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卒業研究論文 微分方程式を用いた携帯端末市場の成長モデル 学籍番号 12D K 山本悠貴 中央大学理工学部情報工学科田口研究室 2016 年 3 月

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卒業研究論文

微分方程式を用いた携帯端末市場の成長モデル

学籍番号

12D8101021K

山本 悠貴

中央大学理工学部情報工学科 田口研究室

2016 年 3 月

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あらまし

携帯端末はフィーチャーフォンが登場し,その後,スマートフォンへシフトし,今では 私たちの一番身近で,なくてはならないコミュニケーションツールになっている.2011 年 にLTE サービスが開始したことにより,高速通信が可能になり,動画閲覧や,オンライ ンゲームなど本来の通話やメール以外にも様々な機能が搭載され,利用シーンは広がって いる.そんな携帯端末市場の動向を,微分方程式を使って分析する. キーワード:回帰分析,最小二乗法,ロジスティック曲線,ランチェスターモデル

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内容

第1 章 はじめに ... 1 第2 章 回帰分析と最小二乗法 ... 2 2.1 回帰分析とは ... 2 2.2 最小二乗法とは ... 2 第3 章 データの概要 ... 3 3.1 キャリアごとのデータ ... 3 3.2 データの分析 ... 4 第4 章 成長曲線 ... 5 4.1 成長曲線の概要 ... 5 4.2 docomo における成長曲線 ... 8 4.3 au における成長曲線 ... 10 4.4 SoftBank における成長曲線 ... 11 第5 章 ランチェスターモデル ... 14 5.1 ランチェスターモデルの概要 ... 14 5.2 softbank と docomo の力関係 ... 17 5.3 softbank と au の力関係 ... 19 5.4 docomo と au の力関係 ... 20 第6 章 おわりに ... 22 6.1 まとめ ... 22 6.2 今後の課題 ... 23 謝辞 ... 24 参考文献 ... 25

目次

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1 章 はじめに

現在,フィーチャーフォンやスマートフォンは生活に欠かせないものとなっている.利 用者は,主にdocomo,au,softbank の 3 つ会社からキャリアを選んで契約を結ぶ.その 際,提供されるサービス,料金体系,利用できる機種,CM などのイメージでキャリアが 選ばれる.そんな中,3 つのキャリアの力関係を把握して,各社の成長,衰退の様子をロ ジスティック曲線やランチェスターモデルを用いて数式で表現するモデルを作成する.

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2

2 章 回帰分析と最小二乗法

本章では,成長曲線を定めるパラメータ推定に用いる回帰分析と最小二乗法について 説明する.

2.1 回帰分析とは

回帰分析とは,原因となる説明変数(独立変数)𝑥1, 𝑥2, … , 𝑥𝑝と,その結果である目的 変数(従属変数)y を結ぶための統計処理のことである.それらの関係は, Y = 𝑏1𝑥1+ 𝑏2𝑥2+ ⋯ + 𝑏𝑝𝑥𝑝+ 𝑏0 (2.1) のような,回帰式と呼ばれる一次式で表される.ここで,実測値 y と区別して予測値は Y を記す.𝑏0を切片,𝑏1, 𝑏2, … , 𝑏𝑝 を偏回帰係数という. この式(2.1)を用いることで,𝑥1, 𝑥2, … , 𝑥𝑝 から y の予測をしたり,p 個の説明変数のう ち,どの説明変数 𝑥𝑖 が y と,最も関係が強いのかを調べることができる.

