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降雨による粘着力の低下を考慮した斜面崩壊危険度評価

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Academic year: 2022

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(1)

降雨による粘着力の低下を考慮した斜面崩壊危険度評価

九州大学大学院 学生会員○大久保佳美 九州大学大学院 フェロー

善 功企

九州大学大学院 正会員 陳 光斉 九州大学大学院 正会員 笠間 清伸

1. 背景および目的

降雨による斜面崩壊は,地盤重量の増加や地盤の強度低下等が複合して発生するため,その発生予測は地盤工 学的に難しい問題である.特に,サクションによる見かけの粘着力の低減は,地盤の不安定化に大きな影響を及 ぼすと考えられるが,この要因を考慮した危険度算定手法は少ないのが現状である.また,極限平衡法や有限要 素法等は計算負荷が大きい,パラメータの同定が難しい等の問題点があり,広域的にリアルタイムで斜面崩壊の 発生を予測する手法としては適さない.そこで,本文では,斜面崩壊の発生を予測する手法の確立を目的とし,

地質や地形等の素因と降雨による影響を考慮した,簡便な力学的安定解析によるリアルタイム斜面崩壊危険度算 定手法の提案および有用性の検証を行った.

2. 危険度算定手法

図-1 に,斜面崩壊危険度算定のフローを示す.対象斜面を

10m

四方でメッシ ュ化し,地形を考慮して水の流れを考えた布川ら1)の手法をもとに,各メッシュ の水分量を算出し,表層土内の水分の増加を水分増加比

m

として表した.水分増 加比

m

は,降雨浸透による初期状態からの地盤内空隙の減少量を初期状態の空隙 量で除した値として定義した.

次に,降雨により表土層内に湿潤層が形成されるモデルを構築し,安定性を評 価した.図-2 に斜面表層のモデルを示す.ここで,

H

Cは表層土厚,

H

Pはクラ ックや木の根等の水みちが存在する平均深さ,

h

は初期状態より湿潤な層(以下,

湿潤層と呼ぶ)の厚さ,

H

は湿潤層底面までの深さ,

a ( = rh )は H

Pから湿潤層 の上面までの厚さ,

r

は斜面の表面方向への浸透割合を表すパラメータである.

湿潤層底面および基岩面をすべり面として算出した安全率

F

S1および

F

S2のうち,

小さい値をそのメッシュの安全率とした.また,

h

が基岩面に達すると飽和層の 形成が始まると考え,そのときの水分増加比

m

m

0とした.安全率

F

Sは,各す べり面に対し水分増加比

m

の値に応じて,式(1)および式(2)で算定した.

(1)

(2)

ここで,

c′

は有効粘着力,

φ′

は内部摩擦角,

W

および

W

はすべり面上の土の自 重,

N

および

N

はすべり面に対する垂直応力,

F

は透水力,

β

は斜面角度であ る.また,

C

Sはサクションによる見かけの粘着力で,Montrasio ら 2)が飽和度と の関係に基づき提案した式(3)で算出し,基岩面の飽和度は初期飽和度

S

r0とし,

湿潤層底面の飽和度

S

rは式

(4)

で定義した.

(3)

(4)

ここで,

A

および

λ

は実験により求められたパラメータ2)で,

α

は飽和度変化を 表すパラメータである.

本手法を

2009

7

月の九州北部豪雨により斜面崩壊が発生した福岡県福智町 の実斜面へ適用し,有用性の検証を行った.表-1 に,解析に用いたパラメータ を示す.地質データは現地の調査結果3)から決定し,降雨データは対象斜面から 最も近いアメダスの観測値を用いた.

図-1 危険度算出のフロー

図-2 斜面表層のモデル 数値地形データ,地質データ

降雨データ等の入力 地形条件の計算

(

動水勾配等

)

水の流れの計算 各メッシュの水分量の算出 湿潤層底面の

F

S1の算出 基岩面の

F

S2の算出 湿潤層底面の

F

S1の算出 基岩面の

F

S2の算出 各メッシュの安全率

F

S

=min(F

S1

, F

S2

)

表-1 解析に用いたパラメータ 表層土厚

H

c

(m) 3.00

間隙率

n 0.33

土粒子比重

G

s

2.82

内部摩擦角

φ

'

(

) 36.9

有効粘着力 c'

