事例 1 下北地方森林組合 青森県
事 例
1
下北地方森林組合
下北地方森林組合
経営破綻からV字回復を実現
役割と仕事を明確にして「全員が経営者」を目指す
公的機関の請負事業の減少により一時は経営危機に見舞われたという下北地方森林組合。し かし、民有林活用の事業転換と組合改善計画を図り、見事黒字へと逆転した。経営サイクル を一層定着させ、成果を出した職員の処遇を改善しつつ、職員の気の緩みを引き締めるとい う目的の下、能力評価システム導入を図った。 ◉所在地 青森県むつ市金谷1丁目 2-32 ◉主な事業内容 除間伐を中心とした森林施業受託、森 林整備、造林等 ◉従業員数 28 名(事務管理職員 4 名、営業職員 3 名、 現場従業員 21 名〈うち現業職員7名〉) ◉組合員数 1,558 名 [事業体概要] 本州最北端の下北半島にあるむつ市・大間町・ 風間浦村・佐井村を管轄とする下北地方森林組合 は、区域面積の約87%が森林を占められている。 そのうち82%は国有林、18%が民有林である。 同組合は平成9年にむつ市森林組合、川内町森 林組合、西通地方森林組合が合併した組織だ。当 初は事業規模の合計から7億円程度の事業総収益 を予想していたが、実際は5億4千万円という厳し いスタートとなり、その後も事業量は年々減少し、 事業総収益は平成14年度には2億6千万円まで落 ち込んだ。従来からの公団・公社造林、国有林野 事業、海岸防災林事業等の請負に依存する体質か ら抜け出せず、借入金がかさみ、経営難が続いて いた。 当初17人いた職員を一時は6人まで削減し、ま た藤島文孝氏が平成17年に参事に就任して、森林 組合改善計画を実行した。民有林が伐期を迎えつ つある中、施業集約化により除間伐事業を拡大す る方向に切り替えたのだ。組合員の高齢化や後継 者不足などにより、森林を管理できない所有者が 増えていることから、森林組合が所有者に代わっ て森林の維持管理と経営を行う事業である。 「借入金の返済から預金残高が減り、新たな借 入もできない中、役職者が自ら給与・賞与をカッ トして、なりふり構わず取り組みました」と藤島 氏は振り返る。「どん底だからこそ日本一の森林 組合を目指す」「日本全国の森林組合が潰れても、 うちは潰れない」̶̶職員・現場全員が一丸となっ て、必死の改革が功を奏し、3年半で約1億2千万 円を返済できた。いよいよ守りから攻めの段階に 進むべく、平成20年度から組織改革を行った。 もっとも画期的なのは、営業企画課を設けたこ とだ。森林の所有者と話し合いながら施業の集約 化を進めるには、こまめなコミュニケーションを 取れる担当者が必要になる。そこで、営業企画課 では施業プランナーとして若年層を採用し、組合 員を回って事業の掘り起こしを行い、施業集約化 をめざした。現業職員も新たに採用し給与は月給 制に変え、高性能林業機械も導入しながら、現場 力の強化を図った。営業と現業を車の両輪として 機動力を上げる作戦に取り組み、平成20年度の 経常利益は6千6百万円、26年度には公共事業に 頼らずに過去最高の5億5千万円まで事業総収益 が達した。 その中で、「頑張っている職員にはそれなりの 待遇をしたい。皆が理解できる仕組みをつくりた い」と藤島氏は思い、能力評価システムの存在を 知り導入を決めた。 同組合では事務系職員の給与は年功序列で毎年 少しずつ上がるが、生産現場の職員については売 上や生産能率に関わらず上がるのは将来的に支障 があると考えており、基本的に能率給をとってい る。また営業職は利益を上げれば賞与などで事務 系職員以上の待遇を受けることで、いっそう意欲 も増していく。そこで給与体系を3つに分け、そ れぞれの評価基準を決めていくという方法で、 平成26年8月から11月にかけて、4回にわたりコ ンサルタントの山崎広輝氏からの助言と支援を 仰ぐこととなった。 同組合は能力評価システム導入の前から、日常 的なマネジメントシステムづくりにも取り組んで いた。 例えば営業企画課は、施業プランナーと藤島氏 との間で毎月定例会議を開いている。プランナー ごとに担当地区が決まっており、前月の訪問件数 とどう取りまとめてきたかを報告する。また今後 の活動予定などを話し合いながら、情報共有と指 導に努めている。 現業職員も月例会議の中で、各作業リーダーが、 前月の現場の生産の報告や意見を出し合うほか、 外部研修を受講した職員が学んだ内容を発表する など、互いに研鑽する職場風土をつくっている。 また施業プランナーは、毎朝藤島氏に行動予定 を告げてから仕事をスタートさせるなど、日々の 報・連・相も定着している。所有者の山林をどの ように整備するか、計画と提案をつくるのはすべ て施業プランナーの役割だ。長期委託というかた ちで山林所有者に「10年間、山を組合にすべて任 せてもらえないでしょうか」という提案もしてい く。写真も交えた具体的な計画書を作成し、所有 者に納得してもらった上で請負契約を交わし、作 業指示書・計画書を作成後、生産販売課へ引き渡 す。その後生産販売課長が各チームの作業リー ダーに月々の作業指示をしていく、という流れで ある。さらに作業結果の集計を会議で情報共有す る仕組みも実行してきた。 