中国学 園 にお け る禁 煙 医療 支 援
∼平成
17
年度の取 り組みを中心に∼
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n2005
-(2007年3月31日受理)西
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禁煙,禁煙支援,ニ コチン代替療法,ニコチ ンパ ッチ,動脈硬化,C
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要
約
「メタポ リックシン ドローム」 とともに 「喫煙」 による健康障害 (被害)が国内だけでな く世界中で も大変深刻 な問 題 となってい る。WHO (世界保健機 関)では, 「タバ コは,病気 の原 因の中で,予防できる最大の単一の原 因」 とし てい る。 日本人の喫煙率は特 に男性で非常に高 く,未成年者や妊婦 の喫煙 問題 も重大である。喫煙 は 「自傷他 害行為」 であ り,家庭や職場,社会だけでな く学校 において も喫煙 による直接 ・間接の健康障害や火事 ・事故等に対す る取 り組 みが求 め られてお り,それがその学校 (大学)の評価 にも繋がっている。 中国学園では, これまで も禁煙活動 に取 り組んできた。アンケー ト調査や啓蒙活動,更に職員 によるタバ コの吸殻 を 含 めた学園内清掃等が今でも毎 日根気強 く継続 されてい る。筆者 (医師) も,平成15年度か らニ コチン代替 ・置換療法 (ニ コチンパ ッチ) を含 めた禁煙 医療支援 を継続 してい る。今回は平成17年度の取 り組みを中心に,その1年後 までの経 過 を含 めて概略 (評価,問題点等) を述べ る。 ①学内の禁煙 医療支援 によって禁煙成功率は高かった。②学生達の場合 は若年者であるため喫煙年数が比較 的短 く, ニ コチ ンパ ッチは短期間使用で成功す る場合が多かった。ニ コチンパ ッチのサイズも 「中」以下でも良い場合 が多かっ た。③かぶれ,頭部 ・腹部症状等の副反応 が比較的多かったが,薬剤 (パ ッチ)の減量 ・休止で対処できた。① 家庭 (秦 族)・職場 ・アルバイ ト先 ・大学 (友人)等で喫煙環境か ら抜 け出せない場合 は,再度喫煙 して しま う場合が比較 的多かっ た。⑤喫煙 の根底 に精神的に重大な問題 を抱 えてい る場合は少 なかった。⑥長期的で十分なフォローや禁煙失敗者 の再 挑戦-の十分な支援は難 しい場合 もあるが,その点が最 も大切である。⑦ 「ニ コチン依存」に対 してはニコチ ン代替療 法 を, 「心理的依存 (習慣)」に対 しては行動療法 (後述) を併用す る事で禁煙成功 を高めることができた。Ⅰ.は
じ め に
世界 的 に生活習慣病,主 に癌 とメタポ リックシ ン ド ローム,虚血性心疾患,脳血管障害 (脳卒中)等が急増 してい る (ただ し,癌や脳 卒 中の中には生活習慣病 で はない もの もある)。 タバ コの煙 (直接 ・間接喫煙共に) には200種類以上の有害物質 と50種類 以上の発癌物質が 入 ってお り,喫煙が生活習慣病の原因の大 きな部分 を占 めているため,喫煙 による健康障害 ・被害は深 刻 な問題 である。 もちろんタバ コは老化 も早め,美容上 も大変悪 い。 日本人の喫煙人 口は約3000万人,喫煙率は成 人男性約 46%,成人女性約14%で,先進国の中でも特に男性 は減 少傾 向ではあるが,なおまだ最悪である。若い 女性 の喫 煙率は近年上昇 してい る。 国民1人当た りの喫煙本数 も 先進 国の中で最 も多い。未成年者 の喫煙問題 も深刻 である。他方,喫煙者 の 8- 6割 はタバ コを止 めたい と考 え てい る。 それ で も多 くの人々が,なかなかタバ コが止 め られ ないのは,喫煙 の "本質"が 「ニ コチ ン依存症」で あるためである。 日本 は先進 国の中で もタバ コの値段が 最 も安 い事 にも大 きな問題 がある。