凸関数の劣微分の連続性と単調性
著者
福尾 洋一
雑誌名
経済学論究
巻
63
号
3
ページ
1-28
発行年
2009-12-15
URL
http://hdl.handle.net/10236/3690
凸関数の劣微分の連続性と単調性
Continuity and Monotonicity Properties
of Subdifferential of Convex Function
福 尾 洋 一
This paper, referring to Rockafellar[11] and other Japanese literatures, presents, first, certain continuity and monotonicity properties of subdifferential ∂f of closed proper convex function f on Rn, and second, to the graph G∂f, (x, x∗)∈ G∂f⊂ R
2
if and only if x∗∈ ∂f(x).
This subject is useful for the study of the differentiability of a proper convex function.
Yôichi Fukuo
JEL:C600, C610
キーワード:凸関数,劣微分,劣微分のグラフ
Key words: convex function, subdifferential, graph of subgradiential
§ 0.
序
閉真凸関数 f : Rn→ R ∪ {∞}, domf = (domf)a,の x ∈ Rnにおける劣微 分(subdifferential offatx) ∂f (x)x∗∈ Rn∀z ∈ Rn: f(z) f(x) + x∗, z− x は Rnの閉凸集合である1) 2) 3).しかし,f の劣微分(subdifferential off)(一 般に,多価写像) 1) 閉真凸関数の定義については,文献 [2] 定義 8,文献 [4] 定義 8. 2) 以下において,任意の集合 S ⊂ Rnに対して,集合 Saは S の閉包,集合 Siは S の内部, 集合 SIは S の相対内部をあらわす.なお,集合 S ⊂ R については,その内部と相対内部は 同一概念である. 3) 文献 [9] 注意 6. — 1 —凸関数の劣微分の連続性と単調性
Continuity and Monotonicity Properties
of Subdifferential of Convex Function
福 尾 洋 一
This paper, referring to Rockafellar[11] and other Japanese literatures, presents, first, certain continuity and monotonicity properties of subdifferential ∂f of closed proper convex function f on Rn, andsecond, to the graph G∂f, (x, x∗)∈ G∂f⊂ R2 if and only if x∗∈ ∂f(x).
This subject is useful for the study of the differentiability of a proper convex function.
Yˆoichi Fukuo
JEL:C600, C610
キーワード:凸関数,劣微分,劣微分のグラフ
Key words: convex function, subdifferential, graph of subgradiential
§ 0. 序
閉真凸関数f : Rn → R ∪ {∞}, domf = (domf)a,のx ∈ Rnにおける 劣微分(subdifferential of f at x) ∂f (x)˘x∗∈ Rn ˛˛ ∀z ∈ Rn: f (z) f(x) + x∗, z− x ¯ はRnの閉凸集合である1) 2) 3).しかし,fの劣微分(subdifferential of f ) (一般に,多価写像) 1) 閉真凸関数の定義については,文献 [2] 定義 8,文献 [4] 定義 8. 2) 以下において,任意の集合 S ⊂ Rnに対して,集合 Saは S の閉包,集合 Siは S の内部, 集合 SIは S の相対内部をあらわす.なお,集合 S ⊂ R については,その内部と相対内部は 同一概念である. 3) 文献 [9] 注意 6. — 1 —凸関数の劣微分の連続性と単調性
Continuity and Monotonicity Properties
of Subdifferential of Convex Function
福 尾 洋 一
This paper, referring to Rockafellar[11] and other Japanese literatures, presents, first, certain continuity and monotonicity properties of subdifferential ∂f of closed proper convex function f on Rn, andsecond, to the graph G∂f, (x, x∗)∈ G∂f⊂ R
2
if and only if x∗
∈ ∂f(x).
This subject is useful for the study of the differentiability of a proper convex function.
Yˆoichi Fukuo
JEL:C600, C610
キーワード:凸関数,劣微分,劣微分のグラフ
Key words: convex function, subdifferential, graph of subgradiential
§ 0. 序
閉真凸関数f : Rn→ R ∪ {∞}, domf = (domf)a,のx ∈ Rnにおける 劣微分(subdifferential of f at x) ∂f (x)˘x∗∈ Rn ˛˛ ∀z ∈ Rn: f (z) f(x) + x∗, z− x ¯ はRnの閉凸集合である1) 2) 3).しかし,fの劣微分(subdifferential of f ) (一般に,多価写像) 1) 閉真凸関数の定義については,文献 [2] 定義 8,文献 [4] 定義 8. 2) 以下において,任意の集合 S ⊂ Rnに対して,集合 Saは S の閉包,集合 Siは S の内部, 集合 SIは S の相対内部をあらわす.なお,集合 S ⊂ R については,その内部と相対内部は 同一概念である. 3) 文献 [9] 注意 6.∂f : x∈ Rn
→ ∂f(x) ⊂ Rn
の実効定義域 dom∂f {x | ∂f(x) = ∅} については, (domf)(凸)⊂ dom∂f ⊂ domf(凸)I
が成立する4)が,dom∂f は必ずしも凸ではない5).また,劣微分 ∂f の値域
range∂f
x∈Rn
∂f (x)
については,文献[9]系5.1により,range∂f = dom∂f∗であるので,
(domf∗)(凸)⊂ range∂f ⊂ domfI ∗(凸)
である. 本稿では,劣微分 ∂f のある種の連続性と単調性を示すとともに,∂f のグ ラフ G∂fについて, 関係, G∂f =
(x, x∗ ) ∈ Rn × Rnx∗∈ ∂f(x) を示す.この性質は閉真凸関数 f : Rn → R ∪ {∞} の方向微分の連続性と単調 性に対応しており,そのことは f 自体のLipchitz特性を意味する.さらに,多 価写像が閉真凸関数の劣微分であるための必要十分条件が示される.§ 1. 1
変数の場合
