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 混沌と洗練を高次元で併せ持ち、ライヴ・ハウスとクラブの境界線 を軽やかに跨ぎ、スタジアムを揺るがすまでに成長した現役最高峰の ライヴ・アクトにして00年代屈指のパーティ・バンド、! ! ! 。Warp20 (Tokyo)での熱狂も冷めやらぬ中、3年ぶりとなるニュー・アルバム 『STRANGE WEATHER, ISN'T IT?』を引っ提げ、遂に帰還! DFA人 脈との最合流とベルリン・レコーディングを経て届けられた今作は、 ミニマリズムとファンクネスの融合をビートルズ的に成し遂げた(※ ニック談)、過去最高にクールなビートが全編を支配する傑作だ。苦 しみも、悲しみも、すべて受け入れて進むことを決めた ! ! ! 。そう、 パーティはまだまだ続く、このバンドが存在するかぎり―。 ― まずは昨年 11 月のWarp20(Tokyo)のことから聞かせてくださ い。すごい盛り上がりでしたが、どんな夜になりましたか?

ニック・オファー(Vo. & Key.):ああ、すごくうまくいったと思うよ。 普段俺って「満足いくライヴができた!」と思うこと自体少ないんだけ ど、あの日は最高だったな! ― シャノン・ファンチェスも登場して盛り上げに一役買ってましたね。 レコーディングには以前から参加していましたが、彼女をライヴにも 加えようと思ったのはなぜです? どんなヴァイブを期待してのこと? ニック:彼女には前回のレコーディングでたくさん歌を入れてもらっ たからね。その後、1度ライヴにも誘ってみたらすごく良かったんだ。 だから、他のライヴでもやってもらってるっていう。ジョン(・ピュー) が抜けたこともあって、彼女がジョンのパートをカヴァーするのも自 然な流れだったし、最近はいつもいっしょにいるよ。 ― 彼女は今後のライヴにも参加するんですか? ニュー・アルバ ムにも4曲ほどヴォーカルとして参加していますし、バンドの正式メ ンバーになる予定? ニック:ああ、彼女とはもう3年以上のつきあいになるし、すでに欠 かせない存在だよ。実質的にはもうメンバーだよね。 ― そう言えば Warp20(Tokyo)終わりに、渋谷のwarszawaという レコード・ショップで店長オススメのCDを何枚か購入したそうですが、 その時のことは覚えてます? ニック:ああ、もちろん覚えてるよ。 ― オススメは当たってましたか? その感想もぜひ! ニック:すごく良かったよ。確かベア・イン・ヘヴンとあと数枚買っ たんだよな。俺のお気に入りベストには入らなかったけどね(笑)。 ― では早速ですが、ニュー・アルバム『STRANGE WEATHER, IS- N'T IT?』について聞かせてください。Warp20(Tokyo)直前にあなた にインタヴューした時、「このアルバムが間違いなく自分達の最高傑 作になる」と語ってましたよね? 実際、手応えはどうですか? ニック:(笑)ああ、そうだったね。予想した通り、やっぱり過去最高 のアルバムに仕上がったのは間違いないよ。本当の自信作さ! ― 今回、ベルリンでレコーディングしたそうですが、なぜベルリン を選んだんです? ニック:ちょうどその時、タイラー(・ポープ/G & B)がベルリンに住 んでたんだ。毎回集まって曲作りをする時はまず場所を探さないとい けないんだけど、今回はベルリン・マジックって言うかさ。デヴィッ ド・ボウイなんかの実績もあるし、ずっとベルリンでやってみたくてね。 もちろんベルリンの今のミュージック・シーンにも興味があったし、ど んなものが完成するのか、俺達がどこまでできるのか、やってみよう ぜってことになったんだよ。

― 最初に『STRANGE WEATHER, ISN'T IT?』を聴いた時はベルリン でレコーディングしたと知らなくて、でも後でわかってすごく納得しま した。今作の緻密で音数を絞り込んだサウンドスケープにはベルリン のミニマリズムの影響を感じますが、 実際にはどんな部分で特に影響 を受けたと感じますか? ニック:メンバー各自で個人差はあるけど、ベルリンのクラブにかな り入り浸ってたメンバーもいるから、間違いなくいろんな部分で影響 を受けただろうね。周りにはミニマルでシンプルなサウンドが溢れて いたから、モロではないにしても、なんとなく過剰で濃密な音にはし たくないみたいなムードはあったね。 ― ジャスティン・ヴァン・ダー・ヴォルゲンとザ・ブラザーズから、 DFA人脈のエリック・ブルーチェックにプロデューサーが変わった点 も大きな変化のように感じますが、彼を選んだ理由は? また、実際 に仕事してみてどうでしたか? ニック:ジャスティンは自分のプロジェクトが忙しくなったからバンド を離れて……だから今までとは違う新しい手法を試すことにしたんだ。 ただ、エリックとは想像以上に共通点を探すのが難しかったよ……音 楽性も、考え方も、いろんな面で違ったんだ。だからたくさん言い争 いもしたけど、そんな緊張感を持って臨めたことが、結果的に良い作 品を作ることに繋がったと思うよ。 ― 前作『MYTH TAKES』はプリミティヴなパワーに溢れ、シャウトあ り、バラードありで、ロックンロール的カタルシスに満ちたアルバム だったと感じます。あなた自身、ローリング・ストーンズをよく引き合 いに出していましたよね? 対して今作は、!!!流ミニマル・ディスコ・ パンク・ファンク・レコードといった趣きでは? ニック:ああ、俺自身このアルバムが一体どんな作品なのか模索して いる段階だよ。これから客観的に聴き返したり、周りの反応を見たり して、それを再認識できると思う。そうだね、今まではストーンズ的 なところがあったけど、今回はどちらかと言えばビートルズ的……な んじゃないかな?(笑) ― では、内容についても聞かせてください。1曲目の「AM/FM」は

オリヴィア・モリとのハモリで歌われる AM/FM, the only friends he's got left. AM/FM, but they always talk too much. というサビ が印象的です。ここでの AM/FM とは何のメタファーなんでしょうか? ニック: AM/FM って言葉自体は、ラジオのことを指してるんだけど ね。歌詞の中にはもちろんストーリーが存在していて……あまり今は 細かい説明は控えたいけど(苦笑)。俺はいつもラジオが好きでよく聴 いてて、例えば誰かがラジオを聴きながら車を運転してたとして、で も恋人と別れた時はその想い出が詰まってるラジオは聴けなかったり する。ラジオから流れてくる曲を聴くと、その人のことを思い出してし まうからね。そういうのって、辛いだろ? この曲はラジオから流れて くる曲で、自分自身の過去を再確認してるってイメージだろうね。 ― M- 4「JAMIE, MY INTENTIONS ARE BASS」はその曲名通り、ブ リブリのベースが快感ですが、ベース・サウンドはあなたやバンドに とっても快感のスイッチですか?(笑) ニック:ああ、ロックンロールって元々はセックスを表すスラングだ ろ? で、この曲のベースって言葉も、同じ意味が秘められているん だ。この曲って超セクシャルじゃない? そもそもロックとかって、誰 かと寝たいってことをただ単に音楽を通して叫んでるだけなのかもね。 50年代のクラシック・ロックとかではセックスの話をしたい時は、 Music っていう隠喩を使ってたらしいし。まぁ要するに、そんな感じ の曲さ(笑)。 ― 確かにそんな感じの曲ですよね(笑)。また、今回4曲に参加して いるTHE WHITE NOISE SUPREMACISTSのIféoluwa Babalolaのヴォー カルも良いアクセントになっていると感じますが、彼女が参加するこ とになった経緯を教えてください。彼女もベルリンつながり? ニック:彼女はディーヴァ系のシンガーで、ネットで知り合ったんだ。 クレイグズ・リストっていう、日本にも似たサイトがあるかわからない けど、インターネット上の「∼求む」的なヤツさ。で、ブルックリンの クレイグズ・リストで彼女を見つけたんだ。1曲試しに歌ってもらった らすごく良かったから、結局4曲も歌ってもらうことになってね。彼女 はベルリン出身ではないけど、今はベルリンに住んでるよ。 ― ところで、!!! と言えば7、8分を優に越えるような長尺曲で味わ えるトライバルでインプロヴァイスな高揚感もたまらないポイントです が、今回は長くても5分前後に収まってますよね。その代わり、アル バム全体のつながりが重視されていて、全体で1つの曲のように感じ たのですが、これは意図的に? ニック:そうだね、アルバムの最初から最後まで楽しめるものにした かったから。俺はそういう音楽が好きだし、そう思って今作を仕上げ たよ。ただ、始めから短い曲を作ろうと決めてたわけじゃないし、取 りかかる時はほんの些細なイメージだけだった。むしろ、曲の長さと かは、自然と今の形に落ち着いたってことだろうな。

