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理解, 鉄心 振動 形態 詳細 把握 重要, 変圧器 鉄心振動 測定, 振動 挙動 解析 9,22) 方法 結果,3 章 述, 十分 鉄損 騒音 考慮 設計, 製作 変圧器, 使用条件 鉄損 騒音 大 影 響 及 近年 進 歩 適用拡大, 電力用変圧器 鉄心 磁束 高調波 直流成分 重畳 増, 鉄損

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1. はじめに

JFE スチールが製造する方向性電磁鋼板は,主に電力用 の変圧器の鉄心に用いられており,変圧器の特性に直結す る重要な素材である。近年の世界的な環境保全への認識の 高まり,およびそれに対応する規制強化のため,変圧器に 対する省エネルギー化のニーズはますます高まってきている1) 変圧器のエネルギー効率に大きく影響する方向性電磁鋼板 に対しても,鉄心で生じるエネルギー損失,すなわち鉄損を 低減することが常に求められている。その要求を満たすべく, さまざまな研究開発を進めているが,変圧器の鉄損は,通常, 使用された方向性電磁鋼板の鉄損よりも増加する。したがっ て,素材の鉄損低減に加えて,変圧器に適用した際の鉄損 増加の抑制も重要な開発課題である2)。そこで,JFE スチー ルにおいても,これまでにモデル変圧器を用いて,各種の 調査,解析を行なってきた3) 素材の測定時よりも変圧器における鉄損が増大する原因 にはいろいろあるが,切断した方向性電磁鋼板を組み合わ せて製作された鉄心では,複雑な磁束が局所的に生じるこ との影響も大きい2-5)。たとえば,磁束の回り込みや回転磁 束の発生,磁束の部分的な集中,積層した鋼板間の磁束の 渡りなどである。これらの影響を評価するためには,鉄心に おける局所的な磁束の測定が有用である。近年,電磁界解 析の数値計算技術が進歩してきているが,方向性電磁鋼板 における磁気特性の強い異方性や,多数の薄板の積層体で ある鉄心のモデル化などには,いまだ多くの課題があるため6) 実験による解析が依然として重要である。 変圧器の鉄心の局所的な磁束を測定するため,JFE スチー ルでは,絶縁被膜のついた方向性電磁鋼板を非破壊で測定 できる探針法を開発し,応用してきた3,7)。さらに,鉄損によっ て発生する熱を赤外線サーモグラフィーにより測定すること で鉄損分布を可視化する方法を開発した8)。これらの技術と その測定結果について,2 章に述べる。 また,変圧器の低鉄損化と並んで,低騒音化も重要な環 境対応技術の一つである9)。鉄心における変圧器騒音の発 生原因としては,鋼板の磁化に伴う微小な伸縮,すなわち 磁歪と,鋼板間に発生する電磁力による振動が主たるもの と考えられている2)。これらがどのように騒音を生じさせる 2015年 2 月 7 日受付

JFE スチールの変圧器特性解析技術

Evaluation and Analysis Techniques of Transformer Performances

in JFE Steel

岡部 誠司 OKABE Seiji JFE スチール スチール研究所 電磁鋼板研究部 主任研究員(副部長)

大村  健 OMURA Takeshi JFE スチール スチール研究所 電磁鋼板研究部 主任研究員(副課長)

井上 博貴 INOUE Hirotaka JFE スチール スチール研究所 電磁鋼板研究部 主任研究員(係長)

要旨 JFE スチールでは,モデル変圧器を用いて方向性電磁鋼板の主な用途である変圧器の鉄損と騒音の調査,解析を 行なっている。本論文では,モデル変圧器において鉄損と鉄心振動を局所的に測定する技術について述べる。変圧 器の鉄損を解析するため,探針とホールプローブを用いた局所磁気測定により,三相積鉄心における磁束密度と鉄 損の分布を調査している。さらに,赤外線サーモグラフィーによる鉄損測定方法の開発により,鉄心の接合部近傍 における局所的な鉄損増大を可視化した。騒音の解析では,レーザ振動計により鉄心の局所振動を三次元的に測定 し,三相励磁による鉄心の振動挙動を明らかにした。また,変圧器の励磁条件の影響調査の一つとして,直流偏磁 条件における鉄損と騒音を測定した。 Abstract:

