが一番大きな教訓ではなかった でしょうか。 お話を伺うと、大手自動車メーカーなどもここの部分の教訓が次に生かすべきポイントだとい うことで、サプライチェーンの構造把握と、その構造の中で何がボトルネックで、自然災害上ど こがリスクが高いのかを今一生懸命見極めようとしているところだそうです。 具体的に輸送用機械業ということで、鉄 鋼系で見てみます(図 3)。ちょうど昨年の 2 月の生産量を 100 にしたときに、震災が起 こったことで急激に下がっています。回復 するまでは今回は 3 カ月くらいかかってし まいました。震災でストックが止まること による補修ではなく、まさにフローが完全 に止まってしまうことの怖さを痛感された と思います。 ただ、こういったマイナスの面だけでは なく、これまでのいろいろな教訓が十分に 生かされた場面も見られたことが、今回の もう一つの特徴でした。図 4 は、高速道路 の復旧日数です。一番上のグラフは阪神淡 路大震災の時の高速道路の復旧日数です。 あのとき、高速道路阪神高速神戸線は高架 部分が横転してしまうという大被害が生じ ました。当時は日本の土木構造物の耐震技 術は非常に優れているから、ああいった大 倒壊が生じることはあり得ないという認識 が常識でした。その前にあった 1989 年のサ ンフランシスコの地震で、ベイブリッジの ダブルデッキの所が崩れた事故がありましたが、あのときも日本側のコメントは「日本ではまず あり得ないことだ」というもので、そういうことが盛んに言われていたのです。しかし、阪神淡 路大震災で当時の業界の常識が一遍にひっくり返ったのです。 それからそれなりに土木構造物の耐震基準が上げられ、耐震補強が図られてきました。しかし、 今回の東日本大震災のマグニチュード 9 は有史以来、日本の中で記録された最大規模の地震でし た。最大震度が震度 7 を記録していますが、高速道路の橋梁・橋脚部分で全壊に至るような被害 図 3

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 7 1.東日本大震災で判明した事実 輸送用機械業の生産が停止し、回復に3カ月超を要した 輸送用機械産業の生産額推移 出所) 生産動態統計調査(経済産業省) 100.0  53.3  52.3  71.4  85.3  90.0  96.1  90.4  40.0  50.0  60.0  70.0  80.0  90.0  100.0  110.0  120.0  2010年 9月 10月 11月 12月 2011年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 輸送用機械 注)一か月あたりの生産量を、基準年(2005年)を100として指数化。

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 8 1.東日本大震災で判明した事実 過去の震災対策により、 高速道路は驚異的なスピードで復旧した 0 20 40 60 80 阪神高速道路一般開放 仮復旧 応急復旧 東北自動車道一般開放 常磐自動車道一般開放 11日 13日 21日 復旧スピードの比較(高速道路) 1年8カ月 1日 東日本大震災 阪神・淡路大震災 (日) 耐震補強 耐震補強 対策 図 4

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は 1 件もありませんでした。東北自動車道は比較的新しい構造物だったこともありますが、それ は阪神淡路以降の教訓が十分に生かされた一つでしょう。 それから、復旧も非常に早く、使えるようにという意味では初日から使える状態に持っていき ました。これは補給活動に使われていたのですが、一般開放されるまでも東北自動車道で 2 週間 かかっていないのです。あれだけの震災でも 2 週間待つと高速道路が使えるようになるというこ とは、生産活動を進めていく中で、仮に寸断しても実態ベースで 2 週間を復旧目標とすればいい ことが検証されたと考えています。 新幹線についても同様で、図 5 に見るよ うに、阪神淡路の時は復旧までに 80 日かか っていますが、新潟中越地震の時は 20 日く らい早く復旧できました。また、今回は 50 日で復旧したということで、震災を経験す るたびに確実に復旧日数は短くなっていま す。 また、その中身を見ますと、格段に違う のは構造物の高架橋・橋梁・トンネルの崩 落が全くなかったということです。もう一 つは、新潟中越地震の時には上越新幹線は 脱線事故を起こしています。本当に幸いなことに人的な被害は生じなかったのですが、一歩間違 うと大事故につながりかねない事象が起こっています。今回は昼間の震災でしたので新幹線がか なり走っており、トップスピードで走っている状況でも、幸いなことに 1 本も脱線しませんでし た。当然構造的な工夫もあると思いますが、それだけではなく、今回有名になった緊急地震速報 と同じ考え方で、JR 独自のユレダスという仕組みで自動的に新幹線の速度を制御して自然に止ま るようになっていたということです。また、トップスピードで強震を受けないような仕組みがき ちんと働いたということなど、いろいろな工夫があり、安全・安心という意味でもかなり格段に 技術が上がってきていることが証明された一つのいい事例だったと考えています。 国際的にも、日本に災害が起こったときのインフラの耐震性や安全性の高さに関しては、今回 はやはり評価が高いのです。私自身はお隣の中国地震局のいろいろな研究者、あるいは政策担当 者の方とお話をさせていただく機会を持たせていただいていますが、特にこの新幹線の技術につ いては非常に注目されています。一方で、中国は自分の技術として売り込みたいという野心もあ ったのだろうと思っていますが、ここについては非常に評価が高い部分でした。

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0 20 40 60 80 東海道・山陽新幹線 上越新幹線 東北新幹線 9 1.東日本大震災で判明した事実 営業走行中の新幹線の脱線は1本もなく、復旧のスピードは 早かった 復旧スピードの比較(新幹線) 東日本大震災 阪神・淡路大震災 (日) 新潟県中越地震 高速運転中に高架橋上で新幹線の 脱線事故が発生 高速運転中の新幹線の 脱線事故はなし 高架橋柱の損壊による落橋状況を呈する甚大な 被害が8か所で発生 トンネルのコンクリートの崩落が発生 高架橋、橋りょう、トンネルの 崩落はなし 緊急停止システム の制度向上など 耐震補強 対策 50日 81日 66日 図 5