― 8 曲目の「EVEN JUDAS GAVE JESUS A KISS」からラストの「THE HAMMER」への展開には、今作のクライマックスを感じました。この 曲にまつわるエピソードが何かあれば教えてください。 ニック:「THE HAMMER」は前回のレコーディングの時にあった ちょっとしたリフを使ってて、それを何か違った曲に発展させようって ことでジャムり出したら、突如まったく違う形になったんだよ。そう言 えば、この曲の完成形を初めて演奏した時のヴァージョンは、携帯で 録った 動 画を誰 か が YouTube にアップしてるよ。あと、「EVEN JUDAS GAVE JESUS A KISS」はそんな風には全然聴こえないかもし れないけど、ほとんどベルリンで録った曲さ。

―『STRANGE WEATHER, ISN'T IT?』というタイトルの意味も教え てください。もしかして、 Strange Weather は Strange Life や

Strange World と言い換えることもできる? ニック:バンド・メンバーの半分がいなくなって……そんな状況に相 応しいタイトルだと思うよ。ふと気が付いたら、部屋の中の半分の人 間が去っていってしまった……そんな感じさ。これは天気について話 してるんだけど、もしかしたら天気じゃなくて、変化について語ってい るのかもね。その変化が天気のように自然だったから、その異様さを すんなり受け入れることができてるっていう。そう解釈することもでき るし、 Funny how turned out, isn't it ? と置き換えることもできる。 ただ、あくまでも受け入れるってことを前提にして、だけどね。 ― なるほど。では今後の予定についても簡単に教えてください。 ニック:う∼ん、実際はまだよくわかってないんだ(笑)。このアルバ ムのツアーで世界を回ると思うし、フジ・ロックにも出るし、10 月く らいにはまた日本に戻ってこれると思う。まぁ、とりあえずこれからも どんどん音楽を作っていくよ。 ― フジ・ロックは3度目ですが、どんなステージになりそうですか? ニック:少しずつイメージは固めてるけど、まだ全然決まってないよ。 とりあえずカマすさ。フジで会えるのが楽しみだよ! ― では最後の質問に。以前あなたがインタヴューで、「リスナーは 音楽から伝わる 何か を、自分に宛てたメッセージのように感じて共 感することがある。俺は音楽を聴いててそう感じることがよくあるから、 同じようにみんなが音楽の中に 自分自身 を見つけられるようなアル バムを作りたい」と語っていたのが印象的でした。では今作からは、 どんなイメージ、フィーリング、メッセージをリスナーに感じ取ってほ しいですか? または感じ取れると思いますか? ニック:暗闇や失望も受け入れること……かな? 今までで1番暗い イメージのアルバムになったと思うけど、誰にでもいつか闇は訪れる ものさ。でも、それを受け入れて進もうってことだね。

interview & text by SK, photographs by Masanori Naruse

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STRANGE WEATHER, ISN’T IT?

2010.6.23 out

[BRC-261 / BEAT RECORDS]

STRANGE WEATHER, ISN'T IT

は、間違いなく俺達の最高傑作さ。

今までがローリング・ストーンズだとしたら、今回はビートルズって感じじゃないかな?

10年近くこのバンドをやってきて、あるメンバーは去っていき、暗闇や失望も経験したよ。

でも、それらを全部受け入れて進むことができたから、素晴らしい今があるんだと思う。

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interview

by

NIC OFFER

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クリスタル・キャッスルズが登場した時の衝撃は凄まじかった ―「誰も見たことがない」も のだったからだ。何より、徹底的に素顔を隠したパブリック・イメージ。それだけでヤバイ 連中だと伝わる。お尋ね者だとの噂や、ハードコアとメタルのバンド出身という経歴、そん なものはなくとも充分だった。2人の産み出す楽曲自体が異端で、すべてを物語っていたか らだ。こま切れの電子音と奇矯なシャウト、そして破天荒なパフォーマンスでオーディエンス を熱狂の渦に巻き込んだのが、2年前。そして、遂に1st アルバムと同じくセルフ・タイト ルの2nd が届けられた。特大のインパクトを再び世に与えられるのか? そんな心配は無 用だった。前作とはまったく異なる作品になっていて、それを象徴するのが薄闇の墓場に佇 む虚ろな眼の女を写したジャケットだ。サウンドの印象は、ヒッチコックの映画を思わせる、 ゴシックでダークなそのジャケ写の雰囲気そのまま。ダーティなノイズが生み出す荒々しい攻 撃性、そこにディスコ風の無機質なビートを加えている。それが彼らの新たなフェイズであり、 当てはまるジャンルはまるで思い浮かばない。凶悪で、ダンサブルで、ポップ。またしても「誰 も聴いたことがない」音楽を引っさげ、2人は世界中のフロアをカオスに変えていくのだろう。 ぜひこの眼で見たい。確かめたい。1日も早い来日を望むばかりだ。 » 角田仁志 イェーセイヤーやメジャー・レイザーのツアー・サポートを務め、早くも海外メディアやブロ ガーが挙って取り上げ、M.I.A.をも味方に付けた今現在最強のバズ・バンドが、このスレイ・ ベルズだ。 そんなブルックリン発の男女デュオから待望のデビュー・アルバム『TREATS』が、 M.I.A.のレーベル N.E.E.T. Recordings からリリースされた。これが、M.I.A.にも負けず劣 らずマシンガンをぶっ放したような衝撃的なサウンド! 低音が割れるほど激しい打ち込みリ ズム・トラックに、耳を劈くのようなラウドでヘヴィなディストーション・ギター。この爆弾サ ウンドの正体、デレク・E・ミラーはポスト・ハードコア・バンド、ポイズン・ザ・ウェルの 元ギタリスト。バックで鳴っているハードコア上がりのガチノイズ、リズムやリフのユニーク さも然ることながら、アレクシス・クラウスのヴォーカルの表現力の幅もスゴい。時に愛らし くフェミニンにバブルガム・ポップを口ずさむかと思えば、一転して挑発的にシャウトする。 雑多な音楽性からは前衛的な印象も受けるが、 ブルックリンからのザ・ティン・ティンズへ の回答 と称されるほどのポップさもまた彼らの魅力。幸運なことに私は彼らのライヴをコー チェラで見ることができたが、髪を振り乱して攻撃的に歌うアレクシスの姿が今でも印象に残 っている。 » 新井小百合