最初に単純な1変数の場合を扱う. 定理1 f : R→ R ∪ {∞}, domf = (domf)a,を閉真凸関数とする.便宜 上,右側導関数 f +,左側導関数 f− を拡張して, domfの右側の x ∈ R に対しては,f −= f+ = ∞, domfの左側の x ∈ R に対しては,f −= f+ = −∞ とおく──したがって,x ∈ R に対して, ∂f (x)x∗∈ Rf −(x) x∗ f+(x) 4) 文献 [9] 定理 4 5) 文献 [9] 注意 9が成立する──.このとき,次の関係が成立する. (1) f +, f− は,(domf)I上で有限,かつ,R 上の非減少関数である.すな わち, z1< x < z2=⇒ f+(z1) f−(x) f+(x) f−(z2). (2) 任意の x ∈ R に対して,
lim z↓xf +(z) = f+(x), lim z↑xf +(z) = f−(x), lim z↓xf −(z) = f+(x), lim z↑xf −(z) = f−(x). 証明 (1)の証明.x ∈ dom f の差分商f (x + θ)− f(x) θ は θ > 0 の非減少関 数であるから6),f +, f− の定義により, 1. f +(x) < +∞ ⇐⇒ x が dom fの右端点の左側に位置する, 2. f −(x) > −∞ ⇐⇒ x が dom fの左端点の右側に位置する. ∴ 3. x ∈ (dom f)i⇐⇒ f +(x), f−(x)が有限である. さて,文献[9]注意2により,x ∈ domf ならば, f +(x) lim z↓x f (z)− f(x) z− x = limθ↓0 f (x + θ)− f(x) θ = f (x; 1), f −(x) limz↑x f (z)− f(x) z− x = limθ↓0 f (x− θ) − f(x) −θ = −f (x; −1), であるが,文献[9]定理1により,差分商f (x + θ)− f(x) θ は θ > 0 の非減少関数 であるから, f −(x) = sup θ<0 f (x + θ)− f(x) θ infθ>0 f (x + θ)− f(x) θ = f +(x). (1.1) 一方,x ∈ domf ならば,f −(x) f+(x)は自明である.また,z1, z2∈ domf, z1< x < z2に対しては, f +(z1) = f(z1; 1) = inf θ>0 f (z1+ θ) − f(z1) θ f (x)− f(z1) x− z1 =f (z1) − f(x) z1− x sup θ<0 f (x + θ)− f(x) θ = −f (x; −1) = f −(x) 6) 文献 [9] 定理 1f +(x) = f(x; 1) = inf θ>0 f (x + θ)− f(x) θ f (z2) − f(x) z2− x = f (x)− f(z2) x− z2 sup θ<0 f (z2+ θ) − f(z2) θ = −f (z 2; −1) = f−(z2) であるが, この関係 f +(z1) f−(x) f+(x) f−(z2) は,z1, z2∈ domf に対しても成立する. (2)の証明.上に示した関係は f +(x) lim z↓xf −(z) lim z↓xf +(z), lim z↑xf −(z) lim z↑xf +(z) f−(x), を意味する.よって,あとは ᶃ f +(x) lim z↓xf +(z), lim z↑xf −(z) f−(x), を示せば十分であるが, 任意の ε > 0 に対して区間 [ x, x + ε) ∩ domf = ∅ な る x ∈ R に対しては,ᶃの第1の不等式が成立し,任意の ε > 0 に対して区間 (x − ε, x ] ∩ domf = ∅ なる x ∈ R に対しては,ᶃの第2の不等式が成立するの で,ある ε > 0 に対して区間 [ x, x + ε) ⊂ domf なる x ∈ R に対してᶃの第1 の不等式が成立し,ある ε > 0 に対して区間 (x − ε, x ] ⊂ domf なる x ∈ R に 対してᶃの第2の不等式が成立することを示せばよい. 以下,証明方法は同様であるので,ある ε > 0 に対して区間 [ x, x+ε) ⊂ domf なる x ∈ R に対してᶃの第1の不等式が成立することを示す.そのため,開区間 (x, x+ε)に点 y(x < y < x+ε) を任意に固定し,さらに z x+ξ(y−x), ξ ∈ R+ とおく.文献[4]定理10系により, lim z↓xf (z) = limξ↓0f (x + ξ(y− x)) = f(x) であることに留意して,(1.1)の最後の等号を考えると, f (y)− f(x) y− x = f (y)− limz↓xf (z) y− limz↓xz = lim z↓x f (y)− f(z) y− z limz↓xf +(z). ∴ lim y↓x f (y)− f(x) y− x = f +(x) lim z↓xf +(z).
例1 閉真凸関数 f : R → R ∪ {∞}, f (x)
|x| − 2√1 − x for − 3 x < 1, +∞ for x < −3, 1 < x, x ∈ domf, に対して,定理1を確認してみよう. f +(x) =
+∞ for 1 x, 1 +√ 1 1 − x for 0 x < 1, −1 +√ 1 1 − x for − 3 x < 0, −∞ for x < −3. f −(x) =
+∞ for 1 x, 1 +√1 1 − x for 0 < x < 1, −1 +√1 − x1 for − 3 < x 0, −∞ for x −3. また,定理1の仮定の下では,x ∈ R に対して, ∂f (x) {x∗∈ R | ∀z ∈ R : f(z) f(x) + x∗(z − x)} = {x∗∈ R | f −(x) x∗ f+(x) }. ∴ ∂f (x) =
∅ for 1 x 1 +√1 1 − x for 0 < x < 1, [ 0, 2 ] for x = 0, −1 +√ 1 1 − x for − 3 < x < 0, −∞, 12 for x = 3, ∅ for x < −3. 例2 次の例は,閉でない真凸関数数 f : R → R ∪ {∞}, f (x)
0 for x > 0, 1 for x = 0, +∞ for x < 0, x ∈ domfが定理1の仮定をみたさず,定理1(2)をみたさないケースを示している. こ の場合 f +(x) =
0 for x > 0, −∞ for x 0 であり,f +は x = 0 において右側不連続である. 注意1 f : R→ R ∪ {∞} を閉真凸関数,ϕ : R → R ∪ {−∞, ∞} を ∀x ∈ R : f −(x) ϕ(x) f+(x) なる任意関数とし, ϕ+(x) lim z↓xϕ(z)─ ϕ の右側極限 ─, ϕ−(x) lim z↑xϕ(z)─ ϕ の左側極限 ─, とおく.このとき, (1) ϕは非減少関数である. (2) f += ϕ+, f− = ϕ−, つまり, x ∈ R に対して, ∂f (x)x∗∈ Rf −(x) x∗ f+ (x) =x∗∈ Rϕ −(x) x∗ ϕ+(x). 証明 (1)の証明.x1< x2に対して,λ(0 λ 1) を適当に選んで, λf −(x1) + (1 − λ)f+(x1) = ϕ(x1), f−(x2) ϕ(x2), とおくと,定理1により, ϕ(x2) − ϕ(x1) f−(x2) − λf−(x1) − (1 − λ)f+(x1) = {f −(x2) − f+(x1)} + λ{f+(x1) − f−(x1)} 0. (2)の証明.定理1により, f +(x) = lim z↓xf −(z) limz ↓xϕ(z) = ϕ+ (x) lim z↓xf +(z) = f+(x), f −(x) = limz ↑xf −(z) limz ↑xϕ(z) = ϕ− (x) lim z↑xf +(z) = f−(x). 定理2 a∈ R とし,ϕ : R → R ∪ {−∞, ∞} を ϕ(a) が有限な非減少関数と する.さらに,ϕ+を ϕ の右側極限,ϕ−を ϕ の左側極限とする.このとき,R上の関数 f (x)