このように、同組合では事業運営や人づくりの 基盤ができていたので、能力評価システムのコン サルタントも「あとは最終の段階」と判断し、評 価制度は日々のマネジメントと処遇の連動を中心 に取り組むことにしていった。 同組合ではすでに評価制度は平成20年から実施 してきたのだが、組合長や他の理事は非常勤でも あり、参事1人の評価でいいのか、という問題点 があった。評価のプロセスをオープンにして、他 の課長やリーダーも評価者として意識付けをして いく必要があった。 また、評価というと通信簿をつけられるように 受け止め、職員は構えてしまいがちであるが、「皆 それぞれの役割をきちんと果たして結果を残せる 体制をつくり、処遇を改善するのが評価制度のね らいです」と藤島氏は説明する。仕事の意味や役 割を明確にし、それを日頃の仕事の場で実現して いるかを問うもので、「人を評価するのではなく、 仕事の評価」と藤島氏は強調する。 また平成20年以降は改革の成果が上がり、利益 も出てきたがゆえに、職員にも「これでいいじゃ ないか」というムードが生まれるようになった。 能力評価システムの導入は、気の緩みを引き締め る意味もあった。 「私が頑張ったからこうなったと思っている職 員もいるかもしれない。人間はどうしても、よく なってくればのぼせあがってしまう。もう一度初 心に帰り、若い職員に同じ苦労をさせる必要はな いが、われわれがここまでやってきたことを教え て、組合の伝統や社風という形で残していかなけ ればならない」(藤島氏) そこで、「破綻から再生に向けて」と銘打ち、 評価のコンセプトを次の4つのスローガンにまと めた。 ・全員が経営者! ・組合員あっての森林組合 ・付加価値を付けるものがエラい ・No.1組合になってNo.1の処遇を! (コンサルタントが助言して追加) 前述のように人事評価シートは営業、現業、事 務の3種類に分けて整備し、改良を行った(図表 1,2)。いずれも行動目標60%、成果目標40%の 比率で配分している。行動目標に関しては共通項 目と、職種別に求められる項目に分けている。共 通目標の項目は「職務姿勢」「基礎能力」「職務遂 行能力」「ビジネスマナー」の4つ。また、職種ご との行動目標は、営業は「新規開拓力」「顧客維 持力」「専門知識」を、現業は「技能・技術」「無 災害の推進」「段取りの技術」を、事務管理は「シ ステム管理力」「顧客維持力」「専門知識」を設定 した。 一方、成果目標に関しては、営業は訪問件数、 新規開拓件数、施業実施面積等、現業は施業実施 面積、搬出材積、生産性等、いずれも明確に数値 化できる目標設定とし、行動目標・成果目標の各 項目にもウエイトを設定して、自己評点・評価者 評点に係数をかけて合計点を算出する。 評価は5段階とし、5:できていた、3:ふつう、 1:できていなかった、という基準でまとめた。 また、評価ガイドラインをまとめ、5・3・1の評 価がそれぞれどのような状態を示しているのかが わかるように、文章化していった(図表2)。 評価項目の文言は藤島氏とコンサルタントの話 し合いの中で設定していった。例えば職務姿勢の 中にある「経営の参画」という項目は、「職員で ありながらも経営者としての意識を持ち、常にお 金を関連させて考えている」とあり、文章は平易 に、組合の理念に基づいた、オリジナリティあふ れる内容である。 「以前の評価シートの内容はもっと過激でした。 おそらく付いてくる職員も大変だったと思いま す」(藤島氏) 藤島氏が中心となって現業職員制度をつくった 際にも職員からは「理想を求めるレベルが高過ぎ る」という声もあったという。しかし今後は、職 員の自発性を育てることが、組織運営や制度の運 用面でも必要になるだろう。 10月にはコンサルタントから職員へ、制度に対 するヒアリングがあったが、緊張のためか、なか なか意見が上がらなかったように藤島氏には見え た。現業職員には20代の若者が4人と多く、営業 職員も20代から30代が主力として活躍している。 しかし、コンサルタントからは「参事がそういう 話し方でどんどん進めていけば、職員からそれは おかしいと言えないようになると思いますよ」と 指摘を受けたという。 「褒めながら上手にやって下さいよ、というこ とでしょう。参事の言葉は強いし、特に若い人た ちが多ければ、ただ言うことを聞くだけになって しまうと言われました」と、藤島氏にとっても気 づきが大きかったようである。 平成26年度は能力評価シートと制度づくりにあ て、27年度は試行期間として、まず経営サイクル を再度理解してもらう期間となる。評価制度を策 定した側は意図や内容は頭に入っているが、使う 側の職員が100%理解しているとはいえない。こ の1年間は実際に評価点を付けながら、修正を随 時加える予定だ。評価者の育成も課題である。 「リーダーの生産性が上がれば、全体的な数字 が上がり、チームの全員が昇給するようになる。 自分で考えて、『私はこのやり方がいいと思いま す』と言える人を育てなければならない。1人で もすごいリーダーがいれば、皆が影響を受けてい きます」(藤島氏)。処遇改善に併せて、人材育成 への好影響を能力評価システムに期待している。営業・現業・事務の3つに分けた