PHOTO BY TEPPEI KISHIDA

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SET LIST

-01 _ TOTAL LIFE FOREVER 02 _ CASSIUS 03 _ OLYMPIC AIRWAYS 04 _ BLUE BLOOD 05 _ MIAMI 06 _ BALLOONS 07 _ ALABASTER 08 _ SPANISH SAHARA 09 _ RED SOCKS PUGIE 10 _ ELECTRIC BLOOM ENCORE -11 _ THE FRENCH OPEN 12 _ TWO STEPS, TWICE

Foals

Turn The Light O

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@ ASTRO HALL, 2010.6. 15 フジ・ロックに先行して1夜限りの単独来日。それにしても、アストロ・ホールは今の彼らには小さすぎだろう(実際、肉体的にも逞しくなった気が!)。個々人のプレイ の精度は確実に上がっている。特にジャックのドラムは凄まじい。以前ヤニスが語ったように 猛獣みたいに叩く のが彼のスタイルだが、圧倒的な存在感とパワーは猛 獣を通り越して、もはや神話世界の怪物レベル。彼なしでフォールズはフォールズたり得ないはず。また、2nd アルバムの曲は徹底的に作り込まれているため再現が 難しいのでは?という危惧も、杞憂だった。特に「BLUE BLOOD」は青い照明と相まって深海を想起させ、その静けさの中に響くバスドラは心臓の鼓動のよう。五感に呼 びかけるステージで、彼らの真骨頂が示された。今の世界観に合うようアレンジされた1st アルバムの曲は、深みを増した2nd の曲と比べても遜色ないどころか、ど の曲も起爆剤的エネルギーで会場を大いに湧かせた。ただ、壮大な世界観に浸った後だけに、アンコール2曲のサウンドに物足りなさを感じたのも事実。それほど世 界観は徹底されているのだ。それにしても1st で完結したと思っていた曲群がまったく違った輝きを持って演奏される様を目の当たりにすると、次は一体どんな音まで聴 かせてくれるのだろう。知性を備えた怪物達の進化は、留まるところを知らないようだ。 » 中山あい

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Drums

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@ Shibuya DUO, 2010.6. 14  梅雨入りし、日本はいよいよ夏に向けてカウントし始めましたが、 いま夏と言えば真っ先に浮かぶのは、やっぱり彼ら。冬の寒さを 吹き飛ばすかのように届けられたEP『SUMMERTIME!』で、一足 早く夏を先取りしていたザ・ドラムスでしょう。そんなEPの曲をリ アルタイムで聴ける日が来るのが待ち遠しい! そのEPと同時期 に書かれた 夏じゃない 楽曲を中心とした彼らの1st アルバム 『THE DRUMS』。それはどこまでも感情の趣くままに作られた、 すごくパーソナルなアルバムだそう。待望の初来日ライヴも大盛 況に終わり、ほっと一息ついているバンドを代表してジョンとコナ ーに話を聞いてきました。そこから浮かび上がったのは、どこまで も自然体で、自分達が影響を受け、鳴らしたい音楽に対する素直 な想い。そう、それは音楽に対するただただひたむきな想い。ま さにこの人柄にして、このサウンドあり。早速サマソニでの再来日 も決定、今年の夏はドラムスで決まり !? ― 日本はどうですか? ジョナサン・ピアース(Vo.):実は最初はそんなに期待してなかっ たんだ。でも日本に着いて飛行機を降りた瞬間、「これはイケる!」 って確信したよ(笑)。 コナー・ハンウィック(Dr.):ぼくはNYが大好きなんだけど、NY ほど好きだと思える場所ってあんまりないんだ。でも日本は好きだ ね。みんな生活を大事にしているし、他人への思いやりがあるし。 ヨーロパではそういうの、あんまり感じられなかったから。 ― 日本にはどのくらい滞在するんですか? その間に行きたい ところ、してみたいこととかあります? ジョン:あと2日いるんだけど、でも何日か前に日本に着いてか らほとんどやり尽くしたよ(笑)。カラオケも行ったし、ショッピング もしたし、昨日はライヴもしたし、パーティにも行ったし、DJ もし たし……それから寿司も食べまくったな!(笑) ― エンジョイしまくってますね(笑)。昨夜のライヴも素晴らしか ったですよ! 日本でライヴしてみてどうでした? ジョン:昨夜のライヴは間違いなく、フェイヴァリットの1つだね! 初めての場所にパッと行って、パッとライヴをすると、観客との距 離を感じたりするんだ。でも昨日は一体感があったし、同じもの をみんなで共有できてる感じがして。しかもそれを速攻で感じられ たんだ。素晴らしかったよ。 ― YouTubeで見たんですが、いつもはライヴでコーラスの女 の子達がいるみたいだけど、今回は帯同しなかったんですか? ジョン:彼女達は『SUMMERTIME!』限定だったんだ(笑)。 コナー:アイデアっていうのは、浮かんで、ある程度盛り上がると こまではいいんだけど、どこかでやっぱり使い果たしてしまうって いうか。あれってEPのサウンドやフィーリングにはピッタリだった けど、だからって同じことを続けてもしょうがないからね。 ジョン:元々の、4人の男が集まってクラシックなポップやロック ンロールをプレイするってコンセプトにハマってないところもあっ たしね。だから、これ以上は追求する意味がないと感じたんだよ。 ― では1st アルバム『THE DRUMS』についても聞かせてくださ い。EPの楽曲に比べ、今作はよりメランコリックになった印象を 受けました。アルバム制作時には、やはりEPのサウンドからの変 化は意識していたのでしょうか? ジョン:EPもアルバムも、半分以上はフロリダで同時期に書いた ものなんだ。EPができて、じゃあ次はアルバムっていうわけじゃ なくて、今まで書いていた曲の中で夏っぽいものをまとめたのが 『SUMMERTIME!』だったんだよ。 ― なるほど。 ジョン:で、残った曲はどうしても夏っぽい雰囲気じゃない、シリ アスなものだった。その時点でアルバムの方向性が見えてきてた から、NYに戻ってさらに何曲か書いて、このアルバムが完成した んだ。でも、なぜかNYに戻ってから書いた曲はすごくパーソナル でね。「せっかく作ったし、これもアリかな?」ってその時は思った けど、何年か経って聴いたら「何でこんなにもパーソナルな曲を書 いちゃったんだろう?」って思うかもしれないね(笑)。 ― てっきりEPが完成してからアルバムの制作に取り掛かったの かと思ってました。では、今作は全体を通してのテーマみたいな ものはあったんですか? それとも曲ごとにまちまちって感じ? ジョン:ぼくの場合、自然に曲が出てくるのを待たないと書けな いんだよ。ポップ・ソングってそういうものじゃない? それこそ、 曲の方から「作って!」って言ってくるような感覚がほしいんだ。だ から、その時の雰囲気や気分でダークなものになったり、ハッピ ーなものになったりするんだよ。 コナー:ジョンは1、2ヶ月くらい全然曲が書けない時もあるんだ。 でもその逆で、ある時なんかみんながちょっと出かけて戻ってみた ら、「SKIPPIN' TOWN」と「IT WILL ALL END IN TEARS」の2曲が 完成してたなんてこともあったよ。

―「ME & THE MOON」や「FOREVER & EVER AMEN」ではあな た達が THE WAKE やザ・スミス、ジョイ・ディヴィジョンなどから 受けたという影響が素直に表れていると感じましたが、実際それ らのバンドからの影響は曲作りに反映されているのでしょうか? コナー:確かにその2曲はトーンや音の響きがあの時代を感じさ せるだろうね。ファクトリーっぽさっていうか。シンセも使ってるし、 ドラムのカチカチっとした音の入り方とかさ。 ―ドラミングに関しては、そういう影響はありますか? コナー:アルバムのドラムのパートは全部打ち込みなんだ。だか らアルバムのドラム・サウンドについてはコメントできないな。で もライヴでのドラミングに関して言えば、ノーだね。ああいうバン ドのドラマーってすごくストイックで、精密なドラミングをするんだ よ。でも、ぼくにそれができるとは思えないな(笑)。ぼくはスネ アの音を平気で外しちゃったりするタイプだからさ。できるように なりたいって気持ちはあるけどね。

