セラミックスで囲まれた部屋の遠赤外線放射効果
-GAINA 塗布膜の1次元非定常伝熱解析-
2016 年 9 月 17 日(10 月 14 日加筆) 西村 二郎 1.まえがき 天井、壁(好ましくは床も)がセラミックスでできている部屋でエアコンを使うことを考 えてみよう(図 1 参照)。セラミックス層が薄く(したがって比熱が小さい)しかもそれに続 く層の伝導熱伝達がセラミックス層対比で著しく小さい場合、セラミックス層の表面温度 は速やかにエアコンの設定温度に近付く。そしてセラミックスの遠赤外線放射率が高いと いう性質により、その温度からの熱気 (または冷気)が効果的に居住者に放射されてくる。 したがって、エアコンの設定温度を省エネ側に変更することが可能となるだろう。 図 1 セラミックスに囲まれた部屋の構成 図 2 GAINA 塗膜の構成 GAINA はただ塗るだけで、このようなイメージを実現してくれそうな塗料である。図 2 は GAINA 塗膜の断面写真である。塗膜の最外殻(セラミックス)の熱伝導に比してその内側(静 止空気層を含んだセラミックス球体の高密度分散系)の熱伝導は小さいので、近似的に断熱 層と仮定して解析を進める。ことの本質は外していないと思われる。 2.GAINA 塗布膜(最外殻)の熱解析 GAINA 塗膜最外殻における非定常伝熱方程式は(1)式で与えられる。 2 2x
t
∂
∂
=
∂
∂
θ
κ
θ
・・・(1) (1)式に変数分離の解を仮定すると、次式が得られる。ただし、κは GAINA 最外殻を構成 しているセラミックス層の熱拡散率、λは熱伝導率、lは層の厚みである。また、hを室 内の対流熱伝達率、θRをエアコンの設定温度とした。エアコンからは設定温度の空気が噴 出すものとすれば室温でもある。∑
∞+
+
−
+
=
1 2)
exp(
)
sin
cos
(
)
,
(
t
x
A
nω
nx
B
nω
nx
κω
nt
C
Dx
θ
・・・(2).境界条件:
(
,
0
)
{
(
,
0
)
}
(
,
)
=
0
∂
∂
−
=
∂
∂
x
l
t
t
h
x
t
Rθ
θ
θ
θ
λ
;;;;
・・・(3)、よりl
hl
l
D
C
l
A
B
n n R n n nω
λ
ω
θ
ω
0
tan
1
tan
=
=
=
=
;
;
;
・・・(4)、となるから、(
)
・・・( ,
5
)
ここで、
exp
sin
1
cos
)
,
(
1 2∑
∞+
−
⎟
⎟
⎠
⎞
⎜
⎜
⎝
⎛
+
=
n n R n n nx
t
l
hl
x
A
x
t
ω
κω
θ
ω
λ
ω
θ
GAINA 最外 殻の熱抵抗は隣接する GAINA 塗膜の熱抵抗の数千分の 1 であることを付記しておく。 初期条件:θ
(
0
,
x
)
=
f
(
x
)
=
θ
0 ・・・(6)、とおくと、x
l
hl
x
x
x
A
n n n n R n nω
ω
λ
ω
ξ
θ
θ
ξ
(
)
0(
)
cos
1
sin
1+
=
−
=
∑
∞;
・・・(6) となる。ここで
)
(
x
nξ
は、(4)式で定まる固有値に対応する固有関数である。 固有関数の直交性によりA
n は次式によって定まる。(
)
∫
l n=
∫
l−
R n nx
dx
x
dx
A
0 0 0 2)
(
)
(
θ
θ
ξ
ξ
・・・(7)、すなわち(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
).
8
(
cos
1
2
1
)
(
2
2 2 2 2 2 2 2 2 0・・・
l
l
l
l
l
l
A
n n n n n n R nω
ω
α
ω
α
ω
α
ω
α
ω
α
θ
θ
⎭
⎬
⎫
⎩
⎨
⎧
+
−
+
+
−
=
ただしλ
α
=
hl
とおいた。l
nω
は 次のようにして求める:n
=
1
の場合、ω
1l
≪1 ならば、(4)式より、≒
0.5 1(
/
λ
)
ω
l
hl
となるが、h
=
10
kcal
/
hr
/
m
2/
deg
;
λ
=
1
.
