第ユ0魯第2号(⊥959) 121
クラムヨ毛ギ菌核病菌のフェノール系
物質生成について
内 藤 中 人,谷
利The production of phenoliccompounds by▲沸∫lertJlinia scleroliりγum
Nakato NAITO and Toshikazu TANI
(Laboratory of Phytopathology)
(Received Novemberll,1958)
本学作物学研究室で栽枯のクラムヨモギ(A′fβ∽gSfαゐ〟′㌢α椚β〝ざよゞQAZILBASH)に昭和29年山種の菌核病が発生 した1.ミブヨモギ(A㌢・Jβ沼去S盲α∽αγ去わ抑旭Ⅰ∴)にはすでにわが国でもScJ♂㌢’の娩扇α5Cね川南の■〝掴DBY.(S.J壷∂βrfgα佗α Fcxl.)薗による菌核病の発生をみて−いるが(6),クラムヨモギについてはまだ報告がないようである..分離薗に.よ る接種試験ならびに歯の形態からして,病原菌は5cわけの甘椚厄・SCJ♂γ0如㌢α∽(LIB…)DBY..(クラムヨモギ蘭核病)と 同定したのであるが,その際,本蘭培養中における培地pHのいちじるしい低下が注目せられた・ナタネから分離し た本薗軋つ小てほ,薗に.よる港酸の蓄凝がpH低下の主因であると北原ら($4)により指摘されているが,筆者らの菌 でも同様の結論をえた..また篠酸以外に,5種の強酸性および2種の弱酸性フ.ェノ−・ル系物質を検出したので,同定 にほいたってないが実験経過凌儲度しておきたい 起草償.あたり,種種御教示をいただいた本学部作物学研究宴野田愛三教授,有機化学研究宴松本志郎助教授,農産 製造学研究室楢崎丁市講師,また実験の一部を授助された元専攻学生古川勝正眉濫・深謝の志を表する・なお本報告の 大要ほ昭和55年度lヨ本植物病理学会大会で講演した 実験方法および結果 1い 菌の培養と酸性代謝産物の分離 供試薗ほ,クラムヨモギ被害茎の薗核から昭和29年る月分離した5(んγ仇行跡拍E封Jβ㌢0抽γ〝掴DBY小である・稀薄醤 油またはRICHARDS寒天培地に増養した蘭叢先端庖接種源とし,200ml三角フラスコK・RICHARDSまたはCzAPEK液 体培地を50mげつ分注して250C,10印乱培養後,地紋を篠酸の走蛍ならびにフ‡ノー・ル系物質の分離抽出に供した・ (a)膵酸の硝認および定意 培養濾液にCac12を加え,濾過してから沈澱物を硫酸に・と.かし,引時間のエ・−テル 抽出によつてえ.た粗結晶を水から田結し,融点101OCの物質をえた.本紙品休ほNa2CO8で発泡,FeC18で緑色を し,Ca塩にすると篠敢特有の袋形結晶と,なるので,湛酸と同定した.つぎに・濾液中の篠酸合名遠ほ,Ca塩としで沈澱 させてから過マンカン酸カ.り哺定法に・よって求めたが,その結果ほ第1衷のとおりである・ (b) フェノール系物質の粗分離 罪 第1表 培養濾液分別プラクレヨンの収昆 1図にしたがって分離した.、エ−テル可 溶部ほ汐アゾ化ベンチジン反応およびジ アブ化パラニトロアニリン反応が陽性 で,FeCl3に.より暗緑色を呈し,アンモ ニア性硝酸銀を鵠変する..またNa2CO8 で発泡し,濾紙上に・スポットとすれば, BPBで黄色,MRで赤色を呈する。.した がって,0−ジフェノーールを含む強酸性ま たは弱酸性フェノ・−−ル系物質の存在が推 定されたので,さらに.飽和NaHCO3可 溶部を抽出し,残部より1規定NaOH 接 種 源 培 地 培 地 稀薄蘭油 稀薄閲抽 RICHARDS RICHARDS CzAPEK CzAPEK培 養 前 pH 培 養 後 pH 借酸※(mg/J) NaHCO3可溶部(〝) NaOIi可溶部(〝) 5.1 る.5 40 5.8 550,0 2.7 55 1.2 5…0 ※結晶水を含む 可溶部を抽出した.各プラクションの牧迫ほ第1表のと.おりである
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学農学部学術報告 122 滞1図 酸性物賢の分離過程 培養波液 ーH2SO4酸性(pH2.0) −・エL−テル エ−テル 可溶部 ーエーテル抽出 引時間 ー・飽和NaHCO8 「 ̄ エ−テル 可溶部 篠 酸 M..P.10lOC −H2SO4酸性(pH2.0) −エ−テル ー.Ⅳ−NaOI王 =■ コニー・テリレ 可溶部 エーテル 可溶部 水溶部 −H2SO主観性(pH2.0) −.エ・−−テル エ−テル 可溶部 (褐色油状体) (褐色油状体) 界2表 フェノール系物質含有プラクションのぺ−パークロマトグラフィー 「A B C D E F G ブタノ−ル:酪酸:水(4:1:5)(下層) 5Ⅳ−・アンモニア飽和ブタノ−・ル(上層) 10 % 酪 酸 水 西片酸エチル:2〟−アンモニア(上層) 0.47 0.る7 0.72 0.84 0.84 0..25 0パ28 0.05 0..15 0.47 0.る9 0.る1 0る1 0い7る 0/7る 0.92 0.85 0.89 0..89 0…占7
