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実践事例報告 報文 歯科病院における栄養 食事指導のニーズ調査と指導効果の検証 小城明子 *1 *2 戸原玄 *1 神奈川歯科大学生体機能学講座生理学分野 *2 日本大学歯学部摂食機能療法学講座 Necessity of Dietetic Education on Dental Patients A

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目 的

 歯科を受診する患者の中には、術後、あるいは老 化や、さまざまな障害により摂食機能が一時的ある いは経時的に低下し、適切な指導を行わなければ低 栄養を招きかねない者が存在する。低栄養は、患者 の QOL の低下のみならず、治療成績への悪影響も 考えられ、医療現場では放置できない問題であ る1,2)。歯科外来における栄養・食事指導は、医療保 険制度において特別に報酬を得ることができないこ とから、一般的に、これまであまり重要視されてい なかった。病棟患者は、管理栄養士による食事療法 や栄養・食事指導を受けることが可能であるのに対 し、退院後の患者を含む外来患者は、歯科医師や歯 科衛生士、看護師などによりアドバイスを受けるこ とはできるが3)、病棟患者のように専門的な栄養指 導を受ける機会はあまり多くはない。そのため、歯 科外来を受診する摂食・嚥下障害患者の食事や栄養 の問題について明確に整理された情報はない。ま た、適切な指導方法についても、検討されてきてい

歯科病院における栄養・食事指導の

ニーズ調査と指導効果の検証

小城明子*1、戸原 玄*2 *1神奈川歯科大学生体機能学講座生理学分野、*2日本大学歯学部摂食機能療法学講座

実践事例報告

要旨:歯科患者の実態と栄養・食事指導のニーズを調査することを目的に、東京医科歯科大学歯学部附属病 院摂食リハビリテーション外来受診者を対象に、食事摂取に関する問題や不安、必要としている情報を、質 問票を用いて調査した。また、質問票の回答から栄養状態のスクリーニングも行った。BMI 値では「ふつ う」の範囲の者が 86.7% であったものの、ペースト状あるいは液状の副食を継続的に食べている者が 46.7% と多く、軽度の低栄養リスクを有する者が半数以上を占めていた。食事や栄養に対しての不安は全 般的に高くはなかったが、ペースト状あるいは液状の食事を長期間摂取している者では、不安が高い傾向が 見られた。具体的に困っていることとしては、おかずのレパートリーに関するものが多く、バランスの良い 栄養摂取のためには継続的な指導が必要と考えられた。  また、歯科における栄養士のニーズを把握し、歯科における栄養士の位置づけを確立する方策を検討する 目的で、歯科医療職を対象に、栄養士に期待する業務についてアンケート調査を行った。病棟や外来などの 場にかかわらず、患者の口腔状態・摂食機能などの状態に応じた食形態について、歯科医師との連携により 検討し、患者に指導することが期待されていた。それらについて、栄養士が応えられるだけの知識・技術を 身につけること、そして実践することで、歯科において栄養士に何ができるかをアピールしていくことが重 要であると考える。 キーワード:栄養・食事指導,歯科医院,摂食・嚥下障害 平成 19 年度栄養指導等に関する研究助成事業の報告 受理日:平成 20 年 4 月 7 日、採択日:平成 20 年 5 月 16 日 連絡責任者:小城明子 〒238─8580 横須賀市稲岡町 82 神奈川歯科大学生体機能学講座生理学分野 TEL:046─822─9442 FAX:046─822─9522 E-mail:akojo@kdcnet.ac.jp

Akiko Kojo*1, Haruka Tohara*2

*1Department of Physiology and Neuroscience, Kanagawa Dental College *2Nihon University School of Dentistry Dysphagia Rehabilitation

