15.在
日外 国 人 の 妊 娠 ・出産 に
まつ わ る文 化 的 特 性
岩手県立 大学 看護学 部 ○蛎 崎奈 津子 石 井 ト ク I.緒 言 国 際 化 に 伴 い,1990年 前 後 よ り在 日 外 国 人 の 母 子 保 健 へ の 関 心 が 高 ま り,そ れ に 対 す る 研 究 が 本 格 化 し た 。し か しそ れ らの 中 に は 一 方 的 に 日 本 文 化 の 基 準 や 医 学 的 見 解 に 当 て は め 展 開 し て い る も の が 多 く,対 象 の 「個 」 の 理 解 へ の 関 わ り が 少 な い も の が 見 受 け られ る。 「外 国 人 」と い う こ と は そ の 個 人 が 有 す る1つ の 特 性 と位 置 付 け られ る も の で あ る が,そ の 前 に は 文 化 の 違 い と い う こ と が 大 き く 立 ち は だ か っ て い る こ と を 認 識 す る必 要 が あ る 。李 は 在 日外 国 人 が 抱 え る 周 産 期 に 関 す る 問 題 フ ローチャートの 中 で 「文 化 の 違 い 」 を 根 源 と す る 様 々 な 状 況 を 説 明 し1),Nancyは 異 文 化 で 出 産 した 産 婦 が 直 面 した 問 題 と し て 「文 化 的 サ ボ ー トの 欠 如 」 を 挙 げ た2)。 文 化 は ひ とつ の 国 に お い て も 地 方 に よ っ て 様 々 で あ り,男 女 の 役 割 意 識 や 結 婚,妊 娠 ・ 出 産 に 伴 う習 慣 や 受 け 取 り方 に も 多 様 性 が あ る。 在 日外 国 人 の 妊 産 婦 の 看 護 に 関 わ る 際 に は,ま ず そ の 個 人 が 持 つ 文 化 的 背 景 を 柔 軟 に 理 解 し尊 重 し て い く こ と が 必 要 で あ る 。そ こで 本 研 究 の 目 的 は, 在 日外 国 人 の 妊 娠 ・出 産 に 関 す る 考 え や 慣 習 を 把 握 し,そ の 文 化 的 特 性 を 明 ら か に す る こ と で あ る 。 II.研 究 方 法 1)対 象:岩 手 県 在 住 の 在 日外 国 人 で 任 意 の 研 究 承 諾 が 得 られ た 者22名 。今 回 は 中 華 人 民 共 和 国 (以下,中 国 とす る)出 身 の13名 を 報 告 す る。 2)期 間1平 成12年4月 ∼9月 。 3)方 法:在 日外 国 人 医 療,文 化 人 類 学 的 文 献 等 を 参 考 に 独 自 に 作 成 した 自 己 記 入 式 調 査 票(日 本 語,英 語併 記)を 個 別 に 配 布 し郵 送 に て 回 収 し た 。 4)内 容:調 査 項 目 は(1)コミュニティに お け る妊 娠 ・出 産 の 捉 え ら れ 方,(2)出 産 場 所 の 選 択,(3)出 産 の 立 会 人 の 選 択,(4)児 の 世 話 へ の 対 応,(5)家 族 役 割 の 変 化 等 の 計13項 目 で あ る 。 III.結 果 1,対 象 の 属 性:分 析 対 象 の 平 均 年 齢 は32.5±4.5 歳,既 婚 者12名,出 産 経 験 者10名,在 日 理 由 で は 「本 人 の 留 学 」(7名)が 最 も多 か っ た 。 2.妊 娠 ・出 産 に ま つ わ る 文 化 的 特 性 1)妊 娠 ・出 産 に 対 す る 社 会 ・周 り の 反 応;「 喜 ば し い こ と で あ る が,10代 や 婚 姻 前 の 妊 娠 は こ の 通 り で は な い 」9例,「 若 年 ・婚 姻 前 妊 娠 で は 祝 福 さ れ ず 親 子 関 係 を 断 た れ る場 合 も あ る 」4例 。 2)妊 娠 の 判 定;「 尿 検 査 薬 で 自 己 検 査 し た り病 院 を 受 診 し診 断 され る 」6例,「 妊 娠 が 疑 わ れ た ら 産 婦 人 科 を 受 診,確 定 的 診 断 を 受 け る 」7例 。 3)妊 娠 中 の 管 理:「 定 期 的 に 検 診 を 受 け る 」11例, 「全 部 、医 師 が 診 察 す る 」「定 期 的 な 検 診 は な く 問 題 が 生 じ た と き の み 受 診 す る 」 が 各1例 。 4)妊 娠 中 の 独 特 な 風 習:「 特 に な い 」10例,「 腹 帯(旧 満 州 地 方)」 「地 方 に よ っ て 様 々 な 行 事 が あ る は ず だ が わ か ら な い 」 が 各1例 。 5)出 産 後 の 独 特 な 風 習:「1か 月 目(満 月 とい う) に 親 族 ・友 人 等 で お 祝 い を す る 」6例,「1か 月 目 と100日 目 に お 祝 い を す る 」3例,「 お 祝 い を す る 」 「わ か ら な い 」 各1例 。 「特 に な い 」2例 、 6)出 産 場 所:「 病 院 」7例,「 以 前 は 自 宅,現 在 は 病 院 ・助 産 所 」4例,「 田舎 は 自 宅 」2例 。 7)出 産 介 助:「 助 産 婦 ・医 師 」12例,「 医 師 」1例 。 8)そ の 他 の 出 産 の 立 会 人:「 夫 の 立 会 い は 見 られ だ し た が 家 族 の 立 会 い は 少 な い 」5例,「 立 会 う 習 慣 は な い 」4例,「 男 性 の 立 会 い は 禁 止 」3例,「夫 や 家 族 が 立 会 う の は 普 通 」1例 。 9)出 産 後 の 過 ご し方:「1週 間 入 院,1か 月 静 養 」 「1週 間 入 院,実 家 で1か 月 を 目標 に 活 動 量 を 増 や す 」各4例,「1週 間 入 院,100日 静 養 」 「3 日間 入 院,実 家 で1か 月 静 養 」 「日本 よ り活 動 量 は 少 な い 」 各1例 。 ま た 「冷 た い 水 に は1 か 月 間 は 触 れ な い し,飲 ま な い 」 が2例 。 10)出 産 時 の 様 子:「 声 を 出 さ な い よ う我 慢 す る こ とは な い,自 由 」10例,「 わ か ら な い 」2例, 「我 慢 す る 」1例 。 11)出 産 費:「 施 設 に よ る 」 「2∼3万 円 」 「給 料 の 半 分 」 各2例,「5千 ∼1万 円(10年 前)」 「2∼5 万 円 」 「3∼10万 円 」 「給 料2か 月 分 」 各1例 。 