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PAPER
化学修飾small interfering RNA (siRNA)による遺伝子サイレンシング
Gene Silencing by Chemically Modified Small Interfering RNA (siRNA)
新貝 恭広1)
Yasuhiro Shinkai
柏原 慎一1)
Shinichi Kashihara
藤井 啓史1)
Hirohumi Fujii
峰松 剛1)
Go Minematsu
吉永 尚平2)
Shouhei Yoshinaga
苗村 円佳1)
Madoka Naemura
神武 洋二郎3)
Yojiro Kotake
藤井 政幸*4)
Masayuki Fujii
■Abstract
For clinical applications of small interfering RNA (siRNA), chemical structure of siRNA should be optimized to be taken up into cells effectively, resistant to nuclease digestion, incorporated into RNA induced silencing complex (RISC) rapidly and correctly. They should also have minimized off-target effect and maximized turn over number. In this study, we investigated RNA interference (RNAi) efficiencies of siRNAs bearing 5’-amino-5’-deoxythymidine (T*) at 5’-end. The results showed that T* at the 5’-end of the sense strand did not interfere the processes of RISC loading complex (RLC) formation, loading to RISC or cleavage of the passenger strand by human argonaute2 (hAgo2) at all. On the other hand, T* at the 5’-end of the antisense strand gave a fatal damage to siRNA to show almost no silencing effect probably because RISC was destabilized by an electrostatic repulsion between the cationic charge of the ammonium group of T* and the cationic residues in MID domain pocket of hAgo2. These results strongly suggest that a modification of 5’-end of a sense strand with T* will suppress an off-target effect.
Key Words; siRNA, chemical modification, gene silencing, hAgo2, RISC
はじめに
日本発の核酸医薬を開発しようとする機運が製薬企業、
医療関係者、核酸化学研究者の間で高まっている。その 意気込みの現れとして、20年の歴史を持つアンチセンス DNA/RNA研究会を発展的に継承した日本核酸医薬学会 が2014年4月に設立された。日本の核酸化学研究者は前述 のアンチセンスDNA/RNA研究会を舞台として核酸医薬 開発に向けてハイレベルな研究を展開し、数々の成果を上 げてきたが、気が付けば、核酸医薬の実用化においてはア メリカに大きな差をつけられてしまった。オールジャパン で総力を挙げて日本発の核酸医薬を創製したい。
ア ン チ セ ン ス オ リ ゴ DNA/RNA、siRNA、miRNA ミ ミック、RNAアプタマー、いずれも、核酸医薬として実 用化されるには、生体内で化学的にも生物化学的にも十分 に安定で、免疫誘導を起こさず、非特異的な結合や毒性も なく、狙った特定の細胞だけにデリバリーされて、細胞内 に効率よく侵入し、細胞核、ミトコンドリア、細胞質など 細胞内の所定の箇所に能動輸送されて、細胞内の標的分子
と親和性良く特異的に結合して、副作用なく目指した作 用だけを発揮する、そんな核酸医薬分子の設計が必要と なる。1)(Figure 1)核酸医薬の本体となるオリゴ DNA/
RNAにこれらの機能を付与するためには、生物学的分子 基盤に立脚した上で、化学修飾、コンジュゲート、複合体、