Necessity of Dietetic Education on Dental Patients

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ない。  近年、歯科大系病院において、患者からのニーズ を受けて栄養歯科外来が立ち上げられ、口腔のさま ざまな理由により摂食が困難となっている患者の栄 養管理やアドバイスが“歯科医師”によって行われ 始めている4)。医師が不在の歯科病院や診療所で、 栄養士業務に対して算定可能な診療報酬は、入院時 食事療養費および栄養管理実施加算のみで、歯科外 来に管理栄養士を配置した場合に得られる報酬は皆 無である。そのため、歯科外来に管理栄養士が配置 されるケースはほとんどない。栄養士の養成課程に おいても、歯科患者の実態や指導のポイントについ て大きく取り上げられることはまれであり、歯科に おける食事指導は齲蝕に関するものにとどまってい る。そのため、歯科において食事指導を行っている 栄養士は、情報源が少なく、各々で悩みを抱えてい るのが現状である。  そこで、本研究では、まず、歯科における栄養・ 食事指導の一助となるよう、指導のニーズを調査 し、患者の実態と指導のポイントを整理することを 目的とした。さらに、指導の効果を検証すると同時 に、歯科医師をはじめとする他の医療職からみた栄 養士のニーズも調査し、歯科における栄養士の位置 づけを確かなものにする方策についても検討した。

方 法

◆◆1 栄養・食事指導に関するニーズ調査およ び指導効果の検証  2007 年 6 月から 12 月の間に、摂食に関する問題 を主訴として東京医科歯科大学歯学部附属病院摂食 リハビリテーション外来にて初めて受診した患者の うち、経口摂取している者の中から同意を得られた 者を対象に、図 1 に示した質問票を用い、食事摂取 に関する本人の将来的な希望とその時点における問 題や不安、必要としている情報を調査した。また、 質問票の回答から、図 2 で示した指標により栄養状 図 1 質問票(初診時用)

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態のスクリーニングも行い、その結果と質問票の回 答内容から指導目標を定め、栄養・食事指導を行っ た。期間中、再診のあった者は、図 3 に示した質問 票を用い、初診時からの変化を調査した。なお、本 調査は、東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会の 審査を受け、承認を得た上で実施した。 ◆◆2 栄養士の役割に関する調査  歯科病院・診療所における栄養士の業務につい て、歯科医師および看護師、歯科衛生士が栄養士に 期待する事項について、図 4 に示したアンケート用 紙を用いて調査を行った。対象は歯科医師 100 名、 歯科衛生士 10 名、歯科勤務の看護師 30 名とした。 歯科医師は、日本摂食・嚥下リハビリテーション学 会(以下「摂食・嚥下リハ学会」とする)に所属す る者から 70 名、東京医科歯科大学卒後 10 年の者で 摂食・嚥下リハ学会に所属していない者から 30 名を 無作為抽出した。また、歯科衛生士は摂食・嚥下リ ハ学会に所属する者から 10 名を無作為抽出した。 看護師については、東京医科歯科大学歯学部附属病 院勤務者のうち「摂食・嚥下障害患者に対するケア・ リハビリについて」の院内重点課題別研修を受講し た者 30 名とした。

結 果

◆◆1 栄養・食事指導に関するニーズ調査およ び指導効果の検証  対象者は男性 10 名、女性 5 名の計 15 名(平均 66.9±10.3 歳)であった。原疾患の内訳を表 1 に 示した。表 1 のとおり、10 名が口腔外科における 腫瘍切除後の患者であった。腫瘍部位は舌(9 名) および口底(1 名)であったが、いずれも多少にか かわらず舌を切除しており(部分切除亜全摘)、食 べ物の送りこみを含め、摂食・嚥下に困難を呈する 患者であった。神経変性疾患の患者は 3 名(パーキ ンソン病、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症 図 2 栄養状態アセスメントシート 図 3 質問票(再診時用)

