• 検索結果がありません。

エドナ・オブライエン試論 (1) : 母への憧憬

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "エドナ・オブライエン試論 (1) : 母への憧憬"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

エ ドナ 。オ ブ ラ

イエ ン試 論

(1)

の 性 憬

母 ヘ

岩 上 は る 子 (昭和61年 5月29日受理) `よ じ め に ア イル ラン ド女流作 家 エ ドナ・ オブ ライエ ン

(Edna O'Brien 1930- )の

主題 は愛 と孤独 の 問題 に集約 され る。愛 は人類永遠 の命題 で あって

,多

くの文学 の普遍 的 テーマ となって きた もので あ る。 その中での オブ ライエ ンの独 自性 は とい えば

,そ

れは作 品 の随所 に描 きだ されてい るアイル ラ ン ド的状況 ―一 貧 困

,暴

,文

化 の停 滞

,狭

除 な精ネ申的 風土

,頑

迷 な宗教性 な ど一― の なかで, 人 間の孤独 と愛の真実 の意味 を執拗 に問 いかけてい ることにあ る。 オ ブ ライエ ンの作 品の舞台 で あ るアイル ラ ン ドは

,そ

れ 自体 がひ とつの主題 で あ るといって よい。彼 女 の作 品の孤独感 と愛 の飢渇 感 は

,荒

涼 と した背景 の なか にお かれて は じめて理解 され る もの で あ る。 ところがオ ブ ライエ ンの 作 品 は国 内 で よ りもむ しろ国外 で共 感 をもって迎 え られてい る。(本国 アイルラン ドで は な くイギ リ ス で出版 されてい るほか

,

とくにアメリカで好評 で ある。

)そ

れは彼 女 の主人公 た ちが既成 の倫理 に と らわれ ることな く

,他

者 との真 の結 びつ きを模 索 してい く姿 勢 が読者 に激 しい衝 撃 を与 えてい る か らで ある。 そこに個別 アイル ラ ン ドの状況 をつ きぬけた普遍的 テーマ がみ られ る。 愛 の諸相 には男女 の愛 のみ な らず同性 の愛

,肉

親 の愛

,師

弟 の愛

,

さ らには神 へ の愛 な ど様 々 な 形 があ る。 オ ブ ライエ ンは愛 を男

,母

,故

国 な どとの関係 にお いて追 求 してい る。 そ して そ こには 一 貫 して他 者 との一体化 に対 す る強 い願望 が認 め られ る。 オ ブ ライエ ンの描 く主人公 た ちは一様 に 愛 に飢 え

,け

して満 た され ることの ない愛 に悩 む女性 た ちで あ る。愛 に期待 しては裏切 られ傷 つ き なが ら

,あ

えて また愛 に賭 け よ うとす るところに彼女 た ちの共通 の姿 がみ られ る。 オブ ライエ ンの 小 説 のひ とつの特徴 は愛へ の夢 と幻滅 とい う出 日の ない繰 りか え しで あ るとい えよ う。主人公 た ち の求 める愛 はつ ねに拒 まれ

,そ

の愛 の理 想 はけして実現 されない。拒絶 され なが らもなお愛 を求 めず にいられないところにオブライエ ンの主人公 たちの哀 れさ

,悲

しさが あ る。 彼 女 た ちが嘆 き悶 えつつ も 愛 の理 想 を捨 て ないの は

,彼

女 たちが愛 なくしては生 きられ ない人 間 で あ るがゆ えにほ かならない。 オ ブ ライエ ンの求 め る愛 の理 念 は

,他

者 との完全 な る融合 を達 成 す ることにあ る。具体 的 には母 の胎 内での安寧 と静誰 とを再 び回復 す ることを志向 してい るとい え る。 この ことは様 々 な形 で描 か

(2)

104

岩 は る 子 れる愛の基底 に母への1童憬 がみ とめ られることで もわかる。主人公た ちは

,究

極的 には母 の胎内で の一体感 と類似 した状況 を再現す ることを希求 しているのである。愛の追求の過程 であ らわれる曲 折は

,母

の愛への渇望 と失望の ヴァリエーションであることが指摘で きる。 したがってオブライエ ンの愛のテーマ を考 える場合

,そ

の原点である母娘の愛の問題 からまず出発 しなければならない と 考 える。本論では作品 にあ らわれる母娘の関係 の諸相 をとらえ

,オ

ブライエ ンにとって母 なるもの のもつ意味 を明 らかにしてい きたい。 作 品 にお け る母 の位 置 オブ ライエ ンの 自伝 的エ ッセイのひとつ に ″οιttT rT9′αη

,(1968)と

い う題名 の作 品 が ある。 故 国 にた いす る呼称 がい くつ かあ るなかで

,オ

ブ ライエ ンが `母

'

とい う比喩 を用 いて い る意味 を考 えてみたい。 自分 が生 まれ育 った国 を懐 しさをこめて母 と呼ぶ のは ご く一般 的 で あるが

,オ

ブ ライ エ ンの場 合

,母

な るアイル ラ ン ドによせ る感情 には 単純 なノス タル ジアだ けで は説 明 しきれない も のがある。作 品はつ ぎの よ うな書 きだ しで始 まってい る。 祖 国 とは母 親 あるいは父親 の よ うなもので ある。 それは 自分 を生 んだ男 あ るいは女 にたい し

て心秘かにいだく,あ の′

亀肌たつ思いを掻 きたてずにはおかない伊〕

(傍

点筆者

)