評価と処遇の体系づくり
日々の活動成果を
能力評価に反映させる
人の評価ではなく仕事の評価で
“のぼせあがり”を戒める
5 6事例 1 下北地方森林組合 青森県
事 例
1
下北地方森林組合
下北地方森林組合
経営破綻からV字回復を実現
役割と仕事を明確にして「全員が経営者」を目指す
公的機関の請負事業の減少により一時は経営危機に見舞われたという下北地方森林組合。し かし、民有林活用の事業転換と組合改善計画を図り、見事黒字へと逆転した。経営サイクル を一層定着させ、成果を出した職員の処遇を改善しつつ、職員の気の緩みを引き締めるとい う目的の下、能力評価システム導入を図った。 ◉所在地 青森県むつ市金谷1丁目 2-32 ◉主な事業内容 除間伐を中心とした森林施業受託、森 林整備、造林等 ◉従業員数 28 名(事務管理職員 4 名、営業職員 3 名、 現場従業員 21 名〈うち現業職員7名〉) ◉組合員数 1,558 名 [事業体概要] 本州最北端の下北半島にあるむつ市・大間町・ 風間浦村・佐井村を管轄とする下北地方森林組合 は、区域面積の約87%が森林を占められている。 そのうち82%は国有林、18%が民有林である。 同組合は平成9年にむつ市森林組合、川内町森 林組合、西通地方森林組合が合併した組織だ。当 初は事業規模の合計から7億円程度の事業総収益 を予想していたが、実際は5億4千万円という厳し いスタートとなり、その後も事業量は年々減少し、 事業総収益は平成14年度には2億6千万円まで落 ち込んだ。従来からの公団・公社造林、国有林野 事業、海岸防災林事業等の請負に依存する体質か ら抜け出せず、借入金がかさみ、経営難が続いて いた。 当初17人いた職員を一時は6人まで削減し、ま た藤島文孝氏が平成17年に参事に就任して、森林 組合改善計画を実行した。民有林が伐期を迎えつ つある中、施業集約化により除間伐事業を拡大す る方向に切り替えたのだ。組合員の高齢化や後継 者不足などにより、森林を管理できない所有者が 増えていることから、森林組合が所有者に代わっ て森林の維持管理と経営を行う事業である。 「借入金の返済から預金残高が減り、新たな借 入もできない中、役職者が自ら給与・賞与をカッ トして、なりふり構わず取り組みました」と藤島 氏は振り返る。「どん底だからこそ日本一の森林 組合を目指す」「日本全国の森林組合が潰れても、 うちは潰れない」̶̶職員・現場全員が一丸となっ て、必死の改革が功を奏し、3年半で約1億2千万 円を返済できた。いよいよ守りから攻めの段階に 進むべく、平成20年度から組織改革を行った。 もっとも画期的なのは、営業企画課を設けたこ とだ。森林の所有者と話し合いながら施業の集約 化を進めるには、こまめなコミュニケーションを 取れる担当者が必要になる。そこで、営業企画課 では施業プランナーとして若年層を採用し、組合 員を回って事業の掘り起こしを行い、施業集約化 をめざした。現業職員も新たに採用し給与は月給 制に変え、高性能林業機械も導入しながら、現場 力の強化を図った。営業と現業を車の両輪として 機動力を上げる作戦に取り組み、平成20年度の 経常利益は6千6百万円、26年度には公共事業に 頼らずに過去最高の5億5千万円まで事業総収益 が達した。 その中で、「頑張っている職員にはそれなりの 待遇をしたい。皆が理解できる仕組みをつくりた い」と藤島氏は思い、能力評価システムの存在を 知り導入を決めた。 同組合では事務系職員の給与は年功序列で毎年 少しずつ上がるが、生産現場の職員については売 上や生産能率に関わらず上がるのは将来的に支障 があると考えており、基本的に能率給をとってい る。また営業職は利益を上げれば賞与などで事務 系職員以上の待遇を受けることで、いっそう意欲 も増していく。そこで給与体系を3つに分け、そ れぞれの評価基準を決めていくという方法で、 平成26年8月から11月にかけて、4回にわたりコ ンサルタントの山崎広輝氏からの助言と支援を 仰ぐこととなった。 同組合は能力評価システム導入の前から、日常 的なマネジメントシステムづくりにも取り組んで いた。 例えば営業企画課は、施業プランナーと藤島氏 との間で毎月定例会議を開いている。プランナー ごとに担当地区が決まっており、前月の訪問件数 とどう取りまとめてきたかを報告する。また今後 の活動予定などを話し合いながら、情報共有と指 導に努めている。 現業職員も月例会議の中で、各作業リーダーが、 前月の現場の生産の報告や意見を出し合うほか、 外部研修を受講した職員が学んだ内容を発表する など、互いに研鑽する職場風土をつくっている。 また施業プランナーは、毎朝藤島氏に行動予定 を告げてから仕事をスタートさせるなど、日々の 報・連・相も定着している。所有者の山林をどの ように整備するか、計画と提案をつくるのはすべ て施業プランナーの役割だ。長期委託というかた ちで山林所有者に「10年間、山を組合にすべて任 せてもらえないでしょうか」という提案もしてい く。