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が各 1 名)であり、全員、嚥下機能悪化による主治 医からの検査依頼で受診していた。その他、脳出血 後遺症の麻痺およびシェーグレン症候群による口腔 乾燥に伴う嚥下困難が主訴で受診した者がそれぞれ 1 名いた。  初診時点での体格指数(BodyMassIndex;BMI 値)の平均は 20.6±1.7 であった。分布を表 2 に示 した。18.5 未満の「やせ」の者 2 名(13.3%)を 除き、全員が「ふつう」の範囲であった。質問票記 入時の栄養摂取方法を表 3、4 に示した。主食は全粥 を摂取している者が最も多かったが、副食は多岐に わたっていた。補助食として濃厚流動食を摂取して いる者は 2 名いた。また、水分摂取の際に、液体へ のとろみ付けが必須の者が 7 名いた。なお、その食 形態の継続期間は、「1 カ月以内」が 11 名と最も多 く、「半年以内」が 3 名、「1 年以上」が 1 名であっ た。  栄養状態スクリーニング結果を表 5 に示した。良 好の者は 5 名(33.3%)のみであり、低栄養リスク 図 4 歯科における栄養士の役割に関するアンケ ート用紙 表 1 対象者の原疾患 (人) 原疾患 人数 腫 瘍 切 除 10 神 経 変 性 疾 患 3 脳 血 管 障 害 後 遺 症 1 自 己 免 疫 疾 患 1  n=15 (名) BMI 値 人数 18.5 未満 2 18.5 以上 22 未満 10 22 以上 25 未満 3  n=15 対象者の初診時 BMI 値 表 2 表 4 摂取していた形態と検査により推奨された 形態への変化(副食) (名) 検査前の副食形態 人数 検査により推奨された形態 up 維持 down 常 食 ~ 小 さ め 1 0 1 0 小 さ め 3 0 3 0 小さめ・軟らかめ 1 1 0 0 小 さ め・ 軟 ら か め ~ペースト状 3 1 1 1 ペ ー ス ト 状 4 1 3 0 ペースト状~液状 1 0 1 0 液 状 2 0 2 0  n=15 表 3 摂取していた形態と検査により推奨された 形態への変化(主食) (名) 検査前の主 食形態* 人数 検査により推奨された形態 up 維持 down ご は ん 1 0 1 0 軟 飯 1 1 0 0 全 粥 12 5 4 3 粥ミキサー 1 0 1 0  n=15 *重複回答があった場合は、ごはんにより近い形態に含めた。

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あるいは脱水リスクを有する者が多く見られた。自 覚症状として、便秘(4 名)、味覚異常(3 名)、食 欲不振(2 名)、口の中の痛み(1 名)が挙げられ た。 表 5 初診時栄養状態のス クリーニング結果 (名) スクリーニング結果 人数 栄 養 状 態 良 好 5 低栄養リスク(低) 8 低栄養リスク(高) 2 脱 水 リ ス ク 2  n=15  食事の準備、食べている食事の量や内容、形態、 栄養状態についての不安の有無は図 5 のとおりであ った。いずれの項目も、「全く不安でない」、「あま り不安でない」が多くを占めた。これらの項目の 他、食事や栄養について具体的に困っていることと して、おかずのレパートリーが増えないことに関す るものが多く、栄養のバランスを保つためのレパー トリーの簡単な増やし方や具体的な調理工夫が挙げ られた。この他、食後すぐに空腹感を感じるなどの 相談もあった。今後の希望や目標には 6 名の回答が あり、「普通食の摂取」(4 名)や「粒のあるものの 摂取」(1 名)、「とろみ付けなく水分摂取」(1 名) が挙げられた。  再診のあった者で、再診時用の質問票(図 3)へ の回答が得られたのは、1 名のみであった。それら の変化を図 6 に示した。この対象者は、腫瘍切除に よる摂食・嚥下障害患者であったが、3 回の受診の 間に食形態がアップし、主食は全粥から軟飯、副食 はペースト状から常食~軟らかめ、液体へのとろみ 付けは解除となった。BMI 値は 20.8 から 21.6 と なっており、3 回目の受診時には低栄養リスクも解 除された。不安度の軽減との関与が考えられた。 食事の準備 食べてい る量 食べてい る内容 食べてい る形態 栄養状態 :どちらともいえない、 :やや不安 :とても不安 :全く不安でない、 :あまり不安でない 4 6 6 7 5 2 2 2 4 5 4 5 3 1 1 4 2 4 3 3 1 1 n=15(グラフ中の数字は人数) 図 5 食事や栄養状態に対する不安度 準備、  量、  内容、  形態、  栄養状態 5 4 3 2 1 0 3 回目(8/24) 不安度 1 回目(6/15) 2 回目(7/6)  不安度 1:「全く不安でない」、2:「あまり不安でない」、3:「どちらともいえない」、4:「や や不安」、5:「とても不安」 図 6 食事や栄養状態に対する不安度の変化