―「LET'S GO SURFING」、「DOWN BY THE WATER」の2曲は 『SUMMERTIME!』にも収録されていましたが、アルバムにも収め ることにしたのはなぜ? イメージ的にも雰囲気の違う曲なんで、 意外だったんですが。 ジョン:そうだね、その2曲はアルバムにも入れておかなきゃっ て思ったんだ。と言うのも、そうじゃないとアルバムとして、ドラ ムスの世界観をフルに提示できないと思ったからね。1st アルバ ムは、どんなバンドもその判断材料にされるだろ? 1st を通じて こういうバンドかって思われるし、そのためには自分達の持ってる 世界観をすべて網羅したかったんだ。EPを持ってない人もいるだ ろうしね。 ― 確かに「LET'S GO SURFING」と言えば、もはやドラムスの代 名詞ですらありますね。 ジョン:60年代のガールズ・グループ的なサウンドも、ドラムス の音世界のコンセプトとして非常に大きな部分なんだよ。だから、 この2曲もちゃんとアルバムに入れたいと思ったね。 ― ドラムスの楽曲は一聴して、すぐに口ずさめるような親しみ やすいメロディが特徴的ですよね。やはり曲作りの際、メロディに は重点を置いているのでしょうか? コナー:メロディは1番大事だね。 ジョン:そうだね、確かにメロディは大事だよ。とは言え、やっぱ り伝えたい曲のフィーリングが1番大事かも。ただ、メロディと歌 詞の2つが相まって、そのフィーリングが醸し出されるから、やっ ぱりメロディは重要だよ。ぼくらの書いてる曲の歌詞はシンプルな ものがほとんどだけど、力強いメロディと合わさった時に、突然そ の響きが増すことがある。ぼくらはそれがしたいんだよ。 ― ではドラムスとして今後目指したいサウンドや、バンドの在り 方とかありますか? コナー:ぼくらはそういうことには興味ないんだ(笑)。 ジョン:これからどんな風にしていこうとかは考えてないよ。現状 を把握して、そこから生まれる副産物を楽しもうと思ってる。で、 これから作る音楽も、古いものだからって捨てたり、新しいから拒 絶するじゃなくて、良いと思うものだけをピック・アップして作っ ていきたいね。今のところ、自分達のサウンドには満足してるよ。 メジャーと契約した途端、「良いスタジオでやらないか?」とか、「憧 れのプロデューサーと組まない?」とかいろいろ誘われるんだ。でも、 「THE FUTURE」を台所のカウンターでコナーといっしょにレコーデ ィングしてた時みたいに、今まで自分達が曲を書いてきた姿勢を 守っていきたいね。だから今はそういうのは全部断ってる。「選択 肢がない」ってことが、「ぼくらの選択」だと思ってるよ。 コナー:自力でできなくなったら、それはもう自分達の力が尽き たってこと。だから今は人から力を借りようとは思わないんだ。 ― これからもそのオリジナルを貫いてくださいね! では最後に、 昨日の来日公演がツアーのラスト・ショウだったみたいですが、 今後の予定は? コナー:NYに戻ったら少しの間休みを取って、それから先はもう フェス尽くしだよ! クリスマス頃までツアーが続くはずさ。 ジョン:サマソニもあるしね。本当だったらこのままサマソニまで 残ってたいくらいだよ(笑)。

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いと漠然とは考えていたけど、具体的に何か方向性とかコンセプ トを決めて作業したわけじゃなかったね。 ― デビュー EP『SUCKERS EP』と比較しても4人のバンド・アン サンブルがより有機的かつプリミティヴで、サウンドそのものが 呼 吸し、躍動する生命 といったムードを感じました。そういった意 見については、どう思いますか? オースティン:EPを出してからたくさんのライヴを重ねたし、ツ アーもやったから、バンドは確かによりタイトになっただろうね。 あと、ツアーとかを通して、もっとビートが立った曲をやりたいと 思うようになってね。その方がライヴでやるのが楽しいし、お客も 盛り上がるんだ。3人だった時は専門のドラマーがいなかったか らあまりそういう曲はできなかったけど、今はブライアンがいるか らさ。そういう要素が加わったことで、よりエネルギッシュなサウ ンドになったんだと思うよ。 ― なるほど。ビート以外でも、今作はエレクトロニックな要素 は抑え目ですよね? サンプリング/ループを用いるにしても、自 分達が実際に演奏したものを使ったと聞きました。そこまでこだわ った理由は何でしょうか? オースティン:元々、サンプルは自分達の演奏を使うことが多い んだ。なんか自然とそういうやり方になっていったんだよ。もちろん、 ライセンスの関係がクリアだってこともあるけどね。あと、せっか くのデビュー・アルバムだからライヴよりもっと多くの楽器を使い たかったし、使い慣れた楽器もサンプリングして変化させて、少し 違った音で表現したかったね。要するに、自分達にしか出せない 音を追求したんだ。 ― 今作で特に心を揺さぶられたのが、「BLACK SHEEP」と「A MIND I KNEW」、「2 EYES 2 C」の3曲でした。これらの曲に顕著 なように、あなた達の楽曲からは宗教的でスピリチュアルな要素 も強く感じますが、それらはサッカーズの音楽に欠かせないもの でしょうか? オースティン:オレ達の音楽には聴き手の心を揺さぶる何かが備 わっていてほしいといつも思ってるし、それと同時に楽しくもあっ てほしい。だから、曲のムードとかは結構大事にするし、曲ごと にそれが一変したりもする。そうした方が、いろんな側面を表現 できるからね。 ― なるほど。 オースティン:それに、何度聴いても毎回違った何かを発見でき るものでもあってほしいから、ありとあらゆる要素が混じり合った 濃い曲を作るようにもしてるね。宗教性や神秘性を意図的に狙っ てるわけではないけど、厚みと深みのある楽曲を作ることは意識 してるよ。 ― あなたとクゥイン、パンの3人は、マルチ・インストゥルメン タリストだそうですが、まさか「SAVE YOUR LOVE FOR ME」や 「IT GET YOUR BODY MOVIN'」、「MARTHA」での印象的なブラス・