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第 2 章 輸送機械メーカーX 社の事例

もう一つ、企業の BCP といいますか、現場力の重要性が証明されるような場面もいろいろなと ころでご報告をいただいています。これは岩手に自動車の組み立て工場を持たれているあるメー カーの例です。このメーカーはもともと東海地方に拠点を持たれていて、東海地震の脅威がある ということや全体の会社の方針もあり、東北に拠点を移転された経緯があります。このように、 もともと被害軽減ということで移転されたのですが、その後、2003 年に三陸沖地震を経験され、 工場の建屋は大丈夫でしたが、アームで吊っている製作途中の車が落下するとか、ダクトが外れ るなど、いろいろなことがあり、すぐには復旧できませんでした。そのようなことを経験され、 当時は BCP という言葉は明確に意識されていなかったと思いますが、今で言う BCP(Business Continuity Planning)ということで、何があっても必要な時期までに生産復旧できるような、い わゆる現場力を培おうとされたのです。そして、特に従業員がどう対応したらいいのか、車が落 ちないための工夫など、細かいところを工夫されてきました。 このようにいろいろな対策を取った 5 年後に、岩手宮城内陸地震が起きました。これは内陸の 直下型の地震ですが、一番厳しい所で震度 7 を経験している地震です。5 年後に再びこういった 震災を経験されたのですが、ちょうど金曜日に地震があったところ、土日で工場の建て直しやお 客さまとの連絡などのやり取り、静岡にある本社との連携などいろいろと対応し、月曜日の朝か ら通常どおりの稼働ができたということです。これは 2003 年の経験を具体的に生かしたというこ とで、非常に教訓が生きた例であったと聞いております。 今回 2011 年の東日本大震災の時も、車の生産は 1 カ月くらい止まっていましたが、この拠点工 場自体は震災 4 日後、3 月 15 日には動かせる状態まで持ってきていました。いろいろとお話をお 伺いしますと、やはり従業員 1 人 1 人が、自分たちはこのような状況のときに何をすべきなのか を体で理解しているということで、指示命令ということではなく動けたということです。それか らいわゆる減災といいますか、アームが広がらないような工夫をして、車の落下を防ぐ工夫がさ れていました。要するに、車を落としてしまうと復旧時間が長くなってしまうので、何が復旧時 間を長引かせるのかというボトルネックが過去の体験からよく分かっており、それに対して確実 に打ち手を取ってこられたということで、それが今回も生きたということのようです。 ただ、先ほども申し上げましたが、結局自らの拠点工場は 3 月 15 日からいつでも動かせる状況 にあったということですが、残念ながら今回はやはり材料が来なかったということで、サプライ チェーンの寸断が盲点でした。これが今回の大きな発見といいますか、教訓だったということで す。

(13)

第 3 章 東日本大震災で判明した事実(まとめ)

以上、この東日本の部分についてはそもそも想定外ではないということで、政府がいろいろな 形で評価・発表しているものを上回るものが時には起こることは当然だという認識で、われわれ は政府がどんな検討をしているのかを今一度見直しをする必要があります。また、それについて は東海地震についても同じような認識が必要であることが、重要な教訓の一つです。 2 点目として、このネットワークに頼る社会が被災したときの、影響の広がりの大きさを十分 に認識しておくべきだろうということです。これはサプライチェーンの最下流から見たときに、2 次・3 次の構造が分からなくて困るというボトルネックがあったというお話も伺いましたが、逆 に最上流の素材を作られている会社、例えば三菱化学の場合、自分たちが止まることにより、そ の先でどのような波及影響があるのかについて十分認識できていなかったというお言葉もいただ いています。例えば化学素材でも緊急に必要な医療救護対応用のバックの素材に自分の製品が使 われていたことを震災になって初めて気付き、2 カ月半という停止期間は非常にボトルネックに なることに気付かれています。また、波及影響の大きさについてもなかなか見えていませんでし た。これは、BCP の目標設定をするときに非常に重要なポイントで、自分たちの売り上げがどの くらい低下するのかということで目標設定するだけではなく、やはり波及影響の大きさも踏まえ て設定していくことが、日本の社会全体を考えた上でも非常に重要です。この点も今後に向けて 生かすべき教訓の一つだったと考えています。 3 点目として、そうは言っても悪い部分だけではなく、十分に過去の震災教訓からそれを反省 点・教訓として取り入れた工夫が生きた場面も、たくさんあったということです。従って、過去 の教訓に学ぶ姿勢の大切さもあらためて実感できました。今回の東日本大震災でサプライチェー ンの重要性を認識したということは、まさに 4 章以降でお話しする次なる連動型の巨大地震にど う備えるかという意味で、大きなヒントになると考えています。

第 4 章 東海・東南海・南海の 3 連動型地震で想定されること

次は今後の震災の話です。今まさに政府が取り組んでいる動向等も踏まえながら、いろいろと お話をさせていただきたいと考えています。 東日本大震災は 1000 年に 1 度ということですが、この東海・東南海の連動型は決して 1000 年 に 1 度というものではなく、いつ来てもおかしくない状況です。1600 年以降の履歴からご紹介し ますと、100 年・150 年の周期で、繰り返しこのエリアで連動して地震が起こってきている事実が あります。一番最近は 1946 年です。44 年・46 年にはこのエリアで連動した地震が起こっていま す(図 6)。もう 70 年近く前です。過去の歴史では、100 年・150 年で繰り返し起こっていること