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◆◆2 栄養士の役割に関する調査  回答は、歯科医師 64 名、歯科衛生士 2 名、看護 師 22 名から得られた。回収率は全体で 62.9% であ り、歯科医師 64.0%、歯科衛生士 20.0%、看護師 73.3% であった。それぞれの所属は表 6 の通りで あった。  歯科病棟(入院施設)で栄養士に期待する業務を 表 7 に示した。「口腔状態・摂食機能などの状態に応 じた食形態の検討(歯科医師との連携)」(81.8%) および「退院後の栄養状態の維持・改善に関する指 導」(80.7%)が多く、次いで「退院後の口腔状態・ 摂食機能など適当な食事(形態や摂食方法)の指導」 (75.0%)、「給食の献立作成」(71.6%)が挙げられ た。歯科医師と看護師において、期待する業務への 偏 り が 認 め ら れ た た め(χ2 検 定、p<0.05)、 Tukey-HSD 検定により各職種内で業務間比較した。 歯科医師では「口腔状態・摂食機能などの状態に応 じた食形態の検討(歯科医師との連携)」が有意に多 かったのに対し、看護師では「退院後の口腔状態・ 表 7 歯科病棟で栄養士に期待する業務 (名) 栄養士業務 歯科医師 (n=64) 歯科衛生士 (n=2) 看護師 (n=22) 全体(n=88) 人数 割合 ①給食の献立作成 50a,b,c 2 11a,b 63a,b,c 71.6%

②食事箋の管理(食事変更の受付など) 40b,c,d 1 11a,b 52b,c,d 59.1% ③低栄養や脱水など、栄養状態の評価・判定 39c,d 2  9a,b 50b,c,d 56.8% ④治療・回復に適切な栄養状態の管理 40b,c,d 1  6a,b 47c,d 53.4% ⑤口腔状態・摂食機能などの状態に応じた食形 態の検討(歯科医師との連携) 56a 2 14a,b 72a 81.8% ⑥口腔状態・摂食機能などの状態に応じた摂食 方法の指導 34d 0  5b 39d 44.3% ⑦退院後の栄養状態の維持・改善に関する指導 55a,b 2 14a,b 71a 80.7% ⑧退院後の口腔状態・摂食機能など適当な食事 (形態や摂食方法)の指導 49a,b,c,d 2 15a 66a,b 75.0% ⑨その他  9 0  1 10 11.4% NST/NM (2) (1) (1) 共同研究・調査 (1) 嗜好調査 (1) 食形態の調製 (1) 盛り付け指導 (1)  複数回答、a,b,c,d:各職種内の業務間において異なる文字間で有意差あり(Tukey-HSD 検定、p<0.05) 表 6 アンケート回答者の所属 (名) 所   属 歯科 医師 歯科 衛生士 看護師 大 学 病 院 46 0 22 補 綴・ 義 歯・ 顎 義 歯 科 (20) 口 腔 外 科 (9) 摂食リハビリテーション系 (5) 高齢者・障害者歯科、特殊診療科 (5) 歯 科 (2) 歯 周 病 科 (1) ス ポ ー ツ 歯 科 (1) 不 明 (3) 一 般 病 院 11 1 0 歯 科 ・ 口 腔 外 科 (5) 歯 科 (4) リ ハ ビ リ 歯 科 (2) 歯 科 診 療 所  5 1 0 行 政 機 関  2 口 腔 保 健 セ ン タ ー (1) 保 健 所 (1) 計 64 2 22

