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経腟メッシュ手術 TVM の現況と展望 Fig. 1 TVMとLSCのアンカリングポイント Fig. 2 使用したメッシュと主な器具 めか TVMに際してもこの層で剥離し そこにメッシュ 3-4点の縫着が必要である を留置する術者が多かったため術中出血 メッシュ露出 感染などの原因となったと考えられ

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Academic year: 2021

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経腟メッシュ手術(TVM)の現況と展望

竹山政美  鍬田知子  柏原宏美  加藤稚佳子

要旨 2011年のFDAの厳しい警告から欧米ではほとんど 行われなくなった経腟メッシュ(TVM)手術であるが, 日本ではセルフカットメッシュによるTVMという独自の 発展を遂げ現在も多くの施設で施行されている.本項では 合併症を来さないTVM手術の要点として精緻なアンカリ ングとメッシュの展開を強調するとともに,熟練者による TVM手術の中長期の成績から見えるTVM手術の安全性と 有効性を述べた.またC=4以上のhigh stageの子宮脱に対 しては再発率が20%を超えることからTVMに限界がある ことが示唆された.また近年,前壁TVMの前脚を省略し たTVM-A2についての成績から前脚が省略できることが 示唆された.症例を選べばTVM手術は今後も骨盤臓器脱 手術の重要な選択肢であり続けると考えられた.

はじめに─Tension-free vaginal mesh(TVM)

手術とは─

 ポリプロピレンメッシュを用いて,臟側筋膜を置き換 え,腟壁だけでなく腟管の支持も補強する術式でメッシュ 本体が前後腟壁自体の補強となり,前壁TVM(TVM-A) では4本のアームでメッシュを左右ATFP間にブリッジさ せ,DeLancey levelⅡを修復し,後壁TVM(TVM-P)で は2本のアームを仙棘靱帯に通し,DeLancey levelⅠおよ び Ⅱ を 修 復 す る 術 式 と さ れ て い る. フ ラ ン ス のTVM groupにより報告され1),Prolift™として製品化された.日 本ではキット製品は使用できなかったが,2005年,特殊な ニードルとセルフカットメッシュによる術式として行なわ れるようになった.  比較的シンプルでほぼ全てのPOPに適応がある術式と して国内で広く行なわれるようになったTVMであるが, メッシュ露出や拘縮による慢性疼痛などの中長期の合併症 が報告され,メッシュを用いる術式の問題点が認識される ようになった2, 3).そして2011年のFDAによる経腟メッ シュに対する厳しい警告で多くのTVMキット製品が市場 から撤退し,日本で唯一TVMに使用可能であったGyne-meshPS®も市場から消えた.Polyform®というPPメッシュ が使用可能となったことで,国内ではTVMが引き続き施 行可能となったことは不幸中の幸いであった.この機に多 くの婦人科医はTVMから撤退し,また腹腔鏡下仙骨腟固 定術(LSC)を行う術者が多くなったことは記憶に新し い.  それでは,TVM手術(特に日本で行われているセルフ カットメッシュを用いたTVM)は本当に危険な手術なの か,合併症や再発を来さない術式の要点は何かということ をここで再考してみたい.

1.TVM手術の要点

 メッシュを用いる骨盤臓器脱手術の最も重要な点はメッ シュを皺なく展開することであり,その為に正しい位置に アンカリングすることである.TVM-Aに関しては膀胱頚 部側前腟壁,子宮頚部,および左右坐骨棘周囲の強靭な組 織(あるいは仙棘靭帯)の4点がアンカリングポイントと なる.比較の意味を込めてFig. 1にLSCとTVMのアンカリ ングポイントを示す.TVM手術が日本に導入された当初, このアンカリングというコンセプトは強調されることがな かったため,例えば左右の骨盤筋膜腱弓(ATFP)にメッ シュ脚を通して4点支持の面を作ることによって前腟下垂 が修復されるといったコンセプトでTVM-A手術が行わ れ,多くの症例でメッシュが前後方向に収縮して再発や拘 縮による痛みの原因となったと考えられる.次に重要な点 はメッシュを留置するための剥離層である.TVMでは腟 の全層(full thickness)の裏を剥離する.もともと前後腟 壁形成術の際の剥離層が腟粘膜層と腟筋層の間であったた 竹山政美・鍬田知子・柏原宏美・加藤稚佳子:第一東和会病院女性 泌尿器科ウロギネコロジーセンター

特集3:女性泌尿器領域の手術の現状と展望

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めか,TVMに際してもこの層で剥離し,そこにメッシュ を留置する術者が多かったため術中出血,メッシュ露出, 感染などの原因となったと考えられる.理想的には正中 full thickness の裏で左右に剥離を進め,腟の折り返し部 位で側方に鋭的に剥離層を変えて坐骨棘に到ることで出血 や膀胱損傷を回避することができると考えている.  メッシュの縫着に関しては全て非吸収糸としそれぞれ 3-4点の縫着が必要である.

