• 検索結果がありません。

高校野球選手における肩痛発症にかかわる因子の縦断的検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "高校野球選手における肩痛発症にかかわる因子の縦断的検討"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)理学療法学 第 47 巻第 4 号 331 ∼ 336 頁(2020 肩関節機能と守備位置による肩痛発症への影響 年). 331. 研究論文(原著). 高校野球選手における肩痛発症にかかわる因子の縦断的検討* 十文字雄一 1)2)# 対 馬 栄 輝 2) 小 林 秀 男 3) 津 田 謙 矢 3). 要旨 【目的】投球によって肩の疼痛(以下,肩痛)を有する野球選手は肩関節可動域や肩関節外旋筋力が低下し ているが,これらは野球選手における一般的な特徴としても知られており,肩痛の発生に対しての因果関係 は明らかになっていない。本研究の目的は,これらの因子が肩痛の発生に影響するかを前向き研究により検 討することである。 【方法】高校野球部員を対象とし,オフシーズンに肩関節機能評価とポジション等の聴 取を行い,シーズンインから 2 ヵ月間を観察期間とした。その後,肩痛発生の有無に対して各評価項目が影 響するかを解析した。 【結果】肩痛を発症した者は 84 名中 24 名で,多重ロジスティック回帰分析の結果,肩 回旋筋力比,ポジションが有意な変数として抽出された。 【結論】肩痛発生に肩回旋筋力比の低下が有意に 影響した。投球障害の予防には,ストレッチの他,回旋筋力のバランスにも考慮する必要があると考える。 キーワード 野球,投球障害,肩痛,肩関節機能,肩回旋筋力. 筋力の増加,僧帽筋下部筋力の低下も指摘されてい. はじめに. る.  投球障害肩とは,投球動作の反復によって引き起こさ 1)2). 9)10). 。したがって,これらの肩関節機能の問題が野. 球選手全般の問題であるのか,あるいは肩痛を発症する. 。また,高校野球選手. 選手特有の問題なのかは不明である。硬式野球部投手に. を対象とした研究では,器質的な異常のあり,なしにか. 対して,投球時肩痛と肩関節機能の関係を経時的に調査. かわらず,42.8%の者がシーズン中に肩の痛み(以下,. した報告があるものの. れる肩関節疾患の総称である. 肩痛)を経験している. 3). と報告されている。. 4). の Horizonal Flexion Test(以下,HFT). と Combined Abduction Test(以下,CAT)が有意に 低下しているほか. 5)6). ,投球側の肩関節外旋(以下,外. 旋)筋力が低下している者が多いと報告されている. ,多くの研究は,横断研究. もしくは後ろ向き研究であり.  投球障害肩によって肩痛がある者の肩関節機能の特徴 は,原テスト. 10)11). 7) 8). 。. 5‒8). ,肩痛を主とした投球. 障害肩発生の原因を具体的に追及した縦断研究が少ない のも理由である. 10)11). 。よって肩痛発症の要因を縦断的. に検討し,またこれらの肩関節機能が原因となる可能性 が高いと仮定できるならば,肩痛発症に至るカットオフ 値がわかれば予防的観点からも有益である。. 一方で,肩痛の有無にかかわらず,野球選手における肩.  そこで本研究の目的は,高校野球選手を対象として,. 関節機能の特徴として,投球側の HFT,CAT は非投球. HFT,CAT,外旋筋力や僧帽筋下部筋力といった肩関. 側と比較して有意に低下しており,投球側肩関節ゼロポ. 節機能が,その後の投球障害肩の発生に関係するかを縦. ジションで外旋筋力の低下,肩関節内旋(以下,内旋). 断的に検討し,有意な変数に関しては感度特異度を考慮 したうえで有益な判別または予測能力を示すかについて. *. Longitudinal Examination of Factors Related to Shoulder Pain in High School Baseball Players 1)須賀川病院リハビリテーション室 (〒 962‒0022 福島県須賀川市田町 17) Yuichi Jyumonji, PT: Sukagawa Hospital Rehabilitation Room 2)弘前大学大学院保健学研究科 Yuichi Jyumonji, PT, Eiki Tsushima, PT, PhD: Hirosaki University Graduate School of Health Sciences 3)須賀川病院整形外科 Hideo Kobayashi, MD, PhD, Kenya Tsuda, MD: Sukagawa Hospital Orthopedic Surgery # E-mail: [email protected] (受付日 2019 年 8 月 26 日/受理日 2020 年 2 月 4 日) [J-STAGE での早期公開日 2020 年 5 月 28 日]. も検討した。 対象と方法  単一高等学校(以下,高校)硬式野球部員を対象とし た。本高校は,春夏併せて 12 回の全国大会出場を果た している高校である。その野球部員 96 名中,オフシー ズン(12 月∼ 2 月)に投球時の肩痛を有していたもの, 手術歴があるもの,肩痛観察期間(3 月∼ 4 月)に死球.