サウンドまで自演じゃないですよね? オースティン:そのまさかさ(笑)。トランペットは全部パンが演奏 してるよ。それに、ブライアンもマルチ・インストゥルメンタリス トさ! 今作のピアノとキーボード・パートは全部彼だしね。それに、 ライヴだとブライアンはドラムとキーボードを同時に弾いたりもす るんだ。本当にスペシャルなドラマーだよ。 ― おお! メイク・ビリーヴのネイト・キンセラ以外にもそんな 使い手がいたんですね。ちなみに、アートワークとアルバム・タ イトルもかなり野性的ですが、アートワークはなぜマンドリルのイ ラストに? なんか笑えます。 オースティン:インパクトのあるイラストだし、カラフルで、ワイ ルドで、まさにアルバムのカラーにピッタリだと思ってね。ハマっ てるだろ?(笑) ―(笑)EP はイェーセイヤーのアナンド・ワイルダーのプロデュ ースでしたが、今作はレ・サヴィ・ファヴやアソビ・セクス、パッ ション・ピットなどのプロデュースで知られるクリス・ゼインが担 当していますね。なぜ彼を選んだんです? また実際に作業して みてどうでしたか? オースティン:クリスとの作業は最高だったよ。おいしいチョコを いっぱいくれて、健康的な食事についても教えてくれたしね(笑)。 彼が手掛けたアルバムが好きだったから頼んだんだ。パッション・ ピット(※『MANNERS』)とINOUKのレコードが特に良いよね。 ― バンドの活動拠点であるブルックリンについても聞かせてく ださい。あなた達にとってグラスランズ・ギャラリーはどんな場所 ですか? また、グラスランズ周辺で最近注目しているバンドなど あれば教えてください。 オースティン:グラスランズはブルックリンの独創的なライヴ・ハ ウスで、これからの若手ミュージシャンを支援してくれる特別なハ コだよ。自分らもそこでよくやったし、今でもよく遊びにいくんだ。 オーナーが同じマンハッタン・インもね。当時はイェーセイヤー やMGMT、ベア・イン・ヘヴン、チェアリフト、リアル・エステイ トなんかとよくいっしょに演ってたな。いま個人的にはキャメロン・ ハルというシンガー・ソングライターに注目してるよ。実は最近、 彼のデモを録るのも手伝ったよ。 ― なるほど、早速チェックしてみます。では、最後の質問に。 自分達の音楽で何か1つだけ現状に変化を起こすことができると したら、何をどう変化させたいですか? オースティン:自分達にこの世界の何を変えられるかなんて想像 も付かないけど、そうだな……オレ達全員が女性になって、美し い女性の声で歌えたらなって思うことはあるよ(笑)。

photographs by Victoria Jacobs interview & text by SK, translation by Shin  CBGB'sがその歴史に幕を降ろしたのは、2006年10月。それは ある老舗ライヴ・ハウスの終幕以上に、古き良き時代、ある世代 の伝統の終焉を予感させる悲しい出来事だった。が、その遺志は 現在でもNYのそこかしこに確実に息づいている。その1つが、ブ ルックリン・ウィリアムズバーグのグラスランズ・ギャラリー。ア ニマル・コレクティヴやヤー・ヤー・ヤーズ、ライアーズなどが 若かりし日々を過ごし、ここ数年ではヴァンパイア・ウィークエンド やMGMT、パッション・ピット、リアル・エステイトなどがライヴ を繰り広げるNYの新たな看板ヴェニューだ。そして2010年現在、 盟友イェーセイヤーとともに、同スペースの看板バンドとして ブ ルックリンの今 を体現するのが、このサッカーズ。メンバー4人 が複数の楽器を操り、歌い、叫び、チャントするスタイルや、そ のどこか宗教的な神秘性を纏うドリーミーなサイケデリック・サウ ンドは、アクロン/ファミリーやMEGAFAUNを彷彿させる。デビュ ー・アルバム『WILD SMILE』のリリースに当たり契約を交わした frenchkiss recordsのレーベル・メイト、LOCAL NATIVESとのツ アーも無事終了し、束の間のオフを楽しむメンバーを代表して、 オースティンに話を聞くことができた。 ― 今はちょうどLOCAL NATIVESとのツアー中ですよね? ツア ーの盛り上がり、調子はどうですか? とても魅力的なカップリン グですが、特にインスピレーションに富んだ瞬間などあれば教え てください。

オースティン・フィッシャー(Vo. & Multi-instrumental):とにか く彼らとのツアーは素晴らしい体験だったよ! 誘ってくれたことに 本当に感謝してるんだ。たくさんインスパイアされる瞬間はあった けど、そうだな……ミシシッピでのライヴの後、真夜中の2時と かだったのにファンの誰かが大量のピザを頼んでくれたことがあっ てね。また、それを作ってくれた人も自分の家で作ったような出 来立ての新鮮なピザを届けてくれてさ。夜中なのになんか不思議 でおもしろいエピソードだったね(笑)。 ― ライヴと言えば、以前はワイルドなフェイス・ペイントとコス チュームも評判でしたが、最近はどんなスタイルで? オースティン:ルックスは日々変わってるよ。ブライアン(・エイケ ン/Dr. & Key.)は最近ではなぜかローブを着るのが定着しつつあ るし、クゥイン(・ウォーカー/ Vo. & Multi-instrumental)はゴー ルドのシャツを愛用してるよ。オレは全身革にしようかなと思って るんだ(笑)。 ―(笑)じゃあ、プレイの面で特に心掛けていることなどあれば 教えてください。 オースティン:ライヴの時は自分達の音楽をより生々しく、ダイレ クトに届けることを意識しているよ。アルバムとはまた違った感じ になるようにしてね。その方が、自分達やお客もより楽しめると思 うんだ。 ― ツアーでいっしょだったLOCAL NATIVESを始め、ジ・アント ラーズやパッション・ピットなどを擁するfrenchkiss recordsと契 約しましたが、これはどういう経緯で? また、frenchkiss re- cordsにはどんな印象を持っていますか? オースティン:(レーベル関係者の)ポールとシドが「うちのレーベ ルに来ないか?」って誘ってくれたんだ。素晴らしいレーベル・メ イトの一員になれると考えただけでワクワクしたし、とても光栄な ことだったよ。frenchkiss recordsのことは昔から知ってたし、メ ンバー全員がシドのバンド、レ・サヴィ・ファヴも大好きだったか らね。 ― では、バンドについても聞かせてください。あなたとクゥイン、 パン(Vo. & Multi-instrumental)の3人は小さい頃からの友人同 士、特にあなたとクゥインは従兄弟だそうですが、それぞれ別々 のキャリアを歩んでいた時期もありますよね? サッカーズを始め たきっかけは何だったんですか? オースティン:結成自体はとてもゆっくりで、そんな深く考えずに、 気付いたらいつの間にか組んでたって感じだね。クゥインとオレは 従兄弟でコネチカットにいたガキの頃からの知り合い同士だし、 まずはそこが始まりかな? NY に移り住んでからしばらくしたらま たいっしょに音楽をやり始めてね、パンとか他の友人達と。その後、 パンとクゥインと3人でバンドを組むことになって、 サッカーズ という名前に決まったんだ。それで4人目、良いドラマーが必要 だなと思ってた時に、ブライアンに出会ったんだ。 ― ブライアンが加入して最後のピースが加わったと感じたそう ですが、彼の特筆すべき魅力、バンドにもらたした要素とはどう いったものですか? オースティン:とにかくミュージシャンシップが素晴らしいんだよ。 それ以外だと、彼はハンガリー人との経験が豊富だから、ヨーロ ッパ人に対応できる能力があること(※ブライアンはハンガリーに 1年間ほど移住していた)。それに、毎日走りに行ってるから、1 番健康的なんだ。そこも外せないよ(笑)。 ― なぜ Suckers というバンド名に? インパクトの強すぎる名 前は諸刃の剣じゃない?(笑) オースティン:バンド名の由来はたまに聞かれることもあるけど、 メンバー全員誰も意味を知らないというか、考えたこともないんじ ゃないかな? なんか響きがいいね、悪くないかも?って程度のノ リで付けたんだと思うよ。 ― なるほど。では、デビュー・アルバム『WILD SMILE』につい て聞かせてください。ズバリ傑作だと思います! オースティン:(笑)サンキュー! ― 今作にコンセプトのようなものはあったんですか? オースティン:レコーディングを始める2ヶ月前とかにほとんどの 曲を書いたんだ。とにかくスケールの大きな音作りをやってみた

Suckers

2010.6.16 out

[ PCD-20060 / P-VINE RECORDS] 『

WILD SMILE

SUCKERS

(6)

