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顧客のサービス・デリバリー・プロセスへの参加と品質評価--医療サービスにおける外来及び入院患者の評価を中心として---香川大学学術情報リポジトリ

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第68巻 第1号 1995年6月 119-172

顧客のサービス・デリバリー・

プロセスへの参加と品質評価

一一医療サービスにおける外来及び入院患者の評価を中心として一一

藤 村 和 宏

1 . は じ め に サービスの生産・提供過程はサービス・デリパリー・プロセスと呼ばれてい るが,このプロセスには顧客が関与するために,サービス品質やデリパリー効 率に対する考え方やそれらの向上のための方策は製造企業における有体財に対 するものとは異なったものとなっている。サービス・デリパリー・プロセスの 効率及びサービス品質はサービス提供組織の内部的要因ばかりでなく,顧客の 参加の仕方や程度にも影響される。さらに,顧客のサービス品質に対する評価 及び満足形成は,顧客自身が参加するデリパリー・プロセスとそれによってデ リパリーされたもの(成果あるいは産出物)に基づいて行われる。そのためサー ビス提供組織においては,サービス・デリパリー・プロセスの効率や,顧客か ら見たサービス品質あるいは満足形成などに影響を及ぽす要因を明らかにする とともに,デリパリー効率やサービス品質が顧客及びサービス提供組織の両者 にとって最適になるように管理することは重要なマーケティング課題である。 本稿では,サービス・デリパリー・プロセスとそこにおいて重要な位置を占 めるサービス・エンカウンターの特徴や構造を明らかにすることで,顧客とサー ビス提供組織の両者にとって最適なサービス品質とデリパリー効率を達成する ために必要とされる方策についての考察を行いたい。尚,サービス品質はデリ ノてリー・プロセスにかかわる品質とデリパリーされたもの(成果)にかかわる

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-120 香川大学経済論叢 120 品質とから構成されているが,ここでは前者の品質を中心に考察を行いたい。 さらに,顧客から見たサービス品質においてデリパリー・プロセスにかかわる 品質が大きな割合を占めていると考えられる医療サービスを取り上げること で,デリパリー・プロセスにかかわる品質の評価次元を実証的に分析するとと もに,その品質評価次元が顧客満足に及ぼす影響についても明らかにしたい。 II.サービス・デリパリー・プロセス 1 ρ サービス・デリパリー・プロセスと顧客の参加 サービスが生産され顧客に提供される過程はサービス・デリノfリー・プロセ スと呼ばれているが,このプロセスは顧客が自らサービス生産に参加し,生産 されたものを消費する過程でもある。一般的に,有体財は生産,販売,消費と いう順序で進行するが,サービスは販売されてから,生産と消費とが同時に行 われる。サービスの生産と消費が同時に行なわれるということは,顧客もサー ビス・デリパリー・プロセスに参加し,共同生産者としての機能を果たすとい うことである。 共同生産者として顧客が果たす機能やその参加の仕方は多様であるし,サー ビスの種類によっても異なっているであろう。そこで,ここでは顧客の参加を 「機能」と「様態」の両面から検討してみたい(図II-1参照)。 サービスの共同生産者としての顧客の果たす機能としては「仕様決定Jf生産」 「品質管理」があるが,顧客はこれらの機能の一部ないしはすべてを,サービ ス提供組織に代わってあるいはサービス提供産品織と共同で遂行する。顧客の果 たす機能及びその遂行形態は,サービスの内容(種類)やその提供組織のデザ インしたオペレーションによって異なったものとなる。 「イ士様決定」について見ると,有体財の仕様は製造業者が集合的な標的消費者 層を想定することで決定されることが多いが,サービスの仕様は顧客によって, あるいは顧客とサービス提供組織の相互作用過程で決定される。例えば,理容 (1) サービス生産に必要とされる材料,機器,労働などの確保は事前準備として可能である が,これらは単に生産能力を示しているにすぎず,サービスそのものではない(Lovelock, 1984)

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屈では望む髪形と長さを指定するというかたちで,あるいはハンバーガー・ ショップでは提示されたメニューの中から選択するというかたちで,顧客は仕 様決定に参加している。また医療サービスの場合には,患者は治療内容を決定 することはできないが,医師の質問に答えながら診断・治療に必要な情報を提 示するというかたちで仕様決定に参加している。 顧客が果たす第二の機能としての「生産」には,サービスそのものの生産と サービス・デリパリ一環境の生産とがある。前者の生産形態としては,サービ ス提供組織の従業員との共同生産,従業員に代わっての生産などがある。銀行 では,顧客はATMを操作することで現金の引き出しゃ入金作業を行なった れあるいは手続きに必要な書類の書き込みを行なったりしているが,これら は銀行員に代わってサービスの一部を生産しているということである。また顧 客は,サービス・デリパリー施設を利用するだけでもそのサービス・デリパリ一 環境の形成に貢献しているの、で,生産に参加していると言える。例えば,高級 レストランの顧客達は彼らの服装や行動を通じてそのレストランの、高級グと いうイメージを作ることに貢献しているし,他の顧客のサービス評価にも影響 を及ぼしている。 、機、能、、、、様¥態 行動的 知 的 感情的 仕 様 決 定 生 産 品質管理 プロモーション エートスの保持 発 展 図II-l 顧客参加の機能と様態 出所:Normann, R (1991), p 81 一部加筆。

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122- 香川大学経済論議 122 第三の機能として品質管理があるが,これは顧客がサービス・デリパリーの 現場に立ち会うことでサービス提供組織の従業員の態度や行動をコントローノレ したり,フィードパック情報を通じてサービス・デリパリ一環境を改善すると いうことである。従業員は顧客から見られていると意識することで,彼の行動 を好ましいものにしようと努力するであろう。あるいは顧客は従業員やサービ ス・デリパリ一環境に関する苦情や意見をサービス提供組織に出すことで,そ れらの改善を促しサービス品質の改善に貢献している。 サービス・デリパリーにかかわる以上のような機能のほかに,顧客は「プロ モーションJ,-サービス提供組織におけるエートス (ethos)の保持J,-サービス提 供組織の発展」などの機能の一部も遂行している(Normann,1991)。 次に,顧客の参加を様態の側面からみると,-行動的参加J,-知的参加J,-感情 的参加」に区分することができる。前述の銀行サービスの例のように,顧客が サービス提供組織の従業員の職務の一部あるいはすべてを遂行している場合に は,顧客は行動的にサービス・デリパリーに参加している。また医療サービス の場合のように,情報あるいは知識の提供というかたちで参加している場合に は,顧客は知的にサービス・デリパリーに参加している。さらに医療サービス においては,患者の治癒の程度とその早さは医療技術ばかりでなく,患者側の 、早く治癒したいグとか、治癒するんだグというような感情的あるいは精神的 なものにも依存していることから,患者は感情的あるいは精神的にも参加して いると蓄える。演劇鑑賞やスポーツ観戦などにおいては,観客はそれらを観る ことで沸き上がってくる感情を態度や行動に表わし,それらを盛り上げる役割 を果たしていることから,これらの場合も顧客は感情的に参加していると言え るであろう。このような感情面の参加も,他の様態に劣らず重要である (Eiglier and Langeard

1975)

以上のように顧客もサービス・デリパリー・プロセスに参加するが,その参 加の仕方や程度はサービス品質やデリパリー効率に対して決定的に重大な影響 を及ぽすために,サービス・デリパリーにかかわる他の要素と同様に,顧客も 慎重に管理されなければならない。例えば,提供されたサービスが顧客のニー

