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ネオジム磁石

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Academic year: 2021

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第 2 学 年 技 術 ・ 家 庭 科 ( 技 術 ) 学 習 指 導 案

ネ オ ジ ム 磁 石

指導者 ○○ ○○

世界最強のネオジム磁石。ハードディスク、ハイブリッドカー、洗濯機、エアコン、携帯電話など、私た ちの身のまわりで数多く使われている。ネオジム磁石の磁力の強さは、製品の小型、軽量、高性能化をもたら すだけではなく、「地球温暖化」を防止する省エネルギーの切り札として脚光をあびている。 1.地球を救う磁石 磁石は「地球温暖化」の救世主として、21 世紀、エレクトロニクス時代の脚光を浴びている。それは、磁石がこれからの新しいエネ ルギーの創出や省エネルギー化に大きな役割を果たし始めているからである。 私たちは地球の資源として蓄積された化石燃料を主要なエネルギー源として、快適な生活を営んでいる。しかし、その一方で、化石 燃料を消費することにより、多量の炭酸ガスを排出し、人類の存亡に関わる「地球温暖化」を引き起こしている。 1997 年、京都で開催された地球環境サミットで、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを目的に「気候変動枠組条約」京都 議定書が結ばれた。すでに、各企業の努力によって、省エネルギー技術の開発で実績をあげている日本は、国民一人当たりの二酸化炭 素排出量が低く、世界の最高水準レベルを達成している。その上さらに、温室効果ガスを 2008 年から 2012 年の間に6%減らすという ハードルは高い。最近の新聞やテレビでは、各企業は温室効果ガスの排出量の上限枠を設定し、上限を超えてしまった場合、排出量を 余らせたところから、必要な量の「排出権」を買い取る「排出権取引」制度を取り入れていると報道されている。このような厳しい現 状に対応していくために、大きく以下の3つが考えられる。 (1)化石燃料の使用を抑え、不便な生活をしながらも我慢する。 (2)化石燃料の使用量を従来の範囲内に抑えても、従来の生活を維持できる技術開発をする。 (3)炭酸ガスを排出しない全く新しいエネルギーを創造する。 (1)の不便な生活に逆戻りすることは、大部分の人が異議を唱えることが予想され、実現することは不可能に近い。 また、(3)の新しいエネルギーを創造することは理想的であり、研究も進められているが、開発に多くの時間を必要とし、完成す る前に環境破壊が進行していく危険性も高い。したがって、現状では、早急に実現可能な(2)の化石燃料の使用量を従来の範囲内で 抑えられる技術の開発を行う必要がある。具体的には、次のように考える。 ①少ないエネルギー消費で効率よく電力を供給するシステムを築いていくこと、発電機の発電効率を向上させること、発電に使われ るエネルギーをもっと有効に生かしていくこと。最近、話題になっている分散電源やそれを支えるコージェネレーション技術がこれに あたる。 ②電気エネルギーを効率よく使う電気機器を開発すること。 電気を使って物を動かすためにモーターが使用されている。このモータ ーの効率をあげることがきわめて重要になる。 ③同一消費量のガソリンで走行距離を伸ばすこと、あるいは、ガソリンを消費せず、排気ガスを出さない自動車を開発すること。ガ ソリンエンジンと電気モーターを用いたハイブリッド車や排気ガスを出さない各種電気自動車をさらに普及、実用化させることが重要 である。 そして、これらの技術を直接あるいは間接的に支えているのが、磁石である。現在、世界最強のネオジム磁石(1982 年 佐川眞人 発 明)がその中心的な役割を担っていることは言うまでもない。 2.磁石の歴史と技術の発展 紀元前、ギリシアのマグネシア地方で岩石の中から普通の鉄に混じって天然の磁鉄鉱が採掘され、「マグネス」(のち「マグネット」) と呼ばれるようになった。一方、中国では、慈州に天然の磁鉄鉱の産地があり、その地名から「慈石」と呼ばれていた。これが「磁石」 の名前の由来である。 時代を経て産業革命がヨーロッパに広がったころから、鉄の需要が急速に広まり、製鉄技術が急速に発展するとともに、そのころ発 展段階にあった電気磁気学と結びついて人工的に磁石が作られるようになった。 磁石の技術は、1917 年KS鋼(本多光太郎【東北大】)≪※( )内は発明者・社名≫から、飛躍的に向上してきた。1930 年OP磁 石(加藤与五郎、武井武【東京工業大】)から、1952 年バリウム・フェライト磁石(Went、Gorter【オランダ フィリップス社】)や 1961 年ストロンチウム・フェライト磁石(発明者 Cochardt【アメリカ】)への発展。1932 年MK鋼(三島徳七【東京大】)からアル ニコ磁石(Janes【アメリカ ゼネラル・エレクトリック社】)への発展。さらに、1934 年NKS(NewKS)鋼(本多光太郎【東北大】) と次々に発明された。そして、希土類磁石が発明されることとなった。 希土類磁石は、1967 年サマリウム・コバルト磁石(Strnat【アメリカ】)から 1970 年代初め 1-5 サマリウム・コバルト磁石、1976 年 2-17 サマリウム・コバルト磁石(俵 好夫【東北大】)、1982 年ネオジム磁石(発明者 佐川眞人【東北大学・住友特殊金属】)(ほ ぼ同時に Croat【アメリカ】)と発明されてきた。このように永久磁石の発明を支えてきたのは、東北大学を中心とする日本人科学者の