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を考えますと、もうそろそろというか、お おむね 30 年ほどで起こってもおかしくあ りません。そういう考え方で、政府の文部 科学省系の地震調査研究推進本部という研 究機関では、30 年以内に 60%とか 70%、 東海地震については 80%以上ということ で、地震発生確率を公表している背景があ ります。 東海地震については、30 年ほど前にかな り注目されるようになりました。私はもと もと名古屋出身で、当時中学生になったか、 なっていないかくらいだったと記憶してい ますが、非常にニュースとしてインパクトがありました。それから 30 年以上何もなく来ている状 況です。東海地震が注目される背景としては、この三つのエリアはずっと連動して過去にはこう いった周期で起こってきているのですが、前回 44 年・46 年では、ここは割れ残って動かなかっ たので、空白域が 160 年近くになってきていることから、次に起こるとすると東海地震が危ない という考え方です。 ただ、30 年くらい前は次の東海地震が割れ残っているので危ないと言われていましたが、それ から随分とまた時間がたってしまいました。そうなりますと、この東海地震のエリアだけではな く、次に来るとすると、この東南海・南海のエリアも一緒に来る可能性も高まってきているので はないか、それが最近の考え方です。 そういった状況の中、政府は今からおおむね 10 年前、2003 年に東海地震の単独、東南海・南 海の連動型地震の地震被害のシミュレーション結果や、それを踏まえた政府としての対策大綱を 発表しています。これは私どもの方で地震被害のシミュレーションの委託をいただき、実際に数 字をはじかせていただき、対策大綱の案文を作らせていただきました。当時 2003 年に公表したと きの終わりの言葉として、「今後おおむね 10 年くらいこの地震が起こらなかった場合には、更に 東海地震・東南海・南海地震が全部連動で起こる可能性についても、もう一度見直して検討する 必要があるだろう」という言葉で整理しています。それからちょうど 10 年たったという状況です。 そういう中で東日本の大震災が起こったということで、今まさにここの連動型の検討が本格化し ている背景があります。 この 3 連動、最近では 4 連動プラスアルファで海溝軸という言われ方をしていますが、どのよ うな地震なのかということを簡単におさらいさせていただきたいと思います。図 7 には、東海地 震、東南海地震、南海地震の震源域が表示されています。3 連動という従来型について 2003 年に 公表されたときには、これが三つ一緒に起こる可能性があるということでした。規模が最大だっ たのは 1707 年の宝永地震です。宝永地震はマグニチュード 8.6 ですが、東日本大震災が発生する までは、これが日本最大の地震と言われていました。 これをモデルに 2003 年にシミュレーションを行いました。しかし最近は、東日本で 1000 年く 図 6

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 2.次なる広域震災で想定される影響

近い将来起こる巨大地震災害に備える必要がある

(15)

らい記録に残されていないような連動型の巨 大な地震が起こったという反省もあり、記録 には残されていなくとも、過去には単発で海 溝型の地震が発生したことがある日向灘もひ ょっとすると一緒に動く可能性もあるという ことで見直しています。この特徴は、影響範 囲が非常に広いこともありますが、もう一つ は海溝軸に注目しようという動きがあること です。フィリピン海プレートは、太平洋側の プレートが内陸のプレートへ潜り込むちょう ど境界部分に当たるのですが、そこまで震源 域を延ばし、ここも同時に動く可能性につい ても評価しなければいけないのではないかと。 これが、おおむね今年の 3 月から 4 月くらい を目標に政府が公表しようと今検討を進めて いる 4 連動、南海トラフにおける 4 連動プラ ス海溝軸といった大型の地震です。 この地震の特徴は東日本大震災が陸からは やや離れた所に震源を持っていましたが、こ このエリアの特徴は、潜り込み部分が非常に 内陸に近いのです。東日本大震災は津波によ る被害がかなり顕著で、被害のほとんどは津波によるものでしたが、それと大きく違うことは、 揺れと津波とのまさに同時被災になるということです。 図 8 が今、政府が検討しているもので、ここがいわゆる海溝軸と言われている所であり、一番 中央の枠内が 10 年前に想定していた震源域です。今はよりエリアを広げてマグニチュード 9 くら いの地震をモデルに、地震動や津波高のシミュレーションを来月くらいの公表を目標に検討を進 めているところです。

第 5 章 東海・東南海連動地震で想定される影響

この地震の特徴ですが、図 9 を見てください。これは中部地方の製造業 4 分野、輸送機械、精 密、石油、鉄鋼に絞って見ております。東北地方の年間の生産量が大体 2 兆 6000 億円に対して中 部は 25 兆円ということで、全く規模が違います。東北の問題はサプライチェーンの寸断により生 産が止まってしまったという問題ですが、東海・東南海の連動型地震では生産拠点そのものが停 図 7

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 14 2.次なる広域震災で想定される影響 4連動巨大地震災害の影響は、東日本大震災を上回る 震度7 震度6強 震度6弱 震度5強 震度5弱 震度4 震度3以下 揺れ、津波同時被災 東海地震の震源域 (87%) 領域拡大の可能性 東南海地震の震源域 (60~70%) 南海地震の震源域 (60%) 出所) 震度は中央防災会議、確率は文部科学省 地震調査研究推進本部