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123 ズを満たしたものとなるかどうかは,顧客が彼自身のニーズに合うように仕様 を決定できるかどうか,仕様決定に重要な役割を果たす情報を適切にサービス 提供組織に伝達できるかどうか,サービス提供組織の従業員とうまく共同生産 をできるかどうか,などに大きく依存しているので,それらを顧客に適切に行 なわせることが必要とされる。 また,顧客の参加の程度を高め,サービス・デリパリーにかかわる機能の多 くをサービス提供組織の従業員に代わって果たさせるほど,サービス提供組織 の労働生産性は高まるであろう。従って,顧客の参加が価格の低下やサービス 品質の向上につながることを期待させたり,参加によって面白く刺激的な経験 が得られると期待させることで,顧客を積極的にサービス・デリパリー・プロ セスに参加させるようにすることも重要であろう。最近,厨房で料理人がサラ ダを盛り付け,ウェイトレスがそれを配膳するというような従来の方式に代え て,顧客に自分でサラダを皿に盛りつけさせるというようなセルフサービスの サラダ・パーを導入するレストランが増加しているが,顧客がそのようなセル フ・サービスを受け入れているのは,好きなときに好きなサラダを好きな量だ けとることができるという便益があるからである。 しかしながら,顧客の参加の程度が高まることでサービス提供組織のサービ ス品質やサービス・デリパリー・プロセスに対するコントロールの程度は低下 し,サービス品質の不均一化,待ち時間の増大,サービス・デリパリーの失敗, デリパリー効率の低下などの問題が発生する危険性もある。さらに,顧客の参 加の程度を高めてもそれが従業員の機能の代行につながらず,従業員と顧客と の接触を増大させたり,両者聞にコンフリクトを生み出すだけであるならば, そのこともサービス品質とデリパリー効率を低下させることになるであろう。 2 サービス・デリパリー・システム サービス・デリパリー・システムとは,サービス・デリパリーを顧客及びサー ビス提供組織の両観点、から見て効果的且つ効率的に行うための諸要素の体系で ある。このシステムを顧客とサービス提供組織との相互作用の観点、から見ると,

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-124ー 香川大学経済論叢 124 フロントルームとパックルームとに大別することができる(図

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I-2

参照)。フ ロントルームとは,日常的に顧客と直接的に相互作用を行なう組織部分であり, 顧客へのサービス・デリパリーを受け持つている。一方,パックルームとは, 顧客と直接的に相互作用を行なわないが,アロントルームでのサービス・デリ ノてリーが効果的

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つ効率的に行なわれるように後方から支援する組織部分であ る。 サービス・デリパリーはパックルームとフロントルームにおいて順次あるい は同時平千子的に遂行される諸活動を通じて行なわれるために,フロントルーム 及びパックルームにおける諸活動やそれらの聞の関係は,サービス品質やデリ ノfリー効率に対して決定的に重大な。影響を及ぽす。尚,パックルームは顧客か ら分離されているので,そこでのオペレーシヨンのデザ、インと効率追求には製 造企業におけるのと同様な方法を用いることができるであろうから,以下では 図II-2:サービス・デリパリー・システム (2 ) バックルームの従業員は日常的には顧客と直接的に相互作用を行わないが,サービス・ デリパリー・プロセスで何らかのかたちで顧客と接触する可能性はある。例えば,空港で 迷った搭乗客がたまたまそこを通り掛かったパイロットに自分の乗る飛行機について尋 ねることがあるであろう。その場合に,そのパイロットがその顧客に適切に対応しなけれ ば,いくらフロントルームの従業員が最高のサービスを提供したとしても,その顧客は不 満を感じるであろう。また,問題の発生時や緊急時には例外的に顧客と相互作用を行う場 合がある。それは例えば,レストランでのウエイトレスの失敗に対してマネジヤ}が対応 したり,料理に対する苦情に通常なら厨房にいて顧客とは接することのない料理長が対 応したりするような場合である。

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フロントルームについて検討したい。 フロントルームは物理的環境,従業員,顧客から構成されおり,それらの聞 で相互作用が行なわれる過程でサービス・デリパリーが行われ,同時に消費さ れる(図II-3参照)。また,これらの構成要素はサービスという商品の重要な 構成要素にもなっている。 (a) 物理的環境 物理的環境には,サービス・デリパリー施設の外装と内装,機器,備品,道 具,騒音,香り,室温,音楽など,サービス・デリパリ一環境を形成するすべ てのものが含まれる (Boomsand Bitner, 1981)。銀行の場合には,銀行自体の 建物の外観と内装, ATM,申込用紙記入用のテーブルや用紙・筆記具類,窓口, 待合所の椅子や雑誌類,絵画や樹木などの装飾品,パンフレツト類,行内音楽, 室温など,顧客が五感で知覚することのできるもの全てが含まれる。 従業員と顧客はそれぞれ別々に,あるいは相互作用をしながらフロントルー ムにある機器,備品,道具などを用いてサービス・デリパリーを行なうし,同 時に顧客はそれらを用いながらサービス消費を行なうので,それらの機能やデ ザ、インはサービス品質,デリパリー効率,従業員と顧客の相互作用の行ない方 やその効率,顧客の消費経験などに重大な影響を及ぽすであろう。また,物理 的環境はサービス・デリパリー・プロセスに対する顧客の知覚に重大な影響を 及ぽすだけでなく,購買前に顧客がサービス品質を推測するための重要な手掛 かりともなる。 (b) 従 業 員 フロントルームにおける従業員には,顧客にサービスをデリパリーすること に直接かかわっており,その行動,態度,外見などを通じて顧客の行動,認知, 感情に直接的な影響を及ぽすような従業員すべてが含まれる。フロントルーム の従業員の行動,態度,外見などは,顧客と従業員との相互作用関係や顧客の サービス・デリパリー・プロセスへの参加の仕方に影響を及し,そのことはサー ビス品質やデリパリー効率にも影響を与える。銀行では,窓口係だけでなく,

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126 香川大学経済論叢 126 ロビーや待合所から見えるすべての行員がこれに含まれ,彼らは顧客のサービ ス経験やサービス・デリパリー・プロセスへの参加の仕方に重大な影響を及ぽ している。例えば,申込書類の記入方法が分からない顧客に対して窓口係が横 柄に不適切な説明をするということは,その顧客の感情を害するばかりでなく, 記入を戸惑わせたり,記入ミスを発生させたりしてサービス・デリパリーの効 率を低下させるであろう。また,ある窓口にできた長い待ち行列に並んでいる 顧客が,その窓口係は一所懸命に作業をしているが隣の窓口係や他の行員は雑

