程度補語に関する一考察
(そ の2
)— 動 詞 (動作のありかた) を説明する補語について一
徐 曼
A btudy oi the
しompiement oi degree (2)
— On the Usage of the Complement of degree
Which qualifies as a verb—
Xu Man
The complement which is connected by the structural particle “得” has various meanings. This paper attempts to inspect and analyse the structure of the complement which describes appraises: and judges an action verb. It also attempts to prove that the complement has a function as an adverb or adverbial, though the meaning of the whole sentence will not be changed m spite of putting the complement before the verb or moving the adverb in front of the verb to the position after “得,,. Also the form of the complement which qualifies as a verb will be discussed is tms paper.
文 教 大 学 言 語 と 文 化 第5号 1992年 1 . はじめに 動詞或いは形容詞に後接する“得” で導かれる補語はそのあらわす意味に よって次のように大きく三種類に分類されることを前稿(「程度補語に関す る一考察“〜得恨”、“〜得厉害” などにつ い て 」;文教大学言語文化研究所;紀 要 『言語と文化』第 4 号)で述べた。すなわち、 第 一類;“得”の後の補語が程度の高いことをあらわすもの。 第 二類;“得”の後の補語が動作行為に対して、描写、評価、或いは判断 を表すもの。 第 三類;“得”の後の補語が動作或いは状態の結果をあらわすもの。 小稿では前稿で第一類の程度の高いことをあらわす程度補語のうち、 “〜得恨”、 “〜得厉害”、 “〜得多” の意味的な特徴、特に述語成分の意味的 な特徴について考察したのにつづいて、第二類、第三類の補語の基本表現 と区別から、“得” の前に動詞が来る第二類の補語の意味的な特徴について 考察してみたいと思う。 2. 第二類、第三類程度補語の基本表現と区別 程度補語文の中で、“得”のうしろの補語が、最も多いのは動作、行為に 対して描写、評価、判断及び、動作或いは状態の結果をあらわすものであ る。 これらの基本表現から“得” の後の補語の全文に対する機能をどのよう に区分するかを、つぎの例において見てみよう。 例 :1 . 谢天谢地,儿子长得不象他。 (张 洁 《方舟》) 2 . 女犯和男犯是绝对隔离的,隔离得我们这些男犯 几乎忘了身边还有女犯的存在。 (张 贤 亮 《男人的一半是女人》) 3 . 我十三岁,不懂得望山跑死马。眼睛馋得流泪泪, 恨不得马上到家……。 (懿 翎 《十三阶》) — 72 —
4 . 要是兵行诡道或刚猛擅杀,就算赢得十分辉煌, 反倒不入正統。 (孔 捷 生 《黑白之道》) 5 . 她也笑了。但笑得没有劲头,没有内容,没有方向。 (张 贤 亮 《男人的一半是女人》) 6 . 我感动得真受不住了,一股温情ー个劲儿往上涌。 (徐 星 《无主题变奏》) 7 . 他的英文说得很漂亮。 以上の例から、すべての例の補語は“得”で導かれているが、補語の全文 の中での働きが違うことがわかる。例 1 の補語“不象他” は息子の容貌を指 し、 したがって主語“儿子”のことを説明している。例 2 の中の補語は補語 部分に属している主語“我们这些男犯” を強調していることが理解される。 