x a ϕ(t)dt について,次の(1)(2)(3)が成立する. (1) fは,矛盾なく定義される閉真凸関数である. (2) f −= ϕ− ϕ ϕ+= f+. (3) fとは異なる閉真凸関数 g : R → R ∪ {∞} が,g − ϕ g+をみたすとき, g = f + αとなる α ∈ R が存在する. 証明 (1)の証明.ϕ(x) が有限な x ∈ R の区間を J とおく.ϕ(x) は非減少 関数であるので,x ∈ Jaに対して,f(x) は,リーマン積分として矛盾なく定 義され,かつ有限である.また,Jaの有限端点 x において,f(x) は,リーマ ン積分の極限 f (x) lim y→x y a ϕ(t)dt = lim y→xf (y), y∈ J I (1.2) として明確に定義される.一方,x ∈ Jaならば,明らかに f(x) = +∞ .よっ て,f(x) が J 上で凸関数であることを示せば,f(x) が R 上で真凸であること は明らかであるから,文献[4]注意2,注意7により,(1)が主張される. そ こで, 以下,f(x) が J 上で凸であることを示す. x, y∈ J, x < y, z (1 − θ)x + θy = x + θ(y − x), 0 < θ < 1, とおくと, f (z)− f(x) = z x ϕ(t)dt (z − x)ϕ(z),
f (y)− f(z) = y z ϕ(t)dt (y − z)ϕ(z), f (z)− f(y) (z − y)ϕ(z), であるから, (1 − θ)[f(z) − f(x)] + θ[f(z) − f(y)] [(1 − θ)(z − x) + θ(z − y)]ϕ(z) = 0. ∴ f(z) (1 − θ)f(x) + θf(y).(2)の証明.x ∈ J に対しては, ∀z > x :
f (z)− f(x) = z x ϕ(t)dt (z − x)ϕ(x), f (z)− f(x) z− x ϕ(x), ∀z < x :
f (x)− f(z) = x z ϕ(t)dt (x − z)ϕ(x), f (z)− f(x) z− x ϕ(x), であるから, f +(x) = lim z↓x f (z)− f(x) z− x ϕ(x), f −(x) = lim z↑x f (z)− f(x) z− x ϕ(x). また,x ∈ J に対して,上記関係の成立は自明.よって,注意1により, 結論 を得る. (3)の証明. 定理1および注意1により,x ∈ (domg)Iの場合であっても, x∈ (domf)Iの場合であっても, −∞ < g −(x) = f−(x) = ϕ−(x) ϕ(x) ϕ+(x) = f+(x) = g+(x) < ∞ であるので,x∈ (domg)Iならば x ∈ domf, つまり,(domg)I⊂ domf, x∈ (domf)Iならば x ∈ domg, つまり,(domf)I⊂ domg. よって,
(domg)I=(domg)II⊂ (domf)I, (domf)I=
(domf)II⊂ (domg)I.一方,(1)の証明部分で明らかにされた関係 J ⊂ domf ⊂ Jaと文献[1]定理19 により, JI ⊂ (domf)I ⊂ (Ja)I= JI であるので,結局,関係 (domg)I= (domf)I= JI (1.3)
が成立する.よって,文献[4]定理7系2により,あとは,JI上で g = f + 定 数となることを示せば十分である.ところで,J が1点集合の場合には,結 論は自明であるので,JI= ∅ としてよい. ここで,h f − g とおく.定理1 により,JI上で f +, f−, g+,g−はいずれも有限であり,したがって,極限の 加法性により,x ∈ JIに対して, h +(x) = f+(x) − g+(x) = 0, h−(x) = f−(x) − g−(x) = 0 が成立する.このことは,関数 h f − g が JI上で定数であることを意味し ている. 系2.1 I(⊂ R, = ∅) を開区間,f : I → R を有限凸関数とする.このとき, ∀x, y ∈ I : f(y) − f(x) =
y x f +(t)dt = y x f −(t)dt. 証明 f を R 上の閉真凸関数に拡張し,さらに,ϕ f −とおく7).文献[5] 定理1により,R に拡張された閉真凸関数 f は,I 上で連続であり,また,定理 1で示されたように,ϕ f −は I 上で非減少関数である.ϕ(xi) < ϕ+(xi), i = 1, · · · , n, x1< x2<· · · < xnとなる xi∈ I を分点に定めると,定理2により, xn x1 f −(t)dt = xn x1 ϕ−(t)dt = xn x1 ϕ(t)dt = n−1 i=1 xi+1 xi ϕ(t)dt = n−1 i=1 xi+1 xi ϕ+(t)dt = xn x1 ϕ+(t)dt = xn x1 f +(t)dt, であることに留意して,分点を適当に定め,さらに,a ∈ I(x < a < y) を固定 すると, y x f −(t)dt = a x f −(t)dt + y a f −(t)dt = a x ϕ(t)dt + y a ϕ(t)dt = f (y)− f(x) = a x ϕ+(t)dt + y a ϕ+(t)dt 7) ϕ f +とおいてもよい.=
a x f +(t)dt + y a f +(t)dt = y x f +(t)dt. 定義1 完全非減少曲線complete non-decreasing curve非減少関数 ϕ : R → R ∪ {−∞, ∞}, domϕ = ∅,に対して,集合 Γ
(x, x∗) ∈ R × Rϕ −(x) x∗ ϕ+(x) を完全非減少曲線という. 完全非減少曲線は,水平部分と垂直部分を含む可能性があるという点を除く と,区間 Ix∈ R∃x∗∈ R : (x, x∗) ∈ Γ 上の連続非減少関数のグラフと類似する.明らかに,写像 (x, x∗) ∈ Γ → x+x ∗∈ Rは全単射かつ両方向において連続である8).完全非減少曲線 Γ は,両端で 非有界な実曲線であり,座標別順序に関して R2の最大全順序(部分)集合で ある9). 定理3 閉真凸関数 f : R → R ∪ {∞} の劣微分 ∂f : R → R のグラフ G∂f, G∂f (x∗ , x)∈ R × Rx∗∈ ∂f(x) について,次の関係が成立する. (1) G∂f は R2の完全非減少曲線 Γ である. (2) fは,付加定数を別として,Γ によって一意に定まる. 証明 定義,定理1,定理2,そして ∂f (x)x∗∈ Rf −(x) x∗ f+(x) により,直ちに結論を得る10). 8) 仮定により,ϕ は非減少関数である. 9) 座標別順序に関して Γ が R2の全順序(部分)集合であるとは,任意の (x1, x∗ 1), (x2, x∗2)∈ Γ に対して,x1 x2かつ x∗1 x∗2,または x1 x2かつ x∗1 x∗2が成立するということで ある.また, 最大全順序(部分)集合とは,任意の他の全順序(部分)集合に真に含まれない 集合とういうことである. 10) 例えば,非減少関数 f(x)を定義 1 の ϕ とみなせばよい.注意2 完全非減少曲線 Γ に対して, Γ∗
(x∗, x)∈ R× R(x, x∗) ∈ Γ もまた完全非減少曲線である.実際,閉真凸関数 f : R → R ∪ {∞} に対して, Γ = G∂fならば,文献[9]定理5により,f の共役関数 f∗: R → R ∪ {∞}, f∗(x∗) sup x∈R{xx ∗− f(x)} に対して,Γ∗= G∂f∗である.また,同じ定理により, Γ =(x, x∗) ∈ R× Rf (x) + f (x∗) = xx∗.§ 2.
