今後は、地震専用のリスク測定尺度というリスク認知の尺度がありますので、その測定尺度を 使ってアンケート調査をするつもりです。そうしますとアンケート調査を 1 回ぽっきり行っただ けではなく、調査結果が普遍性を持つようになります。例えばこちらでしたら従業員にどれくら い被害が及びますかということを、Likert scale で聞いていくということもやってみたいと思い ます。
リスク知覚、リスク認知とリスク評価は全く別のことなので、これはリスク認知パーセプショ ンの方の話です。リスクを認知する、知覚する、測定尺度はいろいろな人が開発しているので、
そういうものを使うと市場調査に使えることが分かっています。
あとは先ほど GIS(地理情報システム)の話が出てきましたが、例えば最近では Classquake、
Class(階級)と Earthquake(地震)を一緒にしたような造語で階級震災という考え方がありま すので、過去の大災害のときにどこに立地していた企業がどれくらいやられたかということを、
電子地図上にプロットするようなことも、リスクを避けるという意味でやってみるといいかもし れません。そこにいたら危ないということが過去の傾向から分かるということです。
どうもご清聴ありがとうございました。
(司会) どうもありがとうございました。
申し遅れましたが、このアンケートは野村證券さんとアタックスさんのご協力を得て回収率も 上がりましたし、サンプル数も 300 を超えて、多面的な分析ができるということで、非常に貴重 なデータだと考えています。
パネリスト:浅野 憲周 (野村総合研究所 上級コンサルタント)
小川 裕克 (中部大学 教授)
荒川 健一 (株式会社グローバルエンジニアリング 代表取締役社長)
堀内 篤志 (愛知金属工業株式会社 生産統括グループマネージャー)
コーディネーター:奥田 誠 (野村総合研究所 名古屋オフィス代表)
(司会) それでは後半のセッションであるパネルディスカッションを始めさせていただきます。
パネルのコーディネーターは野村総合研究所の名古屋オフィス代表の奥田さんです。パネラーは 先ほどの基調講演をいただいた野村総合研究所の浅野さん。それから中部大学の経営情報学部の 教授である小川先生。それから実際に企業で BCP 対応、災害対応等を考えられている愛知金属グ ループマネージャーの堀内さん、それから、グローバルエンジニアリングの社長で、まさに若手 の起業家の荒川社長。この 5 人でパネルを進めていただきたいと思います。奥田さんよろしくお 願いします。
(奥田) ただ今ご紹介いただきました野村総合研究所の名古屋オフィスにおります奥田です。
第 2 部はこの戦略的 BCP と変革期を迎えた企業経営ということにつきまして、いろいろなお立場 の皆さまをお迎えして、本音の議論を進めていきたいと思っております。先ほど 1 部の方で講演 とアンケート調査の結果などもありましたが、多分皆さんは愛知県、この東海地域が最初ではな くてよかったとお感じになっておられますよね。今回、東日本大震災の状況を受けて、何らかの 備えをして、どう対処していったらいいのかを考える時間を与えてもらったのではないかなと、
多分皆さんお感じなのではないかと思います。特に東日本大震災以降、東北頑張れ、日本頑張れ と、行政も民間企業もそこに住まわれていらっしゃる方々もみんな一生懸命頑張ってこられたと 思うのですが、何ができて何ができなかったのか。そういったことが今ひとつよく分からないの ではないかとも思います。
また最近、東大の地震研究所が 4 年以内に 70%の確率で震度 7 の首都直下型の巨大地震が起こ るという記事が出ておりました。4 年というと大変だ、もうすぐではないかと思ってしまいます。
また、先ほど浅野の資料にもありましたように、中央防災会議のいろいろな予測の資料があった り、文部科学省の資料があったりします。ほかにも、愛知県や各自治体がいろいろとやっていら
パネルディスカッション
っしゃったりするので、その基準がわれわれからすると非常に分かりにくいとお感じになると思 います。そのような中、それに対してどう対処していったらいいのかについて、今日はこの舞台 にいらっしゃいます皆さまから活発な議論をしていただければと思います。
それでは初めに、荒川さんから、自己紹介を兼ねて 3 月 11 日にどんなことが起こったのか、実 際どんな経験をされて、お取引先などはどうだったのか、5 分ぐらいで簡単にご説明いただけた らと思います。
2011 年 3 月 11 日に経験したこと