2.2 最小二乗法とは

最小二乗法とは,式(2.1)の切片と偏回帰係数を得られたデータから推定するとき,数値 の誤差の2 乗の和を最小にすることで,最も尤もらしい値を求める計算法である.説明変 数が一個の場合を説明する. n 組のデータ (x1, 𝑦1), (𝑥2, 𝑦2), … , (𝑥𝑛, 𝑦𝑛) について,yi と xi の間に一次の関数関係 yi≒ 𝛼 + 𝛽𝑥𝑖, 𝑖 = 1,2, … , 𝑛 があるものとする.この係数α,βの値を n 組のデータ (xi, yi) から推定するため,次のよ うに考える. 仮にα,βの推定値が求まったとして,それらの値を a, b で表す.このとき yi の 予測値 Yiは, Yi= 𝑎 + 𝑏𝑥𝑖, 𝑖 = 1, 2, … , 𝑛 となる.この予測値 Yi と実測値 yi との差を 𝑒𝑖 = 𝑦𝑖− 𝑌𝑖, 𝑖 = 1, 2, … , 𝑛 とおく.𝑒𝑖 は残差とよばれる.この残差の平方和 S = ∑ 𝑒𝑖2= ∑(𝑦𝑖− 𝑎 − 𝑏𝑥𝑖)2 𝑛 𝑖=1 𝑛 𝑖=1 が最小となるようにα,βの推定値 a, b を求める.

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3

3 章 データの概要

3.1 キャリアごとのデータ

本研究ではdocomo,au,softbank の 3 つのキャリアの契約数をデータとして扱う.こ こで扱う契約数とはフィーチャーフォンやスマートフォンなどの移動電話の契約数であ り,ネット回線などの契約は含まれない.また,今回取得できたデータ数がキャリアよっ てまちまちである.docomo は 2010 年 6 月末~2015 年 6 月末,au は 2000 年 9 月末 ~2015 年 9 月末,softbank は 2008 年 6 月末~2015 年 3 月末のデータとなっている. それをふまえ,グラフ化したものを以下に示す. 図3.1 各キャリアの契約数

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4

3.2 データの分析

昨今,通信事業は右肩上がりであり,図3.1 のような累計契約数で見た場合,どのキャ リアも一様に伸びているのでデータの分析がしにくい.そのため,図3.2 のように契約増 加数を縦軸にとることで,各キャリアの上下が分かりやすくなる. 契約増加数の変化点を実際に起きた事柄と照らし合わせるとiphone の発売日(図 3.3)と 関わりが深いことが分かる. 図3.2 各キャリアの純契約増数 図3.3 iphone の発売日

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5

4 章 成長曲線

4.1 成長曲線の概要

成長曲線とは時間の推移と人口増加や商品の売れ行きなどの関係を数式で表現したもの である.ここでは成長曲線をロジスティック曲線でモデル化した.図4.1 のように飽和状 態にほど遠い段階では加速度的に増加し,飽和状態に近づくと,増加率が減少し,一定の 値に落ち着くことが特徴的である. 図4.1 成長曲線の一例

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6 成長曲線の増減を考えた時の微分方程式を,一つの市場の需要総数をA,着目している 商品の売り上げ総数をx,正の比例定数を k とおくと, x′= kx(A − x) と表せる.この微分方程式を解くと, x(t) = 𝐴 1 + (𝑥𝐴 0− 1)𝑒 −𝑘𝐴𝑡 となり,この式を図示することにより図4.1 のような成長曲線が描ける.実際のデータを 当てはめるには,A x0− 1 = 𝐵, 𝑘𝐴 = 𝐶 とおくと, x(t) = A 1 + Be−Ct となる.これを微分すると 1 x 𝑑𝑥 𝑑𝑡 = 𝐶(1 − 𝑥 𝐴) ここで,y =1 x 𝑑𝑥 𝑑𝑡, 𝑐 = 𝛼, − 𝐶 𝐴= 𝛽 とおけば, y = α + βx が得られる.n 組のデータ (x1, y1), (x2, y2), … , (xn, 𝑦𝑛) が得られたとする.ここで変数 y =1x𝑑𝑥𝑑𝑡 のサンプル yi を次の差分公式 yi= 1 𝑥𝑖 𝑥𝑖+1−𝑥𝑖−1 2 で 近似する.式(4.2)から最小二乗法で,αとβを求めることにより,式(4.1)の k と A が決定 し,成長曲線を求められる. (4.1) (4.2)

