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著者 永長 幸雄, 米窪 達雄

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(1)

ン酸の酸分解反応とそのチタンおよびパナジウムの 分別定量への応用

著者 永長 幸雄, 米窪 達雄

雑誌名 福井大学工学部研究報告

巻 21

号 2

ページ 153‑157

発行年 1973‑09

URL http://hdl.handle.net/10098/4711

(2)

リンチタノモリブデン酸およびリンパナドモリブデン酸 の酸分解反応とそのチタンおよびパナジウムの分別定量 への応用

永 長 幸 雄 米 窪 達 雄 場

Acid Decomposition of Molybdotitanophosphoric and Molybdovanado‑

phosphoric Acids and Its Application to  Simultaneous Determination of  Titanium and Vanadium 

Yukio NAGAOSA and Tatsuo YONEKUBO 

CReceived April 16.  1973) 

The  acid  decomposition  of  molybdotitanophosphoric CPTM) and molybdo vanadophosphoric  CPVM)  acids  in  hydrochloric  acid  solutions  has  been 

examined by spectrophotometry in  various concentrations  of  the  acid  and at  various  temperatures.  The decomposition  rates  followed the equations  de‑ scribed below. 

d (PTMJ 

一 =

0 . 444  (H' J 1.1CPTM J , 

dt  d (PVMJ 

~ '-~L'-'-; =0.0277  (H+J JI (PVMJ dt 

The activation  energies  of  PTM and PVM were 1. 58 x 10and 1. 70 X 10cal  mol‑1, respectively. 

Simu

1 t

aneous  spectrophotometric  determination  of  titanium  and  vanadium  in  mixtures  has  been  also  studied  by a logarithmic  extrapolation  method.  This method  was  applied  to  the  synthetic  sample  solutions  containing  20 

‑‑100μg  titani um and  vanadi um in  50  m 1. 

1 緒 雷 などがありそれぞれ特徴をもち,目的に応じて使い分

普通吸光光度分析法1.2)で は 溶 液 中 に お け る 分 析 の けられている。この中で周期律表の第4,第5族に属 対象となるイオンまたは分子種に適当な試薬を加えて する元素の定量めには古くからヘテロポリ酸生成反応 呈 色 反 応 を 起 こ さ せ た の ち 溶 液 の 吸 光 度 を 測 定 す る がしばしば利用されている。しかし,この場合溶液中 が,この呈色反応にはキレー卜生成反応,ヘテロポリ の化学種がpHによって変化することなどにより反応、

酸生成反応,置換反応.酸化還元反応および接触反応 が一般に複雑であるためその反応機構は充分には解明 持 応 用 理 学 教 室

(3)

さ れ て い な い 九 こ の ヘ テ ロ ポ リ 酸 生 成 反 応 の 平 衡 お よ び 機 構 を 明 ら か に す る こ と は 物 理 化 学 的 見 地 か ら ば か り で な く 新 し い 分 析 法 の 開 拓 の 点 か ら も 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。 以 上 の 観 点 か ら , 著 者 ら は こ こ 数 年 来 ヘ テ ロ ポ リ 酸 の 生 成 お よ び 分 解 反 応 を 利 用 す る 吸 光 光 度 定 量 に 関 す る 研 究58)な ら び に こ れ ら の 反 応 の 速 度 論的研究引を行なってきた。

本 報 で は 三 元 ヘ テ ロ ポ リ 酸 で あ る リ ン チ タ ノ モ リ ブ デ ン 酸 お よ び リ ン パ ナ ド モ リ ブ デ ン 酸 錯 体 の 塩 酸 に よ る 分 解 反 応 を 速 度 論 的 に 比 較 研 究 し , そ れ ぞ れ の 反 応 式 に つ い て 検 討 し , さ ら に 対 数 補 外 法 に よ る チ タ ン と パナジウムの分別定量についても検討した。

2 実 験

2・1試 薬

パナジウム(V)標 準 溶 液 : メ タ パ ナ ジ ン 酸 ア ン モ ニウム2.296gを 熱

7 l <

200mlに 溶 解 し , 冷 却 後 純 水 でl lとした (V1 mg/ml)。

チタン(町)標準溶液 1100Cで 乾 燥 し た 二 酸 化 チ タン1.668gに 硫 酸 水 素 ナ ト リ ウ ム5.0gを 加 え て 溶 融 し,冷却後1N塩 酸 100mlに 溶 出 し た の ち 純 水 で11 