るかのような曲が多いように感じました。なかでも「CAMARILLA」 や「DIAL」を聴いて特にそう思ったのですが、これらの曲はどうい ったことからインスパイアされて生まれたのでしょうか? ベン:それは君独自の視点だと思うけど、2曲とも暗い世界観を 持った曲だよね。「CAMARILLA」は生まれ変わりがテーマなんだよ。 「DIAL」のアイデアは結構前からあったな。『ALPINISMS』よりも 前だね。歌詞は……夢から覚めてすぐにその夢が何だったかノー トに書いたことってある? 歌詞の90% は、アリー(アレハンドラ・ テヘーザ / Vo.)が見た夢を目覚めてすぐに書き記したものなん だ。この2曲に共通しているのは、歌詞がストーリーを語り、音 がそのストーリーを引き立てるというよりは、音の方がストーリー を語り、歌詞は曲の装飾品のような感じってことだね。 ― ラストの「THE WAIT」は、あなたのギター・ワークやアレハ ンドラ、クラウディアのヴォーカル・ハーモニーがこれまでで最も 充実した、まさにSVIIBの集大成的な曲ではないかと思いましたが、 あなた自身はどう感じていますか? ベン:この曲は1番最後にできた曲だよ。実は他の曲が全部完成 して、もうこれで終わりだと思っていたんだ。もう1曲アルバムに 加えるなんて思ってなかったんだけど、すごい早さで突然この曲 ができたから入れることにしたんだよ。アルバムの中で最も張り詰 めた空気のある、とてもパーソナルな曲だね……説明するのは難 しいんだけど。確かに今まで書いた曲とは、どれとも違っているよ ね。優しい感じのテクスチャーとか。この曲がアルバムの中で1 番好きだよ。

― 今作のタイトル『DISCONNECT FROM DESIRE』はブライア ン・イーノの『OBLIQUE STRATEGIES』(※イーノと友人が考案し たカードゲームのようなもの。イーノは制作に行き詰まるとこのカ ードから1枚を引いて、その文句に従って行動していた)の文句の 1つから取ったものだそうですが、なぜこの言葉をタイトルにした んですか? 実際、イーノのように『OBLIQUE STRATEGIES』を使 っていたのでしょうか? ベン:ぼくらはブライアン・イーノのファンなんだ。だから『OB- LIQUE STRATEGIES』をレコーディングする前に使ってみたんだよ。 そしたらこの DISCONNECT FROM DESIRE って言葉が出てきて ね。このフレーズは、見た瞬間に吹き飛ばされたよ。そして考え れば考えるほど、頭の中で大きくなっていったんだ。このフレーズ そのものが自己の世界を形作って、頭の中に住み着いたっていう かね。本当に美しいフレーズだと思う。人によってはネガティヴに 捉えるかもしれないけど、ぼくはとてもポジティヴに捉えてるんだ。 『OBLIQUE STRATEGIES』を使って出てきたフレーズでアイデアを 限定するべきではないと思うけど、ぼく達はすごくこのフレーズに 助けてもらったんだ。 ― 今作はアートワークも印象的です。一見シンプルなアートワ ークですが、このシンボリックなマークは何を表しているのでしょ うか? ベン:これは SIGIL と呼ばれるものなんだ。例えば、何か願い 事がある時に、その願いを文章にして書いて、文字を減らしてい くんだ。これといった決まった方法があるわけじゃないんだけどね (※他に、文章中の同じ文字を消していくという方法もある)。そう して残った文字を使って、こんなマークに改造するんだよ。願いを マークにすることで、その願いを現実にするっていう感じさ。『DIS- CONNECT FROM DESIRE』のジャケットのマークを作ってくれたの は、前作のジャケットを担当した人なんだ。彼に SIGIL のコンセ プトを伝えたら気に入ってくれて、完成したデザインがこれだよ。 このマークは、DISCONNECT FROM DEISRE という文章から生ま れたんだ。 ― 今回、インディ・レーベルとしては大手のVAGRANTに移籍 しましたね。VAGRANTと言えばエモ系バンドの印象が強かったの で驚きましたが、どのような経緯で移籍したのですか? ベン:そうだね、ちょっと不自然に見えるかもしれない。でも1番 驚いてるのは他でもない、ぼく達だよ。VAGRANTのスタッフがぼ くらの音楽をすごく気に入ってくれて、VAGRANTに所属するチャ ンスをくれたんだ。本当にラッキーだね。彼らは所属アーティスト に傾向はあるけど、純粋な音楽ファンなんだよ。SVIIBを愛してく れる人なら大歓迎さ。例えば、ぼくの嫌いなバンドを好きだから って、その人のことまで嫌いだなんて、そんなことはない。誰に だってSVIIBを好きになる権利はあるんだよ(笑)。本当に彼らはし っかりサポートもしてくれるしね。それに、音楽の方向性に関して はすべてこっち任せなんだよ。「アルバムを作ってる」って知らせ たら、「本当に? 早く聞かせてくれよ!」って言うだけなんだ(笑)。 それだけぼくらの音楽的なポテンシャルを信用してくれてるってこ とでもあると思う。これって相当ラッキーなことだよ。 ― では最後に、今後の予定を簡単に教えてください。来日の予 定はありますか? ベン:とにかくツアー三昧だね。7月にヨーロッパに行って、そ の後はオーストラリアだ。8月に少しまたヨーロッパに行って、9 月からはアメリカ・ツアーだよ。11 月と 12 月はまだよくわかって ないけど、行けてない所に行きたいね。日本にも行きたいと思っ てるよ。 ― 実現を祈ってます! ベン:それからまだ詳しくは言えないけど、SVIIB関連でちょっと したプロジェクトがあるよ。でも、 今は『DISCONNECT FROM DESIRE』の曲をもっとライヴでやりたいと思ってる。まだアルバム が完成して3回しか演れてないんだけど、ライヴだと自分達の想 像以上に良いんだ。早くいろんな人にライヴを見てもらいたいね! interview & text by Azusa Hasegawa, translation by Mitsuro Waki  2008年リリースのデビュー・アルバム『ALPINISMS』で世界中