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7 ここで一つ問題がある.本研究において,式4.1 だけを用いて成長曲線を求めることは 難しい.なぜなら,移動電話はフィーチャーフォンからスマートフォンへと,新しいニー ズを作り出すように凄まじい速度で技術開発が進んでいる.そのため,開発当初の製品の 価格や性能からは比べものにならないほど進歩しており,それに対応して市場は広がって いく.そんな製品の成長曲線を描く時,長い期間にわたって一組のパラメータでモデルを 記述するというのは無理がある. 成長曲線の基本的なモデルの x’=kx(A-x) を見るとわかるが,本来ならば,だんだんと 大きくなるx が A に近づくにつれ,x’は小さくなり,一定の値に落ち着く.しかし,長い 期間であると,実際の市場規模よりも小さくA が設定されるので,式の(A-x)の部分が負 になる.そうなると下図のような曲線になる.こうなる事態を避けるため,時期ごとに分 けてA を推定する必要がある. 図4.2 失敗した成長曲線の一例 しかし,時期ごとに分けても急激に成長し,正しいA を推定できない場合があるため, その場合はモデルを x’=kx とする.

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8

4.2 docomo における成長曲線

2013 年 9 月 20 日に apple より iphone5s,5c が発売された.その時点までは,iphone を 取り扱っているのはau と softbank だけだったが,5s,5c より docomo も iphone を販売す るようになった.これを境に明確な売上向上が見て取れるので2013 年 6 月末前後で成長 曲線を分ける.

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9 docomo の 2010 年 9 月末から 2013 年 6 月末までの契約数をもとに描いた成長曲線を図 4.4 に示す.縦軸に累計契約数,桁数を 1 単位とし,横軸に時間,実測値は 3 か月ごとに 記録されたデータをとったグラフである.これは後に示すグラフも同様である.予測値と 実測値は大きく外れる結果となった.2010 年 10 月頃に販売された Galaxy S という端末 の売り上げが貢献し,この区間の初動の伸びが大きかったためと考えられる. 2013 年 6 月末から 2015 年 3 月末までの契約数をもとに描いた成長曲線を図 4.5 に示 す.docomo から iphone5s が発売されてからは,三社ともその後の iphone6,6s と発売 し,端末の販売種類を考えたとき,キャリア間の競争があまり見られなくなったため,実 測値は大きく外れなかったと考えられる. 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 55000 60000 65000 70000 年月日 契約数 実測値 予測値 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 55000 60000 65000 70000 年月日 契約数 実測値 予測値 図 4.4 2010 年 9 月末から 2013 年 6 月末までのデータから求めた成長曲線 図4.5 2013 年 6 月末から 2015 年 3 月末までのデータから求めた成長曲線

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4.3 au における成長曲線

au のみスマートフォン普及以前のデータも取ることができた.スマートフォンの参入は 非常に大きな分岐点であり,普及し始めた2008 年 6 月末前後でまず分ける.2011 年 10 月14 日には今まで iphone を取り扱っていなかった au から iphone4s が販売され,以降 売り上げが安定しており,2011 年 9 月前後でも分けることとする. 図4.6 au の契約数ごとの増減率 au の 2000 年 12 月末から 2008 年 6 月末までの契約数から求めた成長曲線を図 4.7 に示 す.2000 年はフィーチャーフォンが普及しきった年であり,そこからスマートフォンが普 及し始めた2008 年まで劇的な変化は無く,ほぼ実測値と予測値は合致した. 2000 2005 2010 2015 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000 年月日 契約数 実測値 予測値 図4.7 2000 年 12 月末から 2008 年 6 月末までのデータから求めた成長曲線

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11

2008 年 6 月末から 2011 年 9 月末までのデータから求めた成長曲線を図 4.8 に示す.分 けた区間内では実測値と予測値は一致し,iphone が販売されてから実測値が予測値を大き く上回る結果となった.

2011 年 9 月末から 2015 年 6 月末までのデータから求めた成長曲線を図 4.9 に示す.こ の区間はau でも iphone が販売されてからの値であるが,au から iphone が販売されたの ち,docomo でも iphone が販売され,顧客がそちらに流れたため,予測値よりも低い契約 数になったと考えられる. 2008 2010 2012 2014 2016 30000 35000 40000 45000 50000 55000 60000 年月日 契約数 実測値 予測値 2008 2010 2012 2014 2016 30000 35000 40000 45000 50000 55000 60000 年月日 契約数 実測値 予測値 図 4.8 2008 年 6 月末から 2011 年 9 月末までのデータから求めた成長曲線 図 4.9 2011 年 9 月末から 2015 年 6 月末までのデータから求めた成長曲線