12)児 の 世 話:「 男 女 平 等 で 男 性 も積 極 的 に 育 児 す る 」6例,「 父 母 と母 方 の 親 」 「父 方 の 親 」各2 例,「 父 母 と 両 祖 父 母 、最 近 で は 家 政 婦 を 雇 う人 も い る 」 「田 舎 で は 父 母 と 両 祖 父 母 」 各1例 。 13)家 族 の 役 割 の 変 化:「 男 女 平 等 の た め 協 力 し て 育 児 す る 」10例,「 農 村 部 で は 女 性 が 育 児, 都 市 部 で は 男 女 協 力 」 「共 働 き の た め 家 政 婦 を 雇 う」 「祖 父 母 が 児 の 家 に 引 越 しす る 」 各1例 。 IV.考 察 中 国 出 身 者 の 妊 娠 ・出 産 に 関 す る 文 化 的 特 性 で 注 目 され る 内 容 は 「妊 娠 中 の 管 理 」「出 産 時 の 立 会 人 」 「出 産 後 の 過 ご し 方 」 「出 産 時 の 様 子 」 「出 産 費 用 」 「児 の 世 話 」 「家 族 の 役 割 」で あ っ た 。これ を 妊 娠 期,出 産 時,出 産 後 に 分 け て 考 察 す る。 1)妊 娠 期 に お け る 特 性 「妊 娠 中 の 管 理 」 と し て 日本 の 病 院 施 設 等 で 問 題 行 動 と 見 られ が ち な も の と し て 「検 診 受 診 率 の 低 さ」が 挙 げ ら れ る。こ れ は 妊 娠 中 毒 症 等 の 発 症 の 問 題 と 共 に 出 産 後 の 乳 児 検 診 受 診 率 の 低 さ との 関 連 性 も 指 摘 さ れ て い る3)。 しか し慣 習 と して 定 期 検 診 の 習 慣 が な い 場 合 も あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。こ れ は 中 国 人 産 婦 を 対 象 と し た 中 山 の 調 査 で も 述 べ られ て い る4)。 経 済 的 問 題 と も 関 連 す る と 思 わ れ る が 定 期 的 な 検 診 を促 す 十 分 な 説 明 と 同 意 や,ま た 検 診 を 選 択 しな い 者 へ の 自 己 管 理 の 重 要 性 等 の 説 明 を 実 施 して い く必 要 性 が 推 察 さ れ た 。 2)出 産 時 に お け る 特 性 「出 産 時 の 立 会 人 」 と し て 夫 が 立 会 う習 慣 が 少 な い こ と が 明 ら か と な っ た 。通 訳 の 関 係 等 で 夫 の 立 会 い を 求 め る こ と が 多 い が,外 国 人 医 療 の キーワー ド と も な る インフォームド ・コンセントを 十 分 に 行 い,本 人 ・ 家 族 が 選 択 で き る よ う な 配 慮 が 必 要 と 思 わ れ た 。 ま た 「出 産 時 の 様 子 」 と し て 日本 と は 違 い,痛 み に 耐 え る 習 慣 は な く声 を 出 す の も 自 由 で あ る 。 こ と は 十 分 に 理 解 し正 確 な 状 況 判 断 が 妨 げ られ な い よ う4)ケ ア に あ た る 必 要 が あ る だ ろ う。 3)出 産 後 に お け る 特 性 中 国 で は1950年 に 交 付 され た 「婚 姻 法 」 に よ り男 女 平 等 の 民 主 的 家 族 関 係 の 樹 立 が 規 定 さ れ た 5)が ,本 調 査 に お い て も 「児 の 世 話 」 お よ び 「家 族 の 役 割 」 に お い て 「男 女 平 等 」 と い うキーワード が 浮 か び 上 が っ た 。ま た 「出 産 後 の 過 ご し方 」に お い て は 早 期 離 床 に は 消 極 的 で 静 養 が 重 ん じ られ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。在 日外 国 人 妊 産 婦 の 関 わ り と し て 家 族,特 に 夫 を 含 め た ケ ア の 有 用 性 は 多 くの 文 献 で 示 さ れ て い る 。 よ っ て 彼 らへ の 育 児 指 導 等 は 積 極 的 に 行 う こ と が 重 要 で あ る 。ま た 「出 産 費 用 」 に つ い て は 日本 は 高 額 で あ る こ と が 推 察 さ れ た 。経 済 的 問 題 は 外 国 人 医 療 に お い て よ く 指 摘 さ れ る も の で は あ る が,予 め 予 測 を 立 て 妊 娠 中 に 準 備 を す す め て お く こ と が 大 切 と 思 わ れ た 。 V.結 論 以 上 よ り,中 国 出 身 者 の 妊 娠 ・出 産 に ま っ わ る 文 化 的 特 性 と し て 次 の こ と が 明 ら か と な っ た 。 1.妊 娠 期:定 期 検 診 へ の 配 慮 や 働 き か け が 必 要 。 2.出 産 時:夫 の 参 加 方 法 お よ び 出 産 時 の ケ ア の 検 討 が 必 要 。 3.出 産 後:静 養 が 重 要 視 され て い る と と も に 育 児 や 家 事 に お い て 男 女 平 等 で あ る た め,家 族, 特 に 夫 へ の 指 導 や 援 助 が 有 用 。 入 院 費 用 に 関 し て は 妊 娠 中 に 準 備 を す す め る こ と が 望 ま しい 。 引 用 文 献 1)李 節 子:外 国 人 妊 産 婦 に 対 す る 周 産 期 母 子 保 健 指 導,周 産 期 医 学,30(2),169・175,2000,
2)Nancy Sharts Engel: 異 文 化 で の 生 活 の 変 化 に 直 面 し て ― 日 本 で 出 産 し た アメリカ人 女 性 た ち の 症 例 ―, 看 護 研 究, 23(2), 73-79, 1990. 3)野 田 明 子 他: 在 日外 国 人 の 母 子 保 健 一 婦 人 科 疾 患 お よ び 妊 娠 ・分 娩 に つ い て ―, 小 児 保 健 研 究, 51(2), 274, 1992. 4)中 山 和 美: 当 院 に お け る 外 国 人(特 に 中 国 人)産 婦 の 援 助 に つ い て 考 え る ― 中 国 人 の 出 産 周 辺 に お け る 習 慣 か ら ―, 母 性 衛 生, 37(4), 356-360, 1996. 5)陳 舜 臣: 世 界 の 歴 史 と文 化 中 国, 新 潮 社, 1997.