(2) 332. 理学療法学 第 47 巻第 4 号. や接触プレーにより外傷を負い,投球障害を起こしたも. 均値を算出し,体重比を算出した。腱板機能の機能とし. のを除外した,84 名を対象に投球側,既往歴,競技の. て,上腕骨頭と関節窩の間に動的安定性をもたらすが,. 守備位置を聴取した。. 野球選手の特徴として投球側の肩内旋筋力が,非投球側.  全選手の練習頻度は週 6 日,高校野球部専用グラウン. と比較し有意に増加すると報告されており,これによる. ドで 1 日平均約 5 時間程度であり,オフシーズンはボー. 外旋内旋筋力比の低下は,肩関節バランスが低下し,投球. ルを投げる練習はほとんど行っていない。シーズン中(3. 障害肩発生要因のひとつになると考えられている. 月∼)の練習内容はおもに,ランニング系,守備練習,. そのため本研究においても,投球側の外旋筋力 / 内旋筋. 打撃練習であり,投球練習は投球過多にならないよう 1. 力比(以下,E/I 比)を算出した。. 日 100 球以内,2 日に 1 回(週 3 回)以内の頻度でポジ. 3)僧帽筋下部筋力の測定. ションにかかわらず各自で行っている。.  被験者を腹臥位とさせ,肩関節 120°外転挙上,肘関.  なお,本研究は弘前大学大学院保健学研究科の倫理審. 節伸展位をとらせて,徒手筋力計を被験者の上腕遠位部. 査委員会の承認を得て実施した(整理番号:2018-048)。. に検者が徒手にて固定し,ブレイクテストで最大等尺性. 測定に先立ち,対象者とその保護者,また対象高校野球. 筋力を測定した。測定は 2 回実施し,平均値を算出し,. 部の指導者に対して,研究の目的,概要,個人情報の保. 体重比を算出した。. 12)13). 。. 護方法に関する内容を十分に説明し,また研究結果がす べて統計的に処理され,目的以外の使用はしないことを. 2.肩痛の評価. 説明したうえで同意を得た。.  疼痛発生の観察期間中は,大会付近になると試合への 出場機会の減少を恐れ報告され難くなることや,大会出. 1.肩関節機能の評価. 場選手以外は練習補助や応援練習となるため,練習量に.  肩関節機能は投球のあまり行われないオフシーズンの. 差がでてしまいかかわることが難しくなることなどを考. 1,2 月に実施した。以下の項目の測定は,対象高校野. 慮し,観察期間をシーズン中の 3 ∼ 4 月までの 2 ヵ月間. 球部の指導者の同席のもと,すべて筆頭著者 1 名で担当. とし,連日追跡調査した。対象者が肩痛を感じた場合は. した。. その都度,筆者もしくは指導者に報告するよう指示し. 1)HFT,CAT の測定. た。肩痛の訴えた後少なくとも,1 週間以上の投球がで.  青色の粘着式カラーテープを使用して両肩峰,上腕骨. きない程の投球時の肩痛が続いた場合や,本人の希望に. 内側上顆,上腕骨外側上顆部にマークした。HFT と. より病院を受診し,投球障害肩と診断を受けた者のいず. CAT の測定方法は原テスト. 4). の方法に準じた。被験者. れかの条件にあてはまった者を肩痛ありと判断した。. を ベ ッ ド 上 背 臥 位 と さ せ,HFT は 水 平 面( 頭 側 ), CAT は前額面から,それぞれの面に垂直に固定したデ. 3.統計的解析. ジタルカメラ(JVC ケンウッド社製,GZ-E565 229 万.  観察期間終了後,肩痛あり群と肩痛なし群に分けて,. 画素)撮影した画像をもとに測定した。撮影像はパーソ. 基本情報と各関節機能の項目について差があるかどうか. ナルコンピュータに取り込み,画像編集ソフトウェアの. を比較した。差の検定として,Shapiro-Wilk 検定の結果,. Image J Ver 1.51(NIH,freeware)によって両肩峰と. 両群とも帰無仮説の棄却が保留されたときは 2 標本 t 検. 上腕の角度を HFT,肩峰からの垂線と上腕の角度を. 定(もしくは等分散の検定結果によっては Welch の補. CAT として測定した. 6)7). 。その後 CAT と HFT の非投. 正を行う) ,少なくとも片方の群が p<0.05 で正規分布に. 球側と投球側の差を算出した。. したがわないと判断されたときは Mann-Whitney 検定を. 2)肩関節回旋筋力の測定. 適応した。.   徒 手 筋 力 計( ミナ ト 医 科 学 株 式 会 社 製, モ ー ビイ MM-100)を用いて肩関節回旋筋力を測定した. 12). 。外旋.  また肩痛の有無に影響する因子を多変量的に探るため に,肩痛あり群と肩痛なし群を従属変数,HFT,CAT. 筋力は,被験者をベッド上腹臥位とし,肩関節 90° 外転,. の投球側・非投球側差,E/I 比,僧帽筋下部筋力,守備. 肘関節 90°屈曲位をとらせ,徒手筋力計を前腕遠位背面. 位置を独立変数としたステップワイズ法(AIC 基準に. に検者の徒手にて固定し,ブレイクテストにより最大等. よる尤度比検定)による多重ロジスティック回帰分析を. 尺性筋力を測定した。内旋筋力は,被験者をベッド上仰. 行った。以上の統計解析には R 3.5.1(CRAN,freeware). 臥位とし,肩関節 90° 外転,肘関節 90°屈曲位をとらせ,. を使用した。. 徒手筋力計を前腕遠位腹面に徒手にて固定し,ブレイク テストで同じく最大等尺性筋力を測定した。測定時に. 結   果. は,観察上の代償動作が起こらないように十分に注意し. 1.基本統計値. て行った。外旋・内旋筋力は,それぞれ 2 回測定して平.  疼痛観察期間である 3 月 1 日∼ 4 月 30 日の 2 ヵ月間.

