応用地質株式会社
1.平成23年度弘前城本丸石垣等岩石鑑定
(1) 調査概要 1-1 調査件名 平成23年度 弘前城本丸石垣等岩石鑑定業務 1-2 調査目的 本業務は、「平成22年度弘前城跡本丸石垣カルテ作成業務」の追加調査として、弘前城本丸石垣の構 築年代及び石材産地を解明することを目的に、石垣及び石材産地採取岩石の岩石鑑定を実施するもの である。 1-3 調査箇所及び対象地点数 調査箇所は、弘前城本丸石垣及び弘前城西方にある兼平と如来瀬の石切丁場跡である。 (1)弘前城本丸石垣採取試料 8点 (2)兼平石切丁場跡採取試料 3点 (3)如来瀬石切丁場跡採取試料 3点 1-4 調査内容及び調査数量 (1)顕微鏡観察 14試料 ①岩石薄片作成 14試料 ②観察及び写真撮影 14試料 (2)報告書作成 一式 ③観察結果の整理 1-5 調査担当者 応用地質株式会社 エンジニアリング本部 コンサルティング一部 須藤 宏(技術士:応用理学部門) 〒331-8688 さいたま市北区土呂町2丁目61番5号 TEL 048-652-0651 (2) 対象試料 今回岩石鑑定に用いた試料は、本丸石垣に用いられている石材試料8試料と石切丁場跡に残置され ている石材試料6試料の計14試料である。表8に試料一覧を示す。試料採取の位置案内図及び位置図 は、図版70~74に示す。また、図版75・76には石切丁場跡試料採取地の状況写真を示す。 弘前城が築城された時石材を供給したのは、「津軽一統志」によると石森や兼平であったとされる。 如来瀬が「藩庁日記」に登場するのは貞享2年(1685)からで、元禄7年(1694)以降になると、未完成だ った本丸東面中央の石垣築造や旧天守台(本丸未申櫓台石垣)の修築のため、大量の石材が如来瀬から 供給された。このころの如来瀬には、地表面に大きな岩や石が多く露出していたものと思われる。し かし「藩庁日記」によると、享保4年(1719)頃には地表を掘らなければ石が出てこなくなり、石材の採 取に手間がかかるようになった。そのため、如来瀬よりさらに西側にある大久保平からも石材が供給 されるようになる(公益財団法人文化財建造物保存技術協会2011a)。第6章 弘前城本丸石垣等岩石鑑定
応用地質株式会社1.平成23年度弘前城本丸石垣等岩石鑑定
(1) 調査概要 1-1 調査件名 平成23年度 弘前城本丸石垣等岩石鑑定業務 1-2 調査目的 本業務は、「平成22年度弘前城跡本丸石垣カルテ作成業務」の追加調査として、弘前城本丸石垣の構 築年代及び石材産地を解明することを目的に、石垣及び石材産地採取岩石の岩石鑑定を実施するもの である。 1-3 調査箇所及び対象地点数 調査箇所は、弘前城本丸石垣及び弘前城西方にある兼平と如来瀬の石切丁場跡である。 (1)弘前城本丸石垣採取試料 8点 (2)兼平石切丁場跡採取試料 3点 (3)如来瀬石切丁場跡採取試料 3点 1-4 調査内容及び調査数量 (1)顕微鏡観察 14試料 ①岩石薄片作成 14試料 ②観察及び写真撮影 14試料 (2)報告書作成 一式 ③観察結果の整理 1-5 調査担当者 応用地質株式会社 エンジニアリング本部 コンサルティング一部 須藤 宏(技術士:応用理学部門) 〒331-8688 さいたま市北区土呂町2丁目61番5号 TEL 048-652-0651 (2) 対象試料 今回岩石鑑定に用いた試料は、本丸石垣に用いられている石材試料8試料と石切丁場跡に残置され ている石材試料6試料の計14試料である。表8に試料一覧を示す。試料採取の位置案内図及び位置図 は、図版70~74に示す。また、図版75・76には石切丁場跡試料採取地の状況写真を示す。 弘前城が築城された時石材を供給したのは、「津軽一統志」によると石森や兼平であったとされる。 如来瀬が「藩庁日記」に登場するのは貞享2年(1685)からで、元禄7年(1694)以降になると、未完成だ った本丸東面中央の石垣築造や旧天守台(本丸未申櫓台石垣)の修築のため、大量の石材が如来瀬から 供給された。このころの如来瀬には、地表面に大きな岩や石が多く露出していたものと思われる。し かし「藩庁日記」によると、享保4年(1719)頃には地表を掘らなければ石が出てこなくなり、石材の採 取に手間がかかるようになった。そのため、如来瀬よりさらに西側にある大久保平からも石材が供給 されるようになる(公益財団法人文化財建造物保存技術協会2011a)。 表8 対象試料一覧(弘前市教育委員会提供) 図版69 平成23年度 弘前大学柴教授石材目視 北の郭より本丸東面へ出発 石材目視(弘前市樋の口分庁舎) 本丸戌亥櫓台下石垣観察 本丸東面石垣観察 弘前城本丸戌亥櫓台 弘前城本丸戌亥櫓台 弘前城本丸石垣西側 弘前城本丸石垣北側天端石 弘前城本丸石垣南側 弘前城本丸石垣北側通路 弘前城本丸戌亥櫓台 弘前城本丸石垣北東出角 石材サンプル1 S-1 石材サンプル33 石材サンプル31 石材サンプル23 石材サンプル29 石材サンプル8 石材サンプル6 石材サンプル2 S-31 S-29 S-23 S-8 S-6 S-2 S-33 矢穴15~16㎝ 矢穴11㎝ 矢穴14㎝ 矢穴15㎝ 板状節理 弘前大学柴教授目視 弘前大学柴教授目視(図版69) 弘前大学柴教授目視(図版69) 如来瀬石切丁場跡 斜面下側 如来瀬石切丁場跡 斜面中央 如来瀬石切丁場跡 斜面上側 兼平石切丁場跡 兼平石切丁場跡 兼平石切丁場跡 石材サンプル1 S-1 石材サンプル6 石材サンプル7 石材サンプル5 石材サンプル8 石材サンプル6 S-7 S-6 S-5 S-8 S-6 弘前大学柴教授目視 矢穴11~12㎝ 弘前大学柴教授目視 弘前大学柴教授目視 弘前大学柴教授目視 直方体 弘前大学柴教授目視 岩塊a 弘前大学柴教授目視 岩塊b 採取場所 サンプル名称 記号 備考図版70 弘前市石切丁場跡位置案内図(弘前市教育委員会提供) 高杉 高杉 中別所 中別所 折笠 折笠 葛原 葛原 新法師 新法師 百沢 百沢 国吉 国吉 高館 高館 兼平 兼平 大久保平 大久保平 如来瀬如来瀬 石森 石森 弘前城跡 弘前城跡 鯖石 鯖石 剣ヶ鼻 剣ヶ鼻 山体崩壊跡(流れ山) 山体崩壊跡(流れ山) 0 5㎞ 矢穴有り 石垣用石の見分 凡 例