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 15 2.次なる広域震災で想定される影響

政府は南海トラフの巨大地震のハザードマップを3月に公表

南海トラフの巨大地震モデル検討会が公表した震源・波源域モデル

出所) 南海トラフの巨大地震モデル検討会

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止してしまうということで、生産額が全く 違うというインパクトの大きさが一つの大 きな特徴だと考えられます。当然、このエ リアは太平洋ベルト地帯ということで、日 本の経済を支えてきた重厚長大産業を含め て、拠点的な製造機能が集結している所で、 そこが同時に被災する可能性があることが 一番大きなポイントです。 もう一つは今回注目された電力の問題も 課題として上がってくるということです。 当然、浜岡原発の問題もあるかと思います が、それだけではなく、今回東北の問題で 計画停電に至った一つの要因としては、原 発が止まったことだけではなく、火力発電 所も相当同時に止まったことがありました。 この問題は結構大きくて、東北電力の場合 には火力発電所は東北の日本海側も含めて 比較的分散して立地しています。一方、中 部電力の火力発電所は、ここにプロットを 落としているように、ほとんど伊勢湾に集 中しています。伊勢湾のこのエリアは当然 津波の影響も受けますが、液状化による被 災も想定される場所です。圧倒的に一局集中の構造になっているだけに、ここの部分が電力供給 面での電源問題としてより課題になってくる、これも大きな特徴の一つと考えています。 もう一つは国土が大分断される、これも特徴です。東北自動車道は地理的に見ますと東北の真 ん中辺りを走っていて、あまり海岸沿いではありません。先ほど日本のインフラの耐震技術が上 がってきていて、2 週間もせずに復旧したという言い方もしましたが、あまり楽観もできません。 何が違うのかといいますと、東名高速と新幹線が海岸沿いをずっと走っているのです(図 10)。 これが東北自動車道と全く違うところです。この薄いグレーの所が震度 6 強、濃いグレーが震度 7 と予想される所です。また、場所によっては津波の影響も受けるような場所を走っているとい うことは、東北と大きく違うところです。仮に大被害がなかったにしても、これだけ長い距離、 強震動地帯を走っていくということですから、点検をする手間や補修する手間、そういった作業 量は膨大になってくるということで、同じように 2 週間で本当に復旧するかというと、そこは要 チェックです。 もう一つはちょうど震源がこの真下になります。東北の場合には海側でした。ですから、全然 違うことは、こういった海溝型の巨大地震でありながら、直下の地震の特徴を持っていることで す。地質構造的には、この辺りにはフォッサマグナという構造の割れ目のようなものもあります 図 9

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 17 2.次なる広域震災で想定される影響 国土の大動脈が寸断する恐れがあり、地盤変位が発生する と橋梁が倒壊し、寸断期間が長期化する可能性がある 小牧JCT 地盤変位による 橋梁倒壊の恐れ (高速道路の復旧期間) 楽観ケース: 10~20日 悲観ケース: 数か月から数年 一宮JCT 東海北陸自動車道 大井川 中央自動車道 岡谷JCT 東名高速道路 東海道新幹線 浜岡原発 中部‐関東間トリップ 旅客:898,438(トリップ/日) 貨物:747,273(t/日) 関東‐東北間の約3倍 名古屋港 コンテナ貨物取扱量 1億6,510万t/年 出所) 全国幹線旅客純流動調査(2005年)、全国貨物純流動調査(2005年)、 平成21年港湾統計年報(2009年)よりNRI作成 ★ 図 10

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 16 2.次なる広域震災で想定される影響

わが国最大の生産拠点・中部地域が被災し、大都市圏にも 地震動が及ぶなど、被災時の影響は今回を遙かに上回る

出所) 火力発電所プロットは電気事業連合会ホームページ 生産額:経済産業省「地域間産業連関表」(2005年)より編集

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ので、地盤が変異するとかいうことがあると、日本の土木構造物、橋梁なども、変異にはなかな か技術的な課題を解決できていません。つまり、ずれるということですが、ずれる場合には被害 を避けられないという場合もあり得ます。そういう意味でここの日本の大動脈が寸断する可能性 も踏まえるべきである、ここも大きな特徴の一つだと考えています。 当然、場所的に取引量が東北と比べて圧倒的に違います。また、年間の取引数で見ますと東北 の 3 倍と、場所的な意味合いが全く違うのです。このようなところも非常に大きな課題の一つに なってくると考えています。

第 6 章 首都直下型地震で想定されること

もう一つは、首都直下の話です。最近、 首都直下で最大震度 7 も想定されることが にわかに報道されるようになっています。 これにもかかわらせていただいているので、 簡単に状況だけご紹介をさせていただきま す。今、首都直下地震と一般的に言ってい るのは、中央防災会議で 2005 年に公表して いるものです。実はこれにはいろいろなタ イプの地震があり、当時は 18 ケースの地震 を設定しております。その中で図 11 の縦軸 が地震の起こりやすさ(蓋然性)です。上 に行くほど地震が起こりやすく、横軸は右 へ行けば行くほど首都中枢機能への影響が大きいということで、18 ケースの首都直下地震を定義 しています。 これは当時の首都直下地震対策専門調査会の中で、亡くなられた東大地震研究所の溝上先生が 委員長をされていたワーキングで、こういった設定をされました。その中でよく経済被害が 112 兆円と言われている首都直下地震は、この一番右上の東京湾北部地震です。これはマグニチュー ド 7.3 で設定されていますが、一般的に首都直下地震と言いますと、この東京湾北部地震のこと を言っていると理解していただければと思います。起こりやすさも一番高く、首都中枢機能への 影響も高いと設定されています。ただ、そのほかにも実はいろいろな想定地震が設定されていま す。例えば「都心直下」で「都心東部・西部」と書いてあるものがあります。都心東部とは霞ヶ 関直下です。霞ヶ関の真下で地震が起こったときにどうなるのかを、政策的に検討するために設 定された震源だと理解していただければと思います。都心西部については新宿の都庁直下を震源 としている地震です。こういったものは科学的な根拠はそれほど高くありませんし、発生する可 図 11