「鳥肌 たつ思 い」 は原文 によれば `emO onal bristle'であ り

,オ

ブ ライエ ンの母国 に対 す る復雑 な感情 を生 々 しく感覚的 な表現 で伝 えてい る。 オ ブ ライエ ンに とって 自分 を生 み育 てた国 とい うも のは

,否

定 しさるこ との で きない 自分 の体 内 に流 れてい る血 その もの なので あって

,そ

れゆ え に相 対化 す るこ ともで きない ま まに

,矛

盾 にみ ちた感情 を露呈 させず にはおかない もの なの であ る。 そ うした母 国 に対す る愛憎半 ばす る思 いをオブ ライエ ジは

,自

分 に生 命 を与 えなが らかつ その生 命 の 自由 な飛 効 を阻 も うとす る母親 に対 す る感情 と重 ね あわせ てい る。つ ま リオブ ライエ ンは時 に 母 の中 にアイル ラン ドをみ

,あ

るいは また アイル ラ ン ドの中 に母 をみて, そ こに生涯 断 ち切 るこ と ので きない紐帯

,濃

密 な血 の繋 が りを感 じて い るので あ る。 アイル ラ ン ドに女寸す るの と同 じよ うに 母 に対 して も

,オ

ブ ライエ ンは終 始

,

自己の感情 の平 衡 を保 ちえない まま に向 かい あって い る。母 と娘 との あいだで繰 りひろげ られ る高藤 は

,彼

女 の作 品 に一貫 して流 れ るモ チー フなので ある。概 観すれば

,三

部 作 といわれるTん9 CοvηιTy GIT′

s(1960,以

CGと

略 記 す る

),Tん

9 Lο■9り GjT′

(1962,ペ

ンギン版 ではGJT′ ψ,テん GT99免 勇呼 dと して1964年 に出版

,以

GGEと

略 記 す る

),お

よびG,T′

s,,ι

ん9,T Arα″TttθJ B′

Js s(1963,以

G″

】 と略記 す る

)に

おいては

,主

人 公 の ケ イ ト が少女期 をへ て結婚 し

,や

がて結婚 に破 れ るまで が跡 づ け られてい るが

,後

述 す るよ うにそ うした

(3)

エドナ・オブライエン試論

(1)105

ス トー リー と重 なりあ うよ うにして

,彼

女の心の中では母 との関係 のテーマが展開 されてい るので ある。ケイ トにとって母 は時 に恋人 よ りも夫 よ りも

,そ

して子 どもよ りも身近 な存在で あ り

,あ

る 意味で彼女は終始

,母

親 から自立す ることがない ともいえる。 こうした母娘の親密 な関係 は最新の 長編小説 」oん2ηg r lraT,を Kη 9ψ

b傷

(1977,以

下 んんηηυ と略記す る

)に

まで流 れこんでい る。 その主人公 ノーラのなかに母 は抜 きがたい存在 として棲 みついてお り

,彼

女は母への激 しい敵意 と 愛執のあいだで揺 れ動 く。 このよ うに主人公た ちの愛の遍歴 の過程 には

,母

との愛憎関係 が密接 に 絡 みあっているのである。 それがオブライエ ンの作品 に深 い奥行 を与 えているともいえよ う。 母 と娘の車し操 上 に述べたよ うにオブライエ ンの主人公た ちの意識の底 には必ず母 の存在 があって

,彼

女 た ちが 母 を意識せずに行動す ることはほ とんどないといってよい。彼女た ちの中には母 を捨 て さりたい気 持 と母 に抱 かれていたい気持 との二律背反す る感情 がある。す なわち母 の影響力 を一方では呪縛 と 感 じて反発 しなが らも

,他

方では血 で結 ばれた人間のみが与 え うる母性愛 に執着 しているのである。 こ うした娘の屈折 した心理 は

,た

とえば短編集 Ttt Lο υθθ "9Cι

(1968,以

と略 記す る) に収録 されている ℃

ords'に

克明 に描 かれている。 そこでまず この短編作品 を詳細 に検討 す るこ とか ら始めたい。物語はロ ン ドンに住 む娘 を

,ア

イルラン ドの片田舎 から母親 がは るば る訪 ねてい くところか ら始 まる。懐 しいはずの母娘の再会 だが

,母

の胸 にはわだかまるものがある。 それは描 出話法 に近 い形 でつ ぎのよ うに語 られている。

She was setting out on a visit to her daughter Claire in London, just like any

mother, except thatん 9T daughter was different: she'd lost her faith, and she mixed

with qucer people and 、vrote poems. If it was stOries onc could detect the sin in

them, but these poems made no sense at an and therefore scemed mOre wicked121

娘のクレアは母の眼 からみれば普通の娘 とはちがっている。そしてそれを母が好ましく思 っていない ことは

,つ

づ くコロ ン以下の文章 に明瞭である。すなわち母のことば を要約するならば

,ク

レアは 「信仰 を失 い」「 いかがわ しい連中 とつ きあい」「不道徳 な詩」

(wickedは

強い道徳的 非難 を伴 な う 語 である

)を

書 いている不良娘 とい うことなのである。 自分 た ちの世界 をとびだ して

,異

教徒 の地 ロ ン ドンで勝手気 ままな生活 を送っている28歳の独身の娘 を

,母

が罪人のひとりとみな しているこ とはsinと い う語 に歴然 とあらわれている。 ここに母娘の文↓立点のひとつがあるかにみ える。 だが 一方

,娘

には娘 な りの家 を離れなければならなかった理 由

,詩

を書 かずにはいられない理 由がある

(4)