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努力の成果である。 ネオジム磁石は、曲げ強さ、引っ張り強さともそれまで最強であったサマリウム・コバルト磁石の 2 倍、また、一般的によく見かけ るフェライト磁石の 10 倍もあり、現在、世界最強の磁石の永久磁石といわれている。 3.ネオジム磁石を使った技術の発展 ネオジム磁石の使用用途は、全産業に渡っており、ハードディスク、ハイブリッドカー、音響機器、携帯電話、NC工作機、MRI 断層撮影装置、風力発電機、エアコン、洗濯機など、小型のセンサーから大型モーターまでさまざまな用途が開発されてきた。そして、 それまで磁石の主流であったフェライト磁石に変わり、あらゆる製品に使われだしている。 磁石が強力になることで、以下の3点において、技術的な発展が可能になる。 ① 機器を小型・軽量化することができる。(小型・軽量化) ② 機器を高性能化(高速回転、高音質など)することができる。(高性能化) ③ 少ないエネルギーで発電や動力を生み出すことができる。(省資源・省エネルギー化) 磁石の重要な役割は、エネルギー変換である。電気エネルギーを運動エネルギーに変換するモーター、音エネルギーに変換するスピ ーカー、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。強力な磁石の発明は、これらの機器の小型・軽量化、高性能化、 省資源・省エネルギー化を実現する。 例えば、モーターに使用する磁石の強さが 10 倍であるならば、同じ磁界を得るのに磁石の大きさは 10 分の1ですむこととなり、小 型で軽量なモーターが実現できる。この小型・軽量モーターを自動車に搭載した場合、自動車の重量が軽くなり、使用エネルギーが減 るため、省エネルギー化につながる。さらに、小型化に伴い、材料も少なくてすむため、省資源化にもつながる。また、モーターを従 来どおりの大きさにした場合、強力で、高速回転が可能な高性能モーターができ、トルクがあり、最高速度の速い高性能な自動車が実 現できる。このような技術を使って電気自動車「エリーカ」が開発されている。 磁力の強さでは、1820 年に電流が磁力を生み出すことがわかったことから、ネオジム磁石よりも強い磁力をつくり出す「電磁石」の 技術を私たち人類は持っている。しかし、「電磁石」では、強力な磁力を作り出すために、さらに莫大な電気エネルギーが必要となり、 省エネルギー化にはならない。永久磁石を使った技術開発が求められている理由はそこにある。 現在、ネオジム磁石の需要が最も多いのはハードディスクである。ハードディスクでは、磁気ヘッドを動かすVCM(ボイスコイル モーター)とディスクを回転させるスピンドルモーターで使われている。ハードディスクは、ノートパソコンの普及に伴い、小型・軽 量化、高速化の要求が極めて強い製品であり、この 50 年で飛躍的に発展してきた。 VCMを使ったデータの読み出しでは、磁気ヘッドを所定位置に超高速で動かし、ピタッと止める必要がある。もし、強い磁石がな ければコイルに電流を多く流すしかなくなり、発熱量が増加し、コイルが焼き切れてしまう。そんな時期にネオジム磁石が出現し、電 流を大きくしなくても高速駆動が可能になった。また、スピンドルモーターはネオジム磁石によって小型化されるとともに、ディスク の高速回転を可能にした。 ハードディスクは、1956 年 IBM 社(アメリカ)で初めて作られたとき、大きさ自動販売機 1.5 台分、重さ1t、記憶容量 5MB(フロッ ピーディスク 4 枚分)であった。しかし、上記のような改良の結果、2006 年東芝(日本)によって作られた 0.85 インチ型世界最小ハー ドディスクは、重さ 9.5g の 100 円玉サイズ、記憶容量 8GB に小型・軽量化、高性能化されている。他産業においても、ネオジム磁石を 使うことで同様の技術発展が見受けられる。 4.単元構成について 中学校学習指導要領[技術分野]「A 技術とものづくり」のなかには、「(5)ア エネルギー変換の方法や力の伝達の仕組みを知 り、それらを利用した製作品の設計ができること。」と記述されている。人間は、石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、地熱、太陽 光などのエネルギーを使って電気エネルギーを作りだし、それを、熱、光、運動、音などに変換し、生活の中で利用している。技術科 の学習では、人間の生活に欠かせない電気エネルギーの変換に関する学習は欠かせない。 さらに、同「(1)イ 技術と環境・エネルギー・資源との関係について知ること。」に相当する学習内容として、世界の最先端を いく日本の自動車技術(ハイブリッド車、燃料電池車、ディーゼル車、燃料の改善等)の学習を構成した。我が国では、自動車による 二酸化炭素排出が全体の約5分の1を占めており、このような状況の中、環境問題を考慮した自動車の開発に日本の各企業が力を注い でいる事実を生徒に伝えたい。 5.単元計画 中学 2 年 技術科 技術とものづくり 【単元名】エネルギー変換の仕組みと応用 【13 時間】 (1)電気エネルギーを光に変える仕組み・・・・・・・・・・≪1 時間≫ ・エジソン電球、白熱電球、蛍光灯、LEDの観察と実験 (2)電気エネルギーを熱に変える仕組み・・・・・・・・・・≪2 時間≫ ・鉛筆の芯、導線の発熱実験 ・テーブルタップと許容電流・電圧 (3)電気エネルギーを動力に変える仕組み・・・・・・・・・≪3 時間≫ ・クリップモーターの製作