【フロントルーム}

図II-3:フロントルームにおけるサービス・デリパリー

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談をしているというような場景を見た場合,彼らの対応に苛立ちを感じ,その 経験を非常に不満に感じるであろう。 このように顧客から見える従業員はすべて顧客に何らかの影響を与えるが, 逆にまた,従業員の行動,認知,感情も顧客の行動,態度,外見などによって 影響を受けることから,そこには相互作用関係が存在している。先の銀行の例 で,もし記入方法の分からない顧客がそれを窓口係りに横柄に尋ねたとすれば, 窓口係りは嫌な感じを抱き,態度や言葉がとげとげしくて不親切なものとなる かもしれない。 また,一人の顧客に対して一人の従業員だけが接するとは限らず,同時に複 数の従業員が接する場合がある。また,従業員が顧客にサービス・デリパリー をする場合,その従業員はサービス提供組織における他の従業員との相互作用 関係のなかで行動している。組織が複数の機能別組織から構成されている場合 には,顧客と接する従業員は同じ機能別組織内の従業員だけでなく,異なる機 能別組織の従業員との関係の中でも行動することになる。そのため,サービス 品質とデリパリー効率は顧客と従業員聞の相互作用関係だけでなく,機能別組 織内及び聞の従業員同士の相互作用関係やコミュニケーションの程度にも依存 することになる。 (c) 顧 客 前述のように顧客も何らかのかたちでサービス・デリパリー・プロセスに参 加することから,サービス品質やデリパリー効率の決定において重要な役割を 果たしている。 複数の顧客が同時にフロントルームに存在するようなサービスにおいては, ある顧客にとって他の顧客はそのフロントルーム全体の雰囲気を構成する重要 な要素であり,サービス経験に重大な影響を及ぽす。例えば,高級レストラン 内に泥酔し大声で騒ぐ客がいるならば,庖内の設備や従業員の態度,出された 料理などが、高級'という看板に相応しいものであったとしても,顧客はそこ での経験に満足しないであろう。このようにフロントルーム内の他の顧客はそ

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128- 香川大学経済論叢 128 こでの態度や行動,服装などを通じて顧客のサービス品質に対する知覚に影響 を及ぽすが,彼らの職業や地位,年齢,性別などのデモグラフィック特性も影 響を及ぼす可能性がある。例えば,高級レストランやゴルフ場などで憧れや尊 敬の対象となっている人達と一緒になれば,そこでのサービス経験は刺激的で より興奮したものとなるであろう。さらに,そのような人々のサービス提供組 織の利用はそこで提供されるサービスあるいは組織のイメージ形成に影響を与 えることから,フロントルームに同時に居合わせなくても,顧客のサービス経 験に好ましい影響を及ぼすことになる。顧客間にもこのような相互作用が存在 するために,サービス提供組織においては,サービス・デリパリー・プロセス の流れが阻害されたり,顧客間の相互作用が好ましくない循環を生みだしたり しないように,利用客を制限したり,フロントルーム内での彼らの行動や態度 などを管理することが必要とされる。 サービスは以上のような要素間の相互作用過程でデリパリーされるために, その品質とデリパリー効率は個々の要素の質とそれらの閣の相互作用関係に依 存している。尚,物理的環境についてはコントロールが比較的容易であるが, 従業員と顧客については統制が困難であり,不確実性を伴ってい

2

。このこと はサービス提供組織の品質コントローノレを低下させ,需給不一致とも相まって, サービス品質の標準化や均一化を困難にしている(藤村, 1991)。 また,フロントノレームを構成する 3要素は相互に結びつき合うことでサービ ス・デリパリ一環境を形成し,顧客のサービス評価に対して重大な影響を及ぽ している。 3要素は相互に結びつくことで一つの、現実。を構成することになる (3 ) フロントルームとパックルームに内在する不確笑性の程度を比較すると,前者の方が 大きいであろう。それは,フロントルームでは物理的環境,従業員,顧客の間で相互作用 が展開されるために,感情を持った構成要素が2つ存在するが,パックルームでは物理的 環境と従業員聞でしか相互作用が展開されないので,感情を持った構成要素はlつしか 存在しないからである(Tansik,1985)。但し,フロントルームあるいはパックルームにお ける活動が複数の従業員によって共同で行われている場合には,不確実性の程度は共同 する従業員数に依存しているので,どちらのルームの方が不確実性が高いとは一概には 言えないであろう。

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が, "~見実グが形成された段階で,それらはもはや分解できない全体となってし まう。顧客がサービスを評価する場合,個々の要素を別々に評価するのではな しそれらの要素が全体の中にどのように溶け込み,調和を保っているかを評 価するであろう。そのため,もしいずれかの要素が不適切なものであるならば, そこに形成される、現実かは全体として不快なものとなる。あるいはすべての 要素が最高の水準と品質のものであったとしても,それらの聞に調和や統一性 がなIく,全体としてうまく溶け合っていなければ,そこで構成される、現実' も全体として不快なものとなるであろう。例えば,

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古びあるいは寂びといった ものを感じさせるような和風旅館の和室にピカソの絵が掛けられていたり,食 事に金銀食器に盛られたフランス料理が出されたり,あるいは接客員がチャイ ニーズ・ドレスを身に付けていたとしたら,宿泊客はそこでの経験をどのよう に感じるであろうか。旅館の建物,庭園,絵画,食器,料理,従業員のマナー や服装のいずれも個々別々に評価すれば最高のものであったとしても,それら が一つになることで構成される、現実かはおそらく不快なものとなるであろう。 従って,サービス提供組織においては,物理的環境,従業員,顧客が全体とし て調和と統一性を保ちながら一つに溶け合うように,フロントノレームあるいは サービス・デリパリ一環境のデザインが行われなければならないであろう。 III.サービス・エンカウンターとそれに基づく組織分類

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リ サービス・エンカウンターの特徴 フロントルームにおける顧客と従業員との直接的な人的相互作用は,特に サービス・エンカウンターと呼ばれている

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のように,サービス・エンカウンターを顧客がサービス

と直接的に相互作用を行っている時間と捉え,消費者が相互作用を行うかもし れないサービス提供組織のすべての側面(従業員,サービス・デリパリー施設, 他の有形な要素など)を含めている研究者もいる。しかしながら,ここでのサー ビス・エンカウンターは,顧客と従業員の聞の人的相互作用のみを含むものと

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130 香川大学経済論叢 130 する。 サービス・エンカウンターを顧客と従業員の聞の人的相互作用と定義すると, これは顧客のサービス・デリパリー・プロセスへの参加とは区別されることに なる。顧客のサービス・デリパリー・プロセスへの参加は顧客がサービス提供 組織の果たすべき機能の一部あるいはすべてを行動的に遂行することや,サー ビス提供組織の機能遂行を知的あるいは感情的に支援することを意味している ので,必ずしも従業員との人的相互作用を伴うとは限らない。例えば,銀行て、 ATMを操作することで現金を引き出したり,サラダ・パーでト自分でトサラダを皿 に盛り付けたりするのは顧客のサービス・デリパリー・プロゼスへの参加であ るが,これらにおいては従業員との聞でサービス・エンカウンターは展開され ていない。従って,参加とサービス・エンカウンターは必ずしも同時に起こる とは限らない。 サービス・エンカウンターは人的相互作用行為の一つであるが,以下のよう な特徴によって他の人的相互行為と区別されている(Czepiel,Solomon, Sur -prenant and Gutman, 1985)。これらの特徴を十分に検討・理解することで, サービス提供組織が戦略を策定したり,サービス・デリノてリー・システムのオ ペレーションをデザ、インする際に注意すべき問題点が明らかになるであろう。 (a) 共通目標のある共同過程 社会的交換においては一般的に,参加者たちは取引による報酬を最大化し, コストを最小化しようとする。サービス・エンカウンターも社会的交換の一形 態であることから顧客及び従業員の双方においてこのことは目標とされるが, そこには共通目標も存在している。二者聞の相互作用行為はさまざまな理由に よって起こる可能性があるが,サービス・エンカウンターは共通目標達成のた めに行われ,その成果は顧客と従業員との共同行為に依存している。つまり, サービス・デリパリー・プロセスは、顧客のニーズ充足と満足向上汐という共 通目標達成のために,顧客と従業員が相互に行為を促進し合う共同過程である。 理想的には,目標は、顧客のニーズ充足と満足向上。のみであり,双方に異

