国会は全会一致的か?
成蹊大学法学部 増山幹高 要旨 これまで国会の制度的特徴として、全会一致的な議事運営を通じて与野党協調が促進さ れ、立法過程は見かけ以上に粘着的であるとされている。こうした国会観は全会一致的な 議会制度の存在を前提としているが、この論文では憲法、国会法、議院規則といった議会 関連法規を再検討することによって、国会の制度的構造が一般に言われるほどに全会一致 的でないことを明らかにする。さらに議事運営権に関する Döring(1995)の議会分類から、 国会がどの程度多数主義的な議事運営を可能にするものかということを比較論的な視点か ら検討し、国会の議事運営に関する制度が相対的に多数主義的な議事運営を保証すること を解明する。こうした分析からは、従来の国会像とは異なり、国会の制度に関する多数主 義的な解釈を提示することが期待される。 はじめに これまで国会の制度的特徴として、全会一致的な議事運営を通じて与野党協調が促進さ れ、立法過程は見かけ以上に粘着的であるとされている。ただし、戦後の国会において、 議事運営における全会一致は慣行に過ぎず、むしろ与野党の勢力的趨勢に左右されるとい う見解もある。いずれにせよ、これらの主張は国会の制度的構造が全会一致的であるとい う前提に基づいている。この論文では、まず憲法、国会法、議院規則といった議会関連法 規をとくに議事運営に関して再検討し、次いで国会の制度的特徴を Döring (1995)の分類に 照らし合わせ、国会において議事がいかに多数主義的に運営され得るのかということを比 較論的に考察する。 国会は憲法上、国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるが、一般には行政機関の 推進する立法を形式的に裁可するに過ぎないとみなされている。Baerwald (1974)は委員会 中心主義のアメリカ議会を参照枠組みとし、国会の受動性を戦前の帝国議会と同様のゴム 印に過ぎないと評する(p. 124)1。こうした国会無能論に対して、Mochizuki (1982)は国会 の制度的特徴として、二院制、委員会制、会期制、議事運営における全会一致に着目し、 国会の立法過程が見かけ以上に「粘着的」であるという反論を提起する。ただし、Ramseyer and Rosenbluth (1993)も指摘するように、会期や審議時間、手続きを規定するのは憲法では なく、通常の法律であり、野党の審議引き延ばしが与党に不利益に作用するのであれば、議会多数を制する与党はそうした法令を改正するであろう。また全会一致の原則について も、与党が議席的に優勢なときには反古にされ、たとえ与野党が伯仲する場合でも、与党 は野党の審議妨害を回避する方策があるとする(p. 30)。 したがって、Mochizuki の着目する議会制度が立法にとってハードルであるとしても、む しろ Krauss (1984)が強調するように、そうした制度の存在を前提として、議事運営は与野 党の趨勢に依存しているのかも知れない2。この論文では、国会関連法規を再検討すること によって、国会が制度的にも一般に認識されているほどに全会一致的ではなく、むしろ議 会多数による議事運営を保証していることを明らかにしていく。 国会法規の再考:全会一致 vs.多数決 (1) 議院内閣制と二院制 国会は唯一の立法機関であり(憲法 41 条)3、各議院において議員のみが議案を発議す ることができる。国会法には当初、議員の法案提出に関する賛同要件はなかったが、1955 年の法改正により、議員が法案を提出するには、衆議院で 20 人以上、参議院で 10 人以上 の賛成を要し、特に予算に影響を及ぼす法案については、衆議院で 50 人以上、参議院で 20 人以上の賛成を要する(国会法 56 条)。ただし、実際には国会で審議される法案の大部分 は行政官庁によって立案されたものであり、憲法は内閣総理大臣が内閣を代表して議案を 国会に提出すると定めている(憲法 72 条)4。 内閣総理大臣を指名するのは国会の重要な役割である。すなわち、内閣総理大臣は国会 議員の中から国会の議決によって指名されねばならない(憲法 67 条)。憲法は首相の指名 において衆議院の優越を認め、衆参両院が首相の指名において異なる議決をし、両院協議 会の意見が一致しない場合、あるいは衆議院の議決を受領後 10 日以内に参議院が指名を行 わない場合、衆議院の議決が国会の議決となると定めている。 内閣の成立は国会両院の議決に基づくが、内閣の存続は衆議院の信任のみに依存する。 衆議院が内閣不信任案を可決ないしは信任案を否決した場合、内閣は 10 日以内に衆議院を 解散し、総選挙を実施するか、総辞職しなければならない(憲法 69 条)。ただし、「7 条解 散」と呼ばれ、内閣の助言と承認による天皇の国事行為として衆議院を解散するという憲 法 7 条の規定から、内閣は衆議院の信任の如何に関わらず衆議院を解散することができる とされる。 内閣は毎年の国家予算を作成し、国会に提出する(憲法 73 条)。予算は衆議院に提出し なければならず、参議院が衆議院の議決と異なる議決をし、かつ両院協議会においても調 停案が得られない場合、あるいは参議院が衆議院の議決を受領後 30 日以内(国会休会中を 除く)に議決をしない場合、衆議院の議決が国会の議決となる(憲法 60 条)。こうした衆 議院の優越は条約の承認に関しても適用されるが、内閣は条約を先に参議院に提出するこ とができ、その場合上記の「30 日」規定は該当しない(憲法 61 条)。 このように予算や条約に関しては衆議院の優越が保証されているが、通常の立法に関し