とした (Ti1 mg/ml)。

リ ン モ リ ブ デ ン 酸 溶 液 : リン酸二水素カリウム2. 718gと モ リ ブ デ ン 酸 ナ ト リ ウ ム 二 水 塩3.629gとを5N

塩 酸 お よ び 純 水 で 溶 解 し .pH1.8および全容500mlと したのち 1日放置してから実験に使用した。

そ の 他 の 試 薬 は い ず れ も 市 販 特 級 品 を そ の ま ま 使 用 した。

2 • 2義 置

目立製139型分光光度計(付属の光路長1.Ocmの 石 英 セ ル お よ び5.3cmの ビ ー カ ー 型 石 英 セ ル ). 目 立 製 QPDS3型記録計を使用した。

2 • 3実 験 操 作

チタンまたはノイナジウムを含む溶液を100mlビー カーにとり, リ ン モ リ ブ デ ン 酸 溶 液5mlを添加する。

純 水 を 加 え て 全 容 を 約40mlとしたのち.5N塩酸を用 いて溶液のpHを1.8と す る 。 こ の 溶 液 を メ ス フ ラ ス コ に 移 し て 純 水 で 正 確 に50mlとし.20:t 0.1 oC恒温そう 中に2時 間 以 上 放 置 す る 。 つ づ い て そ の40mlを100ml

ビ ー カ ー 型 石 英 セ ル に と り , 濃 度 既 知 の 塩 酸 溶 液10m lを 加 え て , 溶 液 の 吸 光 度 変 化 を 波 長400nmで 記 録 す る。

3 結 果 と 考 察

3 • 1 吸 収 曲 綜 と モ ル 吸 光 係 数

2

3の 実 験 操 作 に 準 じ て リ ン チ タ ノ モ リ ブ デ ン 酸 以 下PTMと 略 記 ) お よ び リ ン パ ナ ド モ リ ブ デ ン 酸 ( 以 下PVMと 略 記 ) の 吸 収 曲 線 を 調 べ た と こ ろ Fig.  1 

に示すような結果が得られた。 PTMおよびPVMの 吸 収 極 大 は と も に 紫 外 部 に あ る が , そ の 領 域 で は ブ ラ ン ク 値 が 大 き く な る た め , 本 実 験 で は 測 定 波 長 を400nm

とした。なお.400nmにおいてPTMおよびPVMの 両 液は0‑150μg/50mlの 濃 度 範 囲 で ベ ー ル の 法 則 に 従 い , モ ル 吸 光 係 数 は そ れ ぞ れ2.06103および2.56x  1031 mol‑cm‑1であった。

3

2 PTMPVMの 分 解 速 度

2 ・ 3

の 実 験 操 作 に 従 っ て 種 々 濃 度 の 塩 酸 溶 液 中 に お けるPTMお よ びPVMの 分 解 反 応 を 行 な い , 反 応 時 間t

に対して残存するPTMお よ びPVMの 吸 光 度 の 対 数 を プロットした。1.0N塩 酸 溶 液 に お け るPTMお よ びP VMの分解を Fig.  2に 示 す 。 こ れ か ら わ か る よ う

に こ の 分 解 反 応 はPTMお よ びPVMの 濃 度 に 関 し て 一 次 で あ る 。 つ ぎ に , 半 減 期 法 に よ り 求 め た 速 度 定 数kp

TMおよひずkPVMと 酸 濃 度 と の 対 数 プ ロ ッ ト を Fig.  3 

に示す。 PTMお よ びPVM(両者をPと略記する)いず

o .

o.ラ

0.1 

60 ラ80 400  20 斗斗O

Wavelength  nm 

Fig. 1 Absorption  spectra  of  heteropoly  acids 

1 : V 100μg/50ml  against  reagent  blank 

:Ti  100μg/50ml  against  reagent  blank 

m : 

Reagent  blank  against  water 

cell  length  1.0cm 

(4)

ー0.2

ーo.

0.6

.p 

宮司 0.8

.1 

ー 叶.0

10 

斗(・〉

o(0) 

2

200 Reaction time  min 

Fig.  2  Relation  between  logarithm of  absorb‑ ance  of  heteropoly  acid  in  1N  HCl  and  re‑ action  time 

o  : 

V  100μg/50ml;  .: Ti  100μg/50ml ;  cell  length : 5. 3cm 

れについても良好な直線を示すことから次式が得られ る。

d (PJ 

一一一一一=kCPJ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

dt 

k =kH+ CHJh. • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •• (2)  (2 )式の速度定数kおよび CH+Jにそれぞれ実験に よって得られた値を代入してkH+およびbを 求 め た と ころ.PTMおよびPVMについてそれぞれ0.444.1.33  および0.0277. 0.68の値を得た。これによってPTM およびPVMの酸分解反応速度式として (3)お よ び

(4)式が得られる。

d (PTM) 

= 0.444  CH') , 2.1 (PTM) ・・・・ ( 3)  dt 

d(PVM) 

=0.0277  (H+) 11.68  (PVMJ ・・・・(4) dt 

PTMおよびPVMの生成反応機構についての報告は まだみられないが,二元ヘテロポリ酸であるリンモリ ブデン酸の生成反応10)および平衡11)についての報告に

0.0 

‑0.5 

~守 .0

OH

ーオ.う

‑ 2.0 

o .

