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小規模水面における水の蒸発メカニズム に関する基礎的実験

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(1)

小規模水面における水の蒸発メカニズム

に関する基礎的実験

FUNDAMENTAL EXPERIMENT OF EVAPORATION MECHANISM ON SMALL SCALE WATER SURFACE

加藤拓磨 1 ・中根和郎 2 ・山田正 3  

Takuma KATO, Kazurou NAKANE and Tadashi YAMADA

1正会員 工修 中央大学 理工学部土木工学科(〒112-8551 東京都文京区春日 1-13-27) 

2正会員 独立行政法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部 (〒305-0006 茨城県つくば市天王台 3 番地 1 号) 

3フェロー会員 工博 中央大学 理工学部土木工学科(〒112-8551 東京都文京区春日 1-13-27) 

 

Evapotranspiration is usually determined by the hear budget based on air temperature, surface temperature, humidity and wind speed. Observing evapotranspiration directly is impossible therefore various methods for observing evapotranspiration indirectly are proposed. This value is important for clarifying the heat environment in urban areas. However the basic mechanism of evapotranspiration is still unknown. Therefore fundamental experiment of evaporation mechanism on small scale water surface was carried out. Through this experiment the followings was obtained. 1) From the vertical profile of air current temperature, specific humidity and qSAT(T

W

)-qair water temperature decreased due to the latent heat release and the air current temperature decreased due to the sensible heat. 2) From the small scale experiment evaporation during development of boundary layer C

E

is dependent on both wind speed and qSAT(T

W

)-qair. 3) Experiment during nonsteady state the bulk equation cannot be applied. .

Key Words: Evaporation flux,Evaporation coefficient, Wind Tunnel

1.はじめに 

蒸発散量は日射・気温・湿度の気象因子,土壌・水 面等の表面が織り成す熱収支バランスによって決まる.

また蒸発散量は降水のように見ることはできず,直接 測定することができない.これまでに蒸発散量の測定 法1)は水収支法として土壌水分減少法,ライシメータ法,

微気象法として熱収支法,空気力学的方法,組み合わ せ方法,渦相関法,補完法2)などが提案されており,そ れぞれの観測法は測定時間間隔,測定精度,測定装置 の価格,測定の難易度がそれぞれ異なっており,場合 によって最適な方法を選ばなくてはならない.蒸発散 量の定量的な算出は土木,水文,気象,農業,環境さ まざまな分野においては非常に重要であり,特に近年 では熱環境問題で気化熱を利用した対策3)が多いため,

その評価を行う研究が増えている.森林・水辺の増加 による水の気化熱を誘い,熱環境を緩和させる試みが 増えてきている.風の道の議論などもあり,気化熱発

生の効率が高い都市計画を考える上で小規模スケール の蒸発の挙動を理解する必要がある. 

成田ら4)は新宿御苑にて熱収支観測,渦相関法によ り顕熱および潜熱フラックスの測定を行い,体感的に 感じる涼しさは,気温差よりも放射量の差であること を定量に示した.神田ら5) 6)は明治神宮の森,銀座オフ ィスビル街にて放射収支・熱収支を実測しボーエン比 法,渦相関法から顕熱・潜熱フラックス算定し,森林 内では正味放射量の約

7

割が蒸発潜熱に変換されてい ること,オフィス街では人工的な潜熱が存在すること を明らかにした.これらの計測は微気象スケール,そ して特に都市部においては熱源・冷源が様々入りこん でおり,渦相関法による蒸発フラックスが蒸発面から の影響のみだけではなくなっており,それぞれのもつ 潜在的なフラックス量を算定するには困難となってい る.