写真も交えた具体的な計画書を作成し、所有 者に納得してもらった上で請負契約を交わし、作 業指示書・計画書を作成後、生産販売課へ引き渡 す。その後生産販売課長が各チームの作業リー ダーに月々の作業指示をしていく、という流れで ある。さらに作業結果の集計を会議で情報共有す る仕組みも実行してきた。 このように、同組合では事業運営や人づくりの 基盤ができていたので、能力評価システムのコン サルタントも「あとは最終の段階」と判断し、評 価制度は日々のマネジメントと処遇の連動を中心 に取り組むことにしていった。 同組合ではすでに評価制度は平成20年から実施 してきたのだが、組合長や他の理事は非常勤でも あり、参事1人の評価でいいのか、という問題点 があった。評価のプロセスをオープンにして、他 の課長やリーダーも評価者として意識付けをして いく必要があった。 また、評価というと通信簿をつけられるように 受け止め、職員は構えてしまいがちであるが、「皆 それぞれの役割をきちんと果たして結果を残せる 体制をつくり、処遇を改善するのが評価制度のね らいです」と藤島氏は説明する。仕事の意味や役 割を明確にし、それを日頃の仕事の場で実現して いるかを問うもので、「人を評価するのではなく、 仕事の評価」と藤島氏は強調する。 また平成20年以降は改革の成果が上がり、利益 も出てきたがゆえに、職員にも「これでいいじゃ ないか」というムードが生まれるようになった。 能力評価システムの導入は、気の緩みを引き締め る意味もあった。 「私が頑張ったからこうなったと思っている職 員もいるかもしれない。人間はどうしても、よく なってくればのぼせあがってしまう。もう一度初 心に帰り、若い職員に同じ苦労をさせる必要はな いが、われわれがここまでやってきたことを教え て、組合の伝統や社風という形で残していかなけ ればならない」(藤島氏) そこで、「破綻から再生に向けて」と銘打ち、 評価のコンセプトを次の4つのスローガンにまと めた。 ・全員が経営者! ・組合員あっての森林組合 ・付加価値を付けるものがエラい ・No.1組合になってNo.1の処遇を! (コンサルタントが助言して追加) 前述のように人事評価シートは営業、現業、事 務の3種類に分けて整備し、改良を行った(図表 1,2)。いずれも行動目標60%、成果目標40%の 比率で配分している。行動目標に関しては共通項 目と、職種別に求められる項目に分けている。共 通目標の項目は「職務姿勢」「基礎能力」「職務遂 行能力」「ビジネスマナー」の4つ。また、職種ご との行動目標は、営業は「新規開拓力」「顧客維 持力」「専門知識」を、現業は「技能・技術」「無 災害の推進」「段取りの技術」を、事務管理は「シ ステム管理力」「顧客維持力」「専門知識」を設定 した。 一方、成果目標に関しては、営業は訪問件数、 新規開拓件数、施業実施面積等、現業は施業実施 面積、搬出材積、生産性等、いずれも明確に数値 化できる目標設定とし、行動目標・成果目標の各 項目にもウエイトを設定して、自己評点・評価者 評点に係数をかけて合計点を算出する。 評価は5段階とし、5:できていた、3:ふつう、 1:できていなかった、という基準でまとめた。 また、評価ガイドラインをまとめ、5・3・1の評 価がそれぞれどのような状態を示しているのかが わかるように、文章化していった(図表2)。 評価項目の文言は藤島氏とコンサルタントの話 し合いの中で設定していった。例えば職務姿勢の 中にある「経営の参画」という項目は、「職員で ありながらも経営者としての意識を持ち、常にお 金を関連させて考えている」とあり、文章は平易 に、組合の理念に基づいた、オリジナリティあふ れる内容である。 「以前の評価シートの内容はもっと過激でした。 おそらく付いてくる職員も大変だったと思いま す」(藤島氏) 藤島氏が中心となって現業職員制度をつくった 際にも職員からは「理想を求めるレベルが高過ぎ る」という声もあったという。しかし今後は、職 員の自発性を育てることが、組織運営や制度の運 用面でも必要になるだろう。 10月にはコンサルタントから職員へ、制度に対 するヒアリングがあったが、緊張のためか、なか なか意見が上がらなかったように藤島氏には見え た。現業職員には20代の若者が4人と多く、営業 職員も20代から30代が主力として活躍している。 しかし、コンサルタントからは「参事がそういう 話し方でどんどん進めていけば、職員からそれは おかしいと言えないようになると思いますよ」と 指摘を受けたという。 「褒めながら上手にやって下さいよ、というこ とでしょう。参事の言葉は強いし、特に若い人た ちが多ければ、ただ言うことを聞くだけになって しまうと言われました」と、藤島氏にとっても気 づきが大きかったようである。 平成26年度は能力評価シートと制度づくりにあ て、27年度は試行期間として、まず経営サイクル を再度理解してもらう期間となる。評価制度を策 定した側は意図や内容は頭に入っているが、使う 側の職員が100%理解しているとはいえない。こ の1年間は実際に評価点を付けながら、修正を随 時加える予定だ。評価者の育成も課題である。 「リーダーの生産性が上がれば、全体的な数字 が上がり、チームの全員が昇給するようになる。 自分で考えて、『私はこのやり方がいいと思いま す』と言える人を育てなければならない。1人で もすごいリーダーがいれば、皆が影響を受けてい きます」(藤島氏)。処遇改善に併せて、人材育成 への好影響を能力評価システムに期待している。営業・現業・事務の3つに分けた