106

岩 上 は る 子

のである。そうした内面の苦 しみを察 しようともしない母 に対 して, クレアは恨みがましい気持 を

抑えることがで きない。 クレアの母に対する反発の気持はつ ぎのように語 られている。

Her mother had no notion of holv lonely it was to read manuscripts all day, and

write a poem once in a 、vhile, when one became consumed lllith memory or an idea,

and then to constantly go out, Seeking people, hoping that one of thena might fit, might know the shorthand of her, body and soul13)

母 は 自分 の狭 い道徳 意識 の なかで しか世 界 をみ よ うとせ ず

,そ

の偏 狭 なモ ラルに照 らして娘 を断罪 しよ うとす る。 しか しク レアの問題 は彼女 をむ しばむ孤独 で あ り

,ま

た彼 女 をさいなむ過去 の記憶 なので あ る。 こ うした問題 のズ レこそが母娘 の断絶 を物 語 ってい るともい えよ う。ふ た りの文↓立 の 原点 は した がって道徳 意識 をめ ぐっての こ ととい うよ りも

,は

るか に根 の深 い感情 問題であるのだ。 そ して両者 の あいだ に潜 在 していた微 妙 な感情 の きしみ は

,や

がて ク レアの ボヘ ミア ン的 な友 人 た ちをめ ぐる口論 を きっかけ に一 挙 に表 面化 す る。 それ まで は互 いへ の礼節 か ら抑 え られ ていた もの が

,今

やす っか り曝 けだ され るので ある。 無意識 の うちにク レアの口 をつ いて出 た母 へ の非難 の ことばは

,幼

ない 日の あ るひ とつ の事 件 に 関す るもの だ った。 それは事件 ともい えない よ うなご く些細 な出来事 にす ぎない一― 母 が医者 に欺 かれ るよ うに して爪先 を手術 された ことを

,無

イ申経 に も平 然 と幼 ない娘 に話 して聞 かせ た一― の だ が

,そ

れ は現実 には ク レアの心 に思 い もよ らない傷痕 を残 す こ とになったので ある。 た とえば後 年 クレアがサ ウナ風 呂 に入 った と き,「 流 れる自分 の汗 が一滴

,一

,血

に変 ったように思 って」恐怖 の あま り叫 び声 をあげたとい うエ ピソー ドがある。 ここにもうかがえるように

,幼

ない 日に出会 っ た血 なま ぐさい事件 が ク レアの心 の なか に精 神的 な傷 とな って残 り

,今

なお彼 女 の恐1布と不安 の源 にな ってい るの で あ る。 ク レアが詩 を書 いた リアルコー ル を求 めた りす るの も

,ひ

とつ には そ う した過 去 の出来 事 の強迫観 念 か ら逃 れたいためで あ るこ とは

,つ

ぎの彼 女 の内的独 自が明確 に語 っている。

She undressed, she told herself that her four fingers had healed, that her mother's

big toe was no、v like any other person's big toe, that her father drank tea and held

his temper, and that one day she would meet a man lvhOm she loved and did not

frighten away. But it was brandy optimism!4)

それでは次 になにゆえにその事件 がそれほどまでに重大 な意味 をもったのか

,そ

のためにクレア

(5)

エ ドナ・ オブライエ ン試論

(1)107

の母娘関係 が一変 した とい う事実である。す なわちクレアがそれまで母 に対 して抱いていた

,優

し く献身的 に自分 を愛 していてくれていた母 のイメージが

,そ

の事件 によって一瞬 の うちに破壊 された ということである。母 に寄せていた全幅の信頼 が痛 ましく踏みにじられたばか りでな く

,

さらに残酷 で冷淡 な母の素顔 をかいまみ ることになったのである。つ ま リクレアにとってその事件 は

,い

わば 母の裏切 りを象徴す るものであった とい うことがで きよ う。 この ことか らさらに次 のことが考えら れる。母 に裏切 られた とい うのは娘の側 の論理 であって

,母

親 自身 には娘 を傷つけた とい う意識 も なければ

,ま

してや娘の怒 りや恨みなど想像す らしていない。医者 が用いた トリックも母 に してみ れば

,な

るほ ど多少 は残酉告な話ではあっても, 日常 によ く見受 け られる `駆けひ き

'の

ようなもの にす ぎない。 ところがまだ幼 な く感 じやすい少女の眼 には

,こ

うした小 さな現実 も十分 に暴力的 な もの として映 ったのである。 そ して少女 にとって何 よ りも恐 しい発見 は

,そ

うした暴力的 な人生 か ら自分 を守 って くれ るはずであった母 を

,

もはや信頼で きな くなった とい う事実である。 この世 で もっとも信頼 していた母 に裏切 られた とい うシ ョックは

,ク

レアの記憶 に焼 きついた血 のイメージ と結 びつけ られ

,彼

女のなかにいつ まで も鋭 い痛みの感覚 を残 してい る。信頼 しきっているものに 突然 に裏切 られるとい う不安 が

,

クレアのその後の人生 を甚だ しく困難 なものに してい くのである。 信頼 は容易 に裏切 られるという不安

,そ

して荒々 しい人生の直中にひとり投げだされた とい う恐怖, それ らがクレアの強迫観念 を構成 しているのである。 人生 に対す るクレアの不安の背景 には

,今

も記憶 に残 る幼 ないころの悲惨 な日々がある。母 との 再会で クレアが恐 れているのは

,

あの頃の悪夢 がふたたび甦 ることで ある。 すなわち `・・。she did

not want any disclosures nolv, any declaration about how hard life had been and ho、

v

near they'd been to death during many of the father's drinking delriumsI〈 5)とャ、ぅ思いな