斗 ー 0.2 0.0  0.2  o. log  (H勺

Fig.  3 E百ect of  hydrogen  ion  concentration  on  rate  constant 

o  : 

V  100μg/50ml ; 

• : Ti  100μg/50ml ;  cell  length : 5. 3cm 

よって著者らはこの酸分解全反応式を次のように推定 した。

H7PTi04(Mo30IO)4  {H6PV04(Mo301O)4)  + 8 H +→ 

H4 M08026 + 4Mo022+ + H3P04 + H4Ti04 {HN04} 

+2H20・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ( 5) 

(3)および(4)を (5)と比較するときこの分解反応 はいくつかの複雑な素過程をへて進行するものである と考えられる。また.PTMとPVMの 各 速 度 式 に お い て水素イオン濃度に関する反応次数がちがうが,これ は二つのヘテロポリ酸の生成反応あるいはその分解生 成物の相違などが原因であると思われる。

3 • 3 活性化エネルギー

種 々 の 反 応 温 度 に お け る 速 度 定 数kを 求 め.logk と l/Tの値をプロッ卜すると Fig.  4が 得 ら れ . PTMおよびPVMのいずれの場合にも直線を示す。よ

ってこの反応の活性化エネルギーをアレニウスの式に より求めるとPTMおよびPVMについてそれぞれ1.58 

104および1.70 104 cal  mol‑Iの値を得た。 この

(5)

.0

.!o:  0.0

ト ¥ ¥  

bC

F

‑ 1.0

¥ ¥  

‑ 2.0 

.2 ろ.弓 ろ.斗 弓.ら

I T

X10 

Fig. 4 Effect  of  temperature  on rate  constant 

o  : 

V  100μg/50ml ; 

:

Ti  100μg/50ml ; 

cell  length : 5. 3cm 

値は有機酸塩による三元ヘテロポリ酸の分解反応の活 性化エネルギーの値7)とよく一致しているo

3

4 分別定量

著者らは先に三元ヘテロポリ酸の分解反応を停止さ せた後モリブデン青として発色させて定量する方法を 用 い て チ タ ン と パ ナ ジ ウ ム の 同 時 定 量 を 行 な っ た れ が,本報ではその分解反応を連続的に追跡して対数プ ロットを行なう対数補外法7.12)を 用 い る こ と に し た 。 これによると既報より感度の点ではやや劣るが,実験 操作が一回で済みより簡便となる利点がある。

もし2物質AとBとが速度定数kAおよびkBの も と に 互いに無関係に一次分解反応を行なうときは,任意の 時刻tにおけるAおよびBの濃度は (6)および(7)式 で表わされる。

(A)l  (A)oexp(‑kAt)・・・・・・・・・・・・・・・・(6) (8 ) l  (B )  IJexp ( ‑kBt)・・・・・・・・・・・・・・・・ (7)  ここで (A)l' (A)uおよび(8)l' (B J。 は そ れ ぞ れt=,t t= 0におけるAとBの 濃 度 で あ る 。 一 般 に 溶 植の吸光度と濃度とは (8)式 に 示 さ れ る 関 係 に あ る から,

~

‑o.

‑o.

‑ 0.6 

M ‑ o H  

‑ 0.8 

‑o.c} 

2 6

Reaciontime  min 

Fig.  5  Relation  between  logarithm  of absorb‑ ance  of  a mixture  of  Ti‑V in  1.5 N HCI  and  reaction  time 

Concentration  of  metal  ions  100μg  Ti  and 100μg /150ml  cell  length  5. 3cm  solid  line  experimental  data  broken  line  extrapolated  data 

E=EC1... (8)  (E :吸光度, ε: モル吸光係数, C :モル濃度, 1  光路長)

(6), (7)式はそれぞれ (9), (10)式に変形できる。

EA.l = EA.Oexp( ‑kAt)・.. . . . ..  . . . .. ( 9 )  EB.l=EB.Oexp( ‑kBt)・・・・ー・・・・・・・・・・・・・・・・・ (10) ここでEA.lEA.Oおよび:EB.lEB.Oはそれぞれt=,t t = 0  におけるAとBの吸光度である。よってt=tにおけるA とBの吸光度の手OEl(ま(10式で示される。