評価と処遇の体系づくり
日々の活動成果を
能力評価に反映させる
人の評価ではなく仕事の評価で
“のぼせあがり”を戒める
事例 1 下北地方森林組合 青森県事 例
1
下北地方森林組合
下北地方森林組合
経営破綻からV字回復を実現
役割と仕事を明確にして「全員が経営者」を目指す
公的機関の請負事業の減少により一時は経営危機に見舞われたという下北地方森林組合。し かし、民有林活用の事業転換と組合改善計画を図り、見事黒字へと逆転した。経営サイクル を一層定着させ、成果を出した職員の処遇を改善しつつ、職員の気の緩みを引き締めるとい う目的の下、能力評価システム導入を図った。 ◉所在地 青森県むつ市金谷1丁目 2-32 ◉主な事業内容 除間伐を中心とした森林施業受託、森 林整備、造林等 ◉従業員数 28 名(事務管理職員 4 名、営業職員 3 名、 現場従業員 21 名〈うち現業職員7名〉) ◉組合員数 1,558 名 [事業体概要] 本州最北端の下北半島にあるむつ市・大間町・ 風間浦村・佐井村を管轄とする下北地方森林組合 は、区域面積の約87%が森林を占められている。 そのうち82%は国有林、18%が民有林である。 同組合は平成9年にむつ市森林組合、川内町森 林組合、西通地方森林組合が合併した組織だ。当 初は事業規模の合計から7億円程度の事業総収益 を予想していたが、実際は5億4千万円という厳し いスタートとなり、その後も事業量は年々減少し、 事業総収益は平成14年度には2億6千万円まで落 ち込んだ。従来からの公団・公社造林、国有林野 事業、海岸防災林事業等の請負に依存する体質か ら抜け出せず、借入金がかさみ、経営難が続いて いた。 当初17人いた職員を一時は6人まで削減し、ま た藤島文孝氏が平成17年に参事に就任して、森林 組合改善計画を実行した。民有林が伐期を迎えつ つある中、施業集約化により除間伐事業を拡大す る方向に切り替えたのだ。組合員の高齢化や後継 者不足などにより、森林を管理できない所有者が 増えていることから、森林組合が所有者に代わっ て森林の維持管理と経営を行う事業である。 「借入金の返済から預金残高が減り、新たな借 入もできない中、役職者が自ら給与・賞与をカッ トして、なりふり構わず取り組みました」と藤島 氏は振り返る。「どん底だからこそ日本一の森林 組合を目指す」「日本全国の森林組合が潰れても、 うちは潰れない」̶̶職員・現場全員が一丸となっ て、必死の改革が功を奏し、3年半で約1億2千万 円を返済できた。いよいよ守りから攻めの段階に 進むべく、平成20年度から組織改革を行った。 もっとも画期的なのは、営業企画課を設けたこ とだ。森林の所有者と話し合いながら施業の集約 化を進めるには、こまめなコミュニケーションを 取れる担当者が必要になる。そこで、営業企画課 では施業プランナーとして若年層を採用し、組合 員を回って事業の掘り起こしを行い、施業集約化 をめざした。現業職員も新たに採用し給与は月給 制に変え、高性能林業機械も導入しながら、現場 力の強化を図った。営業と現業を車の両輪として 機動力を上げる作戦に取り組み、平成20年度の 経常利益は6千6百万円、26年度には公共事業に 頼らずに過去最高の5億5千万円まで事業総収益 が達した。 その中で、「頑張っている職員にはそれなりの 待遇をしたい。皆が理解できる仕組みをつくりた い」と藤島氏は思い、能力評価システムの存在を 知り導入を決めた。 同組合では事務系職員の給与は年功序列で毎年 少しずつ上がるが、生産現場の職員については売 上や生産能率に関わらず上がるのは将来的に支障 があると考えており、基本的に能率給をとってい る。また営業職は利益を上げれば賞与などで事務 系職員以上の待遇を受けることで、いっそう意欲 も増していく。そこで給与体系を3つに分け、そ れぞれの評価基準を決めていくという方法で、 平成26年8月から11月にかけて、4回にわたりコ ンサルタントの山崎広輝氏からの助言と支援を 仰ぐこととなった。 同組合は能力評価システム導入の前から、日常 的なマネジメントシステムづくりにも取り組んで いた。 例えば営業企画課は、施業プランナーと藤島氏 との間で毎月定例会議を開いている。プランナー ごとに担当地区が決まっており、前月の訪問件数 とどう取りまとめてきたかを報告する。また今後 の活動予定などを話し合いながら、情報共有と指 導に努めている。 現業職員も月例会議の中で、各作業リーダーが、 前月の現場の生産の報告や意見を出し合うほか、 外部研修を受講した職員が学んだ内容を発表する など、互いに研鑽する職場風土をつくっている。 また施業プランナーは、毎朝藤島氏に行動予定 を告げてから仕事をスタートさせるなど、日々の 報・連・相も定着している。所有者の山林をどの ように整備するか、計画と提案をつくるのはすべ て施業プランナーの役割だ。