16.開
業 助 産 婦 が 地 域 母 子保 健 に果 した役 割
― 第 一 報 長 崎 県 ・五 島列 島 ・富 江 町 ― 長崎 大学 医療技 術短 期大 学部 ○大 石 和 代 荒 木 美 幸 達 木 レ デ ィ ー ス ク リニ ッ ク 加 藤 奈 智 子 Iは じめ に わが 国の 母子 保健 は 、ま だ まだ戦後 の復 興 を行 な って い る最 中の 昭和25年 には既 に 目に見 え る ほ どの 向上 を示 してい る。 そ こには 、医療 従事 者 の 多大 な 努力が あ った 。我 々は 、 そ う した医療 従 事者 の うち、特 に医 療過 疎地 域(離 島部 を含 む) が 多い 長崎 県 内 にお い て、 その活 躍す る場 面が 現 在 よ りも遥 か に多 い もので あ った と想 定 され る 「 地域 に密着 して活躍 した助産 婦(産 婆)」 を対 象 と した イ ンタ ビュー 調査 を行 い、 当 時の活 動を 振 り返 り、地 域の 母子 保健 レベ ル の向上 の ため に ど の よ うな活動 が 有効 で あ ったのか 等 につ いて検 討 した。 今 回は第 一報 と して五 島列 島 ・富江 町の 調 査結 果 につ いて 報告 す る。 II方 法 1.対 象 自宅分 娩 が主 流で あ った 昭和40年 代 まで に五 島列 島 ・富江 町 で活躍 した元 助産 婦(産 婆)1名 で ある。 富 江町 に は戦前 ・戦 後 を通 して9名 の開 業助 産婦(短 期 間開 業者2名 を含 む)が いたが 、 今 回 イ ンタ ビュー調 査が 可能 で あ ったの はその う ちわ ず か1名 で あ った。 2.調 査 期 間 2000年1月 ∼2000年9月 であ る。 3.デ ー タ収 集 方法 対象 者 を3回 戸別 訪 問 し、 調査 表 に基づ く面接 調 査 を実 施 した 。調 査表 の 内容 は個人 背景 、 開業 、 開業 助 産婦 と して の キ ャ リア、 地域 背景 、 妊娠 の ケ ア、分 娩 の ケア お よび産 褥の ケ アで あ る。1 回の調 査 所要 時 間は 約2時 間で あ った。 4.富 江町 の地 域 概況 富 江 町 は五 島列 島の下 端 に位 置 す る、 総 面積 49.43Km2の 農 業を 主 とす る町 で あ る。人 口は 昭和34年 まで は1万5千 人 台 で推 移 した が そ の後 は徐 々に減少 し、 昭和40年 には1万 2千 人 とな って い る。 出生数 は 昭和25年 の5 52人 を ピー ク にそ の後 減少 を 続 け 、 昭和31 年 に は435人 、 昭和40年 に は174人 で あ る。 また、 乳児 死 亡数 は 昭和31年 に16人 、 昭和40年 に6人 と徐 々に減 少 して お り、乳 児 死 亡 率 を長 崎県 ・本 土 部 と比 較 して も大 きな差 はみ られ て いな い。 III結 果 1.対 象 の 個人 背景 対象 の年 齢は83歳 で、富 江 町 出身 で あ る。 産 婆 学校 を 卒業 し産 婦 人科(開 業 医)に1年 間 勤務 した後 、21歳 の 時 に検 定 試験 で免許 を取 得 した。22歳 で結 婚 し夫 と と もに満 州 に渡 り 3人 の子 ど もを 出産 した が 、夫 と2人 の 子 ども は現 地 で死 亡 した 。29歳 で生 後 間 もな い長 女 を連 れ て帰 国 した 。 2.開 業 生 活 の為 に開業 を決 心 した。 開業場 所 は 富江 町で 、 開業 時 の年 齢 は29歳 、 開業 期 間は 昭和 21年 ∼ 昭和41年 の21年 間 であ る。 開業 す るに あた って必 要 と した もの は助 産用 具 一 式 の み で あ った。 3.開 業助 産 婦 と して の キ ャ リア 開業 期 間 中の分 娩 件数 は月 平均5∼15件 で あ り、1年 間 に取 り扱 う分 娩 件数 は 多 い ときで約180件 で あ った。助 産所 廃止 後 は母 子健 康 セ ンター の管理 助 産婦 と して勤 務 して い る。 4.地 域 背景 1)医 療施 設 当時 は個 人の 医院(外 科 、 内科)が 数 軒 あ り、 妊娠 ・分 娩 時の 救急 処置 お よび軽 い 疾病 に対 す る 医療 は これ らの 嘱託 医 に依頼 した。 しか し、手 術 や特 別 の治 療 を必要 とす る場合 に は長崎 や福 江方 面へ 入 院 させね ば な らなか った。分 娩施 設 と して は 昭和42年 に母子 健康 セ ンターが 開設 され て い る。 2)交 通 集 落 が散 在 して お り交通 の不 便 な とこ ろが多 い 。 町 内バ スは 昭和25年 か ら運行 が 開始 され、3 路 線で1日 数 回の運 行 で あ る。助産 婦 の交 通手段 は徒歩(戦 前 は遠 方 の場合 には馬 に乗 る こ ともあ った)で あ り、 その後 自転 車 、バ イ ク と変 化 して いる。 富江 町 で 自転 車 及 びバ イ クを最初 に購入 し た女性 は いず れ も助 産 婦 であ った 。 5.妊 娠 のケ ア 妊婦 の ケア は妊娠5ヶ 月 頃 に行 う診察1回 の み であ る。助 産婦 は妊娠 を確 認 し腹帯 を巻 く。町 内 で出会 う妊 婦 に は必 ず 声か け し、必 要 に応 じて保 健 指導 を実 施 して い た。 また、 正常 逸脱 の可 能性 の高 い妊婦 に は再度 診 察を 受 け るよ うに指 導 した が 、経済 的に余 裕 のな い妊 婦が 多 く、再 度受 診す る人 は ほ とん ど いなか ったた め、分 娩 の時 、近所 の妊 婦 を その家 に呼 び、 そ こで介助 の合 間 を利用 して診察 及 び保 健指 導 を実 施 して いた。 6.分 娩 の ケ ア 分 娩介 助 で あ る。 分 娩時 の 出血 に備え て 常に止 血剤 を携 帯 し、 実際 に使 用 す る こと も多 か った。 開業21年 間で 分娩 時 に嘱 託医 との連携 が必 要 だ ったの はわず か1例 で 、 これ は妊娠 中毒 症 に起 因 す る常位 胎盤 早 期剥 離 の分 娩で あ った。 この産婦 は福江 大 火(昭 和37年)の ため急 遽里 帰 り した 分 娩 で、 分娩 だ け に呼ば れ た事例 で あ った。 7.産 褥 の ケア 褥 婦 の ケ アは復 古助 成 、授 乳指 導 、育 児指導 、 受胎 調 節 指導 で あ り、新生 児 のケ ア は身体 の観 察 及 び沐 浴 で あ る。