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摂食機能など適当な食事(形態や摂食方法)の指導」 が有意に多かった。また、両方において、「口腔状 態・摂食機能などの状態に応じた摂食方法の指導」 は有意に少なかった。  歯科外来(診療室)への栄養士の必要性について は、表 8 の通り、「必要」(29 名)、「どちらかとい うと必要」(35 名)が大半を占めた。「(どちらかと いうと)必要」と回答した者 64 名が栄養士に期待す る業務を表 9 にまとめた。「口腔状態・摂食機能など の状態に応じた食形態の検討(歯科医師との連携)」 (85.9%)、「日常の食事に関する相談受付」(75.0 %)が多く、「今後の口腔状態・摂食機能などに適当 な食事(形態や摂食方法)の指導」(65.6%)や「今 後の栄養状態の維持・改善に関する指導」(62.5%) と続いた。歯科医師と看護師において、期待する業 務への偏りが認められたため(χ2検定、p<0.05)、 Tukey-HSD 検定により各職種内で業務間比較した。 歯科医師では「口腔状態・摂食機能などの状態に応 じた食形態の検討(歯科医師との連携)」が有意に多 かった。看護師では「日常の食事に関する相談受 付」も前項と併せて有意に多かった。有意に少なか ったのは、両者ともに「歯科疾患予防のための栄 表 8 歯科外来への栄養士の必要性 (名) 歯科医師 歯科衛 生士 看護師 全 体 大学病院 一般病院 診療所 行政機関 人数 割合 必 要 12 3 1 2 0 11 29 33.0% どちらかというと必要 21 4 3 0 1 6 35 39.8% ど ち ら と も い え な い 7 1 1 0 1 5 15 17.0% どちらかというと必要ない 5 3 0 0 0 0 8 9.1% 必 要 な い 1 0 0 0 0 0 1 1.1%  n=88 表 9 歯科外来で栄養士に期待する業務 栄養士業務 歯科医師 (n=46) 歯科衛生士 (n=1) 看護師 (n=17) 全体(n=64) 人数 割合 ①栄養状態の評価・判定 21b 1  6a,b 28c 43.8% ②日常的な食事摂取状況の把握・評価 27a,b 1  8a,b 36b,c 56.3% ③日常の食事に関する相談受付 33a,b 1 14a 48a,b 75.0% ④口腔状態・摂食機能などの状態に応じた食形 態の検討(歯科医師との連携) 40a 1 14a 55a 85.9% ⑤口腔状態・摂食機能などの状態に応じた摂食 方法の指導 29a,b 0  7a,b 36b,c 56.3%

⑥今後の栄養状態の維持・改善に関する指導 31a,b 1  8a,b 40a,b,c 62.5%

⑦今後の口腔状態・摂食機能などに適当な食事 (形態や摂食方法)の指導

32a,b 1  9a,b 42a,b,c 65.6%

⑧歯科疾患予防のための栄養・食事指導 21b 1  4b 26c 40.6% ⑨その他  5 0  0  5  7.8% NST/NM (1) (1) 調理指導 (1) (1) スポーツ栄養 (1) (1)  複数回答、a,b,c,d:各職種内の業務間において異なる文字間で有意差あり(Tukey-HSD 検定、p<0.05)

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養・食事指導」であり、歯科医師においては「栄養 状態の評価・判定」も併せて有意に少なかった。対 象患者については、頭頸部領域の腫瘍患者やその術 後患者を含む口腔外科患者(13 名)や口腔リハビ リテーション/摂食・嚥下外来/摂食・嚥下リハビリ テーション(以下「摂食リハ」)患者(嚥下障害患 者)(10 名)、高齢者(6 名)などが挙げられた。  一方で、歯科外来(診療室)への栄養士の必要性 について「どちらともいえない」あるいは「(どち らかというと)必要ない」と回答した者の理由を表 10 に示した。理由の偏りが認められたため(χ2 定、p<0.05)、Tukey-HSD 検定により比較したと ころ、「収入につながらないから」、「栄養士の業務 内容がわからない」が有意に多かった。その他とし て、「ニーズが不明」、「歯科外来に相談スペースを 設けられない」という意見があった。また、「一部 の診療科では必要である」、「歯科医師や看護師だけ に任せておくものでもない」など、栄養士の介入に よるメリットは感じながらもデメリットとの兼ね合 いで必要性を肯定できない部分も垣間見られ、具体 的に一般病院の歯科の場合は病院栄養課へのコンサ ルテーションなど協力を求められる体制づくりを希 望する意見が複数挙げられた。この他、現時点では 必要性は「わからない」としながら、「栄養士介入 のメリットをアピールするために、まずは採算が合 わなくても導入する意味はある」との意見も出され た。