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4.4 SoftBank における成長曲線

SoftBank は 2008 年 7 月 11 日に日本で初めて iphone を販売.このデータは初めから iphone を取り扱っていることになる. 2010 年 6 月 iphone4 発売 2011 年 10 月 iphone4s 発売(au からも) 2012 年 9 月 iphone5 発売 スマートフォンの普及率が増え,売り上げの主軸がフィーチャーフォンからスマートフォ ンに移り変わりはじめである,iphone4 が発売された 2010 年 6 月末前後で分ける. 図4.10 SoftBank の契約数ごとの増減率

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13 2008 年 9 月末から 2011 年 6 月末までの累計契約数から求めた成長曲線を図 4.11 に示 す.2011 年 6 月末までは,実測値と予測値がほぼ一致していたが,iphone4が発売した タイミングで実測値が上回り,大きな分岐点となっていることが見て取れる. 2011 年 6 月末から 2014 年 12 月末までの累計契約数から求めた成長曲線を図 4.12 に示 す.予測値よりも実測値が大きくなっており,iphone4s,iphone5 がでたタイミングで, 再度区間分けする必要があったと考えられる. 2008 2010 2012 2014 2016 15000 20000 25000 30000 35000 40000 年月日 契約数 実測値 予測値 図4.11 2008 年 9 月末から 2011 年 6 月末までのデータから求めた成長曲線 2008 2010 2012 2014 2016 15000 20000 25000 30000 35000 40000 年月日 契約数 実測値 予測値 図4.12 2011 年 6 月末から 2014 年 12 月末までのデータから求めた成長曲線

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5 章 ランチェスターモデル

5.1 ランチェスターモデルの概要

前項まではキャリア毎で独立に成長曲線を描いたが,今回からはランチェスターモデ ルを用い,2 つ以上のキャリア間の関係を考慮し,より正確な成長曲線を描いていく. ランチェスターモデルとは,戦場で2 つの戦闘単位が戦うとき,それぞれの戦力と損 耗量が時間の推移にしたがってどのように変化するかを表した数理モデルであり,それ を本研究のキャリアごとの契約数に当てはめることで,他社の影響をどのように受けて いるのかを知ることができる. 理想は,例えば

(docomo の契約数)=(docomo の成長力)+(au の影響力)+(Softbank の影響力) のような,3 つの変数でモデルを作りたいが,今回はデータ数が少なく,変数が多すぎ ると,安定したパラメータ推定ができないので2 社の関係を表すモデルを作る. 基本的な式は,x をあるキャリアの累計契約数,y を他のキャリアの累計契約数と し, { 𝑑𝑥 𝑑𝑡 = 𝑎𝑥 + 𝑏𝑦 𝑑𝑦 𝑑𝑡 = 𝑐𝑥 + 𝑑𝑦 とおく.行列とベクトルの形にまとめると ( 𝑑𝑥 𝑑𝑡 𝑑𝑦 𝑑𝑡 ) = (𝑎 𝑏 𝑐 𝑑) ( 𝑥 𝑦) となる.これを解くためにまず行列A = (𝑎 𝑏 𝑐 𝑑)の固有値λを求める. |𝐴 − 𝜆𝐸| = 𝜆2− (𝑎 + 𝑑)𝜆 + ad − bc = 0 λ =(𝑎 + 𝑑) ± √(𝑎 − 𝑑) 2+ 4𝑏𝑐 2 となり,固有値λが求まる.また,固有ベクトルは, V = ( 1 1 2𝑏{(𝑑 − 𝑎)±√(𝑎 − 𝑑) 2+ 4𝑏𝑐}) となる.そして,連立微分方程式(5.1)を解くと, (𝑥(𝑡) 𝑦(𝑡)) = 𝜔1( 1 1 2𝑏{(𝑑 − 𝑎) + √(𝑎 − 𝑑)2+ 4𝑏𝑐} ) 𝑒𝜆1𝑡+ 𝜔2(1 1 2𝑏{(𝑑 − 𝑎) − √(𝑎 − 𝑑)2+ 4𝑏𝑐} ) 𝑒𝜆2𝑡 が得られる.t=0 の場合を考えると, (5.1)