のである。酒乱の父親の暴力に脅 えた 日々

,役

人の差 し押 さえ

,絶

望 にか られた母親の叫び声

,そ

うした事のひとつひ とつが今 も生 々 しくクレアの心 によみがえる。母 はそ うした幻滅 と失望 の毎 日 をそれが人生であると諦 め耐 えてい くが

,娘

は惨苦 に出会 うたびにその繊細 な神経 をひ き裂 かれて い く。生活の中にある種 々の暴 力によって

,少

女の内面は無惨 に切 り刻 まれてい くのである。生 き ることはただひたす らに神 を信 じて与 えられた苦難 を耐 え忍ぶ ことだ とす る母親の人生観 が一方 に あるとすれば

,ま

た一方 には人生 とは暴力以外の何 もので もな く

,生

きることはす なわ ち無限 に傷 つけられ血 を流 しつづけることで しかないのだ とい うクレアの人生観 がある。 そ してふた りのあい だに横 たわるこの違 いは最後 まで消 えることがないのである。 クレアの こ うした姿 はオブライエ ン の女性主人公たちの多 くに共通 してみ られる性格であるといえる。彼女 た ちは強靭 な意志 をもって 積極的 に人生 を切 り開いてい くのではな くて

,人

生の現実に出会 うたびに激 しく傷つ け られ

,も

っ ぱ ら敗北主義的 に自己を後退 させてい くのである。オブライエ ンの小説世界の特徴のひとつ として やは りこの脆 さ

,傷

つ きやす さ (vulnerability)を 指摘 しておかねば ならない。

(6)

108 坊」 は る 子

母 な るものへの権憬

ords'は

ク レアが空港 で母親 を見送 るつ ぎの よ うな場 面で おわってい る。

At the barrier they kissed, their damp cheeks tOuched and stayed for a second like

that, each registering the other's sOrrOw. `I'11 、vrite tO you, I'll write Oftenerデ

Claire said, and fOr a few minutes she stOOd there waving,

veeping, not aware

that the visit was over and that she cOuld go back to her own life no、 v, such as

it was.(6) 母 も娘 も互 いの あいだ に横 た わる断絶 を埋 め ることもで きず に別 れてい くこ とに深 い悲 しみ と失望 を感 じて い る。母 は 自分 た ちの理解 を越 えた世 界 でひ と り孤 立 し自分 を恨 みつ づ け る娘 を悲 しみ, また娘 はつ いに理 解 しえない ままに去 ってい く母 に涙 を流 しつづ け る。 ク レア に とって母 の訪 間 が 終 った こ とは

,必

ず しも母 との軋繋 の終 わ りを意味 しない。 それはむ しろ

,よ

り痛切 な悲 しみの始 ま りなので ある。 なぜ な らば ク レアは母 へ の失望 や怒 りや恨み をひ きず りなが らも

,そ

の一方 では 母 の愛 と優 しさに飢 えてい るか らで ある。 愛 の飢 渇 の苦 しみはオブ ライエ ンの そもそ もの出発点 か ら認 め られ るもの で あ る。 自伝 的色彩 が 濃 い とされ るTん9 CοvηιT♂ Gテ″

JSに

おいては

,主

人 公のケ イ トが14歳 の夏 に母親 は湖 で瘍死 する。 ちなみ にオブ ライエ ン自身の母 は

Grace Eckleyの

報 告 に もあ るよ うにい まだ健 在 で ある♂

)む

ろ ん作者 と主人公 とを同一視 す ることにそ もそ もの問題 が あるに して も

,な

によ りも興味 ふ かいのは 母 親 を喪 われた もの

,三

度 と触 れ あ うことので きない もの と して設定 してい る点 で あ る。喪失 感 に 悩 むケ イ トは凍 りつ くよ うな孤 独 の なかで

,心

の空洞 を うめて くれ るもの を求 め てあが く。 だ が彼 女 は深 い愛情 によって結 ばれて いた幼 ない ころの母 との あの一体 感 を

,三

度 と再 び回復 す ることは ないの で ある。

ここで最新 の短編集 Ttt RttαT2,η

g(1982)に

収録 されてい る

`My Mother's MOther'に

ふ れ てお きた い。母 の母 とい えば通 常

grandmOtherで

あ るわけだ が

,こ

の作 品 は必 ず しも主 人 公 の祖 母 につ いて語 った ものではない。 む しろ king's king(「 工 のなかの王」「最 高の王」

)の

意 味合 い に ちか く

,あ

えて

`My'と

い う所有格 をつ けてい るの も「私 にとっての最 高 の母 」 の意味 で あろ うと 理解 され る。荒筋 を紹介 す れば

,夏

休 み に母 の実家 に遊 び にいった主人公 が田舎 での もの珍 しい生 活 を楽 しみなが らも

,母

のいない毎 日を寂 しくおもい

,母

が迎 えに来 て くれる日を心待 ちに してい る。 ところが約束 の 日に母親 が現 われ なかったため に我慢 しきれな くなった主人公 は

,内

緒 で家 に帰 っ て しま う。祖母 にことわ りも しないで帰 って きた娘 を母 は厳 しく叱 る。母 の叱噴 を うけなが ら主人

(7)