ては両院の議決の一致がより重要である。法案は両議院で可決したとき始めて法律となる (憲法 59 条)。後議院が先議院と異なる議決をした場合、後議院は法案を先議院に回付し (国会法 83 条 3 項)、先議院が同意すれば法律となる。ただし、衆議院の議決と異なる議 決を参議院がした場合(修正ないしは否決)、衆議院が出席議員 3 分の 2 以上の多数で再議 決すれば衆議院案が法律となる(憲法 59 条 2 項)5。また衆議院の議決を受領後 60 日以内 (国会休会中を除く)に参議院が議決を行わない場合、憲法 59 条 4 項は衆議院に参議院が 法案を否決したものとみなすことができると定めており、これにより衆議院は 3 分の 2 の 多数による再議決によって立法を行うことができる。あるいは両院協議会を開催し、出席 委員 3 分の 2 以上の多数によって調停案を得(国会法 92 条)、それを各議院が承認すれば 法律となる6。 したがって、通常の法案の場合、参議院による法案たなざらしは、衆議院による 3 分の 2 の多数による再議決か、または両院協議会の調停案を両院で承認する以外、その法案が会 期末に廃案となることを意味する。言いかえれば、与党が参議院の「拒否権」を回避する ためには、まず参議院における審議期間を最低でも 2 ヶ月確保しなければいけないが、後 述するように、これは会期 150 日の通常国会であっても容易なことではない。たとえ参議 院の審議日数が確保されても、衆議院で 3 分の 2 の多数を占めるか、両院の多数が同意し うる両院協議会 3 分の 2 の多数による妥協案を得るという実質的に不可能なハードルを乗 り越えなければいけない。いずれにせよ、通常の立法においては、ある程度の衆議院の優 越も保証されているが、衆議院の再議決や両院協議会の議決には特別多数が要求されてお り、衆参両院の多数に支持されることが法案の成否を実質的に左右する。 参議院はいくつかの制度的な理由から衆議院とは独自なものとなっている。第一に選挙 制度が異なる。衆議院は任期 4 年であり、多数が与党となって政府を構成し、内閣との信 任関係から解散されうるが、参議院議員の任期は 6 年であり、また 3 年毎の定期的な選挙 で議員の半分が改選される。衆議院は 1996 年まで定数 3~5 を主とする、いわゆる中選挙区 制から選出された議員で構成されていたのに対して(現在は小選挙区と 11 地域ブロック毎 の比例代表の並立制)、参議院議員は全国区と都道府県毎の選挙区から選出され、1983 年 以降全国区では比例代表制が採用されている。各党の比例名簿の上位には大規模な利益集 団を支持母体とする候補や知名度の高い候補が名を連ね、代表する利益が衆議院議員のそ れとは異なり、また資金的にも政党や派閥に依存することが比較的に少ないと言われる。 また参議院は、第二院としての制度的な存在意義を誇示するためにも、衆議院の党派的な 拘束に対して独自路線を貫こうとする傾向がある。 (2) 委員会制 一旦法案が提出されると、法案は所管の委員会に付託される(国会法 56 条 2 項)7。委 員会には常任と特別の二種類があり、常任委員会は所管の議案・請願などを審査する(国 会法 40・41 条)。衆議院における常任委員会の所管事項はほぼ行政官庁のそれに対応して
いるが(衆議院規則〔以下衆規〕92 条)、参議院の場合は政策分野毎に分かれている(参 議院規則〔以下参規〕74 条)。特別委員会は会期ごとに各議院において必要と認めたとき に、その院の議決で設けられるものであり、委員数や所管もそのつど決められる(国会法 45 条)。 議員は少なくとも一つの常任委員となる(国会法 42 条)8。常任委員と特別委員は各党 の所属議員数の比率に応じて各党に割り当てられ、各党から申し出た者について議長の指 名によって選任される(国会法 46 条)。常任委員長は各議院において各々常任委員の中か ら選出され(国会法 25 条)、特別委員長はその委員会で互選される(国会法 45 条 3 項)。 しかし、実際には動議により委員長の選任を議長に委任し、与党の推薦する委員を議長が 指名している。衆議院では与党の議席数が許す限り、与党議員が主要な委員長ポストを占 め、せいぜい特別委員会を野党に譲るに過ぎないが、参議院では各政党の議席数に比例し て委員長ポストを配分することが慣行となっている。 委員長の役割は、委員会の議事を整理し、秩序を保持することである(国会法 48 条)。 委員長は委員会開会日時を決定する(衆規 67 条 1 項、参規 38 条 1 項)。また委員に発言の 許可を与え(衆規 45 条 2 項、参規 42 条 2 項)、あるいは委員会に諮り質疑・討論その他の 発言時間を制限する(衆規 68 条 1 項、参規 47 条)。