多変数の場合
1変数関数の場合に比較すると,多変数関数に関する劣微分写像の性質を記 述することは容易でない.まず,位相的構造に関する基本性質の帰結を挙げる. 定理4 閉真凸関数 f : Rn → R ∪ {∞} に対して,グラフ G∂f, G∂f (x, x∗) ∈ Rn × Rnx∗∈ ∂f(x) は閉集合である.すなわち,Rn × Rnの収束点列, (xi, x∗i)i∈N, xi∗∈ ∂f(xi), (xi, x∗i) → (x, x∗)(i → ∞) に対して,x∗∈ ∂f(x). 証明 f∗を f の共役関数 f∗: Rn → R ∪ {−∞, ∞}, f∗(x∗) sup z∈Rn{z, x ∗ − f(z)} とすると,x∗∈ ∂f(x) であることと, x, x∗ − f(x) sup z∈Rn{z, x ∗ − f(z)} = f∗(x∗) すなわち, x, x∗ − f(x) − f∗(x∗) 0 であることは同値である.この関係により,∀i ∈ N : xi, x∗i − f(xi) − f∗(x∗i) 0 であるので,文献[4]注意7により, 0 lim inf i→∞ [ xi, x ∗ i − f(xi) − f∗(x∗i) ] = lim inf i→∞ xi, x ∗ i − lim inf i→∞ f (xi) − lim infi→∞ f ∗(x∗ i) = lim infx i→x x∗ i→x∗ xi, x∗i − lim inf xi→x f (xi) − lim inf x∗ i→x∗ f∗(x∗ i) = x, x∗ − f(x) − f∗(x∗). よって,x∗∈ ∂f(x). 定理5 C ⊂ Rnを開集合,f, f i : Rn → R ∪ {∞} を C 上で有限な凸 関数,(fi)i∈N を C の各点 x で f に収束する(関数)列,すなわち,任意の x∈ C に対して,fi(x) → f(x)(i → ∞) となる列とする.また,x ∈ C とし,
xi i∈N, xi∈ C を x に収束する(点)列とする.このとき,任意の x ∈ C について,次の関係が成立する. (1) 任意の y ∈ Rnに対して,y i i∈N, yi ∈ R nを y に収束する任意の (点)列とすると, f(x; y) lim θ↓0 f (x + θy)− f(x) θ , f i(xi; yi) lim θ↓0 fi(xi+ θyi) − f(xi) θ に対して, lim sup i→∞ f i(xi; yi) f(x; y), とくに,∀y ∈ Rn : lim sup
i→∞ f i(xi; y) f(x; y). (2.1) (2) 任意の ε ∈ R+に対して, ∃番号 ixε∀番号 i ixε : ∂fi(xi) ⊂ ∂f(x) + εBn(0; 1), ただし,Bn(0; 1)は Rnの単位球. 証明 (1)の証明.文献[9]定理1により,
f(x; y) = inf θ>0 f (x + θy)− f(x) θ , f i(xi; yi) = inf θ>0 fi(xi+ θyi) − f(xi) θ , (2.2) が存在することを考えて,µ > f(x; y)を固定しておく.C は開集合である ので, x + θy∈ C, f (x + θy)θ − f(x)< µ をみたす θ ∈ R+が存在する.文献[5]定理8により, limi→∞fi(xi+ θyi) = f(x + θy), ilim→∞fi(xi) = f(x),
すなわち, lim i→∞ fi(xi+ θyi) − fi(xi) θ = f (x + θy)− f(x) θ < µ (2.3) であるので,十分に大きい任意の番号 j に対して, f j(xj; yj) fj(xj+ θyj) − fj(xj) θ < µ. よって, lim sup i→∞ f i(xi; yi) < µ であるが,この関係は,任意の µ > f(x; y)に対して成立するので,結局,任 意の ε ∈ R+に対して, lim sup i→∞ f i(xi; yi) < f(x; y) + ε. よって,結論を得る.(2)の証明.文献[9]定理4により,f i(xi,·), f(xi,·) は, それぞれ,非空閉有界凸集合 ∂fi(xi), ∂f(x)の支持関数,すなわち, f(x; ·) = δ∗
· | ∂f(x) sup x∗∈∂f(x) x ∗,· , f i(xi; ·) = δ∗ · | ∂fi(xi) sup x∗∈∂fi(xi) x∗ i,· であるので,Rn上で有限である.よって,文献[5]定理8系により,任意の x∈ C について,任意の ε ∈ R+と任意の z ∈ Bn(0; 1)に対して, ∃番号 jxε∀番号 j jxε : fj(xj; z) f(x; z) + ε,換言すると,任意の x ∈ C について,任意の ε ∈ R+と任意の y ∈ Rnに対 して, ∃番号 ixε∀番号 i ixε : f i
xi; y y fx; y y + ε, =⇒ f i(xi; y) f(x; y) + εy = f(x; y) + ε y, y y (正の1次同次性,文献[3]定理4,文献[9]定理1) =⇒ δ∗y| ∂f i(xi) δ∗y| ∂f(x)+ εδ∗y| Bn(0; 1) = δ∗y| ∂f(x) + εBn(0; 1) =⇒ ∂fi(xi) ⊂ ∂f(x) + εB n(0; 1). (文献 [7] 定理 1 系). 系5.1 真凸関数 f : Rn→ R ∪ {∞} に対して,次の関係が成立する. (1) 片側方向導関数 f: (domf)i× Rn→ R ∪ {−∞, ∞} は上方半連続関数 である.すなわち, ∀y ∈ Rn : lim supi→∞ f(x i; y) = f(x; y). (2.4) (2) 任意の x ∈ (domf)iと ε ∈ R +に対して,δxεが存在し, ∀z ∈ Bn(x; δ xε) : ∂f(z) ⊂ ∂f(x) + Bn(0; 1), ただし, Bn(0; 1)は Rnの単位球, Bn(x; δ)は中心を x,半径を δ とする Rnの閉球. 証明 定理5において,C (domf)i, f i(i ∈ N) f とおく. (1)の証明.定理5 (1)により, ∀y ∈ Rn : lim sup