エ ドナ 。オブライエ ン試論

(1)109

公 はつ ぎの よ うに思 うので あ る。

Sitting there l bOth 、vanted tO be in our hOuse and to be back in my grandmother's

missing my mother. It was as if l cOuld taste my pain better away from her,

the excruciating pain that told me how much l loved her. I thOught hOw much I

needed tO be withOut her sO that l cOuld think Of her, dwe11 0n her, and fashion her intO the pe」ect person that she clearly was not.(8)

ここには母 へ の思慕 の情 が悲痛 な調子 で語 られてい る。幼 ない主人公 は `痛

'を

おぼ えるほ どに 母 を慕 い

,心

の なかにい る母 の面影 を追 い求め る。 だ がそれは永遠 に把 えることので きない幻影 な ので ある。現実 の母 に対 す ると き

,そ

こには思 い描 いていた母 とは まった く別 の母 が現 われ る。彼 女の希 求す る母 は

,現

実 の母 か ら離 れた ところに しか存在 しえないのである。彼方 に存在 す る人 間, いい か えれば不在 の人 間 に対 す る憧 憬

,思

慕 が オ ブ ライエ ンの母親像 の根底 にはあ るとい え る。換 言す るな らば,「 不在」 あるいは「喪失」の痛 み とい うかた ちで しか

,母

へ の愛 を確 認 しえない とい うこ とで あるの か も しれ ない。 ここにオブ ライエ ンの求 め る愛 が宿命的 に背魚 わ されてい る困難 さ が ある とい えるだ ろ う。 母 胎 へ の 回帰願望 それで は何 がオブ ライエ ンをして

,

この よ うに困難 な愛 の希求へ と駆 りたて るので あろ うか。 そ れは恐 らくオブ ライエ ン自身の なかにある喪失感 と深 い関 わ りが あるもの と考 え られ る。 オ ブ ライ エ ンに とって この世 に生 まれて きた その 日か ら

,

日々の生 活 は母 の胎 内での安寧 と静誰 か ら刻 々 と 遠 ざか って い くことにほ かな らない

,人

生 とは時 間 の なかで大切 な もの

,完

璧 で あった もの を茨 第 に失 ってい くことで しか ない といった感覚 が あ る。 それはい くつ かの作 品の なかに母 胎へ の回帰 願 望 とい うかた ちをとって顕 われてい る。 まず それ を直接 的 に語 った もの と して

,Nell Dunnと

の イ ンタヴューでの オブ ライエ ンのつ ぎの発 言 を引用 してお きたい。

...there is, there must be, in every man and every wOman the desire, the deep

primeval desire to go back to the womb. No、 v physically and technically really,...

a man partly and symbOlically achieves this when he goes into a woman. Hc gocs

in and becomes sunken and 10st in hero A

vOman never, ever approaches that

(8)

110

岩 は る 子 女 にはけ して到達 しえない安穏 な世界。オブライエ ンはその満 た されない願望 を

`The Mouth of

the Cave'(LO収

)と

い う作品で

,

きわめて象徴 的 に表 現 している。岬の別荘 に住 む主人公の 女性 が

,た

またま海 ぞいではな く山ぞいの道 をた どって村 に出よ うとしたとき

,通

りがかった洞屈 のなかでおそらく服 を着 よ うとして起 きあがった裸 の少女 を見 かける。彼女 は少女が別荘 をたずね て くれることを期待 して待 ちつづけるが

,少

女はついに現 われない。 その後

,幾

度 かあの山道 をた どってまた少女 に会 いたいとい う気持 に強 くかられるが

,主

人公はけ してそれを実行 に移 さない。 ス トー リー らしいもの もない把 えどころのない物語ではあるが

,こ

の作品 について

Grace Ecklcy

はつ ぎのよ うに考察 している。`Sincc only a man can enter the woman's cave,the title sym‐

bolizes both the woman's physiology and the unfulfined desire。

'tOこ

の指摘の とうり, そ

こには論理化 しえない女性 の微妙 な心理 がみ られ

,何

か しら心満た されない気分

,女

であるがゆ え の諦めや哀 しみ といったものが象徴 されているよ うに思 われ る。 オブライエ ンがセ ックスを母親 の胎内への回帰 のための試み と考 えていることは明 らかで

,母

胎 への回帰願望は女性主人公たちの異性への愛のかなり本質的な部分 を占めている。一例 として

GMB

のなかのケイ トの ことばに注 目 したい。夫のユージンに突 き離 され拠 りどころを失 ったケイ トは, 行 きず りの男 との束の間の性 に慰 めを見出そ うとす るが

,そ

の期待 は無惨 に うち破 られる。ケイ ト は思いや りのかけ らもないよ うな男の腕 のなかで

,こ

んな思 いにとらわれ る。

She curled up, acconlmodating her body to fit into the hollow of his. She thought

ho、v nice if 、

vomen could become the ribs they once

vere, before God created

Eve. HOw gentle, how calm, how unheated, how dignified, to be simply a rib1 0ゆ

ここに認められるアダムの骨 になりたいとい う願望は

,先

に掲 げたような

,か

つて自分 が棲 んでいた 子宮の内部 に再び帰 りたい とい う欲求 と同 じく

,一

種 の退行願望のあ らわれである。 それは苛酷 な 現実 を逃 れて安全 と安逸 に身 をひた していたいとい う逃避願望 であるとい うこともで きる。先 に指 摘 したオブライエ ンの小説世界の特徴である脆 さ