産褥 の ケ アは家 庭 訪問 に よ り産 後1週 間毎 日実施 す るが 、家 庭 訪 問 の料 金 は分 娩料 に組 み込 まれ て お り、産 後1週 間 まで の母 児 の健 康 は分 娩介 助 を した助 産 婦が 責 任 を持 っ て行 って いた。 IV考 察 自宅分 娩 で 出生 した割 合を 長 崎県 、 長崎 県 ・ 本土 部 で あ る長 崎 市及 び長 崎 県 ・離 島部 で あ る 富 江 町の3つ で比 較す る と(図1)、 長崎 県 全 体 で は昭和35年 か ら44年 に か けて徐 々に 減 少 して い る。長 崎 市で は分 娩 を取 り扱 う機 関が 多 か った こ とか ら昭和35年 に は既 に35.7 %と 低 く、40年 に は9.0%と1割 以 下 とな って い る。 一方 、 富江 町 は町 内 に分 娩施 設 が な く、 昭和42年 に母子 健康 セ ンター が 開設 され るま で7割 以上 が 自宅 で分 娩 してい る。 富 江 町 では 自宅分 娩 か ら施設 分娩 へ の 移行 が長 崎 市 と 比 較 して10年 以 上遅 くな って お り、遅 れ た分 だけ、 母子 保健 の担 い手 と して の開業 助産 婦 の 役 割 は長か った と思 わ れ る。 図1自 宅分 娩 割合 の推 移 開業助 産 婦の 妊娠 ・分 娩 ・産 褥 のケ ア は、 今 日施 設 で実施 してい るケ ア と ほぼ 同 じ内容 で あ る。 その違 いは ケ アが提 供 され る場 所 及 び ケ ア の継 続性 で あ り、緊 急時 の 医療 対策 であ る。 妊 ・産 ・褥 婦 の生 活す る場 で ケ アを継 続 的 に提 供 す る とい う助産 婦 の活動 、及 び発 生 した異常 に 速や か に対 処で き る技術 の確 か さは、 医療 資 源 に乏 しく、 経済 的 に も豊 か でな く、交 通 の便 が 悪 い とい う条件 下 にあ っ た富江 町 に おい て は、 母 子 保健 レベル の向 上の た め に有効 であ った と 考 えれ る。
17.母
か ら娘 へ の 民 間 的 ケ ア の 伝 承 に
見 られ る特 徴
―産 褥 期 の摂 生 に焦 点 を あ て て ―
北里 大学 大学 院博士 後期 課程 ○長鶴 美佐 子 北里 大学 宮 里 和 子 I緒 言 日本 で は昔 か ら子産 み ・子 育て にお け るケ アは 専門職 だけ でな く家族 を中心 とした人 々 によ って も行 わ れて き た。 レイ ニ ンガー は この よ うな ケ アを民 間的 ケ ア と 呼び 「あ る文 化 の人 々 の間で 学習 され,伝 承 され た非 専 門的 ・自然 発 生的(伝統的)で,民 俗 的(家庭 ケ ア)な知識 と技 能」 と定 義 し,こ れ らを考慮 した専 門 的ケ ア の必 要性 を述 べ て いる1)。 筆 者 の調査2)で は,現 在 も多 くの褥 婦が 実母 ら か ら産 後 の動静 に関 す る民間 的 ケア を うけ,そ の 半 数以 上 が次 世代 へ の伝 承意 思 を示 して い た。 民間 的 ケア を考 慮 した専 門的 ケア を追求 して い くため に は,民 間的 ケ アの 内容 と とも にそ れが ど のよ うに伝 承 され るか を知 る ことが必 要で あ ろ う。 世代 間伝承 に関す る報 告で は,伝 承 の実 態 につ いて 述 べた ものが多 く,伝 承 の特 徴 まで は明 らか に して い な い。 そ こで今 回は,伝 承 側 と受 け手 の回答 を比較 し, 民間 的 ケア の伝承 に見 られ る特 徴 につ いて 明 らか にす る こと を 目的 と した 。 II研 究方 法 1対 象 神 奈川県 に あるS病 院の産 褥1ヵ 月健診 に来 院 した 褥婦(以 下娘)と そ の実 母(以 下 母)の カ ツ プル102組,回 収75組(74%) 2調 査 期 間 1999年7月 ∼9月 3調 査 方法 1)娘:半 構 成 面 接法 にて,産 後 の過 ごし方 に関 す る助言 の有 無 とそ の内 容 ・反応 ・次 世代 伝 承 の 意思 につ いて 尋ね た 。 回答 は 了解 を得 て 録 音 し分 析 した。 2)母:質 問 紙 法 に て,自 己 の 経 験(選 択 式)と 娘 へ の 助 言 の 有 無,そ の 内 容(自 由 記 述 式)に つ い て 尋 ね た 。 配 布 は 郵 送 又 は 娘 か ら の 手 渡 し 法 で,回 収 は 郵 送 法 と した 。 III結 果 1対 象 者 の 背 景 1)娘 初 産 婦42名(56%),平 均 年 齢30歳(SD± 4),核 家 族66名(88%),産 後 実 家 で 過 ご した 者 46名(61%),実 母 に よ る 産 後 の 手 伝 い が あ っ た 者60名(80%)で あ る 。 2)母 平 均 年 齢58歳(SD±4.8),平 均 子 ど も 数2.5 人,病 院 で の 出 産 経 験 の あ る 者 は64名(85%) 2助 言 の 有 無 の 比 較(表1) 「娘 へ の 助 言 有 」55名(73%)に 対 し 「母 か ら の 助 言 有 」 は66名(88%)で あ っ た 。 回 答 の 不 一 致 は17組(23%)で ,「 娘 へ の 助 言 無 」 と答 え た20組 の う ち14組(70%)は,「 母 か らの 助 言 有 」で あ っ た 。 こ の14組 は,産 後 を 実 家 で 過 ご し た 者 が86%と 多 い 。(p<0.05) 3助 言 内 容 の 比較 助 言 内 容 は,「 休 養 ・床 上 げに関 す る 内容 」,水仕 事 をす るな ・水 を使 うな等 の 「水 を 使 う 事 に 関 す る 内 容 」,本を読 む な ・針仕 事 を す る な等 の 「目 を使 う事 に関す る 内容 」,「入 浴や 洗 髪 に関 す る 内容 」 「重 い もの持 つ な 」 「身体 を冷 や す な 」 「そ の他 」 の7つ の項 目に分 類 され た。 母 娘 の 回 答 をそ れ ぞ れ この 項 目 に分 類 し比較 した 。平 均 回答 項 目数 は母1.4項 目,娘2.3項 目 で あ り,母 娘 とも休 養 に関す る項 目が最 も多 か っ 表1助 言有 無の一 致 N=母 娘75組た 。差 が 大 き い の は 「水 を 使 う こ と に 関 す る 内 容 」 で,次 に 「目 を使 う こ と に 関 す る 内 容 」で あ っ た 。 これ ら に は 有 意 差 が 見 ら れ た 。(p<0.01)(図1) 4項 目別 に よ る回答 内容 の 比較 項 目別 に母 と娘 の 回 答 内容 を比較 した。 