i→∞ f(x i; y) f(x; y). (2.5) さて,(2.2)(2.3)により, lim i→∞ f (xi+ θy) − f(xi) θ f (x; y)
であるので,任意の ε ∈ R+に対して,十分に大きい任意の番号 j ∈ N につ いて, f (xj+ θy) − f(xj) θ + ε f (x; y). よって, inf θ>0 f (xj+ θy) − f(xj) θ + ε = f (x j; y) + ε f(x; y), すなわち, lim sup i→∞ f(x i; y) + ε f(x; y). ε∈ R+は任意であるから,結局,
∀y ∈ Rn : lim sup i→∞ f(x i; y) f(x; y). (2.6) (2.5)(2.6)により,結論を得る. (2)の証明.定理5 (2)により,任意の x ∈ (domf)iと ε ∈ R +に対して, ∃番号 ixε∀番号 i ixε : ∂f(xi) ⊂ ∂f(x) + εBn(0; 1), (2.7) である.ところで,xi∈ (domf)iは,x ∈ (domf)iに収束する点列
xi i∈Nの 任意の要素であることから,番号 ixεにある δxε∈ R+が対応して, ∀番号 i ixε : xi∈ Bn(x; δxε), であり,かつ,(2.7)は, xi∈ Bn(x; δxε) =⇒ ∂f(xi) ⊂ ∂f(x) + εBn(0; 1), を意味する.ここで,改めて xiを z とおくことにより,結論を得る. 注意3 定理5や系5.1において,lim sup(上方半連続)の関係を一様収束 性や連続性に強めることはできない.連続性が成立しないケースは例2で示さ れているが,いま,関数 f : R→ R+, f (x) | x |, fi: R → R+, fi(x) | x |pi, pi> 1, pi→ 1, i ∈ N を考えると,右側導関数に関して,
f +(0) = f(0; 1) = lim θ↓0 | θ | θ = 1, f i+(0) = fi(0; 1) = lim θ↓0 | θ |pi θ = limθ↓0θ pi−1= 0, i ∈ N であるから,一様収束性も成立しない. 定義2 凸関数 f(x; ·) の y における z 方向導関数 f : R → R ∪ {∞} を真凸関数とする.任意の x ∈ domf と f(x; y)が有 限な任意の y ∈ Rnに対して,凸関数 f(x; ·) の y における z 方向導関数を f(x; y; ·) によってあらわす.すなわち, f(x; y; z) lim θ↓0 f(x; y + θz) − f(x; y) θ . f(x; ·) は正の1次同次凸関数であるから,文献[2]定理8 系 により, f(x; y + θz) f(x; y) + θf(x; z) であるから, ∀z ∈ Rn : f(x; y; z) f(x; z). 定理6 f : Rn → R ∪ {∞} を閉真凸関数,x ∈ domf とする.さらに, (xi)i∈N, xi∈ domf を x に収束する(x 自身とは異なる)点列とする.この とき,
lim i→∞ xi− x xi− x = y, f(x; y) > −∞, x + θyθ∈ R⊕ ∩ (domf)i= ∅ ならば,次の関係が成立する. (1) ∀z ∈ Rn : lim sup i→∞ f(x i; z) f(x; y; z). (2) 任意の ε ∈ R+に対して, ∃番号 iε∀番号 i iε : ∂f(xi) ⊂ ∂f(x)y+ εB n(0; 1). ただし,∂f(x)y⊂ ∂f(x) は,その各点において,y が ∂f(x) への法線(ベクトル)11)となるような点の集合ある.すなわち, ∂f (x)y
x∗∈ ∂f(x)∀z ∈ ∂f(x) : z − x∗, y 0 =x∗∈ ∂f(x)x∗, y = sup z∈∂f(x)z, y . 証明 (1)の証明.α ∈ R+と単体 S をx + αy∈ (domf)i, y∈ Si, x + αS⊂ (domf)i
となるように選び,P を x と x + αS の凸包とする.P ⊂ domf は,ポリトー プ(すなわち,有界・有限生成凸集合)であり,文献[8]定理13により,局 所単体的集合である.z ∈ Rnを任意に固定し,十分に小さい θ ∈ R +を選び, y + θz∈ Siとなるようにする.さらに, εi xi− x ∈ R+, yi xi− x xi− x , ui yi+ θz, x + εiyi xi, x + εiui= xi+ εiθz とおく.仮定により,
ᶃ εi→ 0(i → ∞), yi→ y(i → ∞), ui→ y + θz(i → ∞)
であるから, ∃番号 i(α, θ)∀番号 i i(α, θ) : yi∈ Si, ui∈ Si, εi< α =⇒ xi= x + εiyi∈ P , x + εiui= xi+ εiθz∈ P =⇒ 0 =f (x + εiyi) − f(x) εi +f (x + εiui) − f(x + εiyi) εi +f (x)− f(x + εiui) εi =f (x + εiyi) − f(x) εi +f (x + εiyi+ εi(ui− yi)) − f(x + εiyi) εi +f (x + εiui+ εi(−ui)) − f(x + εiui) εi f(x; y i) + f(x + εiyi; ui− yi) + f(x + εiui; −ui) 11) 法線(ベクトル)の定義については,文献 [9] 定義 4.