Iron losses and acoustic noise in transformers are analyzed using model transformers in JFE Steel. In this paper, techniques to measure local iron losses and vibrations in the model transformer core are described. Distributions of magnetic fluxes and iron losses in three-phase stacked cores are analyzed using stylus probes and a hall probe. In addition, development of iron loss measuring technique using infrared thermograph enabled to visualize iron loss increase near the joint in cores. Three dimensional measurement using laser vibrometer helped clarify the vibration behaviors of the cores under three phase excitation. As one of the investigations of effects of excitation conditions, iron loss and acoustic noise are measured under direct current (DC) biased excitation.

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かを理解するためには,鉄心の振動の形態を詳細に把握す ることが重要である。そこで,モデル変圧器の鉄心振動を 測定し,振動の挙動を解析した9,22)。その方法と結果につい て,3 章に述べる。 さらに,十分に鉄損や騒音を考慮して設計,製作された 変圧器であっても,その使用条件が鉄損や騒音に大きな影 響を及ぼすことがある。近年のパワーエレクトロニクスの進 歩と適用拡大により,電力用変圧器の鉄心の磁束に高調波 や直流成分が重畳するケースが増えており,鉄損や騒音の 増大が問題となる場合がある11)。これらの現象の影響の評 価や,鉄心材料による違いの検討においても,モデル変圧 器を使った調査を行なっている。その例として,4 章では, 直流偏磁が可能なモデル変圧器を製作して鉄損と騒音の測 定を行なった結果について述べる12)。

