JICA ボランティアにおける理学療法士の活動
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(2) 658. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. はフィールドワーカーや現地ボランティア,家族などである。. 資源を発掘できるとよい。資源には,一般的に人的資源,物理. 配属先により,日常生活指導や運動療法の基礎を指導すること. 的資源,経済的資源,文化的資源が挙げられる。任国は専門職. もあれば,神経発達学的治療,PNF,マッケンジー法など理学. 種や事業予算が限られていることが多いが,農業や祭りなどの. 療法の専門的治療方法や呼吸器や循環器分野での臨床業務に就. 際に近隣での共同作業,声をかけあい手助けしあうソーシャル. くこともある。. サポートは豊かである。2011(平成 23)年 3 月 11 日に発生し. 理学療法士ボランティアが活動するうえでの課題. た東日本大震災では,日本人の多くも「絆」「人のつながり」 の価値を再認識した。. まず,理学療法士としての国際協力活動をする以前に,開発. 任国では,病気の治療費や障害が原因で就労できず経済的に. 途上国という厳しい環境で生活するので,まず自己の心身の健. 困窮することも多い。その場合には医療や福祉などのサービス. 康管理が厳しく求められる。寒暖が極端であったり,日本より. を利用することができなくなる。もっとも開発途上国の村落地. も暑くてもエアコンディションがない場所で生活し活動をする. 域であればサービス自体も不足している。開発途上国で進めら. こともある。食料も入手しづらかったり,日本とは異なる食材. れているリハビリテーションの戦略に CBR がある。2004 年に,. や味付けをされたりする。また,栄養を少ししか摂取できな. 世界保健機関(WHO),国連教育科学文化機関(UNESCO),. かったり,脂質を過剰に摂取してしまうこともある。. 国際労働機関(ILO)が共同指針を公表した. 外国で生活するには,習慣や文化を学び,価値観を尊重する. 害のあるすべての人々のリハビリテーション,機会均等,ソー. ことも重要である。現地語の習得のみならず,対人関係におけ. シャル・インクルージョンであることが謳われた。国際生活機. る空間の感覚や仕事における整理・整頓,時間の感覚や計画性. 能分類(ICF)で社会モデルの視点が加わっただけでなく,日. などでも苦労することも少なくない。「近い」,「大きい」,「き. 本も 2014 年に批准した国連障害者権利条約は,実は開発途上. れい」, 「すぐに」など主観が入ることが,日常語だけでなく「一. 国の多くでも批准され権利に基づくアプローチの考え方が急. 分」「一(現地通貨単位)」など量的な表現でも違いがある。そ. 速に拡がっている。障害は医療だけの問題でなく,障害者が生. の違いに翻弄されることなく,そして,日本人にとって活動上. 活していく上での課題は様々な要素が複雑にからんでいる。し. の不利な面だけでなく,現地の社会でのよい側面にも目がいき. たがって,理学療法士ボランティアも単に医学的知識や医療. 現地の人々の生活を享受できると,その延長上の協力活動も円. 技術の提供に終わらない視点が CBR において重要視されてき. 滑にいくのである。. た。近年では,CBR 活動に社会的包摂(ソーシャル・インク. 理学療法士ボランティアが開発途上国で知識や技術を伝える. ルージョン)を強調し,CBID(Community based Inclusive. 際には,適正技術の視点をもつとよい。適正技術とは,中間技. Development)という表現も好まれて用いられている。. 術ともいい先進国の技術をそのまま伝授するのでなく,開発途 上国の事情に即した技術に応用することである。日本の技術を. 2). 。その中で,障. ボランティア・スピリット. そのまま伝えても,文化社会的側面,経済的側面の相違により,. JICA ボランティアとして国際協力するなかで,自主性・公. 先進国ボランティアが帰国すると援助したことが続かず終わっ. 共性・創造性などが発揮される。海外で経験を積むことは深く. てしまう。つまり,現地に根づく技術が適正技術なのである。. 人間や文化を考えるきっかけとなり,様々な苦悩を抱える患者. 生活言語に関しては患者や障害者とはいわゆる現地語を用い. に接する臨床家としての成長につながる。日本への帰国後に村. るが,しかし,アジアやアフリカ等の任国においての活動言語. おこしや町づくりの活動や災害支援活動に参加する JICA ボラ. については,英語が話され英語での文章の読解力,記述力が求. ンティア経験者も多い。「世界に笑顔を届けるシゴト」を通し. められることも多くなってきた。その一方で,カルテの保存が. て国際協力への第一歩を踏みだす理学療法士が増えることを強. なく,評価をしなかったり記載しなかったりする配属先もあ. く望んでやまない。. り,どちらの場合もボランティアは配属先での活動成果を考慮 して活動目標を定める必要がある。 活動目標を定める際には,内部環境の強み(Strengths),弱 み(Weaknesses), 外 部 環 境 の 機 会(Opportunities), 脅 威 (Threats)の 4 つのカテゴリーで分析する SWOT 分析を通し て考える方法もある。そして,ボランティアが置かれた環境で. 文 献 1) 国 際 協 力 機 構 ホ ー ム ペ ー ジ.http://www.jica.go.jp/volunteer/ outline/publication/results/(2015 年 7 月 7 日引用) 2) 障 害 保 健 福 祉 研 究 情 報 シ ス テ ム.http://www.dinf.ne.jp/doc/ japanese/intl/cbr/cbr_j.html#Chapter1(2015 年 7 月 7 日引用).
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