=⇒ f(x; y i) + f(x + εiyi; ui− yi) = f(x; y i) + f(xi; θz) = f(x; yi) + θf(xi; z) −f(x + ε iui; −ui) f(x + εiui; ui). (文献 [9] 定理 1(2)) よって, ∃番号 i(α, θ)∀番号 i i(α, θ)∀β ∈ 開区間 (0, α) : f(x; y i) + f(xi; θz) = f(x; yi) + θf(xi; z) f(x + ε iui; ui) = inf β>0 f (x + εiui+ βui) − f(x + εiui) β f (x + (εi+ β)ui) − f(x + εiui) β . ᶄ lim sup i→∞ [f(x; y i) + θf(xi; z)] lim sup i→∞ f (x + (εi+ β) ui) − f(x + εiui) β . ᶃにより,十分に大きい番号 i ∈ N に対して,
εi+ β < α, x + εiui∈ P , x + (εi+ β)ui∈ x + αSi⊂ x + αS ⊂ P . 文献[5]定理2により,f は P 上で連続であるので, ᶅ
lim sup i→∞ f (x + εiui) = lim i→∞f (x + εiui) = f(x), lim sup i→∞ f (x + (εi+ β) ui) = lim i→∞f (x + (εi+ β) ui) = f (x + β(y + θz)) . f(x; y)f (x + αy)− f(x)) α であるが,仮定により,x + αy ∈ (domf) iであるの で,任意の w ∈ Rnに対して,λ w∈ R+が存在して,x + αy + αλww∈ domf, f(x; y + λ ww) f (x + α(y + λww))− f(x)) α , であり,y ∈ [domf(x; · )]i.よって,文献[5]定理1により,f(x; · ) は y お いて連続,すなわち,ᶆ lim sup i→∞ f(x; y i) = lim i→∞f (x; y i) = f(x; y), であり,ᶄᶅᶆにより, ∀β ∈ 開区間 (0, α) : f(x; y) + θ lim sup i→∞ f(x i; z) f (x + β(y + θz))− f(x) β . 仮定により,f(x; y) > −∞ であるので, lim sup i→∞ f(x i; z) f(x; y + θz) − f(x; y)) θ . この関係は,十分に小さい任意の θ ∈ R+に対して成立するので, lim sup i→∞ f(x i; z) f(x; y; z) lim θ↓0 f(x; y + θz) − f(x; y)) θ . (2)の証明.f(x; · ) の代りに f(x; y; · ) を用いて,定理5と同様に証明す ることができる.y ∈ [domf(x; ·)]iであるので,文献[9]定理4 (3)により, ∀z ∈ Rn : f(x; y; z) = sup x∗∈∂f(x)y x∗, z ∈ R. 定理7 f : Rn→ R ∪ {∞} を閉真凸関数,S ⊂ (domf)iを非空有界閉集合 とする.このとき, 次の関係が成立する. (1) α sup x∗∈∂f(S) sup gz=1 x∗, z とおくと,α は有限である. (2) ∀x ∈ S∀z ∈ Rn : f(x; z) αz. (3) ∀x, y ∈ S : f(y) − f(x) α y − x . (4) ∂f(S) x∈S ∂f (x)は非空有界閉集合である. 証明 (1)の証明.文献[9]定理4 (3)により,各 x ∈ S に対して,∂f(x) は 非空有界閉集合, f(x; ·) = δ∗( · | ∂f(x)) sup x∗∈∂f(x) x ∗,· であることを考えると, α sup x∗∈∂f(S) sup z=1 x ∗, z = sup z=1 sup x∈S sup x∗∈∂f(x) x ∗, z = sup z=1 sup x∈S f(x; z).
仮定により,S は有界閉,本稿定理5系1により,f(x; z)は x ∈ S において 上方半連続であるので,各 z ∈ Rnに対して,g(z) sup x∈Sf(x; z)は有限で ある.g(z) は,凸関数の集り {f(x; ·) | x ∈ S} の点別上限であり,文献[5]定 理1により,有限な凸連続関数である.よって, α = sup z=1 sup x∈S f(x; z) = sup z=1 g(z) は有限である. (2)(3)の証明.z = 0 の場合は自明であるので,z = 0 としておく. ∀x ∈ S, z ∈
z∈ Rn z = 1 : f(x; z) sup z =1 sup x∈S f(x; z) = α =⇒ ∀x ∈ S, z ∈ Rn, z = 0 : fx; z z = 1 z f (x; z) α, ∴ f(x; z) α z . 一方, ∀x, y ∈ S, x = y : f (y)− f(x) =f (x + 1(y− x)) − f(x)1 inf θ>0 f (x + θ(y− x)) − f(x) θ = lim θ↓0 f (x + θ(y− x)) − f(x) θ = f(x, y − x) −f(x, x − y). よって,z x− y x − y , z = 1 に対して, f (x)− f(y) f(x; x − y) = x − y f x; x− y x − y = x − y f(x; z) x − y sup z=1 sup x∈S f(x; z) = α x − y . (4)の証明.(1)により,∂f(S) は非空有界集合であるので,∂f(S) が閉集 合であることを示す.(x∗ i)i∈N, x∗i ∈ ∂f(S) を x∗に収束する点列とし,さらに,x∗ i ∈ ∂f(xi)なる点列 (xi)i∈N, xi∈ S を選ぶ.S は有界閉集合であるか ら,必要ならば,適当に収束部分列を選ぶことができるので,(xi)i∈N, xi∈ S 自身を x ∈ S に収束する点列としておく.そうすると, (xi, x∗i)i∈N, xi∗∈ ∂f(xi), (xi, x∗i) → (x, x∗) (i → ∞), であるから,本稿定理4により,x∗∈ ∂f(x) ⊂ ∂f(S).よって,∂f(S) は閉集 合である. 定義3 周期的単調写像 写像12)ρ : Rn → Rnは,x∗ i ∈ ρ(xi)なる任意の組 (xi, x∗i)の任意の番号 m∈ N に対する有限列 (xi, x∗i)i∈{0,1,2,··· ,m}に対して, ∀m ∈ N : m