「水 を 使 う事 に関 す る内容 」や 「目を使 う事 に関す る内 容」 は表 現 方法 に多 少 の相 違 が ある だ けで助言 内 容の差 は なか った 。 しか し 「休養 ・床上 げ に関す る 内容 」で は,休 養 期 間 まで 回答 した母 は2名 (4%),娘 は15名(25%)で あ り,休 養 を取 る 事で は一 致 して いる もの の,娘 の方 が よ り具 体的 な 回答 を して いた 。 5助 言 に対 す る 娘 の反 応 と行 動 肯 定的 反応 の娘 は,「休 養 」の 助言47名(82%), 「目」の助 言が17名(68%),「 水 」の助言16名 (59%)で あっ た 。助 言 に対 す る行 動で は,「 守 った」又 は 「大 体守 った」と した者 が,「休養 」の助 言 で46名(81%),「 水」の助 言16名(59%),「 目」 の助 言19名(75%)で あっ た。 また 次世 代へ の 伝承 意 思 を示 した者 は,「 休 養 」 の助 言 が45名 (79%),「 水 」 の助 言13名(48%),「 目」 の助 言13名(52%)で あ った 。 IV考 察 母娘 の比較 結 果 は,助 言 の受 け手で あ る娘 の方 が よ り詳 細 に覚 え て いる とい うもの であ った。 し か し今 回 は母 と娘 への 調査 法 が異 な って お り,こ れ によ り回答 量 の違 いが生 じた こ とは否 めず,比 較 には限 界 が ある。 しか し娘 の回答 だ けに 目を向 けた 場合,か な り詳 細 に記 憶 して お り,母 か らの 伝承 を しっか り受 け止 め て いる こ とがわ か った。 「助言 無 」 と答 えた母 に対 して,娘 が 「助言 有」 と した カ ップル が14組 お り,う ち12組 は退 院後 を実 家 で過 ご して い た。 産褥 期 は専 門職 の関 わ り が希 薄 で あ り,不 安 を抱 く者が 多 い ことが 指摘 さ れて いる3)。 この ため経 験者 で ある母 の 助言 は説 得 力 を もち,鮮 明 に記憶 され るの で あ ろ う。 一 方 母 は産 後 の手 伝 い をす る 中で,助 言 と意 識せ ず に 話 を して いる ことが 考 え られ る。 助言 内容 によ り母 娘 の回答 に大 き な開 きが あっ た。 「目」や 「水 」を使 って は い けな い と い う母 の 助 言 は耳 慣 れぬ 内容 で あ り,「な ぜ だろ う」とい う 思 い もあ り娘 は記憶 に留 めた も の と思わ れ る。 母 の回 答数 が 少 なか った の は,自 由記 述式 で想 起 し に くか っ た こ とが 考 え られ た が,質 問紙 で は本 設 問 の回 答 前 に 自 らの体 験 を選 択式 で 選ぶ よ うに し, そ の 中に 主な 助言 を選 択 肢 と して 配 置 して お り, 娘 へ の助言 を想起 しやす い工 夫 を して い る。 この こ とを考 え る と,記 入 の問題 だ けで は な く実 際 に 助 言 を した と認識 して いる母 が 少な い と見 るべ き で あ ろ う。 松浦 のが報 告 して い る世代 間 の初 経祝 いの伝 承 は,母 が 「意 識 的 に行 な う」 とい う特 徴 を持 っ 。 しか し産 褥期 の摂 生 に関 す る母 か ら娘 へ の伝 承で は,娘 が助 言 有 とした母 の21%が 助 言 無 と して お り,産 後 の摂 生 にお いて は 「意 識的 に」そ して 「無 意 識 に」 とい う両面 の伝 え方 をす る こ とが考 え ら れ た 。 V結 論 産 後 の 摂 生 にお け る母 か ら娘 へ の伝 承 の特 徴 として,母 か らの 助言 を娘 は真 摯 に受 け 止 め,詳 細 に記憶 して いる こと。 また母 は 日常 生 活 の 中で 「意 識 的 に」だ けでな く,「無意 識 」に伝 承 を行 っ て い る こ とが 示 唆 され た。 引用 文 献 1)マデ リンM. レイ ニ ンガ ー著: レイニ ンガ ー看 護 論 文化 ケ アの多 様性 と普 遍性, 49, 1992, 稲 岡 文昭 監 訳, 医 学 書院, 1995 2)長鶴 美佐 子:褥 婦 の 動静 に 関す る 民間 的 ケ アの 実態, 北里 大 学大 学 院修 士 論 文,2000 3)大賀 明 子, 山 口由子, 皆川 恵美 子 他: 褥 婦 の不 安変 動, 日本 助産 学 会誌, 10(1), 46-55, 1996 4)松浦 賢 長: 初 経 へ の対 応 に関 す る3世 代 間 の 変遷-祖 母 ・母 ・娘 の3世 代 を通 して-, 小 児保 健研 究, 57(4), 547-552, 1998
18.わ
が 国 にお け る開 業 助 産 婦 活 動 の
安全性 に関す る研究
神 戸大学 医学 部保健 学科 ○ 高 田 昌 代 (社)日本 助産 婦会 岡本 喜代子 長 濱 博 子 石 塚 和 子 正木 助産 院 正 木 か よ 平 岡助産 院 平岡 とみ代 沖縄 県立 看護 大学 加 藤 尚 美 I.は じめ に 分娩 に対す るニ ーズの 多様 化や 自分 ら しい満足 の いく 出産の ため 、助 産所 や 自宅 での 出 産を 希望 す る女性 が増 加 の傾 向 にある 。開 業助 産婦 は 、 こ の よ うな ニ ーズの 対 応 にあた り快 適性 と同 時に安 全性 の確保 いわ ゆる 危機管 理(riskmanegement) に努 めな けれ ばな らな い。 しか し分娩 は、突 発 的 な 緊急事 態 が生 じるこ とが特 徴で あ るた め、 迅速 な救 急体 制 を整 えて お く必要 が ある。 そ こで 、本 研 究 にお いて、 開業 助産 婦の 搬送 基準 に対す る意 識 、搬送 実態 お よび 緊急 時医 療体 制 の実 態 につ い て 明 らか に し、 開業 助産 婦の 安全性 を検 討す る こ とを 目的 と して 着手 した。 II.研 究方 法 平成11年9月 に、(社)日本助 産婦会会 員の うち、 有床 及 び無床助 産所 開設者478名 を対 象 に郵 送質 問紙 調査 を実施 した 。郵送 した調査 票 には、質 問 内 容 に協 力で きる方の み返送 す るよ う依 頼 し、助 産所 名 は伏せ て分析 した 。 調査 内容 は 、嘱 託 医な ど緊急 時の 支 援体 制 、 各 地 の母児 緊急 搬送 システ ムの 実態 、1998年 の搬 送 事例 、母 児の搬 送基 準 に対す る意識 につ いてで あ る。 