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なる目標が存在しないことが望ましい。従業員は昇給や昇進という個人的目標 を持っているであろうが,それは共通目標の達成によって分配される成果とい うかたちで満たされるべきものである。顧客と従業員が共通目標に向かつて努 力することによってサービス・エンカウンターの効果と効率が高まり,目標が 達成された結果として,従業員はそれを昇給,昇進,自己実現などのかたちで 受けるべきである。 しかしながら,現実のサービス・エンカウンターでは,双方に異なる目標が 存在する場合が多い。また,共通目標が存在しない場合,特に従業員側に顧客 中心的な意識が存在しない場合には,サービス・エンカウンターの効率と効果 は望めないし,顧客はそのサービス消費に満足を感じないで、あろう。さらに, 両者に対立的な目標が存在する場合には,サービス・エンカウンターは何らか のかたちで双方にマイナスの結果をもたらすであろう。例えば,顧客は満足最 大化目標を持ち,従業員は利益最大化目標を持っているとすると,顧客は自分 のニーズが十分に満たされるように,時間をかけて従業員にできるだけ自分の ニーズを理解してもらおうとするのに対して,従業員は一定時間当りの対応顧 客数を増やそうとするかもしれない。その結果,顧客は従業員に機械的に扱わ れていると感じ,サービスに不満を感じるかもしれないが,従業員は目標を達 成したと感じるかもしれない。しかしながら従業員側のその目標達成は短期 的なものであり,長期的には,消費者の不満が口コミで流布することで利用顧 客数の減少と利益の低下を招くことになる。このように両者の聞に共通目標が 存在しない場合には,効率的および効果的なサービス・ヱンカウンターの展開 と好ましい成果は望めないであろう。 (b) 仕事の一部としてのサービス・デリパリーと相互作用及び情報交 換範囲の限定 従業員は仕事の一部として顧客と相互作用を行い,サービスを提供するので あって,利他的な理由からではない。慈善事業の参加者や他人との相互作用を 楽しむためだけに働いている従業員は利他的な理由からサービス・デリパリー

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132- 香川大学経済論叢 132 を行っているかもしれないが,経済的交換としてのサービス・デリパリーにお いては,従業員は個人的目標を達成する手段としてサービスをデリパリーして いる。そのため,相互作用の範囲はサービスの性質や内容によって限定される し,顧客と従業員の間で交換される情報もサービス・デリパリーに関連したも のが中心となる。 (c) 事前の面識を必要としない相互作用 従業員と顧客の間に面識がある必要はなく,従業員はサービスの購入者であ れば見知らぬ人であっても相互作用関係を持つことになる。このことはサービ ス・エンカウンターを特徴づけるが,相互作用による共通目標の達成を困難に している。共通目標達成のための共同行為が親しい人間間で行なわれる場合や, あるいは何らかのかたちで統制された集団内で行われる場合には,共同行為は 比較的スムーズに進行し,目標達成も比較的容易である。それは,そのような 人間間ではお互いに目標とそれを達成する手段に関する同意が成立している し,相互理解が形成されているからである。しかし,面識のない従業員と顧客 の場合には,相互理解関係が形成されていないので,従業員は何が相対してい る顧客の満足度を高めることになるのかを把握するのが困難である。従業員は 相互作用を展開する過程で,顧客の持つニーズや人的特性を探りながら,それ に柔軟に対応していかなければならない。但し,サービス消費の有名(あるい は記名)性を利用し,顧客の利用経験に関するデーター・ベースが構築されて いる場合には,顧客との相互理解関係の形成は比較的容易であろう(藤村, 1991)。 また,従業員と顧客はお互いに,あるいはどちらか一方が相手に対して好意 を感じない場合でも,共通目標達成のための相互作用行為を行わなければなら ない。お互いに相手の目標達成を回害し合う「抗争」や,一方が相手の目標達 成を促進し,他方が相手の目標達成を阻害するような「支配」のような相互作 用行為では,相手に対して好意を感じるかどうかは重要な問題ではない。むし ろ好意を感じない方がよいかもしれない。しかし,サービス・エンカウンター

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のような共同行為では,両者の間に親和性(他者に対して好ましい感情を持つ こと)が存在する方が相互作用はスムーズに進行するし,目標達成も容易であ る。このことから,サービス提供組織においては,ターゲット顧客層あるいは 利用顧客層が好意を感じやすい従業員を配置することで,顧客と従業員聞の親 和性を強化することも重要な課題であろう。尚,親和性を強化するものとして は, 2者間の人種,生活程度,身体的特徴,性格,能力,態度などにおける類似 性がある。但し,性格,能力,身体的特徴に関しては,ご者が共通して持つ特 徴が双方あるいはどちらか一方に嫌われている場合は,好意的関係は必ずしも 生じない(安田, 1986a)。 (d) 明確な役割期待の存在 サービス・エンカウンターのような相互作用行為には二重依存性があり (Par -sons and Shils, 1951),顧客のニーズ充足(目標達成)は彼自身の行為に依存 し,次いで、従業員の不確定な選択にも依存する。そして,同じことは従業員の 欲求充足(目標達成)にも当てはまる。つまり,顧客のニーズ充足は,彼がど のように行動するか,あるいはどの程度彼が持っているニーズを従業員に正確 に伝えることができるかなどに依存するとともに,その顧客の行動に対する従 業員の反応の仕方に依存するということである。あるいは,顧客のニーズ充足 は,従業員の顧客対応の仕方,顧客の持っているニーズや情報をどの程度理解 しようとするかに依存するとともに,その従業員の行動に対する顧客の反応の 仕方に依存している。このような二重依存性が存在するために,一般的な相互 作用行為においては,両者あるいは一方が欲求を充足しようとする場合,相手 の行動を予測するということが必要とされる。そして,そのような行動予測は, 人間の行動を規定している動機,態度,そのときの彼の状況を行動の意味解釈 を通じて推定することによって行われる。 しかしながら,社会的交換のー形態としてのサービス・エンカウンターにお いては,必ずしもそのように相手の行動を予測するということは必要とされな い。それは,人聞の行動を拘束し,社会的秩序を維持するようなルールや役割