図版70 弘前市石切丁場跡位置案内図(弘前市教育委員会提供) 大森山 大森山 高杉 高杉 中別所 中別所 折笠 折笠 葛原 葛原 新法師 新法師 百沢 百沢 国吉 国吉 高館 高館 兼平 兼平 大久保平 大久保平 如来瀬如来瀬 石森 石森 弘前城跡 弘前城跡 鯖石 鯖石 剣ヶ鼻 剣ヶ鼻 山体崩壊跡(流れ山) 山体崩壊跡(流れ山) 0 5㎞ 矢穴有り 石垣用石の見分 凡 例 71
図版72 弘前城本丸石垣試料採取位置図 昭和32~33年 未申櫓跡 戌亥櫓跡 重要文化財 天守 宝永3年修理? 年代不明 昭和53年 昭和53年 寛文以前 文化2年以前 明治以降 昭和32年 明治以降明治以降 明治以降 平成3年修理 明治以降 寛文頃? 鷹丘橋 不明 宝永3年? 明治以降 享保14・19年、寛延元年、明和3年、寛政10年、嘉永5年享保14・19年、寛延元年、明和3年、寛政10年、嘉永5年 明治以降明治以降 本 丸 下乗橋 武者門跡 本丸井戸跡本丸井戸跡 元禄期に整備? 年代不明 明治以降明治以降 寛文頃? 内 濠 W.C 0 明治以降明治以降 元禄期?元禄期? 明治以降明治以降 明治~大正 H24 年試掘 トレンチ1 H24 年試掘 トレンチ8 H24 年試掘 トレンチ7 江戸前期~中期 江戸末期 江戸中期~後期 慶長(築城当初) 元禄 享保 文化 試掘トレンチ 明治・大正・昭和 保存修理 石材サンプル採取地点 S29 H24 年試掘 トレンチ2 H24 年試掘 トレンチ4 H24 年試掘 トレンチ5 H24 年試掘 トレンチ6 H24 年試掘 トレンチ3 S23 S31 S2 S6 S8 S33 S1
図版72 弘前城本丸石垣試料採取位置図 昭和32~33年 未申櫓跡 戌亥櫓跡 重要文化財 天守 宝永3年修理? 年代不明 昭和53年 昭和53年 寛文以前 文化2年以前 明治以降 昭和32年 明治以降明治以降 明治以降 平成3年修理 明治以降 寛文頃? 鷹丘橋 不明 宝永3年? 明治以降 享保14・19年、寛延元年、明和3年、寛政10年、嘉永5年享保14・19年、寛延元年、明和3年、寛政10年、嘉永5年 明治以降明治以降 本 丸 下乗橋 武者門跡 本丸井戸跡本丸井戸跡 元禄期に整備? 年代不明 明治以降明治以降 寛文頃? 内 濠 W.C 0 30m 明治以降明治以降 元禄期?元禄期? 明治以降明治以降 明治~大正 H24 年試掘 トレンチ1 H24 年試掘 トレンチ8 H24 年試掘 トレンチ7 江戸前期~中期 江戸末期 江戸中期~後期 慶長(築城当初) 元禄 享保 文化 試掘トレンチ 明治・大正・昭和 保存修理 石材サンプル採取地点 S29 H24 年試掘 トレンチ2 H24 年試掘 トレンチ4 H24 年試掘 トレンチ5 H24 年試掘 トレンチ6 H24 年試掘 トレンチ3 S23 S31 S2 S6 S8 S33 S1 図版73 石切丁場跡の位置(弘前市教育委員会提供)
弘前城跡弘前城跡
0 2km (S=1/50000) 石森?石森? 如来瀬石切丁場跡如来瀬石切丁場跡 兼平石切丁場跡兼平石切丁場跡 大久保平大久保平 石材運搬経路図版74 如来瀬石切丁場跡採取試料位置(弘前市教育委員会提供) P.06 32 4 2 3 1 31 26 8 27 28 30 神 明宮 小屋 狛犬 階段 階段 石碑 石碑 石碑 石 碑 石碑 石碑 石碑 石碑 階段 石碑 お堂 お堂 お堂 お堂 灯燈 灯燈 水 路 水 路 道路 水路 参道 石碑 道路 橋 橋 2423 2122 20 15 16 18 19 17 14 13 12 40 39 38 37 7 36 6 34 35 5 41 水 路 拝殿 11 25 10 9 水 路 水 路 29 市道 如来瀬・石山線 石碑 110.0m 112.0m 110.0m 100.0m 90.0m 110.0m 110.0m 100.0m 100.0m 100.0m 90.0m 90.0m 90.0m 70.0m 70.0m 80.0m 80.0m 80.0m 80.0m 70.0m 70.0m 70.0m 60.0m 60.0m 60.0m 116.4m 112.5m 53.0m 53.0m 55.0m 53.0m 水路 道路 小屋 小屋 遺跡範囲 0 50m (S=1/1000) 33 石材サンプル№1採取地点 石材サンプル№1採取地点 石材サンプル№8採取地点 石材サンプル№8採取地点 石材サンプル№6採取地点 石材サンプル№6採取地点
図版74 如来瀬石切丁場跡採取試料位置(弘前市教育委員会提供) P.06 32 4 2 3 1 31 26 8 27 28 30 神 明宮 小屋 狛犬 階段 階段 石碑 石碑 石碑 石 碑 石碑 石碑 石碑 石碑 階段 石碑 お堂 お堂 お堂 お堂 灯燈 灯燈 水 路 水 路 道路 水路 参道 石碑 道路 橋 橋 2423 2122 20 15 16 18 19 17 14 13 12 40 39 38 37 7 36 6 34 35 5 41 水 路 拝殿 11 25 10 9 水 路 水 路 水 路 29 市道 如来瀬・石山線 石碑 110.0m 112.0m 110.0m 100.0m 90.0m 110.0m 110.0m 100.0m 100.0m 100.0m 90.0m 90.0m 90.0m 70.0m 70.0m 80.0m 80.0m 80.0m 80.0m 70.0m 70.0m 70.0m 60.0m 60.0m 60.0m 116.4m 112.5m 53.0m 53.0m 55.0m 53.0m 水路 道路 小屋 小屋 遺跡範囲 0 50m (S=1/1000) 33 石材サンプル№1採取地点 石材サンプル№1採取地点 石材サンプル№8採取地点 石材サンプル№8採取地点 石材サンプル№6採取地点 石材サンプル№6採取地点 図版76 兼平石切丁場跡試料採取地点状況 図版75 如来瀬石切丁場跡試料採取地点状況 如来瀬石材サンプル№8 如来瀬石材サンプル№1 如来瀬石材サンプル№6 兼平石材サンプル№5 兼平石材サンプル№6 兼平石材サンプル№7