蒸発は水があれば至る所で起こる現象であるが海洋 ならば水が無限大にあるためポテンシャル蒸発量は安

水工学論文集,第53巻,2009年2月

(2)

定する.土壌環境を踏まえた蒸発量の算定には土壌の 乾燥などで不確実性な要素がたくさんあるためにその 算定は容易ではない.特に複雑な構造を持つ都市部に おける蒸発は小規模スケールにおける蒸発の足し合わ せとみなすことができ,その算定は困難である.そこ で本稿では蒸発の基本構造を理解するため,蒸発の問 題をシンプルにし,水面のみが存在するときの小規模 スケールでの水の蒸発の基本的な挙動・メカニズムの 解明を行った.

蒸発速度7)は蒸発面の水蒸気圧と空気の水蒸気圧の 勾配に関する拡散層の有効厚さで決まる.流入部では 拡散層が薄いため水面の水分子は空気中に蒸発しやす くなる.すなわち蒸発面先端がもっとも蒸発しやすい ため蒸発面の距離が短いほど単位面積あたりの蒸発速 度が大きいということになる.本研究ではこのような スケールにおいても一般的に使われているバルク式 8) が適応可能なのかを検証を行った.

2.実験概要   

(1)実験施設 

実験は独立行政法人防災科学技術研究所(茨城県つ くば市)内の地表面乱流実験施設の風洞で行った.図-1 に風洞の概略図,写真-1に実験の様子を示す.風洞は X 方向に全長 9m,測定部までの助走区間が 3m,測定部 は幅 1m,高さ 1m,長さ 3m で送風・冷却・加熱・加湿 機により気流の温度,湿度,風速を制御することが可 能である.本研究では気流の温度,湿度,風速の変化 による水の蒸発の挙動を捉えるため,風洞内の床に幅 1 m,長さ 3m,高さ 2cm のアクリル製のプールを敷いた.

風洞内で風を発生させると水面が波打ち,水がこぼれ るため実験条件における最大風速8m/s時にこぼれない 限界水深 1.8cm を実験水深とした.蒸発により水深が 下がらないよう実験 CASE 終了毎に水を注ぎ足した. 

 

(2)実験項目 

風洞内では気流温度,湿度,風速が空間的に異なる ため,実験項目は上流端からの距離 0cm 地点の高度 30cm 地点の値を気象条件として設定する.実験は定常 実験と非定常実験を行なわれた.表-1に実験項目を示 す.すべての定常実験は気象条件を気流温度 20℃,比 湿 8g/kg,風速 3m/s,水面の長さ 300cm を基準とし気 流温度,相対湿度,風速の気象因子の空間分布,蒸発 量を計測した.気象因子の空間分布を計測する際には この基準とした条件で計測した.蒸発量の計測では気 象条件による蒸発量の変化をみるため気流温度,湿度,

風速を変化させた.例えば,気流温度を変化させる場 合,比湿を 8g/kg,風速を 3m/s の一定とし,気流温度 を 16℃から 30℃まで 2℃ずつ制御した.ここで比湿は

設定する値に対して予め相対湿度を決めておく.水面 面積のサイズによる蒸発量の変化を計測するため,水 面をビニールシートで覆い水面の面積を広げるように X 方向に0cm,30cm と300cm まで30cm ずつ変化させた.

非定常実験では気象条件の変化に伴う蒸発量の変化を みるためにランダムに変化させた. 

 

(3)計測項目 

風洞内には X,Y,Z 方向に移動可能なトラバースがあ り,風洞内の気流温度,相対湿度,風速の空間分布を 計測でき,上流端から 25,75,125,175,225,275cm の地点で鉛直分布を水面から 8mm 間隔で計測した.プ ールの水の中に熱電対を 10 箇所に設置し,水温を計測 した.蒸発量は風洞のプール下に搭載されているライ

3m

1m 2cm

気流

水面

温湿度計,風速計 トラバース (X,Y,Z方向に稼動可) 1m

上流端0cm地点 Z

X Y

熱電対

3m

1m 2cm

気流

水面

温湿度計,風速計 トラバース (X,Y,Z方向に稼動可) 1m

上流端0cm地点 Z

X Y

熱電対

図 1  風洞実験装置外略図

写真 1  実験の様子  

表-1  実験項目

気流温度[℃] 湿度[g/kg] 風速[m/s] 水面の長さ[cm]