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 18 ある程度の 切迫性が 高いと考え られる 近い将来 発生の可 能性が否 定できない 近い将来 発生の可 能性は低 い 地震発生 の蓋然性 首都機能 の重要性 ¾首都機能集積 首都機能を支える交通網やライフライン等の機能 中核都市の機能 ¾その他の機能 プレート境界、プレート内の地震 (19断層面のうち発生可能性の低い領域に該当する12断層面の領域) 都心東部 都心西部 さ いたま 市、千葉市、 川崎市、横 浜市、立 川 市、羽田、市 原市、成田 地殻内の浅い地震M6.9 活断層M7.0以上(最近500年以内に発生したものを除く) 関 東平野 北西縁 断層帯 立 川断層 帯 伊 勢原断 層帯 神 縄・国府津-松田 断層帯 三 浦半島 断層群 プレート境界、プレート内の地震(19断層面のうち東京湾北部などの7断層面の領域) 東京湾北部 茨城県南部 多摩 :応急対策の対 象とする地震 近い将来発生する 可能性がほとんど ない地震は除外。 中核都市等直下 都心直下 ¾    ¾    注1)  :予防対策の対 象とする地震 「近い将来」とは、 今後100年程度を いう。 注2)  凡例 今回検討対象とした地震 都心部周辺 都心部 首都直下地震対策専門調査会で対象としている地震 2.次なる広域震災で想定される影響 地震発生確率と首都機能への影響の大きさの2軸から対 象地震を分類

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能性はそれほど大きくないかもしれませんが、一度発生すると影響力が大きいということで、特 徴的な場所に設定して想定しようという考え方で出された地震です。このようなものをはじめ、 いろいろな検討をされているということです。 先ほど一番右上で紹介していた東京湾北 部地震、マグニチュード 7.3 ですが、図 12 の右図の濃い色で示した部分が震度 6 強が 出る所で、それなりに被害が出ます。火災 延焼が一番発生するケースで、建物全壊・ 消失棟数を合わせて 80 万棟、死者は 1 万人 以上、経済被害は波及影響も含めて 112 兆 円という数字をはじいております。これは ちょうど 5 年くらい前にこういった検討を したのですが、ここ 1 週間以内の報道かと 思いますが、東京の首都直下でも最大震度 7 もあり得るのではないかという話も出て います。それは 2005 年に中央防災会議で首都直下地震の公表をしたほぼ直後か直前の段階で、当 時の東京大学の東大地震研の佐藤教授のグループの方から、震源を設定しているフィリピン海プ レートの潜り込み、境界部分の深さがもう少し浅いのではないかという発表がありました。その 発表が公表の直前か直後くらいだったということで、そういった知見はなかなか取り入れられず に、当時の中央防災会議で正式には公表されませんでした。その後東北の地震のシミュレーショ ンや中部・近畿の直下の地震を中央防災会議で検討しており、なかなかこの首都の問題が再計算 に着手できていない状況でした。しかし、そういった最新の研究成果を生かして、もう一度検討 し直さなければいけないという議論が最近高まってきたということです。その場合には震源が浅 くなりますので、当時で最大震度 6 強だったものが 7 も発生し得るのだということで、今まさに 取り組みをしているところです。 最初に私もご紹介させていただきましたように、今、国に先駆けて東京都の方で石原知事から 直々に見直せということもあり、まさに東京都の方が震度 7 も想定し、地震の評価を見直しして いるところです。今年の 5 月の連休明けくらいの公表を目標に、検討を進めています。実はこの 検討は東京都だけで進めているわけではなく、国の方も大きくかかわってくることもありますの で、震源モデルの設定や地震のシミュレーションについては、中央防災会議の事務局をしている 内閣府も内部で一緒に連携しながら、進めているところです。また、国の方も現段階で来年度、 この首都直下地震の見直しに本格的に取り組んでいくことが既に決まっている状況です。 図 12

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 19 2.次なる広域震災で想定される影響 東京湾北部地震の震度分布予測結果 ■ 新宿 ■ 中野 ■ 渋谷 ■ 品川 ■ 東京 ■ 四谷 ■ 上野 ■池袋 ■ 亀戸 震度6強 震度6弱