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(4)電気エネルギーを通信・計算に変えるしくみ・・・・・・≪3 時間≫ ・くもの巣型コイルのラジオの製作 ・さまざまな通信技術(電気信号、電波、光) (5)エネルギー問題の現状と自動車技術・・・・・・・・・・≪4 時間≫ ・エネルギー問題と地球温暖化 ・ハイブリッド車(※ネオジム磁石)【本時 一部】 ・ディーゼル車と燃料電池車 ・燃料の改善とスターリングエンジン 6.教材の工夫について 中学校技術科の授業では「モノに振れさせる」「実験」を取り入れることが生徒の興味・関心を高めるために必要である。最先端技 術を紹介するだけのプレゼン型の授業であってはいけない。 導入部分では、モーターの模型をフェライト磁石とネオジム磁石で回転させ、比較観察させる実験を通して、ネオジム磁石が省エネ ルギーに貢献している事実を導き出していく。 また、ネオジム磁石の磁力の強さを全員が確認できるように、小型のネオジム磁石(直径 18mm、厚さ 3mm、吸着力 2.5kg)を一人 2 個準備した。短時間ではあるが、ネオジム磁石にふれる「自由試行」の時間を計画した。 その他、割れやすい磁石の欠点を克服した「ゴム磁石」や「0.85 インチ型世界最小ハードディスク」など、できるだけたくさんのモ ノを準備した。 教材提示においては、可能な限り実物を直に見せ、小さいものについては書画(CCD)カメラを活用する。 このように、直にモノに振れる体験をしたり、実験を通して考えたりする時間を多く持つことで、驚きや感動があり、知的な授業と なるようにしていきたい。 7.学習過程(本時一部) 説明 ここにモーターの模型があります。【モーター模型】 発問 もっと速く回すには、どうしたらよいですか。≪電池を増やす・・≫ 説明 電池はこのままで速く回してみせます。 発問 先生が変えたものは何ですか。≪磁石です。≫ 説明 最初に使ったのは、よく使われている「フェライト磁石」、入れ換えたのは世界最強「ネオジム磁石」です。 説明 どちらの場合も、電池の減り方は全く同じです。 発問 では、同じ回数、例えば 100 回、回すとすると、電池を使う時間はどちらが少ないですか。≪ネオジム磁石≫ 説明 そう、つまり、ネオジム磁石を使うと省エネルギーになるわけです。 説明 これらの磁石は、永久磁石と呼ばれ、半永久的にその磁力を発揮します。 説明 永久磁石は、1917 年の KS 鋼の発明から、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石と大きく発展 してきました。そして、そのほとんどが東北大学を中心とした日本人科学者の発明です。 ネオジム磁石は 1982 年佐川眞人さんの発明です。 指示 (この磁石、扱ってみたい人。)フィルムケースから出して、はずす、くっつける。はじめ。【ネオジム磁石】 説明 ネオジム磁石のおかげで、今までできなかった様々なことができるようになりました。 説明 現在のハードディスクです。これが実物です。【パソコン用ハードディスク】こちらは、50 年前のハードディスク。飛行機から おろしている写真です。重さは 1t。車 1 台分もありました。実は、この会場にも持ってきました。 指示 あちらをご覧ください。あのピンクの模造紙。あんなに大きなものでした。 発問 ちなみに、この大きさで音楽、何曲入ると思いますか? ≪○曲≫ 説明 答えは、わずか1曲。容量は、5M、フロッピーディスク4枚分です。ここから様々な改良がなされました。 説明 開発者の言葉です。「磁気ヘッドをすばやく動かし、ピタッと止めたい。苦労しているところにネオジム磁石が出現し、(この 後、一緒に、さんはい。)小型・軽量、高速化が実現しました。」 説明 そして、世界最小のハードディスクがここにあります。【0.85 インチ型ハードディスク】 特別に東芝からいただきました。重さ 9.5g、音楽 4000 曲入ります。 説明 さて、このネオジム磁石。実は、電気自動車「エリーカ」にも使われています。8個のモーターで、時速 370km、さらに、東京 ⇔大阪間を 500 円分の電気で走ることができます。つまり、高性能と省エネルギーを両立させたわけです。 発問 ところが、私たちはネオジム磁石より強い磁力を作り出すことができます。それは何だと思いますか? ≪電磁石≫ 発問 では、先生は、なぜここまで電磁石のことについてふれてこなかったと思いますか。≪・・・ ≫ 説明 電磁石を使うと省エネルギーにならないからです。 説明 ネオジム磁石は、省エネルギーの切り札として、ハイブリッドカー、エアコン、洗濯機、その他、このようなところで使われて います。 小型、軽量、高性能、そして省エネルギー。どの分野でどう使えばよいのか。これからもっと勉強していきましょう。