委員の発言が委員会秩序を損なう場合 にはそれを禁止することもできる(衆規 71 条、参規 51 条)。委員長は討論の終局により議 題を表決に付し(衆規 50 条、参規 49 条)、委員会の議事は過半数で決せられ、可否同数の ときには委員長が決裁権を行使する(国会法 50 条)。このように委員長は広範な議事運営 権を司るが、実際には各党の代表である数名の委員が理事となり、委員会運営は委員長と 理事の協議によって行われる。 実質的には大多数の法案が委員会審査を経なければ法律となることはない。委員会は議 案を本会議に送る必要はないが、委員会の決定から 7 日以内(休会中を除く)に 20 名以上 の議員から要求があれば、その議案を本会議に付さなければいけない(国会法 56 条 3 項)。 したがって、法案に反対する野党にとっては、野党理事が法案の審査自体に反対し、議事 運営における全会一致の規範が尊重される限りにおいて、その法案を委員会でたなざらし にすることができる。しかしながら、与党にはその法案の成立を期す場合、二つの戦略が 制度的に可能である。 第一に、議院の議決により中間報告を求め(国会法 56 条の 3)、法案を委員会より救い 出し、議院による審議を経て法案を成立させる戦略がある。第二は、委員会理事会で野党 の反対を押し切って審議日程を決め、委員会では野党の審議引き延ばしを排するために、 与党が動議により法案を議題にし、質疑を打ち切って、採決に持ちこむ戦略である(参規
48 条)。いわゆる「強行採決」であり、Krauss (1984)は snap vote と呼び(p. 249)、この場
合には与党議員が委員長であることが不可欠の要件となる。
1970 年代後半、自民党は保守系無所属議員を取り込むことによって、かろうじて衆議院 の多数議席を維持したが、主要な委員会での多数を確保するためには、いくつかの常任委
員会、特別委員会の委員長ポストを野党に配分せざるを得なくなった。こうした野党委員 長のもとでは強行採決を行うことは不可能であり、委員会が政府の重要法案を委員会でた なざらしにするならば、与党は中間報告に頼らざるを得ない。ただし、いずれ中間報告が 発動されてしまえば、法案は無傷で成立するのであり、野党としても与党に審議遅延によ る時間の浪費、それに伴う他の法案審議への影響を勘案させ、何らかの譲歩を得るほうが 中間報告を強いるまで与党を追いつめるより得策となる。 委員長ポストの重要性はいわゆる「逆転可決」にも示される。1976 年の総選挙によって 自民党は衆議院の 511 議席のうち 260 しか確保できなかった。これは衆議院全体としては 多数であるが、委員会毎に委員を割り当てた場合、結果として委員数が偶数の委員会にお いて、多数をとるか、委員長をとるかという選択を自民党に迫ることとなった。先例と国 会法 50 条の規定により、委員長は可否同数でない限り採決に参加しない。したがって、例 えば、委員数 30 の委員会で自民党に 15 の委員枠しか配分されない場合、多数を得るため には委員長ポストを野党に譲るしかない。 実際、こうした委員数偶数の委員会で自民党は委員長ポストをとり、野党が多数となる 委員会も出現した。なぜ自民党は委員会多数より委員長ポストを選んだのか。それは、衆 議院全体としては自民党は多数を占めており、たとえ委員会で法案が否決されても採決ま で漕ぎ着ければ、委員長はその旨を議院に報告し、委員会で否決された法案を本会議で可 決するという「逆転可決」が可能だからである。こうした逆転可決は 1977・1978 年の地方 行政委員会における地方税法改正案について実際に生じている。 (3) 会期制 国会には常会・臨時会・特別会の 3 つがある。常会は憲法により毎年1回召集される(憲 法 52 条)。当初、常会は 12 月に召集されていたが、1991 年の国会法改正により、毎年 1 月に召集されるようになっている(国会法 2 条)。この常会は、特に国の予算や予算関連法 案を審議するためのものであり、会期は 150 日間と定められている(国会法 10 条)。臨時 会は内閣が必要に応じて召集することができ、また衆参いずれかの議院の総議員 4 分の 1 以上から要求があった場合にも召集されねばならない(憲法 53 条)。特別会は衆議院の解 散による衆議院議員の総選挙後に召集される(憲法 54 条)。臨時会と特別会の会期は召集 のつど両院の議決で決定し(国会法 11 条)、1958 年の改正より、会期の延長は常会におい て 1 回、特別会と臨時会においては 2 回までと制限されている(国会法 12 条 2 項)。延長 および延長期間も両院の議決により、両院の議決が一致しない場合は衆議院の議決が優越 する(国会法 13 条)。 理論的には会期延長や臨時国会によって国会を年中開くことは可能であるが、実際には 国会は年間 200 日程開かれている。ただし、慣例や規則によって国会の可処分時間はより 制限されたものとなっている。すなわち、まず本会議には定例日があり、衆議院では火木 金、参議院では月水金となっている。しかしながら、議長は緊急を要すると認められる場