気象因子の

空間分布 20(一定) 8(一定) 3(一定) 300(一定)

蒸発量

(温度の変化) 16・18・20・22

・24・26・28・30 8(一定) 3(一定) 300(一定) 蒸発量

(湿度の変化) 20(一定) 6・7・8・9・10・11 3(一定) 300(一定) 蒸発量

(風速の変化) 20(一定) 8(一定) 3・4・5・6・7・8 300(一定) 蒸発量

(水面面積の変化) 20(一定) 8(一定) 3(一定) 0・30・60・90・120

・150・180・210・

240・270・300

非定常実験 蒸発量

(温度・湿度の変化) ランダム ランダム 3(一定) 300(一定)

条件制御項目

定常実験

計測項目

(3)

シメータ(分解能 0.05kg)の 1 秒インターバルの計測デ ータを 15 分間の移動平均し,算出した.定常実験では 定常状態にするために実験条件に設定した後の 2 時間 以上経過したときの計測データを使用する.

 

(4)バルク式 

本論文での理論蒸発量としてバルク式8)を用いた.

[ SAT ( ) W air ]

E U q T q

C

E = ρ −

         

(1)

ここでρ:空気密度(1.2kg/m^3),

C

E:バルク交換係 数(一様水面で

0.011)

U:風速,q

SAT:飽和比湿,

T

w:水表面温度,

q

air:比湿である.バルク理論は十分 に広く一様な地表面上で成立し,本実験においては未 成立であるが比較対象として用いた.本実験の定常実 験においては大気・水面が定常状態になるまで時間が 経過させるため,プールの水がよく混合されていると みなし水表面温度ではなく水温(水中の温度)を使用し た.本稿では以後

q

SAT

(T

w

)

q

airを乾燥度と記す.

(5)本実験の特性 

図-2に風洞内の風速分布を示す.上流端からの距離 によらず水面付近の風速は低く,100mm 以上で一様 の分布となり

300mm

以上から分布が乱れる.これは

水面から

600mm

以上の高さにライトがあり気流が乱

れるためである.このことから計測データは

300mm

付近までを使用することとする.レイノルズ数

Re

は特 性速度

U

3m/s,特性長さL

1m,動粘性係数νを 1.8×10

-5

/s(20℃の空気 )とすると 1.7×10

5である.

図-3に各上流端からの距離の風速分布とその対数近似 曲線を示す.上流端からの距離

125cm

までは対数分布 則 9)が成立するが,それより下流では流速分布が対数 分布則からはずれる.これは風洞全体の距離が十分で はないために風洞中央あたりから壁法則成分に後流則 成分が合成された流速分布になっていると考えられる 図-4に風速が主流U∞(本実験では高さ30cm付近の風

速)の

95%に達する位置で境界層厚さδ(X)を定義しプ

ロットした風速分布を示す.X とともに境界層厚さが 高くなっており,十分に発達した流れになるまでの助 走区間であることがわかる.

3.実験結果   

(1)定常状態における気流温度・比湿の鉛直分布  図-5に気流温度の鉛直分布を示す.上流端からの距 離によらず50mm以上の高度で温度が一様になっており,

それ以下の高度では流入部からの距離に応じて温度が 低くなっている.図-6に比湿の鉛直分布を示す.鉛直 分布をみると,どの地点においても水面付近の比湿が 最も高く,全体的にみれば上流端からの距離が短い地

0 100 200 300 400 500 600 700

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

風速[m/s]

水面からの高さ[mm]

上流端からの距離25cm 上流端からの距離75cm 上流端からの距離125cm 上流端からの距離175cm 上流端からの距離225cm 上流端からの距離275cm