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8.参考文献・HP 『磁石は地球を救う ―省エネ時代のエース―』篠原 肇・徳永雅亮著 ネオブック/『トコトンやさしい磁石の本』山川正光著 日刊工 業新聞社/『Newton2007 年 11 月号「磁石の可能性」』(株)ニュートンプレス/『おもしろい磁石のはなし』(社)未踏科学技術協会編 日 刊工業新聞社/『磁気のはなし』中川康昭著 日本規格協会/『磁石材料の新展開』一ノ瀬昇・日口章著 工業調査会/『磁石の世界』 加藤哲男著 コロナ社/『電気と磁気がわかる本』谷腰欣司著 日本実業出版社/『磁石とその使い方』谷腰欣司著 日刊工業新聞社/『砂 鉄と磁石のなぞ』板倉聖宣著 仮説社/『エネルギーから考える暮らしと産業』経済産業省資源エネルギー庁/現代教育科学 N0,596 明 治図書 「サイボーグの授業」 木村重夫氏

○信越レア・アースマグネット「こんなところにも希土類磁石」http://www.Shinetsu-rare-earth-magnet.jp/rare/ ○Neo Mag 永久磁石・磁気応 用製品 http://www.neomag.jp/magnet_history/history_top.html ○TECHNO FRONTIER 2005~2007 シンポジウム モーター技術 シンポジウムhttp://www.jma.or.jp/techno/tt_cd.html#c01 ほか○自分が出したCO2 は自分で買い取る!?売買のしくみが日本にも登 場?http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/column/ikushima/071019_coj/○エネルギー環境教育情報センター http://www.icee.gr.jp/○マ イコミジャーナル【コラム】シリコンバレー101(3)ハードディスクが生まれた場所 http://journal.mycom.co.jp/column/svalley/003/○ ITmedia News 5M バイトからのスタート HDD 誕生から 50 年 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0604/12/news088.html

参照

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