そんな中で,ニ コチ ンガ ムや ニ コチ ンパ ッチ等 に よるニ コチ ン代替療法や , 平成 15年 に施行 され た 「健康増進 法」,平成 17年 にはW HOの 「たば こ規制枠組み条約」発効等 が追い風 となっ て禁煙 ・健康志 向が大変高まってい る。 学校 (大学) に於いて も禁煙支援 (活動)が必須 とな り,大学の社会 的評価 にも繋がってい る。 日本 で も,や っ とタバ コの箱 にタバ コによる健康障害が記載 され るよ う になった。 平成 17年度 までは全額 自費負担であった医療 機 関での 「禁煙外来」 も,平成18年4月か らは指定医療 機 関においては健康保険適応 となった。 同6月か らはニ コチ ンパ ッチ も保 険適用 となった。 本学では平成 17年度 までは喫煙所 が学内に数箇所設置 され ていたが,平成18年度か ら 「学内全面禁煙」 となっ た。 タバ コの吸殻 を含 めた学内美化活動や指導 も,職員 に よって粘 り強 く継続 された。私 は平成15年 に赴任後, 教員お よび医師 としての立場か ら,禁煙 医療支援 を行 っ てきた。 また,平成 17年度までは保健室 (専任 スタ ッフ) がなかったため,傷病者-の対処 (心身の傷病や急病対 処,健康 ・医療相談,医療機 関- の紹介状作成 ・紹介, 主治 医 との連絡)等 を行 って きた。平成 17年度 か らは, 禁煙支援 の一環 としてニ コチ ン代替療法の貼 り薬 (ニ コ チ ンパ ッチ一人 5- 10枚 まで) の無料支給 を加 えて実 施 した。平成 17年度 では禁煙 医療支援 は20 人,傷病者-の対処等 は40人であった。 本学 は医療機 関ではないため,学内でニ コチ ンパ ッチ を処方す るにあた り,岡山市保健所 と十二分 に交渉 を重 ねた。学内の学生,教職員 のみ対象で,福利厚生のため (無 料) として許可 を得た。平成 17年度 は,禁煙 医療支援 を 随時受 け付 け,学園祭や公 開講座 な どで も禁煙相談 を実 施 した。喫煙所 での喫煙者 にも禁煙支援-の参加 を積極 的に呼びか けた。 タバ コの害 は主に,① タール (50種類以上の発癌物質 を含 む総称),② ニ コチ ン (タバ コのニ コチ ン依 存症, 血 管収縮 (動 脈硬化 )等),③ 一酸化炭 素 (動脈硬化 , 酸素欠乏) である。 ニ コチ ンパ ッチは唯一,ニ コチ ン し か含 んでいない。 それ以外 のタバ コの有害物質 (200種 類以上) は全 く含 んでいない。 ニ コチ ンパ ッチを使用す ることで体 にゆっ くりと一定の濃度で安定的にニ コチ ン を補充す るこ とがで き,ニ コチ ン離脱症状 (禁 断症状) を十分 に抑 えることができるよ うにな り,禁煙 も随分 と 楽 に行 えるよ うになった。以前の よ うに "願掛 け"の様 な苦 しい決断 も必要な くなった。更 に,ニ コチ ン依存度 が高い人 ほ ど,ニ コチンパ ッチの良い適応 である。 また 25歳以下の若年者 では喫煙期 間が比較的短い こともあ り ニ コチ ンパ ッチか らの離脱 も短期間で済む場合 が多い。 (図 1)「ニコチン依存」と 「心理的依存
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禁煙 が難 しい理 由は 「ニ コチ ン依存」と 「心理的依存」 の2つ の原 因があるか らである (図1)。 ニ コチ ン依存 に対 してはニ コチ ン代替療法が効果 を発揮す る。心理的 依存 はタバ コを吸って良かった とい う記憶や身 に付いた 癖,習慣 な どである。後者 に対 しては行動療法 (後述) が効果 を発揮す る。 これ らの ことを先ず理解 して もらっ た うえで禁煙支援 の具体的な話 に入 っていった。 (表1)簡易ニコチン依存度チェック Q.朝,起 きてか らどれ位 で,たばこを吸いますか ? □ 5分以内 - かな り強い □ 5- 30分 - 強い □30分∼ 1時間 - 中Ⅱ.