El = EA.l + EB.l = EA.Oexp ( ‑kAο+ EB.Oexp( ‑kBt) 

‑・(10

もしkA>kBでかつtが充分大きければEA.lの 項 は 無 視 で きる。故に

InEl =lnEB.l =lnEB.O ‑kst・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (12) 

(6)

Table 1 Simultaneous  determination  of  titani‑ um and  vanadium  in  synthetic  samples 

Taken (μg/50mD  Found (μg/50m!)  Ti  V  Ti  V  20.0  20.0  22.0  21.5  20.0  50.0  23.8  44.1  20.0  100.0  25.0  98.5  50.0  20.0  50.5  20.0  50.0  50.0  51.0  49.2  50.0  100.0  47.5  100.0  100.0  20.0  98.9  20.1  100.0  50.0  100.4  49.6  100.0  100.0  99.7  101.0 

いまlogEtをtIこ対してプロットすると反応初期には曲 線を示すが.Aがほとんど全部反応したのちには直線 状となる。この直線部分をt=0に補外するとEB.。が得 られ.反応を始める前にあらかじめ溶液の吸光度E。を 測定しておけばEA.OEA.O= Eo ‑EB.Oに よ っ て 求 め ら れ る。このようにして求めた EA.Oおよび EBOの値から (8)  式によって (AJ。 お よ び ( BJ。が算出される。

Fig.5はそれぞれ100μgの チ タ ン お よ び パ ナ ジ ウ ムを含む合成試料をとって2

3で述べた実験操作を行

ないtに対して logEtを プ ロ ッ ト し た も の で あ る 。 Table 1に20‑100μgのチタンとパナジウムを含む合成 試料について分別定量を行なった結果を示す。これに よるとチタンが少量の場合以外は満足すべき値が得ら れることがわかる。

4 結 論

以上の研究結果を要約すると次のようになる。

1)  吸光光度法によって塩酸溶液中におけるリンチ タノモリブデン酸 (PTM)と リ ン パ ナ ド モ リ ブ デ ン 酸 (PVM)の 酸 分 解 反 応 速 度 式 を 求 め た と こ ろ 次 の

とおりであったo

d (PTMJ  ~...___L_I 刊

=0.444 (H+Jl(PTMJ dt 

d(PVMJ  ^^~~".+, IloR 

一 一 一 一 一 一 =O. 0277(H+)札 出(PVM) dt 

なお,この反応におけるPTMおよびPVMの 活 性 化 エネルギーはそれぞれ1.58104および 1.70 10cal  mol‑/であった。

2)  PTMおよびPVMの 酸 分 解 反 応 速 度 に は か な り の差があることがわかったので対数補外法を用いてO

‑100μg/50mlの チ タ ン と パ ナ ジ ウ ム の 分 別 定 量 を 行 なった。

文 献

1) E.  B.  Sandell  "Colorimetric  Determination  of  Traces  of  Metals".  3rd  Ed..  (959).  CInterscience  Publ..  New 

York) 

2)  F.  D.  Snell.  C.  T.  Snell  "Colorimetric  Methods  of  Analysis'¥3rd  Ed..  (959).  (Van  Nostrand.  Princeton.  N. J.) 

3)  D.  F.  Bo1tz  "Colorimetric  Determination  of  Nonmetals(958).  CInterscience  Publ..  New York) 

4)  L.  G.  Hargis  Ana .lChem..  42.  1494  (970)  5)永長幸雄,瀬戸六左衛門.佐竹正忠.米窪達雄:日本化学雑誌.

92.  1216 (1971) 

6)永長幸雄.米窪達雄.佐竹正忠,瀬戸六左衛門:分析化学.21.  215  (1972) 

7)  Y.  Nagaosa.  T.  Yonekubo  Bul .lChem.  Soc.  Japan.  46.  1667  (1973) 

8)永長幸雄,米窪達雄:分析化学.22. 850  (973)  9)永長幸雄.米窪達雄:投稿準備中

10)  S.  R.  Crouch.  H.  V.  Malmstadt  Ana .lChem..  39.  1084  1967) 

11) A.  Halasz.  E.  Pungor  Talanta.  18.  557  (971)  12)  H.  B.  Mark.  Jr..  G.  A.  Rechnitz  "Kinetics  in  Analytical 

Chemistry'¥(968).  CInterscience.  Publ..  New York) 

参照

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