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-134ー 香川大学経済論叢 134 期待(roleexpectation)が存在し,社会的行為が構造化されているからである。 尚,役割とは,一般的に,経験とコミュニケーションを通じて学習された行動 パターンのセットであり,ある社会的な相互作用において,目標達成の効果を 最大にするために個人によって遂行されるものである。そして,個人がある役 割を引き受けるときには,あらかじめ決められている行動セットに従って,同 じように行動することが期待されている。 サービス・デリパリー・プロセスという経済的交換過程では,顧客と従業員 聞に役割期待が存在するために,行動予測とそれに基づく共同有為の実行は比 較的容易になっている。従って,サ)ビス・エンカウンターは,顧客と従業員 がそれぞれに他者が期待する役割を演じる中で展開される経済的交換過程と言 (4 ) 役割概念については,いくつかの異なった見解がある。 Linton(1936)によると,社会 がうまく機能し存続するためには個人間の相互行為にあるパターンが存在しなければな らないが,そのパターンの中で個人が占める位置が、地位'であり,その地位と不可分に 結びつい亡いる行動規範が役割Jである。また, Sarbin (1954)によると,役割lは相互行為 場面において相互に他から期待されている行為パターンであり,ここでの期待はただ単 に予想されているということではなく,要望というくらいの拘束性を持つものである。 SarbinとLintonの役割概念の違いは,Sarbinは2個人の存在を前提し,彼らが相互行為 を継続する過程で彼らの独自の役割を創造すると考えているのに対して, Lintonは当事 者に先立って地位と役割が存在していることを前提し,当事者はあとから個々の地位と 役割を占めると考えている点にある。従って, Lintonの役割概念は,それを遂行する行為 者とは無関係に存在しうる非人格的なものであるのに対して, Sarbinのそれは個々の行 為者に密着したものである(安田, 1986 b)。 また,役割の類似概念としてスクリプトがあるが,前者は社会心理学,後者は心理学の 分野から出た理論である。 Abelson(1976)によると,スクリプトとは,参加者あるいは 観察者としての個人が期待する出来事の首尾一貫した順序(連続)である。スクリプト理 論と役割理論のパースペクティブは,表面的には非常に類似しているが,両者の聞には次 のような基本的相違がある(Bateson,1991)。 (1) スクリプト理論のパースペクティブはかなり広い範囲にものに関係している。例 えばサービス・デリパリー・プロセスの場合では,サービス・デリパリ一環境の影響 も含んでおり,個人間の相互作用(サービス・エンカウンター)というよりは,サー ビス経験に関係している。 (2) スクリプトは個人的・主観的であるが,役割はより客観的で,個人の知覚や認知と いうよりは,社会的地位あるいは肩書によって定義されている。スクリプトは各個人 ごとに存在し,個人の経験とパーソナリティーの関数である。 尚、役割j理論は,サービス・エンカウンターにおける参加者の知覚に直接的に関係して いないので,例えば2人の顧客(内向的な人と外向的な人)が同じ話好きの従業員と相互 作用を行ったとしても,彼らの相互作用に対する評価が異なっているかもしれないこと を説明できない。

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135 顧客のサービス・デリパリー・プロセスへの参加と品質評価 135-い換えることもできる。そして,サービスに対する顧客の満足度は r従業員に よって演じられた行為が役割期待と一致しているかどうか(役割一致)Jの関数 であると考えることができる

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。ま た,相互作用は双方向なので,役割一致は,顧客ばかりでなく,従業員にも影 響を与えると考えられることから,顧客と従業員のそれぞれが相手が持つ役割 期待と一致する行動を演じる場合に,両者とも満足し,不一致の場合には,両 者とも不満足を感じると考えられる。 このことは,顧客が従業員からの期待にそむくと,従業員も顧客の要望に応 えるような役割行為をしないということも意味している。また,それは顧客と 従業員の両サイドに経験に基づいて役割期待が構築されており,双方がそれを 十分に理解している場合にのみ当てはまることである。経験のない,あるいは 経験の少ない顧客や従業員の場合には,役割期待を十分に理解できていないこ とから,期待された役割と果たした役割との聞に相違を生み出し,共同行為の 実行効率の低下と共通目標達成の困難を導くであろう。例えば,利用経験の少 ない顧客は,満足できるサービスを受けるためにどのような役割を果たすこと を従業員から期待されているかを十分に理解していないし,従業員の行為ある いは対応の仕方にどの程度のことを期待していいのかも理解できていなし=。そ のため,顧客が従業員の期待しているほどの役割を果たさないことによって, それに基づいて行われる従業員の行為内容あるいはデリパリーするサービス品 質が低下するということがある。逆に,従業員が顧客から期待されている役割 を理解していない場合には,顧客は期待している行為を受けられないために, 不満足を感じるということもある。 経験回数ばかりでなく,過去の経験内容も役割期待の内容に影響を与え,双 方の役割期待に関して相違を生み出す可能性がある。例えば,過去に満足でき るサービスを受けたことのある顧客は,再び同じようなサービスを購入する際 にかなり高い期待水準を持っかもしれない。そして,そのことは過去に利用し たサービス提供組織の従業員の行為をこれから利用しようとするサービス提供 組織の従業員に対しでも期待するということにつながり,従業員がその期待に

(18)

-136- 香川大学経済論叢 136 応えない限り,顧客は不満を感じるであろう。つまり,相互作用行為における 役割は社会的に確立され,かなり客観的性格を帯びているが,個人の経験内容 によって役割それ自体が改変される可能性があるということである。そして, その役割期待が改変されたために,実行された役割との聞にズレが生じ,共同 行為の実行と共通目標の達成が困難になることもあるであろう。 (e) 社会的地位の一時的中断 サービス・デリパリー・プロセスにおいて従業員と顧客はそれぞれに演じる べき役割を持っているが,その役割のために,各々が享受している通常の社会 的地位は一時的に中断される。つまり,社会的に地位が高いと考えられている 職業(例えば,弁護士や医者)に就いている人でも,顧客との相互作用関係に おいては,顧客のために働くということである。これは当然のことであるが, 実際のサービス・デリパリー・プロセスでは必ずしも行われていない。その顕 著な例が,官公庁や公立病院などの国や地方公共団体の機関におけるサービ ス・ヱンカウンターである。また,民間のサービス提供組織でも見られ,その ことは顧客に不満足を感じさせる原因となっている。このようなことが起こる のは,サービス提供組織の目標設定に誤りがあるか,あるいは設定された目標 が従業員に正しく理解されていないためである。 (5 ) サービス提供組織の積極的な戦略として,その組織独自の役割期待を顧客の中に創り 上げてしまうということが考えられる。それは,自社サービスを消費する過程で顧客が従 業員に期待できる行為を差別的に創り上げることで,他のサービス提供組織を利用した 場合には,その期待に沿った役割j行為を受けられず,願客は不満足を感じてしまうように するというものである。つまり,顧客の満足度向上につながるようなサービス品質水準を 明確にすることで,それを達成するための従業員の役割を差別的に構築し,顧客の中にそ の役割をサービス消資過程において期待すべきものとして埋め込むことである。そうす ることで,その顧客が他のサービス組織を利用する場合に,その埋め込まれた役割をその 従業員にも期待し,それが満たされないためにそのサービス提供組織に不満を感じさせ ることができるであろう。 (6 ) サービス・エンカウンターにかかわる役割一致には rサービス提供組織内部での役割j 一致Jと「従業員と顧客間での役割j一致Jとがあるが(Solomon,Surprenant and Gutman, 1985),設定された目標が従業員に正しく理解されていないというのは前者の役割j一致と 関係している。

(19)

137 顧客のサービス・デリパリー・プロセスへの参加と品質評価 2制 動態的相互作用過程としてのサービス・エンカウンター

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の最高経営責任者:)はサービス・デリパリーが完了する までに起こる出来事の一場面を、真実の瞬間