対象者 と方法 (
禁煙支援の実際)
《対象者》 中国学園 (中国学園大学 ・中国短期大学)の学生及び教職員 《方法》 禁煙指導 ・支援は主 に学園本館 で行 った。学園祭,公 開講座 な どでも行 った。 また研究室で も随時受 け付 け た。 〔問診 と禁煙 カルテの作成お よび禁煙支援 ・指導〕 1)本人の禁煙意志の確認。 2)ブ リンクマン指数 (一 日本数 ×喫煙年数)等の確認O 本学では全て無料 であるので問題 ないが,保険診療 では, この数字が200以上でなけれ ば保 険が適用で きない。 このため25歳以下な どの若年者や喫煙期間 がまだ比較的短い人では保険適応 とな らないため不 公平であ り問題が生 じている。 3)ニコチン依存度 (起床 してか ら1本 目を吸 うまでの 時間や1日の本数等)中でも 1本 目を吸 うまでの時 間による判定 (一般成人の場合) (表1) ①起床後直 ぐ(5分以内);ニ コチ ン依存度 がかな り 強いので 自力での禁煙 は困難。ニ コチ ンパ ッチを強 く勧 める。パ ッチは標準 (サイズ大)か ら開始す る。 ②5- 30分以内 ;ニ コチ ン依存度 が強い。絶対 に禁 煙パ ッチがお勧 め。 ③30分∼ 1時間 ;ニ コチ ン依存度は中程度だが,ニコ チンパ ッチを使用す ると楽に禁煙 できる。 ④起床後1時間以上 ;ニ コチ ン依存度 は弱いが,心理 的な安心感 も加 わるので,ニ コチンパ ッチの助 けを 借 りて禁煙 をスター トす ると楽 なので勧 めてい る。 パ ッチのサイズは中か らでも良い。 【ニコチン依存度が高い人ほ どニ コチ ンパ ッチの良い適 応でもある
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4)病歴等。 5)ニコチンパ ッチの使用禁忌の確認。 妊婦,授乳婦,急性期の心筋梗塞 (発症後3カ月以 内)不安定狭心症,重篤 な不整脈,冠動脈形成 ・バ イパス術直後,脳血管障害 (脳卒 中)回復初期の人, 本剤の成分に対 して過敏症の既往歴 のある人等の確 認 。 6)血圧測定 (安静暗) 殆 どの学生で問題 がなかった。 7)その他 (動脈硬化度 ・血管年齢 (CAVI)や骨密度測 定等。 喫煙 が,動脈硬化や骨粗 しょ う症 の重大 な リスクと な ってい る。 学生達 は, まだ若 く (健 康 なた め), この2つの結果 には異常値 は殆 ど認 めなかった。 8)喫煙 の健康障害 ・被害 "自傷他害行為" と,禁煙 の 意義 ・必要性, メ リッ ト等 の説 明。 (作成 した資料 や リー フ レッ トも使用) 9)禁煙 開始後のニコチ ン離脱症状 (禁断症状) と時期 について。 タバ コが吸いたい,イ ライ ラ,落 ち着かない, 口が 寂 しい,頭痛,体がだるい,眠い等が禁煙後3日以 内にピー クにな り,徐々に消失す る。1週間程 しん どい ことも。 10)ニ コチン離脱症状への対処法 (行動療法等)。 ①体 を動かす,リラックスす る,体操,散歩,深呼吸, 氷,冷たい水,お茶,昆布 ・ガム (カ ロリーや塩分 の少 ない もので),野菜 を食べ る,歯 ブラシでブラッ シング ・歯磨 き,睡眠を十分 に とる,禁煙 日記 をつ ける,禁煙 のメ リッ トを思い起 こす等。 ②禁煙 宣言 を して周 囲か らの支援 を受 けるこ とも大 切。特に禁煙 開始後 しば らくは喫煙環境や宴会な ど アル コール の席 を避 ける(吸 って しまい易い ので)。 禁煙 開始後1週間 ぐらいは仕事等の量を減 らす。 ll)ニコチ ンパ ッチの適正な使用方法 の説 明。 ①貼付法 ・部位 ;毎 日貼 り替 える。貼付部位 も毎 日変 える。 10秒 間 しっか りと押 さえる。 ② ニ コチ ン血 中濃度動態の特性 ;貼付後 (1枚 目は) 効果が出るまで何時間 もかか る。逆 に,剥が して も 効果 は何時間も持続す る。 ③使用 中は喫煙 は絶対禁止 ;ニ コチ ン中毒の危 険性が ある。パ ッチの効果 も減弱す るため。 12)ニコチ ンパ ッチの副反応 の説 明 と対処法。 〔副反応〕 かぶれ,睡眠障害 (夢が増 える等),頭痛,気分不良, 腹痛,めまい等。使用開始 日に生 じて くる場合 が多い。 〔対処法〕 貼 る場所 を毎 日変 える。就寝前 (入浴前) に早 めに剥 がす。減 量 (パ ッチのサイ ズ を小 さくす る),休薬 ・ 中止な ど。 〔注意点〕 ニ コチンパ ッチの副反応 の症状 の中には,禁煙 したことによるニコチン離脱 (禁断)症状 と同様のものもあ るので注意が必要である。 13)禁煙開始 日の決定。 禁煙開始後 しばらくは,過労や寝不足はできるだけ 避 けたほ うが良いので,大きな仕事の山場や試験の 前等は避 ける。 14)今後の禁煙相談予定の確認,連絡方法等 (定期的に 面談に来なくなる場合 もあ り,その場合の連絡のた め。) 15)ニコチンパ ッチの無料支給を超 えて継続が必要,ま たは継続 を希望す る場合に限 り,追加分のみは自費 購入 とす る。
Ⅲ.
