平成27年7月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成●●年(○○)第●●号 修正申告に伴う延滞税課税処分取消請求事件 口頭弁論終結日 平成27年5月18日 判 決 原告 X 被告 国 (処分行政庁 札幌西税務署長) 主 文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 札幌西税務署長が、平成25年3月27日付けで原告に対してした原告の平 成21年分、同22年分及び同23年分の所得税に係る延滞税の各督促処分を いずれも取り消す。 第2 事案の概要 本件は、原告が、平成21年分ないし同23年分(以下「本件各年分」とい う。)の老齢基礎年金及び老齢厚生年金(以下「本件各年金」という。)を一 括で受給し、本件各年金を本件各年分の雑所得とする所得税の修正申告を行っ て、当該修正申告により納付すべきこととなった所得税を納付したところ、札 幌西税務署長(以下「処分行政庁」という。)において、前記所得税に係る延 滞税(以下「本件各延滞税」という。)の納付も要するとして、平成25年3 月27日付け督促状を発付して本件各延滞税の納付を督促したところ(以下「本
件各督促処分」という。)、原告が、本件各延滞税の納付義務を争い、本件各 督促処分の取消しを求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より認められる事実) (1) 原告は、平成●年●月●日の満了により、満65歳に達し、同年9月分 以降、本件各年金の給付を受ける権利を取得したが、当初は66歳以降に 受給を繰り下げ、繰下げ加算による増額を受けることを予定して、本件各 年金の給付を受けるための裁定請求を行わなかった。 (2) 原告は、前記予定を変更して、繰下げ受給を受けるのではなく、本来支 給を受けられる増額のない年金を遡って受給することとし、平成24年8 月16日、「国民年金・厚生年金保険老齢基礎厚生年金請求書(65歳支 給)」を提出して、厚生労働大臣に対し、本件各年金の給付裁定の請求を 行った。 (3) 厚生労働大臣は、同年8月24日、原告の裁定請求に係る裁定を行い、 当該裁定に基づいて、原告に対し、同年10月15日、平成21年分21 9万2592円、平成22年分219万2592円及び平成23年分21 8万8664円(本件各年分の本件各年金)を支給した。 (4) 原告は、平成25年1月28日、処分行政庁に対し、本件各年金を本件 各年分の雑所得とする本件各年分の所得税の修正申告を行った。 (5) 原告は、平成25年1月30日、前記(4)の修正申告により納付すべ きこととなった平成21年分の所得税13万5600円、平成22年分の 所得税13万5100円及び平成23年分の所得税3万5800円を納付 した。 (6) 処分行政庁は、平成25年3月27日、原告が前記(5)の所得税額に 係る平成21年分の延滞税5600円、平成22年分の延滞税5600円 及び平成23年分の延滞税1100円(本件各延滞税)を納付していない として、同日付けで、原告に対し、本件各延滞税に係る督促状を発付した
(本件各督促処分)。 (7) 原告は、平成25年5月14日、本件各督促処分に対する異議申立てを したが、処分行政庁は、同年6月25日付けで、前記各異議申立てを棄却 する旨の決定をし、原告は、同年7月4日、国税不服審判所長に対して審 査請求をしたが、同審判所長は、平成26年3月26日付けで、前記各審 査請求を棄却する旨の裁決をした。 2 関係法令の定め (1) 所得税法 ア 35条2項 雑所得の金額は、次の各号に掲げる金額の合計額とする。 1号 その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除 した残額(略) イ 36条1項 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入 金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において 収入すべき金額(中略)とする。 (2) 国税通則法(以下「通則法」という。) ア 2条8号 法定納期限 国税に関する法律の規定により国税を納付すべき期限(中 略)をいう。(略) イ 15条3項 納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確 定する国税は、次に掲げる国税とする。 (中略) 6号 延滞税及び利子税 ウ 35条2項