,傷

つ きやす さと考 えあわせてみ るとき

,こ

のよ うな母親 の胎内 によせ る強い郷愁 も理解 に難 くない。主人公たちが母親 との血の結 びつ きに執着す る大 きな理 由は

,母

娘だけで形成 していた親密 な子宮内の 自閉的世界へ復帰 したいとい う願望 のた めであると考 えられる。母の胎内 こそカウト界の脅威 か ら身 を守 って くれる最 も信頼すべ き

,最

も平 和 な

,最

も安 らぐ場所だからである。その唯―の避難所への強 い憧憬 と

,そ

こに受け入 れて もらえ ないことへの失望 と悲嘆 とが

,母

に対す る愛 と憎 しみの感情 を形成 しているのである。

(9)

エ ドナ 。オブライエ ン試論

(1)111

母 な るもの の意味 しか しなが ら母 の愛 はすべ て を放 し受 け入 れて くれ る大 らかな愛 で あるとい うのは幻 想 にす ぎな い ともい えよ う。母親 はつね に懐 しい故郷 で あ リノス タル ジア をか きたててや まない もの とは限 ら ない。 オブ ライエ ンは確 かに母 の神 話 に魅 せ られてはい るものの

,他

方 で は母性愛 に ともな う否 定 的側 面 をも赤裸 々に描 きだ し相対化 してい る。母性 愛 の かげ に隠 された子 どもへ の支配欲

,所

有欲, そ して それ らの子 どもに及 ぼ す破壊 的作 用 を鋭 く凝祝 して い るので あ る。 たとえばケイ トの場合 をみ ると

,母

との関係 は三部 作 を通 じて次 第 に変化 してい くことがわかる彗〕 最初 の

CGに

お け る「 ママ に とって私 が世 界 じゅ うのすべ てで あった」 とい う文章 が物語 るよ うな 母 娘 の一体 関係 は

,

ま もな く母 の死 によって損 なわれ

,そ

の後 は徐 々 に変質 を余儀 なくされてい く。 喪失 感 に悩 むケ イ トは母 との一体 感 にかわ り うるもの を異性 の なか に求 め よ うとす るのだが

,そ

れ を母 へ の裏切 り行為 と感 じて「 良心 の痛 み」 をおぼ え る。 さ らに

GGEに

おいてユ ー ジ ンとの不倫 の恋 に走 る とき

,彼

女 は「 亡 き母 の涙 ぐんだ非 難 の眼 ざ し」 を感 じず にはい られない。 や がて正 式 に結婚 を して幸福 な新婚生 活 にあるときにも

,ケ

イ トは お そ ろ しく惨 めで不幸 だ った母親 の ことを 思 いだ して

,罪

悪 感 に似 た もの さえ抱 くの で あ る。 この よ うにケ イ トが幸福 をかみ しめ よ うとす る たび に

,

きまって亡母 の姿 が浮 かんで きては彼女 を後 ろめたい気持 に させ る。母 は まるで幸福 へ の ブ レー キの よ うで さえある。 そ うした母 に対 す る見方 が一変 す るのは

,ケ

イ トが母 の愛 に不信 を抱 いた瞬 間 か らで ある。 自己犠 牲 その もの と信 じて疑 わなかった母 の愛 が

,

じつ は 自己愛 に発 す る き わめて利 己主義的 なもので あ ることを知 った と き

,ケ

イ トは母 に対 して烈 しい嫌悪 をおぼ える。 そ の際 の ケ イ トの心 の変化 がつ ぎの よ うに描 かれてい る。

Now suddenly she saw that woman in a different light. A self‐ appointed martyr.

A black‐mailer. SとJιcんJη

g

とん9 cοTE うαcん οηo SInothering her One child in loath‐

some,sponge‐

soft,pamper love.10 (イ

タ リック体筆者)

優 しく包み こむよ うだった母の愛 も

,い

まは自分 を窒息 させ るうとましい ものに感 じられ

,そ

の場

愛は自分 を所有 し支配す るための狡猾 な手段 であったかのよ うに思 われて くる。 自己犠牲 もひ とり

で勝手 にきめこんだ殉教者気 どりであって

,子

どもをその悲惨 な生活 に巻 きこんだことに対 して許

しがたい怒 りをおぼ えるのである。 ところでこの引用で注意 してお きたいのは `cord' とい う語 で

ある。 この文脈では

,そ

れはいうまでもなく

`an umbilical cord'す

なわち「へ その緒」 を意味 し

てお り

,

したがってこの文章 は

,自

分 が産 んだ娘 との血 の繋 が りを再 び回復 しようとす る母親 の支

(10)

112

岩 は る 子 とい う意味 ば か りで な く

,よ

り重 い根 源的 な「血 の繁 が り」 ひいては「 呪縛」 とい った象徴 的 な意 味 まで こめ られていた わけで あ る。 ここにおいて母性愛 は凄 ま じい執念 を露 わに し

,優

しい包容 力 も暴 力的 な支酉己力へ と変貌 してい く。 つづ いて主人公 が母親 で ある場 合 の母性愛 をみてみたい。オブライエ ンは

G″

Bや

42g"sι

Jd

α Vテc鹿

,Mο

所ん(1964)さ らに デοttη

yに

おいて

,そ

れ ぞれの主 人公 で あるケ イ ト

,エ

レン

,ノ

ー ラを一児 の母 と して設定 してい る。 そ こに共通 してみ られ るのは「母 にな りきれ ない女 の姿」 で あ る。 た とえばケイ トは息子 を湯 愛 しなが らも

,満

た され ない想 い を抱 えて情 事 の相 手 の もとに急 ぐ 自分 を抑 えるこ とがで きない女性 で あ る。夫ユ ー ジ ンの非難 の こ とば を待 つ まで もな く

