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降積雪地域における冬期幹線の設定に関する研究

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Academic year: 2021

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降積雪地域における冬期幹線の設定に関する研究

著者 寺内 義典, 加藤 哲男, 本多 義明

雑誌名 福井大学工学部研究報告

巻 47

号 2

ページ 361‑366

発行年 1999‑09

URL http://hdl.handle.net/10098/3387

(2)

47巻 第2 19999

降積雪地域における冬期幹線の設定に関する研究

寺 内 義 典 * 加藤哲男** 本多義明***

A  S t u d y  on A r t e r i a l  i n  Snowy R e g i o n s  

Yoshinori TERAUCHI, Tetsuo KATO  and  Yoshiaki HONDA 

(Received Aug. 31

, 

1999) 

The purpose of血ISpap isto  study on the arterial  in  order to  keep traffic  safety and smoothness on snowfal1 condition.  The main results of出isstudy are as  follows: 

(1) Traffic accidents in snowfall condition is  more than in normal condition. 

(2)  Travel  speed showed a decrease of  approximately  10km/h (21%) in snow  cov condition.

(3) This paper showed that the policy of arteri

a 1  

in snowy regions is  necessyto  taking account of snowf

a 1

1 condition. 

Kの,.Words : Arterial in Snowy Regions.  TracAccidents.  Travel Speed 

1.はじめに

361 

近年では、通勤交通や商業・業務の広域化にともない降積雪時においても平常時と同程度の自動 車交通需要に対応する必要が生じてきた。また、降積雪時の自動車交通をみると、積雪路面による スリップや吹雪による視界不良などを原因とする冬型の交通事故が発生している。さらに路面の凍 結・積雪や幅員の減少による走行環境の悪化は特にピーク時における交通混雑を引き起こしている。

このように、降積雪時における自動車交通は安全性と円滑性の低下が問題となっており、道路交通 の管理計画の面から考えると、重点的な除排雪対策を行う冬期幹線の設定が重要である。

本研究では、自動車交通の安全性の点から、まず過去の交通事故と降積雪のデータを用いて雪と 交通事故の関係を探る。次に円滑性の点から、冬期の通勤交通時における走行調査をもとに、天候・

路面状態と旅行速度の関係をみる。最後に、これらの降積雪時における安全性と円滑性の低下に対

* 大 学 院 工 学 研 究 科 シ ス テ ム 設 計 工 学 専 攻 福 井 県 土 木 部 付 * 建 築 建 設 工 学 科

(3)

362 

する対策として、冬期幹線の設定の考え方などについて述べる。

2  既往研究

降積雪時における冬型の交通事故に関する研究としては、まず稲葉1)による実際の事故事例に ついて詳細に分析した報告がある。また、斉藤ら 2)は、冬期交通事故とドライパーの安全意識に ついて分析を行っている。近年では、「スパイクタイヤ粉塵の発生の防止に関する法律Jの施行に

より、特に北海道においてスリップ事故に関する研究が盛んである。

一方、降積雪時の自動車交通の円滑性の低 下に関するものとしては、たとえば堀井 3) による研究がある。ここでは、数量化理論 I 類を用い都市内 2 車線道路での旅行速度、

走行速度、旅行時間、遅れ時間を目的変量と した要因分析を行っている。

しかし、道路交通の管理計画の視点からの 施策に結びつく提案例は少ない。そこで本研 究では、ベタ雪の特徴を持つ福井県を対象に 降積雪による自動車交通の安全性と円滑性の 低下の程度を調査し、また、その対策として 冬期幹線の考え方について示すものである。

3.降積雪による安全性の低下 3.1 交通事故発生件数の月別変動

ここでは福井県を対象として 1982年から 1997年までの 16年間における月別交通事 故の発生件数から、その季節指数により雪と 交 通 事 故 の 関 係 を み る。こ こ で 季 節 指 数 は 100を基準として月別の事故の多少を示すも のである。

降積雪と交通事故の関係を検討するために、

福井県において中山間地域を多く含み比較的 降積雪の多い奥越地区の季節指数と福井全県 における季節指数の比較を行う。ここで、福 井県の年平均降雪量と奥越地区の位置につい て図 1に示す。

福井全県と奥越地区における事故件数の季 節指数を図 2 に、物損事故のみによる季節 指数を図 3に示す。8月と 12月における事

標高200m 以上の地犠

単 位 cm

図1 福井県の年平均降雪量の分布 ('53‑'96年)

140 

120 

f100 

80 

60 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10  11  12 (月) 図 2 事故件数 (全事故)の季節指数

140 

120 

100 

80 

60 

一 一 同昼ヌご 奥 越 l

2  3  4  5  6 7  8  9 10  11  12 (月)3 事故件数(物損のみ)の季節指数

(4)