考 察

◆◆1 栄養・食事指導に関するニーズ調査およ び指導効果の検証  対象者の BMI 値は「ふつう」の範囲の者が多か ったが、「やせ」の者も 2 名いた。また、スクリー ニング結果では、ペースト状あるいは液状の副食を 継続的に食べている者が 46.7% と多く、軽度の低 栄養リスクを有する者が半数以上を占めた。脱水リ スクのある者も 2 名おり、栄養・食事指導の必要が ある者の存在が明らかとなった。  しかしながら、患者の食事の準備、食べている食 事の量や内容、形態、栄養状態に対しての不安は、 いずれの項目も「全く不安でない」、「あまり不安で ない」が多くを占めた。本研究対象者の 66.7% が 口腔外科術後の患者であり、退院後の外来フォロー の者が多く、自宅での食生活が 1 カ月以内の者が多 表 10 歯科外来に栄養士が「(どちらかというと)必要ない」・「どちらともいえない」理由 (名) 栄養士業務 歯科医師 (n=18) 歯科衛生士 (n=1) 看護師 (n=5) 全体(n=24) 人数 割合 ①歯科疾患に栄養状態は関係ないから 0 0 0 0b 0.0% ②歯科疾患に食事は関係ないから 0 0 0 0b 0.0% ③栄養士の業務内容がわからないから 5 1 0 6a 25.0% ④栄養士の業務内容は歯科医師で対応できるか ら 1 0 0 1a,b 4.2% ⑤栄養士の業務内容は歯科衛生士で対応できる から 0 0 0 0b 0.0% ⑥食事や栄養に関して、患者から相談を受けた ことがないから 2 0 0 2a,b 8.3% ⑦今まで栄養士がいなかったから 4 0 0 4a,b 16.7% ⑧収入につながらないから 7 1 0 8a 33.3% ⑨その他 2 0 0 2 8.3% 不明 0 0 5 5 20.8%  複数回答、a,b,c,d:異なる文字間で有意差あり(Tukey-HSD 検定、p<0.05)

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かった。食事や栄養状態についての不安度が低かっ たことは、このことが関与している可能性が考えら れる。実際に、原疾患が神経変性疾患で 6 カ月間継 続してペースト状あるいは液状の食事を摂取してい た者 2 名は、不安度は高い傾向にあった。また、食 事や栄養について具体的に困っていることとして、 おかずのレパートリーに関するものが多く、バラン スの良い栄養摂取のためには継続的な指導が必要と 考えられた。  なお、指導効果については、再診時にアンケート への協力が得られた者が 1 名であったために、解析 に供することができなかった。 ◆◆2 栄養士の役割に関する調査  歯科病棟(入院施設)においては、「口腔状態・摂 食機能などの状態に応じた食形態の検討(歯科医師 との連携)」が最も期待されていた。特に、歯科医 師においては、有意であった。一方で、摂食リハに 関して研修中である看護師においては、従来行われ ている「退院後の口腔状態・摂食機能など適当な食 事(形態や摂食方法)の指導」に対する期待が有意に 高かった。  歯科外来(診療室)への栄養士の必要性について は、「(どちらかというと)必要」と回答した者が 72.7% と多くを占めた。期待する業務としては、 病棟で期待する業務と同じく「口腔状態・摂食機能 などの状態に応じた食形態の検討(歯科医師との連 携)」が最も多く挙げられた。また看護師からは 「日常の食事に関する相談受付」が期待されていた。 一方で、「歯科疾患予防のための栄養・食事指導」は 期待されていなかった。  これらのことから、歯科においては、病棟や外来 などの場にかかわらず、患者の口腔状態・摂食機能 などの状態に応じた食形態について、歯科医師との 連携により検討し、患者に指導することが期待され ていることが明らかとなった。  ただし、収入につながらない、栄養士の業務内容 がわからないなどの理由から、外来への栄養士の必 要性を「どちらともいえない」あるいは「(どちら かというと)必要ない」と回答した者もいた。まず は、歯科において栄養士が期待されている業務につ いて、応えられるだけの知識・技術を身につけるこ と、そして実践することで、歯科において栄養士に 何ができるかをアピールしていくことが重要である と考える。