(3) 肩関節機能と守備位置による肩痛発症への影響. 333. 表 1 基本情報 投手. 捕手. 身長. 体重. BMI. 疼痛あり. 11. 6. 内野手 外野手 6. 1. 172.67 ± 6.92 cm. 76.69 ± 7.83 kg. 25.76 ± 2.57. 疼痛なし. 17. 2. 26. 15. 171.48 ± 5.42 cm. 73.30 ± 9.46 kg. 24.86 ± 2.28. 疼痛あり群は疼痛なし群と比較し身長,体重,BMI ともに大きく,ポジションでは捕手のみが肩痛を発症 する選手が多かった.. 表 2 肩関節機能 HFT (投球−非投). CAT (投球−非投). 外旋筋力体重比. 内旋筋力体重比. E/I 比. 僧帽筋下部筋力 体重比. 疼痛あり. 10.39 ± 9.40°. 14.89 ± 10.41°. 13.06 ± 3.12%. 18.65 ± 3.26%. 70.86 ± 16.28%. 18.06 ± 3.13%. 疼痛なし. 9.80 ± 5.23°. 9.82 ± 6.70°. 15.82 ± 2.26%. 18.17 ± 3.12%. 88.62 ± 14.25%. 19.30 ± 4.78%. n.s. p<0.05. n.s. p<0.05. p<0.05. n.s. t検定の結果,外旋筋力体重比と E/I 比と僧帽筋下部筋力体重比は疼痛あり群で有意に小さかった.. 図 1 外旋筋力体重比と肩痛の関係 t検定の結果,肩痛を発症した選手は外旋筋力体重比が有 意に低かった.. 図 2 内旋筋力体重比と肩痛の関係 t検定の結果,肩痛を発症した選手と内旋筋力体重比に有 意な値は得られなかった.. で肩痛を発症したものは,84 名中 24 名だった。そのう ち医療機関にて診断を受けたものは 20 名で,内訳はイ ンピンジメント症候群 6 名,superior labrum anterior and posterior(以下,SLAP)損傷 3 名,インピンジメ ン ト 症 候 群 + SLAP 損 傷 2 名, 胸 郭 出 口 症 候 群 3 名, ベネット病変 1 名,棘上筋腱・上腕二頭筋腱炎 5 名で あった。  その他の基本情報を表 1 に示す。投球側の肩痛あり群 では肩痛なし群と比較し BMI に有意差は認められな. 図 3 僧帽筋下部筋力体重比と肩痛の関係 t検定の結果,肩痛を発症した選手は僧帽筋下部筋力体重 比が有意に低かった.. かった。守備位置別では,投手で 28 名中 11 名,捕手で 8 名中 6 名,内野手で 32 名中 6 名,外野手では 16 名中 1 名が肩痛を発症した。. 筋力体重比は,肩痛なし群と比較し,肩痛あり群で有意 に低い値を示したが(p < 0.05:図 1,3),内旋筋力体. 2.各肩関節機能と肩痛有無の差について(表 2). 重比では有意な値は得られなかった(図 2)。. 1)HFT と CAT  t検定の結果 HFT,CAT ともに,肩痛あり群と肩痛. 3.投球障害肩に影響する要因について. なし群の間に,有意な値は認められなかった。.  多重ロジスティック回帰分析の結果,E/I 比,守備位. 2)肩周囲筋力. 2 置が有意な変数として選択された(モデル χ 検定 p <.  t検定の結果,投球側の外旋筋力体重比と僧帽筋下部. 0.05:表 3)。肩回旋筋力は,E/I 比が低いほど肩痛発症.

