教師のパーンアウトを防ぐためのプログラムの作成とその有効性
学 校 教 育 専 攻 教育臨床コース 浦 神 千 幸
1 . 問 題 と 目 的
教 師 の 資 質 能 力 に 対 し て 厳 し い ロ が 向 け ら れ る一方で、、教師の精神的健康が害されていると いう現実がある。関東・鈴木(J990)は 、 教 壇iこ 立 つ 教 師 の 74.53%が 少 な く と も 軽 度 の パ ー ン ア ウ ト 状 態 を 体 験 し て い る と い う 深 刻 な 現 実 を 報告しているG
組 織 と し て の 学 校 の 健 康 が ス ト レ ス の あ ら ゆ るレベルに影響するという平沢(I999)の 指 摘 か ら 、 教 師 の 精 神 的 健 康 の 改 善 を 呂 指 す 際 、 学 校 の 組 識 特 性 を 考 患 に 入 れ る こ と が 不 可 欠 で あ る と 考 え ら れ る 。 組 織 特 性 の な か で も 、 同 僚 と の 人 間 関 係 が 精 神 的 健 康 に 及 ぼ す 影 響 の 大 き さ は 多 く の 先 行 研 究 に よ っ て 指 摘 さ れ て い る 。 し か し 実 際 は 、 多 忙 な 日 々 の な か で 教 師 が 互 い の 問 題 に つ い て 話 す 機 会 が 減 少 す る 傾 向 に あ り 、 今 後 は 更 に 人 事 考 課 制 度 の 導 入 等 に よ っ て 、 人 間 関係の希薄化が進行するものと危慢される。
そ こ で 本 研 究 で は 、 教 師 の パ ー ン ア ウ ト の 度 合 い を 軽 減 及 び 抑 制 す る 目 的 で 、 学 校 の 組 織 特 性 の う ち 、 同 僚 と の 協 働 性 と 学 校 運 営 へ の 参 加 感 と を 高 め る こ と に 主 銀 を 置 い た プ ロ グ ラ ム を 実 施 し た 。 プ ロ グ ラ ム は ① 質 問 紙 調 査 、 ② シ ェ アリング・タイムの実施、③ク十/レープ・ワーク 実施の 3つ の 要 素 か ら 構 成 さ れ る 。 シ ェ ア リ ン グ ・ タ イ ム は 職 員 会 議 に お い て 教 員 同 士 が 抵 抗 の 少 な い 形 で 疑 問 や 意 見 を 表 現 す る こ と に よ っ
指 導 教 官 田 中 雄 一
て 学 校 運 営 へ の 参 加 感 を 増 進 す る こ と を 目 的 と す る 。 グ ル ー プ , ワ ー ク は 教 師 と し て 感 じ る ス トレスについて小集団で話し合うことにより、
教 師 間 の 帰 属 意 識 を 高 め る こ と を 目 的 と 寸 るG
2.対 象 と 方 法 ( 1 ) 対 象
本調査では、 A県B郡 の 県 立 高 校 に 勤 務 す る 教 師 60名 を 実 験 群iこ、同県C市 の 県 立 高 校2 校 に 勤 務 す る 教 師 124名を統制群とした。
( 2 ) 方 法
① 質 問 紙 調 査
実 験 群 ・ 統 制 群 と も に 2003年 4月初旬と 6 月下旬iこ質問紙『教舗のストレスに関する調査
J
を実施した。
ノミーンアウトの度合いは、八並・新井(2001) による Maslach Bumout lnventoryの 日 本 語 版 を 用い、 5 件法で測定した(有効回答率6O.3~/o)0 組 織 特 性 は 、 彼 ら が 作 成 し た 15項 目 に 、 非 参 加感を問う 10項目を筆者が加え、 5件 法 で 測 定 し た ( 有 効 回 答 率62.00/0)。
② シ ェ ア リ ン グ ・ タ イ ム
シ ェ ア リ ン グ ・ タ イ ム は 実 験 群 の 教 師 60名 の協力を得、 2003年 4月 16日 吾月 18日ま での期間に5回実施した。
③グループーワーク