表9 弘前藩の石材産地の状況と補修内容一覧(「弘前藩庁日記」より)(弘前市教育委員会提供) 6月14日 5月18日 1月20日 1月23日 3月22日 7月10日 7月18日 7月21日 8月9日 8月14日 9月16日 1694 石垣用石の見分 本丸東側 1695 小石森・如来瀬 石垣 本丸東側 1699 如来瀬 石垣 本丸東側 1699 如来瀬 石垣 未申櫓台 1707 如来瀬 石垣 本丸西側 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬・大久保平 石垣 戌亥櫓下 元禄8 元禄7 享保4 宝永4 元禄12 元禄12 享保4 享保4 享保4 享保4 享保4 7月2日 鯖石村御山・折笠村領・新法師・ 国吉・如来瀬村領 1806 堀浪除石 惣堀 文化3 高杉・中別所・嵩前・目屋・野沢・ 高館・如来瀬・石森 元禄11 1698 9月20日 石森山 橋の基礎 二の丸東門外土橋 元禄12 1699 5月17日 兼平山 切石 三の丸屋敷玄関前 1719 享保4 8月3日 大久保平 石垣用石の不足 戌亥櫓下 5月4日 1721 石盛 石垣裏込 戌亥櫓下 享保6 5月22日 1721 石盛・石渡 石垣裏込 戌亥櫓下 享保6 8月17日 1721 兼平 覆石 追手門下地覆石 享保6 3月17日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 3月22日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 3月27日 1734 兼平山 石山の現況 本丸西側 享保19 4月9日 1734 兼平 享保19 6月7日 1734 兼平山 享保19 9月7日 1734 兼平山 享保19 8月21日 1739 兼平山 櫓土台石 西の郭未申櫓 元文4 8月28日 1743 兼平山 橋の石橋化 町中 寛保3 4月23日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 5月8日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 8月7日 4月20日 10月6日 11月25日 10月28日 7月9日 1747 大森山 石塔台座 玄圭院宝塔 1804 鯖石山 堀土留 惣堀 1806 惣堀 1807 剣ヶ鼻 堀土留石材取出者へ 褒美 惣堀 1809 兼平山・葛原山 1816 百沢村領荒川山 橋の基礎 下乗橋 延享4 文化3 文化元 文化4 文化6 文化13 安永6 1777 6月27日 石森 堀土留 西の郭堀 9月8日 1816 高館山 橋の基礎 下乗橋 文化13 8月16日 1833 中別所大石原 石塔 上仙院宝塔 天保4 大久保平・宿川原村・剣ヶ鼻・ 鯖石山 堀土留用の石材不足 西通御山では石採り 尽し。鯖石山の他探 索し、剣ヶ鼻を発見
100 -表9 弘前藩の石材産地の状況と補修内容一覧(「弘前藩庁日記」より)(弘前市教育委員会提供) 年 号 6月14日 5月18日 1月20日 1月23日 3月22日 7月10日 7月18日 7月21日 8月9日 8月14日 9月16日 1685 如来瀬 橋の基礎 石渡橋 1694 石垣用石の見分 本丸東側 1695 小石森・如来瀬 石垣 本丸東側 1699 如来瀬 石垣 本丸東側 1699 如来瀬 石垣 未申櫓台 1707 如来瀬 石垣 本丸西側 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬 石垣 戌亥櫓下 1719 如来瀬・大久保平 石垣 戌亥櫓下 貞享2 元禄8 元禄7 享保4 宝永4 元禄12 元禄12 享保4 享保4 享保4 享保4 享保4 7月2日 鯖石村御山・折笠村領・新法師・ 国吉・如来瀬村領 1806 堀浪除石 惣堀 文化3 西 暦 月 日 場 所 内 容 工 事 箇 所 3月14日 高杉・中別所・嵩前・目屋・野沢・ 高館・如来瀬・石森 元禄11 1698 9月20日 石森山 橋の基礎 二の丸東門外土橋 元禄12 1699 5月17日 兼平山 切石 三の丸屋敷玄関前 1719 享保4 8月3日 大久保平 石垣用石の不足 戌亥櫓下 5月4日 1721 石盛 石垣裏込 戌亥櫓下 享保6 5月22日 1721 石盛・石渡 石垣裏込 戌亥櫓下 享保6 8月17日 1721 兼平 覆石 追手門下地覆石 享保6 3月17日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 3月22日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 3月27日 1734 兼平山 石山の現況 本丸西側 享保19 4月9日 1734 兼平 享保19 6月7日 1734 兼平山 享保19 9月7日 1734 兼平山 享保19 8月21日 1739 兼平山 櫓土台石 西の郭未申櫓 元文4 8月28日 1743 兼平山 橋の石橋化 町中 寛保3 4月23日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 5月8日 1734 兼平山 石垣 本丸西側 享保19 8月7日 4月20日 10月6日 11月25日 10月28日 7月9日 1747 大森山 石塔台座 玄圭院宝塔 1804 鯖石山 堀土留 惣堀 1806 惣堀 1807 剣ヶ鼻 堀土留石材取出者へ 褒美 惣堀 1809 兼平山・葛原山 1816 百沢村領荒川山 橋の基礎 下乗橋 延享4 文化3 文化元 文化4 文化6 文化13 安永6 1777 6月27日 石森 堀土留 西の郭堀 9月8日 1816 高館山 橋の基礎 下乗橋 文化13 8月16日 1833 中別所大石原 石塔 上仙院宝塔 天保4 大久保平・宿川原村・剣ヶ鼻・ 鯖石山 堀土留用の石材不足 西通御山では石採り 尽し。鯖石山の他探 索し、剣ヶ鼻を発見 101 -xenmorphic)という。両者の中間的なものを、半自形 (subhedralまたはhypidiomorphic)という。他形であれ ば、形から鉱物の種類を鑑定できないが、自形であれば、 その形からある程度判断できる場合がある。 