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第8章
食品添加物
8.1 概念
8.2 メリットとデメリット
8.3 安全性評価
8.4 ADIと使用基準の設定
8.5 成分規格
8.6 使用基準
8.7 種類と用途
2食品添加物の定義と分類
定義
添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の
加工若しくは保有の目的で、食品に添加、混和、浸潤
その他の方法によって使用する物をいう。
(食品衛生法第4条2)
栄養価/品質の維持
安全性/商品価値の向上
大量・安定供給
食料資源の有効利用
消費者が要求 <安い・おいしい・簡便>
8.1 食品添加物の概念
意義
3• 第6条:
人の健康を損なう恐れがある添加物を禁止
• 第10条:
厚生労働大臣が審議会の意見に従って添加物を指
定する。ポジティブリスト制
• 第11条:
使用など基準を定め、成分の規格を定める
• 第21条:
基準や規格は食品添加物公定書に収載する
1)食品衛生法と添加物
規格・および基準
4食品添加物の規格および使用基準
(食品衛生法第11条) • 添加物一般の使用基準 http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/syokutenlist?OpenView • 規格とは-食品添加物の純度や成分について最低限遵守すべ き項目を示したものであり、安定した製品を確保するため定めら れています。 • 基準とは-食品添加物をどのような食品に、どのくらいまで加え てもよいかということを示したものであり、過剰摂取による影響 が生じないよう、食品添加物の品目ごとあるいは対象となる食 品ごとに定められています。 • 第8版 食品添加物公定書(07.09) 25,000円 我国における食品添加物の通則、一般試験法、試薬・試液等、成分規格・保 存基準各条、製造基準、使用基準及び表示基準を規定した書。 添加物の使用基準便覧 食品添加物の摂取量が1日摂取許容量を超えないように、食品衛生法第7条の規定に基 づいて、食品添加物の使用基準が定められています。 5 指定添加物 (454品目) 既存添加物 (365品目) 天然香料 (約600品目) 一般飲食添加物 (約100品目) 法律(食品衛生法)で規制される 厚生労働大臣が安全性と有効性を確認し指定。 天然添加物として使用実績が認めら れ品目が確定している添加物。 行政指導で規制 化学合 成品 天然添加物 ウコン、エタノール、果汁類、カゼイン、グルテン、コラー ゲン、サフラン、マンナンなど 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政 目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、 助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。 (行政手続法第2条)食品添加物の定義と分類
分類
2016.10.06 現在 6 食品添加物の分類食品添加物
指定対象
化学的合成+天然 天然添加物指定対象外
一般飲食添加物
(約100品目)
天然香料
(約600品目)
指定添加物
(454品目)
既存添加物
(365品目)
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指定添加物(1)
• 第十条 人の健康を損なうおそれのない場合として
厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴
いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び
一般に食品として飲食に供されている物であって添
加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含
む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に
供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯
蔵し、若しくは陳列してはならない。(食品衛生法)
• 第十二条 法第十条の規定により人の健康を損な
うおそれのない添加物を別表第一のとおりとする。
(食品衛生法施行規則)
平成17年4月28日改正 食品添加物の分類 8• (例)
1.ソルビン酸・・・不飽和脂肪酸に静菌作用がある
ことから発見された物質で、保存
料として用いられる。チーズ、食肉
製品、漬け物等に使用が認められ
ている。
2.キシリトール・・・野菜や果物に含まれている天
然物で、ガム、清涼飲料水等に
甘味料として用いられる。
• 指定添加物リスト