呂儒※∼呂:呂昌※∼呂儒※∼呂濡※0.9叩)
∼ 0.25 01.54 0…る5※※ 0.24※※ 0.る9 ∴、−・:‥:・0.57※
登 ※ ※ 朗 恕 57 0 ∩︺ 0 ゾ 化 ベ ン チ デ ン 〝 + Na2CO写 汐アゾ化パラニトロアニリン1一酪 O R O f 0 0 Y−O fB(?) R V V 0 0 0 B BI Y ′l V R ∼ R + ダ 1 %・エタ ノ・−・ル 性 FeC18 ア ン モ ニ ア 性 硝 酸 銀 1 % 過 マ ン ガ ン 酸 カ リ 剤f faint, Yyellow, 0 0range, ※ tailing 光※ 判定困難
R red, VViolet, B blue, Blblack
第10巻第2号(1959) 123 2.フェノール系物質のペーパークロマトグラフイ− ′40×2cm2の東洋濾紙No50の下端から5cmのところを原点 と.し,エーテル可溶の強酸性および弱酸性フラクレヨンを山次元上昇法によつて展開した小 諸種の展開溶媒と顕色剤 を組みあわせてこおこなったのであるが,その結果は第2表のと.おりである..すなわち,Ri佃と発色から7種の酸性物 蟹を検出したが,各スポットの定性反応からして∴ FおよびGは0−i>フ.ェノールであり,C,E,F,およびGほ 鋭に不飽和こ垂結合をもつ物質と思われる.なれ前記両プラクレヨ●ンの0、5mgずつを原点につけて展開し,発色し た色調とスポット面積の大小からこれらフェノ−ル系物質の鼠’を比較した結果によると(第5衣),A,β,C,D,お よびEの5種ほ強酸性,FおよびGは弱酸性物質と.いえよう つぎ紅,40×40cm2の濾紙の下端から5cmのところにノ試料をつけ,5規定アンモニア飽和ブタノ−ル上層液を溶媒と して上昇法により展開し,各R吏他に相当する部分を切 結晶性物質をえた.これらのうちB,C,D,およぴEにほクマリン性の香気をみとめた. 第5衷 各種フェノ→ル系物貿の生成程度 フラグVヨン 原培地 E A B C D E F G
強酸性(
。S弱酸性(
。S + 廿・ 」十 + +・′−′± 十 士 ± 羽 土 ± 一 」+ 士 ± †廿 士 ± ± ∼ ∼ 帖 ± + + る..酸性フラクションの抗菌性 ぺ−′く−ディスク法を応用し,前記強酸性および弱酸性プラクシ′ヨン(欝1図参照)の本蔚,西瓜堂割病菌(Fusarium oxys♪orum f.niveum(SMITH)SNYDER et‡IANSEN),およびBacilluS Subiilis CoHNに対する抗菌
性をしらぺた小机者の2菌においてほ,0..9,0.5,およぴ0−.1mgずつ各フラクションを吸着させた1×1cm2の泌紙 片を,あらかしめ稀薄猪油寒天培地紅発育させた供試曲菌叢の外線から5mmのところにおき,250C,24時間培養後 紅抑制の程度を調査した,後者の菌では.その殺薗水懸濁液凌培地表面に流しとみ,余分の液を除去してから,試料 を吸着させた漉紙片をおき,おなじく250C,24時間後紅抑制帯の出現を観察した.その結果によると.,白歯は0.5 mg,β..sぴぁどよJ盲sは0.9mgの強畦性および牒引竣性物貿により,西瓜受剖病菌は05mgの強酸性物粟,0…1mgの弱酸 性物質乾より抑制された. 考 察 北原ら(S4)はナタネから分離した5〟〝の壷巌=CJβγOfわγ捉∽の酸性代謝産物として,篠酸,リンゴ酸,コハク酸,お よび酢酸をあげている.なかでも篠酸の生成がいちじるしく,培蕃泌液中1,195.4mg/Jの収昆をみている,.筆者ら 抄供試蘭の最大生成昆は錨Om乱/Jで(第1衷),北原らの蔵の約抜であった小CzAPEK培地に10日間培養した培地 pHが5小5と北原らの2..るに比べてやや上昇しているのほ,上記港酸生成昆の相違に主と.してもとづくものと考え.る. また篠酸生成昆の差異藩,分離菌の生態的差異によるものであろう.それはともかくと.しても培地pHが55に低下し たのほ,牧≦jニモだけから考えても,主として借酸の#妄潰に.よると.