3)へき開(cleavage) 鉱物には、その結晶構造に由来する平行な割れ目であ るへき開のあるものとないものがある。あるものは、鉱 物によって、その現れる方向や、現れ方の強弱に特色が ある。 4)色(colour) 鉱物には無色鉱物(colourless minerals)と有色鉱物 (coloured minerals)と が あ る 。 前 者 は 珪 長 質 鉱 物 (felsic minerals)ともいう。無色鉱物は薄片にしたとき、 無色透明である。後者は苦鉄質鉱物(mafic mineral)にほ ぼ相当する。有色鉱物は色づいて見える。ただし薄片下 の色は、肉眼的に観察される色とは異なる。肉眼で黒っぽい角閃石や輝石も鏡下ではよく光を通し、 褐色、緑色などを示す。ただし、不透明鉱物は薄片にしても光を通さない。 5)屈折率(refractive index) 鉱物の屈折率は1.4から3.2の範囲にある。顕微鏡下では、屈折率が0.05程度違う場合は、一見して 区別できる。0.002という小さい違いでも調べることができる。薄片は屈折率1.54に調整したエポキ シ系樹脂など(かつてはバルサムやレーキサイドセメント)に封じ込んであるが、一般にざらざらした 感じやはっきりした輪郭を示すものは、屈折率が非常に高いか、逆に非常に低い。なめらかな感じの ものは、樹脂の屈折率(1.54前後)に近いものである。 6)多色性(pleochroism) ステージを回転させたとき、鉱物 の色が変化する現象を多色性という。 どのように変化するかは鉱物によっ て特徴がある。ステージを回転させ ても色の濃淡が変化しない場合を多 色性「なし」、わずかに認められれば 「あり、ないし弱い」、明瞭であれば 「強い」という。例えば黒雲母や普通 角閃石は多色性が強い(図版81)。 7)岩石組織 ある鉱物が岩石のなかで、どのような形をしていて、他の鉱物とどのような関係をもって存在する かは、きわめて大切なことである。例えば、火成岩であればその冷却速度に応じて特徴的な組織がで きる。 各造岩鉱物の結晶作用の順序関係がわかることもある。堆積岩や変成岩は独特の組織をもつ。また、 微小な断層、変形構造、孔隙の形態や量などさまざまな情報を得ることができる。 (4)直交ニコルによる観察 1)干渉色(interference colour)薄片を白色光によって直交ニコルの下で観察するとき、ステージ を回転するにつれて、色づいて見えたり、暗くなったりする。これを干渉色と呼ぶ。干渉色は鉱物の 複屈折(birefingenceまたはdouble refraction)によって生じる。直交ニコルの状態のとき、本来は 光がまったく通過してこないので、例えばガラスを薄片にして間に挟んでも、暗黒に見える。 2)双晶(twin) 平行ニコルによる観察では、均質な1つの結晶に見える場合で、直交ニコルの下で観察すると、干 渉色が異なる2つ、あるいはそれ以上の部分に分かれていることがある。これはたいてい双晶による ものである。鉱物によって双晶するものとしないものがある。また、双晶形式も鉱物によって特徴が あり、同じ鉱物でも、生成環境によって異なる。例えば斜長石のアルバイト双晶と呼ばれる双晶は後 述する消光角と化学組成との関係が調べられており、「斜長石のアルバイト双晶の最大対称消光角法」 でCa/Naの割合を推定することができる。 3)累帯構造(zonal structure) 鉱物はその個体のなかで、全体が一様の組成でないものがある。その場合も平行ニコルによる観察 では均質な1つの結晶に見えるが、直交ニコルの下で観察すると、干渉色が異なるいくつかの部分に 分かれる。その場合、一般には結晶の中心部と外側とで組成が違うことが多い。これを鉱物の累帯構 造という。化学組成が違うと化学的性質も違ってくるので、干渉色の微妙な違いが出て累帯構造が現 れる。 4)消光位と消光角 非晶質のガラスや等軸晶系のざくろ石など光学的に等方な鉱物を直交ニコルの下で観察すると、暗 黒に見える。ステージを回転しても、常に暗黒である。ところが、光学的に異方な鉱物を直交ニコル の下で観察する場合、ステージを回転すると明るさが変化し、1回転の間に4回暗黒になるところが ある。この暗黒になる現象を消光(extinction)といい。その位置を消光位(extinction position)と いう。この消光位が結晶軸(a、b、cなど)の1つやへき開の方向に一致すると直消光(straight extinction)といい、一致しないと斜消光(oblique extinction)という。直消光の場合、消光角 (extinction angle)はゼロであり、斜消光の場合、消光角はある任意の値を示す。ただし、光学的分 散の著しい結晶は消光位にも分散が起こり、白色光では完全に消光しないものがある(光の波長=色 によって異なる消光角になっている)。 偏光顕微鏡は直交する上下ニコルを通る光の振動方向と視野の十字線とが一致するようにつくられ ており、直消光の場合、鉱物の伸長方向と十字線が一致すると暗黒になる。斜消光の場合も、ものに よって消光位はさまざまである。消光角は鉱物の種類によって、また鉱物をどのような角度で切断し たか、あるいは同じ鉱物でも化学組成の違いによって異なる。同じ鉱物の消光角はいくつか測って最 大のものを参考にする。例えば単斜輝石の消光角は45゜に近いが、角閃石は30゜以下である。 5)伸長(elongation)の正負 薄片において、結晶が1つの方向に伸長した形をしていて、その輪郭が直線であり、しかもその結 晶が直消光を示すか、または小さな消光角を示す場合には、結晶の伸長の正負(zone character)を決 めることができる。 3-3 写真撮影の方法 写真撮影は、岩石鑑定用偏光顕微鏡のカメラをセットし、各岩石薄片の中で代表的な視野を選定し、 オープンニコルとクロスニコルの条件で同一視野にて撮影した。撮影した写真は、平成23年度は図版 84~89、平成25年度は図版100~105に納めた。 【参考文献】 一色直記・大沢穠(1967):「岩木火山北東麓の泥流丘群(日本火山学会 1967年秋季大会講演要旨)」火 山.