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syokuten指定添加物(2)
食品添加物の分類 9既存添加物(1)
1.この法律(食品衛生法)の公布の際 現に販売され、
又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、
加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されて
いる添加物
2.この法律(食品衛生法)の公布の際 現に販売され、
又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、
加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されて
いる製剤又は食品に含まれる添加物
食品添加物の分類 食品衛生法 附 則 (平成七年五月二四日法律第一〇一号) 抄 (既存添加物に関する経過措置) 第二条 10既存添加物(2)
平成7年度に食品衛生法が改正され、指定の範囲が化学 的合成品のみから天然物を含むすべての添加物に拡大さ れた。法改正当時既に我が国において広く使用されており、 長い食経験があるものについては、法改正以降もその使用、 販売等が認められることとなり、例外的に食品衛生法第6条 の規定を適用しないこととなっている。そのような既存添加 物は、既存添加物名簿に収載されている。 しかしながら、(1)人の健康確保にとって問題がある知見が 報告された既存添加物については、当該経過措置の対象と すべきではないこと。(2)現時点で使用実績がなくなっている 既存添加物については、法第6条の適用対象としても、営業 者の側に混乱を招く事態は想定されないことから、平成15 年度の食品衛生法改正により、安全性に問題があると判明 した、あるいは既に使用実態のない既存添加物については 既存添加物名簿からの消除が可能となったものである。 食品添加物の分類 11• (例)
1.クチナシ色素・・・・クチナシの果実から得ら
れる着色料。栗きんとん
等に用いられる。
2.柿タンニン・・・・柿の渋から得られる清澄剤。
酒の製造等に用いられる。
• 既存添加物名簿
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syokuten既存添加物(3)
食品添加物の分類 12天然香料
• この法律で天然香料とは、動植物から得られた物
又はその混合物で、食品の着香の目的で使用され
る添加物をいう。(食品衛生法第4条3)
• (
例) 1.バニラ香料・・・バニラの果実から得られる香料。 複数の揮発性成分から構成されている。 2.カニ香・・・カニの身から得られる香料。 蒲鉾等の魚肉練り製品に用いられる。 • 天然香料基原物質リスト http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/syokutenlist?OpenView 食品添加物の分類13
一般飲食物添加物(1)
•一般に飲食に供されているもので添加物として使用さ
れるもの。
•(例)
1.イチゴジュース・・・イチゴの果実を搾汁したもの。
饅頭の着色に用いられる。
2.寒天・・・・テングサ等から粘質物を抽出したもの。
羊羹などの成形に用いられる。
•一般飲食物添加物として認められている色素類は、
原料が食品として食べられていること、抽出する溶剤
が水かエタノールであることが条件。
食品添加物の分類 14 • 通常は食品として摂取される果汁や野菜ジュースが着色の目的 で使われることがある。 • 果汁や野菜ジュースやこれらの原料である果実や野菜類などか ら色素の成分を抽出、精製したものを着色料として使用すること がある。 • 増粘安定剤として使われるものには、グルテン、マンナン、レン ネットカゼインなどがある。 • 製造用剤としては、カゼイン、ゼラチンなどの他に、酒造用の清 澄剤・ろ過助剤として使われる小麦粉、寒天、卵白などがある。 • コンニャク抽出物(グルコマンナン)、ダイズ多糖類などは、増粘安 定剤と製造用剤の両方の使用目的で使われている。 • 無機系の調味料として使われるものには、ホエイソルトがある。 • 一般に食品として飲食に供させている物であって添加物として使用される品目 リスト http://www.ffcr.or.jp/zaidan/MHWinfo.nsf/a11c0985ea3cb14b 492567ec002041df/58c1b6daef61dfa04925684600097831? OpenDocument一般飲食物添加物(2)
食品添加物の分類 15食中毒予防
商品価値の向上
食品の腐敗防止
栄養強化
メリットとデメリット
メリット
安全性
不正使用
表示違反
人為的ミス
デメリット
16怖い?
野放し?
騙されてる?
毒性?