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第 7 章 東京湾北部地震の被害予想

この東京湾北部地震の被害の 特徴ですが、図 13 の左側が建物 の揺れ、液状化による全壊数の 分布、右側は火災延焼の分布を 示しています。非常に特徴的な ことは、東京の東側は非常に地 盤が悪く、沖積層の軟弱地盤が 厚くたまっているような場所で、 そこは揺れが激しくなります。 また、当然、墨田区や足立区は 古い木造住宅が密集しているこ ともあり、ここで揺れによる被 害が多くなっています。一方、 火災延焼となりますと、木造住 宅がより密に集積しているような木造密集市街地では火災が延焼しやすいということもあり、環 状 6 号線と 7 号線の間は、非常に被害が拡大する可能性があります。 このような状況で、実は金融機関をはじめ日本の大企業の東京の本社がここに集積しているの ですが、これが孤立化してしまうのではないかと言われています。後ほど BCP という話がありま すが、既存の BCP はまずは拠点に人が集まり、集まってからどうしようかということが前提にな っていて、そもそも本当に集まれるのかは十分チェックされていません。それから何とか頑張っ て集まっても事業継続ですので、会社にずっと暮らし続けるのかというと、なかなかそうはいき ません。帰ることも考えると、本当にここで事業継続できるのか。そういう意味での本当にリア リティーの高い BCP はまだまだ十分に検討されていません。こういった周辺の市街地の被災状況 なども十分に理解した、実践的な検討がこれから求められていくのだろうと考えています。 東京都の今の見直しは 5 月に公表の予定ですが、どのような観点から見直されるのかは今、口 頭で申し上げたとおりです。震源が浅くなってくることは決まっていますので、これで地震動が 強くなってきます。もう一つは、東京でも津波を伴うような関東大震災と同等の地震が起こると いうことで、これを再現しようという取り組みを今まさにしているところです。 もう一つは、今回東日本で電力をはじめ、ライフラインの復旧が大きな課題になりました。2005 年に公表したものでは、首都直下地震は電力の復旧は 6 日で 8 割方大丈夫ですとしています。ど のような経緯でこの数字が出てきたかと申しますと、2005 年からちょうど 10 年前の 1995 年阪神 淡路大震災の時に、大体 7 日くらいで電力は復旧しています。通信は 2 週間くらいで復旧してい ます。それからちょうど 10 年後に国から公表された首都直下地震の被害想定でしたので、国の政 策的な観点から言いますと、阪神淡路から 10 年を経てその当時よりも復旧時間が長いようなもの

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2.次なる広域震災で想定される影響 都県域を超えた広域的被害の発生 荒川流域及び環状6~7号周辺地域への被害集中 ①揺れによる全壊棟数の分布(都心部) ②焼失棟数の分布(都心部) 新宿区 港区 中央区 千代田区 環状6号線 環状7号線 新宿区 港区 中央区 千代田区 新宿区 港区 中央区 千代田区 環状6号線 環状7号線 新宿区 港区 中央区 千代田区 荒川 ‹木造密集市街地(環6、環7沿い)の焼失 が顕著 ‹都心部では不燃化が進展 <冬夕方18時、風速15m/s> ‹都県域を超えた広域的な被害 ‹荒川沿いの全壊が顕著 図 13

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は国としてはとても公表すべきではないだろうということで、本当に 6 日で電力が復旧できるの かどうかという評価の観点よりは、むしろ政策的に目標設定したものです。すなわち、6 日で復 旧したいという考え方もかなりここに込められたものであるということです。本当にこれで大丈 夫なのかについては、東日本前後でいろいろな前提条件が違ってきているということで、ここが 大きな見直しのポイントになります。今まさにこれを検討しているところです。 前提条件と申しますのは、当時、東京が 6 日で大丈夫とした根拠の一つは、東京だけに電源設 備が集中しているわけではなく、柏崎もあるし福島もあるということでした。完全にそういった 前提が崩れたということは、皆さんご承知のとおりです。それから、仮に東京電力の電源設備が 機能低下したとしても、ほかの電力会社との連携で給電措置も取れるということも当時理由とし て出されていましたが、そこには周波数の違いやいろいろな限界があることは、われわれは実体 験として分かってしまいました。当時言われた政府としてのエクスキューズと言いますか、大丈 夫という前提条件が、東日本大震災の前後で大きく変わってきているということです。 通信についても同じで、東京都心部で被災したときに、本当に本部に応急活動要員の従業員が 参集できるのか。ここのチェックをしないことには、復旧についてこれまでどおりのシナリオは なかなか出せないということです。その辺りを非常に今大きな検討課題として取り組みをしてい ます。 東京の企業の BCP について、いろいろお話をお伺いしていると、大体 6 日くらいで電力が復旧 することを前提として動かれていますが、ひょっとするとこれも見直さなければならないかもし れません。 以上、次なる広域震災で想定される影響について、いろいろな話をさせていただきました。ま とめると、巨大災害は確実にやってくるだろう。1000 年先ということではなく、その影響はいろ いろな意味で東日本を上回るものになるだろう。そういうことを具体的にわれわれは理解して、 どう手を打つのかを考えることが重要だろうということをお話しさせていただきました。

第 8 章 企業が踏まえるべき災害対応の視点

では企業はどういうふうに備えていけばいいのでしょうか。これについては後ほどのパネルデ ィスカッションの中で、より実体験に基づいて具体的なお話も先生方あるいは企業経営者の方か らしていただけると考えていますので、私からは大きな考え方をお話しさせていただきたいと思 います。 一つは、これまでの防災対策、BCP でもいいのですが、常識と言われていたものを考え直さな ければいけなくなり、大きくパラダイムシフトが起こるということです。例えば本社で言うと、 まず本社に人が参集してそこで本部を立ち上げ、いろいろと指揮命令してというようなこと、人 がある場所に集まってということが前提となった BCP なり対策はひょっとすると機能しなくなる