長期委託というかた ちで山林所有者に「10年間、山を組合にすべて任 せてもらえないでしょうか」という提案もしてい く。写真も交えた具体的な計画書を作成し、所有 者に納得してもらった上で請負契約を交わし、作 業指示書・計画書を作成後、生産販売課へ引き渡 す。その後生産販売課長が各チームの作業リー ダーに月々の作業指示をしていく、という流れで ある。さらに作業結果の集計を会議で情報共有す る仕組みも実行してきた。 このように、同組合では事業運営や人づくりの 基盤ができていたので、能力評価システムのコン サルタントも「あとは最終の段階」と判断し、評 価制度は日々のマネジメントと処遇の連動を中心 に取り組むことにしていった。 同組合ではすでに評価制度は平成20年から実施 してきたのだが、組合長や他の理事は非常勤でも あり、参事1人の評価でいいのか、という問題点 があった。評価のプロセスをオープンにして、他 の課長やリーダーも評価者として意識付けをして いく必要があった。 また、評価というと通信簿をつけられるように 受け止め、職員は構えてしまいがちであるが、「皆 それぞれの役割をきちんと果たして結果を残せる 体制をつくり、処遇を改善するのが評価制度のね らいです」と藤島氏は説明する。仕事の意味や役 割を明確にし、それを日頃の仕事の場で実現して いるかを問うもので、「人を評価するのではなく、 仕事の評価」と藤島氏は強調する。 また平成20年以降は改革の成果が上がり、利益 も出てきたがゆえに、職員にも「これでいいじゃ ないか」というムードが生まれるようになった。 能力評価システムの導入は、気の緩みを引き締め る意味もあった。 「私が頑張ったからこうなったと思っている職 員もいるかもしれない。人間はどうしても、よく なってくればのぼせあがってしまう。もう一度初 心に帰り、若い職員に同じ苦労をさせる必要はな いが、われわれがここまでやってきたことを教え て、組合の伝統や社風という形で残していかなけ ればならない」(藤島氏) そこで、「破綻から再生に向けて」と銘打ち、 評価のコンセプトを次の4つのスローガンにまと めた。 ・全員が経営者! ・組合員あっての森林組合 ・付加価値を付けるものがエラい ・No.1組合になってNo.1の処遇を! (コンサルタントが助言して追加) 前述のように人事評価シートは営業、現業、事 務の3種類に分けて整備し、改良を行った(図表 1,2)。いずれも行動目標60%、成果目標40%の 比率で配分している。行動目標に関しては共通項 目と、職種別に求められる項目に分けている。共 通目標の項目は「職務姿勢」「基礎能力」「職務遂 行能力」「ビジネスマナー」の4つ。また、職種ご との行動目標は、営業は「新規開拓力」「顧客維 持力」「専門知識」を、現業は「技能・技術」「無 災害の推進」「段取りの技術」を、事務管理は「シ ステム管理力」「顧客維持力」「専門知識」を設定 した。 一方、成果目標に関しては、営業は訪問件数、 新規開拓件数、施業実施面積等、現業は施業実施 面積、搬出材積、生産性等、いずれも明確に数値 化できる目標設定とし、行動目標・成果目標の各 項目にもウエイトを設定して、自己評点・評価者 評点に係数をかけて合計点を算出する。 評価は5段階とし、5:できていた、3:ふつう、 1:できていなかった、という基準でまとめた。 また、評価ガイドラインをまとめ、5・3・1の評 価がそれぞれどのような状態を示しているのかが わかるように、文章化していった(図表2)。 評価項目の文言は藤島氏とコンサルタントの話 し合いの中で設定していった。例えば職務姿勢の 中にある「経営の参画」という項目は、「職員で ありながらも経営者としての意識を持ち、常にお 金を関連させて考えている」とあり、文章は平易 に、組合の理念に基づいた、オリジナリティあふ れる内容である。 「以前の評価シートの内容はもっと過激でした。 おそらく付いてくる職員も大変だったと思いま す」(藤島氏) 藤島氏が中心となって現業職員制度をつくった 際にも職員からは「理想を求めるレベルが高過ぎ る」という声もあったという。しかし今後は、職 員の自発性を育てることが、組織運営や制度の運 用面でも必要になるだろう。 10月にはコンサルタントから職員へ、制度に対 するヒアリングがあったが、緊張のためか、なか なか意見が上がらなかったように藤島氏には見え た。現業職員には20代の若者が4人と多く、営業 職員も20代から30代が主力として活躍している。 しかし、コンサルタントからは「参事がそういう 話し方でどんどん進めていけば、職員からそれは おかしいと言えないようになると思いますよ」と 指摘を受けたという。 「褒めながら上手にやって下さいよ、というこ とでしょう。参事の言葉は強いし、特に若い人た ちが多ければ、ただ言うことを聞くだけになって しまうと言われました」と、藤島氏にとっても気 づきが大きかったようである。 平成26年度は能力評価シートと制度づくりにあ て、27年度は試行期間として、まず経営サイクル を再度理解してもらう期間となる。評価制度を策 定した側は意図や内容は頭に入っているが、使う 側の職員が100%理解しているとはいえない。こ の1年間は実際に評価点を付けながら、修正を随 時加える予定だ。評価者の育成も課題である。 「リーダーの生産性が上がれば、全体的な数字 が上がり、チームの全員が昇給するようになる。 自分で考えて、『私はこのやり方がいいと思いま す』と言える人を育てなければならない。1人で もすごいリーダーがいれば、皆が影響を受けてい きます」(藤島氏)。処遇改善に併せて、人材育成 への好影響を能力評価システムに期待している。営業・現業・事務の3つに分けた