合、定例日以外に本会議を開くことができる(国会法 55 条 2 項)。また委員会も一週間に 2 ないし 3 日の定例日が定められているが、会期末や緊急の場合には定例日以外にも開かれ る。これにより、国会の実質的な可動日数は約半分、100 日程度となる。 また憲法 72 条の規定から、通常国会冒頭では首相が一般国務および外交についての報告 を行い、それに対する質疑が数日間にわたって引き続く。そして予算委員会が開かれ、予 算審議が他の法案審議より優先される。慣例により、予算審議中は審議の内容に関わらず、 全閣僚が予算委員会に出席することが求められる。したがって、予算審議が終了し、関係 閣僚の出席が可能となるまで、他の委員会は審議に入れない。会期 150 日の通常国会でさ え、大部分の会期は予算審議に費やされることになる。 国会における時間的制約を一層厳しくしているのが、会期不継続の原則である。これは 国会の活動を会期中に限り、会期中に議決に至らなかった案件は後会に継続しないと定め るものである(国会法 68 条)。ただし、委員会は議院の議決により、付託された案件を閉 会中も審査することができ、こうした閉会中に審査する案件は後会に継続する(国会法 47 条 2 項)。したがって、こうした時間的制約下にあって、法案審議を効率的に処理するため には、委員会毎の議事運営とともに、国会全般の時間の管理が立法的生産性を決定的に左 右する。 (4) 全会一致 議長の役割は、委員会における委員長のそれと同じであり、本会議の議事を整理し、秩 序を保持することにある(国会法 19 条)。具体的には、議長は議事日程を決める(国会法 55 条)。また議長が必要と認めるとき、議長は議院に諮り、議事日程の順序を変更し、他 の案件を議事日程に追加することができる(衆規 112 条、参規 88 条)。衆参の議長は各議 院より選ばれ(憲法 58 条)、通常は与党議員である。ただし、議長は与野党間の中立を維 持するために、党籍を離脱することが一般的になっている。 また議長は法案を所管の委員会に付託する(国会法 56 条 2 項、衆規 31 条、参規 29 条)。 案件の所管が判断しにくい場合、議長は議院に諮って決定した常任委員会に付託する(衆 規 32 条)。ただし、実際には、議長は議事に関して常任委員会のひとつである議院運営委 員会(以下議運)の決定に従う。国会法 55 条の 2 は、議長は議事の順序その他必要と認め る事項につき、議運委員長および議運が選任する議事協議員と協議することができると定 めている。また議運が必要と認めた場合、本会議において議案の趣旨説明が聴取される(国 会法 56 条の 2)。 実質的には議事運営は議運を通じた政党間交渉に委ねられている。議運は 25 名から成り、 委員は会派議員数に比例して各会派に配分される。議運は国会会期中には日常的に開かれ、 議事に関する問題を処理する。また国会の制度的機関ではないが、各政党には国会対策委 員会と呼ばれる組織があり、議運を表舞台とすれば、議事運営の裏舞台で政党間交渉の潤 滑油的な機能を果たしている。
議運の議事に関する決定は慣行として全会一致に拠っているが、それはあくまで紳士協 定であり、国会法 55 条の 2 は議運によって選任される議事協議会の意見が一致しない場合、 議長に裁定する権限があると規定している9。実際には、議運理事会が議事協議会の機能を 担っており、理事会で合意が得られない場合は議運での採決に委ねられる。大山(1997) も述べるように、戦前の帝国議会では議会運営に携わる各派交渉会に全会一致の明文規定 もみられるが、戦後の国会では委員会の理事会における不文の慣行として全会一致が尊重 されるに過ぎない(p. 45)。したがって、議運による議事運営が少数派の意見を立法に反映 させるように機能するものの、意見が対立する場合には議長に決裁権が在り、制度的には 多数主義的な議事運営が保証されている。 このように議会全体としても、また個々の委員会においても、多数主義的な立法が制度 的に可能であり、議会多数を制する政党が存在するならば、法案審議は実質的に議事日程 の決定に集約される。野党の採り得る戦略は、審議を引き延ばし、時間切れで法案の廃案 を目指すしかない。しかし、多数主義的な議事運営が保証されている以上、多数派が法案 の成立を期す場合、いずれは多数派の推進する法案が成立する。ただし、野党の引き延ば し戦略は、与党に「強行採決」を余儀なくさせ、それを民主主義的な原則を破る暴挙であ ると国民に訴えれば、与党にとっては選挙や世論におけるダメージとなるかも知れない。 与党がこうした野党の抵抗による立法的な不効率や選挙・世論上のデメリットを重く受け とめるならば、立法的妥協が与野党間に成り立つ余地も大きくなろう。野党が審議を引き 延ばすために用いる常套手段には、まず内閣を質問攻めにすることが挙げられる10。また野 党は内閣不信任や譴責決議の動議を立て続けに行い、それら全てに記名投票を求める11。こ うした記名投票では、「牛歩戦術」と呼ばれるように、法案に反対する議員はゆっくりと投 票箱に向かい、意図的に投票が延々と終わらないようにする。 