第2集12(3)。149p 井上勤(監修) (2001):新版顕微鏡観察シリーズ④「岩石・化石の顕微鏡観察」。地人書館,315p 井村隆介:(1995):「岩木火山の噴火史」。日本地質学会学術大会講演要旨,102p,245p 大沢穠 (1962):「5万分の1地質図幅説明書『弘前』」。地質調査所 河野義礼・門脇淳・青木謙一郎(1960):「岩木火山熔岩の化学組成(1960年度秋季大会プログラム)」火 山.第2集5(2)。136-137p 苣木浅彦(編) (1988):「鉱石顕微鏡と鉱石組織」。テラ学術図書出版,470p 黒田吉益・諏訪兼位 (1983):「偏光顕微鏡と岩石鉱物(第2版)」。共立出版,343p 佐々木実・小川洋・斎藤憲二・梅田浩司(1996):「岩木火山の形成史」。日本火山学会講演予稿集 1996(2),165p 独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 出版物 独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質文献データベースシステム (GEOLIS) http://riodb02.ibase.aist.go.jp/DB011/index.html 日本博物館協会(やまびこネット製作): http://www.j-muse.or.jp/kagaku_tanken/vd3/hikan02/page01.html 都城秋穂・久城育夫 (1973):「岩石学Ⅰ-偏光顕微鏡と造岩鉱物」。共立出版,219p 三村弘二・金谷弘(2001):「東北日本、岩木火山北東麓の流れ山のK-Ar年代と岩木火山の火山体形成 およびその崩壊時期」火山46(1)。17-20p (4) 地質的背景 岩木山(1,625m)は弘前盆地の西にあり、第四紀に活動・形成された火山である。岩木火山は、東 西約12㎞、南北約13㎞の成層火山で、中央部には直径約1.1~1.4㎞のカルデラと中央火口丘が形成さ れており、岩木火山とも呼ばれる。火山体の基盤は新第三紀末鮮新世の東目屋層などである。また岩 木山の東方~南東方の丘陵地域には、阿闍羅山などのように、岩木山の火山活動より先行して活動し た新第三紀の安山岩・火山砕屑岩が分布する。 岩木火山の形成としては、約30~20万年前から活動が始まったとみる説(佐々木ほか,1996)と約70 万年前から始まったとみる説(井村,1995)がある。その後の活動史としては、2期に区分する考え方 (大沢,1962)や3期に区分する考え方(佐々木ほか,1996)がある。また、岩木火山は現世までの間に 大規模な山体崩壊を生じ、北東麓には「流れ山」の存在が知られている(一色・大沢,1967:三村・金 谷,2001)。 岩木火山噴出物の岩石は、大半がSiO2含有量56~61wt%の安山岩からなっている(河野ほか, 1960)。 図版82に5万分の1地質図幅「弘前」(大沢,1962)の抜粋を掲載する。5万分の1地質図幅によれば、 如来瀬及び兼平の石切場丁場跡は、「岩木火山砕屑岩および火山岩屑」分布域に属している。 また大沢(1962)によれば、岩木火山を構成する岩石は、石英かんらん石角閃石含有紫蘇輝石普通輝 石安山岩・紫蘇輝石普通輝石安山岩及びかんらん石含有紫蘇輝石普通輝石安山岩である。如来瀬及び (3) 試験方法 3-1 岩石薄片作成作業の方法(図版77) 下記の手順により、一試料につき1つの岩石薄片を作成した。 1)試料整形 岩石切断機(岩石カッター)にて、24㎜×32㎜×5㎜より多少大きめに 切断し岩石チップを作成する。崩れやすい試料については、ホットプ レートの上で十分に乾燥させ、エポキシ樹脂などの接着剤にて補強し、 後に通常の大きさに切断し岩石チップを完成させる。 2)面出し・貼り付け カーボランダム等の研磨剤を用い、研磨機にて#200~#400にて一次 研磨、#600~#800にて二次研磨、メノウ板上にて#1000~#3000まで最 終研磨し面出しをする。また、工程ごとに超音波洗浄機にてよく洗浄 する。面出しが出来上がった試料を乾燥した後に、エポキシ樹脂でス ライドグラスに貼り付ける。 3)二次切断・研磨 岩石切断機にてスライドグラスに貼り付けた試料を二次切断し、試 料をカーボランダム等の研磨剤を用い研磨機にて#200~#400にて荒研 磨、#600~#800にて中研磨する。 4)仕上げ研磨 試料の厚さ(通常0.02~0.03㎜)を偏光顕微鏡で確認しながら、メノ ウ板上にて#1000~#3000まで最終研磨を行い超音波洗浄機にてよく洗 浄する。 5)完成 最後に気泡が出来るだけ入らないようにカバーガラスを貼りつけ完 成させる。 3-2 顕微鏡観察の方法 (1)偏光顕微鏡の概要 鉱物の集合体である岩石等を顕微鏡で観察するためには、通常の顕 微鏡ではなく、偏光板その他の付属装置の付いた偏光顕微鏡(図版78) で観察する必要がある。偏光顕微鏡を用いることによって、岩石の組 織ばかりではなく、それを構成する個々の鉱物を判定できる。 偏光顕微鏡とその観察方法は19世紀に発明された画期的な技術であっ て、さまざまの分析機器が発達した21世紀の今日でも、岩石・鉱物を 理解するために欠くことのできない技術である。 偏光顕微鏡には通常の透過型の他に反射光を利用して観察する反射 顕微鏡(鉱石顕微鏡)がある。透過型と反射型が一体となった反射(落射)装置つきの偏光顕微鏡もあ る。透過型では不透明鉱物としてしか識別できない種々の鉱物を反射顕微鏡では識別できる。逆に 透過型では識別できる非不透明鉱物(石英などの無色鉱物や輝石などの有色鉱物)を反射顕微鏡で識 別するのは困難である。すなわち、両者は相補関係にある。 透過型の偏光顕微鏡で観察するには、上述の手順より岩石薄片(通常カバーグラスをかけたプレパ ラート)を作成しておく必要がある。一方、反射型で偏光顕微鏡観察を行なうには、岩石チップを研 磨した「研磨片」の作成が必要である。上述の透過・反射共用型で観察するにはカバーグラスをかけ ない「研磨薄片」を作成すればよい。研磨薄片の作成は偏光顕微鏡観察の後に、EPMA分析等の鉱物分 析を行う場合にも必要である。 (2)偏光顕微鏡(透過)の仕組み 偏光顕微鏡による観察はニコルと呼ばれる偏光板(図版79)を用 いて行う。偏光板には、オルソスコープorthoscope(ベルトラン・ レンズを取り除いた状態のすべてをいう)として、 平行ニコルparallel nicols(オープンニコル,単ニコル:上方ニ コルを除いた状態) 直交ニコルcrossed nicols(クロスニコル、十字ニコル:上方ニコ ルを入れた状態) を用いる。 ここではオルソスコープを例に、偏光顕微鏡と岩石薄片鑑定の 仕組みを簡単に説明する。 図版80のように、光源から発した光は上方ニコルを入れない場 合、下方ニコル(ポラライザー)をある一方向の面で振動する光の みが透過する。回転ステージ上の試料を通って対物レンズ、接眼 レンズを介して観察される。この状態を平行ニコルと言う。 対物レンズと接眼レンズの間には、出し入れ可能な上方ニコル (アナライザー)がセットされていて、これを入れた状態を直交ニ コルと言う。上方ニコルは通過できる光の振動面が下方ニコルを 通過できる光の振動面と90°で交わるようにセットされており、 回転ステージ上に試料がない状態では視野が真っ黒に見える。図 版79の下側の状態である。 岩石を構成する鉱物は様々な光学的性質を持っており、後述す る光学的等方体以外の鉱物を透過した光は2方向に分散(偏光)し て進む。そのため、直交ニコルでも上方ニコルを通過できる成分 が現れ、視野に鉱物が見えるようになる。 平行ニコルでは自然光ではなく、無色のサングラス(偏光板)を かけて見ているのに近い。 直交ニコルでは鉱物にきれいな色(干渉色)がついて見え、ステー ジを回転させると色が変ったり(多色性)、色が消えたり(消光)す るものがあり、これらの性質を利用して鉱物名を同定する。 さらに、岩石の組織を観察し、鉱物組み合わせなどをもとに岩 石名などを決定するのが岩石薄片鑑定である。 (3)平行ニコルによる観察 1)大きさ(size) 顕微鏡下で、ある鉱物の大きさを大まかに知りたい場合は、 視野の直径(または半径)がわかっていればよい。また、ある鉱 物の大きさを正確にきめる場合は、はじめに接眼マイクロメー ター(eyepiece micrometer)で何目盛かを読取る。次に接眼マイ クロメーター目盛の実長を対物マイクロメーター(stage microm-eter)を標準にして測定すればよい。通常、対物マイクロメーターには、スライド・ガラスの中央に 1㎜を100等分した目盛が刻んである。すなわち、100倍で観察すれば、1目盛は0.01㎜である。 2)形(form) 鉱物は、その鉱物特有の形をしていることもあれば、なんらかの理由によって、特有の形をしてい ないこともある。前者を自形(euhedralまたはidiomorphic)、後者を他形(anhedralまたは 図版77 岩石薄片作成作業の方法 1 2 3 4 5
102 -(subhedralまたはhypidiomorphic)という。他形であれ ば、形から鉱物の種類を鑑定できないが、自形であれば、 その形からある程度判断できる場合がある。 3)へき開(cleavage) 鉱物には、その結晶構造に由来する平行な割れ目であ るへき開のあるものとないものがある。あるものは、鉱 物によって、その現れる方向や、現れ方の強弱に特色が ある。 4)色(colour) 鉱物には無色鉱物(colourless minerals)と有色鉱物 (coloured minerals)と が あ る 。 前 者 は 珪 長 質 鉱 物 (felsic minerals)ともいう。無色鉱物は薄片にしたとき、 無色透明である。後者は苦鉄質鉱物(mafic mineral)にほ ぼ相当する。有色鉱物は色づいて見える。ただし薄片下 の色は、肉眼的に観察される色とは異なる。肉眼で黒っぽい角閃石や輝石も鏡下ではよく光を通し、 褐色、緑色などを示す。ただし、不透明鉱物は薄片にしても光を通さない。 5)屈折率(refractive index) 鉱物の屈折率は1.4から3.2の範囲にある。顕微鏡下では、屈折率が0.05程度違う場合は、一見して 区別できる。0.002という小さい違いでも調べることができる。薄片は屈折率1.54に調整したエポキ シ系樹脂など(かつてはバルサムやレーキサイドセメント)に封じ込んであるが、一般にざらざらした 感じやはっきりした輪郭を示すものは、屈折率が非常に高いか、逆に非常に低い。なめらかな感じの ものは、樹脂の屈折率(1.54前後)に近いものである。 6)多色性(pleochroism) ステージを回転させたとき、鉱物 の色が変化する現象を多色性という。 どのように変化するかは鉱物によっ て特徴がある。ステージを回転させ ても色の濃淡が変化しない場合を多 色性「なし」、わずかに認められれば 「あり、ないし弱い」、明瞭であれば 「強い」という。例えば黒雲母や普通 角閃石は多色性が強い(図版81)。 7)岩石組織 ある鉱物が岩石のなかで、どのような形をしていて、他の鉱物とどのような関係をもって存在する かは、きわめて大切なことである。例えば、火成岩であればその冷却速度に応じて特徴的な組織がで きる。 各造岩鉱物の結晶作用の順序関係がわかることもある。堆積岩や変成岩は独特の組織をもつ。また、 微小な断層、変形構造、孔隙の形態や量などさまざまな情報を得ることができる。 (4)直交ニコルによる観察 1)干渉色(interference colour)薄片を白色光によって直交ニコルの下で観察するとき、ステージ を回転するにつれて、色づいて見えたり、暗くなったりする。これを干渉色と呼ぶ。干渉色は鉱物の 複屈折(birefingenceまたはdouble refraction)によって生じる。直交ニコルの状態のとき、本来は 光がまったく通過してこないので、例えばガラスを薄片にして間に挟んでも、暗黒に見える。 平行ニコルによる観察では、均質な1つの結晶に見える場合で、直交ニコルの下で観察すると、干 渉色が異なる2つ、あるいはそれ以上の部分に分かれていることがある。これはたいてい双晶による ものである。