(4) 334. 理学療法学 第 47 巻第 4 号. 表 3 疼痛の有無に関連する因子(多重ロジスティック回帰分析の結果) オッズ比. 95%信頼区間. p. 下限値. 上限値. E/I 比. 0.90. 0.85. 0.95. <0.01. 内野手. 0.07. 0.01. 0.50. <0.01. 外野手. 0.06. 0.01. 0.65. 0.02. 捕手. 2.10. 0.26. 16.8. 0.48. モデル χ 2 検定 p <0.01 ロジスティック回帰分析の結果 E/I 比とポジションが有意な値として選択さ れた.. リスクが高くなる結果となった(オッズ比= 0.90) 。守. しない者においても HFT,CAT が低下するため,有意. 備位置では,捕手,内野手,外野手が有意な変数として. な影響が認められなかったと考える。. 選択された。捕手(オッズ比= 2.10)は肩痛発症リスク が有意に高くなり,内野手(オッズ比= 0.07) ,外野手 (オッズ比= 0.06)は肩痛発症リスクが有意に低くなる. 2.肩回旋筋力  E/I 比と肩痛の間に有意な関係が認められた(表 2) 。 Kaizu ら. 結果となった。. 17). は,投球時肩関節には 31.2 ± 9.29 Nm の外. 旋トルクと上腕骨骨頭を前方へと移動させる力がかかる 4.ROC 曲線による判別分析能の観察. と報告している。また,投球により肩内旋筋力が向上し.  以上の結果が肩痛発生の有無に対して有益な判別が可. 肩外旋筋力が低下することで上腕骨頭と臼蓋のバランス. 能かどうかを知るために,E/I 比で判別する場合と,多. が低下し,投球障害肩発症の一因となると考えられてい. 重ロジスティック回帰分析の結果(E/I 比とポジション. る. の混合)から得られるスコア(0 ∼ 1 の範囲)による判. 外旋 / 内旋筋力比が 0.8 未満もしくは 1.3 以上の選手に. 別の場合で ROC 曲線によりカットオフ値を求めた。. おいて投球障害肩を有しているものが多いとしている.  E/I 比によるカットオフ値は 0.78 としたときに感度. しかし本研究の結果では,肩痛発症群に,外旋筋力体重. 83.3%(95%信頼区間 0.684 ∼ 0.982) ,特異度 83.3%. 比の有意な低下を認めたものの,肩痛発症の有無で内旋. (95%信頼区間 0.739 ∼ 0.928)となった。また,E/I. 筋力体重比に有意な差は認められなかった(図 2)。投. 比と守備位置によるスコアによるカットオフ値は 0.54. 球動作時の加速期において,肩後方構成体には大きな負. としたときに感度 83.3%(95%信頼区間 0.684 ∼ 0.982) ,. 荷がかかるため外旋筋力が低下すると考えられている. 特異度 95.0%(95%信頼区間 0.895 ∼ 1.000)となった。. したがって外旋筋力の低下(図 1)により E/I 比が低下. E/I 比とスコアとの AUC 面積の差について,DeLong. し,投球時に骨頭を関節窩に対し求心位に保てなくなる. の検定による結果では p=0.3197 で有意差は認められな. ことで,肩痛発症の要因のひとつとなったと考える。. 13)18‒20). 。E/I 比と肩痛の関係を調査した研究では, 13). 。. 21). 。. かったが,95%信頼区間を比較するとスコアを使用した 3.僧帽筋下部筋力. 方が感度は変わらず特異度は高い結果となった。.  投球の繰り返しにより僧帽筋下部の筋力は低下する. 考   察. といわれ,障害発生率が高くなると報告されている. 9). 22). 。. 1.関節可動域. しかし今回の研究では,肩痛あり群では肩痛なし群と比.  HFT,CAT は肩後方タイトネスの評価として使用さ. 較し有意に低値であったが(図 3),多重ロジスティッ. 10)11)14). 。肩後方タイトネスは,肩関節外転内. ク回帰分析による肩痛への有意な影響は認められなかっ. 旋角度(以下,AIR 角)を減少させると報告されてい. た。これは,僧帽筋下部は加速期からボールリリース期. れている る. 15)16). 。AIR 角の減少は,早期コッキング期の肩関節. が内旋しながら外転挙上する運動を制限するため,トッ 15). 以降に活動するため. 23). ,投球数や球速の影響を受ける. ことが考えられる。そのため,肩痛あり群と肩痛なし群. とも. で行った t 検定では,肩痛あり群で有意に低い値を示し. いわれている。しかし,今回の結果では,HFT,CAT と. たものの,ポジションを考慮した多重ロジスティック回. もに肩痛発生に有意な影響が認められなかった。HFT,. 帰分析では,肩痛への影響がなかったと考える。よって. プ形成の遅れや,いわゆる「肘下がり」の原因. 9). CAT は投球を行うことで低下すると報告されており ,. 僧帽筋下部筋力の投球障害肩への影響を確認する際は,. 本研究においても HFT,CAT ともに,肩痛発症との間. 守備位置やパフォーマンス能力を加味する必要がある。. に有意な差を認めなかった。以上のように,肩痛を発症.