2. モデル変圧器の局所磁気特性の解析技術

2.1 探針法による局所磁束・鉄損測定 2.1.1 目的 変圧器の鉄心における局所的な磁束測定方法として探り コイル法が用いられているが,鋼板に穴をあける必要がある 上,導線で生じる鋼板間の隙間のために磁束密度分布に影 響が生じることが懸念される。これに対し,最近では非破壊 で測定できる,探針を用いた方法が開発され,適用されて きている7)。JFE スチールでは,この探針法をモデル変圧器 の鉄心における局所磁束の測定に用いる方法を開発し,磁 束挙動の解析に用いている3)。以下に,3 相積鉄心モデル変 圧器の測定に適用した技術と,測定結果の例を示す。 2.1.2 測定装置 探針,およびホール素子を用いた鉄心局所磁気特性の測 定原理を図 1 に示す。鉄心表面の鋼板に接触させた 2 本の 探針間に生じる誘起電圧は,探針接触点の下部が挟む断面 部分の 1/2 の面積に鎖交する磁束が誘起する電圧に等しい とする理論に基づいて,鉄心の局所磁束密度を求めた13) 探針間の距離は 5 mm とし,空隙補償コイルを設置した。 鋼板表面の磁界強度は,感受部長さ約 1 mm の小型ホール 素子によって測定した。感受部の中心と鋼板表面の距離は 約 0.5 mm とした。探針とホール素子は 90°回転でき,鋼板 表面の 2 方向(x,y 方向とする)の磁束密度および磁界強 度を検出できる。また,鉄心表面の全面を測定できるように, これらのプローブをロボットアームに組み込み,鉄心表面の 測定点を連続的にスキャンする機構を設けた。 磁束密度および磁界強度の信号はデジタルオシロスコー プを用いて測定,記録した。各測定点における鉄損は,上 記の磁束密度 B および磁界強度 H の波形により描かれるヒ ステリシスループの面積から次式によって x 方向成分 Wx, およびy方向成分 Wyに分けて計算し,その和を 2 次元局所 鉄損 W2dとした。 W2d=( f/r)∫H・dB=Wx+Wy ……… (1) Wi=( f/r)∫Hi dBi(i:x,y) ……… (2) ここで,f は励磁周波数,r は電磁鋼板の密度を示す。周回 積分は励磁周期 1 回分について行なう。 モデル変圧器は 3 相 3 脚の積鉄心で,幅 100 mm の脚お よびヨークで構成される。外形は一辺 500 mm の正方形, 積層厚は約 16 mm,鉄心重量は約 22 kg である。ヨークと 中央脚の接合部は V ノッチ式で,接合方式は 2 枚重ねの 5 段ステップラップとした。鉄心の励磁は各脚 40 ターンの 1 次巻線によって行ない,その内側に巻いた 60 ターンの 2 次 巻線によって磁束を検出した。鉄心全体の鉄損は,各相の 1 次電流および 2 次電圧から電力計を用いて測定した。 鉄心材料には,0.30 mm 厚の高配向性方向性電磁鋼板 30JGS®用いた。単板磁気測定装置で測定した鉄損 W 17/50 は1.01 W/kg である。 2.1.3 測定結果 図 2 に鉄心の半面における磁束密度分布の変化を示す。 脚,ヨークの磁束密度分布には幅方向の不均一が認められ る。この不均一な磁束分布は,主に方向性電磁鋼板の圧延 方向と直交方向の透磁率の異方性によって生じる磁束の回 り込みに起因しており,局所的な磁束密度波形にひずみを 生じさせる。磁束密度波形のひずみは,鉄損の増加や磁歪 振動における高調波成分の増大をもたらすため2),変圧器の 鉄損や騒音を解析する上で重要な情報である。 図 3 にヨークとその周辺の鉄損分布を示す。