,ケ

イ ト自 身 が 自分 の なか に潜 むエ ゴイズ ム を苦 い気持 で認 めてい る。 す なわ ち最 も大切 なのはつね に自分 で あって

,他

の人 間 二一 子 どもをも含 めて一― に対 して思 いや りをもつ ことので きない 自分 に自己嫌 悪 を感 じてい るの で あ る。母性愛 の ひ とつの特性 で あ るはずの無私 の愛 も

,ケ

イ トとエ レンの満 た され ない 自我 の意識 の前 には発 現 しえない。女 と しての彼 女 た ち自身 が感 じてい る愛 の渇 きは

,母

と して子 どもに愛 を注 ぐことによって癒 され るものでは ない し

,ま

た その愛 も糸屯粋 に利他的 な母性 愛 とは似 もつ か ない もの になって しま うのであ る。 以上 の よ うな点 か らみ るな らば

,完

全 な る母性 愛 な どひ とつの幻想 にす ぎない ものの よ うに思 わ れて くる。 あるいはす で に指摘 した よ うに

,強

い'瞳憬 が生 み だす非現 実 の もの とい わ ざる をえない よ うで あ る。 オブ ライエ ンは一方 で こ うした母性愛 の困難 を描 きなが ら

,他

方 では その愛 の理 想 を 追 いつづ けて ぃ るわけで あ る。 そ うしたいわば 自己矛盾 を抱 えつつ夢 をみ ることの背景 には

,た

と え幻想 の愛 であ ろ うとも

,そ

れへ の希求 がな くては 自 らの生 を支 えてい くことがで きないとい う現実 が あるので ある。 オブ ライエ ンの主人公 た ちの愛 の成就 を妨 げて い るものは

,ひ

とつ には外 な らぬ 彼女 た ち自身のエ ゴイズムで あ るとい うことはい えよ う。彼 女 た ちは激 しく愛 を求 め なが らも

,自

らが愛 を与 えることを知 らない。 自分 ひ と りの感情 にのみ こだ わ り

,相

手 もまた 自分 と同 じよ うに 孤独 に悩 み

,他

者 に愛 され るこ と を必要 と してい る人 間で あることに思 いが及 ば ないので ある。 だ が翻 ってい うな らば

,そ

れほ どまで に彼 女 た ちが愛 に飢 えてい るとい うことなので あ り

,自

己充足 か らはほ ど遠 い現実 の証左 にほ かな らないので あ る。 む す び 最後 にオブライエ ンの最新の長編小説 」oんη2υ にふれてお きたい。ここでは主人公のノーラの中 でふたつの問題 一一 母 との軋礫 と息子への愛執―― が平行 して展開 されている。つまり母 との関係 と子 どもとの関係 とい うこれまでのテーマが

,こ

の作品では同時 に取 りあげ られているのである。 まずノーラにとって母 は「 自分のなかに巣食い

,脱

ぎ捨 てることので きない存在」 となってお り,

(11)

エ ドナ・ オブ ライエ ン試論

(1)■

3 娘 がほ かの人 間 に愛情 をむけよ うとす ると「蛇 の よ うに陰険 に」 じゃ ま を し

,幸

福 をつ か も うとす る娘 にいつ も無 力感 をおぼ え させ る存在 で あ る。男へ の愛 が成就 しないの も

,ひ

とつ には この母 の 嫉妬 の ためで あるとさえ主人 公 は感 じ,「 殺 してや りたい」 とまで思 っている。だ がそ うした母 を彼 女 は同時 に

,こ

の世 の誰 よ りも愛 し慕 って きたので ある。 ノー ラの中 には この母 か ら「離 れたい気 持 」 と「離 れた くない気持 」 との背反す る感情 が混在 し

,母

に対 す る愛 と憎 しみ が同程度 の激 しさ で渦 まいてい る。 そ うした ノー ラが実 りな き男 との愛 の果 て に

,ま

た愛憎 の絡 み あ う母 へ の思 い を 離 れ て求 め るのは

,息

子 との近 親相 姦 の夢 で あ る。男一般 あるいは母 との関係 では得 ることので き ない

,息

子 との完 全 な一体 感へ の渇望 を

,ノ

ー ラはつ ぎの よ うに語 って い る。

Oh to be 10ved by him. Incest raising its little tonsured head. It must be the nearest thing to bittth, tO cOuple with One's Own, to reunite.10

我 が子 との一体 感 を取 り戻 した い とい う心理 は

,先

に引用 した

G ArB(注 13)の

母 親 の心理 と酷似 した もの がある。近親相 姦 とい えば かな り衝 撃的 に響 くが

,オ

ブ ライエ ンの愛 の追 求 の過程 でみ る な らば

,他

者 との完 全 な る融合 とい う理 念 が もっ とも突 きつめ られた形 で形 象化 されてい るよ うに 思 われ る。現実の ノー ラは息子へ の愛 の代償行為 と して

,息

子 の友 人ハ ー トとの恋 にのめ りこんで い くの だが

,そ

れは結局

,成

就 す るこ とな くハ ー トの殺害 とい う破 壊行為 で幕 を閉 じる。 オ ブライ エ ンが一貫 して求 めつづ けて きた完璧 な愛

,他

者 との一体化 の夢 は

,こ

の作 品 において も実現 され ない ま まに終 ってい るので あ る。 しか し何 よ りも注 目すべ きこ とは

,ォ

ブ ライエ ンの愛 の対象 がだれで あ るにせ よ

,終

始一 貫 して 他 者 との完全 なる融合 を志 向 して いた とい う点 で ある。 そ してその他 者 との一体化へ の願望 の基底 にオブ ライエ ンの母胎へ の回ll■願望 が横 た わって い ることを本論 では論 じて きた わけで あ る。 オブ ライエ ンにとって母 の胎 内の安寧 と静誰 こそが愛 の理想郷 なので あ り