(18)

15 (𝑥(0) 𝑦(0)) = 𝜔1( 1 1 2𝑏{(𝑑 − 𝑎) + √(𝑎 − 𝑑)2+ 4𝑏𝑐} ) + 𝜔2( 1 1 2𝑏{(𝑑 − 𝑎) − √(𝑎 − 𝑑)2+ 4𝑏𝑐} ) となる.初期条件のx(0)=𝑥0,y(0)=𝑦0からω1, ω2も決まり,これを代入することで,

x(t)=(

𝑥0 2

𝑥0(𝑑−𝑎)−2𝑏𝑦0 2𝑢

)𝑒

𝜆1𝑡

+ (

𝑥0 2

+

𝑥0(𝑑−𝑎)−2𝑏𝑦0 2𝑢

) 𝑒

𝜆2𝑡

y(t)=

1 4𝑏

[𝑥

0

𝑢 −

1 𝑢

{𝑥

0

(𝑑 − 𝑎) − 2𝑏𝑦

0

}(𝑑 − 𝑎) + 2𝑏𝑦

0

] 𝑒

𝜆1𝑡 + 1 4𝑏[−𝑥0𝑢 − 1 𝑢{𝑥0(𝑑 − 𝑎) − 2𝑏𝑦0}(𝑑 − 𝑎) + 2𝑏𝑦0] 𝑒 𝜆2𝑡 が得られる.ここにu=√((𝑎 − 𝑑)2+ 4𝑏𝑐とする. さらに微分方程式(5.1)に切片を加えた ( 𝑑𝑥 𝑑𝑡 𝑑𝑦 𝑑𝑡 ) = A (𝑥𝑦) + (𝑔) も容易に解くことができる. ( 𝑑𝑥 𝑑𝑡 𝑑𝑦 𝑑𝑡 ) = A((𝑥𝑦) + A−1(𝑔)) = A (𝑥 + 𝑔′ 𝑦 + ℎ′) と書ける.ここに (𝑔′ ℎ′) = 𝐴 −1(𝑔 ℎ) とおいた. {𝑥 ′= 𝑥 + 𝑔′ 𝑦′= 𝑦 + ℎ′ とおいて,これを式(5.3)と初期条件 x(0)=𝑥0,y(0)=𝑦0 に代入すれば, ( 𝑑𝑥′ 𝑑𝑡 𝑑𝑦′ 𝑑𝑡 ) = A (𝑥′ 𝑦′) , ( 𝑥′(0) 𝑦′(0)) = ( 𝑥0+ 𝑔′ 𝑦0+ ℎ′ ) が得られ,切片がない線形微分方程式に帰着される. この解 (𝑥′(𝑡) 𝑦′(𝑡)) が求まると, (𝑥(𝑡) 𝑦(𝑡)) = ( 𝑥′(𝑡) − 𝑔′ 𝑦′(𝑡) − ℎ′) が式(5.2)の解となる.以下で,計算を行う際には微分を差分で置きかえて, (5.2) (5.3)

(19)

16 𝑑𝑥𝑖 𝑑𝑡 = 𝑥𝑖− 𝑥𝑖−1, 𝑑𝑦𝑖 𝑑𝑡 = 𝑦𝑖− 𝑦𝑖−1 とした.a,b,c,d,g,h は重回帰分析から推定できる.

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5.2 softbank と docomo の力関係

softbank と docomo,両方の契約数が互いにどう影響し合うか考慮した softbank の契 約数の推移を図5.1 に,docomo を図 5.2 に示す.式(5.2)から { 𝑑𝑥 𝑑𝑡 = 𝑎𝑥 + 𝑏𝑦 + 𝑔 𝑑𝑦 𝑑𝑡 = 𝑐𝑥 + 𝑑𝑦 + ℎ