母児 の 搬 送基 準 に対 す る意 識 の項 目は 、我 が 国 の 医療水 準で考 え られて い る妊産褥 婦 ・新生 児 を医 療機 関 へ転送 また は搬送 する 可能性 が ある状 態 を、 開 業助産 婦 と して 実働期 間が15年 以 上の 助産婦3 人 の協議 にて 決定 した。 その57項 目につ いて.5 段 階評定 尺度 で測定 した 。今 回の 緊急搬 送 とは 、救 命 に数分 を争 うよ うな事 例 と考え られ る常位 胎盤 早 期剥 離や 胎児 切迫仮 死 、新生 児仮 死な ど と した。 III.研 究 結果 回収数357(回 収 率74.7%)の うちの有効 回答 347を 分析 対象 と した 。 1)対 象 者 の 背景 有床 助産 所開 業者 は233件 、 無床 助 産所 開業 者 は96件 で あ った 。 対 象者 の 平 均 年齢 は全 体 で は 61.1±15.6歳 、有床 助産 所 開業 者 は63.5±14.1 歳 、無 床 開業 助産 所 開 業者 は55.0±17.4歳 で あ った。今 回 の対 象者 の取 扱分 娩件 数 は 、入 院分 娩が 204件 の助産 所 にて9,389件 、 出張分 娩が154 件 の助産 所 にて909件 の 合計10,298件 で あ った。 2)基 準意 識 転院 ・搬 送 を 「す る」 「大 抵 す る 」 を 「搬 送 す る群 」 と し、 「しな い」 「ほ とん ど しな い」 をr搬 送 しな い群 」 と し、 各群 の状 態 が一 様分 布 で 、その 両者 の 出現 に差が な い とす る帰 無仮 説 を立 て て検定 した。 その結 果 、搬 送 しな い群 が搬 送 す る群 を有意 に上回 った の は、 「18歳 以 上20歳 未 満の 妊婦 」 場 合の みで あ った。 また 、2群 間 に有 意な 差 がな か ったの は、 「破 水後24時 間」等7項 目であ り、他 の49項 目の 状態 時 には 、開 業助 産婦 は転 院 ・搬送 を行な うと判 断を す る ことが統 計 的 に明 らとな った。 搬送 の5段 階評 定 尺度 の 「す る」 か ら順 に1∼5 点 と し、平 均値 を算 出 した 場合 、 平 均値 が2.0以 上の26項 目中新生 児 に 関す る割 合 は61.1%で 、 妊 産 婦 の項 目の 割合 の38.5%に 比 べ 占め る 割合 が 高 く、新 生児 搬 送 に対 して は慎 重 であ った 。 また 、 年齢 別 には 、平均 値 の 差が69歳 以 下の助 産 婦 よ り 70歳 以 上 の助産婦 が 搬 送に対 す る意 識が 有 意 に高 か った 項 目は、 「複 殿位 単 胎」 「単殿 位単 胎 」 「羊水 過少 」等6項 目で あ った 。個人 別平 均値 は、1.0 か ら4.63と 搬 送 に対す る意識 の差 は大 きか ったが 、 地 域別 、業務形 態別 には有 意差 は認 め られ なか った 。 3)年 間 の全搬 送 事 例 助産 所分 娩希 望例11,742の 内 、搬 送 ・転院 は 5.3%、 緊急 搬送 例 は104件 で僅 かO.9%で あ った。 緊急搬 送理 由は胎 児仮死 、次 いで 弛緩 出血で あ り、 早期剥 離は16件 で あ った。搬 送事例 の 内容か らは、 母体死 亡の報 告 はな く、死産 は11件 で 、いずれ も 助産院 で発見 され 搬送 して いた。 搬送 後の転 帰 と し て新生 児死 亡例 は7件 、 児の予 後不 良例 は13件 で あ った。1997年 全 国統 計の死 産率 及 び新生死 亡率 との比 較で は、 開業助 産婦 の取扱 分娩 は有 意 に低 率 .であ った。 搬 送時の 時間帯 は、 平 日昼 間 と休 日の 搬 送割合 との 間 に有意 な差が あ り、搬送 時 、時 間的余 裕 を持 って平 日昼間 に搬送 ・転 院 して いた 。 搬 送 時 、複 数 の病 院 に問 い合 わ せ た例 は全例 の 内37件(内 緊急 事例16件)で あ った。 緊急性 が高 い事例 ほ ど問 い合 わ せ病院 数が 多 くみ られ た。母 体 と新 生児 を比較 にお いて は有意 な差 は認め られ ず、 搬送 の困難 さにお いて は同程度 であ った。 搬送依頼 時の 拒否理 由 は、 「MCUに 空き ベ ッ ドがな い」 「産 科の 空きベ ッ ドがな い」が 上位 を 占めて お り、病 院 側の 緊急体 制の 不十 分 さが うか が えた。 5)嘱 託医 の 実態 と緊 急 時の支 援 体制 嘱 託医 が産婦 人科 医以 外の 者は22.4%で あ り、 また.産 科 を標榜 して いて も分 娩 を扱 って いな い嘱 託医 は14.2%、 入院設 備 を有 して いな い嘱託 医 は 14。8%で あ った 。 嘱託 医 と の緊 急搬 送 時の 支援 の 体制 は 、90.1%の 者 が確 立 して い たが 、嘱 託 医以 外 に二 次救 急的病 院 な どの協 力医療機 関 を もって い る助産 婦 が85.8%を 占め た。 助産婦 が 嘱託 医に搬 送時連絡 したが 対応 して くれな か った事例3件(内 緊急事 例1件)、 嘱 託 医 と連絡 が取 れな か った事 例3件(内 緊 急事 例2件)で あ った。 助産婦 が 緊 急 時の こ とを考 え、万 全 を期 して いる にも関わ らず この よ うな事 態が 生 じて いた。 配 考 察 開業助 産婦 の搬 送基 準 に対す る意識 につ いて は、 地域 や有床 ・無床 に関 わ らず リス クの 高 い状態 にあ る妊 産 褥婦 や新 生児 は搬 送 ・転院 す る とい う、安 全 性 に対 す る意識 は現在 の 医療水 準 で考 え られ る とこ ろ とか け離 れて は いな い ことが明 確 にな った。 さら に、死 産率 、新生 児死 亡率 か らの 実態 と して も安全 性 が高 い ことが 明 らかで あ った 。但 し、搬送 に対す る意 識 に個人 差 があ る ことや、 豊 富な経 験 と技術 を 有 す るベテ ラ ン助産婦 は、搬送 ・転院 する状 態 の許 容 幅が広 い ことが認 め らた 。妊 娠 や分娩 は卓 越 した 助 産技 術が 必要 な こと は言 うまで もな いが 、我 が国 にお ける医 療水準 を 前 に した 時の 「いのちの 重み 」 と して開業 助産 婦が 取扱 う分娩 の 基準 を考 えね ばな らな い。 さ らには、妊 産婦 のニ ー ズを考 慮 して 、医 師 と共 観 する こ とも含め た開業 助産 婦 の取扱 う分 娩 や搬 送基準 につ いて 検討 し、徹 底 して い く必要が あ る と考 え る。 