故件数の増加は全県的な傾向であるが、特に 降積雪の多い 1....2月の奥越地区における事 故件数の増加傾向は、福井全県ではみられな い。このことから、降積雪が事故の増加に影 響していることが予想される。また、この傾 向は物損事故で強くみられ、 2 月の季節指数 は 140近くに達し、年間で最も事故の多い 月となっている。なお、全国での事故件数の 月別変動をみると、年の後半で事故件数が多 く、 1.......2月は最も事故件数の少ない時期で ある。

3.2  降雪と交通事故の関係

前節の結果をふまえて奥越地区における 1

....2月の事故発生状況と降雪日数の調査を行 い、雪と交通事故の関連についてより詳しく 分析をすすめる。なお、ここで事故発生状況

を示すものとして、事故件数そのものではな く 冬 期 事 故 率 ( = (その期間に発生した事故 件数)/ (年間に発生した事故件数)とする)

30% 

25% 

20% 

15% 

10% 

5% 

0% 

nunununununu 

r a a 4 q u

4 4 1

89  90  91  92  93  94  95  96  97 

[ー降雪印一一矧部卒!

4 冬期事故率と降雪日数

15O

0.79 

12.5

10.0

7.5

5.0 よー

10  15  20  25  [日]

図 5 冬期事故率(全事故)と降雪回数の相関 により示している。これは、交通量の増加に

ともない年々交通事故が増加していることから、そのような降積雪とは関係ない経年的な事故の傾 向を除くためである。

まず、 1 .-..., 2 月の降雪日数と冬期事故率を図 4 に示す。これをみると、 91 ・ 95~97 年の比較的 降雪日数の多い年では冬期事故率も増加している様子がうかがえる。

そこで、降雪日数と交通事故との関係をみるために、 89年から 97年の9年間における 1月・ 2 月の各月それぞれについて、冬期事故率と降雪日数の相関を示したものが図 5 である。相関係数 はr=0.79となり、両者の聞に有意な関係があることが示された。これは物損事故でも同様で、r=0.81

と有意な関係がある。

このことから降積雪時においては交通事故が発生しやすく、特に物損事故においてその傾向が強 いことが確認できた。このような冬型の交通事故が多く発生していることから、その防止対策とし ての降積雪時の道路交通の管理計画が重要である。

4.冬期通勤交通の旅行速度 4.1  調査概要

冬期通勤交通における降積雪の影響をみるために、 199914"''222日のうちの23日 間において、通勤時における走行実測を行った。実測対象道路は福井市一大野市聞の通勤交通が利 用する幹線道路である国道 158号とした。このうち走行実測中に降雪のあったのは5日間である。

(5)

364 

[km/h 100 

80 

40  20 

991. 5 (天候

一一.

991.  8 (天候

実測結果は、車載装置 (YAZAC5064)によ り走行距離・速度を 0.5秒ごとメモリーカー ドに記録し、測定後コンビュータに読み込み したものである。また、その走行時における 天候と路面状態については目視により確認し た。その通勤経路と実際の走行データを図化 したものを図 6に示す。これをみると、個 所により違いはあるが、降雪時は晴天時と比 べ20"'30km/h程度の速度差がみられる。

旅行速度は交通状態(交通量、交通密度な ど)の変化を含む実際の道路のサービス水準 を示す質的指標として有効であり、道路交通 の管理計画上、有用な指標の一つである。以 下では、この旅行速度に着円して天候 ・路面 状態との関連について述べる。

4.旅行速度と天候・路面状態

1/4

1/ 1/ 1/ 1/11  1/12  1/13  1/14  1/18  1/19  1/20  1/21  1/22  1/25  1/26  1/27  1/28  1/29  2/4 

30 

2/5

2/t~

2/12  I1

2/22  ~

60  90  [分]

~

[km/h] 

E二コ走行時間‑0‑ー旅行速度│

7 調査日ごとの走行時間と旅行速度

表 1 天候と平均旅行速度 天候 日数 平均旅行 晴天時

速度 との差 降雪 38.1  8.(17%) 

43. 2.2 (5%)  曇天 10  45. 1.1 (2%)  晴天 46.

降雨 47. 1.7 (4%) 

表 2 路面状態と平均旅行速度 路面状 日数 平均旅行 晴天時

速度 との差

積雪 39. 10.(21 %)  凍結 41. 8.(17%)  湿潤 46. 3.2 (7%)  乾燥 49.