,そ

こに彼女 の求 め る愛 の原 型 が存在 す る。 その愛 の遍歴 が じつ は母 の愛 を求 めての紡雀 で あった とい って もよいだ ろ う。 しか し母月台へ の回帰 はけ して実現 され えない もので あ り

,そ

のためオ ブ ライエ ンの愛 の旅 は絶望 的 な も の とな らざるをえない。 オブ ライエ ンの描 くさま ざまな愛 の過程 に必然的 に伴 って あ らわれて くる 愛憎併存 は

,

こ うした根源的 な矛盾 を抱 えてい るか らにほかな らない。 オブ ライエ ンの愛 の希求は そ もそ もか ら自己矛盾 を内包 し

,絶

望 を運命 づ け られているので ある。

(12)

114

は る 子 注

ll)VOれ

をT rTIJ助ぁ『ゎが母 なるアイルラン ド』 岩上は る子訳

,あ

りえす書房

,1985年

6 (2)`Cords'(T/Jθ Loυ9 9"θ

c'収

)p.115,以

下テタス トはペ ンギ ン版 を使用。 (3) rb,げ1, p. 125 (4) fb,,., p. 127 (5) rb,'i, p・ 118 (6) rb,ユ., p. 130

(7)GFaCe Eckley, E」aα O'BT'92(IFiSh Writers Series), Buckncll University Press, U.S.A, 1974,

p. 14

18)(My Mother's Mother'(Ttt R?彦 ,TttTDg収録

),p.40

(9)Gracc Eckley, op. ε力t, p.130

11ol rblJ., p. 130 仕け G,T′ s tt ι鹿 'T″ 9TT,9,BJ'ss,p.150

19『

わが母なるアイルラン 脱 解説

pp.173173に

おいて詳述 したので

,こ

こでは結論のみ簡単に記す.。

l131 cMB,p.123

10 J9協

叩 r ttαTJを 」晩9ψ 【鶴. p,17

(13)

エ ドナ 。オブライエ ン試論(1)

An Essay on Edna O'Brien(1)

一 A Longing for the Mother一――

Edna O'Brien reveals an ambivalent feeling to、 vard her own country in Лr。ォん9T rTcどαη,, lvhich starts like thisi “Countries are either mothers or fathers, and engender the emotional bristle se・ cretly reserved for either sirel' As the word `emotional bristle' suggests, Ireland is deeply rooted in O'Brien, continually obsessing her. She is unable to keep aloof emotionally frOm the place LI・ hich gave birth to her and brOught her up.

The same thing could be said about O'Brien's attitude tolvard her mother. The love‐ hate rela‐ tionship bet、veen a mother and a daughter can be seen in most of her 、vorks Kate, lvho lost her mother in an accident at the age of fourteen, searches for the image of her mother even though she loathes and fears her mother's possessive and suffocating love. In a sense, Kate seeks men to fill a void left by her mother's death. Kate expects men to love and prOtect her from the outside 、vorld just as her mother did.

`COrdsI One Of O'Brien's short stories collected in Tん ぞLου9 0bブ9cι, depicts the intense con‐ flicts between the daughter Claire and her elderly mothero Claire lives alone in LondOn like a Bo・ hemian resenting the religiousness, narro、 vness, and exclusiveness of her mother and the country she represents Still, at the bottom of her heart, Claire cagerly seeks aFter her mother's love. The

title “Cords" itself implies the bOnd of blood as in `an umbilical cord,' thus suggesting the strong attachment of Claire tO her mother. In 」。ん2彎 r ttαT,ヵ 【20,レ y。2, the heroine Nora sho、vs cOn‐

tradictOry feelings toward her mother. Shc also holds an ardent desire to be united 、vith her o、 vn

son,

lost Of the herOines in O'Brien's novels have a keen desire for 10ve. They suffer from an un・ bearable s。litude and seek men 、vhO 、vill hold them body and sOul. They dream of being in men's armS iust hke an infant nesthng in its mother's bosom. Behind this aspiration hes O'Brien's `」onah comlex,' a desire to go back into the womb of one's mother. The serene and peaceful lvorld inside the mOther is the ideal land O'Brien has been pursuing. This paper discusses Edna O'Brien's longing for the mother 、vhich underlies variOus kind of 10ve that appear in her 、vOrks.

参照

関連したドキュメント

Q3-3 父母と一緒に生活していますが、祖母と養子縁組をしています(祖父は既に死 亡) 。しかし、祖母は認知症のため意思の疎通が困難な状況です。

森 狙仙は猿を描かせれば右に出るものが ないといわれ、当時大人気のアーティス トでした。母猿は滝の姿を見ながら、顔に

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o

また自分で育てようとした母親達にとっても、女性が働く職場が限られていた当時の

親子で美容院にい くことが念願の夢 だった母。スタッフ とのふれあいや、心 遣いが嬉しくて、涙 が溢れて止まらな

としても極少数である︒そしてこのような区分は困難で相対的かつ不明確な区分となりがちである︒したがってその

○安井会長 ありがとうございました。.