評価と処遇の体系づくり
日々の活動成果を
能力評価に反映させる
人の評価ではなく仕事の評価で
“のぼせあがり”を戒める
事例 1 下北地方森林組合 青森県 本州最北端の下北半島にあるむつ市・大間町・ 風間浦村・佐井村を管轄とする下北地方森林組合 は、区域面積の約87%が森林を占められている。 そのうち82%は国有林、18%が民有林である。 同組合は平成9年にむつ市森林組合、川内町森 林組合、西通地方森林組合が合併した組織だ。当 初は事業規模の合計から7億円程度の事業総収益 を予想していたが、実際は5億4千万円という厳し いスタートとなり、その後も事業量は年々減少し、 事業総収益は平成14年度には2億6千万円まで落 ち込んだ。従来からの公団・公社造林、国有林野 事業、海岸防災林事業等の請負に依存する体質か ら抜け出せず、借入金がかさみ、経営難が続いて いた。 当初17人いた職員を一時は6人まで削減し、ま た藤島文孝氏が平成17年に参事に就任して、森林 組合改善計画を実行した。民有林が伐期を迎えつ つある中、施業集約化により除間伐事業を拡大す る方向に切り替えたのだ。組合員の高齢化や後継 者不足などにより、森林を管理できない所有者が 増えていることから、森林組合が所有者に代わっ て森林の維持管理と経営を行う事業である。 「借入金の返済から預金残高が減り、新たな借 入もできない中、役職者が自ら給与・賞与をカッ トして、なりふり構わず取り組みました」と藤島 氏は振り返る。「どん底だからこそ日本一の森林 組合を目指す」「日本全国の森林組合が潰れても、 うちは潰れない」̶̶職員・現場全員が一丸となっ て、必死の改革が功を奏し、3年半で約1億2千万 円を返済できた。いよいよ守りから攻めの段階に 進むべく、平成20年度から組織改革を行った。 もっとも画期的なのは、営業企画課を設けたこ とだ。森林の所有者と話し合いながら施業の集約 化を進めるには、こまめなコミュニケーションを 取れる担当者が必要になる。そこで、営業企画課 では施業プランナーとして若年層を採用し、組合 員を回って事業の掘り起こしを行い、施業集約化 をめざした。現業職員も新たに採用し給与は月給 制に変え、高性能林業機械も導入しながら、現場 力の強化を図った。営業と現業を車の両輪として 機動力を上げる作戦に取り組み、平成20年度の 経常利益は6千6百万円、26年度には公共事業に 頼らずに過去最高の5億5千万円まで事業総収益 が達した。 その中で、「頑張っている職員にはそれなりの 待遇をしたい。皆が理解できる仕組みをつくりた い」と藤島氏は思い、能力評価システムの存在を 知り導入を決めた。 同組合では事務系職員の給与は年功序列で毎年 少しずつ上がるが、生産現場の職員については売 上や生産能率に関わらず上がるのは将来的に支障 があると考えており、基本的に能率給をとってい る。また営業職は利益を上げれば賞与などで事務 系職員以上の待遇を受けることで、いっそう意欲 も増していく。そこで給与体系を3つに分け、そ れぞれの評価基準を決めていくという方法で、 平成26年8月から11月にかけて、4回にわたりコ ンサルタントの山崎広輝氏からの助言と支援を 仰ぐこととなった。 同組合は能力評価システム導入の前から、日常 的なマネジメントシステムづくりにも取り組んで いた。 例えば営業企画課は、施業プランナーと藤島氏 との間で毎月定例会議を開いている。プランナー ごとに担当地区が決まっており、前月の訪問件数 とどう取りまとめてきたかを報告する。また今後 の活動予定などを話し合いながら、情報共有と指 導に努めている。 現業職員も月例会議の中で、各作業リーダーが、 前月の現場の生産の報告や意見を出し合うほか、 外部研修を受講した職員が学んだ内容を発表する など、互いに研鑽する職場風土をつくっている。 また施業プランナーは、毎朝藤島氏に行動予定 を告げてから仕事をスタートさせるなど、日々の 報・連・相も定着している。所有者の山林をどの ように整備するか、計画と提案をつくるのはすべ て施業プランナーの役割だ。長期委託というかた ちで山林所有者に「10年間、山を組合にすべて任 せてもらえないでしょうか」という提案もしてい く。写真も交えた具体的な計画書を作成し、所有 者に納得してもらった上で請負契約を交わし、作 業指示書・計画書を作成後、生産販売課へ引き渡 す。その後生産販売課長が各チームの作業リー ダーに月々の作業指示をしていく、という流れで ある。さらに作業結果の集計を会議で情報共有す る仕組みも実行してきた。 