いえよう,フェノール系物腎を含むエーテル易溶酸性 物賀も培地pHが低いと針生成昆ガ多いようである(第1衣卜 しかし昆的には篠酸の約}iooにすぎないので,酸性 物貯である以上培地pH低下の一周でないと断ずることほできないかもしれないが,あえて欄連づけるにもおよぶま い.. 強敵性および弔酸灘灘抽出物ほ臼歯ならびに馳菌に・抗菌性を示すので,本歯は戎種の抗主計性物蟄を・生成するものと いえようが,抽出物の収撮が微立とのため主摘紺こはいたらなかったしかしフェノーール系物野にほ抗菌性を有するもの も知られているから(128〉,木抗掛栂ミこれら粗物暫中に′含有される別記フユ_ノ−ル系物質に二‡ニとして基因する可能 性も先分考えられる・またこれらのうら,C,E,F,およびGは浩晶.で明らかに過マンガン酸カリを脱色し,且 つ,B,C,D,およびEの展開スポット抽出物はクマリン系特有の香気を有するのみでなく,クマリン誘導体のぺ− パ−クロマトグラフイ−・に関するSwAエNぐ7)の報告とも一致する諸点がみいだされるので,これらはクマリン系物質
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
ユ24 香川大学農学部学術報告 と.推定されるクマリソの不飽和ラクトンは,インドール鮎酸の作用を間接に阻害することが知られているので(6), 微嵐のこの種本歯代謝産物が寄主代謝に介入して発病に関与する可能性も想像され,興味ある代謝産物の一種といえ よう .摘 要 1.クラムヨモギから分離した5(k叩〟戒α・SCJβγ0如㌢α沼DBY.の培養中,培地pHがいちじるしく低下したので, 培地中に生成される酸性物質について実験した 2−培地pHの低下ほ主として薗による篠酸生成に.もとづく 5.藤酸以外の酸性代謝産物として,5種の強酸性およぴ2種の弱酸性フ.エノ−ル系物督を検出したが,その2種ほ 〃・ジフェノ−ルであり,4種ほクマリン系物質と.推定される 4.これら強酸性および弱酸性フーエノール系物質を抽出した原プラクジョンほ自臥西瓜蔓割痴凱思跡肋ほ㍑はJよ・S に対しかなり強い抗菌性を示す巾 (後記)本論文の印刷中,栃内吾彦・杉本利哉の両氏ほ(北大遵邦文紀要,5(1),15ロー155,1958)ミブヨモギ菌 核病菌を5cJ♂γ〃f∠戒厄壷乃才βγ∽βd壷αRAMSEYの1系統とんた.ここ.に附記しておく. 引 用 文 献 1‖石井義男:日農化誌,27,777−780(1955) るい佐々木喬(監修):綜合作物学工芸作物筒(嗜好料 2.糸井節美:日植病報,20,58(講漬要旨)(1955) の部∴薬用の部),5占ムー5占7,東京,地球出版(1955) 5、.北原増雄,竹内良光:岐早大学農学部研究報告,1, 7,SwAIN,T・:β如ムβ∽ル./け,5る,200−208(1955) 8ふ−89(1951) 8谷 利一:香川大学農学部学術報告,8,1る8・−171 4。→,㌧:同上,2,7牛−74(1955ト (1957) 5.奥買一男:植物生理化学,529,東京,朝倉(195占)・ R畠 s u mる
The culture of Scleroiinia scleroiioYum(LIB”)DBY.,the pathogenic fungus of Artemisia ku”amenSis QAZILBASI王,reSultedinamar女eddecreaseof p‡Ivalue ofllquid media”The principalcause depends
upontheaccumulationofoxalicacidproducedbythepathogenlAs another acidproducts,five strongly
andtwoweaklyacid phenoIsweredetectedinethersolublefractionofculturefiltIateS”The twoofthem wereo・diphenoIsand the fourofthemwerepresumedtobecoumaric derivatives一Theoziginal董raction
containingeither strongly or weakly acid phenoIs above mentioned showed aninhibitoIy effect on the
growthof Sclerotinia sclerotioYum,FusaY.ium oxysporumf”niveum(SMITH)SNYDER et HANSEN,and β肋元〃払S射通励泌.s CoHN.