と変形でき,今回の場合はx が softbank の累計契約数,y が docomo の累計契約数であ る.softbank の増加数,dx dt において,a は自分自身の影響力を表し,b は docomo の影 響力を表す.一方で,docomo の増加数,dy dt において,c は softbank の影響力を表し, d は自分自身の影響力を表す.以上のパラメータの関係は後項でも用いる.前項を用い て計算して求まるパラメータa,b,c,d,g,h を以下に示す. (𝑎 𝑏 𝑐 𝑑) = ( −0.15965 0.33216 0.05763 −0.14929) , ( 𝑔 ℎ) = ( −14775.8915 8120.888 ) 上式と下図より,softbank は docomo の売上が伸びるとともに自身の売上も伸ばしてい る一方で,docomo は softbank が売上を伸しても自身の売上をあまり伸ばせず,契約数 は下がる結果となった. 2011 2012 2013 2014 2015 24000 28000 32000 36000 年月日 契約数 [so ft b a n k] 実測値 予測値 2011 2012 2013 2014 2015 58000 60000 62000 64000 66000 年月日 契約数 [d o co m o ] 実測値 予測値 図5.1 softbank の契約数の推移 図5.2 docomo の契約数の推移

(21)

18

今回,計算するsoftbank と docomo のデータが揃っている区間で結果を出し

た.softbank から iphone が発売され始めた頃からのデータとなるので,前半の区間では, docomo は iphone を販売している softbank にシェアを奪われる形となっており,上記の ような結果になったと考えられる.正確な推移を描くためには成長曲線と同じように,区 間に分けて計算する必要がある.docomo が iphone を発売した 2013 年 6 月末からデータ で計算することで正確なデータが求まると考えられる. 以下に2013 年 6 月末以降の softbank と docomo,両社の契約数が互いにどう影響し合 うか考慮したパラメータを以下に,softbank の契約数の推移を図 5.3 に,docomo を図 5.4 に示す. (𝑎 𝑏 𝑐 𝑑) = ( 0.07303 −0.16791 0.06826 0.16344 ) , ( g ℎ) = ( 8714.18066 −12201.88117) 図5.4 を見ると,実測値が予測値を上回っている.softbank は 3 年以上前に iphone を 発売しており,docomo は iphone を発売したばかりなので,多くのシェアを奪った.その 結果実測値が予測値よりも大きく伸びたと考えられる. 2013.5 2014.0 2014.5 2015.0 62000 63000 64000 65000 66000 年月日 契約数 [d o co m o ] 実測値 予測値 2013.5 2014.0 2014.5 2015.0 34000 35000 36000 37000 年月日 契約数 [so ft b a n k] 実測値 予測値 図 5.3 区 間 分 け し た softbank の契約数の推移 図 5.4 区 間 分 け し た docomo の契約数の推移

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19 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 20000 25000 30000 35000 年月日 契約数 [so ft b a n k] 実測値 予測値 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 30000 32000 34000 36000 38000 40000 42000 年月日 契約数 [a u ] 実測値 予測値

5.3 softbank と au の力関係

softbank と au のパラメータを以下に示す. (𝑎 𝑏 𝑐 𝑑) = ( 0.20645 −0.29738 0.03484 0.00277 ) , ( 𝑔 ℎ) = ( 5390.64350 −593.72167)

softbank と au,両方の契約数がどう影響し合うか考慮した softbank の契約数の推移 を図5.5 に,au を図 5.6 に示す.どちらも実測値と予測値が一致する結果となった.ど ちらも相手の影響をほとんど受けずに自らの売上を伸ばしていると考えられる.また, 図3.2 を見ると,2 社とも docomo とは違い,マイナスの売れ行きがプラスになるほど iphone の発売が劇的な変化ではないため,予測値に大きなずれが生じなかった. 図5.5 softbank の契約数の推移 図5.6 au の契約数の推移

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5.4 docomo と au の力関係

docomo と au のパラメータを以下に示す. (𝑎 𝑏 𝑐 𝑑) = ( 0.23867 −0.14011 0.05878 −0.00607) , ( 𝑔 ℎ) = ( −8856.00910 −2785.10541)

docomo と au,両方の契約数がどう影響し合うか考慮した docomo の契約数の推移を図 5.7 に,au を図 5.8 に示す.docomo は au が売上を伸ばすとマイナスの影響を受ける.つ まりシェアを奪われる結果となった.au は自身の影響があまりプラスに働かず,docomo の影響もややマイナスに働くため,予測値は実測値を下回った. 2011 2012 2013 2014 2015 58000 62000 66000 年月日 契約数 [d o co m o ] 実測値 予測値 2011 2012 2013 2014 2015 32000 36000 40000 44000 年月日 契約数 [a u ] 実測値予測値 図5.7 docomo の契約数の推移 図5.8 au の契約数の推移