2.Prolift型TVMの成績と限界

 2008年に始まり4回にわたって行なわれたエキスパート によるTVMコンセンサスミーティングにより確認された コンセンサスを以下に示す. Fig. 1 TVMとLSCのアンカリングポイント Fig. 2 使用したメッシュと主な器具 経腟メッシュ手術(TVM)の現況と展望

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1.Prolift型の大きなメッシュを用いて,メッシュアーム を太く(2.8-3.0cm)してアームのずれを防ぐ. 2. 前壁剥離の際に腟壁の折り返しまでは液性剥離された vesicovaginal space(いわゆるライチの層)に沿って 行う,それからは側方に層を変えて坐骨棘まで剥離す る. 3. TVM-Aの第2穿刺は坐骨棘近傍のしっかりしたところ に貫く. 4. 糸をとるためのブラインドキャッチは有用な方法であ り,状況にあわせて使用する. 5. メッシュの固定には非吸収糸を使用する.子宮とメッ シュの固定は4針の非吸収糸で行い,メッシュの子宮へ の固定部分が面となるようにする. 6. メッシュの展開が最も重要であり,メッシュ挿入後の フィッティングはメッシュの側方がATFPに密着する ようにする.  ここに,このコンセンサスに従って施行したTVMの2年 目までの成績を示す. 〈対象と方法〉  対象は,2009年11月~ 2012年12月迄に,単一術者によ りTVM手術を施行された617例(TVM-A 261例,前後壁 TVM(TVM-AP)234例,前後一体型TVM(TVM-C)75 例,TVM-P 47例).  手術はアンカリングを意識したTVMで,以前報告した 手技により行った4, 5)  使用したメッシュと主な器具をFig. 2に示す.周術期合 併症,24ヶ月までのメッシュびらん,再発,尿失禁手術追 加症例につき集計した.さらにTVM-AP症例に関しては 術前C値別の再発率を集計した. TVM-A TVM-P TVM-AP TVM-C n=261 n=47 n=234 n=75 手術時間(分) 43.9±14.4 45.0±10.5 81.1±17.6 76.2±21.6 出血量(ml) 19.4±32.8 20.4±11.8 39.2±38.7 36.4±38.1 合併症 血腫 2 なし 血腫 1 無尿にて両側尿管 膀胱損傷 10(3.8%) 膀胱損傷 8(3.4%) ステント留置  腟壁損傷 2 腟壁損傷 2 (子宮全摘) 大量出血(>300)3 大量出血(>300)1 1 併用術式 後腟壁形成 30 TVT 1 TOT 1 後腟形成 1 頚管切除 6 TOT 2 頚管切除 2 経腟子宮全摘 3 膀胱修復 3 会陰形成 1 TUR-BT 1 TOT 12 頚管切除 1 TVT 5 メッシュ切除 3 周術期合併症発症率(計30例)4.8% Table 2 24ヶ月までのメッシュびらん,再発,術後尿失禁手術 メッシュびらん 同部位再発 他部位再発 追加MUS手術 TVM-A 2 5 48 TOT 4 (n=261) (0.8%) (1.9%) (18.4%) TVT 11 TVM-P 10 (5.7%) TVM-P 0 3 8 TVT 1 (n=47) (6.4%) (17.0%) TVM-P 1 TVM-A 1 TVM-AP 1 TVM-AP 4 30 ─ TOT 2 (n=234) (1.7%) (12.8%) TVT 14 Manchester 1 (6.8%) TVM-P 1 TVM-C 1 5 ─ TVT 7 (n=75) (1.3%) (6.7%) メッシュびらん発生率:1.1% *POP-Q StageⅡ以上を再発と定義 全再発率は16% 同部位再発率は6.9%