図-2  風洞内の風速分布

25cm:y = 0.221Ln(x) + 1.9086 75cm:y = 0.3184Ln(x) + 1.5913 125cm:y = 0.431Ln(x) + 1.0052 175cm:y = 0.5376Ln(x) + 0.4897 225cm:y = 0.6396Ln(x) - 0.1745 275cm:y = 0.5831Ln(x) - 0.027 0

0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

0 20 40 60 80 100 120 140

水面からの高さ[mm]

風速[m/s]

上流端からの距離25cm 上流端からの距離75cm

上流端からの距離125cm 上流端からの距離175cm 上流端からの距離225cm 上流端からの距離275cm 対数 (上流端からの距離25cm) 対数 (上流端からの距離75cm) 対数 (上流端からの距離125cm) 対数 (上流端からの距離175cm) 対数 (上流端からの距離225cm) 対数 (上流端からの距離275cm)

図-3  各上流端からの距離の風速分布と その対数近似曲線

0 50 100 150 200 250 300

0 2 4 6 8 10 12 14

水面からの高さ[mm]

上流端からの距離25cm 上流端からの距離75cm 上流端からの距離125cm 上流端からの距離175cm 上流端からの距離225cm 上流端からの距離275cm 境界層厚さ

0

風速[m/s](上流端からの距離25cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離75cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離125cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離175cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離225cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離275cm)

2 4

0 50 100 150 200 250 300

0 2 4 6 8 10 12 14

水面からの高さ[mm]

上流端からの距離25cm 上流端からの距離75cm 上流端からの距離125cm 上流端からの距離175cm 上流端からの距離225cm 上流端からの距離275cm 境界層厚さ

0

風速[m/s](上流端からの距離25cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離75cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離125cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離175cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離225cm)

2 4

0

風速[m/s](上流端からの距離275cm)

2 4

図-4  各上流端からの距離の風速分布と 境界層厚さ

0 50 100 150 200 250 300

17.5 18 18.5 19 19.5 20

気流温度[℃]

水面の高[mm]

上流端からの距離25cm 上流端からの距離75cm 上流端からの距離125cm 上流端からの距離175cm 上流端からの距離225cm 上流端からの距離275cm

図-5  気流温度の鉛直分布

(4)

点は比湿の値が低く,下流に向かうほど値が大きい.

図-7 に乾燥度

(q

SAT

(T

w

)

q

air

)

の鉛直分布を示す.水面 付近の乾燥度は上流で高く,下流で低い.これらのこ とから流入部からの気流が水面で潜熱放出を促し,蒸 発するとともに水表面温度を低下させ,蒸発は比湿を 増加,乾燥度を低下させ,低下した水表面温度は気流 温度を低下させていると考える. 

 

(2)定常状態における気象条件の違いによる蒸発フ ラックス・水温の変化 

図-8に気流温度制御による蒸発フラックス・水温変 化を示す.ここで蒸発フラックスは「バルク式で求め た蒸発フラックス」と「実験蒸発フラックス」の 2 種 類をプロットしている.気流温度上昇とともに線形的 に理論・実験蒸発フラックスは増加する.風洞内で境 界層が成立していないこの本実験でバルク式のバルク 交換係数を一様水面での一般的な値 0.011 を使用して いるため,バルク理論と実験の値は異なるが同様の傾 向を示しており,実験蒸発フラックスはバルク理論の 蒸発速度の 2〜3.5 倍となっている.水温は気流温度上 昇とともに上昇し,気流温度が 16℃から 30℃で 14℃上 昇しているのに対して水温は 4.5℃と温度変化は小さ い.これは水面が気流と顕熱交換し水温が上昇するが,

水温上昇により

q

SAT

(T

w

)が上昇し,乾燥度(q

SAT

(T

w

)−

q

air

)が大きくなることで蒸発ポテンシャルが増加し,潜

熱が放出され水温が低下するためである.図-9に比湿 制御による蒸発速度・水温変化を示す.比湿増加とと もに乾燥度が減少し蒸発ポテンシャルが低下する.蒸 発フラックスの低下により水温は上昇する.図-10に風 速制御による蒸発フラックス・水温変化を示す.風速 増加に伴い線形的に実験・理論蒸発フラックスが上昇 する. 