ただし、与党にはこうした野党の抵抗に対処する手段が制度的に保証されている。まず 本会議では質疑が続出して容易に終局しないとき、議員 20 人以上によって質疑終局の動議 を提出することができる(衆規 140 条、参規 111 条 1 項)。また国会法 61 条 1 項は議長に 質疑、討論、その他の発言に時間の制限を課すことを認めている。さらに、議長の職務権 限の規定から、議長は投票時間も制限できるものと解釈され(国会法 19 条)、時間内に投 票しない者を棄権とみなしうる(衆規 155 条の 2)。委員会では、いずれの委員も単独で質 疑終局の動議を提出することができ(参規 48 条)、委員長は委員会に諮って質疑の時間を 制限することができる(衆規 68 条 1 項、参規 47 条)。先にも触れたが、委員会での審議が 一向に進まない場合、議院は中間報告を求め、法案を本会議で審議することができる。こ うした与党の強硬姿勢は、野党による物理的な審議妨害や審議拒否を招き、結果的には融 和策よりも時間的、政治的コストが大きくなることもある一方、国会の混乱に対する国民 的な批判が野党に向けられることもある。 まとめ:戦後の国会はアメリカ議会の委員会中心主義を導入したが、制度的原理はイギ リス型の権力の集中にあり、議会多数の信任に依拠する内閣が立法において主導的な役割
を担う制度である。確かに、実質的な法案審議が行われる委員会は立法にとって乗り越え ねばならないハードルとなる。ただし、議事運営権は議会法規的には議会多数を占める限 り、与党の手中にある。したがって、立法の実質的焦点は、会期中に採決に辿り着くよう に、いかに議事日程を管理していくかということに置かれる。 Mochizuki は審議時間を制限する会期制が与党の立法能力の足枷となると主張したが、制 度的には会期の延長期間は無制限であり、また内閣は必要に応じて臨時国会を召集するこ とができ、与党にとって時間的制約を取り払うのは容易いことである。また国会法は通常 法規であり、会期を短く規定する条項自体は議会の過半数で改廃することもできる。さら に、通常は与野党の全会一致を規範とする議運が議事運営を担っているが、制度的には議 運の意見が一致しない場合は議長に決裁権が在り、議長が依拠する議会多数による議事運 営が保証されている。したがって、全会一致志向や会期による時間制約も、与党が多数決 を強行し得る、また会期の長期化を実現しうる制度を前提とし、結果として観察可能とな るものであることを認識する必要がある。 議事運営権の比較制度論 ここまで国会関連法規を再検討し、国会の制度や規則が一般に言われるほどに全会一致 的でないことを明らかにしてきた。この節では、Döring (1995)の議事運営権に関する議会 分類に拠り、国会がどの程度多数主義的な議事運営を可能にするものかということを比較 論的な視点から検討していく。 Döring は議事運営権を七つの基準から検討し、欧州 18 カ国の議会を分類している12。こ こでは彼の基準に国会の制度・規則を照らし合わせ、日本の国会を欧州各国の議会の中に 位置付けることを試みる。これにより、国会よりも多数与党による議事運営を可能にして いる議会、あるいは制限している議会がどれだけあるのかということが判明する。そして、 各欧州議会を「国会より多数主義」、「国会と同等に多数主義」、「国会より多数主義でない」 に三分類し、それら三分類が 18 カ国に占める割合を 0 から 100 の範囲に配置する。したが って、国会より多数主義である議会の割合は国会の多数性の上限となり、国会と同等以上 に多数主義である議会の割合が国会の多数性の下限となる。以下では、こうした多数性の 上下限を各基準において国会が多数主義的な議事運営を可能にする指標として示していく。 (1) 本会議における議事運営権の所在 まず Döring は本会議において誰が議事運営を決定しているのかということを問う。彼は 本会議における議事運営が多数与党によって担われる程度に応じて各国議会を七つに分類 する。すなわち、本会議の議事は以下によって決定される。 ① 与党単独 ② 与党が議席割合より過剰に代表される議事運営機関 ③ 議席割合に応じて与野党の代表で構成される議事運営機関の多数
④ 全会一致が尊重される議事運営機関(議院多数に決裁権がある) ⑤ 政党間交渉を通じた議長裁定(議院に決裁権がない) ⑥ 非集権的な複数の議事運営主体 ⑦ 議院自体 したがって、国会の場合、公式な制度として議運があり、全会一致が尊重されるものの、 制度的に議院多数に依拠する議長の決裁権が規定されており、少なくとも類型④より多数 与党の議事運営権が制限されるとは言えない。Döring の分類では①∼③に 7 カ国、④には 5 カ国が該当し、国会における多数主義的議事運営の指標はおよそ 39 から 67 の範囲とな る。 (2) 予算関連法案に関する政府特権 Döring の第二の基準は予算関連法案を提出できるのが政府に限定されているかという点 にあり、各国議会を限定、中間、非限定に三分類している。日本では憲法上予算の編成・ 提出権は内閣に専属し、予算の成立には国会の議決が必要とされる。