結 果 の 概 要
1)《禁煙支援 (相談)人数分 20人 (男性9人 女性11人) (教職員 1人を含む。再挑戦者は 3人で延べ23人。) 2)《禁煙の動機》 健康のため,学外実習や就職のため,以前か ら止め たかった,ニコチンパ ッチが貰えるので,等。 3)《禁煙成功率) ①禁煙成功 (おおむね 3ケ月以上);12人 (内ニコチ ンパ ッチなしで成功;1人) 禁煙成功者の内で1年後の再喫煙 ;2人 (何度か失敗 して再挑戦者 し,最終的に成功 した場 合は成功 とした) ②失敗;5人 ③十分に禁煙相談を行ったが今回の禁煙実行は見合わ せた ;3人 【禁煙成功率(12/17)71%
1年後の長期成功率(10/17) 59%】 4)《ニコチンパ ッチ使用期間,使用量》 大部分が5- 10日間までの使用で禁煙 に成功 した。 サイズ大または中を使用。女性の場合はサイズ中で 良い場合 も多かった。更に効果が十分な場合や副反 応がある場合は,それぞれ薬剤面積を半分又はそれ 以下にして使用 した。 5)《ニコチンパ ッチの副反応》 気分不良,頭痛,腹痛,めまい,かぶれ等の副反応 が軽微なものも含めると17人中8人に認めた。 これ らは禁煙開始後数 日間に多かった。ただ し,一部は 禁煙 中断の "言い訳"の可能性 も考えられた。大部 分は,パ ッチサイズを小 さくした り,休薬すること で対処できた。一般的な副反応 の頻度 よりやや多 かったのは,喫煙年数の短い学生や女性 (体重も少 ない)の割合が多かったために薬剤の効果が強 く出 た為 と考える。一方,夢などによる睡眠障害は少な かった。これ らのニコチンパ ッチの副反応の中には, 禁煙 自体によるニコチン離脱 (禁断)症状 と一部重 なるものもあ り (頭痛や脱力感,倦怠感 な ど),注 意が必要である。 6)《禁煙成功者の検討》 本人にしっか りとした禁煙の意思があった。友人 と 一緒に禁煙 にチャレンジ。ニコチンパ ッチを使用中 はタバ コを吸ってはいけない と言 う事が歯止 めに なった。大学や職場 ・アルバイ ト先での喫煙環境か らの離脱。副反応が少なかった,他。 7)《禁煙失敗者の検討》 短期 ・長期の禁煙失敗7人の全てが家庭 ・職場 ・ア ルバイ ト先,親 しい友人グループ等が喫煙環境であ り,そこか らの離脱ができなかった。更に国家試験 や定期試験の勉強な どでイライラして再喫煙 して し まった とい う場合が多かった。 禁煙再挑戦の3人中で 2人は再度失敗 した。 これを 含め最終的に失敗 した7人の中には再挑戦を含めた 継続支援 を十分に行 うことができなかった学生 も あった。 これ らは禁煙支援の面談が途切れて しま う 場合に多かった。Ⅳ.