 

(3)定常状態におけるバルク交換係数の変化  図-11に風速Uと乾燥度(qSAT

(T

S

)−q

air

)を乗じたもの

とバルク交換係数

C

Eの関係を示す.ここでバルク交換 係数

C

Eは本実験における小スケールの蒸発がバルク 理論に則ると仮定し,実験蒸発フラックス

E

とバルク 式から算出したものである.風速

U

と乾燥度(qSAT

(T

S

)

−qair

)を乗じたものが増加する,つまり蒸発フラックス

が増加しやすい条件になるとバルク交換係数

C

Eが増 加する.このことから本実験のような小スケールで境 界層が発達中の蒸発はバルク交換係数

C

Eが風速と乾

0 50 100 150 200 250 300

8 8.5 9 9.5 10 10.5

比湿[g/kg]

水面からの高さ[mm]

上流端からの距離25cm 上流端からの距離75cm 上流端からの距離125cm 上流端からの距離175cm 上流端からの距離225cm 上流端からの距離275cm

 

0 50 100 150 200 250 300

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

qsat(Tw)-qair[g/kg]

水面からの高さ[mm]

上流端からの距離25cm 上流端からの距離75cm 上流端からの距離125cm 上流端からの距離175cm 上流端からの距離225cm 上流端からの距離275cm

図-6  比湿の鉛直分布      図-7  乾燥度(qSAT(TW)−qair)の鉛直分布

0.E+00 1.E-02 2.E-02 3.E-02 4.E-02 5.E-02 6.E-02 7.E-02

14 16 18 20 22 24 26 28 30 32

気流温度[℃]

蒸発フラ[g/・s]

14 15 16 17 18 19 20 21

水温[℃]

蒸発フラックス(バルク式) 蒸発フラックス(実験) 水温

図-8  気流温度制御による蒸発速度・水温変化

0.E+00 1.E-02 2.E-02 3.E-02 4.E-02 5.E-02

5 6 7 8 9 10 11 12

比湿[g/kg]

蒸発フラッ[g/・s]

14 15 16 17 18 19

水温[℃]

蒸発フラックス(バルク式) 蒸発フラックス(実験) 水温

図-9  比湿制御による蒸発速度・水温変化

0.E+00 1.E-02 2.E-02 3.E-02 4.E-02 5.E-02 6.E-02 7.E-02 8.E-02 9.E-02

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

風速[m/s]

蒸発フ[g/㎡・s]

16.8 16.9 17 17.1 17.2 17.3 17.4 17.5 17.6 17.7

水温[℃]

蒸発フラックス(バルク式) 蒸発フラックス(実験) 水温

図-10 風速制御による蒸発フラックス・水温変化 

(5)

燥度に依存することがわかる.つまり大気安定度に依 存すると考えられる.

 

(4)定常状態における水面の長さの違いによる蒸発 フラックスの変化 

  図-12 に流入部からの水面の長さと蒸発フラックス の関係を示す.流入部からの水面の距離を

30cm

ずつ 拡大して蒸発面が長くなることで

1

秒あたりの蒸発量 が上昇する.図-13に水面区間と蒸発フラックスの関係  を示す.ここで各区間の蒸発フラックスは図-12の蒸発 フラックスの差分から求めた.各水面区間の単位面積 あたりの蒸発フラックスをみると上流から下流方向に 蒸発フラックスが減少している.これは図-7で示すよ うに気流が下流に行くに従い,乾燥度が低くなってい ることから

leading-edge

効果10)11)の現象が起こって いると考えられる.図-14に風速の積算値と蒸発フラッ クスの積算値の関係を示す.ここで蒸発フラックスは 30cm ごとの各区間の蒸発フラックスを 50cm の水面サ イズに計測データを線形補間したものである.ここで 横軸は図-4における風速の鉛直分布を上端からの距離 25cm から 275cm まで積算していった値である.縦軸は 水面長さ50cm から300cm の蒸発フラックスを積算した ものである.この図より各区間の蒸発フラックスは使 われる風速が水面に近ければ近いほど直線に近い分布 になることがわかる.そして本実験において計測され た最も水面に近い 8mm の風速が最も比例関係にあるこ とがわかる.バルク式では代表風速を使用し,その量 を算出するが境界層が発達中の条件では水面ギリギリ の風速に依存していることが示された. 