(5) 肩関節機能と守備位置による肩痛発症への影響. 4.守備位置  守備位置では,捕手と内野手,外野手が有意な値とし て選択され,捕手の肩痛発症リスクが高く,内野手,外 野手の肩痛発症リスクが低くなった。投球数が肩痛発症 に影響することはすでに報告されており. 24). ,各世代に. おいて投手の投球数には配慮されている。対象高校にお いても投球練習を含め投球数には配慮されている。また 本研究では,シーズンの序盤に肩痛発生の有無を調査し ていることから,試合では多くの投手に登板機会が与え られることで,1 人あたりの投球数が少なくなるため, 投手が有意な値として選択されなかったと考える。一方 捕手は,投手の投げた球を投げ返すため投手とほぼ同じ 投球数になることや,投手と比較し交代場面が少ないた め,投球数が多くなり,捕手の肩痛発症のリスクが高く なった可能性がある。ただし,選手一人ひとりの交代場 面や投球数・投球距離などを詳細には記載していないた め,推測の域は脱せないのが限界である。 本研究の限界と課題 本研究は単独チーム内の検討であるということ,また, オフシーズンに身体機能を測定し,シーズン中の初期に 肩痛発症の調査を行っているため,観察期間が短いこと や,肩痛を発症した日の肩関節機能を反映していない。 また,通常の練習環境においては,試合への出場機会等 の関係により,肩痛の発症を指導者や保護者へ報告でき ない選手が少なからず存在していると予測される。しか し本研究では,肩痛の有無を常に管理していたために, 通常であれば肩痛の発症を報告しないであろう選手も検 出された可能性がある。他にも,投球動作や心理的状況 を反映していないことが本研究の限界である。今後は短 時間で測定可能な測定方法の考案や,投球動作や心理的 状況も考慮していく必要がある。 結   論  今回我々は,投球時肩発症と肩関節機能の関係を調査 した。肩痛発症の有無を従属変数,肩関節機能と BMI, 守備位置を独立変数としてロジスティック回帰分析を 行った結果,E/I 比の低下と捕手において投球障害肩発 症リスクが高くなった。このことから,関節可動域,投 球数や投球姿勢のほか,肩外旋筋力低下による E/I 比 の低下も投球障害肩発症の一因と考えられ,投球障害肩 予防には,ストレッチや投球動作の指導の他に,E/I 比 の定期的な測定や,外旋筋力低下の予防,強化の必要が ある。また,投球練習や試合中の投手の投球数に併せて, 捕手の投球数にも着目する必要がある。 利益相反  開示すべき利益相反はない。. 335. 文  献 1)Snyder SJ, Karzel RP, et al.: SLAP lesions of the shoulder. Arthroscopy. 1990; 6(4): 274‒279. 2)Michener LA, McClure PW: Anatomical and biomechanical mechanisms of subacromialimpingement syndrome. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2003; 18(5): 369‒379. 3)十文字雄一,大歳憲一,他:高校野球選手の肩,肘,腰部 障害の有病割合と特徴─福島県での検討─.日本臨床ス ポーツ医学会誌.2017; 25(3): 400‒407. 4)原 正文:復帰に向けて何を目安にどう選手に指導したら よいか─肩の投球障害を中心に─.関節外科.2003; 22(9): 1189‒1194. 5)前田周吾,津田英一,他:高校野球選手の投球時肩痛発生 に関連する身体所見.整形・災害外科.2014; 13: 1767‒1771. 