(kPa) 8.00

初期飽和度

S

r0

0.80

A

80.00

λ 0.40

α 1.00

r

0.10

水みちの平均深さ

H

P

(m) 1.00

m0

0.74

F W

N F

S

c

+ ′

⋅ ′ + ′

= ′

β φ cos

tan

(

r

)

λ

r

S

A S S

C = ⋅ ⋅ 1 −

α

 

 

 −

⋅ +

=

0 0

0

1 m

S m m S

r

m

r

β

φ cos

tan W

N C

F

S

c ′ +

S

+ ⋅ ′

= ( m < m

0

) ( mm

0

)

土木学会西部支部研究発表会 (2011.3)

III-037

-377-

(2)

3. 解析結果

2009

7

24

18

時,20時および

21

時における対象斜面の 水分増加比

m

の分布を図-3 に,安全率

F

Sの分布を図-4 に示す.

崩壊頂部の位置も合わせて示した.時間の経過とともに,水分増 加比

m

は増加し,安全率

F

Sは減少した.

18

時において,大部分の メッシュで水分増加比

m

0.2

以下,安全率

F

S

2.4

以上をとり,

安定であったことがわかる.20 時には,4 つのメッシュにおいて 水分増加比

m

0.9

を越えた.これらのメッシュは集水性により雨 水が集中するメッシュであると考えられる.21 時になると,広範 囲にわたり水分増加比

m

0.9

を越え,安全率

F

S

1

以下となり 不安定化したと考えられる.

図-5 に,

24

日から

25

日かけての時間雨量と崩壊頂部のメッシュの安全率

F

S の変動を示す.

21

時に,安全率は 最小となった.このときの安全率

F

S

1

以下であり,斜面崩壊の発生した

21

40

分頃とほぼ一致したことから,

本手法は対象斜面において斜面崩壊の発生予測に有用であると考えられる.

4. 結論

本文では,地形や地質等の素因と降雨を考慮した簡便な力学的安定計算によるリアルタイム斜面崩壊危険度算 定手法の提案および実斜面への適用による有用性の検証を行った.斜面崩壊が発生した時間と崩壊頂部の安全率

F

S

1

以下となった時間が一致したことから,本手法は対象斜面において斜面崩壊の発生予測に有用であると考 えられる.今後,様々な斜面に対して本手法の有用性の検証を行うとともに,各パラメータが解析結果に与える 影響を明らかにし,具体的なパラメータ決定の方法を検討する必要がある.

参考文献

1)

布川修

,

杉山友康

,

太田直之

:

地形を考慮した斜面表層部の地下水変動予測モデル

,

鉄道総研報告

, Vol.22, No.1,

pp.23-28, 2008. 2) L.Montrasio and R.Valentino : A model for triggering mechanisms of shallow landslides, Nat. Hazards Earth Syst. Sci.,

No.8, pp.1149-1159, 2008. 3)

地盤工学会九州北部土砂災害調査団

:

平成

21

7

月九州北部豪雨による土砂災害調査報告書

, 2010.

0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1

2.6 2.4 2.2 2 1.8 1.6 1.4 1.2 1 x(m

)

0 50

100 150

200 250

y(m) 0

100 50 200 250 300

z(m)

x(m )

0 50

100 150

200 250

y(m) 0

100 50 200 250 300

z(m)

x(m )

0 50

100 150

200 250

y(m) 0

100 50 200 250 300

z(m)

x(m )

0 50

100 150

200 250

y(m) 0

100 50 200 250 300

z(m)

x(m )

0 50

100 150

200 250

y(m) 0

100 50 200 250 300

z(m)

x(m )

0 50

100 150

200 250

y(m) 0

100 50 200 250 300

z(m)

図-3 水分増加比

m

の分布

図-4 安全率

F

Sの分布

a

18

b

20

c

21

a

18

b

20

c

21

崩壊頂部

崩壊頂部

m

F

S

0.5 1 1.5 2 2.5 3

0 50 100 150 200 250 300

安全率FS 時間雨量(mm)

FS

(mm )

8:00 14:00 20:00 2:00 8:00 14:00 20:00

24日 25日

図-5 時間雨量と崩壊頂部における安全率の変動

21

40

崩壊発生

土木学会西部支部研究発表会 (2011.3)

III-037

-378-

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