グ ル ー プ ・ ワ ー ク は の べ 16人の参加協力
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を得、 2003年 5月 16日 (金)・ 19日 (月)に それぞれ 1時間半実施した。
3.結 果
( 1 )因子分析(主成分法、パリマックス回転) の結果、 MBI尺 度 は 下 位 尺 度 と し て 「 税 人 格 化J 個 人 的 達 成 感J
r
情 緒 的 消 耗 感jの 3因 子が得られ、組織特性尺度では下位尺度として f非 参 加 感Jr
管 理 職 と の 葛 藤j f孤 立 性Jr
多 忙 性Jr
非協働性jの5因子が得られた。( 2) MBf得 点 と 組 織 特 性 尺 度 得 点 に つ い て
Pearsonの 相 関 係 数 を 調 べ た 結 果 、 両 者 の 間 に 1%水準で有意な相関があることが認、められた
〈γ竺422 Pく .00。
( 3 )組織特性尺度の下位尺度のうち非参加感 (γ=.364 p < β1)、管理職との葛藤(γ=.208 p く.05)、孤立性(γ=.418Pく.01)、非協働性(γ
=.306 Pく.00とパーンアウトの度合いとの間に 相関が認められた。
(4) 4月と 6月に実施した MBI総合得点と 下位尺度の得点について変化が見られるか否か を調べた結果、尺度全体では、統制群において ノミーンアウトの度合いについて有意な上昇 (t 値引2.78
P
く.00が見られたのに対し、実験群 では有意差は認められなかった。下位尺度に関 しては、実験群(t値=・2.21 Pく.05)、統制群(tf
痘=‑6.50Pく.001)ともに、情緒的消耗感につい て有意な上昇が見られた。(5) 4月と 6月に実施した組織特性尺度総合 得点と下位尺度の得点に実験群、統制群の双方 において変化が昆られるか否かを調べた結果、
統制群において管理職との葛藤についての有意 な低下
c t
値=2.44P<
.05)が認められた。( 6 )自由記述の結果としては、シェアリング
・タイム、グループ・ワークともに概ね肯定的 な意見が寄せられた。
4.考察
( 1 )本研究では、女性及び既婚者の MBI得 点が低いという結果が得られたc これは、女性 は同僚や家族に自らの悩みを打ち明ける傾向が 高いとする秦・鳥越(2003)の指摘、及び家庭に おける情緒的支援者の存在の重要性を述べた岡 東・鈴木(1990)の調査結果を支持するものであ るG このことから、清緒的な支援関係に基づい て教師が互いに問題を話せる環境を職場に醸成 することで、教師のパーンアウトの進行を食い 止める効果が期待出来る。
( 2 )年齢や教職経験を重ねた教師ほどパーン アウトの度合いが高かったことから、ベテラン 教師ほど職務満足感を得がたい状況に置かれて おり、自らの職務に対して疑問や葛藤を抱く可 能性が高いもの士考えられるO
( ~i) MBI尺 度 の 総 合 得 点 に つ い て 、 実 験 群
においては有意な上昇が認められず、統制群で は有意な上昇が認められたことから、本研究に おける試みはパーンアウトの抑制に有効である
と考えられる守
( 4 )自由記述によってシェアリング・タイム、
グループ・ワーク双方に対して概ね肯定的な意 見が寄せられたことから、教師は同僚と話す機 会を持つことで得ることが多いと考えられる苧
5.今後の諜題
教師のパーンアウトを軽減する噌つの方法と して教師向士がお互いの言葉に耳を傾けるとい うことを試み、一応の成果が認められた。しか し、シェアリング・タイムを実施すべき議題の 選択方法や実施の手頗について、また、グ、ルー プ・ワークiこ関してはより多くの教師が参加し やすい状況を整えるなど、更なる工夫が必要と
される。
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