ヨークの T 接合部付近,およびヨークと脚の接合部付近に非常に大き い鉄損発生箇所が認められ,それぞれ,回転磁束および磁 束集中の影響と考えられる。 これらの局所的な鉄損増大には,使用される方向性電磁 鋼板の磁気特性の違いや,接合方式などが影響するが,そ の機構の解析においても本技術を利用している。 図 1 探針法とホール素子による局所磁気測定方法 Fig. 1 Method of local magnetic measurement using needle

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2.2 サーモグラフィーによる局所鉄損測定 2.2.1 目的 探針法による局所磁気測定は,鉄損,磁界強度,磁束密 度を同時に測定できる有効な手段であるが,鋼板を重ね合 わせた接合部の近傍では,鋼板の層間を渡る磁束によって 生じる面内渦電流が生じるため,鋼板断面の渦電流測定に 基づく磁束密度の測定値に誤差が生じる14)。そのため,接 合部近傍の鉄損の解析では,別の手法を組み合わせること が望ましい。他の局所鉄損測定方法として,鋼板の温度上 昇率から鉄損を算出する方法が知られている15)。特に赤外 線サーモグラフィーを用いる温度計測は,熱電対やサーミス タ温度計を用いる方法に比べて,鉄心表面の広範囲を同時 に測定することができるため,鉄損分布の測定に適している。 そこで,温度分解能が向上した赤外線サーモグラフィーを 利用する鉄損分布の測定方法を開発した8) 2.2.2 測定方法 測定に使用した赤外線サーモグラフィーは,温度分解能 0.02 K,最大画素数 76 800 (320×240)で,最大で毎秒 380 フレームの動画の撮影が可能である。赤外線カメラは鉄心 の1 m上方に設置し,鉄心全体を撮影できるようにした。 鉄心表面に他の発熱物が影響して誤差が生じるのを防ぐ ため,鉄心と赤外線カメラと最小限の配線のみを照明を消 した無人の防音ルーム内に設置し,励磁と測定は外から制 御するようにした。また,鉄心の温度分布が安定し,全体の 温度差が 1 K 未満になった状態を確認してから測定を行なっ た。 鉄心は次のパターンで励磁し,温度測定を行なった。 (i) 励磁電圧をかける前に,バックグラウンドを測定 (ii) 所定の磁束密度まで,一定比率で一次電圧を上昇 (iii) 所定の磁束密度で一定時間保持し,温度分布を測定 (iv) 励磁電圧を零に下げ,温度が一定になることを確認 この励磁パターン(iii)における各点の温度上昇率 dT/dt から,次の式で鉄損を求めた。 W=C dT/dt ……… (3) ここで,W は鉄損,C は鋼板の比熱である。 モデル変圧器は 2.1 節で述べたのと同じ構造であるが,鉄 心表面のより広範囲を測定するため,1 次,2 次の巻線を 20 ターンに減らした。鉄心材料には 0.23 mm 厚の方向性電磁 鋼板 23JGS®用いた。 2.2.3 測定結果 図 4 に本実験で測定された典型的な温度測定結果を示す。 この測定における最大磁束密度は 1.7 T,周波数は 50 Hz で ある。磁束密度を 1.7 T に保持した状態では,一定の温度上 昇率とみなすことができる。また,励磁を零に下げた後の温 度低下はわずかであることから,抜熱の影響は小さいと考え られる。 写真 1 に 1.7 T まで励磁した状態での鉄心の温度分布画像示す。ヨークの T 接合部近傍に非常に大きく温度上昇し 図 2 探針法で測定した磁束密度分布