ま とめ ・考 察
禁煙の成功率は最新のものでは,中央社会保険医療協 議会の報告で,医療機関での 「禁煙外来」で,治療終了 (最終外来 日)か ら3カ月後の禁煙継続率 (成功率)は 約39.9% と発表 された。 中国学園での禁煙支援取 り組み の結果は,これに比較 して,かな り良い結果 となった。 医療機関の 「禁煙外来」は,保険適応の場合の受診は, ①初回,②2週間後,③4週間後,④8週間後,⑤12週 間後再診の合計5回の診療支援である。ニコチンパ ッチを用いると多 くの場合,ニコチン離脱症状 (禁断症状) は強 くない場合がほとんどである。 しか し,それでも離 脱症状がある場合は,禁煙開始後の最初の1週間,特に 2- 3日後が最 も "しん どい"。ニコチン依存だけでな く心理的依存 (習慣)の問題 もある。本学では,禁煙後, 離脱症状が強 くなる禁煙後2- 3日と,離脱症状が比較 的落ち着いてくる7日 (1- 3週)後な どにも面談を行 い,対処,フォロー した。ニコチンパ ッチの処方 も,そ れに合わせて初めは数枚ずつ とした。一般の医療機関で の 「禁煙外来」では,初回指導の後,次回の外来診療が 2週間も空いてしま うが,これは禁煙成功率を下げる要 因となる, と私は考えている。本学では更に禁煙開始時 に,全員ではないが動脈硬化度や骨密度な ども測定 した ことが良い動機付けになった と思 う。本学ではタバ コの 吸殻を含めた学内美化活動が,職員によって根気強 く継 続 されていることも大切な事 と考えている。 私は医療機関でも成人を対象 とした禁煙外来を行って いる。本学でも行っている個人個人-の追加支援 〔禁煙 開始2- 3日後 と1週間後に電話 (本学の場合は面談) で禁煙支援を追加〕によって禁煙成功率は大変良好であ る。一般的にも,禁煙外来での指導時間や指導回数が多 いほど禁煙成功率や成功維持率が明 らかに向上す ること が分かっている。 若年者は,まだ脳の成長過程にあ り,一般にニコチン 依存に極めてな り易いが,逆に正 しい治療 を行えば,ニ コチン依存からの離脱 も早い。本学の場合でもほとんど の対象者が25歳以下の若者であ り,喫煙期間もそれ程長 年に渡ってお らず,ニコチンパ ッチ試用期間は短期間で 終了できる場合が殆 どであった。 喫煙成功のためには,個人個人-のきめ細かな声かけ が大切である。友人 とともに5人同時に禁煙開始 した学 生達は全員が成功 した。仲の良いグループが皆禁煙 して 大学内での喫煙環境が解消 されたか らである。逆に禁煙 失敗者では全員,喫煙環境 〔家庭や職場 (アルバイ ト先), 親 しい友人 ・グループなど〕がその後 も続いていた。 また,自ら禁煙 しようとい う,強い意思, しっか りと した意識がないまま開始 した場合においては,失敗す る 割合が高かった。喫煙 を再開 して しま う大きな原因は, 上記の喫煙環境が続 くこと以外にも,宴会 ・お酒 (アル コール)の席で 「まあ1本 どうぞ」 と勧められて喫煙 し て しま う場合が多い。 これは "1本だけおばけ" と呼ば れてお り,禁煙後,何年たっても特に自覚が大切 である。
V.
課 題 ・問 題 点
《本学の場合》 一般の医療機関での禁煙外来よりもきめ細やかなフォ ローを行ったため,かな り高い成功率であった。 しか し, 私の時間 と,学生の時間を調整 して次回か らの支援 日 ・ 時間を決めてい くのは困難な場合 も多かった。禁煙 に成 功 しても失敗 しても,その後,約束の再指導 ・支援に来 なくなることがあ り,電話連絡等でのフォロー も比較的 多 く必要であった。長期フォローは,なお難 しい場合が あった。禁煙支援を教員職務の合間に医師 として行った ために限界 もあった。 本学では学生は全て無料であったが,これが一般の保 険診療の様に一部少 しでも有料であったとした ら,学生 達は更に本気で取 り組んだとも考えられる。 しか し,こ の場合,禁煙挑戦者が減少することも考えられ る。 《平成18年度以降》 平成18年度以降は,学内全面禁煙になったこともあ り, これまでのように,喫煙所で喫煙 している学生達に,私 の方から積極的に禁煙医療支援-の参加 を呼び かけると 言 うこともできなくなった。ニコチンパ ッチの予算 も計 上 しなかった。 自主的に禁煙支援を言ってくる学生 さん だけに対処 した。人数は少なかったが禁煙成功 率は大変 良かった。 学内全面禁煙 (平成18年度∼ 19年現在) を継続 した 場合, トイ レ等,学内での隠れての喫煙 (これ は以前か らあった問題だが)や校門前での喫煙等,マナ ーの問題 がどうしても発生 している。今後 も学内全面禁煙 を継続 するか喫煙場所を再度設けるか等,難 しい問題 である。 《一般の大学生の場合》 一般的に大学生は禁煙成功率が低い と言われ ている。 特に喫煙本数がそれ程多 くない学生 (特に女子 学生)に おいて,なかなか禁煙 できない事例が多いよ うである。 これは,身体的なニコチン依存 よりも,心理的 ・精神的 依存が大きい と思われ る。 《一般の医療機関での保険診療による 「禁煙外 来」の問 題点》①保 険適応 は,上記 のブ リンクマ ン指数 が200以上が 必須条件の一つである。そのため,学生達の様 な非長期 の喫煙者 は, これ に当てはま らず医療機 関での禁煙外来 において保険診療が受 け られない場合が多い (本学は無 料)0② 「禁煙外来」 で一度失敗 した場合 は,1年 間空 けなければ,次回の保険診療 による 「禁煙外来」を再度 受 けることができない。