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と呼んでいる が,サービス・エンカ〆ウンターはまさにこの真実の瞬間である。サービス・ヱ ンカウンターにおけるどのような些細な出来事でも,フロントルームを構成す る種々の要素に対する顧客の知覚に対して連鎖的にマイナスあるいはプラスに 影響を与えてしまう。このようなことがあるために,サービス・デリパリー・ プロセスで問題が発生した場合,その問題の実際の発生源がどこにあったのか を確定することが困難になっている。同様に,顧客がデリパリーされたサービ スを高く評価したとしても,それをもたらした要因が何であるのかを明らかに することも困難になっている。例えば,図書館での貸出手続きの際に図書館員 の手が利用者の手に触れた場合,利用者がそれに気づいたかどうかには関係な し彼らは図書館員,図書館の環境,彼ら自身の感情的状態を高く評価する傾 向があった,という調査結果が得られている

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。明かにこの場合 には,接触というちょっとした出来事が顧客の感情的状態だけではなし環境 の中の物的属性の評価にも影響を与えている。 また,サービス・エンカウンターはサービス・デリパリーが完了するまで継 続するが,サービス・エンカウンターのある一時点において発生した問題はそ れ以後の顧客の評価や行動に影響を及ぽし,その結果としてサービス・エンカ ウンターの効果的且つ効率的な進行を妨げることになるであろう(図

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1

参 照)。サービス・デリパリー・プロセスでは,顧客は自ら参加してサービスを生 みだしながらそれを消費し,その時点までに提供されたサービスとそのデリパ リー・プロセスとを評価し,さらにその評価を行動や態度に表わしながら次の デリパリーに参加し,消費と評価を繰り返すことになる。さらに,そのような 顧客のデリパリー・プロセスへの参加,消費,評価という繰り返しの中で,顧 客の評価は彼らの行動や態度を通じて相互作用関係にある従業員の職務満足や 態度にも影響を及ぽすであろうし,逆に従業員の職務満足も彼らの行動や態度 を通じて顧客の満足や態度に影響を及ぽすであろう。従って,サービス・デリ

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ド、 4 む J o

嚇三U庁AW論議都練 ]-ω ∞ サービス・エンカウンターの動態的変化と評価過程 図 III-l

(21)

パリー・プロセスでの顧客と従業員との聞の相互作用関係は態度や行動におい てばかりでなく,満足の面でも展開されることになる。 このようなことからサービス・デリパリー・プロセスで発生したどのような 問題もその時点、で即座に処理・解決されなければならないが,そのためには顧 客とフロントルームにおける従業員とのツー・ウェイ・コミュニケーションが 重要で、あろう。ツー・ウェイ・コミュニケーションを通じて従業員はデリパリー しているサービスが顧客のニーズに適合しているか,あるいは顧客にとって好 ましくない状況が発生していないかを確認し,もし問題があるならばデリパ リー・プロセスでサービスの内容や水準を調整していかなければならない。さ らに,顧客との間ばかりではなく,フロントルーム内で同じ機能あるいは補完 的な機能を遂行している従業員や,パックルームにおいて支援的機能を果たし ている従業員ともツー・ウェイ・コミュニケーションを行なう必要がある。そ れは,それらの他の従業員との調整がうまく行なわれなければ,サービス・デ リパリーや問題解決をスムーズに行なうことができないからである。 3.. サービス・エンカウンターから見た組織類型 サービス・エンカウンターへの従業員の関与の仕方から,サービス提供組織 は合衆国型組織と日本型組織に大別することができる(図III-2参照)。合衆国型 組織は,多民族社会であるアメリカ合衆国のように,フロントルームが異なっ た複数の機能別組織の従業員から構成されており,彼らがサービス・エンカウ ンターに順次あるいは同時に関与するようなサービス提供組織である。顧客へ のサービス・デリパリーは,彼らがパックルームの支援を受けながらお互いに 協力・調整し,顧客と相互作用を展開する過程で行なわれる。この組織の従業 員は基本的には単能工的であり,異なった機能別組織の従業員が担当する活動 を補完することはあっても,代行することはほとんどない。顧客の側から見る (7) ここでの機能別組織とは,サービス提供組織の組織図における機能的に分離した組織 を意味しており,機能別組織によってはフロントルームだけでなくパックルームにまた がっているものもあるであろう。

(22)

140- 香川大学経済論叢 140 ならば,この類型の組織からサービス・デリパリーを受ける場合,顧客は異なっ ある た機能別組織の聞を移動しながら各組織の従業員と相互作用を行なうか, いは複数の異なった機能別組織の従業員と同時に相互作用を行なわなければな らない。 この組織の典型は病院 そのフロントルームは医師,看護婦,医療技術者,事務職員,労務員 この組織は複合組織とも呼ぶことができるが, である。 といった異質な職能集団から構成されており,例えば診療というサービス・エ お互いに協力 ンカウンターにおいては,医師と看護婦が同時に顧客と接触し, しながら医療サービスのデリパリーを行なっている。 日本型組織は,単一民族社会である日本のように,同質的な能力・技 術を保有する従業員から構成されており, 織が職能別に明確に分離していない組織である。 方 フロントルームにかかわる従業員組 一人の従業員 この組織では, ンカウンターに関与し, が顧客へのサービス・デリパリー・プロセスで発生するすべてのサービス・エ また,機能別 その展開に必要な機能をすべて果たす。 [日本製組織]

フロントルーム [合衆国型組織} 4←ー・ー 槌書目と阪2年間の相互作用(サーピス エンカランタ】) 4昨日目・・ー フロントJレ-.関連組構内での従業員聞の枢E作用 4昨~:異なる機能別組踊の世世貝聞の仙作用 4・E川...~:機能別組織内での従軍貝聞の相互作用 図[[]-2:サービス提供組織の日本型と合衆国型の比較

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に組織が形成されているとしても,活動の遂行が機能別組織の枠を越えて流動 的に行なわれている場合には,この類型に属するものと考えられる。この組織 におけるフロントルームの従業員は多能工的であり,フロントノレームにおける 他の従業員の活動を補完するだけでなく,代行もする。この組織類型に属する ものを例示するとしたら,小売庖,ファミリーレストラン,理容庖,路線ノfス 会社などを挙げることができるであろう。 以下では,この

2

つの組織類型の特徴について,もう少し詳細に検討したい。 尚,合衆国型及び日本型という名称は,両類型のサービス提供組織におけるフ ロントルームの構造の違いが,日米における社会構成員の多様性の違いと類似 していることから用いている。さらにこのような名称を用いた背景には,両類 型の組織における従業員の単能工と多能工という相違が日米企業における従業 員の職務の流動性の違いと類似している,ということもある。

(

1

)

日本型サービス提供組織の特徴 日本型のサービス提供組織では,サービス・デリパリーの開始から終了まで の聞に顧客との間で展開されるサービス・エンカウンタ}には基本的に同じ一 人の従業員のみが関与し,その従業員がサービス・デリパリー・プロセスとサー ビス品質に対して責任を負うことになる。また,一人の従業員が多能工的にサー ビス・デリパリーを行なうが,そこで展開されるサービス・エンカウンターに 参加する顧客は一人であるとは限らない。理容師や家庭教師のように顧客と l 対

1

でサービス・エンカウンターを展開する場合もあれば,路線ノてスの運転手 や落語家のように同時に多数の顧客との間で展開する場合もある。 この類型のサービス提供組織の特徴として,第一に,組織全体あるいはフロ ントノレーム部分が小規模でトあるか,または組織全体は大規模であるとしても, フロントルームは同質的な知識や技能を持った従業員のみから構成されている ということがある。これに対して合衆国型組織は比較的規模が大きしフロン トルームは分業化・専門化しており,異質な知識や技能を持った従業員から構 成されている。尚,この類型の組織でも,その提供サービスに対する需要規模