Fig. 2 Magnetic flux density distribution measured by stylus probe method

図 3 探針法で測定した鉄損分布

Fig. 3 Distribution of iron loss measured by stylus probe method

図 4 赤外線サーモグラフィーによる温度変化の測定例 Fig. 4 Example of temperature change measured by infrared

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領域があり,前章で述べた探針法による測定結果と合致 している。また,U 脚とヨーク,および W 脚とヨークの接 合部にも大きな温度上昇が見られる。これらの箇所の下層 には鋼板の突き合わせ部があり,下層の鋼板からの磁束の 渡りによる磁束集中,および面内渦電流の影響により鉄損 が増大したものと考えられる。また,U 脚の右側,V 脚の両 側,W 脚の左側は他の箇所よりも温度が上昇しているが, これらの箇所は磁束波形のひずみが大きいことが前述の探 針法測定で確認された。 この測定における局所鉄損を鉄心全体で合算して求めた 鉄損値は 1.17 W/kg であった。電力計で測定した鉄損は 1.19 W/kg であったため,赤外線サーモグラフィーによる測 定が有効な精度を持つことがわかった。 この高分解能サーモグラフィーによる局所鉄損測定技術 は,巻鉄心における鉄損分布の解析にも活用している。

3. モデル変圧器の局所振動測定

3.1 目的 変圧器の鉄心は,磁化に伴って生じる鋼板の磁歪振動と, 鋼板の接合部の電磁振動によって,騒音の発生源となるこ とが知られている2)。したがって,変圧器の騒音に及ぼす鉄 心材料の影響を解析するためには,鉄心の振動挙動を把握 することが重要である。これまでにも変圧器鉄心の振動測 定に関する報告があるが,多くは脚やヨークの表面に対して 垂直方向の測定のみであり,しかも,その最大振幅や振動 の周波数成分を議論するものであった3,16)。JFE スチールで は,さらにモデル変圧器の鉄心上の各所で,3 軸方向の振動測定する方法を開発し,構造としての振動挙動を解析で きるようにした9,22)。 3.2 測定方法 鉄心の振動測定には,レーザドップラ振動計を用いた。 図 5 に振動測定方法を示す。表面に反射テープを貼り付け た5 mm角のブロックを鋼板表面に貼付し,3 軸方向の振動 を測定した。鋼板を締め付けるために,鉄心の上下をベー クライト板で挟み,ばねで 0.1 MPa の面圧をかけた。ベー クライト板には,測定点ごとに穴を開け,鋼板表面にブロッ クを貼付できるようにした。鋼板面に水平な方向に振動を測 定する場合は,隣接する穴との間に溝を形成しておき,隣 接する穴にミラーを挿入し,上から入射するレーザ光を直角 に曲げて測定した。測定は 20 mm 間隔で行なった。 モデル変圧器は 2.1 節と同じ構造とし,鉄心材料には 0.30 mm厚の高配向性方向性電磁鋼板 30JGS®用いた。 3.3 結果と考察 磁歪振動の 1 周期(励磁の 2 分の 1 周期)における,鉄 心半面の変位を図 6 に示す。鋼板面に垂直な方向の変位が 最も大きく,その大きさは磁歪に鋼板の積層厚を掛けた値よ りもはるかに大きかった。鉄心は積層した鋼板を締め付けた 構造であり,本モデル変圧器では積層厚も小さいため,鋼 板面に垂直な方向への曲げに対する剛性が,他の方向より もはるかに低い。そのため,磁歪が起振力となり,鋼板に垂 直方向への曲げ変形を生じさせ,大きな振動が発生するも のと考えられる。 鉄心の振動を部位別に比較すると,ヨークと各脚の接合 部において部分的に大きな振動が生じており,接合部に生 写真 1 赤外線サーモグラフィーによる鉄心の温度分布画像

Photo 1 Temperature distribution of model transformer core measured by infrared thermograph

図 5 鉄心表面の局所振動測定方法

Fig. 5 Method to measure local vibration on model transformer core

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じる電磁振動の影響と考えられる。次に大きい振動はヨーク に生じており,曲げ変形が生じていることがわかる。図 6 の 左側の U 相と右側の W 相は,振幅が最大になる位相が 3 分 の1周期ずれており,相間の位相差を反映している。各脚 には面の傾きが生じている。図 2 に示したとおり,脚の局所 的な磁束密度も,幅方向に差があり,磁化の時間的なずれ がこのような面の傾きを生じさせるものと考えられる。 これらの結果からわかるとおり,鉄心の振動は,鉄心の局 所的な磁化の違いや,鉄心構造に起因する機械的な振動特 性を反映して,複雑な挙動を示す。ここでは磁歪の基本周 波数であり,振幅が最も大きい 100 Hz の成分について述べ たが,さらに高調波について解析を行なうことで,騒音への 影響を考察することができる。また,磁歪特性の異なる材料 間の比較や,締め付け力の影響も調査している。

4. 直流偏磁条件における

モデル変圧器特性の解析

4.1 目的 電磁鋼板の磁化特性は非線形であるため,交流磁化に直 流が重畳した磁化条件(直流偏磁)では,鉄損や磁歪,変 圧器の騒音が大幅に増加することが報告されている11,17,18) しかし,同じ測定装置で低磁束密度から高磁束密度まで偏 磁量を変えながら調査された報告は少ない上,変圧器の騒 音は鉄損と比べ測定例が非常に少ない。 そこで,本研究では,単相モデル変圧器を用いて,交流磁束密度を 0.5 T から 1.8 T まで,直流重畳磁界を 200 A/m までの広い範囲で変えて,直流偏磁が変圧器の鉄損,騒音 に及ぼす影響を調査した12) 4.2 実験方法 4.2.1 モデル変圧器 図 7 に,モデル変圧器の測定システムを示す。モデル変 圧器は,単相であり,交流励磁用の 1 次巻線,磁束密度測 定用の 2 次巻線,直流磁界を印加するための 3 次巻線から なる。3 次巻線の回路は,直流電源,電流計,交流重畳を防 止するためのチョークコイルから構成される。 鉄心は単相 2 脚の積鉄心で,外形は一辺 500 mm の正方形, 積層厚は 15 mm,重量約 18 kg である。接合方式は 2 枚重 ねの5段ステップラップとし,鉄心の上下をベークライト板 で挟み,平均 0.1 MPa の締め付け力をかけて固定した。 鉄 心 材 料には 0.30 mm 厚の高配向性 方向性 電 磁 鋼 板 30JGH®を用いた。 図 6 鉄心表面の振動挙動