また国会議員による 予算を伴う法律案・修正案の提出については議案提出における賛同要件が衆議院では 50 人 以上、参議院では 20 人以上とより厳しくなる。さらに議員による予算関連の議案について は内閣に意見を述べる機会が与えられねばならず13、経費を明らかにした文書の添付が求め られる14。また憲法学的な解釈が一致しているわけではないが、国会による予算の増額修正 について一定の限界があるとするのが有力な見方である15。 したがって、Döring によって限定的とされたイギリスやフランスほどに限定的でないと しても、日本での予算関連法案に関する政府特権はかなり強いものであり、国会を少なく とも中間類型に分類することができよう。Döring は 5 カ国を限定的議会、1 カ国を中間的 議会としており、この基準における国会の多数主義的議事運営指標は 28~33 である。 (3) 委員会に対する議院の先決性 第三に Döring は委員会審議が本会議の事前の決定に拘束されるのかという点に着目する。 例えば、アイルランド、スペイン、イギリスでは、まず議院において立法の方向性が決定 され、委員会には実質的にそれを変更する余地は残されていない。またデンマークでは、 前三カ国ほどに拘束的ではないものの、委員会審議に先立って議院が事前に決定を下す。 残る国々は委員会審議が本会議に先行する議会に分類されている。日本の国会にも委員会 審議に先立って趣旨説明を本会議で聴取することが制度的に認められているが、本会議で の決定が委員会審議を拘束するとは言えない。したがって、国会を三番目の類型とした場 合、Döring は計 4 カ国を第 1・2 類型に挙げており、ここでの国会における議事運営の多数 主義指標は 22~100 となる。 (4) 委員会の法案修正権限
この基準は委員会による法案修正が議院をどの程度拘束するのかということにあり、具 体的には委員会審議において法案が修正される場合でも、引き続く本会議で原案自体が審 議に付されるのかという点に集約される。Döring はこの基準に関して各国議会を四分類す る。 ① 議院は修正案が付加された原案を審議する ② 関係閣僚が原案自体の修正を拒否する場合、議院が原案を審議する ③ 議院は原案と委員会提出の修正対案を審議する ④ 委員会は法案の修正に制限がない 国会では、修正案がすべて否決されたときは原案について採決しなければならないとされ ており16、最初の類型に分類されると言えよう。Döring は 5 カ国を最初の類型としており、 国会の多数主義的議事運営指標は 0~28 となる。 (5) 委員会における議事運営権の所在 さらに Döring は委員会において誰が議事運営を決定しているのかということを問う。彼 は委員会における議事運営に議院が介入できる程度に応じて各国議会を四分類する。すな わち、委員会の議事は以下によって決定される。 ① 委員会に付託された法案は自動的に委員会議事を構成する ② 法案の付託撤回権がある議院の議事運営機関が委員会議事を決定する ③ 委員会自体が委員会議事を決定するが、議院に付託撤回の権限がある ④ 議院には付託法案を撤回することができない 国会では、委員会理事会が委員会議事を決定しているが、議院には中間報告によって委員 会審議を経なくても最終的な議決を行うことが保証されており、この基準に関しては類型 ③に合致する。Döring は計 11 カ国を類型①・②に挙げ、3 カ国を③に分類している。した がって、ここでの国会における議事運営の多数主義指標は 61~78 となる。 (6) 議事妨害の排除 この基準は本会議における質疑や討論の制限に関するものであり、いかに議院多数が審 議妨害を排除できるのかを示す。Döring は各国議会を三分類する。 ① 議院の多数によって審議に時間的制約を課すことができる ② 政党間交渉により審議方法を決定する ③ 何ら審議妨害を排除する方策がない 国会では、質疑・討論の終局動議は多数決により、また議長の職務権限として質疑、討論、 投票の時間を制限することが認められている。したがって、国会は類型①に分類される。 Döring は 4 カ国を類型①に挙げており、この基準における国会の議事運営多数主義指標は 0~22 となる。
(7) 法案の継続性 最後の基準は法案が議会内で存続し得る時間的制約である。Döring は各国議会を四分類 する。すなわち、法案の存続は①会期内、②任期内、③任期内(ただし任期を越える継続 も可能)、④無期限に類型化される。国会では、議院の議決によって委員会に付託された法 案が継続審議とされない限り、法案は会期末で廃案となる。したがって、国会における会 期不継続の原則は類型①に該当する。Döring はこの類型にデンマーク、アイスランド、イ ギリスの 3 カ国を挙げており、この基準に関して国会における議事運営の多数主義指標は 0~17 となる。 表 1 はこれら 7 基準による国会の議事運営権が比較論的にどの程度多数主義的であるの かをまとめている。すなわち、Döring によって分類された 18 カ国に関して、まず国会より 多数主義的な議会の割合は、国会の議事運営に関する多数主義度の上限を示しており、ま た国会と同等以上に多数主義的である議会の割合は、国会の多数主義度の下限となる。