文の意味としては、「われわれ男性の犯人は隔離されたことによって、そば にまた女性犯人も存在していることさえも忘れるところだった」 と解釈さ れる。一方、この補語部分の主語である「われわれ男性の犯人」は全文の 意味上の受け身成分であり、動 詞 「隔離」は原因を、補語は結果をあらわ している、 したがって、補語が文の受け身成分を説明していることがわか る。同じく例3 の中の補語は目の様子を説明し、涙を流している原因は、 動詞“馋”のことで、補語はその結果をあらわすことがわかる。例 4 の中の 補語“十分辉煌”は動作のありかた、即ち動詞“贏” (勝つ)を説明している。 例 5 の中の補語も動詞“笑” (笑う)の様子を描写、説明、例 6 の中の補語 は全文の主語“我” を説明している。例 7 の中の補語“很漂亮”は動詞“説” を 判断、評価していることをあらわしている。 したがって、例 1 、 2 、 3 、 6 の中の補語はすべて全文の主語を説明し、それぞれの動詞“長”、“隔離” 、 “‘饱”と“感動”は原因であって、補語はその引き起こした結果を表している。 一方、例 4 、5、7 の場合、文の中の動詞は原因をあらわしているのではな く、動作、行為をあらわし、補語から評価、描写、判断をうけている。 し
たがって、前掲の程度補語の分類によれば、例 4 、5 、7 が第二類に属し、 例 1 、 2 、 3 、 6 が第三類に属することになる。 以上の例の基本表現に対する分析から、第二類と第三類の程度補語の区 別が判明したが、 さらにつ づ い て 、今度は“得”の前の動詞に説明(評価、 判断、描写) を加えている第二類の程度補語の特徴について、 もう一歩進 んで考察してみることにしたい。 3 . 動 詞 (動作のありかた)を説明する第二類の程度補語 一般には、動詞を修飾、説明することができるものは副詞または状況語 である。しかもこれらのものはすべて動詞の前に置かれるのが原則である。 第二類の程度補語はその表わす意味の違い(描写と判断、評価)に応じて、 どのような形式を用いて動詞を説明するのだろうか。 まず、つぎの用例を 見てみよう。 例 :8(4).要是兵行诡道或刚猛擅杀,就算嬴得十分辉煌,反倒不人正統。 9 . 山查桑葚大双眼闭得睡过去一般。 (懿 翎 《十三阶》) 1 0 .我知道你跟我婶过得不快活,我老想安慰安慰你。 (张 贤 亮 《河的子孙》) 1 1 .她的尿布是为她未来的儿子准备的,都叠得板板正正’ 洗得千干净净。 (莫 言 《弃婴》) 1 2 .她恨不得自己的肚子,一夜之间就隆得象扣着的面盆。 (张 洁 《祖母緑》) 1 3 .他说得很对。 1 4 .他的字写得很清楚。 以上の例8 から例14まで、“得” で導かれた程度補語はそれぞれの動作動 詞 “臝”、 “闭”、 “过”、 “叠”、 “隆”、 “说”、 “写”を説明している。例 8 、 9 、10、11、12は動作、行為の様子に対して、描写をあらわしているが、 文 教 大 学 言 語 と 文 化 第5号 1992年 — 74 —
例1 3と14は“説”と“写”の動作に対して判断、評価であることがわかる。以 上、 これらの例の中の程度補語が動詞(動作のありかた) を説明している ことを意味的に分析してきたが、形式上は“得” の後の補語が動詞を修飾す る副詞、状況語のように動詞の前に移行させてみても、従来の意味が変わ らないかどうか、 また文として成立するかどうかについて、つぎに、ニつ の方向から着手して考察してみたい。 (1) 補語を動詞の前に移行させた場合 動詞を説明する補語は意味的に成立していても、形式的には他の副詞、 状況語のような機能を有していて、 はじめて動作を説明している条件がそ ろうことと言えるだろう。次に前掲例文を変換したあとの例をみてみよう。 例 :15. ( 8 ' )要是兵行诡道或刚猛擅杀,就算十分辉熄(地 )赢 (了), 反倒不人正統。 16. ( 9 ' )山奎桑葚大双眼唾过去一般(地)闭 (着)。 1 7 . ( 1 0 0我知道你跟我婶不快活(地)过(着),我老想安慰安慰你。 1 8 . ( 1 1 ' )她的尿布是为她未来的儿子准备的,都板板正正 _ 叠(着),干干净净(地 )洗(了)。 