 

(5)非定常状態における気象条件変化と水温・蒸発 フラックスの反応 

図-15 に気流温度・水温・蒸発フラックスの時系列

y = 0.000106 x + 0.002654

y = 0.000080 x + 0.002435 y = 0.000130 x + 0.002458

0 0.0005 0.001 0.0015 0.002 0.0025 0.003 0.0035 0.004 0.0045 0.005

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

U・(qsat(Tw)-qair)

C E  : E/ρ・ U ・(qsa t( Tw) -qa ir )

12 14 16 18 20 22

水温 [℃]

CE[温 度 変 化 ] CE[比 湿 変 化 ] CE[風 速 変 化 ] 水 温 [温 度 変 化] 水 温 [比 湿 変 化] 水 温 [風 速 変 化]

図-11  U・(qSAT(TS)−qair)とバルク輸送係数 CE・水温の関係 

y = 4.558E-04x + 4.789E-03

y = 2.069E-04x + 4.146E-02

0.0E+00 2.0E-02 4.0E-02 6.0E-02 8.0E-02 1.0E-01 1.2E-01

0 50 100 150 200 250 300

水面の長さ[cm]

1秒あたりの蒸発量[g/㎡/s]

15 16 17

水温[℃]

1秒あたりの蒸発量[g/㎡/s] 水温[℃]

図-12  流入部からの水面の長さと

1

秒あたりの蒸発量の関係

0.0E+00 1.0E-02 2.0E-02 3.0E-02 4.0E-02 5.0E-02 6.0E-02 7.0E-02 8.0E-02

0-30 30-60 60-90 90-120 120-150 150-180 180-210 210-240 240-270 270-300 各区間の上流からの距離[cm]

蒸発フラッ[g/㎡/s]

図-13  各水面区間と蒸発フラックスの関係

(6)

を示す.参考として蒸発フラックス(バルク式)[気温・

水温]は図-11で得られた U に乾燥度をかけたものとバ ルク交換係数CEの関係から求めたものをプロットして いるが湿度を一部欠測したため図面中の前半と後半が 欠けている。気流温度を 20 度から 30 度にランダムに 制御することにより水温はその気流温度の挙動にあわ せて変化する.しかし水温はプールの水の熱容量が大 きいため,気流温度に対してゆっくりと変化するため バルク式(水温)では蒸発を全く表現することができ ない.水温が安定する定常実験では表現できたが,非 定常の実験では水温ではなく水面温度を計測しなけれ ばならないと考えられる.またバルク式(気温)と比 較すると実測とのオーダーは一致する.しかし気流温 度が急激に上がるとそれに合わせ蒸発フラックス(実 験)が上昇し,気流温度が急激に下がると蒸発フラック ス(実験)が急激に低下するというのはバルク式(気 温)では表現不可能であり,蒸発フラックスの変動が オーバーシュートしていることがわかる.気流温度が 急激に低下することで気流の比湿が飽和状態になり,

蒸発ではなく凝結している可能性がある.特に赤丸で 示した部分では蒸発フラックスが最小値-0.049[g/㎡・

s]とマイナスを示しており,水面温度と気流温度の関 係によっては凝結が起こりえる現象を捉えた. 

 

4.まとめ   

  小規模スケールの一様水面の蒸発メカニズム解明の ため風洞実験を行い,以下の知見を得た.

1)定常実験において気流温度・比湿・風速を制御し,

蒸発フラックス変化をみるとバルク式で算出した蒸発 フラックスと同様の傾向を示した.