実 際 に は、 複 数 の病 院 に依頼 して 時 間 を 要 して いる事 例 も挙 が って お り、 産科 特有 の予 測不 可能 な 突発 的異常 は まぬがれ ず、 嘱託 医が 産科 医で な い、 入 院設 備 を持 ち合 せて いな い場 合 にお いて は搬送 や 転院 、ま してや 緊急搬 送は困難 で ある。 これ は 、嘱 託 医の 高齢 化や 嘱託 医を承 諾 して くれ る医師 の制 限 な どが 原 因 とされる と ころであ る。 その ため 、開 業 助 産婦 は、 嘱託 医以外 に緊 急時 に対応 可能 な 病院 を 各 自で確保 す るよ う努 力 し、 さ らに平 日の 日勤帯 に 搬 送 するな どの安 全性 の意 識 を有 して いる と考え ら れ る。 しか し、個 人 的つな が りで は希薄 であ り、 全 国 どこで産 もうと も妊 産婦 ・新 生児 の安全 を保 証 す る搬送 シス テム の早急 な構 築の 実現 が望 まれ る。 V.結 論 1.開業 助産 婦の 安 全性 に関す る意 識 は高 く、業 務 上か らも安 全性 が保証 され た。 しか し、個 人 差が あ る ことか ら、今後 、助 産婦 の取扱 う分 娩 や搬 送基 準 につ いて検 討 して いく必要 があ る。 2.予 測不 可能 な緊急 事態 に開 業助産 婦 も遭 遇 して お り、医療 機関 の設備 面の 問題 等 でス ムー スな搬 送 が行な えな か った事例 もあ った 。そ のた め、 現在 開 業助産 婦 は、搬 送時 間帯 の配慮 や 協力 医療機 関 の確 保 な どの努 力を行 って いるが、 助産 所が 組込 まれ た 公的な 周産 期搬 送 システ ムの早 期 実現 が望 まれ る。 この研究は、平成11年 度厚生科学研究補助金により行われた。
19.分
娩 期 にお け る開業 助 産 婦 の
意 志決 定 プ ロセ ス に含 まれ る因子
天使 大学 看護栄 養 学部看 護学科 ○ 正 岡 経 子 I緒 言 我 が 国 に お け る1997年 の 出 生数 は約119万 人 で あ り,そ の 出 生 場 所 は病 院 と診 療 所 が 全 体 の 98.8%を 占め,助 産 所 ま た は 自宅 に お け る 出生 は 1.2%と 非常 に少 な い 。しか し近 年 助 産 所 と自 宅 に お け る 出生 の 割 合 は,わ ず か に増 加 の 兆 しが 認 め られ る よ うに な っ た り。そ の 背景 には,助 産 院 や 家 庭 で の 安 心 感 の あ る 自 然 な 出 産 を望 む 女 性 た ち の 声 の 高 ま りや ニ ー ズ の 多 様 化 が あ る と言 わ れ て い る2)。また 助 産 婦 の 中か ら も この よ うな 女 性 た ちの 思 い に応 え、専 門職 と して の 自律 性 を 備 え た助 産 婦 像 を追 及 す る動 きも 出 て き て い る 。 自律 の 中心 的 な 要素 の1つ に 「意 思 決 定 」が あ り, 看 護 の 専 門 職 に お け る意 思 決 定 は,対 象 へ の看 護 活 動 を展 開 す る過 程 の 中 で,自 分 自身 の判 断 を基 に最 も適 した行 為 を選 択 ・決 定 して い く過 程 と捉 え られ て い る。 本 研 究 は,周 産 期 の 中 で も特 に 助 産 婦独 自の 機 能 が 最 も発 揮 され る分 娩 期 に焦 点 を当 て,開 業 助 産 婦 の 意 思 決 定 プ ロセ ス に どの よ うな 因 子 が 含 まれ て いる の か を明 らか に し,そ の 関 連性 につ い て 検 討 す る 目的 で行 った 。 II方 法 対 象 は,助 産 所 ま た は出 張 専 門 で分 娩 に携 わ っ て お り,5年 以上 の 助 産婦 経 験 を持 つ 開業 助 産 婦 で計5名 で あ る 。デ ー タは 対 象 へ の 半構 成 的 イ ン タ ビ ュー に よ って収 集 した 。そ の 内 容 は,最 近 携 わ った 正 常 分 娩 を1例 あ げて も らい産 婦 の分 娩 開 始 か ら分 娩 終 了ま での 間,ど の よ うな情 報 を基 に 産 婦 の 状 況 を 判断 ・予 測 し行 動 して い った の か を分 娩 の流 れ に沿 って 自由 に語 って も ら った 。分 析 は,グ ラ ウ ン デ ッ ドセ オ リー ア プ ロー チ に 基 づ い て行 っ た 。イ ン タ ビュー を逐 語 録 と して デ ー タ 化 した 後 、対 象 が語 った 内容 の意 味 づ け を 行 毎 に 行 いな が ら コー ド化 し3次 コー ドま で 抽 象 レベ ル を高 め て い った 。次 に,各 コー ドを意 味 ご と に 分 類 しカテ ゴ リー 化 し,た えず 逐 語 録 に戻 り各 カ テ ゴ リー 間 の 関 連 性 の 確 認 を行 った 。 III結 果 対象 の平 均 年 齢 は42.8歳 で,助 産 婦 経験 年 数 は 平 均14.8年 で あ った 。 産 婦 の 分 娩 開 始 か ら終 了 ま で の 全 場 面 を分 析 した 結 果,分 娩 期 に お け る開 業 助 産婦 の意 思 決 定 プ ロセ ス か ら7つ の カ テ ゴ リ ー が抽 出 され た。第1カ テ ゴ リー の 《分 娩 の 正 常 性 と進 行 時 期 の 見極 め 》は,産 婦 の 分 娩 経 過 が 正 常範 囲 内 に あ るか ど うか を 判 断 し,経 過 の 予 測 を た て る事 を意 味 して い る 。第2カ テ ゴ リー の 《産 婦 の 希 望 の尊 重 と理 解 》 は,分 娩 に対 す る 産 婦 の 希 望 を尊 重 し,産 婦 の あ りの ま ま を 理 解 して い く こ とを意 味 す る 。第3カ テ ゴ リー の 《産 婦 の 自己 決 定 の保 証 》 は,産 婦 が 出 産 を 自分 自 身 の も の と 考 え,産 婦 自身 が 助 産 婦 の 行 為 を選 択 ・決 定 す る た め の 助 産 婦 の 関わ りを意 味 して い る。第4カ テ ゴ リー の 《夫婦 ・母 子 関 係 の 理 解 と ケア へ の導 入 》 は,助 産 婦 が 夫 と胎 児 の 同胞 を ケ ア の 対 象 と して 認 識 し,そ れ ぞれ の人 間 関係 の 理解 を 基 に 家 族 の 心 理 的 安 定 を は か る ケ ア を判 断 ・決 定 す る こ と を 意 味 す る 。