19. ( 12' ) 她恨不得自己的肚子,一夜之间就象扣着的面盆 (似的)隆(着)。 * 2 0 . ( 1 3 ' )他 很 对(地)说 (了)。 * 2 1 . ( 1 4 ' )你的字很清楚(地)写(了)。 以上の変換から、“着,,(例16、17、18、1 9 )や“了’’ (例1 5と例1 8 )と“ 似 的” (例19 )、“地” (上記すベての例) などのような助詞を加えるだけで、 “得”の後の補語を状況語として、動詞の前にもってきても、文の本来の意 味は失われておらず、文としても成立していることにより、補語はたしか に動詞を修飾する副詞や状況語の機能を有していることがあきらかになっ た。
一方、例20、21のように、すべての動詞を説明(評価、判断、描写)で きる形容詞を用いた補語は、以上の変換に適応しているとは限らない。例 20、21の“得”の後の補語は動作動詞“説” ど‘写”に対する評価であること、 つまり、補語は動作、行為を描写しているのではなく、動作行為のありか たを判断、評価していることから、他の例のように、補語を動詞の前にも ってくることができない。 したがって、以上の変換は補語が動作、行為に対する描写的性格をもつ 場合においては適応するが、補語が動作、行為に対する判断、評価をあら わす場合には適応しないことがわかる。 (2) 動詞の前に副詞がある場合 補語が動詞を説明する文の中に、動詞の前に“也” (重複頻度) 、“都” (範 囲) 、“正” (時間) 、“就算” (語気) 、“更加” (程度) 、“仍然” (情態)、“ 末 必” (肯定、否定)などのような副詞がある場合、 これらの副詞を補語の一 部として、“得”の後にもってきても文の本来の意味は変わらない。つぎの 例をみてみよう。 例 :2 2 .女人骂得再花,山查老汉1 挨得满心情愿。 (懿 翎 《十三阶》) 22:女人骂得再花,山查老汉挨優里满心情愿。 2 3 .有啊!这儿里搞得热火呢。 (莫 言 《弃婴》) 23:有啊!这儿搞得里热火呢。 2 4 .你看!他们更加唱得起劲了。 24:你看!他们唱得更加起劲了。 2 5 .(8 )要是兵行诡道或刚猛擅杀,就算赢得十分辉煌, 反倒不入正統。 25:要是兵行诡道或刚猛擅杀,赢得就算十分辉煌, 反倒不入正統。 文 教 大 学 言 語 と 文 化 第5号 1992年 — 76 —
2 6 .尽管这样,她仍然干得兴致勃勃。 26:尽管这样,她干得仍然兴致勃勃。 2 7 .我看这件事未必处理得当。 27:我看这件事处理得未必得当。 28. (1 1 )她的尿布是为她未来的儿子准备的,|叠 得 板板正正,洗得干干净净。 28:她的尿布是为她未来的儿子准备的,叠得盤板板正正,. 洗得干干净净。 以上の変換した例の結果から、動詞の前に置かれた副詞を“得” の後に移 動させても、文の本来の意味は失われておらず、 また、文も意味的にも構 造的にも成立していることもわかる。その理由として、副詞は動詞をイI参飾 するもので、補語も同様に上述したように、状況語の機能をもち、 しかも 簕詞を説明していることがあげられる。 以上、⑴と⑵の変換とその結果得られた説明によって、動 詞 (動作のあ りかた) を説明する第二類の程度補語は、意味的に状況語の機能をもって いることがわかる。 しかし、状況語は動詞のもつ動作そのものを條飾する が、一方、状況語と違い補語は動作動詞のそのものを修飾するばかりでな く、動作の様子や進行過程の状態を描写、判断し、評価をあらわしている ことに注意しなければならない。 このような説明的な表現は状況語で表す ことはできない。この事実を、つぎの例で比較してみたい。 例 :2 9 .他轻轻地走着,生怕弄出一点儿声音来。 3 0 .他走得轻轻的,生怕弄出一点儿声音来。 例29の文としては、平叙文における、状況語“軽軽地”は、「歩く」という 動作動詞の程度を表し、動詞を修飾しているだけで、動詞“走” は全文の中 心として、主な役割をはたしていることに変わりはない。一方、例30の描 写文においては、程度補語“軽軽的”は そ の 「歩く」程度だけではなく、描