結 語

・本研究対象者においては、BMI 値では「ふつう」 の範囲の者が多かったものの(86.7%)、ペース ト状あるいは液状の副食を継続的に食べている者 が 46.7% と多く、軽度の低栄養リスクを有する 者が半数以上を占めていた。 ・食事の準備、食べている食事の量や内容、形態、 栄養状態に対しての不安度は全般的に高くはなか ったが、ペースト状あるいは液状の食事を 6 カ月 以上摂取している者では不安が高い傾向がみられ た。 ・食事や栄養について具体的に困っていることとし て、おかずのレパートリーに関するものが多く、 バランスの良い栄養摂取のためには継続的な指導 が必要と考えられた。 ・歯科医療職を対象とした調査から、栄養士は、病 棟や外来などの場にかかわらず、患者の口腔状 態・摂食機能などの状態に応じた食形態につい て、歯科医師との連携により検討し、患者に指導 することが期待されていた。 ・期待されている業務について、栄養士が応えられ るだけの知識・技術を身につけること、そして実 践することで、歯科において栄養士に何ができる かをアピールしていくことが重要であると考え る。

謝 辞

 本研究は、東京医科歯科大学歯学部附属病院摂食 リハビリテーション外来のスタッフの協力のもとに 遂行されたものであることを付記して、ここに謝意 を表します。

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文 献

1 )笛吹 亘,園田 茂,馬場 尊,才藤栄一:栄養管 理とリハビリテーション 栄養管理でリハビリテー ションの成果増大 脳卒中リハビリテーションと栄 養管理・指導 急性期・回復期を中心に(1),Journal of Clinical Rehabilitation,15,1080─1085(2006) 2 )笛吹 亘,園田 茂,馬場 尊,才藤栄一:栄養管 理とリハビリテーション 栄養管理でリハビリテー ションの成果増大 脳卒中リハビリテーションと栄 養管理・指導 急性期・回復期を中心に(2),Journal of Clinical Rehabilitation,15,1188─1195(2006) 3 )夏目智子,青木春恵,落海真喜枝:口腔外科外来に おける看護活動の実態と診療報酬との関連について の検討,口腔病学会雑誌,69,258─262(2002) 4 )大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部栄養歯科 外来ホームページ http://www.dent.osaka-u.ac.jp/˜ ofdord/eiyo.html,2007 年 4 月

Abstract:The present study was done to evaluate the necessity of both dietetic education for dental patients and employment of dietitian in the dental clinic. Dietary management problems for the dental patients with dysphagia and their nutritional status were surveyed by the questionnaires. As a result, 86.7% of the patients were normal when the body mass index was employed. However, about 50% of the patients had the slight risk of malnutrition caused by continuous taking paste or liquid meals. In addition, the patients who had been taking such meals for a long time, tended to feel more uneasiness at meal, so it was suggested that continuous dietary education is necessary for maintaining their normal nutritional status.  Moreover, to examine what was necessary to establish dietitianʼs work in the dental clinic, the questionnaire survey for the practice expected of the dietitian was carried out to the den-tal staffs such as dentists, nurses and denden-tal hygienists. Dietitians were expected to instruct the patients an appropriate meal according to the states of their mouth function and nutrition condition under cooperation with the dentist regardless of in- or out-patients.

 In conclusion, it is strongly suggested that dietitians should get wide knowledge and skills enough for satisfying the expectations, and that significant appeal for presence of dietitians in dental clinic to the dental staffs is crucial.

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