鉱物によって双晶するものとしないものがある。また、双晶形式も鉱物によって特徴が あり、同じ鉱物でも、生成環境によって異なる。例えば斜長石のアルバイト双晶と呼ばれる双晶は後 述する消光角と化学組成との関係が調べられており、「斜長石のアルバイト双晶の最大対称消光角法」 でCa/Naの割合を推定することができる。 3)累帯構造(zonal structure) 鉱物はその個体のなかで、全体が一様の組成でないものがある。その場合も平行ニコルによる観察 では均質な1つの結晶に見えるが、直交ニコルの下で観察すると、干渉色が異なるいくつかの部分に 分かれる。その場合、一般には結晶の中心部と外側とで組成が違うことが多い。これを鉱物の累帯構 造という。化学組成が違うと化学的性質も違ってくるので、干渉色の微妙な違いが出て累帯構造が現 れる。 4)消光位と消光角 非晶質のガラスや等軸晶系のざくろ石など光学的に等方な鉱物を直交ニコルの下で観察すると、暗 黒に見える。ステージを回転しても、常に暗黒である。ところが、光学的に異方な鉱物を直交ニコル の下で観察する場合、ステージを回転すると明るさが変化し、1回転の間に4回暗黒になるところが ある。この暗黒になる現象を消光(extinction)といい。その位置を消光位(extinction position)と いう。この消光位が結晶軸(a、b、cなど)の1つやへき開の方向に一致すると直消光(straight extinction)といい、一致しないと斜消光(oblique extinction)という。直消光の場合、消光角 (extinction angle)はゼロであり、斜消光の場合、消光角はある任意の値を示す。ただし、光学的分 散の著しい結晶は消光位にも分散が起こり、白色光では完全に消光しないものがある(光の波長=色 によって異なる消光角になっている)。 偏光顕微鏡は直交する上下ニコルを通る光の振動方向と視野の十字線とが一致するようにつくられ ており、直消光の場合、鉱物の伸長方向と十字線が一致すると暗黒になる。斜消光の場合も、ものに よって消光位はさまざまである。消光角は鉱物の種類によって、また鉱物をどのような角度で切断し たか、あるいは同じ鉱物でも化学組成の違いによって異なる。同じ鉱物の消光角はいくつか測って最 大のものを参考にする。例えば単斜輝石の消光角は45゜に近いが、角閃石は30゜以下である。 5)伸長(elongation)の正負 薄片において、結晶が1つの方向に伸長した形をしていて、その輪郭が直線であり、しかもその結 晶が直消光を示すか、または小さな消光角を示す場合には、結晶の伸長の正負(zone character)を決 めることができる。 3-3 写真撮影の方法 写真撮影は、岩石鑑定用偏光顕微鏡のカメラをセットし、各岩石薄片の中で代表的な視野を選定し、 オープンニコルとクロスニコルの条件で同一視野にて撮影した。撮影した写真は、平成23年度は図版 84~89、平成25年度は図版100~105に納めた。 【参考文献】 一色直記・大沢穠(1967):「岩木火山北東麓の泥流丘群(日本火山学会 1967年秋季大会講演要旨)」火 山.第2集12(3)。149p 井上勤(監修) (2001):新版顕微鏡観察シリーズ④「岩石・化石の顕微鏡観察」。地人書館,315p 井村隆介:(1995):「岩木火山の噴火史」。日本地質学会学術大会講演要旨,102p,245p 大沢穠 (1962):「5万分の1地質図幅説明書『弘前』」。地質調査所 河野義礼・門脇淳・青木謙一郎(1960):「岩木火山熔岩の化学組成(1960年度秋季大会プログラム)」火 山.第2集5(2)。136-137p 苣木浅彦(編) (1988):「鉱石顕微鏡と鉱石組織」。テラ学術図書出版,470p 黒田吉益・諏訪兼位 (1983):「偏光顕微鏡と岩石鉱物(第2版)」。共立出版,343p 佐々木実・小川洋・斎藤憲二・梅田浩司(1996):「岩木火山の形成史」。日本火山学会講演予稿集 1996(2),165p 独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 出版物 独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質文献データベースシステム (GEOLIS) http://riodb02.ibase.aist.go.jp/DB011/index.html 日本博物館協会(やまびこネット製作): http://www.j-muse.or.jp/kagaku_tanken/vd3/hikan02/page01.html 都城秋穂・久城育夫 (1973):「岩石学Ⅰ-偏光顕微鏡と造岩鉱物」。共立出版,219p 三村弘二・金谷弘(2001):「東北日本、岩木火山北東麓の流れ山のK-Ar年代と岩木火山の火山体形成 およびその崩壊時期」火山46(1)。17-20p (4) 地質的背景 岩木山(1,625m)は弘前盆地の西にあり、第四紀に活動・形成された火山である。岩木火山は、東 西約12㎞、南北約13㎞の成層火山で、中央部には直径約1.1~1.4㎞のカルデラと中央火口丘が形成さ れており、岩木火山とも呼ばれる。火山体の基盤は新第三紀末鮮新世の東目屋層などである。また岩 木山の東方~南東方の丘陵地域には、阿闍羅山などのように、岩木山の火山活動より先行して活動し た新第三紀の安山岩・火山砕屑岩が分布する。 岩木火山の形成としては、約30~20万年前から活動が始まったとみる説(佐々木ほか,1996)と約70 万年前から始まったとみる説(井村,1995)がある。その後の活動史としては、2期に区分する考え方 (大沢,1962)や3期に区分する考え方(佐々木ほか,1996)がある。また、岩木火山は現世までの間に 大規模な山体崩壊を生じ、北東麓には「流れ山」の存在が知られている(一色・大沢,1967:三村・金 谷,2001)。 岩木火山噴出物の岩石は、大半がSiO2含有量56~61wt%の安山岩からなっている(河野ほか, 1960)。 図版82に5万分の1地質図幅「弘前」(大沢,1962)の抜粋を掲載する。