4
kcal
/
hr
/
m
/
deg
;m
l
=
1
×
10
−6 とすると、 0.5 310
70
.
2
)
/
(
hl
λ
=
×
− ≪1となるから、この値が使える。2
≥
n
の場合は、ω
n≒
( −
n
1
)
π
である。したがって、(8)式は次のようになる。
(
)
⎥
⎦
⎤
⎢
⎣
⎡
⎭
⎬
⎫
⎩
⎨
⎧
−
+
−
+
−
+
−
−
≥
−
2 2 2 2 2 2 2 0 0 1)
1
(
1
2
)
1
(
1
)
1
(
2
)
2
(
π
α
α
π
α
π
α
θ
θ
θ
θ
n
n
n
n
A
A
R n R;
≒
≒
・・・(9). 内壁の表面温度(GAINA 最外殻の表面温度)の経時変化は次のように近似される。重要なの は第1項( )
A
1 である。(
)
(
t
)
t
S R R 2 1 0exp
)
0
,
(
θ
θ
θ
θ
κω
θ
=
≒
+
−
−
・・・(9). 上式において、θ0-θR>0 ならば冷房、<0 ならば暖房運転時を意味している。 3.具体的評価 (9)式はκ
=
2
×
10
−3m /
2hr
(セラミックスの熱拡散率?)とすれば、(10)式が得られる。⎟
⎠
⎞
⎜
⎝
⎛
−
=
−
−
25
.
0
exp
0t
R R Sθ
θ
θ
θ
・・・(10a) または、⎟
⎠
⎞
⎜
⎝
⎛
−
−
=
−
−
25
.
0
exp
1
0 0t
R Sθ
θ
θ
θ
・・・(10b). ただし、この式における時間の尺度は sec 表示とした。 (10b)式をグラフで表せば図 3 のようになる。 図 3 GAINA 表面温度の目標値への到達時間 4.遠赤外線放射効果 遠赤外線効果を論じる場合、居住者の影響を考慮に入れなければならない。いま、衣服 を着た人の平均的表面温度を夏季 32℃、冬季 25℃とすると成人男女平均の放射熱量は差し 引き 50 W/人程度である。エアコンの出力に対して小さいので無視することにする。 熱のやりとりとして、部屋の居住者には雰囲気からの対流熱伝達の他、壁面・天井面等 からの放射熱伝達がある。対流熱伝達量、放射熱伝達量は居住者を1
人としてそれぞれ次の ように表される。(
R M)
M Ch
S
Q
=
θ −
θ
・・・(11a)(
W M)
WM W r
T
T
S
Q
4 4−
=
ε
ε
βσ
・・・(11b)、ただし、β
は壁面等から居住者への放射 熱伝達に関わる形態係数である。 また、h
,
θ
R,
θ
M,
T
W,
T
M,
S
W,S
M,
ε
W,
ε
M,
σ
は、対流熱伝 達率、室温(エアコンの設定温度)、居住者の平均的表面温度、壁面等の絶体温度、居住者 表面の平均的絶体温度、壁面等の表面積、居住者の表面積(成人男女の平均)、壁面等の放 射率、居住者表面の放射率、Stefan −
Boltzmann
の定数である。 さて、壁面温度のエアコン設定温度への追従が遅い場合(*なる Suffix をつけて表示)、 准定常状態とみなし、その影響をエアコンの設定温度により補償するものとすれば次式が なりたつ。 * * r C r C
Q
Q
Q
Q
+
=
+
すなわち(
R M)
S
M W M(
T
WT
M)
S
Wh
(
R M)
S
M W M(
T
WT
M)
S
Wh
θ
−
θ
+
ε
ε
βσ
4−
4=
θ
*−
θ
+
ε
*ε
βσ
*4−
4 ・・・(12)、 において、形態係数を、β
=
S /
MS
W とすると次式が得られる。(
)
(
)
{
4 4 * *4 4}
・・・(13)
* M W W M W W M R RT
T
T
T
h
−
−
−
+
=
θ
ε
σ
ε
ε
θ
. この場合、居住者が図 4 のように閉空間に居れば、壁面等(床面も含む)への形態係数は 1となる。このとき、壁面から居住者への形態係数はS /
MS
W となり、(12)式においては 相殺されることに留意したい。厳密に言えば、床面には GAINA は塗られていない。また窓 の存在も無視している。なお、壁面等の表面も居住者表面も完全黒体ではないので、平行 平板の場合に倣ってε
Wε
M を乗じた。 図 4 閉空間における居住者(壁面等から居住者への形態係数は表面積比となる)、
、
、
夏季 冬季T
M=
298
K
(
)
302
K
(
)
ε
W=
ε
W*=
ε
M=
0
.