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21 2013.5 2014.0 2014.5 2015.0 2015.5 62000 63000 64000 65000 66000 67000 年月日 契約数 [d o co m o ] 実測値 予測値

図5.7 では,特に docomo の様子が表現できなかったので,softbank と docomo の関係 の推移と同じように,2013 年 6 月末に iphone が発売され,それ以降売り上げを伸ばし たことを考慮して,時期を2013 年以前として,パラメータを設定し直した.その結果の docomo と au のパラメータを以下に示す. (𝑎 𝑏 𝑐 𝑑) = ( −0.22941 0.43194 0.04554 −0.01850) , ( 𝑔 ℎ) = ( −2415.76560 −1446.69725)

docomo と au,両方の契約数がどう影響し合うか考慮した docomo の契約数の推移を図 5.9 に,au を図 5.10 に示す.au は 2 年ほど前に iphone を発売したが,docomo から iphone が発売された際に au から乗り換えた人があまりおらず,実測値と予測値はより一 致している.なので,docomo がとった戦略は正しかったと言える。 2013.5 2014.0 2014.5 2015.0 2015.5 39000 40000 41000 42000 43000 44000 年月日 契約数 [a u ] 実測値 予測値 図5.9 区間分けした docomo の契約数の推移 図5.10 区間分けした au の 契約数の推移

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6 章 おわりに

6.1 まとめ

成長曲線はau の 2008 年以前,フィーチャーフォンの時代と比べて,au や他社の 2008 年以降の実測値と予測値のずれを見ると,技術革新が速く,今,携帯端末市場がいかに最 盛期なのかが分かる. ランチェスターモデルでは,docomo は他社の影響を大きくマイナスに受ける傾向があ り,softbank は他社の影響をあまり受けず売り上げを伸ばしており,au は他社の影響を ややマイナスに受ける傾向がある.今回,計算する2 社のデータが揃っている区間で結果 を出したので,iphone が販売され始めた頃からの区間となる.docomo は iphone を販売 したsoftbank,ついで au にシェアを奪われる形となっているので,区間を分けずに見る と,推移は落ち込む.ランチェスターモデルでも成長曲線と同じように区間分けして考え ると,実測値に近しい予測値が得られた.今回,区間分けをiphone の発売日としたが, 実測値の変化点や予測値の整合性を見るに,それは概ね正しかったと言える.

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6.2 今後の課題

本研究ではiphone の発売日を区切りとしたが,他により良い区切りは有るのか.三社 ともiphone を販売すると,iphone を販売している有利性が無くなるので,docomo が iphone を販売してからしばらく経ったのち,また違った区切りが見えてくる可能性があ る.

今後,SIM フリー化や,国からの値下げ指示により今後変わっていく携帯端末市場の変 化を追いたい.

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謝辞

本研究を進めるにあたり,中央大学理工学部情報工学科の田口東教授に多大なるご指 導,ご助言をいただきました.本研究の成果をこのような論文の形にまとめることができ たのも,田口東教授の適切なご指導によるものです.心から深く感謝いたします.また, 研究を進めていく上でさまざまな場面で貴重なご助言とご協力を頂いた,中央大学理工学 部情報工学科の山形浩一助教にも大変お世話になりました.心から感謝いたします.

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参考文献

[1] NTT ホームページ, http://www.ntt.co.jp/ [2] KDDI ホームページ, http://www.kddi.com/ [3] SoftBank ホームページ, http://www.softbank.jp/mobile/ [4] 電子情報技術産業協会, “移動電話に関する市場調査報告書”, 2015. [5] 佐藤総夫, “自然の数理と社会の数理 I―微分方程式で解析する”, 日本評論社, 1987.

図 4.3  docomo の契約数ごとの増減率

参照

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