それぞれに積み上げられた成果のエッセンスを組み合わせ た多機能分子の構築が課題である。
我々の研究グループでは、1993年頃より核酸―ペプチド コンジュゲートの合成法の研究に着手し、任意のアミノ酸 配列を有するペプチド、無保護糖鎖などとのコンジュゲー トの簡便合成を可能にする固相フラグメント縮合法を開発 した。2)そして、合成したアンチセンス核酸―シグナルペ プチドコンジュゲートは遺伝子導入試薬を用いることなく 単独で細胞内に侵入し、かつ、細胞核内および細胞質への 細胞内局在化制御可能であることと標的遺伝子発現抑制効 果が顕著に増強されることを示した。3)その中で、核酸結 合性ペプチドのデザインにも力を注ぎし、当初は意図し ていなかった siRNA の細胞内導入に有効なペプチド RL7
1)近畿大学大学院産業理工学研究科産業理工学専攻 2)近畿大学産業理工学部生物環境化学科
3)近畿大学産業理工学部生物環境化学科 准教授 [email protected] 4)近畿大学産業理工学部生物環境化学科 教授 [email protected]
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を見出した。4)最近では、2012年に解明されたヒトアルゴ ノート2タンパク質のX線結晶構造解析の結果をもとに、
化学修飾によりオフターゲット効果を回避できる siRNA の分子デザインに成功した。5)
結果と考察
2012年にRISCの中核をなすヒトアルゴノート2(hAgo2)
のX線結晶構造が解明され、合理的な分子デザインに基づ く化学修飾が可能になった。5)また、それまでに得られた 化学修飾siRNAのサイレンシング効果が合理的に説明で きるようになった。6)その中で、リン酸化されたガイド鎖 5’- 末端が hAgo2の MID ドメインのカチオン性アミノ酸が 多く集まるポケットに取り込まれて安定化されていること が明らかとなった。
我々のグループでは、センス鎖、アンチセンス鎖の5’-末 端に5’- アミノ -5’- デオキシチミジン (T*)(Figure 2)を導 入したsiRNAを合成し、そのサイレンシング効果への影 響を評価した。
sense strand
RNA1; 5’-UACGGCAAGCUGACCCUGAag-3’
RNA3; 5’-TACGGCAAGCUGACCCUGAag-3’
RNA5; 5’-T*ACGGCAAGCUGACCCUGAag-3’
antisense strand
RNA2; 5’-UCAGGGUCAGCUUGCCGUAgg-3’
RNA4; 5’-TCAGGGUCAGCUUGCCGUAgg-3’
RNA6; 5’-T*CAGGGUCAGCUUGCCGUAgg-3’
HeLa細胞のゲノムに組み入れたEGFP遺伝子を標的と して、各 siRNA によるサイレンシング効果を比較した。
EGFP-HeLa 細 胞(3 x 105 cells/ml,) を10%FBS を 含 む MEM 培地中で、200 nM の siRNA を HiPerfFect を用い て細胞導入し、 5% CO2雰囲気下、37oCで24h培養したの ち、EGFPの蛍光をマイクロプレートリーダーにより定 量解析した。その結果をFigure 3に示す。
5’-末端の化学修飾とサイレンシング効果
siRNA3/2(T/U), siRNA5/2(T*/U)は siRNA1/2(U/U) よ り も、 ま た、siRNA3/4(T/T)、siRNA5/4(T*/T)
はsiRNA1/4(U/T)よりもサイレンシング効果が低下し た。この結果は、センス鎖5’-Tによりセンス鎖5’-末端側の 塩基対が熱力学的に不安定化し、センス鎖が選択される確 率が向上したためと考えられる。同様に、センス鎖5’-T* もTと同程度にセンス鎖5’-末端側の塩基対が熱力学的に不 安定化し、センス鎖が選択される確率が向上したためと考 えられる。すなわち、センス鎖5’-T*はRISC形成を妨げず、
センス鎖5’-T*によりアンチセンス鎖が選択される確率が 向上した訳ではないという結果であった。鎖選択はDicer Figure 1. 遺伝子発現機構と核酸医薬の標的
OH
O
O O
N NH
+
H
3N T*
Figure 2. T*の構造
3 との結合、あるいは RISC ローディングコンプレックス
(RLC)の形成の際に決まっていると考えられる。
次に、siRNA1/4(U/T)は siRNA1/2(U/U)よりも、
siRNA3/4(T/T)はsiRNA3/2(T/U)よりも、そして、
siRNA5/4(T*/T)は siRNA5/2(T*/U)よりもサイレ ンシング効果が向上した。これはアンチセンス鎖5’-Tによ りアンチセンス鎖5’-末端側の塩基対が熱力学的に不安定化 し、アンチセンス鎖が選択される確率が向上したためと考 えられる。
さらに、siRNA5/2(T*/U)は siRNA3/2(T/U)と、