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かもしれません。ですから、人は 1 カ所に集まれなくとも、何らか機能を継続させるようなこと を考えていかなければいけないかもしれません。 もう一つの考え方としては、例えば愛知県に本社を持たれている大手の自動車メーカーにして も、過去に阪神淡路、中越沖、今回の東北などでサプライヤーが被災されていますが、愛知県に 参集して愛知県から指揮命令し、応援部隊を送って、非常に短期間に復旧支援を実現してきてい ます。ただ、これは、自らは被災していない中でこういう指揮命令が機能してきたということで あって、自らも同時に被災して立ち上がりながら、周辺も救っていくということはこれまで全く 経験していません。これは愛知県だけではなく、東京の本社も被災した経験もないわけです。こ こは大きくパラダイムシフトを考えなければいけません。それから、空間的には影響範囲が非常 に広く、拠点が分散しているつもりが、実はそうではなかったということもあり得るかもしれま せん。阪神淡路も非常に局所的、中越沖も非常に局所的でした。東北については、いわゆる指揮 命令拠点は別の場所にありました。そういったことについては常識が覆るかもしれません。 大手の金融機関ですと、東京にデータセンターがあり、そこのバックアップセンターは大阪に あります。東京と大阪に同じような機能があるので大丈夫だというのがこれまでの考え方でした が、この東海・東南海・南海の連動型地震は、長周期地震動の影響、あるいは液状化の影響が非 常に広域に及びます。液状化の問題は今回の浦安の問題で、震源から 400km 離れた所でも非常に 大きな被害が生じることが改めて確認されたわけで、大阪湾・東京湾の液状化の危険性が高い所 が、同時に被災することも十分あり得ることも含めて、本当に東京・大阪の 2 拠点体制で大丈夫 と言い切っていいのかについても、考え直さなければいけないかもしれません。 それから、ネットワークという意味では、日本が高速道路をはじめ、真ん中で大分断されてし まい、場合によってはそれが長期化する可能性があるということですので、東北で部品を作って、 それを集めて、中部や九州で最終製品にして輸出をするというように、日本を大縦断して完成さ せる仕組みが本当に機能するのかについても、いろいろな考え方を変えていかなければいけない かもしれません。このようなところが大きな考え方なのだろうと考えております。 そのために考えていくべき一つとして、過 去にどのようなことを学びながら、どんな手 を打ってきたのかについて、簡単にご説明し ます。図 14 は縦軸に、販売拠点・生産拠点と いう自社の拠点をイメージしています。その 上流にサプライヤーからの部品供給のサプラ イチェーンのネットワークがあり、そこを支 えているインフラ・ライフライン等があると いう考え方です。阪神淡路大震災のキーワー ドは耐震化であり、それは学んできました。 例としては神戸製鋼の本社や神戸の事業所が 被災して大変な損失を被ったことをはじめとして、とにかく大事な設備はしっかりと耐震化して、 仮に被災してもすぐに復旧できるような現場力を高めていこうということが、阪神淡路や中越の 図 14

Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. 25 3.企業が踏まえるべき災害対応の視点

リスクを可視化して事業継続のためのブロック定義を進める

„ 阪神・淡路大震災では、拠点の防災対策の重要性を学んだ „ 東日本大震災では、供給網の多重性・代替性の重要性を学んだ „ 次なる大震災に向け、ブロックを定義して、生き残り戦略を考えるべき

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教訓でした。今回はそれがかなりできてきたという例もいろいろな所で見られました。ただ、サ プライチェーンで特にこういうボトルネックが生じているような所が問題となり、結局、拠点は 大丈夫だったが、物は作れなかったということです。 そういう意味で、実はリスクがどこにあるのかが見えていなかった、可視化できていなかった というところが一番大きな教訓でした。まずはこういった構造を可視化するということと、それ ぞれのサプライチェーンのネットワークの中でどのようなリスクが生じるのかというリスクの可 視化を図っていき、その上でエリア的に見て被災影響を受けるエリアと受けないエリアをきちん と見極めて、その中で事業継続で使えるリソースを考えるということです。これは自社のリソー スである必要はないと考えていますが、いろいろな連携先や機能代替を図れるような相手とどう やって機能代替を図り、連携していくのかの戦略を具体的に考えていくことが重要です。 まずその前段として、リスクが可視化できていなかったところ、サプライチェーンの可視化と いうところは、昨年の反省として今一生懸命取り組まれていますが、それに加えて、サプライチ ェーン上のリスクの可視化を図っていくことが非常に重要だということです。 こういった観点から、これまでの BCP は 4 連動の巨大災害に対応できるものではなかったと申 し上げているわけです。その上で事業継続のためのブロックを見極めていこうということで、リ スクを可視化していくことが最初のステップとして大事だろうと思います。 イメージとして、最初の一歩としては、サプライチェーンの構造を十分に把握することがある かと思います。もちろん現実的にはいろいろな守秘義務の問題もありますし、ノウハウの問題も ありますので、限界はあるかと思いますが、なるべくこれを把握することが重要です。また、そ れだけではなく、そこに潜むサプライチェーンリソースの被災の状況、地震動や液状化や津波で どのような影響を受けるのか。それから電力・上水道といった社会インフラによった影響はどう か。それから、今回は原発で顕著になりましたが、事業活動に直接影響を及ぼすような危険な立 地環境はどうなのか。このような状況をひととおり重ね合わせて評価していきます。 最近は図 15 のような GIS(Geographic Information System)も使いながら、まずサ プライチェーンの構造や災害リスクの素因を 重ね合わせて、トータルとしてどこにどのよ うなリスクがあるのかを見える化することが、 技術的には可能になってきています。まず、 これをきちんと分析して、リスクを可視化す ることが非常に大事だと考えます。愛知県の 大手自動車メーカーも今、一生懸命サプライ チェーンの構造把握に加えて、ハザードマッ プとの重ね合わせなどで、どこにどのような リスクがあるのかを見極めていこうとされていると伺っています。 そのやり方ですが、図 16 のように、まずブロックを見極めます。ブロックと定義させていただ いていますが、これは事業継続をしていくための広域のブロックです。必ずしも行政境界という 図 15

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リスク諸要因を重ね合わせ、GIS(地理情報システム)ツール を利用して視覚化する