を魅了し、また昨年はサマー・ソニック2009やマイ・ブラッディ・ ヴァレンタインのキュレートする ALL TOMORROW'S PARTIES に出演するなど、劇で言えばまさに大成功を収めたファースト・ ステージ。そして、そんなスクール・オブ・セヴン・ベルズ(以下 SVIIB)のセカンド・ステージがいよいよ開幕する。前作での、ア レハンドラ、クラウディア姉妹の幻想的でエキゾティックなヴォー カルと、コーラス・ハーモニー。そしてベンの曲ごとに自在に変 化するギター・ワークはそのままに、よりリズミカルでアップ・ビ ートな曲も増えつつ、幻想的な世界観がさらに深まった2ndアル バム『DISCONNECT FROM DESIRE』。幽玄でありながらどこまで も突き抜けるようなポップさは、この3人にしか鳴らせない唯一 無二の とっておき 。いよいよその第2幕が開ける。しかもこれか らさらなる とっておき まで用意してあるという。そんな第2幕の 序章、とくとご覧あれ。 ― 2009年はサマソニやマイブラがキュレートしたALL TOMO- RROW'S PARTIESに出演していましたが、それぞれ出演してみて どうでしたか? ベンジャミン・カーティス(G):サマソニは最高だったよ! 多分 今までで1番オーディエンスの数が多かったんじゃないかな? そ れに日本はしっかり音楽を聴いてくれるから素晴らしいよ。音楽に は「LOST IN TRANSLATION」な状況もないしね(笑)。あと、ATP もスゴかったね。ケヴィン・シールズはぼく達のヒーローだからさ。 マイブラの後に演奏できたっていうのもすごい経験だよ。恐ろしく もあったけど。周りには「絶対やらない方がいい。マイブラの轟音 の後なんてお客さんの耳は死んでるだろうし、何も聴こえなくなっ てるよ」って言われたんだ。でも、ぼく達はやるべきだと思ったんだ。 マイブラはぼく達の憧れで、彼らの後にやれるなんて、言ってみ れば究極の勝利じゃないか! 結局、その年の最高なライヴにな ったよ。サマソニとATPは去年のぼくらの2大ハイライトさ。 ― なんでも今作『DISCONNECT FROM DESIRE』はそうしたライ ヴでの経験が詰め込まれた作品だとのことですが。 ベン:ああ、そうしたフェスティヴァルでの経験は確かに今作に 影響を与えたと思うよ。前作はブルックリンでぼくら3人だけで作 ったようなもので、人との繋がりが何かを生み出すかなんて考えも しなかった。それが、サマソニやATPのようなフェスティヴァルで、 大きなステージや他の素晴らしいバンドのライヴを見て、音楽の また違ったエナジーを感じることができた。そういったエキサイテ ィングな体験は間違いなく今作に生かされていると思うよ。 ― それでは早速、『DISCONNECT FROM DESIRE』についても 聞かせてください。かなりの自信作が完成したのではないかと思 うのですが、手応えは感じていますか? ベン:今も言ったけど、前作は暗い部屋で3人だけで作ったもの で、たくさんストックしてあったアイデアを最終的に1枚にまとめ た感じだった。だから、ぼくらがレコーディング中に辿ってきた「自 分達が何であるかを探す旅」を『ALPINISMS』からは感じてもらえ ると思う。それに対して、今作は最初からすでに意図が固まって いたというか、ぼくらが何を好きなのかがレコーティング前からわ かっていたんだよ。だから自分達の音楽に自信を持って、SVIIB の可能性を追求できたんだ。今までより純粋に曲作りができたし、 仕上がりにも誇りを持っているよ。 ― また、今作はベンが自らプロデュースし、また自宅スタジオ でのレコーディングだったようですが、そうした理由は? ベン:まず、今作のレコーディングは「アルバムを作らなきゃ!」っ て状況だったわけじゃないんだ。とりあえずうちでレコーディング を始めてみたら、それがすごく良かったんだよ。今回は曲のアイ デアもすぐに浮かんで、すごい早さで進んでね。だから、「やっぱ りどこかのスタジオでレコーディングしよう」とか「誰かプロデュー サーを雇おう」っていう暇はなかった。ヴィジョンがはっきりしてい たからかもしれないね。「壊れてないなら直す必要はない」ってこ とさ。だからレコーディングは一気に勢いで終わらせたって感じだ った。それに1stアルバムの時はまずレコーディングの仕方を学 ぶ感じだったけど、今回はどうすれば自分の出したい音が出せる かわかっていたから、純粋に音楽を楽しんでいたよ。出したい音 はあるけど方法がわからないとかって……楽しくないじゃん?(笑)。 ― なるほど。ではそれぞれの曲についても聞かせてください。 1曲目の「WINDSTORM」は、前作のラスト「MY CABAL」から繋 がっているような印象を受けましたが、そういった意図はあったの でしょうか? ベン:そう、確かにこの2曲は同じような表情のある曲だからね。 「MY CABAL」は恍惚的な曲で、希望や探索といった内容になって いるけど、「WINDSTORM」はそういったアイデアを再構築したも のなんだ。より自信に満ちた独善的な視点から描かれたものだけ どね。コインの裏表のようなものというか、繋がりは間違いなくあ るよ。『ALPINISMS』と『DISCONNECT FROM DEISRE』の2作も 繋がってるとぼくは考えているしね。

― 4 曲目のタイトル「I L U」は、やはり I Love You の略? ま た曲中では I Want You と歌われていますが、この曲は恋愛につ いての曲なのでしょうか? ベン:これはね、実は I Loved You で過去形なんだよ(笑)。こ の曲は非常に緊張感溢れるラヴ・ソングだね。昔好きな人がいて、 その人のことを愛していた。けど、時が経ち、世界が変わり、君 も変わって、すべてが変わった。そういうことを表現しているんだ。 起こったことはすべて真実、その中にあった愛も真実。ラヴ・ソン グなんだけど、別れの歌。ほろ苦い悲しみが込められているんだよ。 ― またアルバム後半、幽玄な雰囲気とアップ・ビートが同居す

2010.7.7 out

[ ARTPL-010 / PLANCHA]

DISCONNECT FROM DESIRE

SCHOOL OF SEVEN BELLS

School of Seven Bells

(7)

back―」のリフレインはヘンリーお父さんが歌っているんですか? ブレイン:いや、ヘンリーじゃなくてぼくだよ。 ― えっ、ブレインなんだ! やはり親子、妙に渋みが増したような……ち なみにヘンリーは今作でも大きく貢献しているのでしょうか? ブレイン:そうだね。彼はアルバム制作で大きな役割を担ってたよ。演奏 面ではそうでもなかったけど、曲作りにおいては確実にね。 ― それとソースは忘れたけど、メンバーで1番女の子からモテるのはヘ ンリーってウワサを聞きましたが、本当かな? ブレイン:フフフ……うん、ある一定の年齢層の女性ファンにヘンリーは とても人気だよ(笑)。 ― 話が逸れましたがもう1曲、シンセと伸びやかなファルセット・ヴォイ スがとろけるように交わったM- 7「DREAMING OF ANOTHER WORLD」は、 文字通り微睡むような浮遊感に満ちています。意味深なタイトルですが、 この世界観の意図とは何でしょうか? ブレイン:これはウィリアム(・リース/ G)の曲なんだ。何にインスパイア されたかはわからないけど、ここでの Another World とは「好きなように わがままになれる世界」ってことなんだと思う。親を怒らせる高圧的な態度 とかちょっと子供っぽいかな?って思わなくもないけど、彼の言いたいこと はよくわかるよ。そうそう、この間のライヴではファンがこの曲をいっしょに 歌ってくれたんだ。

― DOT TO DOT FESTIVALに出演していましたね。新曲の手応えはどう でしたか? ブレイン:うん、すごく良かったよ。あんなに楽しいライヴは 1 年ぶりくら いだったかも。ぼくでさえまだ歌詞を完全に覚えてない「DREAMING OF ANOTHER WORLD」をいっしょに歌ってくれたんだからね(笑)。 ― アルバムはデビューから2年置きに発表していますが、このコンスタ ントなリリースはファンとしてとてもうれしいです。やはりこのペースはバン ドの尽きない創作欲求の表れであり、音楽に対するオープン・マインドな スタンスと捉えますが、それはバンド結成時から不変ですか? ブレイン:うんうん、そうだと思うよ。何年も活動せずにいて、また戻って くるのは大変だからね。でも、もしかすると次のアルバムはもっと時間をか けるかもしれない。 特に2年ごとに出そうって決めてるわけじゃなくて自然 にそうなってるだけなんだ。ぼくらにはぼくらのリズムがあるって感じさ。 ― では次に、あなたが想うポップ・ミュージックの解釈とはどのようなも のですか? ブレイン:難しい質問だね……意味なんかを深く考えなくても楽しめるも の……じゃないかな? 聴くのに努力が必要じゃないっていうかさ。だから、 ペイヴメントはポップ・バンドじゃないよね。なんて言うか、クセのある世 界観だから聴き通すには割と努力が必要じゃない?(笑) 「素晴らしいポッ プ・バンドだ!」って言う人もいるけど、ぼくはそうは思わないな。 ― では、その解釈の指標となるアーティスト、そして「素晴らしいポップ・ バンドだ!」と思えるアーティストを教えてください。 ブレイン:エレクトリック・ライト・オーケストラだね。音楽の歴史的には 重要なバンドじゃないのかもしれないけど、アルバムを通して1つの素晴 らしい世界観があって、でも安易なルールには沿ってないところもまた素晴 らしいんだ 。 ― さて、来日の予定はどう? 日本のファンは祈るように待っていますよ。 ブレイン:そうだね。来年の夏には戻りたいと思ってるよ。でも、今は景 気が悪いからバンドの経済的にもなかなか難しいね。音楽業界も冷え込ん じゃってるし。 ― うんうん、そんな時代だからこそミステリー・ジェッツの音楽がいい 刺激になってくれればと願ってます。最後に、この音楽で刺激された「セロ トニン」は、聴き手にどのような効能をもたらすのでしょうか? ブレイン:そうだなぁ(笑)、セロトニンは体がハッピーになりたい!って時 に反応する部分なんだ。ぼくらの音楽を聴いてセロトニンがそんな風に刺 激されたらうれしいよ。