委 員会と議院の関係に関する基準(3・5)においては、比較的に委員会の自律性を認め、議 院の多数が委員会審議に介在する余地は限定的であるが、本会議における議事運営権(1) はほぼ中間的であり、その他の基準において国会は比較的に多数主義的な議事運営を保証 する議会制度と言える。無論、各基準の重要性に相違もあろうが、全体の単純な平均とし ては、国会における議事運営の多数主義的指標は 21~49 であり、欧州諸国の議会との比較 において、国会は多数主義的な議事運営を保証する議会制度を備えており、少なくとも一 般に認識されているほどに多数制限的でないことは明らかである17。 表 1 国会における議事運営の多数主義指標 議事運営に関する制度・規則 国会より多数主義的な 議会の割合 国会と同等以上に多数 主義的な議会の割合 1 本会議における議事運営権の所在 39 67 2 予算関連法案に関する政府特権 28 33 3 委員会に対する議院の先決性 22 100 4 委員会の法案修正権限 0 28 5 委員会における議事運営権の所在 61 78 6 議事妨害の排除 0 22 7 法案の継続性 0 17 平均 21 49 結論 この論文では、まず憲法、国会法、議院規則といった議会関連法規の再検討を通じて、 国会の制度や規則が一般に言われるほどに全会一致的でないことを明らかにした。そして、 Döring の議事運営権に関する議会分類に拠り、国会がどの程度多数主義的な議事運営を可 能にするものかということを比較論的な視点から検討し、国会の議事運営に関する制度が
相対的に多数主義的な議事運営を保証していることを明らかにした。 こうした分析からは従来と異なる国会像が浮かび上がるのではないだろうか。すなわち、 仮に国会の議事運営が欧州諸国と比較してより全会一致的であるならば、それは Mochizuki らが強調する国会の制度的構造に由来するためではない。つまり、国会の制度・規則はむ しろ多数主義的な議事運営を保証するのであり、我々が観察する実際の議事運営はこうし た制度的構造を前提として結果するものであるということを認識する必要がある。全会一 致的な議事運営を選択し、維持し続ける理由としては、従来から伝統的な「和」を重んず る文化的な価値規範やコンセンサス型民主主義におけるようなエリート間の相互作用が想 定されてきた18。しかしながら、Kohno (1997)が明らかにするように、日本政治に関する文 化論的な解釈の妥当性には限界があり、この論文における分析からは国会における議事運 営の多数主義的解釈がむしろ妥当する可能性が示唆される19。 ただし、国会の立法過程がさほど「粘着的」でないという結論は国会機能論を否定する ものではない。つまり、議院内閣制における議会の機能とは、国会における与野党間の審 議や交渉による立法的「変換」を高めることではなく、むしろ行政機関による法案作成に おいて議会の意向を法案に反映させることにある。したがって、議会の制度的構造を理解 するには、与野党という構図だけでなく、政官関係という視点が不可欠となり、こうした 立法・行政関係という観点からは法案の生殺与奪を左右する議事運営権が焦点となる。 憲法は立法過程に国会を最終関門とすることを制度的に条件づけており、国会における 権力行使は国会に至る過程での法案化や争点化にも波及するであろう。然るに、これまで 政治家や政党の役割を重視する場合でさえ自民党の与党審査や族議員といった観察可能な 現象が着目されるに過ぎず20、また政官の代理委任関係を想定する研究者も政治家優位の根 拠が憲法による立法府の優越にあるにも関わらず、安定的な議会多数、強い指導者といっ たことを議院内閣制の当然の帰結として考慮するに過ぎず21、立法府と行政府の観察不可能 な構造的関係に目を向けてきたとは言い難い。こうした分析は本論の範囲を越えるもので あるが、今後の国会研究の方向性として結びに代えて指摘しておく22。 参考文献
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この論文は Journal of Legislative Studies Vol. 6 No. 4 (2000)に掲載される筆者の論文"Is the Japanese Diet Consensual?"を翻訳し、日本語論文として加筆修正したものである。 1
また Baerwald (1979)参照。 2