i=0 xi+1− xi, x∗i 0, ただし,m + 1 = 0, であるとき,周期的単調写像であるという.周期的単調写像 ρ は,そのグラフ Gρ, Gρ (x, x∗ ) ∈ Rn × Rnx∗∈ ρ(x) がいかなる他の周期的単調写像のグラフにも真に含まれることがないならば, 最大であるという. 注意4 真凸関数 f : Rn→ R ∪ {∞} の劣微分 ∂f : Rn→ Rn, ∂f (x) x∗∈ Rn∀z ∈ Rn: f(z) f(x) + x∗, z− x は周期的単調写像である. 証明 x∗ i ∈ ∂f(xi)なる任意の組 (xi, x∗i) ∈ Rn× Rnの任意の番号 m ∈ N に対する有限列 (xi, x∗i)i∈{0,1,2,··· ,m}に対して,劣微分 ∂f の定義により,∀i ∈ {0, 1, 2, · · · , m} : xi+1− xi, x∗i f(xi+1) − f(xi),
ただし,m + 1 = 0 であるから, m
i=0 xi+1− xi, x∗i m i=0 [f(xi+1) − f(xi)] = 0. 12) 一般に,多価写像.定理8 写像 ρ : Rn → Rnに対して,次の( i )(ii)は同値である. ( i ) ρが周期的単調写像である. (ii) ∃閉真凸関数 f : Rn→ R ∪ {∞}∀x ∈ Rn : ∂ρ(x) ⊂ ∂f(x). 証明 (ii)⇒( i ).x∗∈ ρ(x) ならば x∗∈ f(x) であり,注意4で示したよう に,∂f は周期的単調写像であるので,ρ は周期的単調写像である.( i )⇒(ii). 一般性を失うことなく, Gρ
(x, x∗ ) ∈ Rn × Rn x∗∈ ρ(x)= ∅ としてよい.(x0, x∗0) ∈ Gρとし,さらに,任意の (xi, x∗i) ∈ Gρの任意の番 号 m ∈ N に対する有限列 (xi, x∗i)i∈{0,1,2,··· ,m}に対して,f を ᶃ f (x) sup m∈N (xi, x∗i)i∈{0,1,2,··· ,m} x − xm, x∗m + m−1 i=0 xi+1− xi, x∗i , ただし,m + 1 = 0, によって定義する.ρ が周期的単調写像であることから,f(x0) = 0である.な ぜなら,m ∈ N を任意に固定し,有限列 (xi, x∗i)i∈{0,1,2,··· ,m}として, ∀i ∈ {0, 1, 2, · · · , m} : (xi, x∗i) = (x0, x∗0) を選べばよい.また,f は,アフィン関数の集りの上限であるから,文献[4] 定理8系により,閉真凸関数である.以下,任意所与の (x, x∗) ∈ G ρに対し て,(x, x∗) ∈ G ∂f を示す.そのためには, ᶄ ∀α ∈ R, α < f(x)∀z ∈ Rn : f(z) > α + z − x, x∗ を示せば十分である.さて,任意所与の α < f(x) に対して,f の定義 ᶃ によ り,ある有限列 (xi, x∗i)i∈{0,1,2,··· ,m}, (xi, x∗i) ∈ Gρが存在して, ᶅ x − xm, x∗m + m−1 i=0 xi+1− xi, x∗i > α, であり,また,f の定義 ᶃ により, 上記有限列 (xi, x∗i)i∈{0,1,2,··· ,m},任意の xm+1, x∗m+1 ∈ Gρ
および任意の z ∈ Rn対して, ᶆ f (z) z − xm+1, x∗m+1 + xm+1− xm, x∗m + m
−1 i=0 xi+1− xi, x∗i であるから,とくに xm+1= x, x∗m+1= x∗の場合を考えて,ᶅ ᶆ を用いると, f (z) z − x, x∗ + x − x m, x∗m + m−1 i=0 xi+1− xi, x∗i > α +z − x, x∗. すなわち, ᶄ が主張される. 定理9 f : Rn→ R ∪ {∞} を閉真凸関数とする.f(ただし,付加定数を除 く)の劣微分 ∂f : Rn→ Rnは最大の周期的単調写像である.関数 f は,付 加定数を除いて,劣微分により一意に定まる. 証明 注意4により,∂f は周期的単調写像であるので,∂f が最大ならば, 結論は自明である.そこで,以下,∂f が最大でないとしておく.本稿定理8 により, ᶃ ∃閉真凸関数 g : Rn → R ∪ {∞}∀x ∈ Rn : ∂f(x) ⊂ ∂g(x), であるが,このとき,f + 定数 = g が成立することを示せば十分である. 段階1 x∈ dom∂f ならば,ある x∗ ∈ Rnに対して x∗ ∈ ∂f(x) ⊂ ∂g(x) により,x ∈ dom∂g であり,x ∈ dom∂g ならば,ある x∗ ∈ Rnに対して x∗ ∈ ∂g(x) であり,g(x) ∈ R,すなわち,x ∈ domg を意味する.よって,ᶃと文 献[9]定理4により, (domf)I
⊂ dom∂f ⊂ dom∂g ⊂ domg,
であるので,文献[9]定理4と『同』定理2(1)により ∀x ∈ (domf)I ⊂ domg∀y ∈ Rn : f(x; y) = sup x∗∈∂f(x)x ∗, y sup x∗∈∂g(x)x ∗, y g(x; y),
∴ −g(x; −y) −f(x; −y) f(x; y) g(x; y).