29 注)GIS:Geological Information System

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ことではなく、被災影響を受けるエリアと受 けないエリアという見方でのブロックという 定義ですが、これを見極めます。見極めた上 で、そのブロック単位の寸断をある程度予想 して、どうやって立地戦略を考えていくのか が重要になってきます。大きな方向性として は、ブロックごとに自律完結した機能集積を 進めるといった考え方もあるかと思いますし、 ブロック間でいかに機能連携・代替していく という戦略を考えることもあると思います。 自律完結型の集積の考え方は、日本が完全 に大分断されることを前提に、一つ被災すると全部がやられるという構造ではなく、ある程度自 律性を保つということで、全体としてはある程度の機能継続を図って確保していこうというもの です。ただ、これはいわゆる大企業で全国に立地展開できており、ブロックに分けてもそれなり の生産量が確保できるという前提条件が必要になってくると思われます。 先ほど、今回の東日本大震災で輸送業界のカーブがかなりここで落ちたというご紹介をしまし たが、各消費地に拠点がある結果として全国に拠点分散している食品業界などはほとんど影響を 受けずに、生産量をほとんど落とさずにきているという例もあります。 ただ、自律型にするのは、非常に生産量が多くないと難しいだろうと考えられます。小さいと ころは拠点を本当にリアルに分散するだけの体力もありませんし、この国際競争化の中でそれだ けのコストをかけますと、震災が来る前に経営が継続できないということで、本末転倒になるで しょう。ですから、そういったブロック間でそれなりに多重化するようにして、機能をどうやっ て代替していくかという考え方もあるということです。 考え方としては、図 17 にありますように、 仮に B ブロックがやられても A ブロックで機 能連携できるように拠点を分散していく。あ るいは、リアルにリソースを多重化するのは コスト面で非常に経営上難しいことから、そ ういうやり方ではなく、場合によっては設計 情報なりいろいろな情報を代替拠点に移転を するなりして、ほかの拠点、ほかの企業と機 能が連携できるような準備を平時からしてい くという考え方もあります。また、サプライ にしても多重化して、可能な部分については 部品も共有化するなど、いろいろな機能連携 のやり方があります。 ただ、ここに大きな課題があります。今回の東日本の震災以降も在庫を持つとか、拠点を分散 図 16

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ブロック毎に自律完結した機能集積を進める „いずれかのブロックが被災しても全体の機能停止は回避できる

図 17

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海外も含めたブロック間の機能分担を進める

„拠点工場の分散、低リスクのブロックに移転、標準による相互補完

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するなどの議論が出ていますが、今回の東日本大震災は、グローバル競争が高まっている状況下 で初めて起こった震災であったことも大きな教訓の一つでした。従って、在庫戦略をやり過ぎる ことも必ずしも正しくはないでしょう。 それだけではなく、2 番目としては、現場力を高めて 2 週間で復旧したという例も幾つも聞か れています。被災現場における復旧をいかに早期化していくかという工夫も、非常に大事だと考 えています。また、被災地で短期で復旧できないものについては、拠点を普段から多重化するこ とだけではなく、バーチャルで機能を代替できるようなものを準備することも必要です。金型な どは分かりやすいのですが、それだけではなく、知識・技術の部分や設計情報などもほかのライ ンへすぐに移植して、そこで代替生産ができるような準備についても考えておく必要があります。 それが技術的にも非常に難しい分野もあるかと思いますが、そこも大きな課題になってきている と思います。 また、単純に拠点を多重化するだけでは、震災には勝てるかもしれませんが、震災が来る前に 国際競争に負けてしまいます。そこをどうするかは非常に大きな解決しなければいけない課題に なってきます。それから、もっと中長期的には設計変更も考え得るでしょう。 グローバル競争化における多重化戦略については、後ほどむしろ企業経営者の方も含めていろ いろなご意見をいただければということで、後ほどのパネルディスカッションの中でまさに具体 的なお話をさせていただきたいと思います。この震災にどう備えるかということに加えて、この 競争にどう対応していくのか。このバランスが非常に大きなテーマだということです。

第 9 章 まとめ

この巨大災害が 1000 年と言わず起こる可能性があるということで、災害対策という意味で、こ れまでの常識を覆すようなパラダイムシフトが生じる可能性が高いと思われます。それにいかに 備えるかということですが、まずは基本の取り組み姿勢として、きちんとリスクを可視化してい ただくことが非常に重要です。リスクを可視化して、事業継続をする上でのブロックをきちんと 定義をしていただきます。ブロックを定義すると具体的な打ち手が見えてきますので、その打ち 手をどう取っていくのか。これは企業の特性によって大きく違ってくると考えられます。ここの 具体的な部分については今後の大きな課題が残されていると考えていますが、この辺りのいろい ろなお話をさせていただければということです。 資料では次に BCP とは何なのだろうかというお話を紹介していますが、後ほどのパネルディス カッションの中で BCP の話で議論させていただきますので、必要に応じて紹介をさせていただけ ればと思います。 少々長くなりましたが、以上で私の話を終わりにしたいと思います。どうもありがとうござい ました。

(25)

(司会) 浅野さん、どうもありがとうございました。いろいろとまだまだお話ししたいことが 多いと思いますが、パネルディスカッションで答えていただきたいと思います。 それでは次のテーマにまいります。調査報告ということで産業経済研究所の研究員の小山先生 にお話をいただきます。最初に TBC 仙台で鈴木工業さんがどういうふうに BCP を築き、今回の震 災に対応できたかというビデオを見ていただきます。その後に私どもがアンケート調査をやりま した。経営者および有識者、2200 サンプルで 321 サンプルが戻ってきた調査の結果を小山先生が 分析して、BCP の現状をお話しさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

参照

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