Fig. 6 Vibration behavior of model transformer core surface

図 7 直流偏磁させたモデル変圧器測定方法の概要 Fig. 7 Schematic of model transformer measurement under

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4.2.2 測定方法 鉄心を励磁する際の磁束密度の振幅値は,2 次巻線の誘起 電圧の平均値から求めた。直流偏磁量は,3 次巻線の直流電 流値から求めた。鉄心の実効磁路長は 1.6 m とした。励磁は 以下の方法で制御した。まず,1 次巻線により鉄心を周波数 50 Hz で交流励磁し,一次電圧を調整して最大磁束密度を所 定の値にした。次に,3 次巻線の直流励磁電流を印加し,直 流重畳磁界を重畳させた。その後,一次電圧を再度調整し, 交流励磁の最大磁束密度が所定の値になるよう修正した。 本装置のように交流励磁用と直流重畳用の二つの励磁巻 線を用いる場合,直流用の 3 次巻線に交流成分が重畳し, その影響により鉄損が増加するという問題がある。そこで, 3次巻線に直列に 3.2 H のチョークコイルを配置して交流成 分の重畳を抑制した。この場合でも 3 次巻線を開放した場 合よりも鉄損が増加するため,励磁電流から直流励磁系の 交流成分重畳分を差し引く補正を行なった19) 騒音は,脚の中央 2 ヶ所とヨークの中央 2 ヶ所で,ベー クライト板の上面から 200 mm 離れた位置で騒音レベルを 測定し,平均値を求めた。 4.3 実験結果と考察 図 8 に直流偏磁がない場合とある場合を比較したヒステ リシスカーブを示す。直流偏磁により磁化力が大きく偏り, ヒステリシスカーブが伸長して鉄損が増大することがわか 直流偏磁量と鉄損の関係を図 9 に示す。直流偏磁量の増 加に従って鉄損が増加しており,特に 50 A/m 以下で増加率 が大きい。 図 10 に直流偏磁量に対する騒音の変化を示す。鉄損と同 様に,直流偏磁に伴って騒音が大幅に増加した。偏磁によっ て実質的に 1.7 T を超えた磁化により素材の磁歪が大きく増 加したことに加え,図 11 に示すように励磁周波数の奇数次高調波が増加したためと考えられる。直流偏磁がない場 図 8 ヒステリシスカーブの比較 Fig. 8 Comparison of hysteresis curves

図 9 直流偏磁量がモデル変圧器の鉄損に及ぼす影響 Fig. 9 Iron losses of model transformer under direct current

(DC) biased magnetization

図 10 直流偏磁量がモデル変圧器の騒音に及ぼす影響 Fig. 10 Acoustic noise of model transformer under direct

current (DC) biased magnetization

図 11 騒音の高調波成分の比較

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- 23 - JFE技報 No. 36(2015 年 8 月) 合は,磁化の正負によらずほぼ同じ磁歪が生じるため,磁 歪振動の基本周波数は 100 Hz であるが,直流偏磁により磁 化の正負での磁歪が異なり,50 Hz とその高調波の成分が大 きく現れるためと考えられる20)。 この直流偏磁が可能なモデル変圧器により,直流偏磁に よる鉄損,騒音の増大の鉄心材料による差も調査しており, より高配向性の材料の方が鉄損の増加が生じやすく,騒音 では優れることなどが判明している21)