隠された事実? 17食品に使うことのできる添加物の量は、
ラットやマウスなどの動物実験で、
国際的な機関が
無害と確かめた量(無毒性量)の通常1/100の量を、
毎日食べつづけても安全な量(1日摂取許容量)とし、
さらに、この量よりずっと少なくなるように使い方がきめ
られています。
無毒性量
1/100 1日摂取許容量 (ADI) 使用量 多いものでもADIの3%安全性評価
18一日摂取許容量(ADI)以下の
添加物しか食べない。
死亡
健康被害
無作用
無作用
少量 量 大量 使用量ADI
最小致死量
最大無作用量
(最大無毒性量)
1/100 以下19
安全性審査
化学物質の同定
動物実験等を用いた毒性試験結果
規格の設定:純度・正常・不純物等の同定 無毒性量(NOAEL:No Observed Adverse Effect Level) ある物質について動物試験等において毒性学的なす べての有害な影響が観察されない最大の投与量 毒性試験: 急性毒性試験・反復投与毒性試験・発がん性試験・ 変異原性試験・繁殖試験・催奇形性試験・体内動態 試験・抗原性試験 LD50: Lethal Dose 50% kill 半数致死量 急性経口毒性 試験で得られる。 試験動物の群の 50%を死亡させ ると予想される 統計学的な被験 物質の一回の経 口投与量 メモ エームス試験 変異原性を試験す るときに用いる。サ ルモネラ菌に突然 変異を引き起こすか どうかを調べる メモ 20
ADI(許容一日摂取量)の設定
ADIを超えないように使用基準を設定
単位:mg/kg体重/日 ADI(Acceptable Daily Intake)とは人がある物質の一定量を一生涯にわたって摂取し続け ても、現時点でのあらゆる知見からみて、認めるべき健 康への悪影響がないと推定される一日あたりの摂取量 ADI=無毒性量 / 安全係数 安全係数:ある物質について、人へのADIを設定する際に、通 例、動物における無毒性量に対して更に安全性を配慮するた めに用いる係数(通常100~500)
安全性の確保
対象食品・最大使用量の限定 21原則として、使用したすべての添加物名を、
容器包装の見やすい場所に記載
(JAS法では、一括表示の原材料欄に、食品、食品添加物 の順に記載することになってる。)また、
*栄養強化の目的で使用されるもの、
*加工助剤
*キャリーオーバー
については、表示が免除されています。
1)食品添加物の表示(1)
表示基準
22物質名で表示する
原則として物質名を表示する。
しかし、添加物の化学名では馴染みが無く、逆にわかりにくく なる場合もある。 (例)ビタミンCの化学物質名は「L-アスコルビン酸」、 「ビタミンC」や「V.C」と書いた方がわかりやすい。 そこで、添加物の品名(名称及び別名)、簡略名及び
類別名を定め、
添加物を表示する場合は、これらの名前を 使用する。 このリストは、食品衛生法施行規則「別表第2」、「既存添加物 名簿」及び「食品衛生法に基づく添加物の表示等について(平 成8年5月衛化第56号厚生省生活衛生局長通知)」に記載さ れている。2)食品添加物の表示(2)
23 用途名を併記する 一部の添加物、保存料や甘味料など8種類の用途 に使われるものは、消費者の選択に役立つ情報として、その用途名を併 せて表示する。 (例)「保存料(ソルビン酸K)」、「甘味料(ステビア)」3)食品添加物の表示(3)
1 甘味料 甘味料、人口甘味料又は合成甘味料 2 着色料 着色料又は合成着色料 3 保存料 保存料又は合成保存料 4 増粘剤、安定剤、ゲル化剤 又は糊料 主として増粘の目的で使用される場合にあっては 増粘剤又は糊料 主として安定の目的で使用される場合にあっては 安定剤又は糊料 主としてゲル化の目的で使用する場合にあっては ゲル化剤又は糊料 5 酸化防止剤 酸化防止剤 6 発色剤 発色剤 7 漂白剤 漂白剤 8 防かび剤又は防ばい剤 防かび剤又は防ばい剤 用途名を併記する添加物(食品衛生法施行規則別表第5) 24 一括名で表示できる添加物(食品衛生法施行規則別表第5の4関係) 表示される一括名 添加物の例 イーストフード 塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カリウムほか ガムベース エステルガム、グリセリン脂肪酸エステル、酢酸ビニル樹脂ほか かんすい 炭酸カリウム(無水)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムほか 苦味料 イソアルファー苦味酸、カフェイン(抽出物)、ホップ抽出物ほか 酵素 アガラーゼ、アクチニジン、アクロモペプチダーゼほか 光沢剤 オウリキュウリロウ、カルナウバロウ、カンデリラロウほか 香料又は合成香料 アセト酢酸エチル、アセトフェノンほか(及び天然香料) 酸味料 アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウムほか 軟化剤(チューインガム軟化剤) グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール 調味料(その構成成分に応じて種類別を表示) 調味料(アミノ酸)、調味料(アミノ酸等) 調味料(核酸)、調味料(核酸等) 調味料(有機酸)、調味料(有機酸等) 調味料(無機塩)、調味料(無機塩等) アミノ酸:L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニンほか 核酸:5'-イノシン酸二ナトリウム、5'-ウリジル酸二ナトリウムほか 有機酸:クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウムほか 無機塩:塩化カリウム、リン酸三カリウムほか 豆腐用凝固剤又は凝固剤 塩化カルシウム、塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトンほか 乳化剤 グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルほか pH調整剤 アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウムほか4)食品添加物の表示(4)
25
表示が免除される①
<栄養強化の目的で使用されるもの>
ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類については、
ただし、同じ添加物でも、栄養強化の目的以外で使
用する場合は、表示する必要がある。
5)食品添加物の表示(5)
L-アスコルビン酸を栄養強化の目的で使用する場合 → 表示免除 L-アスコルビン酸を酸化防止剤として使用する場合 → 「酸化防止剤(ビタミンC)」と表示 26表示が免除される②
<加工助剤>
食品の加工の際に添加されるもの。
次の3つに該当する場合は、表示が免除。
6)食品添加物の表示(6)
1 食品の完成前に除去されるもの 例)油脂製造時の抽出溶剤であるヘキサン 2 最終的に食品に通常含まれる成分と同じになり、 かつ、その成分量を増加させるものではないもの 例)ビールの原料水の水質を調整するための炭酸マグネシウム 3 最終的に食品中にごくわずかな量しか存在せず、 その食品に影響を及ぼさないもの 例)豆腐の製造工程中、大豆汁の消泡の目的で添加するシリコーン樹脂 27 表示が免除される③<キャリーオーバー> 原則として、食品の原材料に使用された添加物についても、表示する必要 がある。しかし、食品の原材料の製造又は加工の過程で使用され、その食 品の製造過程では使用されないもので、最終食品に効果を発揮することが できる量より明らかに少ない場合は、表示が免除される。 ただし、添加物を含む原材料が原型のまま存在する場合や、着色料、甘 味料等のように、添加物の効果が視覚、味覚等の五感に感知できる場合は、 キャリーオーバーにはならない。7)食品添加物の表示(7)
*保存料の安息香酸を含むしょうゆでせんべいの味付けをした 場合、この安息香酸は含有量が少なく、せんべいには効果を 持たない。 → キャリーオーバーとなる。 *着色料を使ったメロンソースをメロンアイスに使用した場合、 最終製品にも色としての効果がある。 → キャリーオーバーとならない。 *発色剤を使用したハムをポテトサラダに入れた場合、ハムは そのまま原型を止めている → キャリーオーバーとならない。 281)主な食品添加物
①甘味料(サッカリンナトリウム・アスパルテーム・・・・)
②着色料(タール系色素12種,βカロテン・・・)
③保存料(ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸・・・)
④増粘安定剤[増粘剤、安定剤、ゲル化剤]
⑤酸化防止剤(Ⅼアスコルビン酸、トコフェロール・・・・)
⑥発色剤(亜硝酸ナトリウム,硝酸カリウム・・・)
⑦漂白剤(亜塩素酸ナトリウム、二酸化硫黄・・・)
⑧防かび剤(OPP,ジフェニル、TBZ・・・・)
食品添加物の種類と特徴
292)用途名で表示される添加物のグループ
①イーストフード
②ガムベース
③かんすい
④酵素
⑤光沢剤
⑥香料
⑦酸味料
⑧チューイングガム軟化剤
⑨調味料
⑩凝固剤
⑪苦味料
⑫乳化剤
⑬pH調整剤
⑭膨張剤
303)製造用に使われるその他の添加物
①発酵調整剤
②結着剤
③風味向上剤
④保色剤
⑤色調安定剤
⑥防湿剤
⑦皮膜剤
⑧粘着防止剤
⑨保水剤
⑩軟化剤
⑪日持ち向上剤
⑫品質保持剤
⑬殺菌剤
⑭防虫剤
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