2)

小規模で境界層が発達中時の蒸発ではバルク交換 係数

C

Eが風速と乾燥度に依存した傾向を示した.

3)

上流端から各区間で蒸発フラックスを算出すると 上流から下流方向に蒸発フラックスが減少している.

各区間の蒸発フラックスは各区間の水面から付近の風 速と線形的な関係にある.

4)

非定常状態における蒸発実験では蒸発フラックス がオーバーシュートし,バルク式では適応できない.

 

謝辞:本研究の一部は文部科学省科学研究費補助金基 盤研究(B)及び中央大学共同研究プロジェクトの助成 を受け実施された.ここに感謝の意を記す. 

参考文献

1) 矢野友久:蒸発散(その 4)−蒸発散量の測定法−,農業土 木学会論文集,57(7),pp.623-628,1989. 

2) 金子大二郎・日野幹雄:リモートセンシングを用いた分布 型広域補完法の提案−気温推定法を応用した補完法による広 域実蒸発散量の算定−,水文・水資源学会誌,10(4),

pp.337-348,1997. 

3) ヒートアイランド対策関係府省連絡会議:ヒートアイラン ド対策大網,2008. 

4) 成田健一・三上岳彦・菅原広史・本條毅:新宿御苑におけ る蒸発効果と温熱環境の実測,環境情報科学論文集,Vol.18,

pp.253-258,2004.11  

5) 神田学・森脇亮・高柳百合子・横山仁・浜田崇:明治神宮 の森の気候緩和機能・大気浄化機能の評価  (1)1996 年夏期 集中観測,天気 44(10),pp.713‐722,1997. 

6) 神田学・高柳百合子・横山仁・森脇亮:銀座オフィス街に おける熱収支特性,水文・水資源学会誌,Vol.10,No.10,1997. 

7) 上田政文:湿度と蒸発−基礎から計測技術まで−,pp.89,

2000. 

8)近藤純正:水環境の気象学−地表面の水収支・熱収支−,

朝倉書店,1996. 

9) 日野幹雄:流体力学,朝倉書店,1992. 

10)  Oke,T.,R.,:  Boundary  Layer  Climate,  Methun  & 

CoLTD,1978. 

11) 近藤由美,神田学:気象モデルのための都市植生のオア シス効果のモデリング,第 62 回年次学術講演会プログラム,

2-085,169-170,2007. 

(2008 年 9 月 30 日  受付) 

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

上流端からの距離25・75・125・175・225・275cmにおける 風速を上流端から積算した値[m/s]

蒸発フラックス[g/㎡・s]

水面から8mm 水面から16mm 水面から24mm 水面から32mm 水面から48mm 水面から72mm 水面から96mm 水面から104mm 水面から152mm 水面から200mm 水面から248mm 水面から296mm

水面長さ50cm

水面長さ100cm

水面長さ150cm 水面長さ200cm水面長さ250cm

水面長さ300cm

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

上流端からの距離25・75・125・175・225・275cmにおける 風速を上流端から積算した値[m/s]

蒸発フラックス[g/㎡・s]

水面から8mm 水面から16mm 水面から24mm 水面から32mm 水面から48mm 水面から72mm 水面から96mm 水面から104mm 水面から152mm 水面から200mm 水面から248mm 水面から296mm

水面長さ50cm

水面長さ100cm

水面長さ150cm 水面長さ200cm水面長さ250cm

水面長さ300cm

    図-14  風速の積算値と蒸発フラックスの積算値の関係

14 16 18 20 22 24 26 28 30 32

0:00 3:00 6:00 9:00

時刻

温度[]

-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1

蒸発フクス[g/㎡・s]

水温 気流温度

蒸発フラックス(実験) 蒸発フラックス(バルク式)[気温]

蒸発フラックス(バルク式)[水温]

図-15  気流温度・水温・蒸発フラックスの時系列

参照

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