5. おわりに

以上,方向性電磁鋼板が使用された変圧器の鉄損,騒音 特性を解析するためのモデル変圧器における実験技術を紹 介した。本論文では積鉄心への適用例を述べたが,巻鉄心 に適用することも可能である。 これらの解析技術は,JFE スチールで製造する方向性電 磁鋼板の有効な変圧器利用技術の調査に,また,新たに開 発した方向性電磁鋼板の特性の解析などに活用されている。 参考文献 1) 変圧器の環境適合性向上技術調査専門委員会編.「変圧器の環境適合 性向上技術の現状とその動向」.電気学会技術報告.2005, no. 1023. 2) 電気学会磁性材料常置専門委員会編.「けい素鋼板の進歩と使用上の 諸問題」.電気学会技術報告.1979, II部, no. 85. 3) 石田昌義,定廣健一,岡部誠司.川崎製鉄技報.2003, vol. 35, no. 1, p. 21.

4) Thomas, B. IEEE Trans. Magn. 1975, vol. 11, p. 65.

5) Fukuda, B.; Sato, K.; Shimizu, Y.; Ito, Y. J. Appl. Phys. 1984, vol. 55, p. 2130. 6) 高速大規模電磁界数値解析技術調査専門委員会編.「電磁界解析にお ける高速大規模数値計算技術」.電気学会技術報告.2006, no. 1043. 7) 千田邦浩,石田昌義,佐藤圭司,小松原道郎,山口俊尚.電気学会論 文誌 A. 1997, vol. 117, p. 942. 8) 山口広,今西大輔,石田昌義,井上博貴.電気学会マグネティックス 研究会資料.2011, MAG-11-129, p. 1. 9) 電気学会静止器騒音対策技術調査専門委員会編.「静止器の騒音対策 技術の現状とその動向」.電気学会技術報告.1966, no. 575. 10) 山口広,石田昌義.電気学会マグネティックス研究会資料.2010, MAG-10-93, p. 13. 11) 高須伸夫,宮脇文彦,斎藤達,藤原康夫.電気学会論文誌 B. 1993, vol. 113, p. 435. 12) 井上博貴,上山哲平,山口広,岡部誠司,石田昌義.J. Mag. Soc. Japan. 2012, vol. 36, p. 135. 13) 山口俊尚,今村正明,千田邦浩,石田昌義,佐藤圭司,本田厚人,山 本孝明.電気学会論文誌 A. 1995, vol. 115, p. 50. 14) 岡部誠司,石田昌義,黒沢光正.日本応用磁気学会誌.1998, vol. 22, p. 713. 15) 成田賢仁,今村正明.「電気鉄板の熱電的部分鉄損測定法」.電気学会 論文誌 A. 1974, vol. 94, p. 167. 16) 溝上雅人,籔本政男,岡崎靖雄.電気学会論文誌 A. 1996, vol. 116, p. 744. 17) 西水亮,内山倫行,斎藤達.電気学会マグネティックス研究会資料. 1999, MAG-99-78, p. 11. 18) 鈴木崇之,高坂正明,松山亮,壹岐浩幸.平成 12 年電気学会電力・ エネルギー部門大会概要集.1999, no. 561, p. 485. 19) 浅野剛良,高田俊次,佐々木堂,岡崎靖雄.電気学会マグネティック ス研究会資料.1997, MAG-97-175, p. 25. 20) 茂木尚,藤倉昌浩,溝上雅人,籔本政男,久保田猛.日本応用磁気学 会誌.2001, vol. 25, p. 891.

21) Inoue, H.; Okabe, S. J. Appl. Phys. 2014, vol. 115, issue 17, p. 17A332. 22) 大村健,山口広,石垣雄亮,岡部誠司,戸田広朗.電気学会論文誌 A.

2015, vol. 135, p. 414.

Fig. 2  Magnetic flux density distribution measured by stylus  probe method
Fig. 5  Method to measure local vibration on model transformer  core
Fig. 6 Vibration behavior of model transformer core surface
Fig. 11 Comparison of spectrum of acoustic noise harmonics

参照

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