次の各号に掲げる金額に相当する国税の納税者は、その国税を当該各号 に掲げる日(中略)までに国に納付しなければならない。 1号 期限後申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載し た税額又は修正申告書に記載した第19条第4項第3号(修正申告 により納付すべき税額)に掲げる金額(その修正申告書の提出によ り納付すべき税額が新たにあることとなった場合には、当該納付す べき税額) その期限後申告書又は修正申告書を提出した日(略) エ 37条1項 納税者がその国税を第35条(中略)の納期限(中略)までに完納しな い場合には、税務署長は、(中略)その納税者に対し、督促状によりその 納付を督促しなければならない。(略) オ 60条 (ア) 1項 納税者は、次の各号の1に該当するときは、延滞税を納付しなけれ ばならない。 (中略) 2号 期限後申告書若しくは修正申告書を提出し(中略)た場合に おいて、第35条第2項(期限後申告等による納付)の規定に より納付すべき国税があるとき。 (イ) 2項 延滞税の額は、前項各号に規定する国税の法定納期限(中略)の翌 日からその国税を完納する日までの期間の日数に応じ、その未納の税 額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額とする。(略) (ウ) 3項 第1項の納税者は、延滞税をその額の計算の基礎となる国税にあわ せて納付しなければならない。
カ 61条1項 修正申告書(中略)の提出又は更正(中略)があった場合において、次 の各号の1に該当するときは、当該申告書の提出又は更正により納付すべ き国税については、前条第2項に規定する期間から当該各号に掲げる期間 を控除して、同項の規定を適用する。 1号 その申告又は更正に係る国税について期限内申告書が提出され ている場合において、その法定申告期限から1年を経過する日後に 当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せ られたとき。 その法定申告期限から1年を経過する日の翌日から 当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せ られた日までの期間(略) キ 63条6項 国税局長、税務署長及び税関長は、次の各号のいずれかに該当する場合 には、当該各号に規定する国税に係る延滞税(中略)につき、当該各号に 掲げる期間に対応する部分の金額を限度として、免除することができる。 1号 第55条第3項(納付委託)(中略)の規定による有価証券の取 立て及び国税の納付の再委託を受けた金融機関が当該有価証券の 取立てをすべき日後に当該国税の納付をした場合(略) 2号 納税貯蓄組合法(中略)第6条第1項(租税納付の委託)の規定 による国税の納付の委託を受けた同法第2条第2項(定義)に規定 する指定金融機関(中略)がその委託を受けた日後に当該国税の納 付をした場合(略) 3号 震災、風水害、火災その他これらに類する災害により、国税を納 付することができない事由が生じた場合(略) 4号 前3号のいずれかに該当する事実に類する事実が生じた場合で 政令で定める場合(略)
(3) 国税通則法施行令(以下「通則法施行令」という。) 26条の2 法63条第6項第4号(延滞税の免除ができる場合)に掲げる政令で定 める場合は、次の各号に掲げる場合とし、同号に掲げる政令で定める期間 は、それぞれ当該各号に掲げる期間とする。 (中略) 2号 火薬類の爆発、交通事故その他の人為による異常な災害又は事故に より、納付すべき税額の全部若しくは一部につき申告をすることがで きず、又は国税を納付することができない場合(その災害又は事故が 生じたことにつき納税者の責めに帰すべき事由がある場合を除く。) (略) (4) 国民年金法(以下「国年法」という。) ア 16条 給付を受ける権利は、その権利を有する者(中略)の請求に基いて、厚 生労働大臣が裁定する。 イ 18条 (ア) 1項 年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の 翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終るものとする。 (イ) 3項 年金給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6 期に、それぞれの前月までの分を支払う。(略) ウ 26条 老齢基礎年金は、保険料納付済期間又は保険料免除期間(中略)を有す る者が65歳に達したときに、その者に支給する。(略) エ 28条
(ア) 1項 老齢基礎年金の受給権を有する者であって66歳に達する前に当 該老齢基礎年金を請求していなかったものは、厚生労働大臣に当該老 齢基礎年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者 が65歳に達したときに、他の年金たる給付(中略)の受給権者であ ったとき、又は65歳に達した日から66歳に達した日までの間にお いて他の年金たる給付の受給権者となったときは、この限りでない。 (イ) 3項 第1項の申出をした者に対する老齢基礎年金の支給は、第18条1 項の規定にかかわらず、当該申出のあった日の属する月の翌月から始 めるものとする。 (ウ) 4項 第1項の申出をした者に支給する老齢基礎年金の額は、第27条の 規定にかかわらず、同条に定める額に政令で定める額を加算した額と する。 (5) 厚生年金保険法(平成24年8月22日号外法律第63号による改正前 のもの、以下「厚年法」という。) ア 33条 保険給付を受ける権利は、その権利を有する者(中略)の請求に基づい て、厚生労働大臣が裁定する。 イ 36条 (ア) 1項 年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、 権利が消滅した月で終るものとする。 (イ) 3項 年金は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、