よって,任意の x1, x2 ∈ (domf)I⊂ domg を固定して,凸関数 h, k : Rn→ R∪ {−∞, ∞} を
h(λ) f
(1 − λ)x1+ λx2, k(λ) g(1 − λ)x1+ λx2, によって定義すると, ∀λ ∈ [ 0, 1] : k −(λ) h−(λ) h+(λ) k+(λ), (1 − λ)x1+ λx2∈ (domf)I⊂ domg. よって, [ 0, 1] ⊂ (domh)i=λ(1 − λ)x 1+ λx2∈ (domf)I ⊂λ(1 − λ)x1+ λx2∈ domg= domk, であり,本稿定理2系2.1により, f (x2) − f(x1) = h(1) − h(0) = 1 0 h +(λ)dλ = 1 0 k +(λ)dλ = k(1) − k(0) = g(x2) − g(x1). よって, ᶃ ∀x ∈ (domf)I⊂ (domg)I∃α ∈ R : g(x) = f(x) + α. また,上と同様に,閉真凸関数 f, g に対して,任意の x1, x2 ∈ (domf)a ⊂ (domg)aを固定し,開区間 ( 0, 1) 上で凸関数 h, k を定義すると, ( 0, 1) ⊂ (domh)i⊂ (domk)i であり,さらに,文献[4]定理10により,
f (x1) = h(0) = lim λ↓0h(λ), f (x2) = h(1) = limλ↑1h(λ), g(x1) = f(0) = lim λ↓0k(λ), f (x2 ) = f(1) = lim λ↑1k(λ) であるので,上と同様に考えると, ᶄ ∀x ∈ (domf)a⊂ (domg)a∃α ∈ R : g(x) = f(x) + α. 他方,x ∈ (domf)aに対しては,f(x) = ∞ であるから,明らかに, ᶅ ∀x ∈ (domf)a∃α ∈ R : g(x) f(x) + α. ᶃᶄᶅをまとめると, ᶆ ∀x ∈ Rn∃α ∈ R : g(x) f(x) + α.段階2 共役関数 f∗, g∗: Rn→ R ∪ {∞} に対して, f∗(x∗) sup x∈Rn { x, x∗ − f(x)}, g∗(x∗) sup x∈Rn { x, x∗ − g(x)}. 文献[6]定理9,文献[9]定理5により, ∂f∗(x∗) ⊂ ∂g∗(x∗) であるから,ᶄᶅの導出と同様にして, ᶇ ∀x∗∈ (domf∗)a⊂ (domg∗)a∃α∗∈ R : g∗(x∗) = f∗(x∗) + α∗. ᶈ ∀x∗∈ (domf∗)a∃α∗∈ R : g∗(x∗) f∗(x∗) + α∗. つまり, ᶉ ∀x∗∈ Rn∃α∗∈ R : g∗(x∗) f∗(x∗) + α∗. ところで,任意の (x, x∗) ∈ Rn × Rn, x∗∈ ∂f(x) ⊂ ∂g(x) に対して,文献[9] 定理5により, f (x) + f∗(x∗) = x, x∗ = g(x) + g∗(x∗), x ∈ domf, x∗∈ domf∗, であるから,ᶄᶇにより,任意の (x, x∗) ∈ (domf)a× (domf∗)aに対して f (x) + f∗(x∗) = f(x) + α + f∗(x∗) + α∗. すなわち,α∗= −α.よって,任意の (x, x∗) ∈ Rn× Rnに対して g∗(x∗) f∗(x∗) + α∗, −g∗(x∗) −f∗(x∗) − α∗ =⇒ x, x∗ − g∗(x) x, x∗ − f∗(x) − α∗ =⇒ sup x∗∈Rn{ x, x ∗ − g∗(x)} sup x∗∈Rn{ x, x ∗ − f∗(x)} − α∗ =⇒ g∗∗(x) = g(x) f∗∗(x) − α∗= f(x) + α. すなわち, ᶊ ∀x ∈ Rn∃α ∈ R : g(x) f(x) + α. ᶆᶊにおいて,α ∈ R は同じ定数であり,結論を得る.
定義4 単調写像monotone multivalued mapping
∀ (x0, x∗0) , (x1, x∗1) ∈ Gρ, : x1− x0, x∗1− x∗0 0, ただし,Gρ
(x, x∗ ) ∈ Rn × Rnx∗∈ ρ(x), であるとき,単調写像であるという.周期的単調写像は,m = 1 に対して,単 調写像である. 注意5 n = 1のとき,単調写像 ρ のグラフ Gρ (x, x∗) ∈ R × Rx∗∈ ρ(x) は座標別順序に関して R2の全順序集合である.よって,本稿定理9と本稿定 理3により,n = 1 のとき,単調写像 の最大単調写像 ρ は完全非減少曲線 Γ に対応しており,単調写像と周期的単調写像は同一である.しかし,n > 1 の とき,周期的単調写像でない単調写像が存在する. 注意6 n > 1とする.Q を n 次正方行列,ρ : x ∈ Rn → Qx ∈ Rn, Gρ ( x, x∗ ) ∈ Rn × Rn x∗= Qxに対して, 次の( i )(ii)において,( i )ならば(ii)が成立し,(ii)かつ Q が対称 行列ならば( i )が成立する. ( i ) ρが周期的単調写像である.すなわち, ∀m ∈ N : m
i=0 (xi+1− xi)Qxi 0, ただし,m + 1 = 0. (ii) Qが半正定符号行列である.すなわち, ∀x ∈ Rn : xQx 0. 証明 ( i )⇒(ii).結論を否定して,ある x0∈ Rnに対して,x0Qx0< 0と すると,有限列 (yi, y∗i)i∈{0,1,2,··· ,m} (αx0, αQx0), (xi, Qxi)i∈{1,2,··· ,m}, に対して,十分に大きい α ∈ R+を選ぶことにより, m i=0 (yi+1− yi)Qyi= α(x1− αx0)Qx0+ m i=1 (xi+1− xi)Qxi = −α2x 0Qx0+ αx1Qx0+ m i=1 (xi+1− xi)Qxi> 0とできる.しかし,これは( i )に矛盾する. (ii)かつ Q が対称 ⇒( i ).任意の m ∈ N に対して, m
i=0 (xi+1− xi)Qxi = m i=0 xi+1Qxi− 1 2 xiQxi+ xi+1Qxi+1 = m i=0 xi+1Qxi− 1 2 xi− xi+1+ xi+1 Qxi +xi+1− xi+ xi Qxi+1 = m i=0 xi+1Qxi− 1 2 xi− xi+1 Qxi+ xi+1Qxi −xi− xi+1 Qxi+1+ xiQxi+1 = −12 m i=0 xi− xi+1 Qxi− xi+1 0. 注意7 注意5で示したように,n > 1 のとき,Q が n 次正定符号対称行列 ならば,ρ : x ∈ Rn→ Qx ∈ Rnは周期単調写像である.一方, ∀x0, x1∈ Rn : (x1− x0)Q(x1− x0) = (x1− x0)tQ (x1− x0) = (x1− x0) 1 2(Q +tQ) (x1− x0) であるので,対称行列 (Q +tQ)が半正定符号行列ならば,ρ は単調多価写像 である. 以上 参考文献 [1] 福尾洋一「凸集合」『経済学論究 (関西学院大学)』34(1)(1980), pp. 29-52.[2] ────「凸拡張関数」『同上』35(4)(1982), pp. 53-73. [3] ────「凸拡張関数の生成と凸集合の部分加法」『同上』36(2) (1982), pp. 29-46. [4] ────「閉凸拡張関数」『同上』38(3)(1984), pp. 113-136. [5] ────「凸拡張関数の連続性」『阪南論集 (阪南大学)』21(3) (1986), pp. 25-38. [6] ────「凸拡張関数とその共役関数」『経済学論究 (関西学院大学)』41(3)(1987), pp. 1-30. [7] ────「凸集合の支持関数」『同上』42(4)(1989), pp. 39-60. [8] ────「多面凸集合と多面凸関数」『同上』52(3) (1998), pp. 115-142. [9] ────「凸関数の片側方向導関数と劣勾配」『同上』56(2)(2002), pp. 73-103. [10] 福島雅夫『非線形最適化の基礎』朝倉書店,2001 年. [11] 今野 浩・山下 浩『非線形計画法』日科技連,1978 年.
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