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-142ー 香川大学経済論叢 142 あるいは利用者が拡大し,さらにサービス・エンカウンターにかかわる機能を 分割できる場合には,合衆国型へ移行していく可能性がある。 第二の特徴として,従業員は顧客との聞に個人的な人間関係を構築しやすい い顧客に関する情報を集中的に蓄積・管理することができるということがあ る。そのことは両者の相互理解を高め,サービス・ヱンカウンターの効率的且 つ効果的展開や,顧客の反復的あるいは継続的利用を促すであろう。例えば, 同じ理容屈を反復的に利用している場合,顧客は利用の度ごとに望む髪形を詳 細に説明(仕様決定)しなくても rいつものように」と言うだけで済むであろ う。さらに,散髪中に理容師との会話もスムーズに行なわれ,顧客は退屈しな いで済むかもしれない。これに対して合衆国型組織では,その利用が長期的・ 継続的でない限り,顧客と従業員との聞に個人的な人間関係は構築されにくく, 個人対組織の関係で終わることが多いであろう。また,顧客に関する情報もサー ビス・エンカウンターに関与する複数の従業員や機能別組織によって分散的に 蓄積・管理されることから,各従業員がサービス・エンカウンターを効果的

E

つ効率的に展開することや顧客のニーズに合ったサービスを提供することは日 本型組織に比べて困難であろう。 また,この組織においては,デリパリー効率やサービス品質は一連のサービ ス・エンカウンターに関与する従業員個人の能力,行動,態度,外見などにか なりの程度に依宿して決まるであろうから,従業員のサービス・エンカウンター の展開・管理能力を向上させることが重要な経営課題となるであろう。 (2) 合衆国型組織の特徴 合衆国劃組織はフロントルームが異なった複数の機能別組織の従業員から構 成されているような組織である。各従業員は基本的には単能工的であり,サー ビス・デリパリーあるいはサービス・エンカウンターの展開に必要な機能の一 部しか果たさないため,サービス・デリパリーは組織システムを通じて行なわ れる。つまり,複数の従業員が順次あるいは同時にサービス・エンカウンター に関与し,ノfツクルームの支援を受けながらそれらの従業員が協力・調整を行

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なう過程でサービスはデリパリーされる。サービス・デリパリーが主に個人を 通じて行なわれる日本型組織とは対照的である。 サービス・エンカウンターにかかわる活動は分業化されており,個々の従業 員はサービス・デリパリ」・プロセスで展開される一連のサービス・エンカウ ンターの中の一部にしか関与しない。そのため各従業員はその活動に関連した 顧客情報しか収集できないために,顧客に関する情報は従業員間あるいは機能 別組織聞に分散している。顧客情報が分散しており,各従業員がサービス・エ ンカウンターを行なう顧客に関する情報を十分に獲得できない場合には,相互 理解の欠如からサービス・エンカウンターの効率及び効果が阻害される可能性 が大きいで、あろう。そのため,顧客情報を集中的に蓄積・管理し,サービス・ エンカウンターに関与するすべての従業員が顧客情報を共有できるようなコ ミュニケーション・システムを組織内に構築することが必要とされるであろう。 この組織におけるデリパリー効率やサービス品質は,サービス・エンカウン ターに関与する個々の従業員の能力,行動,態度だけでなく,顧客情報を集中 的に蓄積・管理できるような情報システムの有無とその形態,従業員間あるい は機能別組織聞のコミュニケーションや協力・調整の程度など,様々な要因に 依存して決定される。 このような特徴を持つ合衆国型車

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織は,時間経過とサービス・エンカウンター に関与する従業員の変化という観点、から,図III-3のように,さらに3つのタイ プに分類することができる。タイプIの組織では,サービス・デリパリーの開 始から終了までの間に展開されるサービス・エンカウンターに対して複数の同 じ従業員が関与し,お互いに協力・調整することで顧客へのサービス・デリパ リーが行なわれる。例えば,患者一人の治療に対して歯科医師l人と 1人ある いは 2人の歯科衛生師が立ち会うような歯科医院はこのタイプに属する。この タイプの組織ではサービス・デリパリーの開始から終了まで同じ従業員が顧客 と接触するために,従業員が顧客との聞に個人的な人間関係を形成したり,顧 客に関する必要な情報を獲得したりすることは他の合衆国型組織に比べると容 易であろう。しかしながら,複数の従業員が同時に顧客と相互作用を行なうこ

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-144← 香川大学経済論叢 [タイプ1] It時) (サ ピステリパリー開始) (t 時 (t+1時) (サービス デリパリー開始) (t時) {t +1時) (サービス デリパリー開始) (t+1時) ( t+n符) (テリパリ}終Tl 【タイプII】 ~..・H・.,..,争 ( t +2時) ( t+n時) 【タイプIIIl ( t +2時J (デリパリー終了) (t+n時) (デリパリー終了) 4・ - ー 従 業 員 と 雌 容 聞 の 相1,作用

+

3毛なる機能別組織の世相聞の相互作用 4・E…~ 概能別組織内での従業員聞の栂互作用 図III-3: 3タイプの合衆国型組織の比較 144

(27)

とから,顧客の自に映る従業員聞の関係はサービス・エンカウンターの展開や サービスの品質評価に重大な影響を及ぽす可能性がある。 タイプIIの組織では,サービス・エンカウンターは顧客と従業員の1対1の 関係を中心として展開されるが,デリパリー・プロセスの段階によって必要と される活動の内容が異なるために,各サービス・エンカウンターには異なった 機能別組織の従業員が関与する。このタイプの組織でサービス・デリパリーを 受けるためには,顧客は次々と機能別組織の聞を移動していくか,あるいは活 動ごとに担当者が交代するのを待たなければならない。従って,このタイプの 組織におけるオペレーションや組織構造は,顧客の便益,行動,知覚,評価と いった観点からというよりも,組織の論理あるいは従業員の便益や行動の観点 からデザインされていると見ることができる。官公庁でサービス提供を受ける 場合や,医療機関で健康診断や人間ドックを受ける場合には,顧客はこのタイ プのサービス・ヱンカウンターに直面することになる。例えば市役所で住民票 の写しをもらおうとする場合,顧客は住民課でまず申込手続きをし,次にそこ で発行された書類を会計課に持って行って手数料を支払い,さらにそこでの支 払証明書を受取窓口に持って行って写しをもらうという過程を踏まなければな らない。このタイプの組織では,サービス・デリパリーのための一連の活動が 各機能別組織で効果的且つ効率的に行なわれることも重要であるが,それらの 活動を円滑にリンクするような五回哉内コミュニケーションも効果的且つ効率的 に行なわれなければならない。先の市役所の例では,顧客自らが前工程での活 動に関する情報を持って機能別組織の聞を移動し,各組織の従業員と次々に サービス・エンカウンターを展開しているので,顧客がサービス提供組織に代 わって機能別組織聞の情報伝達あるいはコミュニケーション機能を果たしてい ることになる。 タイプIIIの組織はタイプIとIIの混合形であり,そこでの特徴も両タイプの ものを合わせ持っている。これらの

3

タイプのサービス提供組織におけるデリ パリー効率やサービス品質の向上にとって重要であろう要因については先に検 討したが,組織タイプによって各要因の向上に対する貢献度あるいは重要性は

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-146ー 香川大学経済論議ー 146 異なっているであろう。また,デリパリー効率を考える場合,どのタイプの組 織形態が効率が高いかということではなく,サービスの内容,サービス・コン セプト,顧客及び需要特性,組織規模や能力などの観点からどのタイプの組織 形態をとるのが適切であり,その組織形態において効率を向上させるためには 何を行なう必要があるのか,を検討することが重要で、あろう。

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V

.