interview & text by Yosuke Ito, translation by Mitsuro Waki  さあ、踊ろうよ! ロマンティックでドリーミーなポップ・サイケデ リアに彩られたマジカル・ミステリー・ツアーにあなたをご招待 !? テムズ川に浮かぶイール・パイ・アイランドが育んだボヘミアン 集団、ミステリー・ジェッツが3rd アルバム『SEROTONIN』をリリ ースする。デビューから4年、同世代のクラクソンズやフォールズ はデビュー時の脚光が影響してか、産みの苦しみを彷彿させるよ うな新作を発表しているが、こちらはコンスタントなリリースその ままな、口笛吹きつつ「お待たせっ!」なんて軽いノリで帰ってきた ようで実にうれしい。前作ではエロル・アルカンをプロデューサ ーに迎え煌びやかな80'sワールドに大胆変貌を遂げたが、今作で はさらに豊潤な70'sへタイム・スリップしたような趣きに。この変 化に多大な影響を与えたであろう人物は、セックス・ピストルズか らジョン・ケイルまでも手掛けた名匠クリス・トーマス。またもサ プライズなプロデューサー起用だが、このケミストリーでレトロス ペクティヴなミステリー・マジックに新たな気品が加わり、さらな る魅力を宿した極上のポップ・ミュージックに心ときめかずにはい られない! 早速ブレインにインタヴューしました。 ― 最近の調子はどうですか?

ブレイン・ハリソン(Vo. & Key.):ちょうどフェスのことを考え始め てたよ、もうすぐ夏だからね。日本はもう夏なの? 今年の夏はフ ェスティヴァルに出たり、新しいアルバムもリリースするから、頭 の中はそんなことでいっぱいかな? ― レーベルをROUGH TRADEに移籍しましたが、これはなぜ? ブレイン:まずぼく達はアルバムごとにレーベルが変わってるん だよ。それで昔から好きなバンドがたくさんいるROUGH TRADE から音源を出してみたいと思ってたんだ。ちょうどタイミングよくぼ くらに声がかかってラッキーだったし、ROUGH TRADEに移れて 本当にうれしいよ。 ― 新作のレコーディング前はジプシー・キャラバンでの寝泊ま りや仏ニースへの旅行などを体験したそうですね。 ブレイン:う∼ん、旅というよりツアーはしてたけど……印象に残 ってるのはメキシコと南アメリカに行ったことかな? 今までに行 ったことのない場所だったし、英語を話さない国でパフォーマンス をするのはスリルがあったね、うまく伝わってるかわからないから さ(笑)。でも、すごく良い経験だったよ。オフの日にはメキシコ の神殿に行ったりね。あっ、あとアルゼンチンも素晴らしかったな! ― では、新作の話をしましょう。感想から言うと、素晴らしい出 来栄えにとても驚いています。今回もプログレ、サイケデリック、 ディスコ調とさまざまなアプローチを試みていますが、世界観とし ては統一感のある流れを感じました。コンセプトとして何かストー リーや明確なヴィジョンがあったのでしょうか? ブレイン:コンセプトか……答えはノーだね。ぼくらのいつも持っ ているコンセプトは「ベストなアルバムを作る」なんだ。もっといろ んなことに挑戦して、今まで以上に良い曲を作ろうと思ってたな。 だから別にコンセプトとかは必要ないんだよね。 ― 前作は煌びやかなエレクトロを強調した80'sな世界観があり ましたが、今作ではそこを抑えつつ、味わい深いソフト・ロックの ような、70's まで遡った雰囲気を感じました。この変化の要因は 何だったのでしょうか? ブレイン:そうだな……その時々でハマってる音楽や買ったレコ ードの影響じゃないかな? ぼくはいろんな音楽を聴くからさ、意 識して音楽のスタイルを変えるっていうことはないね。前作の 80's っぽいスタイルでは批判じゃないけど、いろんな意見が出たんだよ。 もしこのアルバムが70年代っぽいっていうなら、それでいいさ。 うん、うれしいね。 ― プロデューサーにクリス・トーマスを起用したのには驚かさ れましたが、彼に依頼したきっかけ、そして長いキャリアを誇るク リスから学んだことはどのようなものでしたか? ブレイン:クリスの手掛けた作品の多くは知ってたんだけど、始 めは名前を知らなかったんだ。ブライアン・イーノほどのセレブ・ プロデューサーじゃないしね。でも作品が好きだったから、昔な がらのやり方だけどCD-Rにデモを入れて送ったよ。そしたら返事 をくれてね。クリスはデモ段階の曲のポテンシャルを見抜く力が素 晴らしかったな。CD-R に焼いたMP3のボロいラジカセからのよ うな音でも、彼はその曲の良し悪しが明確にわかってたんだ。そ れに、学んだことなんて数え切きれないよ。音楽業界に40年以上 もいて、ビートルズ時代から仕事をしている人だからね。本にま とめて出版したいくらいさ(笑)。 ―(笑)では、それぞれの曲について伺います。ダイナミックな 「ALICE SPRINGS」はまさにオープニングに相応しい先導するよう な勢いが素晴らしいですね。このナンバーは制作時から「オープ ニングはこれしかない!」という確信があったのでは? ブレイン:実は君の予想とは真逆なんだ(笑)。ぼくはアルバムの 最後の曲になるんじゃないかと思ってた。でも、クリスはアルバム のオープニングに持ってこようって決めたんだ。今から考えてみる と、彼の決断は正しかったと思うな。

― 続くM-2「TOO LATE TO TALK」は、イントロのシンセサイ ザー、ヴォーカルとコーラスの掛け合いなど、さっき話した70'sっ ぽさを象徴するようなナンバーです。これはどのようなアイデアが 発端となり、発展していったのでしょうか? ブレイン:この曲はジェネシスにインスパイアされて書いた曲な んだ。初期のプログレ的なジェネシスじゃなくて、ポップな曲を書 くようになってからのジェネシスにね。君の言ったようなソフト・ ロック的な要素は確実に影響を受けてると思うよ。

― M-4「FLASH A HUNGRY SMILE」は口笛のアレンジが活か された心地よいポップ・ソングですが、この曲の後半、「come

M

2010.7.7 out

[ BGJ-10093 / Hostess Entertainment]

SEROTONIN

MYSTERY JETS

ystery Jets

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有限会社 イエス・マガジンズ

〒 114-0023  東 京 都 北 区 滝 野 川 1-82-6 M A I L : m a i l @ y e s m a g a z i n e s . n e t 掲載内容・広告等に関するお問い合わせは、イエス・ マガジンズ編集部までメールでお問い合わせください。 2010年6月19日発行

YES Vol.019

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