文 教 大 学 言 語 と 文 化 第5号 1992年 写的な説明のしかたによって、第三者に彼の歩く「心理的」な様子も伝え ることが可能になるといえよう。例30の全文の中心は、動詞‘‘走”ではなく、 補語がその主な役割をはたしているのである。 ここに、動 詞 (動作のあり かた)を説明する補語は、状況語との比較において根本的な相違がみられ る。 4 . 動詞を説明する補語の形式 最後に、動詞を説明することができる程度補語につ い て 、主たる形式を みてみることにしよう。一般には次のような形式がみられる。 ⑴ 単 一 形 容 詞 これらは一般な形容詞述語文と同じく、形容詞のそのままの形では使わ れず、形容詞の前に、“很” または他の程度副詞を加えて用いることが肝要 で あ る 。単一形容詞補語は動作、行為に対して判断評価を表す場合に、一 般的に用いられる。以下の例にそってみてみよう。 例 :3 1 .他写得里
,
我写得不好。 3 2 .他说得很清楚,没什么可怀疑的。 3 3 .这件事,你做得很对。 3 4 .你今天穿得真漂亮啊! (2) 形容詞の重曼形式 形容詞の重畳形式には、次のような例がみられる。これらの形容詞は状 態を表わし描写的な性質を備えていることによって、動作、行為に対して 描写をあらわす場合に補語として用いられる。 例 :3 5 .他的尿布是为她未来的儿子准备的,都叠得 板板正正,洗得干干净净。 3 6 .山奎老汉话搁得重重的,硬蹶人个跟头。 (懿 领 《十三阶》) 一78 ——3 7 .我已经把话说得清清楚楚的了。 3 8 .我坐在第一排,演员的表情都看得真真的。 (3) 形容詞の複合形式 一般的に、 この形式は程度補語の中では比較的多くつかわれており、表 現効果をさらに描写的なものにしていることがわかる。 例 :3 9 .可以把身子贴得紧而又紧。 (多 多 《最后一曲》) 4 0 .追悼会上,李亚哭得鼻青脸肿。 (方 方 《白雾》) 4 1 .我想这条I I 可能烂掉,烂得象个冻浆了的冬瓜。 (莫 言 《弃婴》) 4 2 .她脸上各个部分配合得是那样地和谐,因而总能给入 以愉快与抚慰。 (张 贤 亮 《緑化树》) (4) 動詞と動詞の複合形式 この種の補語は第二類の中で、比較的すくない。以下、例を示す。 例 :4 3 .她也笑了,但笑得没有劲头,没有内容,没有方向。 ン4 4 .苹果树下套种的落花生圆圆的硬币般的叶子,被我 们的裤子蹭得哔啦哔啦响。 (莫 言 《苍 蝇 • 门牙》) 5 . おわりに 第二類の程度補語構文の中には、“得”の前はすべて動詞だけではなく、 形容詞をもつ形式もあり、 この場合は、補語が形容詞を説明している。小 稿の目的は、“得”の前にくる動詞だけをとりあつかい、補語が動詞を説明 する状況語の機能を有することについて考察してみたいことであった。程 度補語のもつ性格は、文中にあって様々な形式と機能を有する。程度と情 態の意味的な重層も当然観察されるわけであるが、今回は主として形式面 から考察することになった。程度補語に関する研究の一つの足がかりとし、 論じ尽くせなかったいくつかの点については、 さらにまた、別の機会にゆ
文 教 大 学 言 語 と 文 化 第5号 1992年 ずることにしたい。 (追記) 小稿をまとめるにあたって、明海大学の大滝幸子先生から貴重なご意見 とご指導をうけたまわった。記して感謝申し上げる。 【主要參考文献] 1 . 李临定(1963)「帯 “得” 字的补语句」 『中国语文』1963年第5期 2 . 刘月华、潘文娱、胡舞(1 983)『实用现代汉语语法』外语教学与研 究出版社 3 . 李临定(1986)「现代汉语句型』商务印书馆 4 . 王邱丕、施建基(1 990)「程度与情状」 『中国语文』1990年第6期 5 . 张松林(1 9 8 6 )『现代汉语语法表解』四川科学技术出版社 6 . 松村文芳(1987)「现代汉语“得” 字结构研究」 『语言研究论丛』 中文系『语法研究论丛』编辑部编 ■ 7 . 缪锦安(1 9 8 2 )『汉语的语义结构和补语形式』上海外语教育出版社 8 . 范晓(1 9 9 1 )『汉语的短语』汉语知识丛书商务印书馆 9 . 徐曼(1 9 9 1 )「程度補語に関する一考察“〜得恨”、“〜得厉害” などにつ い て 」 『言語と文化』第4号 文教大学言語文化研究所