6)鶴田 崇,渡辺裕介,他:CAT と HFT の客観的基準値 を求めて─投球障害肩に着目して─.九州・山口スポーツ 医・科学研究会誌.2016; 23: 17‒21. 7)福西邦素,三幡輝久,他:原テストは投球障害肩の評価に 有用である.肩関節.2017; 41(3): 804‒807. 8)川井謙太郎,船崎裕記,他:投球障害肩症例における投球 側と非投球側の肩関節機能の違い.理学療法科学.2017; 32(1): 39‒43. 9)田中 稔,佐藤克巳,他 : プロ野球投手の肩甲帯機能と障 害発生因子─僧帽筋下部の重要性.肩関節.2012; 36(3): 1023‒1027. 10)鳥塚之嘉,中川滋人,他:甲子園大会出場投手の肩関節外 転筋力,握力,上肢関節可動域の測定結果とその経時的変 化.臨床スポーツ医学.1998; 15: 233‒240. 11)宮下浩二,小山太郎,他:野球の現場における経時的な関 節機能評価からみた大学野球投手の肩関節筋力と投球障害 肩発生の関係.体力科学.2015; 64(4): 453‒460. 12)鳥居 俊:簡易筋力測定器を用いた肩関節周囲筋力・腱板 機能の定量的評価.日本整形外科スポーツ医学会誌.2001; 21: 103‒107. 13)林田賢治,中川滋人,他 : 高校野球選手の肩内外旋筋力と 投球障害の関係.肩関節.2005; 29(3): 651‒654. 14)井上 薫,三幡輝久,他:小学校・中学校・高校野球選手 における肩後方タイトネス.日本整形外科スポーツ医学会 誌.2015; 35(1): 38‒41. 15)大歳憲一,猪狩貴弘,他 : 肩後方タイトネスがテイクバッ ク期の肩外転角度に与える影響.日本臨床スポーツ医学会 誌.2018; 26(3): 466‒471. 16)谷口 丈,小野竜也,他 : 投球障害肘における肘下がりの 原因.東北理学療法学.2014; 26: 105‒110. 17)Kaizu Y, Watanabe H, et al.: Correlation of upper limb joint load with simultaneous throwing mechaninics including acceleration parameters inamateur baseball pitchers. J Phy Ther Sci. 2018; 30(2): 223‒230. 18)柳川竜一,成田崇矢,他 : 野球部員における肩甲骨位置, および肩甲骨位置と肩内外旋筋力との関係.理学療法学. 2012; 27(4); 363‒366. 19)Escamilla RF, Yamashiro K, et al.: Shoulder muscle activity and function in common shoulder rehabilitation exercise. Sports Med. 2009; 39: 663‒685. 20)Ellenbecker TS, Angero J, et al.: Concentric isokinetic shoulder internal and external rotation strength in professional baseball pitchers. J Orthop Sports Phys Ther. 1997; 25: 323‒328. 21)事柴壮武,原 正文,他:投球障害における投球動作時の 棘下筋の筋活動について.九州・山口スポーツ医・科学研 究会誌.2017; 29: 68‒70. 22)田中 稔,佐藤克巳,他:スポーツ障害に対する保存的治 療のエビデンス 投球障害肩の診断と保存療法の進め方..