(荒川) 皆さんこんにちは。グローバルエンジニアリングの荒川と申します。よろしくお願い します。愛知県の名古屋市に本社がありまして、創業が平成 5 年になります。私が 20 歳の時に創 業をしております。主な事業が IT(情報技術)、ロボット事業、バイオ事業とありまして、名古 屋、東京、神戸、神戸の研究所といった 4 拠点でやらせていただいています。主な特徴としては、
バイオテクノロジーと IT 技術のコラボレーションを目標としており、今まで蓄積した IT をバイ オ事業に活用した新しい仕組み作りを行っております。
やっている事業としては、システム開発事業、ロボット事業で、セグウェイジャパンさん等と の業務提携をさせていただいております。またパッケージソフトの開発、およびバイオ事業の中 には「土壌由来混合培養菌」といった、少しと変わったものの研究開発をさせていただいており ます。
次に 3 月 11 日に実際に起こった状況につい てお話しさせていただければと思います。当 社の東京事務所が東京都中央区に設置してあ ります。ちょうど日銀の裏側にある非常に小 さな、ワンフロア 60 坪ぐらいしかないペンシ ルビルだったという点が大きく寄与したのか もしれませんが、事務所が 10 階にあるという のもあり、中は本当にぐちゃぐちゃになって しまったのです。図 1 の左の上の写真が実際 の実務のスペースです。この下の方にある写
真で、ひっくり返っているのがウォーターサーバーのタンクになると思うのですが、こういった 非常に重たいものまでひっくり返ってしまいました。壁に設置してあった金庫などは壁の中にめ り込んでしまったという状況がありまして、社内に置いてあったパソコンおよび有線の LAN など はすべて破断をして、非常に大きな損害を受けました。
ただ、当社は名古屋と東京と神戸の 3 拠点で分散バックアップを取っていて、震災が起こった 1 分前のバックアップデータが実は名古屋に残っていました。データの損失は全くゼロという非
図 1
4 震災直後の東京事業所 LANケーブルの切断、書箱の転倒
事務所の壁にヒビが入り水漏れ 外壁の崩壊
常に幸いな状況にありました。よって、事業活動に関する直接的な影響としては、東京方面のお 客さんに関して一時当社の製造を行っていたシステムなど、納品受け入れの検収が大きく遅延を して、単月の売り上げが大幅に減少したことがあります。ただし、人的な納品遅延、検収遅延が あっただけで、発注自体に取り消しがあったわけではなかったものですから、ワンクウォーター
(3 カ月)後の売り上げは完全に復帰したという状況です。
また、バックアップのデータが残っていたことが非常に幸いして、納品の遅延は全くなく、東 京事業所の物理的な復旧を行う間は、名古屋、東京への短期の従業員の異動によって何とか対応 したという状況でした。
(奥田) 今、写真がありましたが、これは震災直後に写真を撮られたのですね。
(荒川) まさに起こったその直後です。
(奥田) 大変冷静だったと思うのですが、どうでしょうか。
(荒川) 災害が発生した時点で、これはきっと災害損失を計上しなければいけないと思った経 緯がありまして、従業員に命じて、まだ揺れて間もないビルの中に行って写真を撮ってこいと依 頼して、何とかやらせたという経緯です。
(奥田) 社長業として、災害が起こったらすぐに写真を撮ると社員に指示を出されたという方 でいらっしゃいます。
それでは現場を預かるマネージャーとして、堀内さん、よろしくお願いします。
(堀内) 愛知金属工業から参りました堀内です。愛知金属工業はあまり馴染みのない会社でし ょうが、中部電力のグループ会社で、いわゆる鉄骨屋です。送電鉄塔や電気温水器など、送電に 関する設備の金属製品を作っている会社です。私は元は企画屋でして、経営企画室などにいたの ですが、3 年ほど前から生産統括グループのグループマネージャーということで、いわゆる生産 管理、原価管理、資材調達を統括管理する立場に立っております。今回、BCP ということで、現 場を預かる身として、いろいろとお話ができればと思います。
3 月 11 日の当日、当社は春日井市にあって、ちょうど朝宮公園の近くなのですが、そこに本社、
工場があるということで、拠点は 1 カ所しかありません。ですから、ちょうど 2 時 46 分に私は 1 階の事務所に居たのですが、皆さんもお感じになったような揺れを感じて、その後にいろいろな 情報が入ってきて、「これは東北すごいな」ということで、テレビで情報収集をしておりました。
事業活動としては特に大きな影響はなかったわけなのですが、皆さん方も多分同じだと思いま すが、材料の関係、調達関係の方が非常に滞った部分があります。われわれは鉄骨屋なので鉄を 購入しているのですが、マスコミなどでもありましたが、仙台に工場がある JFE スチールの関係 会社の JFE 条鋼さんからアングル材という鋼材を買っております。テレビを見たら、もう水浸し。