医療サービスのデリパリー・プロセスにかわわる 品質評価と顧客満足 前章までの検討を踏まえて,本章では,サービス・デリパリー・プロセスに かかわる品質を顧客の視点から検討したい。サービス品質はデリパリー・プロ セスにかかわる品質とデリパリーされたもの(成果あるいは産出物)にかかわ る品質とから構成されており,顧客はその両品質に基づいてサービスに対する 総合的な品質評価を形成しているが,ここではデリパリー・プロゼスにかかわ る品質評価とそれが満足形成に及ぼす影響について検討する。具体的には,病 院における医療サービスを取り上げ,顧客(患者)はそのデリパリー・プロセ ス(以下では,診療過程)にかかわる品査をそれを構成する様々の要素のどの ような次元で評価し,それに基づいてどのように満足あるいは不満足を形成し ているのかを明らかにする。 医療サービスを取り上げた背景には,医療サービスの成果評価には専門的知 識が必要とされ評価が困難なことから,一般の患者は主に診療過程にかかわる 品質を評価することで,医療サービスに対する品質評価及び満足形成を行なう 傾向があるからである。 (8 ) 医療経済学者のDonabedian(1968)は,医療サービスの品質は以下の3つの要素から 構成されていると捉えているが,本章では, (1)と (2)を合わせたものをデリパリー・プロセ ス(診療過程)にかかわる品質と捉えている。 (1)構造(施設・設備,スタップ配置,教育・専門など) (2) プロセス(患者との接触,診療過程など) (3) 成果(死亡率,治癒率,患者満足度など)

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1引 医療サービス・デリパリーの特徴 医療サービスのデリパリーに関しては,以下のような特徴がある。

(

1

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医療従事者優位のデリパリ一体制 医療サービスは専門的サービスであり, (a)需要の予測困難性, (b)デリパリー の緊急性, (c)医療従事者と患者間の情報ギャップ,といった問題が伴うため, そのデリパリーは医療従事者(医師,看護婦,医療技術者など)側が優位に立っ て行われる(宮協・小川・栗本,

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)

。 第一の「需要の予測困難性」とは,疾病などの発生やその大きさ,治療に必 要な期間などを事前に予測することができないということである。その結果, 医療サービス提供組織においては,緊急に必要な医療サービスを即座にデ、リパ リーできるだけの人的・物的能力を常に稼働可能な状態にしておく必要が生じ ている。 第二の「デリパリーの緊急性」とは,医療サービスが人の生命や健康に直接 的にかかわる行為であり,他の行為に優先して迅速にデリパリーされる必要が あることを意味している。治療などにおいて緊急を要する場合には,提供する 医療サービスの内容について患者に説明し同意を得る時間的余裕などなく,医 療従事者側の判断でデリパリーが行われる。 第三の「医療従事者と患者間の情報ギャップ」とは,医療サービスのデリパ リーには高度に専門的な知識や技術が必要とされるため,医療従事者(特に医 師)と患者との聞には大きな情報格差が存在しているということである。その ため,患者側が受けるべき医療サービスの内容を判断することは困難になって いる。さらに,患者は精神的に不安定な状態にあるということもあり,患者は 不完全な判断能力しか持っていない。その結果,患者側は受けるべき医療サー ビスの内容を医療従事者側の判断に任せざるをえなくなっている。 以上のようなことにより,医療サービスのデリパリーでは医療従事者側が優 位に立ち,患者側は受動的な態度で診療過程に参加することが多くなっている。

(30)

-148 香川大学経済論叢 148 (2) 誇示的生産関数と非効率の発生 医療サービス提供組織の管理者のプレスティジは,カバーしている診療行為 の範囲,高度に専門的で高価な医療機器の整備度,病床数,医師を含む医療マ ンパワーの充実度などによって高まる。そのため管理者が費用極小化ではなく プレスティジ極大化を求めるようになると,それらの充足に専心するようにな る。その結果,生産関数は利潤極大化行動におけるものとは異なったものにな り,いわゆる誇示的生産関数が成立する(権丈,

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)

。そして,非効率な資源 配分が行われ,設備生産性や人的生産性は低下することになる。 しかし,管理者のプレスティジ追求行動が,医療サービスのデリパリーに対 してネガテイ、プな影響のみを及ぼしているとは言えない面がある。プレスティ ジ追求のための物的資本の整備は有能な医療従事者の雇用や彼らのモラーノレ向 上に役立ち,人的資本を質的・量的に向上させている。また,医療サービスの 顧客(患者)は,その選択意思決定過程において先進的医療設備・機器の整備 度,医師や看護婦の充実度,提供組織の規模や知名度,有名な医療機関との提 携関係,などを評価する傾向があるので,プレスティジ追求による物的・人的 資本の充実は顧客の獲得にも役立っている。

(

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)

複合組織のもたらす利害調整の必要性 医療サービス提供組織は,異なった多数の機能別組織から構成される合衆国 型組織(複合岸

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織)の典型である。そして,医療サービスのデリノてリーは,様々 な機能別組織に属する従業員が順次あるいは同時に患者とのサービス・エンカ ウンターに参加することで行われる。しかしながら,機能別組織聞には常に利 害対立の発生する可能性が存在しているし,それが顕在化した場合には,デリ パリー効率ばかりでなく医療サービスの品質までも低下させてしまう危険性が ある。従って,医療サービスのデリパリーを効率的かつ効果的に行うためには,

(

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)

このことは,医師の賃金は病院の規模が拡大するにつれて低下する,という特異な性格 を持っていることから言えるであろう。そのため,医療サービス提供組織における設備投 資は医師への賃金支払と等しい意味を持っていると考えることもできる(権丈, 1993)。

(31)

機能別組織間あるいはそこに属する従業員聞の協力・調整は不可欠となってい る。 2山 調査実施概要 医療サービスの診療過程にかかわる品質を評価する際に顧客(患者)が用い る評価次元とそれが顧客満足に及ぼす影響度を明らかにするために,外来患者 及び入院患者に対して調査を実施した。その調査実施概要は以下の通りである。 (1) 外来患者に対する調査実施概要 外来患者に対する調査は,神奈川県に立地する

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総合病院で実施した。 調 査 対 象 者

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診療科(内科,外科,整形外科,耳鼻咽喉科,眼科,皮 膚科,産婦人科)の外来患者 調 査 票 : :

A 4

版 10ページ 調査方法:調査員による面接調査依頼・郵送回収(調査依頼は各診療 科の待合室で実施) 調 査 時 期 : :1994年10月中旬 調査票配付数::

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票 有 効 回 収 数 :

3

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票(診療科別回収数は次表の通りである) 診 療 科 人 数 構成比(%) 内科 143 41 8 外科 52 15..2 整形外科 32 9 4 耳鼻咽喉科 16 4.7 眼科 21 6..1 皮膚科 7 2 0 産婦人科 46 135 複数受診 6 L8 無回答 19 5.6 dにLヨ 計 342 1000

参照

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