95
σ
=
4
.
88
×
10
−8kcal
/
m
2/
hr
/
K
とすると、与えられた壁面温度と設定温度には図 5 のような関係がある。 図 5 壁面温度とエアコンの設定温度の関係 5.考察 エアコンの場合、設定を 1deg 省エネ側に設定すれば、大まかにみて 10%の省エネにな ると言われている。ここでの検討結果 は断熱構造と壁面の遠赤外線放射率に関する問題提起である。このような視点での検討は過去にありそうでなかったのではないだろうか? GAINA 最外殻の平均厚みを1ミクロンと仮定したことにより、比熱が異常に小さくなって いる。したがって居住者の存在等、負荷が掛かれば直ぐに冷める(あるいは温まる)と考え る人もいるだろう。そうではない。暖気(冷気)はエアコン等から供給され、GAINA が即応答 するから問題はないと考えられる。また、最外殻の外側には断熱材があるが、ここで仮定 したような完全な断熱ではない。したがって、熱は断熱材→建物構造材→外気へと徐々に 外側に伝わっていく。最外殻の温度は GAINA を塗布していない場合対比、夏は低く冬は高 くなるのだから、設定温度を省エネ側に調節したとしても、熱の出入りはストレートに省 エネサイドになるとは言い難い。しかし、体感温度が快適になることにより、エアコンの 設定温度を省エネサイドにすることの方が省エネ効果は大きいのである。 参考のため、10cm 厚みのコンクリート住宅の時定数を求めてみよう。この解析手法が成 り立つためにコンクリート壁の外側に断熱材があるものとすると、
3
.
5
10
−3m /
2hr
×
=
κ
と して、4.9 時間となる。このような部屋では、エアコンを運転する直前の壁温は設定温度と かなりの乖離があるのが普通であり、しかも壁温の上昇/下降に時間が掛かる。したがって 部屋の壁からの放射効果は期待できず、エアコンの冷気(暖気)で直接、躯を冷やす(温める) ことに頼らざるを得ない。 コンクリートの内壁に断熱材があり、その表面に在来塗料が塗ってある場合は、GAINA の 場合に近付く。ただし、設定温度への追随速度が GAINA ほど速くはないことおよび遠赤外 線領域における放射率の違いが差となる。仮にε
W*=
0
.
8
とすると、GAINA 対比 1deg の設定 温度変更が必要となるのは、θ
W*>
28
.
5
℃(夏季); <16.3℃(冬季)の場合であると試算される。 なお、居住者の存在、部屋の大きさの影響が陽に出てきていないのは、発熱源としての 居住者の影響を無視しているためと考えられる。 壁面温度とエアコンの設定温度の関係を推算したが、定式化が困難な複雑性がある上、 データ不足もあり大胆な仮定を用いざるを得なかった。が、その割りに合理的な値が得ら れた。定量性はともかく、考え方は正しいと思われる。すなわち、建物の内壁に断熱材を 張り、その上に比熱が小さく、熱拡散率が大きくて遠赤外線領域の放射率の高い塗料(つま り GAINA)を塗るべきである。屋根や外壁に塗布したときの直射日光の劇的な遮熱効果を考 慮にいれると、断熱材は内壁側に集中設置し、外壁には GAINA(それも N-95)を塗装すべき である、と言えよう。 6.あとがき GAINA のカタログには、内装の場合の冷暖房に与える効用として図 6 のような説明がなさ れている。GAINA の遮熱メカニズムの説明についても。参考のような説明がなされている。 このレポートは、化学工学屋らしく、その根拠を説明しようとすれば、こうなるであろう というものである。図 6 GAINA の内装効果(カタログより抜粋)
(参考:GAINA の遮熱メカニズムの説明)
※)理に叶った 説 明 と い え る だろうか?