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〈結果〉  周術期合併症をTable 1に示す.膀胱損傷がTVM-Aで10 例(3.8%),TVM-APで8例(3.4%),300cc以上の出血が TVM-Aで3例,TVM-APで1例などであったが重大な合併 症を認めなかった.  24ヶ月までのメッシュびらん,再発,尿失禁手術を追加 した症例数をTable 2に示す.メッシュびらんは総計7例 (1.1%),POP-Qステージ2以上を再発として集計すると全 再発率は16%,同部位再発に限ると6.9%であった.尿失 禁手術を追加した症例数は39例(6.3%)であった.また TVM-AP症例に関して術前C値別の再発数をTable 3に示 す.術前C値が4以上で再発率が20%以上と高かった. 〈考察〉  TVM手術は,精度の高い手技を行えば,周術期合併症 としてTVM-A,TVM-APでそれぞれ膀胱損傷が3.8%,3.4% と見られたが重大な合併症はなく,メッシュびらんや再発 に関しては24ヶ月までの集計でメッシュびらん7例(1.1%) と非常に少なく,同部位再発は6.9%と安全で有効な術式 であると考えられた.しかしながら術前C=4以上の子宮 脱を伴う症例では再発率が20%と再発率が高く,TVMの 適応に限界があることが示唆された.

3.その後のTVM手術

 2011年のFDAの警告の後,我々も症例を選んでLSCを 施行するようになったが,300例以上の経験から,フラン ス式LSCで膀胱頸部側腟壁にしっかりアンカリングすれば 膀胱側腔方向へのサポートがなくてもLevel Ⅱの修復がで きていることから,Prolift™型のTVM-Aの前脚が省略で きるのではないかと考え2本脚のTVM-Aを開始し,TVM-A2と名付けた.  ここでTVM-A2の1年目までの成績を検討したので示 す. 〈対象と方法〉  対象は2015年8月から2016年12月までの期間にTVM-A2 を施行したPOP患者273例,年齢47-93(中央値72).術前の 平均POP-QはAa 1.0,Ba 2.8,C 0.3,gh 4.6,pb 3.2,TVL 8.9,Ap -2.8,Bp -1.1,D -5.0 であった.  術式:使用するメッシュをFig. 2に示す.液性剥離の後, 腟の全層の裏を腟の折り返し部分まで側方に剥離し,より 側方に鋭的に層を変更して坐骨棘に到る.穿刺の前にテフ デッサーを用いて膀胱頚部側腟壁に5針,子宮頚部に4針運 針しておく.穿刺は竹山式ニードルを用いて行い,ニード ルに前もって通しておいたナイロン糸をブラインドキャッ チで確保しナイロン糸ループを形成しておく.メッシュの 正中を腟壁と子宮頸部に縫着した後,メッシュ脚をナイロ ンループに通して鼠蹊部に引き抜くことでメッシュをゆっ たりと展開する.創内を洗浄の後,モノクリル3-0の連続 縫合により閉創して術を終了する. Table 3 TVM-AP術後24Mまでの再発率の術前C値別検討 C値 全症例数 再発症例数(%) (n=227) (n=27) -1以下 34 0 0 9 0 1以上2未満 23 0 2以上3未満 36 3(8.3%) 3以上4未満 41 3(7.3%) 4以上5未満 30 6(20%) 5以上6未満 26 7(26%) 6以上7未満 12 3(25%) 7以上8未満 11 4(36%) 8以上9未満 2 0 9以上10未満 2 1(50%) Table 5 TVM-A2の合併症と追加手術(N=273) 術中合併症 膀胱損傷 3例(1.1%) 術後排尿障害 1週間以上 1か月以内 導尿症例 3例(1.1%) 術後追加手術 TVT 14例(5.1%)TVM-P 2例(0.7%) Table 4 TVM-A2手術の概要(N=273) 手術時間(分) 33.6±8.6(23-72) 出血量(gr) 24.2±27.2(5-280) 併用術式 頸管切除 10例 後腟壁形成術 10例 頸管ポリープ切除 1例 試験開腹 1例 Fig. 3 TVM-A2用メッシュ 経腟メッシュ手術(TVM)の現況と展望