それぞれその前月分までを支払う。(略) ウ 42条 老齢厚生年金は、被保険者期間を有する者が、次の各号のいずれにも該 当するに至ったときに、その者に支給する。 1号 65歳以上であること。 2号 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年 以上であること。 エ 44条の3 (ア) 1項 老齢厚生年金の受給権を有する者であってその受給権を取得した 日から起算して1年を経過した日(中略)前に当該老齢厚生年金を請 求していなかったものは、厚生労働大臣に当該老齢厚生年金の支給繰 下げの申出をすることができる。ただし、その者が当該老齢厚生年金 の受給権を取得したときに、他の年金たる保険給付、国民年金法によ る年金たる給付(中略)若しくは他の被用者年金各法による年金たる 給付(中略)の受給権者であったとき、又は当該老齢厚生年金の受給 権を取得した日から1年を経過した日までの間において他の年金た る保険給付、国民年金法による年金たる給付若しくは他の被用者年金 各法による年金たる給付の受給権者となったときは、この限りでない。 (イ) 3項 第1項の申出をした者に対する老齢厚生年金の支給は、第36条第 1項の規定にかかわらず、当該申出のあった月の翌月から始めるもの とする。 (ウ) 4項 第1項の申出をした者に支給する老齢厚生年金の額は、第43条第 1項及び第44条の規定にかかわらず、これらの規定により計算した
額に、老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月の前月までの被 保険者期間を基礎として第43条第1項の規定の例により計算した 額並びに第46条第1項及び第5項の規定の例により計算したその 支給を停止するものとされた額を勘案して政令で定める額を加算し た額とする。 (他略) 3 争点 (1) 原告が受領した本件各年金の帰属時期 (2) 本件各延滞税の賦課は他の延滞税の免除事由との対比及び延滞税の趣旨 に反することにより違法であるか。 (3) 本件各延滞税の賦課は財産権の侵害に当たり違憲であるか。 4 争点に対する当事者の主張 (1) 争点(1)(原告が受領した本件各年金の帰属時期)について (原告の主張) 国年法28条及び厚年法44条の3は、本件各年金の支給の繰下げの制 度を定めていることから、原告は、65歳に達した時点では、65歳以降 毎年度年金を受給するか、それを繰り下げて増額した年金を受給するかの いずれかを選択して年金を受給する権利を取得したにすぎず、受給 権が確 定するのは給付裁定の請求をした時点であるため、原告が一括受給した本 件各年金は、給付裁定の請求をした時期に属する年分の「収入すべき金額」 となる。 (被告の主張) ア 所得税法36条1項は、権利確定主義を採用しているところ、本件各 年金については、受給権者は、法令の要件を満たすことで年金の給付を 受ける権利(基本権)を取得し、その後支払期が到来することで支分権 を取得し、裁定の請求さえすればいつでも年金の支給を受けることがで
きる状態になる上、各支払期の到来の時点で客観的に給付の金額も定ま っていて、裁定を経ていなくても権利として不確定な要素はないので、 国年法18条3項及び厚年法36条3項が定める支払期月が到来した時 点で、支給を受ける権利は確定したものといえるから、その支払期月の 属する年分の収入金額に算入されるべきである。 イ 原告は、本件各年金においては支給の繰下げという制度がある(国年 法28条、厚年法44条の3)ため、給付裁定の請求をするまで支給を 受ける権利は確定しないなどと主張するが、同制度は、既に受給権を有 していることを前提に、繰下げの申出により、基本的に申出のあった月 の翌月から支給すると共に、年金額に所定の加算をするというものであ って、条文上例外に位置付けられる。したがって、受給権者に65歳以 降年金を受給するか、繰り下げて増額した年金を受給するかの選択権を 与え、前者について、その選択権を行使するまで受給権が発生していな いとするものではない。 (2) 争点(2)(本件各延滞税の賦課は他の延滞税の免除事由との対比及び 延滞税の趣旨に反することにより違法であるか。)について (原告の主張) ア 通則法63条6項4号及び通則法施行令26条の2第2号は「人為に よる異常な災害又は事故」による延滞税の免除を定めており、これには、 ①誤指導、②申告書提出後における法令解釈の明確化等、③申告期限時 における課税標準等の計算不能、④振替納付に係る納付書の送付漏れ等、 ⑤その他類似事由が含まれると解されているところ、上記①ないし④の 場合は、いずれも法定納期限までに納税ができなかったことについて納 税者の責めに帰すべき事由がない場合である。 原告は、平成24年に本件各年分の本件各年金を一括受給し、本件各年 金を本件各年分の雑所得とする各修正申告をしたことによって新たな所