このように、同組合では事業運営や人づくりの 基盤ができていたので、能力評価システムのコン サルタントも「あとは最終の段階」と判断し、評 価制度は日々のマネジメントと処遇の連動を中心 に取り組むことにしていった。 同組合ではすでに評価制度は平成20年から実施 してきたのだが、組合長や他の理事は非常勤でも あり、参事1人の評価でいいのか、という問題点 があった。評価のプロセスをオープンにして、他 の課長やリーダーも評価者として意識付けをして いく必要があった。 また、評価というと通信簿をつけられるように 受け止め、職員は構えてしまいがちであるが、「皆 それぞれの役割をきちんと果たして結果を残せる 体制をつくり、処遇を改善するのが評価制度のね らいです」と藤島氏は説明する。仕事の意味や役 割を明確にし、それを日頃の仕事の場で実現して いるかを問うもので、「人を評価するのではなく、 仕事の評価」と藤島氏は強調する。 また平成20年以降は改革の成果が上がり、利益 も出てきたがゆえに、職員にも「これでいいじゃ ないか」というムードが生まれるようになった。 能力評価システムの導入は、気の緩みを引き締め る意味もあった。 「私が頑張ったからこうなったと思っている職 員もいるかもしれない。人間はどうしても、よく なってくればのぼせあがってしまう。もう一度初 心に帰り、若い職員に同じ苦労をさせる必要はな いが、われわれがここまでやってきたことを教え て、組合の伝統や社風という形で残していかなけ ればならない」(藤島氏) そこで、「破綻から再生に向けて」と銘打ち、 評価のコンセプトを次の4つのスローガンにまと めた。 ・全員が経営者! ・組合員あっての森林組合 ・付加価値を付けるものがエラい ・No.1組合になってNo.1の処遇を! (コンサルタントが助言して追加) 前述のように人事評価シートは営業、現業、事 務の3種類に分けて整備し、改良を行った(図表 1,2)。いずれも行動目標60%、成果目標40%の 比率で配分している。行動目標に関しては共通項 目と、職種別に求められる項目に分けている。共 通目標の項目は「職務姿勢」「基礎能力」「職務遂 行能力」「ビジネスマナー」の4つ。また、職種ご との行動目標は、営業は「新規開拓力」「顧客維 持力」「専門知識」を、現業は「技能・技術」「無 災害の推進」「段取りの技術」を、事務管理は「シ ステム管理力」「顧客維持力」「専門知識」を設定 した。 一方、成果目標に関しては、営業は訪問件数、 新規開拓件数、施業実施面積等、現業は施業実施 面積、搬出材積、生産性等、いずれも明確に数値 化できる目標設定とし、行動目標・成果目標の各 項目にもウエイトを設定して、自己評点・評価者 評点に係数をかけて合計点を算出する。 評価は5段階とし、5:できていた、3:ふつう、 1:できていなかった、という基準でまとめた。 また、評価ガイドラインをまとめ、5・3・1の評 価がそれぞれどのような状態を示しているのかが わかるように、文章化していった(図表2)。 評価項目の文言は藤島氏とコンサルタントの話 し合いの中で設定していった。例えば職務姿勢の 中にある「経営の参画」という項目は、「職員で ありながらも経営者としての意識を持ち、常にお 金を関連させて考えている」とあり、文章は平易 に、組合の理念に基づいた、オリジナリティあふ れる内容である。 「以前の評価シートの内容はもっと過激でした。 おそらく付いてくる職員も大変だったと思いま す」(藤島氏) 藤島氏が中心となって現業職員制度をつくった 際にも職員からは「理想を求めるレベルが高過ぎ る」という声もあったという。しかし今後は、職 員の自発性を育てることが、組織運営や制度の運 用面でも必要になるだろう。 10月にはコンサルタントから職員へ、制度に対 するヒアリングがあったが、緊張のためか、なか なか意見が上がらなかったように藤島氏には見え た。現業職員には20代の若者が4人と多く、営業 職員も20代から30代が主力として活躍している。 しかし、コンサルタントからは「参事がそういう 話し方でどんどん進めていけば、職員からそれは おかしいと言えないようになると思いますよ」と 指摘を受けたという。 「褒めながら上手にやって下さいよ、というこ とでしょう。参事の言葉は強いし、特に若い人た ちが多ければ、ただ言うことを聞くだけになって しまうと言われました」と、藤島氏にとっても気 づきが大きかったようである。 平成26年度は能力評価シートと制度づくりにあ て、27年度は試行期間として、まず経営サイクル を再度理解してもらう期間となる。評価制度を策 定した側は意図や内容は頭に入っているが、使う 側の職員が100%理解しているとはいえない。こ の1年間は実際に評価点を付けながら、修正を随 時加える予定だ。評価者の育成も課題である。 「リーダーの生産性が上がれば、全体的な数字 が上がり、チームの全員が昇給するようになる。 自分で考えて、『私はこのやり方がいいと思いま す』と言える人を育てなければならない。1人で もすごいリーダーがいれば、皆が影響を受けてい きます」(藤島氏)。処遇改善に併せて、人材育成 への好影響を能力評価システムに期待している。