(6) 336. 理学療法学 第 47 巻第 4 号. 日本整形外科学会誌.2018; 92(7): 441‒448. 23)大江将志,原 正文,他:投球障害における投球動作時の 肩甲骨周囲筋の筋活動について.九州・山口スポーツ医・ 科学研究会誌.2018; 30: 77‒81.. 24)宇野智洋,原田幹生,他:高校野球選手における投球数と 投球時痛との関係.日本整形外科スポーツ医学会誌.2017; 37(1): 89‒93.. 〈Abstract〉. Longitudinal Examination of Factors Related to Shoulder Pain in High School Baseball Players. Yuichi JYUMONJI, PT Sukagawa Hospital Rehabilitation Room Yuichi JYUMONJI, PT, Eiki TSUSHIMA, PT, PhD Hirosaki University Graduate School of Health Sciences Hideo KOBAYASHI, MD, PhD, Kenya TSUDA, MD Sukagawa Hospital Orthopedic Surgery. Background: Baseball players who have shoulder pain due to throwing have reduced shoulder joint range of motion and shoulder external rotation muscle strength, which are also recognized as general features of baseball players. The purpose of this study was to examine whether these factors affect the development of shoulder pain through prospective studies. Methods: In members of high school baseball teams, shoulder joint function was evaluated by field position. during the off-season and observations were collected over a 2-month period during the season. Subsequently, evaluation items that affected the occurrence of shoulder pain were analyzed. Result: Twenty-four out of the 84 participants developed shoulder pain, and multiple logistic regression analysis extracted the shoulder rotator strength ratio and field position as significant variables. Consideration: A decrease in the shoulder rotator strength ratio significantly affected the occurrence of shoulder pain in all field positions. Although stretching has been reported to be important for preventing throwing disorders, attention must also be paid to muscle strengthening exercises that take into account the balance of rotator muscle strength. Key Words: Baseball, Throwing obstacles, Shoulder pain, Shoulder joint function, Shoulder rotator muscle strength.

(7)

参照

関連したドキュメント

 分析には大阪府高槻市安満遺跡(弥生中期) (図4) 、 福井県敦賀市吉河遺跡(弥生中期) (図5) 、石川県金

[r]

一方で、平成 24 年(2014)年 11

5月1日 高知県宿毛市宿毛港湾 6月 10 日 徳島県小松島市横須・金磯海岸. 6月 12 日 岩手県洋野町種市漁港北側海岸 7月

※1 13市町村とは、飯舘村,いわき市,大熊町,葛尾村, 川内村,川俣町,田村市,富岡町,浪江町,楢葉町, 広野町, 双葉町, 南相馬市.

[r]

発電所名 所在県 除雪日数 中津川第一発電所 新潟県 26日 信濃川発電所 新潟県 9日 小野川発電所 福島県 4日 水上発電所 群馬県 3日

○ また、 障害者総合支援法の改正により、 平成 30 年度から、 障害のある人の 重度化・高齢化に対応できる共同生活援助