得税額が確定したのであるから、この所得税を法定納期限までに納付でき なかったことについて原告の責めに帰すべき事由はないので、本件各延滞 税の賦課は、前記①ないし④の免除事由と比較し、極めて均衡を欠いた不 公平かつ不当な課税である。 イ 本件各延滞税の賦課は、法定納期限内に申告しかつ納税した者との間 の負担の公平を図り、間接的に期限内納税を促すという延滞税の目的に 反する結果となり、不当である (被告の主張) ア 原告は、単に自己の選択で本件各年金を一括受給して修正申告をした 結果として本件各延滞税が発生したというだけのことであり、納税者の 責めに帰すべからざる事由による納税の障害があったものではないため、 通則法63条6項各号及び同4号を受けた通則法施行令26条の2第2 号の規定により免除が認められる場合と同様に扱うべき事情はないから、 本件各延滞税の賦課が免除事例と比較して均衡を失するということはな い。 イ 原告は、本件各年金について、本件各年分のそれぞれの所得として各 修正申告をし、本件各年分の所得税について新たに納付すべき税額があ ったのであるから、通則法60条1項2号により法律上当然に本件各延 滞税の納税義務が成立した。原告は、これを納付していなかったことか ら、処分行政庁は、通則法37条1項に基づき本件各督促処分を行った。 したがって、本件各督促処分は、いずれも適法である。 ウ 本件各督促処分が前提とする、本件各延滞税の算出については、別紙 延滞税額計算表記載のとおりである。 (3) 争点(3)(本件各延滞税の賦課は財産権の侵害に当たり違憲であるか。) について (原告の主張)
ア 本件延滞税の賦課は、正当な事由を欠き、憲法29条が保障する原告 の財産権を不当に侵害する行為である。 イ 通則法60条1項2号及び同法15条3項6号により、原告が本件各 年金を本件各年分の所得とする修正申告書を提出したことで当然に本件 各延滞税の納税義務が成立し、同法60条2項により、本件各延滞税額 は法定納期限の翌日から計算されることになるのであれば、これらの規 定は、正当な事由なく延滞税を賦課することを認めるものであって、憲 法29条が保障する財産権を不当に侵害するものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告が受領した本件各年金の帰属時期)について (1) 所得税法は、一暦年を単位としてその期間ごとに課税所得額を計算し課 税を行うこととしているのであるが、同法36条1項が同期間中の収入金 額の計算について「収入すべき金額」によるとしており、また、課税に当 たって常に現金収入の時まで課税できないとしたのでは、納税者の恣意を 許し、課税の公平を期しがたいことからすれば、同法は、現実の収入がな くても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得 の実現があったものとして前記権利確定の時期に属する年分の課税所得を 計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解さ れる。 そして、収入の原因となる権利が確定する時期はそれぞれの権利の特質 を考慮して決定されるべきである。 (2) 原告は、本件各年金について、給付請求を行って実際にこれを受給した 時期に属する年分の「収入すべき金額」として算定すべき旨主張し、その 理由として、法が、年金給付を受ける権利は、その権利を有する者の請求 に基づいて厚生労働大臣が裁定する旨を定めている旨を指摘する(国年法 16条、厚年法33条)。
しかしながら、国年法及び厚年法が、前記裁決請求の制度を、本文上の 「通則」の位置に置き、繰下げ受給の存する本件各年金にも、繰下げ受給 の存しない他の年金にも適用することを予定しており、両者を整合的に解 釈すべきことからすると、厚生労働大臣が行う裁定については、これによ って給付を受ける具体的権利が発生したり、支払期が裁定請求の時期以降 に変更されたりするものと考えることはできず、画一公平な処理により無 用の紛争を防止し、給付の法的確実性を担保するために、受給権の存在を 公権的に確認するに過ぎない行為と解するのが相当である。 (3) 本件各年金については支給の繰下げの制度(国年法28条、厚年法44 条の3参照)があり、同制度は、厚生労働大臣にその支給開始時期を遅ら せることを申し出ることにより各年の年金額を増額させることができる制 度であるが、支給の繰下げの申出ができるのは、各年金の「受給権を有す る者」であって、「66歳に達する前」あるいは「受給権を取得した日か ら起算して1年を経過した日前」に、各年金を「請求していなかったもの」 と定められていることからすると、同制度は、各年金の基本権を取得し、 各支払期の到来をもって各支払期ごとの支分権を既に取得していることを 前提に、所定の要件を満たした者の申出により、例外的に、支払期や支給 額の変更を認めるものといえる。 