党関係を強調する。また増山(2001)は与野党の勢力的趨勢が野党の閣法賛否に及ぼす影 響を明らかにしている。 3 行政府による立法行為は法律に基づいて発せられる政省令に限られる。国会を唯一の立 法機関とする原則の例外は、国会両院と最高裁判所の自律規定と地方自治体の条例である。 4 内閣総理大臣は憲法上国会議員でなくてはならない。委員会委員長も法案を提出できる が、委員長もいずれかの議院の議員であり、形式的な意味では、国会の立法は 100%議員 提出法案に基づく。ただし、内閣提出、委員長提出のいずれの場合も国会法 56 条の賛同要 件の適用を受けない。 5 この衆議院による再議決と憲法に規定されたいくつかの特別な議決以外、全ての議決は 各院における出席議員の過半数によって行われ、可否同数の場合には議長が議決権を行使 する(憲法 56 条 2 項)。憲法改正の発議には各院における総議員 3 分の 2 以上の賛成が必 要である(憲法 96 条)。その他憲法で出席議員 3 分の 2 以上の多数が規定されているのは、 両院の秘密会開催(憲法 57 条)、議員除名(憲法 58 条 2 項)、資格訴訟裁判による議席 剥奪(憲法 55 条)がある。 6 両院協議会は衆議院の要請によって開催される。ただし、参議院は衆議院の回付案に同 意しない場合に両院協議会を要請できるが、衆議院は請求に応じる必要がない(国会法 84 条 2 項)。両院協議会は衆参各々10 名の 20 名で構成される(国会法 89 条)。実際には両 院の議長が各院の議決に賛成した会派議員数に比例して委員を指名する。また憲法 59 条 4 項の「みなし否決」の場合、参議院は院全体の会派議員数に比例して委員が選出される。 7 ただし、特に緊急を要するものは、提案者の要求に基き、議院の議決で委員会の審査を 省略することができる。 8 ただし、正副議長、閣僚、政務次官は割り当てられた委員を辞任することができ、この 場合所属会派の他の議員がその委員を兼任する。 9 また国会法 55 条の 2 に拠れば、議長は国会会期中か否かに関わらず、何時でも議事協議 会を開くことができる(3 項)。 10 内閣は質問主意書を受領後 7 日以内に答弁する必要があり、その期間内に答弁できない 場合はその理由と答弁が可能になる期限を明示しなければならない(国会法 75 条 2 項)。 また内閣の答弁が要領を得ない場合、質問者は再度質問主意書を提出できる(衆規 159 条)。 内閣は質問に対して口頭で答弁することができ、その答弁に対しては質問者は口頭で再質 問することができる(衆規 160 条、参規 154 条)。 11 議長が必要と認めたとき、または出席議員 5 分の 1 以上の要求により、記名投票で表決 を採る(衆規 152 条、参規 138 条)。 12 分析対象国はアルファベット順にオーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、 フランス、ドイツ、ギリシア、アイスランド、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、 オランダ、ノルウェイ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリスである。 13 国会法 57 条の 3。 14 衆規 28 条 1 項・143 条 2 項、参規 24 条 1 項・125 条 2 項。 15 1977 年の政府見解では、「国会の予算修正については、それがどの程度の範囲で行いう るかは、内閣の予算提案権と国会の審議権の調整の問題であり、憲法の規定からみて、国 会の予算修正は内閣の予算提案権を損なわない範囲内において可能と考えられる」とされ
(1997)pp. 186-187 参照。 16 衆規 146 条、参規 131 条。 17 18 カ国の多数主義指標平均は中間値の順に次のとおりである:イギリス(0-20)、アイルラ ンド(2-26)、フランス(16-48)、ギリシア(17-48)、スペイン(20-60)、ポルトガル(25-62)、デン マーク(31-63)、オーストリア(26-74)、ルクセンブルク(33-75)、ノルウェイ(28-82)、ドイツ (34-84)、フィンランド(38-81)、イタリア(35-86)、アイスランド(38-84)、スイス(40-86)、ベ ルギー(40-87)、オランダ(56-90)、スウェーデン(58-98)。Masuyama (2000b)はこれら 7 基準 における類型を数値化した主因子分析を行っている。日本を含む 19 カ国を対象とした場合、 因子得点が最も低いのがイギリスであり、アイルランドが続き、得点が高いのがオランダ、 次いでスウェーデンとなる。日本の因子得点は 6 番目に低く、スペインとポルトガルの中 間に位置する。 18
例えば、Richardson and Flanagan (1984)、Richardson (1997)、Lijphart (1977 and 1984)参照。 19
多数制限的制度の多数決による選択は議会制度の合理的選択論において中心的課題であ る。例えば、Shepsle and Weingast(1995)、日本語では増山(1996)、待鳥(1996)参照。 20
例えば、佐藤・松崎(1984)、猪口・岩井(1987)参照。 21
Ramseyer and Rosenbluth (1993)、Cowhey and McCubbins (1995)参照。 22
国会の制度を多数与党による議事運営という観点から理解するものとして Cox,
Masuyama, and McCubbins (2000)、増山(2001) があり、また会期制度による時間的制約の効 果を検証するものとして増山(2000)、Masuyama (2000a) がある。