siRNA5/4(T*/T)はsiRNA3/4(T/T)とそれぞれほぼ 同等のサイレンシング効果を示した。このことにより、セ ンス鎖5’-T*は RLC の形成および Ago2への積み込みを阻 害しないと言える。したがって、センス鎖5’-T*によりア ンチセンス鎖が選択される確率が向上する訳ではないとい う結果となった。これもやはり、鎖選択はDicerとの結合、
あるいはRLCの形成の際に決まっていることを支持する 結果であった。
最 後 に、siRNA1/6(U/T* )、siRNA3/6(T/T* )、
siRNA5/6(T*/T*)は全くサイレンシング効果を示さ なかった。Figure 4に示す通り、アンチセンス鎖5’-T*は hAgo2のMIDドメインカチオンポケット中のアミノ酸残基 と静電反発を起こすため、1本鎖化後にRISCを不安定化 し、サイレンシング効果を消失させたためと考えられる。
この結果より、センス鎖5’-末端にT*を導入することによ
り、センス鎖の引き起こすoff-target効果は回避できると言 える。
5’-末端の熱力学的安定性とサイレンシング効果 Table 1には杉本教授らの最近接塩基対モデル7)により 算出したセンス鎖5’-末端側およびアンチセンス鎖5’-末端側 それぞれの3塩基対分の熱力学的パラメーターとサイレ ンシング効果をまとめた。ただし、TrA/rArU に対する パラメーターは入手できないため、TdA/rArU に対する パラメーターを使用している。また、T*rA/rArUの塩基 対の安定性はTrA/rArUと変わらないものとして、TdA/
rArUに対するパラメーターを使用している。
0 20 40 60 80 100 120
Untreated Random siRNA1/2 siRNA3/2 siRNA5/2 siRNA1/4 siRNA3/4 siRNA5/4 siRNA1/6 siRNA3/6 siRNA5/6
EGFP Level
U/U 63%
T /U
46% T*/U 44%
U/T 75%
T /T
51% T*/T 52%
U/T*
3%
T/T*
5%
T*/T*
4%
Figure 3. 5’-アミノ-5’-デオキシチミジン(T*)を有するsiRNAによるEGFPのサイレンシング
EGFP-HeLa 3 x 105 cells/ml, [siRNA] = 200 nM transfected by HiPerfFect, 10% FBS, 5% CO2, 37℃, 24h.
Figure 4. hAgo2 MID ドメイン中のT*
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siRNA1/2(U/U)ではセンス鎖末端側のΔG‡は-3.2kcal/
mol、アンチセンス鎖末端側のΔG‡は-4.1kcal/molとな りました。すなわち、センス鎖5’- 末端側が-0.9kcal/molだ け不安定な状態となっており、センス鎖がガイド鎖として 選ばれる方がやや有利な状況となっている。アンチセンス 鎖5’-T*以外のケースではサイレンシング効果は両末端塩 基対の熱力学的安定性に依存していることがわかる。8) 一 方で、アンチセンス鎖5’-T*を有するsiRNA1/6(U/T*)、
siRNA3/6(T/T*)、siRNA5/6(T*/T*)のサイレンシ ング効果は両末端塩基対の熱力学的安定性に全く依存する ことなく、完全にサイレンシング効果が消滅した。
結論
以上の結果より、Figure 5に示す通り、センス鎖5’-末端 のUをT*に置換したことの効果はほとんどサイレンシン グ効果に反映されておらず、センス鎖5’-末端のアミノ基の
影響は DICER/TRBP の結合、RISC ローディングコンプ レックスの形成、RISCへの積み込み過程でほとんどない といえる。しかしながら、T*を有するアンチセンス鎖が RISC に取り込まれた場合には、おそらくは unwinding に よる1本鎖化の後にRISCが不安定化し、サイレンシング 効果は失われたと解釈することができる。すなわち、セン ス鎖5’-末端にT*を導入することにより、センス鎖の引き 起こすoff-target効果は回避できると考えられる。
今後の展望
生物学的な分子基盤に立脚した合理的分子デザインによ り、生体内で化学的にも生物化学的にも十分に安定で、免 疫誘導を起こさず、非特異的な結合や毒性もなく、狙った 特定の細胞だけにデリバリーされて、細胞内に効率よく侵 入し、細胞核、ミトコンドリア、細胞質など細胞内の所定 の箇所に能動輸送されて、細胞内の標的分子と親和性良く 特異的に結合して、副作用なく目指した作用だけを発揮す る核酸医薬分子を構築することが可能であると期待でき る。化学修飾、コンジュゲート、複合体、それぞれに積み 上げられた成果のエッセンスを組み合わせて、日本オリジ ナルの核酸医薬を創製したい。
謝辞
この研究の一部は日本学術振興機構科学研究費補助金基 盤研究(C)25410182により補助されています。
References
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