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 併用術式,周術期の合併症,術後1ヶ月までの排尿困難 につき集計し,その後,術後3ヶ月目,12ヶ月目,それぞ れの時点でのPOP-Q,メッシュ露出,再発について集計 した. 〈結果〉  手術の概要についてTable 4に示す.周術期合併症と排 尿障害,追加手術をTable 5に示す.周術期合併症として は膀胱損傷を3例(1.1%)いずれも剥離に際して発生した が術中に問題なく修復できた.CICを必要とする排尿障害 (残尿100cc以上)を3例に認めたが1ヶ月以内に消失した. 術後に手術を必要とした腹圧性尿失禁を14例(5.1%)に 認めた.POP-Q stage2以上を再発として判定すると3ヶ月 目に他部位再発を11例(4.4%),12ヶ月目に同部位再発を 5例(2.0%),他部位再発を14例(5.6%)に認めた.メッ シュびらんを認めた症例はなかった. 〈考察〉  TVM-A2は周術期合併症も1.1%の膀胱損傷のみで,排 尿障害もほとんどなく12ヶ月目までの同部位再発は2%で メッシュびらんもなく,解剖学的修復も悪くなく,安全性 および有効性に関して優れた術式であることが示唆され た.中長期のメッシュびらんや拘縮による慢性疼痛などに ついてはさらに検討を要するが,膀胱瘤を主としたPOP の治療の有用な選択肢の一つとなると考えられた.

4.TVM手術の展望

 以上,我々の施設でのTVMについて述べたが,仙棘靭 帯にアンカリングするuphold型前壁TVMはTVM-A2より アンカリングとメッシュの展開が容易なことから,新たに TVMを開始する術者に薦められる術式である.ただし仙 棘靭帯を露出させ穿刺する過程で出血をきたすリスクがあ るので,局所の解剖と止血する技術を身につける必要があ で,カダバーを用いた手術解剖の研修,エキスパートによ るhands-onを繰り返すことで,安全な手技を身につける必 要がある.  TVMに使用するメッシュに関して,GynemeshPS®が市 場から消えた際には代替メッシュとしてPolyform®が市場 に供給され国内では継ぎ目なくセルフカットTVMが施行 可能であったことは幸いであったが,手術材料を海外メー カーに依存するリスクを痛感した.海外メーカーが市場か らメッシュを引き上げた場合にも対応できるように,数年 前から日本のメーカーと骨盤臓器脱に使用できるメッシュ の開発を図ってきたが,ようやく市場に供給できる製品が できたので,今後は,材料の供給がなくなる心配をするこ となく,TVMの改良を続けることができそうである.  以上,経腟メッシュ手術につき現状と展望を述べた.欧 米ではほとんど行われなくなった経腟メッシュ手術である が,日本で発展したセルフカットメッシュによるTVMは, 今後も手技の改良を重ねながら骨盤臓器脱治療の主要な選 択肢であり続けると考える. 利益相反自己申告:申告すべきものなし

文 献

1) Berrocal J, Clave H, Cosson M et al. Conceptual ad-vances in the surgical management of genital pro-lapse. The TVM technique emergence. J Gynecol Obstet Biol Reprod 2004;33:577-587

2) Abed H, Rahn DD, Lowenstein L et al. Incidence and management of graft erosion, wound granulation, and dyspareunia following vaginal prolapse repair with graft materials:a systematic review. Interna-tional urogynecology journal. 2011;22:789-98 3) Murphy M, Holzberg A, van Raalte H et al. Time to

rethink:an evidence-based response from pelvic surgeons to the FDA Safety Communication:“UP-DATE on Serious Complications Associated with Transvaginal Placement of Surgical Mesh for Pelvic Organ Prolapse”. International urogynecology jour-nal. 2012;23:5-9

4) Masami Takeyama. Basic procedures in tension-free vaginal mesh operation for pelvic organ prolapse. 5) 竹山政美 TVM手術の概要と展望 新女性泌尿器科 テキスト2014:153-166 3ヶ月 POP-Q -2.9 -2.9 -6.9 3.0 3.2 9.0 -2.8 -2.7 -7.7 *同部位再発 なし *他部位再発 11例(4.4%) *メッシュびらん なし 12ヶ月 POP-Q -2.8 -2.8 -6.9 2.9 3.0 8.9 -2.7 -2.6 -7.6 *同部位再発 5(2.0%) *他部位再発 14(5.6%) *メッシュびらん なし

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