第5カ テ ゴ リー の 《産 婦 の 身 体 的 ・心 理 的 ケ ア 》は,分 娩経 過 中 に 産 婦 が 身 体 的 に 快 適 な状 態 で あ る か ど うか,心 理 的 に 安 定 して い るか ど う か を判 断 しな が らケ ア を 行 って い る 事 を意 味 す る 。第6カ テ ゴ リー の 《潜 在 的 な 危 険 へ の 気 がか りと母 児 の安 全 性 の確 保 》は,分 娩経 過 中 に 起 こ り う る母 児 の異 常 に 備 え た 助 産 婦 の 心 構 えや体 制 作 り を意 味す る。第7カ テ ゴ リー の 《助産 婦 の知 識 と信 念 の統 合 》 に は,助 産 婦 が 積 み 重ね て き た理 論 的 ・経 験 的 知識,及 び出 産 や ケ ア に 対 して 確 立 して き た 自 分 自身 の 考 えが 包 含 され て い た 。ま た,各 カ テ ゴ リー 間 の 関連 性 を図1の よ うに見 出 した 。 図1助 産 婦 の意 思 決 定 プ ロセ ス に含 まれ る カテ ゴ リ― の 関連 性 IV考 察 分 娩 の 開始 か ら終 了ま で の 援 助過 程 に お いて, 開 業助 産 婦 は7つ の 因子 を考 慮 しなが ら意 思決 定 し て い る こ と が 明 らか に な っ た 。Lesley Page3)は 「助 産 上 の 決 定 は,正 常 と異 常 を見 分 け で き るか ぎ り正 常 な プ ロセ ス を援 助 し,女 性 の 尊 厳 を守 るた め に 中 心 とな る能 力 で あ る」 と 述 べ て い る。 本 研 究 に お いて も開 業助 産 婦 の 意 思決 定 の 中 心 に は,助 産 婦 が 分 娩 を援 助 す る上 で最 も基 本 とな る第1カ テ ゴ リー の 《分 娩 の正 常 性 と進 行 時 期 の 見 極 め 》 が あ った 。 また,そ れ と同 時 に産 婦 の満 足 感 や 達 成 感 を高 め る こ と も 探求 し,分 娩 の 正 常 性 との 均 衡 を考 慮 しなが ら第2カ テ ゴ リー 《産 婦 の 希 望 の尊 重 と理 解 》 に 沿 っ た助 産 行 為 を選 択 して いた 。 第3カ テ ゴ リーか ら第6カ テ ゴ リー は,第1 カ テ ゴ リー と第2カ テ ゴ リー の 均衡 を維 持 す る た め の 調 整 カ テ ゴ リー と して 位 置 づ け る こ と が で き る。第4カ テ ゴ リー 《夫 婦 ・母 子 関 係 の 理 解 とケ ア へ の 導 入》 と第5カ テ ゴ リー 《産 婦 の 身体 的 ・心 理 的 ケ ア は 》,相 互 の 関 連 性 が 示 され て い る。つ ま り,夫 や 胎 児 の 同胞 の 個 性 を 理 解 しケ ア へ の 導 入 を選 択 す る と い う助 産 婦 の 行 為 は,夫 や 同胞 を通 して 産 婦 の 身体 的 安 楽 や 心 理 的 安 定 を は か る ケ ア と な っ て い る 。 第6 カ テ ゴ リー の 《潜 在 的 な 危 険 へ の 気 が か り と 母 児 の 安 全 性 の 確 保 》 は,分 娩 の 正 常 性 を 維 持 す る た め の 助 産 婦 の 関 わ りで あ り,第1カ テ ゴ リ ー と 密 接 に 関 連 して い る 。第7カ テ ゴ リ ー の 《助 産 婦 の 知 識 と 信 念 の 統 合 》 は,他 の 全 て の カ テ ゴ リー と 関 連 性 を 示 し 助 産 行 為 を 選 択 す る 際 の 基 盤 的 カ テ ゴ リー と な っ て い る 。助 産 婦 の 経 験 か ら 築 き 上 げ られ た 出 産 観 や 看 護 観 は,助 産 実 践 の 基 本 的 な 考 え に つ な が り 助 産 婦 の 意 思 決 定 の 根 底 に 位 置 づ け られ て い る と 考 え る 。 経 験 豊 富 な 助 産 婦 は,持 っ て い る 理 論 的 知 識 を 活 用 す る の と 同 時 に,こ れ ま で の 助 産 婦 自 身 の 経 験 に 基 づ く 信 念 を 生 き た 実 践 的 知 識 と し て 統 合 させ 産 婦 と 家 族 を 理 解 す る 能 力 を 持 っ て お り,そ れ ら の 能 力 を 実 際 の ケ ア と し て 提 供 す る 行 動 力 と,分 娩 場 所 や 分 娩 経 過 中 の 姿 勢 な ど 産 婦 の 希 望 に 沿 っ た ケ ア を 提 供 で き る だ け の 実 践 能 力 を 有 し て い る と 考 え る 。 V結 論 分 娩 期 に お け る 開 業 助 産 婦 の 意 思 決 定 プ ロ セ ス に 含 ま れ る 因 子 と し て,1.分 娩 の 正 常 性 と 進 行 時 期 の 見 極 め,2.産 婦 の 希 望 の 尊 重 と 理 解, 3.産 婦 の 自 己 決 定 の 保 証,4.夫 婦 ・母 子 関 係 の 理 解 と ケ ア へ の 導 入,5.産 婦 の 身体 的 ・心 理 的 ケ ア,6.潜 在 的 な 危 険 へ の 気 が か り と 母 児 の 安 全 性 の 確 保,7.助 産 婦 の 知 識 と 信 念 の 統 合 が 抽 出 さ れ た 。そ れ ら の 関 連 性 は,経 験 に 裏 づ け ら れ た 《助 産 婦 の 知 識 と 信 念 の 統 合 》が 基 盤 的 カ テ ゴ リ ー に 位 置 づ け ら れ,《 分 娩 の 正 常 性 と進 行 時 期 の 見 極 め 》 と 《産 婦 の 希 望 の 尊 重 と 理 解 》 が 助 産 実 践 の 最 も 中 心 と な る カ テ ゴ リ ー と し て 全 体 の 均 衡 維 持 を は か っ て い た 。そ の 他 の カ テ ゴ リー は,出 産 の 生 理 的 プ ロ セ ス を 促 し 家 族 全 体 の 満 足 感 を 高 め る た め の バ ラ ン ス 調 整 カ テ ゴ リ ー と し て,助 産 婦 の 意 思 決 定 プ ロ セ ス に 柔 軟 性 と 多 様 性 を 与 え て い る こ と が わ か っ た 。 引用 ・参考文献 1)厚生大臣官房統計情報部編: 人口動態統計上巻, p97, 財団法人 厚生統計協会, 1997. 2)鈴木和代ほか: 現代の分娩意識に関する調査, 母性衛生, 35(4). p222∼228, 1994. 3)Lesley Page: 生まれかわる助産婦たち,(第1版), p42, 青野敏博 監訳, 医学書院, 1996.