この点と、前記(2)で検討した点を併せ考えると、本件各年金につい て、支給の繰下げの制度の存在を理由に、法の定める受給要件を満たした 時点で、裁定請求による年金受給をするか、繰下げの申出による年金受給 をするかを並列的に選択することができるものとして、その選択権行使ま で権利が確定しない旨の制度が定められていると解することはできない。 (4) 以上によれば、本件各年金については、国年法18条3項及び厚年法3 6条3項の定める支払期月が到来した時にその支給を受ける権利が確定す るものと解されるから、裁定により前年分以前の本件各年金が一時に支払
われることになった場合には、国年法18条3項及び厚年法36条3項の 定める支払期月に属する年分の収入金額に算入されるべきである。 よって、本件では、平成●年●月●日の満了により満65歳に達し、法 令の要件を満たして本件各年金に係る基本権を取得した原告が、平成24 年8月16日に本件各年金の給付裁定の請求をして、本件各年分の本件各 年金の支給を受けたことについて、本件各年金が本件各年分の収入金額に 算入されると認定した処分行政庁の判断は相当であり、この点に関する原 告の主張には理由がない。 2 争点(2)(本件各延滞税の賦課は他の延滞税の免除事由との対比及び延滞 税の趣旨に反することにより違法であるか。)について (1) 原告は、本件各年金の各支払期が到来しても各年金の給付裁定の請求を していなかったが、結局、支給の繰下げの申出はせずに、未受給であった 本件各年金を受給することとして裁定請求し、これを受給した結果、所得 税の修正申告をすると共に、各年金が本来の支払期月が属する年分の収入 に属するものとして、本件各督促処分を受けたというものである。 通則法63条6項4号を受けた通則法施行令26条の2第2号は、「人 為による異常な事故」等により納付行為ができない場合の延滞税の免除を 定めており、この免除は、納税者の責めに帰すべからざる事故により納付 行為ができない場合にはその間の延滞税を免除するとの趣旨であることか ら、「人為による異常な事故」には、①誤指導、②申告書提出後における 法令解釈の明確化等、③申告期限時における課税標準等の計算不能及び④ 振替納付に係る納付書の送付漏れ等が含まれると解されているところ、上 記経緯により所得税の納付が遅れた本件において、上記①ないし④の事由 と同視し得る、納税者である原告の責めに帰すべからざる障害事由がある とは認められない。 したがって、本件各延滞税を賦課することが、他の延滞税の免除事由と
比較して均衡を失するとはいえないから、この点に関する原告の主張は理 由がない。 (2) また、原告は、本件各延滞税を賦課することは、延滞税の目的に反し、 不当である旨を主張する。 しかしながら、支払期が到来した時点で年金を受給し、その都度、これ に対応する所得税を納付した者と対比すると、原告の主張するような扱い を許容した場合、納付すべき所得税の額は確定しているのに、その納付を 恣意的に先送りすることができることになり、これは不合理といわざるを 得ない。 また、本件各延滞税の算出にあたっては、通則法61条1項1号が適用 されるため、法定申告期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書が 提出されるまでの期間が、延滞税額の計算期間から控除されており、延滞 税を賦課するとの原則を維持しつつ、修正申告を行って所得税を納付した 者に対する一定の配慮もなされているのであって、制度として不当、不合 理ともいえない。 3 争点(3)(本件各延滞税の賦課は財産権の侵害に当たり違憲であるか。) について 原告は、本件各延滞税の賦課が原告の財産権を侵害する旨、あるいは根拠と なる通則法の規定自体が財産権を侵害する旨の主張をするが、前記1及び2で 検討したところによれば、本件各延滞税の賦課は、何ら不当、不合理とはいえ ないし、原告の主張によっても、本件各延滞税の賦課あるいは原告の指摘する 通則法の規定が、いかなる意味において憲法29条の保障する財産権を侵害す るのかも明らかではない。 この点に関する原告の主張は採用できない。 4 結語 以上検討したところによれば、本件各延滞税の算出については別紙延滞税額
計算表記載のとおりと認められ、これを前提とする本件各督促処分には、何ら の違法も認められないことになる。 第4 結論 よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、 訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、 主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 谷 有恒 裁判官 宮崎 拓也 裁判官 八屋 敦子