5万分の1地質図幅によれば、 如来瀬及び兼平の石切場丁場跡は、「岩木火山砕屑岩および火山岩屑」分布域に属している。 また大沢(1962)によれば、岩木火山を構成する岩石は、石英かんらん石角閃石含有紫蘇輝石普通輝 石安山岩・紫蘇輝石普通輝石安山岩及びかんらん石含有紫蘇輝石普通輝石安山岩である。如来瀬及び 3-1 岩石薄片作成作業の方法(図版77) 下記の手順により、一試料につき1つの岩石薄片を作成した。 1)試料整形 岩石切断機(岩石カッター)にて、24㎜×32㎜×5㎜より多少大きめに 切断し岩石チップを作成する。崩れやすい試料については、ホットプ レートの上で十分に乾燥させ、エポキシ樹脂などの接着剤にて補強し、 後に通常の大きさに切断し岩石チップを完成させる。 2)面出し・貼り付け カーボランダム等の研磨剤を用い、研磨機にて#200~#400にて一次 研磨、#600~#800にて二次研磨、メノウ板上にて#1000~#3000まで最 終研磨し面出しをする。また、工程ごとに超音波洗浄機にてよく洗浄 する。面出しが出来上がった試料を乾燥した後に、エポキシ樹脂でス ライドグラスに貼り付ける。 3)二次切断・研磨 岩石切断機にてスライドグラスに貼り付けた試料を二次切断し、試 料をカーボランダム等の研磨剤を用い研磨機にて#200~#400にて荒研 磨、#600~#800にて中研磨する。 4)仕上げ研磨 試料の厚さ(通常0.02~0.03㎜)を偏光顕微鏡で確認しながら、メノ ウ板上にて#1000~#3000まで最終研磨を行い超音波洗浄機にてよく洗 浄する。 5)完成 最後に気泡が出来るだけ入らないようにカバーガラスを貼りつけ完 成させる。 3-2 顕微鏡観察の方法 (1)偏光顕微鏡の概要 鉱物の集合体である岩石等を顕微鏡で観察するためには、通常の顕 微鏡ではなく、偏光板その他の付属装置の付いた偏光顕微鏡(図版78) で観察する必要がある。偏光顕微鏡を用いることによって、岩石の組 織ばかりではなく、それを構成する個々の鉱物を判定できる。 偏光顕微鏡とその観察方法は19世紀に発明された画期的な技術であっ て、さまざまの分析機器が発達した21世紀の今日でも、岩石・鉱物を 理解するために欠くことのできない技術である。 偏光顕微鏡には通常の透過型の他に反射光を利用して観察する反射 顕微鏡(鉱石顕微鏡)がある。透過型と反射型が一体となった反射(落射)装置つきの偏光顕微鏡もあ る。透過型では不透明鉱物としてしか識別できない種々の鉱物を反射顕微鏡では識別できる。逆に 透過型では識別できる非不透明鉱物(石英などの無色鉱物や輝石などの有色鉱物)を反射顕微鏡で識 別するのは困難である。すなわち、両者は相補関係にある。 透過型の偏光顕微鏡で観察するには、上述の手順より岩石薄片(通常カバーグラスをかけたプレパ ラート)を作成しておく必要がある。一方、反射型で偏光顕微鏡観察を行なうには、岩石チップを研 磨した「研磨片」の作成が必要である。上述の透過・反射共用型で観察するにはカバーグラスをかけ ない「研磨薄片」を作成すればよい。研磨薄片の作成は偏光顕微鏡観察の後に、EPMA分析等の鉱物分 析を行う場合にも必要である。 偏光顕微鏡による観察はニコルと呼ばれる偏光板(図版79)を用 いて行う。偏光板には、オルソスコープorthoscope(ベルトラン・ レンズを取り除いた状態のすべてをいう)として、 平行ニコルparallel nicols(オープンニコル,単ニコル:上方ニ コルを除いた状態) 直交ニコルcrossed nicols(クロスニコル、十字ニコル:上方ニコ ルを入れた状態) を用いる。 ここではオルソスコープを例に、偏光顕微鏡と岩石薄片鑑定の 仕組みを簡単に説明する。 図版80のように、光源から発した光は上方ニコルを入れない場 合、下方ニコル(ポラライザー)をある一方向の面で振動する光の みが透過する。回転ステージ上の試料を通って対物レンズ、接眼 レンズを介して観察される。この状態を平行ニコルと言う。 対物レンズと接眼レンズの間には、出し入れ可能な上方ニコル (アナライザー)がセットされていて、これを入れた状態を直交ニ コルと言う。上方ニコルは通過できる光の振動面が下方ニコルを 通過できる光の振動面と90°で交わるようにセットされており、 回転ステージ上に試料がない状態では視野が真っ黒に見える。図 版79の下側の状態である。 岩石を構成する鉱物は様々な光学的性質を持っており、後述す る光学的等方体以外の鉱物を透過した光は2方向に分散(偏光)し て進む。そのため、直交ニコルでも上方ニコルを通過できる成分 が現れ、視野に鉱物が見えるようになる。 平行ニコルでは自然光ではなく、無色のサングラス(偏光板)を かけて見ているのに近い。 直交ニコルでは鉱物にきれいな色(干渉色)がついて見え、ステー ジを回転させると色が変ったり(多色性)、色が消えたり(消光)す るものがあり、これらの性質を利用して鉱物名を同定する。 さらに、岩石の組織を観察し、鉱物組み合わせなどをもとに岩 石名などを決定するのが岩石薄片鑑定である。 (3)平行ニコルによる観察 1)大きさ(size) 顕微鏡下で、ある鉱物の大きさを大まかに知りたい場合は、 視野の直径(または半径)がわかっていればよい。また、ある鉱 物の大きさを正確にきめる場合は、はじめに接眼マイクロメー ター(eyepiece micrometer)で何目盛かを読取る。次に接眼マイ クロメーター目盛の実長を対物マイクロメーター(stage microm-eter)を標準にして測定すればよい。通常、対物マイクロメーターには、スライド・ガラスの中央に 1㎜を100等分した目盛が刻んである。すなわち、100倍で観察すれば、1目盛は0.01㎜である。 2)形(form) 鉱物は、その鉱物特有の形をしていることもあれば、なんらかの理由によって、特有の形をしてい ないこともある。前者を自形(euhedralまたはidiomorphic)、後者を他形(anhedralまたは 図版78 偏光顕微鏡(透過)の例 Nikon製(OPTIPHOT2-POL) 光が透過する向きの重ね合わせ 光が遮断される向きの重ね合わせ 図版79 2枚の偏光板を 重ね合わせた様子 (日本博物館協会ホームページより)