全ての実視JIにおける走行時間と旅行速度を図 7に示す。この期間の中で降雪のあった期間は 3 回であり、それら全てにおいて旅行速度が低下していることがわかる。

旅行速度の低下の程度について調査を行うために、各天候における平均の旅行速度を算出したも のを表 1に示す。降雪H寺は速度の低下が最も著しく、晴天時に比べ 8.0km/hの速度減となってい る。また各路面状態における平均旅行速度を表 2に示す。 乾燥状態にくらべて凍結で 8.4km/h、 積雪で 1O.3km/hの低下となっている。なお、福井はベタ雪の特徴があるため、凍結日数は少なく、

湿潤 ・積雪が多い。

(6)

これらの結果、特に降積雪時における道路のサービス水準の確保のための道路交通の管理計画、

とりわけ除雪・排雪などの対策が重要である。

5.冬期幹線の設定

5.1  冬期幹線設定の必要性と実施上の課題

降積雪時には、交通事故の発生、道路のサービス水準低下による旅行速度の低下、道路の交通容 量の減少による混雑度の増加などの交通問題が生じる。さらに降積雪時には、特に主要な路線に交 通が集中する傾向がみられるため、これらの路線での除雪の遅れは自動車交通を混乱させる。その 改善のためには、主要幹線を対象にあらかじめ完全除雪する路線を設定することで、自動車交通の 耐雪力を高めていく必要がある。この時、完全除雪するルートが道路網として機能するよう設定さ れているべきである。ここでは、その対象となる道路を冬期幹線と称する。

設定された冬期幹線は、道路の横断面の構成や付帯施設の計画においても除排雪を考慮する必要 がある。さらに主要交差点の完全無雪化も同時に行えば実施の効果は大きい。このような対策によ り、一般の自動車交通の確保だけでなく、冬期幹線上を走行する主要パスルートの走行遅れの減少 による公共交通の確保も可能となる。

また、降雪時における路上駐車の引き上げ警報といった対策により、道路網全体としての除雪を 行わなければならない。さらに、除雪作業は段階的に行われているが、積雪が多くなってからの除 雪や部分的な区間での除雪では、道路網全体としての機能回復が遅れる場合が生ずる。除雪に関す る情報の遅れ・不足のため、走行経路に関する信頼性を低下させることが懸念されるため、冬期幹 線は利用者にわかるように明示される必要がある。

5.2  都市部における冬期幹線の除消雪対策

違法路上駐車による除雪作業の遅れが交通混雑を悪化させるなど、特に都市部では降積雪が自動 車交通に及ぼす影響が拡大する。降積雪時における交通混雑の発生はドライパーへの精神的負担を 増加させ安全性の面からみても問題がある。

しかし、設定された冬期幹線における対策の方法(機械除雪、散水消雪など)として何を選択す るべきかは、道路条件によって異なるため、その合理的な決定方法が積雪地域の自治体に必要とさ れている。

その手順としては、対策の方法を検討する前に、まず対象となる各道路の機能や重要度について 検討し、それに応じて確保すべき車道と歩道を決定するべきである。次に、対象路線の雪対策の方 法を選定する。この時、選定を行うにあたり、それぞれの対策には適応可能な条件が異なるため、

沿道条件、道路や車道部の幅員、歩道の有無などの諸条件を考慮した選定手順が必要となる。

また、散水消雪などの固定施設は地下水・費用などについても考慮、されるべきである。このよう に多数の諸条件を検討しつつ雪対策の選定手順をより合理化する方法として、 GISの導入が有効 である。また、その結果として雪対策にかかる総コストの算出による費用便益分析といった応用も 考えられる。

(7)

366  6.まとめ

本研究の成果として、以下の知見を得た。

(1) 降積雪の多い地区では冬期の交通事故は増加し、その傾向は物損事故で大きい。また、降雪日 数と交通事故件数の相関分析の結果、両者の聞に正の相関関係がある。

(2)他の天候とくらべ降雪時は通勤交通の旅行速度が著しく低下する。また、路面の凍結・積雪に ついても同様で、積雪路面では約 10km/h (21%)の低下がみられた。

(3)降積雪時における自動車交通の耐雪力を高める対策として冬期幹線の必要性について示した。

また都市部における冬期幹線の除消雪対策の決定方法について示した。

【謝辞】

走 行 実 測 の デ ー タ 処 理 に ご 協 力 い た だ き ま し た 豊 田 工 業 高 等 専 門 学 校 荻 野 弘 教 授 、 野 田 宏 治 助 教授に感謝します。

【参考文献1

1)  稲葉哲雄:冬型交通事故の事例解析とその安全対策について,交通工学Vol.12No.l, pp.3・10, 1977 

2)  斉藤和夫,加来照俊:冬期積雪時の交通安全問題に関する2,3の分析,交通工学Vol.13No.3,  pp.316,1978 

3)  堀 井 雅 史 : 積 雪 都 市 に お け る 旅 行 速 度 予 測 指 標 に 関 す る ー 検 討 , 土 木 計 画 学 研 究 ・ 講 演 集 , Vol.I6(1), pp.4953,1993 

4)  中村英夫,森地茂:交通安全と街づくり,勤草書房, pp.131・132,1993 

5)  寺内義典,嶋田喜昭,本多義明:沿道条件を考慮した除雪・消雪道路の選定に関する研究, 日 本雪工学会誌, 14, pp.305・312,1998 

参照

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